後継者が見つからず、会社の譲渡や事業承継を考え始めた——そんな場面でM&Aの仲介会社から営業を受け、「中小M&Aガイドライン」という国の指針の存在を知った方は少なくありません。手数料や進め方が妥当なのか、この会社に任せて大丈夫なのか。判断の物差しがほしいと感じたときに突き当たるのが、この指針です。
中小M&Aガイドラインは、中小企業庁が策定した、後継者不在の中小企業とM&Aの支援機関に向けた指針です。2024年8月には最新の第3版が公表され、仲介会社やFA(フィナンシャル・アドバイザー)の手数料の説明や利益相反、悪質な営業への規律が拡充されました。この改訂を知っているかどうかで、支援機関を見る目は変わってきます。
本記事では、中小M&Aガイドラインとは何かという基本から、第3版で仲介会社・FAに定められた7つのポイント、そして自社が支援機関を選ぶときに確認したい項目までを整理します。解説の先で、ガイドラインの遵守を宣言し登録制度に登録された、信頼できるM&Aアドバイザリー・FAを探すための手がかりもご案内します。
目次
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中小M&Aガイドラインとは?誰が何のために定めた指針か
中小M&Aガイドラインとは、中小企業庁が策定した、後継者不在の中小企業と、M&Aを支援する仲介会社・FAなどの支援機関に向けたM&Aの指針です。正式名称は「中小M&Aガイドライン(第3版)-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-」で、最新版は2024年(令和6年)8月に公表された第3版にあたります。本体は139ページにおよぶ文書です。
目的は大きく二つあります。一つは、後継者がいない中小企業の経営者に対して、M&Aによる第三者への事業引継ぎの進め方や留意点をわかりやすく示すこと。もう一つは、仲介会社・FAといった支援機関に対して、依頼者が安心してM&Aに取り組めるよう守るべき基本事項を示すことです。悪質な事業者や不透明な手数料からオーナー経営者を守り、健全なM&A市場をつくることが狙いといえます。
全体構成(第1章:中小企業向け/第2章:支援機関向け)
ガイドラインは、読み手ごとに二つの章で構成されています。第1章は「後継者不在の中小企業向けの手引き」で、M&Aの意義や進め方の流れ、手数料の考え方などを経営者目線でまとめた部分です。第2章は「支援機関向けの基本事項」で、仲介会社・FAをはじめ、金融機関、商工団体、士業等専門家、M&Aプラットフォーマーが守るべき行動指針を定めています。
会社の譲渡(売却)や事業承継を検討する経営者が読むべきは第1章、依頼する支援機関がどう行動すべきかを知りたいときは第2章、という使い分けになります。本記事では、経営者が支援機関を選ぶうえで特に効いてくる第2章の要点を中心に見ていきます。
出典・参考資料(2件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf)
- 参考資料:中小M&Aガイドライン|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html)
中小M&Aガイドラインの改訂の歩み(版の時系列)
中小M&Aガイドラインは一度作られて終わりではなく、市場の課題に合わせて改訂を重ねてきました。版がいくつもあるため、まずは、いつ・何が加わってきたのかを時系列で押さえておきましょう。
| 時期 | 2015年3月 | 2020年3月 | 2023年9月 | 2024年8月 |
|---|---|---|---|---|
| 文書・版 | 事業引継ぎガイドライン | 中小M&Aガイドライン(初版) | 第2版 | 第3版(最新) |
| 主な位置づけ・加わった内容 | M&Aの手続きや利用者の役割・留意点、トラブル発生時の対応などを記載した最初のガイドライン。 | 事業引継ぎガイドラインを全面改訂。後継者不在の中小企業の第三者への事業引継ぎを促進する内容へ。 | M&A専門業者向けの基本事項(支援の質、書面交付による重要事項説明)や、レーマン方式・最低手数料の留意点などを拡充。 | 手数料・提供業務の説明、広告・営業の規律、利益相反の具体化、ネームクリア・テール条項、経営者保証、不適切な譲受側の排除などを拡充。 |
この10年で、ガイドラインは「M&Aの進め方を示す手引き」から、「支援機関の行動を具体的に律する指針」へと役割を広げてきました。とりわけ第3版は、仲介会社・FAに対する規律に踏み込んだ改訂です。次章で、その中身を見ていきます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(改訂の経緯)|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html)
