法人で銀行口座を開設するときや、会社を設立して定款認証を受けるとき、取引先から取引時の確認を求められたときに、「実質的支配者(となるべき者)申告書」の提出を求められることがあります。個人株主だけの会社なら記入は難しくありませんが、株主に別の会社(親会社や持株会社)が入っていると、申告書に「誰の名前を書けばよいのか」で手が止まりがちです。
実質的支配者は、犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)とその施行規則で判定基準が細かく定められています。判定は「議決権を何パーセント持つ人か」という線引きから始まり、株主に法人が入る場合は、その会社を通じて間接的に保有する議決権も合算して見ます。
この記事では、株式会社の実質的支配者を段階的に判定する方法から、株主が法人のときの間接保有の合算、株式会社以外の法人の基準、申告が不要になる例外、口座開設・定款認証・実質的支配者リスト制度という場面ごとの手続きまでを、条文の根拠とあわせて整理します。特定した後に必要となる継続的な確認まで見ていきます。
目次
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株式会社の実質的支配者は誰か|議決権50%超→25%超→支配的影響力→代表取締役の段階判定
はじめに、株主が個人だけの株式会社を例に、実質的支配者を判定する基準そのものを確認します。
そもそも実質的支配者とは(必ず個人)
実質的支配者とは、法人の事業経営を実質的に支配することが可能な関係にある個人(自然人)を指します。犯収法第4条第1項第4号が「その事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にあるもの」と定め、その具体的な範囲を同法施行規則第11条第2項が定めています。
ここで押さえておきたいのは、実質的支配者は必ず個人(自然人)になるという点です。株主が会社であっても、申告書に会社名を書いて終わりにはならず、その会社の先にいる個人までさかのぼって特定します。
出典・参考資料(2件)
- 出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律 第4条第1項第4号|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000022)
- 出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則 第11条第2項|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/420M60000F5A001)
上から順に見る4段階の判定
株式会社の実質的支配者は、次の順番で上から当てはめて判定します。前の段階に該当する個人がいれば、そこで判定は確定し、次の段階には進みません。
- 議決権の50%を超える議決権を直接または間接に持つ個人がいれば、その個人
- ①がいない場合、議決権の25%を超える議決権を直接または間接に持つ個人(複数いることもあります)
- ①②がいない場合、出資・融資・取引その他の関係を通じて事業活動に支配的な影響力を持つ個人
- ①〜③のいずれもいない場合、その会社を代表して業務を執行する個人(代表取締役など)

「50%超がいればその人だけ」「いなければ25%超の人」という順序は、施行規則第11条第2項第1号の条文構造そのものに沿っています。日本公証人連合会も、この段階判定を次のように説明しています。
実質的支配者とは、法人の事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にある個人をいい、具体的には、「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則11条2項」で定義されています。(中略)株式会社では、①株式の50%を超える株式を保有する個人、そのような者がいない場合には、②25%を超える株式を保有する個人、そのような者もいない場合には、③事業活動に支配的な影響力を有する個人、そのような者もいない場合には、④代表取締役が該当することとなります。
出典:Q4. 実質的支配者とは、どのような者を指すのですか。|日本公証人連合会(https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow09_4/9_4_q108)
判定の入口になる25%超・50%超という割合は、施行規則がそれぞれ「四分の一を超える」「二分の一を超える」と定めた数値です。ちょうど25%・50%では超えていないため該当せず、超えるかどうかで見る点に注意します。引用では株式の割合と表現されていますが、正確には株式数ではなく議決権の割合で判定します。種類株式などで株式数と議決権数が一致しない会社では、議決権の割合で見ます。
③の「事業活動に支配的な影響力を持つ個人」は、議決権の割合では①②の基準に届かないものの、実質的に会社の経営を左右できる立場にある個人を指します。①②の議決権基準で該当者が定まる場合は、この段階には進みません。
