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領収書の保存方法|紙・電子別のやり方と保存期間、電子帳簿保存法・インボイス制度で満たすべき要件

領収書の保存方法のサムネイル画像

領収書の保存方法は、2023年10月のインボイス制度開始と2024年1月からの電子帳簿保存法(電子取引データの電子保存)完全義務化により、実務がここ数年で大きく変わりました。紙で受け取った1枚のレシートと、メールで届いたPDFの領収書、それぞれ何をどうすればよいのか——今のやり方で本当に大丈夫か——を確認したい経理担当や個人事業主の方は少なくないはずです。

本記事では、目の前の1件(紙/電子)に対して次に何をすればよいかを、法令(法人税法・所得税法・消費税法・電子帳簿保存法)と国税庁の一問一答に照らして具体的に整理します。保存期間の場合分け・電帳法の「真実性/可視性」の要件・インボイス制度の登録番号(T+13桁)まで、税務調査で否認されないラインを条・号レベルの根拠つきで解説します。

最後まで読めば、自社の運用が電帳法・インボイス制度で通用するかを自分で判定でき、手作業で追いつかないと判断した場合の次のアクション(電帳法対応クラウドサービスの比較検討)にも進めるようになります。

この記事を読むとわかること
  • 紙・電子それぞれの領収書に対して、目の前の1件に次に何をすればよいかの具体手順
  • 法人/個人事業主(青色・白色)/欠損金あり法人の保存期間を場合分けで確定できる
  • 電子帳簿保存法の「真実性の確保」「可視性の確保」の要件が選択肢レベルで分かる
  • インボイス制度で登録番号が無い領収書の扱いと経過措置の控除率
  • 税務調査で否認されないための実務チェックポイント(紛失時対応・上様領収書・カード明細)
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【紙・電子別】領収書の保存方法まとめ表

まず結論を先にまとめます。目の前にある1枚の紙レシート、いま届いた1通のPDFメールに対して、それぞれ何をすればよいか・保存期間・満たすべき要件・法令根拠を1つの表で確認できます。各項目の詳細は、以下の各セクションで解説します。

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区分 / 領収書の種類紙で受け取った領収書電子で受け取った領収書
やること分類(月別/科目別/取引先別)して封筒・ファイル・A4貼付で綴じる。またはスキャナ保存で電子化して紙を破棄受け取ったファイル形式(PDF等)のまま電子保存。印刷して紙保存は不可(2024年1月〜完全義務化)
保存期間法人:7年(欠損金あり10年)/個人事業主 青色:7年/白色:5年(消費税法は白色も7年)紙と同じ(媒体で変わらない)
満たすべき要件整理保存(法人税法施行規則59条ほか)。スキャナ保存の場合は電帳法4条3項+施行規則2条6項電子帳簿保存法「真実性の確保」+「可視性の確保」(施行規則4条1項)
インボイス制度登録番号(T+13桁)の記載を確認、無い場合は経過措置(80%控除 or 50%控除)紙と同じ(媒体で変わらない)
主要な法令根拠法人税法施行規則59条・所得税法施行規則63条/102条4項・消費税法30条7項・施行令50条1項電子帳簿保存法7条・施行規則4条1項・国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」問18・問19

表の各行の詳細は、続く各セクションで法令の条・号と国税庁の該当項目に沿って解説します。

領収書の保存期間【法人・個人事業主・欠損金の場合分け】

領収書の保存期間は「法人か個人事業主か」「青色申告か白色申告か」「欠損金の繰越があるか」「法人税・所得税ベースか消費税ベースか」で変わります。原則7年ですが、白色申告の所得税法は5年、欠損金あり法人は10年など、自分の立場をそのまま拾える形で整理しておくと確定できます。

立場法人税・所得税消費税直接の根拠
法人(通常)7年7年法人税法施行規則59条/消費税法30条7項・施行令50条1項
法人(欠損金あり)10年7年法人税法57条1項+法人税法施行規則26条の3
個人事業主(青色申告)7年7年所得税法施行規則63条/消費税法30条7項・施行令50条1項
個人事業主(白色申告)5年7年所得税法施行規則102条4項/消費税法30条7項・施行令50条1項

