従業員の給与から天引きする雇用保険料は、その月の給与総額に雇用保険料率を掛けて計算します。この料率は年度ごとに見直されており、令和8年度(2026年4月1日〜2027年3月31日)は前年度から引き下げられました。
古い年度の料率で計算すると天引き額がずれてしまうため、まず「今年度の料率はいくらか」を正確に押さえることが欠かせません。料率は事業の種類によっても異なり、賃金のどこまでを計算対象にするか、端数が出たときにどう丸めるかといった細かなルールもあります。
本記事では、令和8年度の雇用保険料率を事業の種類ごとの一覧表で示したうえで、計算式・具体的な計算例・給与額ごとの早見表・端数処理まで、自社の給与額に当てはめて天引き額を出せる形で解説します。
目次
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令和8年度(2026年度)の雇用保険料率【一覧表】
はじめに、令和8年度(2026年4月1日〜2027年3月31日)の雇用保険料率を、事業の種類ごとに一覧で示します。雇用保険料率は「労働者負担」と「事業主負担」に分かれ、その合計が事業全体の雇用保険料率です。以下は、厚生労働省が公表した令和8年度の確定料率です。
| 事業の種類 | 労働者負担 | 事業主負担 | ①+② 雇用保険料率 |
|---|---|---|---|
| 一般の事業 | 5/1,000 (0.5%) | 8.5/1,000 (0.85%) | 13.5/1,000 (1.35%) |
| 農林水産・清酒製造の事業 | 6/1,000 (0.6%) | 9.5/1,000 (0.95%) | 15.5/1,000 (1.55%) |
| 建設の事業 | 6/1,000 (0.6%) | 10.5/1,000 (1.05%) | 16.5/1,000 (1.65%) |
多くの会社が該当する「一般の事業」では、労働者負担が0.5%(5/1,000)、事業主負担が0.85%(8.5/1,000)です。給与から天引きするのは労働者負担分なので、給与計算でまず使うのは労働者負担の料率になります。
出典・参考資料(1件)
令和7年度からの変更点(前年度からの引き下げ)
令和8年度の料率は、前年度(令和7年度)から引き下げられました。一般の事業を例にとると、合計の料率は14.5/1,000(令和7年度)から13.5/1,000(令和8年度)へと1/1,000(0.1ポイント)下がっています。
引き下げの中身は、失業等給付などに充てる保険料率が労働者・事業主ともに5.5/1,000から5/1,000へ下がったことによるものです。事業主のみが負担する雇用保険二事業の保険料率(3.5/1,000)は据え置かれています。前年度の給与計算の設定をそのまま使い回すと過大に天引きしてしまうため、年度が変わったら料率の更新が必要です。
新旧の料率が切り替わる基準は、賃金の支払日ではなく締切日(締日)です。令和8年度の料率は2026年4月1日以降に締切日が到来する賃金から適用されるため、「3月末締め・4月支払い」の給与は、支払いが4月でも締切日が3月なら令和7年度の料率になります。月をまたぐ締め日では、どちらの料率になるかは締切日で決まります。
料率の内訳と、労働者と事業主で負担率が違う理由
一般の事業で労働者負担(0.5%)より事業主負担(0.85%)が大きいのは、負担する中身が異なるためです。労働者が負担するのは失業等給付・育児休業給付に充てる保険料率のみで、雇用の安定や能力開発に使う雇用保険二事業の保険料率は事業主だけが負担します。
| 負担者(一般の事業) | 労働者負担 | 事業主負担 |
|---|---|---|
| 失業等給付・育児休業給付分 | 5/1,000 | 5/1,000 |
| 雇用保険二事業分 | ― | 3.5/1,000 |
| 合計 | 5/1,000 | 8.5/1,000 |
このため、天引きする労働者負担分は「失業等給付・育児休業給付に充てる部分」だけで構成されている、と理解しておくと計算がぶれません。
雇用保険料の計算式と対象になる賃金の範囲
ここからは、料率を「何に掛けるのか」を見ていきます。掛ける相手を間違えると金額が変わってしまうため、計算式と賃金の範囲をあわせて押さえます。天引き額を求める大まかな流れは次のとおりです。

計算式は「賃金総額 × 労働者負担の料率」
従業員から天引きする雇用保険料は、次の式で求めます。
天引きする雇用保険料 = その月の賃金総額 × 労働者負担の雇用保険料率
ここでいう賃金総額は、社会保険料や所得税を差し引く前の総支給額です。一般の事業なら、この総支給額に0.5%(5/1,000)を掛けます。健康保険や厚生年金のように標準報酬月額を使うのではなく、その月に実際に支払う賃金の総額をそのまま使う点が特徴です。
賃金に含むもの・含まないもの
雇用保険料の対象になる賃金は、「労働の対償として事業主が労働者に支払うすべてのもの」と定義されています。基本給だけでなく、各種手当や賞与も対象です。代表的な例を対比で示します。