施行規則は「出資、融資、取引その他の関係」を通じた影響力と定めており、たとえば会社に多額の融資を行っている大口の債権者や、主要な取引を通じて重要な意思決定を実質的に左右できる個人などが想定されます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則 第11条第2項|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/420M60000F5A001)
株主に法人(親会社・持株会社)が入る場合の間接保有の考え方と合算
ここからは、多くの担当者がつまずく「株主に会社が入っている場合」を見ていきます。この場合は、株主である会社の先にいる個人を、間接保有という考え方でたどります。
間接保有とは(支配法人を通じた保有)
間接保有とは、ある個人が議決権の50%超を持つ会社(この会社を「支配法人」といいます)を通じて、判定対象の会社の議決権を間接的に持っている状態を指します。施行規則第11条第3項が、直接持つ議決権に加えて、この支配法人が持つ議決権も合算して割合を判定すると定めています。
間接保有とは、「自身が議決権の50%超を保有する法人」を通じて、間接的に議決権を保有していることを指します。
出典:実質的支配者について|ドコモSMTBネット銀行(旧・住信SBIネット銀行)(https://www.netbk.co.jp/contents/hojin/flow/holder.html)
さらに、支配法人が別の会社の議決権を50%超持っていれば、その会社(孫会社にあたる会社)も支配法人とみなして連鎖的にさかのぼります。株主の株主が会社という多層構造でも、50%超でつながる限り奥まで追っていく点が特徴です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則 第11条第3項|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/420M60000F5A001)
数値で見る合算の具体例
合算のいちばんの注意点は、支配法人を通じて持つ議決権を按分せず、支配法人が持つ割合をそのまま足す点です。具体例で見てみます。
- 判定対象は「C社」。ある個人Aさんは、C社の議決権を直接20%持っています。
- Aさんは「B社」の議決権を60%持っています。50%を超えているため、B社はAさんの支配法人です。
- そのB社は、C社の議決権を20%持っています。
このとき、B社経由の20%は「60%×20%=12%」と按分するのではなく、20%をそのまま合算します。Aさんの保有割合は「直接20%+B社経由20%=合計40%」となり、25%を超えるため、AさんがC社の実質的支配者に該当します。
もしAさんの直接分だけ(20%)で見れば25%以下ですが、支配法人B社の分を足すと基準を超えます。株主に会社が入っている場合は、この合算を忘れると実質的支配者を取り違えてしまいます。まずは株主名簿で議決権割合を確認し、株主のなかに会社があれば、その会社の株主構成までさかのぼって計算するのが確実です。
株主が親会社(持株会社)だけというケースも見ておきます。オーナー個人のXさんが親会社B社の議決権を100%持ち、そのB社が自社Cの議決権を80%持っているとします。B社はXさんの支配法人なので、B社の持つ80%はそのままXさんの保有分になります。Xさんは自社Cの株を1株も直接持っていなくても、間接的に80%を保有することになり、50%を超えるため、Xさんが唯一の実質的支配者に該当します。

なお、ここで挙げた数値はしくみを説明するための例です。実際の判定では、自社の株主名簿と各社の議決権割合をもとに、同じ考え方で合算して確認します。
出典・参考資料(1件)
- 出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則 第11条第3項|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/420M60000F5A001)
株式会社以外の法人(合同会社・一般社団/財団法人・医療法人など)の判定基準
ここまでは株式会社を前提にしてきましたが、法人の種類によって判定の入口が変わります。株式会社以外の法人では、議決権ではなく別の割合で見るため、混同しないよう整理しておきます。
株式会社以外は「収益・財産の分配割合」で見る
株式会社・有限会社・投資法人・特定目的会社のように、議決権の多数決で経営が決まる法人を「資本多数決法人」と呼びます。合同会社・合名会社・合資会社・一般社団法人・一般財団法人・医療法人・学校法人・社会福祉法人などは、この資本多数決法人にあたりません。
資本多数決法人以外の法人では、議決権の割合ではなく、収益の配当または財産の分配を受ける権利の割合が25%を超える個人がいるかで、まず判定します。該当する個人がいなければ、事業活動に支配的な影響力を持つ個人、それもいなければ代表者・業務執行者、という順で見ていく流れは株式会社と共通です。