第3版(2024年8月改訂)で仲介会社・FAに定められた7つのポイント
ここからは、第3版で何が定められ、第2版から何が変わったのかを見ていきます。経済産業省は、改訂の趣旨を「不適切な譲り受け側の存在や経営者保証に関するトラブル、M&A専門業者が実施する過剰な営業・広告等の課題に対応」するためと説明しています。改訂の主なポイントは、次の7つに整理されています。
以下では「仲介者」は売り手・買い手の双方と契約する立場、「FA」は一方だけと契約する立場を指します(両者の違いは後の章で詳しく解説します)。7つの中には、支援機関に求める規律だけでなく、経営者向けの解説として加わった内容も含まれます。
1. 手数料・提供業務の説明
仲介会社・FAに対し、手数料の詳細な説明と、プロセスごとに提供する業務内容の具体的な説明が求められるようになりました。あわせて、担当者の保有資格や経験年数、成約実績まで説明すべきとされています。ガイドライン本体では、公認会計士や税理士、中小企業診断士、弁護士といった資格を例に挙げ、担当者の経験・専門的知見を明示する観点から説明すべきと述べています。
経営者側にも、手数料や業務内容・質を確認することの重要性や、手数料の交渉を検討することが追記されました。「言われるままに契約する」のではなく、内容を確かめてよいという後押しといえます。
2. 広告・営業の規制
仲介会社・FAに対し、広告・営業先が希望しない場合には、広告・営業を停止することなどが求められるようになりました。ガイドライン本体は、過剰・不適切な広告営業について、場合によっては民法上の不法行為責任を負う可能性もあることに留意すべきだとしています。しつこいDMや電話に悩まされてきた経営者にとって、停止を求める根拠になる規律です。
3. 利益相反の禁止の具体化
仲介会社に対し、追加手数料を支払う者やリピーターへの優遇が禁止され、禁止事項が具体化されました。優遇とは、当事者のニーズに反したマッチングを優先したり、譲渡額を誘導したりする行為を指します。さらに、これらの禁止事項を仲介契約書に仲介者の義務として定めることも明記されました。売り手と買い手の双方から報酬を得る仲介では、構造的に利益相反が起きやすいため、契約書レベルで縛る内容になっています。
4. ネームクリア・テール条項・専任条項とセカンド・オピニオン
契約や交渉の入り口にあたる論点も具体化されました。ネームクリア(買い手候補に企業概要書を送り、売り手の社名を開示すること)の前には、売り手側の同意を取ることが求められます。あわせて、テール条項と専任条項について、対象範囲や期間の目安がガイドライン本体に明記されました。
テール条項は、契約終了後に成約した場合でも成功報酬が発生しうる取り決めです。期間が長すぎると売り手の自由な経営判断を損なうおそれがあるため、ガイドラインは次のように述べています。
テール期間が不当に長期にわたる場合には、その後の譲り渡し側の自由な経営判断を損なうおそれがある。したがって、テール期間は最長でも2年~3年以内を目安とすることが望ましい。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)第2章Ⅱ9「テール条項の留意点」|中小企業庁
専任条項は、一定期間、他の仲介会社・FAへ依頼できないようにする取り決めです。こちらも対象範囲を可能な限り限定すべきとされ、契約期間の目安が示されています。
専任条項を設ける場合には、仲介契約・FA契約の契約期間を最長でも6か月~1年以内を目安として定めるべきである。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)第2章Ⅱ7「専任条項の留意点」|中小企業庁
加えて、専任条項があっても、他の支援機関にセカンド・オピニオンを求めることは許容すべきとされています。一社の意見だけに縛られず、別の専門家の見解を聞いてよいという考え方です。
5. 最終契約後のリスク事項への対応
最終契約やクロージングの後になって当事者間のトラブルにつながりやすいリスク事項について、経営者向けに解説が加わりました。仲介会社・FAに対しても、こうしたリスク事項を依頼者へ具体的に説明することが求められます。契約して終わりではなく、その後に起こりうる問題まで見据えて説明を受けられるかが問われます。
6. 譲り渡し側の経営者保証の扱い
中小企業の経営者が個人で負っていることの多い経営者保証について、M&Aを通じた解除、または買い手側への移行を確実に実施するための対応が明記されました。具体的には、士業等専門家や事業承継・引継ぎ支援センター、保証の提供先である金融機関などへ、M&A成立前に相談することや、最終契約における位置づけを検討することが挙げられています。個人保証が残ったまま会社を手放す事態を避けるための論点です。