加えて、株式会社などの会社形態を採っている場合は、会社法432条2項により会計帳簿および事業に関する重要な資料を10年間保存する義務があります。これは税法とは別の根拠で、税法上の保存期間が過ぎても会社法上の10年は残ります。実務では最長10年を目安に保存する会社が多いのはこのためです。

法人が7年/10年になる分かれ目

法人の帳簿書類は原則7年ですが、青色欠損金または災害損失金額を繰り越す場合は、その事業年度の帳簿書類を10年間保存する必要があります。根拠は、青色欠損金の10年繰越を定める法人税法57条1項と、それに対応する帳簿書類の保存義務を定める法人税法施行規則26条の3です。

過去に赤字を出して繰越欠損金を持っている法人、あるいは災害で損失を出して繰越を予定している法人は、通常7年ではなく10年で管理する運用が安全です。個別の判断は税理士に確認してください。

個人事業主の保存期間(青色7年・白色5年・消費税法は白色も7年)

個人事業主の場合、所得税法上は青色申告7年(所得税法施行規則63条1項)・白色申告5年(所得税法施行規則102条4項)で分かれます。青色申告でも、前々年の事業所得と不動産所得の合計が300万円以下の小規模事業者は、その年に作成・受領した領収書を含む書類は5年保存で足ります(所得税法施行規則63条2項)。300万円超の事業者は、領収書は現金預金取引等関係書類として原則7年です。

課税事業者であれば消費税法上は青色・白色を問わず7年保存が必要です(消費税法30条7項・施行令50条1項)。白色申告の個人事業主でも課税事業者は7年、免税事業者なら所得税法基準の5年になります。

保存期間の起算日(法定申告期限の翌日から)

「7年」「10年」の起算日は、書類の作成日ではなく、法定申告期限の翌日からです(法人税法施行規則59条2項、所得税法施行規則63条2項)。たとえば法人(3月決算)が令和6年度の領収書を保存する場合、法定申告期限は令和7年5月末で、その翌日(令和7年6月1日)から7年(欠損金があれば10年)を数えます。年度末の書類ほど実質的な保存期間は長くなるため、破棄予定日はこの起算日から逆算して管理します。

紙で受け取った領収書の保存方法(分類・綴じ方・スキャナ保存)

紙で受け取ったレシートや領収書は、後で税務調査や経費精算の場面で個別に取り出せる形で綴じておく必要があります。「山積みのまま」では月次締めや年次の申告時に消耗しますし、税務調査で特定の1件を求められたときに探せない状況は避けたいところです。ここでは分類の切り口・綴じ方・スキャナ保存で紙を破棄する条件の3点を整理します。

分類の切り口を決める(月別/科目別/取引先別)

紙の領収書を分類する切り口は主に3つあり、事業の性質と取引量で選び方が変わります。

  • 月別:もっともシンプルで、月次締めの流れに合う。取引数が月あたり数十件までの個人事業主・小規模事業者向け。1年で12冊(月)に分ければ探し出しは月単位でできる
  • 科目別:交通費/会議費/通信費/消耗品費など勘定科目ごとに分ける。会計ソフトへの入力効率が上がり、決算時の科目別集計に強い。ただし1件ごとの科目判断が事前に必要
  • 取引先別:定期取引が多い法人向け。特定の取引先との関係を通期で追える。ただし少額の単発取引が混じると綴じが煩雑になる

取引量が多い法人は「月別+科目別」の2軸で分けて、月内は科目別のインデックスで区切る運用が現実的です。

綴じ方の実務(封筒/ファイル/A4貼付のいずれを選ぶか)

綴じ方は「早く整理を終わらせる」目的か「正確に探せる」目的かで選びます。

  • 封筒に入れる:分類ごとに封筒を用意し、レシートを入れるだけ。もっとも早いが一覧性は低く、後から特定の1件を探すのに手間がかかる。取引量が少ない事業者向け
  • クリアファイル+ポケット/リングファイル:1枚1ポケットで綴じる。透明で日付順に並べられるので税務調査時の取り出しがスムーズ。ポケット式は追加で領収書が来ても差し込みやすい
  • A4用紙に貼付:レシート数枚をA4に糊付けし、余白に用途・金額を記入。もっとも見やすく税務調査対応も強いが、貼付作業に時間がかかる