最終段階の「代表者・業務執行者」が具体的に誰を指すかは、法人の種類によって変わります。合同会社・合名会社・合資会社では業務を執行する社員(定款で代表社員を定めている場合はその代表社員)、一般社団法人・一般財団法人では代表理事、医療法人では理事長というように、その法人を代表して業務を執行する個人が該当します。いずれの類型でも、実質的支配者は最終的に個人(自然人)になる点は株式会社と同じです。
株式会社との違いを対比で確認する
両者の判定基準を並べると、入口の基準が「議決権」か「収益・財産の分配」かで分かれ、それ以降の段階は同じ流れであることがわかります。
| 判定基準 | 資本多数決法人 | 資本多数決法人以外 |
|---|---|---|
| 主な法人 | 株式会社、有限会社、投資法人、特定目的会社 | 合同会社、合名・合資会社、一般社団/財団法人、医療法人、学校法人、社会福祉法人など |
| 第1段階の基準 | 議決権の25%超(50%超の個人がいればその個人のみ)を直接・間接に持つ個人 | 収益の配当・財産の分配を受ける権利の25%超(50%超の個人がいればその個人のみ)を持つ個人 |
| 該当者がいない場合 | 支配的な影響力を持つ個人 → いなければ代表取締役など | 支配的な影響力を持つ個人 → いなければ代表者・業務執行者 |
出典・参考資料(1件)
- 出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則 第11条第2項|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/420M60000F5A001)
申告が不要・自然人とみなされる例外(国・地方公共団体・上場会社等及びその子会社など)
株主に会社が入っていても、その会社が一定の類型にあたる場合は、先にいる個人までさかのぼらずに判定が止まります。この例外を見落とすと、本来は不要な調査をしたり、逆に判定を誤ったりする原因になります。
実質的支配者の判定では、国・地方公共団体・人格のない社団または財団・上場会社等及びその子会社が「自然人とみなす」対象とされています。これは施行規則第11条第4項を軸に、国等の範囲を定める犯収法第4条第5項や、上場会社等を定める同法施行令第14条を束ねたものです。これらが株主である場合は、その株主で判定が止まり、さらに奥の個人をたどる必要はありません。
国等(令第十四条第四号に掲げるもの及び第十八条第六号から第十号までに掲げるものを除く。)及びその子会社(会社法第二条第三号に規定する子会社をいう。)は、第二項の規定の適用については、自然人とみなす。
出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則 第11条第4項|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/420M60000F5A001)
たとえば自社の株主が上場企業やその子会社の場合、その上場企業などが判定の区切りになります。この場合は実質的支配者にあたる個人がいないため、申告書では、みなし自然人となる上場会社等の名称などを記載する扱いになります。様式によっては「上場企業等に該当する」旨のチェック欄が設けられていることもあります。実際の記載方法は、取引先の金融機関や公証役場が用意する様式に従って確認します。
出典・参考資料(3件)
- 出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律 第4条第5項|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000022)
- 出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令 第14条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/420CO0000000020)
- 出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則 第11条第4項|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/420M60000F5A001)
場面別の確認・申告手続き|口座開設・定款認証・実質的支配者リスト(BOリスト)制度
実質的支配者を特定したら、実際にどの場面で・何を・どこに申告するのかを確認します。場面によって根拠となる制度と提出物が異なるため、まず全体を一覧で見てから、それぞれの詳細に進みます。
| 場面別の手続き | 金融機関の口座開設・取引時確認 | 会社設立時の定款認証 | 実質的支配者リスト(BOリスト)制度 |
|---|---|---|---|
| 根拠となる制度 | 犯収法(取引時確認) | 公証人法施行規則第13条の4 | 令和3年法務省告示第187号 |
| 申告・提出するもの | 実質的支配者の氏名・住居・生年月日などの申告(株主名簿等で割合を確認) | 「実質的支配者となるべき者」の申告書(氏名・住居・生年月日、暴力団員等該当の有無) | 実質的支配者リスト+申出書+添付書面 |
| 提出先 | 取引する金融機関 | 公証役場(公証人) | 本店所在地を管轄する法務局 |