7. 不適切な譲受側(買い手)の排除
仲介会社・FA・M&Aプラットフォーマー(M&Aのマッチングサイトを運営する事業者)に対し、買い手側への調査の実施と、その概要・結果を依頼者へ報告することが求められるようになりました。不適切な行為に関する情報を得た際には、慎重な対応の検討も必要とされます。
さらに、業界内で不適切な買い手の情報を共有する仕組みづくりの必要性が明記され、その仕組みに参加しているかどうかを依頼者へ説明することも求められています。この情報共有の仕組みで求められる運用・留意点は、2025年2月に整理・公表されています。
出典・参考資料(2件)
- 出典:「中小M&Aガイドライン」を改訂しました(2024年8月30日)|経済産業省・中小企業庁(https://www.meti.go.jp/press/2024/08/20240830002/20240830002.html)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)第2章|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf)
「仲介者」と「FA(フィナンシャル・アドバイザー)」は何が違うのか
第3版の規律を理解するうえで欠かせないのが、「仲介者」と「FA」の違いです。ここからは、両者が何をする立場なのかを整理します。ガイドラインの用語集は、それぞれを次のように定義しています。
仲介者とは、譲り渡し側・譲り受け側の双方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関をいい、一部のM&A専門業者がこれに該当する
FA(フィナンシャル・アドバイザー)とは、譲り渡し側又は譲り受け側の一方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関をいい、一部のM&A専門業者がこれに該当する
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)用語集|中小企業庁
仲介者は、売り手と買い手の双方と契約し、両者の間を取り持つ立場です。まとまりやすい一方で、双方から報酬を得るため、構造的に利益相反が起こりやすいという特徴があります。第3版が利益相反の禁止を具体化したのは、この構造への対応でもあります。
これに対してFAは、売り手か買い手のどちらか一方とだけ契約し、その依頼者の利益を専門に代弁する立場です。自社の条件を最大限に引き出したい、利益相反を避けたいという場合には、片側だけに立つFAが選択肢になります。どちらが優れているという話ではなく、自社が何を重視するかで向き・不向きが分かれます。
両者の違いを契約構造の面から整理すると、次のようになります。

手数料の体系(レーマン方式の考え方)
仲介会社・FAへの手数料は、着手金・月額報酬・中間金・成功報酬などで構成されます。このうち成功報酬の算定に多く使われるのが、レーマン方式です。レーマン方式は、取引金額の階層ごとに異なる料率を掛けて報酬を積み上げる計算方法で、金額が大きくなるほど料率が下がる仕組みになっています。
一般的には、基準となる金額の5億円以下の部分は5%、5億円超〜10億円以下の部分は4%というように、階層が上がるごとに料率が下がっていきます。各階層の金額に料率を掛けて合算した額が成功報酬です。
ここで注意したいのが、料率を掛ける「基準となる価額」に複数の考え方がある点です。譲渡額を基準にするか、移動総資産額(負債を含む総資産をもとにした金額)を基準にするかなどで、同じ料率でも最終的な報酬額は大きく変わります。ガイドラインも、基準となる価額の考え方や金額の目安、報酬額の目安を確認しておくことが重要だと述べています。
最低手数料を設けている会社も多く、小規模なM&Aでは成功報酬が最低手数料に張り付くこともあります。事前に基準・料率・最低手数料をセットで確認しておくと、総額の見通しが立てやすくなります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)用語集・第1章Ⅴ「仲介者・FAの手数料についての考え方の整理」|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf)
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仲介会社・FAと契約する前に確認したいチェックリスト
ここまで見てきた第3版のポイントは、そのまま「支援機関に何を確認すればよいか」の物差しになります。契約前に、次の項目を仲介会社・FAへ問いかけてみてください。どれも第3版が支援機関に求めている事項なので、明確に答えられるかどうかが、信頼できる相手かを見分ける手がかりになります。