| 区分 | 対象に含むもの | 対象に含まないもの |
|---|---|---|
| 代表的な例 | 基本給・固定給 残業手当・深夜手当・休日手当 通勤手当(通勤定期券を含む) 賞与 扶養手当・家族手当 住宅手当・単身赴任手当 精勤手当・皆勤手当・技術手当 | 退職金 役員報酬(役員としての立場に対するもの) 結婚祝金・死亡弔慰金・災害見舞金などの慶弔見舞金 出張旅費・宿泊費などの実費弁償 会社が全額負担する生命保険の掛金 |
注意したいのは通勤手当です。所得税では一定額まで非課税になりますが、雇用保険料では非課税の枠がなく、通勤手当も対象に含めて計算します。賞与も対象なので、賞与を支払う月は賞与額にも料率を掛けます。
一方、退職金や慶弔見舞金は「労働の対償」に当たらないため対象外です。役員報酬も、雇用保険の対象となる労働者への賃金ではないため含めません。
雇用保険料の計算例と早見表
実際の数字を当てはめて計算します。一般の事業(労働者負担0.5%=5/1,000)を前提に、月給と賞与の例を示します。
具体的な計算例
月給の例(通勤手当を含む総支給額が320,000円の場合)
320,000円 × 5/1,000(0.5%)= 1,600円
賞与の例(賞与総額が500,000円の場合)
500,000円 × 5/1,000(0.5%)= 2,500円
どちらも「総支給額 × 労働者負担の料率」を計算するだけです。賞与のときも月給と同じ料率を使います。健康保険や厚生年金と異なり、雇用保険では賞与額に上限がなく、賞与の総額にそのまま料率を掛けます。
給与額ごとの早見表
一般の事業について、月の給与総額ごとの労働者負担額(天引き額)と、あわせて会社が負担する事業主負担額をまとめました。給与から天引きするのは労働者負担分だけで、事業主負担分は会社が別途まとめて納付します。自社の給与額に近い行を目安にしてください。
| 月の給与総額 | 労働者負担額(天引き額・× 5/1,000) | 事業主負担額(会社負担・× 8.5/1,000) |
|---|---|---|
| 200,000円 | 1,000円 | 1,700円 |
| 250,000円 | 1,250円 | 2,125円 |
| 300,000円 | 1,500円 | 2,550円 |
| 350,000円 | 1,750円 | 2,975円 |
| 400,000円 | 2,000円 | 3,400円 |
| 450,000円 | 2,250円 | 3,825円 |
| 500,000円 | 2,500円 | 4,250円 |
一般の事業(労働者負担0.5%=5/1,000、事業主負担0.85%=8.5/1,000)の場合。農林水産・清酒製造・建設の事業は労働者負担が6/1,000、事業主負担が9.5〜10.5/1,000になります。表の金額は端数処理前の目安です。
実際の総支給額に端数があるときは、総支給額に0.5%(5/1,000)を掛けたうえで、次に説明する端数処理で1円未満を丸めます。
天引き額の端数処理
計算した労働者負担額に1円未満の端数が出ることがあります。給与から天引き(源泉控除)する場合、被保険者負担分の端数が50銭以下なら切り捨て、50銭1厘以上なら切り上げます。
たとえば総支給額が285,130円の場合、285,130円 × 5/1,000 = 1,425.65円です。端数の65銭は50銭1厘以上なので切り上げて、天引き額は1,426円になります。反対に端数が50銭ちょうど以下であれば切り捨てます。1円のずれが毎月・従業員ごとに積み上がるため、端数処理のルールもあわせて設定しておきます。
出典・参考資料(1件)
雇用保険の加入対象者(誰の給与から天引きするか)
雇用保険料は、雇用保険の被保険者となる従業員の給与から天引きします。被保険者になるのは、次の2つの要件を両方満たす労働者です。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
この2要件を満たせば、正社員・契約社員・パート・アルバイトといった雇用形態や名称を問わず対象になります。65歳以上の従業員も、要件を満たせば高年齢被保険者として雇用保険の対象となり、保険料が発生します。
出典・参考資料(1件)
業種による料率の違いと計算(農林水産・清酒製造/建設)
3業種の料率は前掲の一覧表のとおりですが、ここでは一般の事業以外の業種について、天引き額の計算を見ていきます。農林水産・清酒製造の事業と建設の事業では、労働者負担が6/1,000(0.6%)と、一般の事業より1/1,000高く設定されています。
たとえば建設の事業で、月の給与総額が300,000円の従業員の場合は次のとおりです。
300,000円 × 6/1,000(0.6%)= 1,800円
農林水産・清酒製造の事業でも労働者負担は同じ6/1,000なので、天引き額は同額の1,800円です。業種によって差が出るのは主に事業主負担の側で、天引きする労働者負担分は「一般か、それ以外か」で6/1,000を使い分けると整理できます。