| 位置づけ | 取引開始時に必須 | 株式会社・一般社団/財団法人の設立時に必須 | 任意(株式会社・特例有限会社のみ・無料) |
金融機関の口座開設・取引時確認
法人が金融機関で口座を開設する際は、犯収法の取引時確認として実質的支配者の申告が求められます。申告する内容は、該当する個人の氏名・住居・生年月日などです。株主に会社が入っている場合は、株主名簿や出資関係の資料で議決権割合を確認し、間接保有の合算まで含めて誰が該当するかを判断します。
公証役場の定款認証(実質的支配者となるべき者の申告書)
株式会社や一般社団・財団法人を設立するときは、公証人による定款認証の場面で申告が必要です。公証人法施行規則第13条の4により、公証人は嘱託人に、法人の成立時に実質的支配者となるべき者の氏名・住居・生年月日と、その者が暴力団員等に該当するかどうかを申告させることになっています。ここでいう「実質的支配者となるべき者」の範囲は、犯収法第4条第1項第4号の実質的支配者と同じ基準で判断します。
実質的支配者リスト(BOリスト)制度
実質的支配者リスト制度は、2022年(令和4年)1月31日から始まった制度で、株式会社(特例有限会社を含む)が任意で利用できます。会社が作成した実質的支配者リストを、申出書・添付書面とともに本店所在地を管轄する法務局に提出すると、登記官が内容を確認したうえで保管し、認証文付きの写しを交付します。利用は無料です。
口座開設や取引の場面で実質的支配者を証明する必要があるとき、この認証文付きの写しを使えると手続きがスムーズになります。ただし対象は株式会社(特例有限会社を含む)に限られ、合同会社や一般社団・財団法人などは利用できない点に注意します。
出典・参考資料(3件)
- 出典:実質的支配者リスト制度の創設|法務省(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00116.html)
- 出典:公証人法施行規則 第13条の4|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/324M50000001009)
- 出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律 第4条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000022)
申告書に記載する項目と本人確認の扱い
実質的支配者(となるべき者)の申告書に記載する主な項目は、次のとおりです。様式は金融機関や公証役場によって異なりますが、記載する内容の柱は共通しています。
- 該当する要件(①議決権50%超②25%超③事業活動への支配的な影響力④代表取締役など のどれに当たるか)
- 実質的支配者本人の氏名・住居・生年月日(様式によっては国籍等を含みます)
- 該当する場合の議決権(または収益の配当・財産の分配を受ける権利)の保有割合
- その実質的支配者が暴力団員等に該当するかどうか
本人確認の扱いも押さえておきます。定款認証では、公証人法施行規則第13条の4にもとづき、嘱託人(設立者側)が上記の内容を申告する形をとり、実質的支配者本人の本人確認書類を添付することまでは求められません。
金融機関の口座開設・取引時確認でも、実質的支配者は原則として取引担当者(代表者など)による申告で確認され、実質的支配者本人が窓口で本人確認書類を提示するわけではありません。ただし金融機関は、リスクに応じて株主名簿や出資関係を示す資料などの追加提出を求めることがあります。
出典・参考資料(2件)
- 出典:公証人法施行規則 第13条の4|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/324M50000001009)
- 出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律 第4条第1項|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000022)
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特定した後の継続的な確認をどう仕組み化するか
実質的支配者は、一度特定すれば終わりではありません。株主の異動や資本構成の変更で、実質的支配者が入れ替わることがあるためです。ここからは、主に金融機関などの特定事業者に求められる継続的な確認と、その負担を軽くする手段を見ていきます。自社が特定事業者にあたらない場合でも、株主構成が複雑で自力での追跡や更新が難しいときの選択肢として参考になります。
犯収法第11条は、金融機関などの特定事業者に対し、取引時確認をした事項に係る情報を最新の内容に保つための措置を求めています。自社が特定事業者にあたらない場合でも、取引先や金融機関から、実質的支配者の情報を定期的に更新して提出するよう求められる場面は増えています。株主構成が複雑な会社ほど、その都度の確認や間接保有の再計算は事務負担になりやすい部分です。