| 確認したいこと | 手数料の体系と、基準となる価額の考え方・最低手数料は明確か | 各プロセスで何をしてくれるか、担当者の資格・経験年数・成約実績はどうか | 希望すれば広告・営業を止めてくれるか | 利益相反にどう対応するか、仲介か片側のFAか | テール条項・専任条項の期間と対象範囲、セカンド・オピニオンは可能か | 最終契約後に起こりうるリスク事項を具体的に説明してくれるか | 経営者保証の解除・買い手への移行に対応してくれるか | 買い手側の調査を行い、結果を報告してくれるか |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| なぜ確認するか | 基準の取り方で報酬額が変わるため、総額の見通しを持つため | 提供業務の範囲と担当者の力量を見極めるため | 過剰な営業を受けない権利を確認するため | 双方契約の仲介では利益相反が起きやすいため | 不当に長い拘束や、相談先を狭められる事態を避けるため | 契約後のトラブルを事前に把握しておくため | 個人保証が残ったまま会社を手放す事態を避けるため | 不適切な買い手を避け、リスク説明を受けるため |
| 根拠(第3版のポイント) | 1. 手数料・提供業務の説明 | 1. 手数料・提供業務の説明 | 2. 広告・営業の規制 | 3. 利益相反の禁止/仲介・FAの違い | 4. ネームクリア・テール・専任条項 | 5. 最終契約後のリスク事項 | 6. 譲り渡し側の経営者保証 | 7. 不適切な譲受側の排除 |
これらは、業種や会社の規模を問わず共通して効く確認事項です。すべてに歯切れよく答えられる支援機関ほど、第3版の考え方を実務に落とし込んでいると考えてよいでしょう。
遵守宣言とM&A支援機関登録制度の見分け方
ガイドラインの中身を押さえたら、次は「この指針を守っている支援機関」をどう見分けるかです。ここからは、制度的な手がかりになる登録制度と遵守宣言の見方を解説します。
M&A支援機関登録制度とデータベースの見方
M&A支援機関登録制度は、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤をつくるため、2021年(令和3年)8月に創設された国の制度です。ガイドラインの遵守を宣言するなどした仲介業務・FA業務の事業者が、登録を受けられます。
この制度のホームページでは、登録された支援機関のデータベースが公開されています。支援機関の種類(専門業者か金融機関か)、M&A支援業務の開始時期、専従者や所在地に加え、手数料の算定基準(最低手数料の水準や報酬基準額の種類など)まで確認・検索できます。中小企業庁も、仲介者・FAを選ぶ際の情報手段として有用だとしています。手数料の相場を調べたいときの調査先としても使える仕組みです。
遵守宣言の見方
遵守宣言は、支援機関が「中小M&Aガイドラインを守ります」と表明するもので、登録制度に登録するための前提として求められます。大手の仲介会社やFAの多くは、自社サイトに遵守宣言のページを設けています。
ただし、遵守宣言はあくまで最低限の前提です。宣言しているかどうかだけでなく、前章のチェックリストのような具体的な説明にきちんと答えられるか、業界や自社の事情を理解しているかといった、実際の対応力で見極めることが大切です。宣言の有無は入り口の足切りとして使い、その先は中身で判断する、という順番が現実的です。
ガイドラインに法的拘束力はあるのか(実効性の担保)
中小M&Aガイドラインは「指針」であり、法律ではありません。そのため、ガイドライン違反そのものに直接の罰則があるわけではありません。それでも実効性が保たれているのは、制度の組み合わせによって守るメリットと守らないデメリットが設計されているからです。
実効性を支えるのは、三つの仕組みです。まず、登録制度が遵守宣言を登録の要件としています。次に、事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)が、登録された支援機関の活用を補助の対象要件としています。そして、ガイドライン違反が認められた場合には、「M&A支援機関登録制度の取消し等に関する要領」に基づき登録を取り消せます。
加えて、中小企業からの情報を受け付ける「情報提供受付窓口」も設置されています。罰則ではなく、補助金や登録という地位を通じて、間接的にガイドラインの浸透を図る設計になっています。

出典・参考資料(2件)
- 参考資料:中小M&Aガイドライン(5. M&A支援機関登録制度)|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html)
- 参考資料:M&A支援機関登録制度(https://ma-shienkikan.go.jp/)