これらの業種向けに、給与額ごとの労働者負担額(6/1,000)を早見表にまとめました。
| 月の給与総額 | 労働者負担額(× 6/1,000) |
|---|---|
| 200,000円 | 1,200円 |
| 250,000円 | 1,500円 |
| 300,000円 | 1,800円 |
| 350,000円 | 2,100円 |
| 400,000円 | 2,400円 |
農林水産・清酒製造・建設の事業(労働者負担0.6%=6/1,000)の場合。
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手計算の負担を給与計算ソフトで自動化する
ここまでの計算は式そのものは単純ですが、毎月・従業員ごとに賃金総額へ料率を掛け、端数を処理する作業を繰り返すと手間がかかります。年度が変わるたびに最新の料率へ差し替える必要もあり、料率の取り違えや端数の丸め忘れはそのまま天引き額の誤りにつながります。
こうした手計算の負担は、給与計算ソフトで自動化できます。手計算とソフトの違いを整理すると、次のようになります。
| 観点 | 手計算 | 給与計算ソフト |
|---|---|---|
| 料率の反映 | 毎年度、最新料率を自分で確認して差し替える | 料率改定に自動対応 |
| 保険料の計算 | 従業員ごとに賃金総額×料率・端数処理を手作業 | 支給額・控除額とあわせて保険料を自動計算 |
| ミスと工数 | 料率の取り違え・端数の丸め忘れが起こりうる | 自動計算で工数とミスを抑えられる |
雇用保険料だけでなく、社会保険料や所得税もあわせて自動計算できるため、給与計算全体の工数削減につながります。給与計算ソフトの選び方や各サービスの比較は、次の記事でくわしく解説しています。
主な給与計算ソフトの比較(保険料の自動計算・法令改正対応)
雇用保険料をはじめとする保険料の自動計算や、法令改正への対応に着目して、代表的な給与計算ソフトを比較します。自社の規模や求める機能にあわせて選ぶ際の参考にしてください。
| サービス名 | 弥生給与 Next | 給与奉行クラウド | ジョブカン給与計算 |
|---|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド型 | クラウド型 | クラウド型 |
| 対象規模 | 300名未満の中小企業(公式サイトの案内) | 〜1,000名(従業員規模別5プラン) | 小規模〜大規模(1ユーザー単位の従量課金、500名以上は要問い合わせ) |
| 保険料の自動計算 | ●全プラン対応 | ● | ●所得税・社会保険料を自動計算 |
| 初期費用 | 0円 | 0円〜70,000円(税抜、プランにより異なる) | 記載なし(月額料金のみ) |
| 月額費用 | 1,700円〜7,000円(税抜、年契約の月あたり換算) | 5,500円〜93,000円(従業員規模別5プラン) | 無料プラン0円(5名まで)/有料は1ユーザー400円(税抜、最低2,000円) |
| 無料トライアル・無料プラン | ●最大2か月間(初回申込限定) | ●30日間 | ●30日間+5名まで無料プランあり |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式サイト | 公式サイト |
ここでは、雇用保険料の計算に関わる機能を備えた給与計算ソフトの一例として、弥生給与 Nextを詳しく紹介します。
弥生給与 Next(弥生株式会社)

弥生給与 Nextは、会計ソフト「弥生会計」を手がける弥生株式会社が提供するクラウド型の給与計算ソフトです。300名未満の中小企業向けと位置づけられており、給与・賞与計算やWeb給与明細の配信、年末調整までを1つのサービスで扱えます。
雇用保険料の計算という点では、支給額・控除額とあわせて保険料を自動計算する機能が全プランに備わっており、賃金総額への料率の掛け算や端数処理を手作業で行う必要がありません。公式サイトでは法令改正にも自動対応するとされており、料率改定のたびに設定を差し替える手間を抑えられます。給与・賞与の計算後は、弥生会計 Nextへ仕訳データをワンクリックで連携することもできます。
まとめ
令和8年度の雇用保険料は、一般の事業なら「賃金総額 × 労働者負担0.5%(5/1,000)」で天引き額を計算します。農林水産・清酒製造・建設の事業では労働者負担が0.6%(6/1,000)です。通勤手当や賞与も対象に含めること、端数は源泉控除の場合50銭以下切り捨て・50銭1厘以上切り上げで処理することを押さえておけば、毎月の給与計算で迷わずに済みます。
料率は年度ごとに見直されるため、計算の前に必ず今年度の数字を確認しましょう。手計算の手間や料率改定への対応を軽くしたい場合は、保険料を自動計算できる給与計算ソフトの導入も選択肢になります。
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よくある質問(FAQ)