感熱紙のレシートは経年で文字が消えるため、感熱紙で受け取った場合はコピーを取るか、後述するスキャナ保存で電子化しておくと安心です。

スキャナ保存で紙を原本破棄するための条件

電子帳簿保存法4条3項の「スキャナ保存制度」を使えば、紙で受け取った領収書をスキャンして電子化し、原本の紙を破棄することが認められます。ただし、以下の要件を満たす必要があります(電子帳簿保存法施行規則2条6項、国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」)。

  • 解像度:200dpi以上
  • 階調:赤・緑・青の各色256階調以上のカラー画像による読み取り(重要書類が対象。契約書・領収書は重要書類に該当)
  • タイムスタンプ付与:受領後、最長約2か月+概ね7営業日以内に総務大臣認定の時刻認証業務(認定タイムスタンプ)を付与(訂正・削除の履歴が残るシステムでの保存で代替可)
  • 入力期間の遵守:早期入力方式(概ね7営業日以内)または業務処理サイクル方式(最長約2か月+概ね7営業日以内)
  • 検索要件:「取引年月日」「取引金額」「取引先」で検索できること

令和3年度税制改正で「解像度・階調・大きさに関する情報の保存」要件は廃止されているため、上記4要件(+検索)を満たせば足ります。スマートフォンのカメラアプリでも200dpi・カラーの要件は現実的にクリアできる水準です。

これらを満たしたスキャン画像を保存すれば、原本の紙は破棄できます。要件を1つでも欠くと原本を残す必要があるため、事務処理サイクルとして固めるか、対応システムで運用するのが現実的です。

スキャナ保存の要件をさらに掘り下げて確認したい方は、以下の記事で解像度・タイムスタンプ・入力期間の各要件と、事務処理規程や訂正削除防止機能でタイムスタンプを不要にできる条件を、条・号レベルで整理しています。

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電子で受け取った領収書の保存方法【メール添付/DL/画面表示の3パターン別】

電子帳簿保存法は「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データの保存」の3区分で構成されていますが、本セクションで扱うのは電子取引データの保存(受領した電子データそのもの)です。電子帳簿等保存は仕訳帳・総勘定元帳などの帳簿側の話題で、本記事の範囲外です。

まず大原則:「印刷して紙保存」は2024年1月から不可

3パターン共通の大原則として、電子で受け取った領収書を印刷して紙で保存することは2024年1月から認められません。電子帳簿保存法7条により、電子取引データは電子データのまま保存する義務があります。

2022年1月からの制度でしたが、宥恕措置により2023年12月までは紙印刷保存も認められていました。この宥恕措置は2024年1月に終了し、以降は電子データそのものを保存することが原則になっています。

ただし所轄税務署長が「相当の理由がある」と認める場合の猶予措置は残っており、電子データの保存と、税務調査時にダウンロード・出力書面提示に応じられる体制があれば違反にはなりません(国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」問1・問41・問61)。要点は「電子データそのものは原則として電子で保存する(廃棄不可)」で、紙印刷は電子保存を代替できません。

「PDFで届いた領収書をわざわざ印刷してファイリングしている」運用があれば、まず紙保存を止めて電子保存に切り替えるところから始まります。

メール添付PDF(保存場所・ファイル名ルール・タイムスタンプ要否)

取引先からメールに添付されて届いたPDFの領収書は、以下の要領で保存します。

  • 保存すべきファイル形式:受領したPDFファイルそのもの(変換せず原本のまま)
  • 保存場所:社内ファイルサーバ、クラウドストレージ(Google Drive・OneDrive・Dropbox・Box等の一般的なサービスも可)、電帳法対応システムのいずれか。バックアップと事業継続を踏まえて選ぶ。一般的なクラウドストレージでも、後述の「真実性」「可視性」の要件を満たせば法令上問題ありません
  • ファイル名ルール例:「YYYYMMDD_取引先_金額.pdf」(例: 20260315_ABC商事_33000.pdf)。検索要件(日付・金額・取引先)を満たしやすくなる
  • タイムスタンプ要否:真実性の確保のいずれかを満たせばよいので、事務処理規程を整備すればタイムスタンプは不要。訂正削除履歴が残るシステムを使う場合も不要