ガイドライン遵守・登録済みのM&Aアドバイザリー・FAを探す
ガイドラインの中身と、支援機関の見分け方を押さえたら、最後は実際に相談する相手を探す段階です。ここからは、中小M&Aガイドラインの遵守を掲げる支援機関の例として、売主側だけを専門に支援するFAと、双方を取り持つ仲介会社を1社ずつ、前章で見た「仲介か、片側のFAか」という違いを踏まえて紹介します。自社が何を重視するかに照らして読み比べてみてください。
まずは、代表的なサービスを比較表で見比べてみましょう。
| サービス名 | M&A Lead | 日本M&Aセンター |
|---|---|---|
| サービス形態 | FA型(売主専門・セルサイド) | 仲介型(両手仲介) |
| 主な対象 | 売主(譲渡企業) 中小企業の事業承継・売却 | 中堅・中小企業 後継者不在のオーナー系企業が中心 |
| 報酬体系 | 完全成功報酬制(着手金・中間金なし) レーマン方式・手数料は売主のみ負担 | 着手金+レーマン方式の成功報酬 売り手・買い手の双方から徴収 |
| 利益相反への向き合い方 | 売主のみと契約するFA型のため、双方契約による構造的な利益相反が生じない | 双方と契約する仲介型のため、第3版が具体化した利益相反の規律が特に関わる立場 |
| ガイドライン遵守 | M&A支援機関登録制度に登録し、中小M&Aガイドライン(第3版)の遵守を宣言 | 中小企業庁のM&A支援機関登録制度に登録し遵守を宣言 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式サイト |
M&A Lead(M&A Lead株式会社)

M&A Leadは、売り手(譲渡側)を専門に支援するセルサイドFA(売り手側だけを担当するFA)のサービスです。売り手か買い手の一方だけと契約するFAの立場をとるため、売却する経営者の利益に専念して条件交渉やマッチングを進める点が特徴です。
中小企業の事業承継・売却を主な対象とし、全国に対応しています。M&A支援機関登録制度に登録し、公式サイトで中小M&Aガイドライン(第3版)の遵守を宣言しています。
報酬は着手金・中間金のない完全成功報酬制で、譲渡が実現するまで大きな費用が発生しにくい設計です。売り手の立場を専門に代弁してほしい、双方契約による利益相反を避けたいという経営者に向く立場のサービスです。
日本M&Aセンター(株式会社日本M&Aセンター)

1991年創業・東証プライム上場の日本M&Aセンターは、中堅・中小企業のM&Aを幅広く手がける仲介会社です。売り手と買い手の双方と契約してマッチングを進める両手仲介(双方から手数料を受け取る仲介)の立場で、累計成約1万件超の実績や、地方銀行・信用金庫との広範な提携ネットワークを強みとしています。後継者不在の事業承継から幅広く相談先を探したい場合の代表例です。
仲介型は双方の間を取り持つぶん話がまとまりやすく、案件数や情報網の広さが活きます。一方で、双方と契約する構造上、第3版が具体化した利益相反の規律が特に関わる立場でもあります。第3版のチェックリストを手元に、利益相反への対応方針や手数料体系を確認しながら相談するとよいでしょう。登録制度への登録や遵守宣言の状況は、各社の公式サイトや登録制度のデータベースで確認できます。
ここで取り上げたのは代表的な2例です。M&AやFAに限らず、資金調達・財務戦略や事業再生まで含めて相談先を探したい場合は、金融コンサル会社を専門領域別に整理し、依頼するメリット・費用相場・選び方まで解説した以下の記事もあわせてご覧ください。
金融コンサル会社徹底比較|専門領域別おすすめ19選と選び方【費用相場も解説】
資金繰りや財務戦略、事業承継やM&Aといった経営の重要局面では、社内の知見だけで最適解にたどり着くのが難しい場面が少なくありません。「専門家に相談したいが、どの金融コンサルに頼めばよいのか分からない」と迷う方も多いでしょう。 金融コ…
まとめ
中小M&Aガイドラインは、後継者不在の中小企業と支援機関に向けて中小企業庁が定めた指針で、最新は2024年8月の第3版です。第3版では、手数料・提供業務の説明、広告・営業の規制、利益相反の禁止、ネームクリア・テール・専任条項、最終契約後のリスク、経営者保証、不適切な買い手の排除という7つのポイントが具体化されました。
これらはそのまま、支援機関を選ぶ際の確認事項になります。手数料や業務範囲、利益相反への対応、テール・専任条項の期間などをチェックリストで確かめ、遵守宣言や登録制度のデータベースも手がかりにしながら、自社が信頼して任せられる仲介会社・FAを見つけていきましょう。まずは複数の支援機関の情報を集め、比較することから始めてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 中小M&Aガイドラインとは何ですか?