Q. 雇用保険料率とは何ですか?
A. 雇用保険料率とは、従業員に支払う賃金総額に掛けて雇用保険料を算出するための率で、事業の種類ごとに定められています。令和8年度(2026年4月1日〜2027年3月31日)の一般の事業では、労働者負担が0.5%(5/1,000)、事業主負担が0.85%(8.5/1,000)、合計1.35%(13.5/1,000)です。このうち給与から天引きするのは労働者負担分にあたります。
出典・参考資料(1件)
Q. 雇用保険料はどうやって計算しますか?
A. 雇用保険料の天引き額は、その月の賃金総額に労働者負担の雇用保険料率を掛けて計算します。一般の事業なら「賃金総額 × 0.5%(5/1,000)」で、たとえば総支給額32万円なら1,600円です。健康保険や厚生年金のように標準報酬月額を使うのではなく、社会保険料や所得税を差し引く前の総支給額を、その月ごとにそのまま使う点が特徴です。
Q. 労災保険料も従業員の給与から天引きしますか?
A. 労災保険料(労働者災害補償保険の保険料)は、全額を事業主が負担するため、従業員の給与からは天引きしません。従業員の給与から天引きするのは雇用保険料の労働者負担分だけです。雇用保険と労災保険はあわせて「労働保険」と呼ばれますが、労災保険料は事業主が全額を負担する点で扱いが異なるため、天引きの対象に含めないよう注意します。
Q. 雇用保険料の計算では、通勤手当や賞与も対象になりますか?
A. 通勤手当も賞与も雇用保険料の対象に含めて計算します。雇用保険の対象となる賃金は「労働の対償として支払うすべてのもの」とされ、基本給や各種手当のほか通勤手当・賞与も含まれます。
とくに通勤手当は、所得税では一定額まで非課税ですが、雇用保険料では非課税の枠がなく全額が対象です。賞与を支払う月は、賞与額にも月給と同じ労働者負担の料率を掛けます。一方、退職金・慶弔見舞金・役員報酬などは対象に含みません。
Q. 育児休業中の従業員の賃金にも雇用保険料はかかりますか?
A. 育児休業中でも、その期間に賃金が支払われれば、その賃金は雇用保険料の対象になります。雇用保険料は実際に支払う賃金に料率を掛けて計算するため、育休中に賃金の支払いがなければ雇用保険料は発生しません(この間に受け取る育児休業給付は賃金ではないため対象外です)。社会保険料(健康保険・厚生年金)が育休中に免除されるのとは扱いが異なる点に注意します。
Q. 65歳以上の従業員やパート・アルバイトからも雇用保険料を天引きしますか?
A. 雇用形態や年齢にかかわらず、「1週間の所定労働時間が20時間以上」「31日以上の雇用見込み」の2つをともに満たす従業員は雇用保険の被保険者となり、給与から雇用保険料を天引きします。パート・アルバイト・契約社員も要件を満たせば対象です。65歳以上の従業員も、要件を満たせば高年齢被保険者として対象になり、保険料が発生します。
出典・参考資料(1件)
Q. 雇用保険料率は毎年変わりますか。いつの年度の料率で計算すればよいですか?
A. 雇用保険料率は年度ごとに見直されるため、計算の前に必ず今年度の料率を確認する必要があります。令和8年度の料率は2026年4月1日から2027年3月31日までに適用され、一般の事業では前年度の合計14.5/1,000から13.5/1,000へ引き下げられました。前年度の設定のまま計算すると天引き額がずれてしまうため、年度が替わったら最新の料率へ更新します。
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松嶋真倫
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