Web からダウンロードするPDF(Amazonビジネス・Uber Eats・SaaS請求書など)

Amazonビジネス、Uber Eats、SaaSサービスの管理画面など、Web上のアカウントから領収書PDFをダウンロードして受け取るケースも電子取引データに該当します。取引の都度、管理画面から領収書PDFをダウンロードし、メール添付PDFと同じルールで保存します。

実務ポイントは、月末・月次締めのタイミングでまとめてダウンロードする運用を固定することです。日々ダウンロードする運用は取りこぼしが起きやすいため、月次のチェックリストに「サービス名・URL・DL手順」を組み込み、抜けを防ぎます。

画面表示のみで交付されるケース(Amazon購入明細等)

Amazon(個人向け)の購入明細のように、独立した領収書PDFが用意されておらず、注文履歴の画面表示のみで領収書相当のケースがあります。この場合は、次のいずれかの方法で電子データ化して保存します。

  • ブラウザの「印刷」から「PDFに保存」でPDF化して保存(紙印刷ではなくPDF出力である点が重要)
  • スクリーンショットで画像として保存し、日付・金額・取引先を検索できる形(ファイル名または索引)で保管
  • ページを画像化して電子取引データとして保管する方式が国税庁の一問一答で認められている(国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」問4等)

いずれの方法でも、真実性・可視性の要件は満たす必要があります。ファイル名ルールで検索要件を満たすか、対応システムに取り込んで検索可能な状態にします。

電子保存の要件を「真実性の確保」「可視性の確保」の2グループで満たす

電子取引データの保存には、電子帳簿保存法施行規則4条1項に基づき「真実性の確保」と「可視性の確保」の2グループの要件を満たす必要があります。国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」問18・問19が要件表の根拠です。それぞれ選択肢を全て列挙するので、自社で現実的に運用できる組み合わせを1つ選べば要件は満たせます。

真実性の確保(3択のいずれか)

電子データが改ざんされていないことを担保するため、以下の3つの選択肢のうちいずれか1つを満たします。

  • ①タイムスタンプの付与:受領後、最長約2か月+概ね7営業日以内に、総務大臣認定のタイムスタンプ事業者による認定タイムスタンプを付与する
  • ②訂正・削除の履歴が残るシステムでの保存:訂正・削除の事実と内容を記録・確認できる、または訂正・削除ができないクラウドサービス等で保存する
  • ③事務処理規程の備付けと運用:改ざん防止に関する事務処理規程を定めて備え付け、その規程どおりに運用する

③の事務処理規程は、国税庁が「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(法人・個人事業者向け)」の サンプル規程(Word 形式)を公表しています。専用システムを導入しない小規模事業者は③が現実的な選択肢で、サンプル規程に自社名と運用ルールを追記して備え付け、ファイル名ルールに沿って運用すれば要件を満たせます。

可視性の確保(検索・見読・システム関係書類)

保存された電子データを税務調査などで速やかに確認できるようにするため、以下の3要件をすべて満たします。

  • 検索機能の確保:「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目で検索できること。日付や金額の範囲指定、2以上の項目を組み合わせた検索も原則必要
  • ディスプレイ・プリンタでの見読可能性:保存された電子データを、ディスプレイやプリンタで整然かつ明瞭な状態で速やかに出力できること
  • システム関係書類の備付け:保存に使用するシステムの概要書や操作マニュアルを備え付けること(自社開発システムのみ必須、市販システム利用時はメーカー提供のマニュアルで足りる)

検索要件の緩和措置

検索機能の確保については、以下のいずれかに該当する場合は緩和措置があります。

  • 基準期間(2期前)の売上高が5,000万円以下の事業者は、「取引年月日」「取引金額」「取引先」で検索できれば、範囲指定や複合条件は不要
  • 税務調査時にダウンロード要求に即応できる場合は、検索機能自体の確保が不要になる(データを税務調査官に提供できれば、検索は税務調査官側で行う想定)

小規模事業者はこの緩和措置により、複雑な検索システムを構築せずファイル名ルールと事務処理規程だけで要件を満たすことも可能です(国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」問41ほか)。