金融機関などが求められるこの継続的な確認は、「継続的顧客管理(ODD:Ongoing Due Diligence)」として運用されています。ODDは、顧客のリスクに応じて更新の頻度や深さを変えながら、顧客情報を継続的に見直す枠組みです。どのくらいの頻度で見直すのか、どんな基準でリスクを評価するのかといった具体的な進め方は、次の記事で整理しています。
こうした確認を人手だけで続けると、更新漏れや計算ミスが起きやすくなります。実質的支配者の特定や取引先の反社チェック・継続的なスクリーニングを支援するサービスを使えば、確認の抜け漏れを防ぎながら負担を抑えられます。ここでは、この記事のテーマに沿った代表的なサービスを紹介します。
出典・参考資料(1件)
- 出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律 第11条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000022)
| サービス名 | コンプライアンス・ステーション | RiskAnalyze(リスクアナライズ) |
|---|---|---|
| 得意領域 | 実質的支配者(UBO)情報の取得・資本系列の可視化 | 反社・AMLスクリーニング(反社・PEPs・制裁リスト) |
| 実質的支配者(UBO)の特定 | ◎(UBO即時取得・資本系列図) | ×(反社・AMLの調査が中心) |
| 反社・AMLスクリーニング | ×(UBO取得が中心) | ◎(国内約1,000媒体・海外240超の国と地域) |
| 継続的な確認の仕組み | ●(取引先の変化を日次で通知) | ●(1,000件を約1分で一括再チェック) |
| 主なデータソース | 東京商工リサーチの法人DB(1,000万件超) | 国内約1,000媒体+海外240超の国と地域のリスク情報 |
| 初期費用 | 無料 | 無料 |
| 料金 | 年額500,000円〜(税別) | 月額27,500円〜(年間600検索) |
| 無料トライアル | あり | あり |
| セキュリティ認証 | ISO/IEC 27001:2022 | ISO/IEC 27001:2022 |
| 詳細情報 | 詳細を見る | 公式資料を見る |
※2026年9月時点の各社公式情報にもとづく。最新の料金・機能は各社の公式情報をご確認ください。
1. コンプライアンス・ステーション(コンプライアンス・データラボ株式会社)

コンプライアンス・ステーションは、実質的支配者情報(UBO)のオンライン即時取得を中心にした、マネー・ローンダリング・テロ資金供与対策(AML/CFT)に対応するためのプラットフォームです。東京商工リサーチ(TSR)が保有する1,000万件を超える法人データベースを活用し、実質的支配者・資本系列・役員・取引先といった情報を一元的に取得できます。
株主に会社が入り込んだ資本系列を可視化できるため、この記事で扱った間接保有のたどり方や、奥にいる個人の特定を確認する用途と相性がよいのが特徴です。取引先法人の重要な変化を日次で通知するモニタリング機能もあり、一度特定した実質的支配者や資本系列の変化を継続的に追う用途にも使えます。銀行・信用金庫・生命保険・クレジットカード会社など、犯収法に基づく顧客管理が求められる事業者を主な対象としています。
2. RiskAnalyze(リスクアナライズ)(KYCコンサルティング株式会社)

RiskAnalyzeは、KYCコンサルティング株式会社が提供する、AIを活用したWEBサービス型のコンプライアンス・反社チェックツールです。個人名や企業名を入力すると、反社会的勢力とのつながり・逮捕歴・行政処分・訴訟歴・風評などを調査し、判定済みのレポートを短時間で表示します。
CSVによる一括検索に対応し、調査の証跡はクラウド上に自動保存されるため、取引先のスクリーニングを継続的に回す運用に向いています。CRMや基幹システムと連携するAPIも用意されています。累計導入企業数は1,300社(2025年6月時点)と公表されています。実質的支配者を特定した後、取引先の継続的な確認までを合わせて整えたい場合の選択肢になります。
まとめ
法人の実質的支配者は、株式会社であれば議決権50%超→25%超→支配的な影響力→代表取締役の順に、上から当てはめて判定します。株主に会社が入る場合は、議決権50%超で持つ支配法人の分をそのまま合算し、奥にいる個人までさかのぼって特定するのが要点です。
株式会社以外の法人では収益・財産の分配割合で判定し、国や上場会社等及びその子会社が株主のときは自然人とみなして判定が止まります。特定した内容は、口座開設・定款認証・実質的支配者リスト制度といった場面ごとに申告し、その後も株主の変動にあわせて最新の状態に保つことが求められます。自社の株主名簿と出資関係を手元に置き、必要に応じて確認を仕組み化しておくと、申告のたびに迷わずに済みます。
実質的支配者の確認や、特定した後の継続的なチェックを効率化したい場合は、対応するサービスの資料をまとめて取り寄せ、自社に合うものを比べてみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 実質的支配者とは何ですか?