A. 中小M&Aガイドラインとは、中小企業庁が策定した、後継者不在の中小企業とM&Aを支援する仲介会社・FAなどの支援機関に向けたM&Aの指針です。後継者がいない中小企業の経営者に第三者への事業引継ぎの進め方や留意点を示すとともに、支援機関が守るべき基本事項を定め、不透明な手数料や悪質な事業者からオーナー経営者を守ることを目的としています。最新版は2024年(令和6年)8月に公表された第3版です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf)
Q. 中小M&Aガイドラインを遵守している仲介会社なら、安心して任せられますか?
A. 遵守宣言は信頼できる相手を見分けるための最低限の前提にすぎず、それだけで安心と判断するのは早計です。実際の見極めでは、手数料体系や利益相反への対応方針、担当者の資格・経験、自社の業界や事情への理解などを具体的に説明できるかどうかで判断することが大切です。宣言の有無は入り口の足切りとして使い、その先は説明の中身で確かめる、という順番が現実的です。
Q. 遵守宣言をしていない仲介会社に依頼しても問題ないですか?
A. 登録・遵守宣言をしていない事業者に依頼すること自体は禁止されていませんが、事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)の補助対象外になるなどの不利益があります。あわせて、登録制度に設けられた情報提供受付窓口を通じた対応の枠組みからも外れるため、トラブル時の後ろ盾が乏しくなります。特段の理由がなければ、登録・遵守宣言済みの支援機関を選ぶのが無難です。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:中小M&Aガイドライン(5. M&A支援機関登録制度)|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html)
Q. 契約前に複数の仲介会社・FAへ相談するのは、ガイドライン違反になりますか?
A. 契約を結ぶ前であれば、複数の仲介会社・FAに相談・比較しても何ら問題ありません。契約後については、他社への依頼を制限する専任条項の有無によります。ガイドライン第3版は、専任条項がある場合でも他の支援機関にセカンド・オピニオンを求めることは許容すべきとしているため、契約前に専任条項の範囲を確認しておくと安心です。
Q. 仲介会社・FAの手数料の相場はどこで調べられますか?
A. M&A支援機関登録制度のデータベース(ma-shienkikan.go.jp)で、登録された支援機関の最低手数料の水準や報酬基準額の種類などを確認・検索できます。中小企業庁も、仲介者・FAを選ぶ際の情報手段として有用としています。手数料は成功報酬にレーマン方式が使われることが多く、料率を掛ける「基準となる価額」の取り方で総額が変わるため、複数社を並べて比べるとよいでしょう。
出典・参考資料(2件)
- 参考資料:M&A支援機関登録制度(https://ma-shienkikan.go.jp/)
- 参考資料:中小M&Aガイドライン|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html)
Q. 仲介者とFAは、どちらを選べばよいですか?
A. 話のまとまりやすさを重視するなら双方と契約する仲介者、自社の利益を専門に代弁してほしいなら片側だけと契約するFAが向いています。仲介者は売り手と買い手の間を取り持つため成約しやすい反面、双方から報酬を得る構造上、利益相反が起こりやすい点に注意が必要です。FAは一方の依頼者の利益に専念できます。どちらが優れているという話ではなく、自社が何を重視するかで選び分けるのが基本です。
Q. テール条項・専任条項の期間は、どのくらいが目安ですか?
A. 中小M&Aガイドライン第3版は、テール期間を最長でも2〜3年以内、専任条項を設ける場合の契約期間を最長でも6か月〜1年以内を目安とすべきとしています。これを大きく超える長期の拘束を求められた場合は、その根拠を確認したほうがよいでしょう。テール条項の対象も、その仲介会社・FAが実際に関与・紹介した買い手候補に限定すべきとされています。
出典・参考資料(1件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)第2章Ⅱ7「専任条項の留意点」・9「テール条項の留意点」|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf)
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
