インボイス制度対応:登録番号(T+13桁)が入っていない領収書はどう扱うか

2023年10月に開始したインボイス制度により、仕入税額控除を受けるには、原則として適格請求書発行事業者から交付された適格請求書(インボイス)の保存が必要になりました(消費税法30条7項・施行令50条1項)。領収書もインボイスとして扱えますが、その場合は登録番号(T+13桁)を含む必要な記載事項がすべて揃っている必要があります。

適格請求書として認められる領収書の記載事項

適格請求書(領収書としての適格請求書を含む)に必要な記載事項は、消費税法57条の4第1項および国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」で以下の通り定められています(消費税法30条7項・施行令50条1項は仕入税額控除を受けるための保存要件を、57条の4第1項は適格請求書の記載事項本体を規定します)。

  • ①発行者(適格請求書発行事業者)の氏名または名称および登録番号(T+13桁)
  • ②取引年月日
  • ③取引内容(軽減税率対象品目である旨を含む)
  • ④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)および適用税率
  • ⑤税率ごとに区分した消費税額等
  • ⑥書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

これらが揃っていれば、領収書もインボイスとして機能し、仕入税額控除の対象になります。1つでも欠けている場合は、原則として仕入税額控除の適用は受けられません。

登録番号が無い領収書(免税事業者からの領収書)の扱いと経過措置

免税事業者や、適格請求書発行事業者に登録していない課税事業者から受け取った領収書には、登録番号が入りません。これらは原則として仕入税額控除の対象外ですが、改正消費税法附則により経過措置が設けられています。

  • 2023年10月1日〜2026年9月30日:仕入税額相当額の80%を控除可能
  • 2026年10月1日〜2029年9月30日:仕入税額相当額の50%を控除可能
  • 2029年10月1日以降:経過措置終了。免税事業者からの仕入は全額控除不可

経過措置の適用を受けるには、区分記載請求書等(登録番号は不要ですが、8%対象を明示するなど従来の区分記載請求書の要件を満たすもの)の保存と、帳簿への一定事項の記載(経過措置の適用を受ける旨など)が必要です。実務では免税事業者からの領収書と適格請求書を区別して集計する仕組みを整備します。

簡易インボイス(不特定多数向け・宛名なしでも可)が使える業種と条件

小売業・飲食業・タクシー業など不特定多数の者に対して販売する事業者は、「適格簡易請求書(簡易インボイス)」を交付できます(消費税法57条の4第2項、消費税法施行令70条の11、国税庁インボイス制度に関するQ&A 問24・問58)。簡易インボイスは以下の点で通常のインボイスと違います。

  • 宛名(書類の交付を受ける事業者の氏名等)の記載が不要(「上様」または宛名なしでも可)
  • 「適用税率」または「税率ごとに区分した消費税額等」のいずれか一方の記載で足りる

スーパー・コンビニのレシート、飲食店のレジ発行レシート、タクシーの領収書などは簡易インボイスに該当し、宛名が入っていなくても仕入税額控除の対象になります(登録番号・取引年月日・取引内容・税率別金額等の記載は必要)。一方で、事業者向け取引で受け取る領収書は原則として通常のインボイス(宛名記載必須)が必要です。

税務調査で否認されないためのチェックポイント

「うちの運用これで大丈夫か」を照合するチェックリストとして、実務で問題になりやすい失敗パターンを整理します。紛失時対応・宛名「上様」の可否・レシートと領収書の証拠能力・カード明細の扱いを1つずつ確認してください。

領収書を紛失したときの対応(再発行依頼・出金伝票・振込明細の代替可否)

領収書を紛失した場合、まず取引先に再発行を依頼するのが原則です。ただし取引先の判断で再発行できないケース(レシートは原則再発行不可、税務署等発行の書類も再発行不可)もあります。再発行できない場合の代替として、以下の方法があります。

  • 出金伝票:日付・支払先・金額・内容を記録した社内伝票を作成し、経費計上する。ただし証拠能力は本来の領収書より弱く、税務調査では追加の裏付け(メール履歴・振込明細・取引先証言など)を求められることがある
  • クレジットカード利用明細・銀行の振込明細:カード会社・銀行が発行する明細は、金額と支払先を客観的に示す一次データとして代替に使える。ただしインボイス制度上は、これだけで適格請求書要件を満たすわけではないため、経過措置や少額特例の適用を検討する
  • 少額特例(税込1万円未満・一定規模以下の事業者向け):基準期間の課税売上高が5,000万円以下(または特定期間の課税売上高が5千万円以下)の事業者は、2029年9月30日までの時限措置として、税込1万円未満の課税仕入は帳簿の保存のみで仕入税額控除が可能(平成28年改正消費税法附則53条の2、消費税法施行令24条の2)。ただしこれは「本来からインボイス保存が不要」な特例で、紛失時の代替措置ではない点に注意