A. 実質的支配者とは、法人の事業経営を実質的に支配することが可能な関係にある個人(自然人)のことです。犯収法とその施行規則で判定基準が定められており、株式会社の場合は議決権50%超→25%超→事業活動への支配的な影響力→代表取締役の順に、上から当てはめて特定します。法人自体が実質的支配者になることはなく、株主が会社であっても、最終的には個人までさかのぼって判定します。
Q. 実質的支配者が複数いる場合、申告書にはどう記載しますか?
A. 実質的支配者が複数いる場合は、要件を満たす個人を全員記載します。議決権の50%超を持つ個人がいればその1人に確定しますが、そのような個人がおらず25%超を持つ個人が複数いるときは、該当者をもれなく申告します。株主に会社が入り、間接保有を合算した結果として複数の個人が25%超になることもあるため、株主名簿と出資関係をもとに一人ずつ判定します。
Q. 実質的支配者に該当する個人がいない場合は、誰を書けばよいですか?
A. 議決権や分配割合の基準を満たす個人がいない場合は、その法人を代表して業務を執行する個人(株式会社なら代表取締役など)が実質的支配者になります。判定は上から順に見て、50%超・25%超の個人も、事業活動に支配的な影響力を持つ個人もいないときの最終段階として、代表者が該当します。持株が広く分散した会社では、この代表取締役が実質的支配者になるケースが多くなります。
Q. 実質的支配者の欄に法人(会社)名を書いてもよいですか?
A. 実質的支配者の欄には、法人名ではなく個人(自然人)の氏名を記載します。実質的支配者は必ず自然人と定められているため、株主が会社である場合も、その会社を通じた間接保有をたどって、最終的に該当する個人を特定して記載します。株主に会社があるからといって、その会社名を書いて完結させることはできません。
Q. 株主が上場企業の場合、実質的支配者はどう判定しますか?
A. 株主が上場会社等やその子会社である場合は、その上場会社等を自然人とみなすため、先にいる個人までさかのぼる必要はありません。施行規則第11条第4項が、国・地方公共団体・人格のない社団または財団・上場会社等及びその子会社を自然人とみなすと定めているためです。上場企業が議決権の多くを持つ株主であれば、その上場企業が判定の区切りとなり、そこで判定が止まります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則 第11条第4項|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/420M60000F5A001)
Q. 実質的支配者リスト(BOリスト)は必ず作成しなければなりませんか?
A. 実質的支配者リスト(BOリスト)制度の利用は任意で、作成・提出の義務はありません。株式会社(特例有限会社を含む)が希望する場合に、本店所在地を管轄する法務局へ無料で申し出られる制度です。ただし、口座開設や取引の場面で実質的支配者を証明する必要があるときは、登記官の認証文付きの写しがあると手続きが円滑になります。合同会社や一般社団・財団法人は対象外です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:実質的支配者リスト制度の創設|法務省(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00116.html)
Q. 実質的支配者の申告を怠ったり、虚偽の内容で申告するとどうなりますか?
A. 場面によって扱いは異なります。会社設立時の定款認証では、実質的支配者となるべき者の申告が認証手続きの要件になっているため、申告しないと定款認証を受けられず、会社設立が進みません。
金融機関との取引時確認では、実質的支配者を含む取引時確認の事項を偽ることが犯収法で禁じられています。ただし刑事罰の対象は、本人特定事項を隠す目的でこれを偽った場合に限られており、実質的支配者に関する事項の偽り自体は罰則の直接の対象ではありません。
とはいえ、確認に応じなかったり事項を偽ったりすると、取引を断られるなどの不利益につながります。判断に迷う場合は、司法書士・税理士などの専門家に確認するのが安全です。
出典・参考資料(2件)
- 出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律 第4条第6項・第27条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000022)
- 出典:公証人法施行規則 第13条の4|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/324M50000001009)
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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