紛失時に慌てないよう、日々のスキャナ保存や電子取引データの二重保管を運用として組み込んでおくと、紛失自体を減らせます。

実際に出金伝票で経費計上する場面では、日付・支払先・金額・内容の書き方や勘定科目の選び方、インボイス制度下での注意点など、迷いやすいポイントがいくつかあります。具体的な記入例を確認したい方は、以下の記事で交通費精算のケースを含めて解説しています。

宛名「上様」の領収書は使えるか(業種別の扱い)

宛名が「上様」または宛名空欄の領収書は、簡易インボイスに該当する業種(小売業・飲食業・写真業・旅行業・タクシー業・駐車場業・その他不特定多数向け)から受け取ったものであれば、仕入税額控除の対象になります(消費税法57条の4第2項)。一方、事業者向け取引で受け取る通常の領収書は宛名記載が必須で、「上様」では原則としてインボイスの記載事項を満たさず、経過措置または少額特例に頼ることになります。

実務では、事業者向け取引で領収書を受け取る際は必ず自社名を宛名に記載してもらう運用を徹底し、「上様」で受け取ったものは業種を確認して簡易インボイス要件を満たすかを判別します。

レシートと領収書、どちらをもらうべきか(税務調査における証拠能力の比較)

「レシートより手書きの領収書のほうが正式」という認識は必ずしも正しくありません。税務調査における証拠能力の観点では、以下の傾向があります。

  • レシート:品目・数量・金額が自動印字されており、事後の書き換えが困難。取引内容の証拠能力は高い
  • 手書きの領収書:宛名や但し書きの記載が柔軟だが、内容の詳細(品目・数量)は書かれないことが多く、後から追記された疑いが持たれることもある

簡易インボイスに該当する業種であれば、レシートのままでもインボイス要件(登録番号を含む)を満たしていれば仕入税額控除の対象です。飲食店で「レシート」と「手書き領収書」の両方を出してくれる場合、印字明細のあるレシートを優先し、追加で宛名入り領収書が必要な場合のみ手書き領収書を求めるのが現実的です。

クレジットカード明細だけで経費計上できるか(信用取引の扱い)

クレジットカード会社が発行する利用明細は、支払先と金額を示す証拠にはなりますが、インボイス制度上は原則として適格請求書には該当しません(発行者がカード会社であり、実際の販売者ではないため)。仕入税額控除を受けるには、原則として取引先から発行された領収書やレシート(インボイス要件を満たすもの)が別途必要です。

ただし、経費計上そのもの(法人税・所得税上の損金算入)は、カード明細と実際の使途を記録した資料(社内経費申請書等)で対応可能な場面もあります。消費税の仕入税額控除とは分けて判断する必要があるので、実務では両方を保管しておく運用が安全です。

手作業を続けるか、電帳法対応の経費精算システムを導入するかの判断ポイント

ここまで見てきた通り、領収書の保存を電子帳簿保存法・インボイス制度に完全準拠させるには、複数の要件を日々の運用に落とし込む必要があります。手作業で全要件を満たし続けることは可能ですが、以下に挙げる運用項目を継続的に維持できるかが判断の分かれ目です。

手作業で電帳法要件を満たし続けるための運用項目チェックリスト

  • 事務処理規程の作成・備付け・改訂運用(真実性の3択のうち③を選ぶ場合)
  • 電子取引データの検索要件を満たすためのファイル名ルール徹底(YYYYMMDD_取引先_金額)
  • スキャナ保存の入力期間管理(受領後、最長約2か月+概ね7営業日以内)
  • Web管理画面からの領収書DLの月次まとめ運用
  • インボイス登録番号のチェック(受領時に登録番号の有無を確認、免税事業者からの領収書は経過措置対応で別集計)
  • タイムスタンプの付与(真実性の3択のうち①を選ぶ場合)
  • 紙で受け取った領収書のスキャナ保存+原本破棄の判定と実行
  • 従業員の立替経費申請時の領収書チェックとルール周知

これらを1人〜数人の経理担当が手作業で回すには、月次で相応の工数がかかります。取引量・従業員規模・仕入先の免税事業者比率で見積もり、対応する経理リソースを確保できるかを判断する材料にしてください。

クラウド経費精算システム・請求書受領システムで自動化できる範囲と残る手作業

電帳法対応のクラウド経費精算システム・請求書受領システムを導入すると、以下の項目は自動化・省力化できます。

  • 電子取引データの検索要件(日付・金額・取引先での検索)は、システムが自動でメタデータ化して対応
  • タイムスタンプの自動付与、または訂正削除履歴の自動記録(真実性の①または②)
  • スキャナ保存の入力期間管理・解像度・カラー要件の自動チェック
  • インボイス登録番号のOCR読み取りと、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトへの自動照会
  • 免税事業者からの領収書と適格請求書の自動判別・集計

一方で、システム導入後も残る手作業として、事務処理規程の運用(規程を選ばない場合は不要)、従業員の立替経費申請、現金精算、税理士との月次締めのやり取りなどがあります。「システムでどこまで減らせるか」を、自社の業務量と照らして具体化してから比較検討に進むと、投資判断がぶれません。

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まとめ

領収書の保存方法は、紙で受け取ったものは分類・綴じ方を決めて整理保存、あるいはスキャナ保存で電子化して紙を破棄。電子で受け取ったものは受領したデータ形式のまま電子保存(2024年1月以降、印刷して紙保存は不可)。これが基本です。

保存期間は法人7年(欠損金あり10年)、個人事業主青色7年・白色5年(消費税法上は白色も7年)。電子保存の要件は「真実性の確保(3択)」と「可視性の確保(3要件)」の2グループで満たします。インボイス制度では登録番号(T+13桁)の記載を確認し、無い場合は経過措置(2026年9月末まで80%控除、2029年9月末まで50%控除)で処理します。

手作業で全要件を満たし続けるか、電帳法対応のクラウド経費精算・請求書受領システムに寄せるかは、自社の取引量・経理リソース・仕入先構成を踏まえて判断してください。個別の税務判断が必要な場面は、必ず顧問税理士に確認することを推奨します。

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よくある質問(FAQ)

Q. 領収書とレシートで、保存方法や仕入税額控除の扱いに違いはありますか?

A. 領収書とレシートは、保存期間・保存方法・仕入税額控除の可否のいずれも基本的に同じ扱いです。消費税法上の「請求書等」の範囲にはレシートも含まれ、インボイス制度でも登録番号などの記載事項が揃っていれば適格請求書または適格簡易請求書として仕入税額控除の対象になります。

むしろレシートは品目・数量・金額が自動印字されており事後の書き換えが困難なため、税務調査における証拠能力の観点ではレシートのほうが高いとされる場面もあります。飲食店等でレシートと手書き領収書の両方を出してもらえる場合、明細付きのレシートを優先し、宛名入りが別途必要な場合のみ手書き領収書を求める運用が現実的です。

Q. 領収書の保存期間は法人と個人事業主でそれぞれ何年ですか?

A. 領収書の保存期間は、法人は原則7年(青色欠損金または災害損失金額を繰り越す場合は10年)、個人事業主は青色申告7年・白色申告5年(ただし消費税の課税事業者は白色でも7年)です。

起算日は書類の作成日ではなく、法定申告期限の翌日から数えます(法人税法施行規則59条2項、所得税法施行規則63条2項)。加えて、株式会社などの会社形態を採っている場合は会社法432条2項により会計帳簿および事業に関する重要な資料を10年間保存する義務が別途あるため、実務では最長10年を目安に管理する会社が多くあります。

Q. 電子で受け取った領収書を印刷して紙で保存してもよいですか?宥恕措置は終了したと聞きました

A. 電子で受け取った領収書を印刷して紙で保存することは、2024年1月から原則として認められません。2023年12月まで有効だった宥恕措置は終了しており、電子帳簿保存法7条により電子取引データは電子データのまま保存する義務があります。

ただし「相当の理由がある場合の猶予措置」は残っており、税務署長が相当の理由があると認める場合は、税務調査時に電子データと出力書面のダウンロード提示に応じられれば違反にはなりません。とはいえ猶予措置は「電子データそのものを廃棄してよい」という意味ではなく、電子データの適切な保存体制の整備は継続して進める必要があります(国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」問1・問41・問61)。

Q. 電子取引データの保存にタイムスタンプは必須ですか?

A. タイムスタンプの付与は必須ではなく、電子帳簿保存法の「真実性の確保」を満たす3つの選択肢のうちの1つに過ぎません。①タイムスタンプの付与、②訂正・削除の履歴が残る(または訂正・削除ができない)システムでの保存、③改ざん防止に関する事務処理規程の備付けと運用——のいずれか1つを選んで満たせば要件をクリアできます。

専用システムを導入しない小規模事業者は、国税庁が公表しているサンプル規程を活用した③の事務処理規程が現実的な選択肢になります。ファイル名ルール(YYYYMMDD_取引先_金額)と運用ルールを規程として文書化することで、タイムスタンプなしでも要件を満たせます。

Q. インボイスの登録番号(T+13桁)が入っていない領収書は仕入税額控除の対象になりますか?

A. 登録番号が入っていない領収書は原則として仕入税額控除の対象外ですが、経過措置により2026年9月末までは仕入税額相当額の80%、2029年9月末までは50%を控除できます。2029年10月以降は経過措置が終了し、免税事業者からの仕入は全額控除不可となります(改正消費税法附則)。

経過措置の適用を受けるには、区分記載請求書等(登録番号は不要ですが、8%対象を明示するなど従来の区分記載請求書の要件を満たすもの)の保存と、帳簿に「経過措置の適用を受ける仕入である旨」を記載することが必要です。免税事業者からの領収書と適格請求書を区別して集計する仕組みを整えておくと、決算時に慌てずに済みます。

Q. 宛名が「上様」や空欄の領収書は仕入税額控除に使えますか?

A. 簡易インボイスに該当する業種(小売業・飲食業・タクシー業など不特定多数を相手にする事業)から受け取った領収書は、宛名が「上様」または空欄でも仕入税額控除の対象になります(消費税法57条の4第2項)。一方、事業者向け取引で受け取る通常の領収書は宛名記載が必須で、「上様」ではインボイスの記載事項を満たさず、経過措置または少額特例に頼ることになります。

実務では、事業者向け取引で領収書を受け取る際は必ず自社名を宛名に記載してもらう運用を徹底し、「上様」で受け取ったものは業種を確認して簡易インボイス要件を満たすかを判別します。

Q. 領収書を紛失した場合はどうすればよいですか?

A. まず取引先に再発行を依頼するのが原則で、再発行できない場合は出金伝票・クレジットカード利用明細・銀行の振込明細を代替証拠として保管します。ただし出金伝票は本来の領収書より証拠能力が弱く、税務調査ではメール履歴などの追加の裏付けを求められることがあります。

クレジットカード会社が発行する利用明細は、発行者がカード会社であり実際の販売者ではないため、インボイス制度上は原則として適格請求書に該当しません。仕入税額控除では経過措置や少額特例の適用可否を別途検討する必要があります。日々のスキャナ保存や電子取引データの二重保管を運用に組み込んでおくと、紛失自体を減らせます。

Q. 紙で受け取った領収書をスキャンして電子化すれば、紙の原本を捨てても大丈夫ですか?

A. 電子帳簿保存法4条3項の「スキャナ保存制度」の要件を満たせば、スキャン後に紙原本を破棄できます。主な要件は、解像度200dpi以上・カラー画像での読み取り・受領後最長約2か月+概ね7営業日以内のタイムスタンプ付与(訂正削除履歴機能で代替可)・「取引年月日/取引金額/取引先」での検索機能——です(電子帳簿保存法施行規則2条6項)。

要件を1つでも欠くと紙原本を残す必要があるため、事務処理サイクルとして固めるか、対応システムで運用するのが現実的です。感熱紙のレシートは経年で文字が消える性質があるため、感熱紙で受け取ったものはスキャナ保存で早めに電子化しておくと安心です。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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