取引先や部門ごとに紙の契約書が蓄積し、キャビネットに年度も種別も混在した状態でしまわれている──こうした状態は、監査や更新期限の確認のたびに担当者が実物を探し歩く原因になります。「原本はどこにあるのか」「保管期限は何年か」「担当者の頭にしかない情報をどうチーム全体に開くか」を、今日から実務で回るレベルに整えたい担当者向けに、契約書ファイリングの型と実務ルールを1本にまとめました。
本記事では、契約書ファイリングの4分類方式(取引先名/業務内容/案件/契約日・番号)の選び方と、背表紙・ファイル名の記入サンプル、保管用品の実物名での選び方、法定保管期間の根拠条文、紙運用の台帳と棚卸しルールまで、実務で使える型を提示します。紙で回らなくなったときの外部倉庫委託・電子化への移行判断軸も後段でまとめます。
まずは紙のキャビネットを今日どう整えるかから読み進め、必要に応じて後段の電子化・システム化の判断軸まで進んでください。
目次
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契約書ファイリングの4分類と選び方
契約書ファイリングの分類方式は、実務で採用されているものが大きく4種類あります。取引先名(五十音)で綴じる方式、業務内容(契約書の種類)で綴じる方式、案件(プロジェクト)で綴じる方式、契約日・契約番号で綴じる方式です。どれが「正解」ということはなく、契約書を最も頻繁にどの切り口で参照するかで選びます。
4分類方式の全体像と選び方の対比表
まず全体像を対比表で示します。「探索頻度が高い切り口」「複数部門が同じ契約書に触るか」「1件あたりの契約書点数」「更新頻度」の4軸で、どの分類方式が向くかを整理しました。
| 分類方式 | 向く状況(判断軸) | 強み | 弱み |
|---|---|---|---|
| 取引先名(五十音) | 取引先で探す頻度が最も高い/取引先ごとに複数種類の契約書を保管している | 取引先単位でまとめて確認できる/担当営業の視点と一致する | 1社の契約書が多いと1つのファイルに集中する/契約種別横断の分析が難しい |
| 業務内容(契約書の種類) | 契約書の種類ごとに参照する部門が分かれている(例: 業務委託は法務、賃貸借は総務) | 部門ごとに担当が明確/同種契約書の比較・条項差の見直しが容易 | 取引先横断の確認に手間がかかる/同一取引先が別ファイルに分散する |
| 案件(プロジェクト) | 複数部門が1案件を触る/案件単位で契約書点数が多い(元請・下請の複層構造など) | 案件全体の契約関係を一覧できる/プロジェクト終結時にまとめて整理できる | 案件横断(同じ取引先の別案件)の比較が難しい/案件終結後の分類変更が必要 |
| 契約日・契約番号 | 更新期限管理が最優先/時系列で追跡したい/契約書番号台帳を運用している | 更新期限が近い契約書を検索しやすい/台帳と物理保管の対応が単純 | 取引先や業務種別の視点が失われる/番号採番ルールを厳守しないと崩れる |
4方式は排他ではなく、たとえば「メインは取引先名で綴じるが、更新期限管理のため契約書一覧を Excel 台帳で別途持つ」「案件別に綴じつつ、契約書番号で背表紙に通し番号を振る」といった組み合わせが実務では一般的です。以降のH3で各方式の具体的な運用と向く企業像を整理します。
取引先名(五十音)で綴じる
取引先名の五十音順で綴じる方式は、契約書を「相手方を軸に確認する」場面が多い企業に向きます。営業部門が取引先ごとの契約関係をまとめて把握したいケース、取引先ごとに業務委託・秘密保持・売買と複数種類の契約書を保有するケースで使いやすい方式です。
この方式では、五十音順のインデックスタブを立て、取引先ごとにポケット付きリングファイルまたはボックスファイルの1区画を割り当てます。同一取引先内の並びは契約日順が扱いやすく、契約更新の際は旧契約書を末尾に、新契約書を先頭に差し込む運用にすると更新履歴が追いやすくなります。
業務内容(契約書の種類)で綴じる
業務委託契約書は法務、賃貸借契約書は総務、雇用契約書は人事と、契約書の種類ごとに主管部門が分かれる企業では、業務内容による分類が実務に馴染みます。同種契約書を並べて条項差を比較したい、雛形の見直しや契約書レビューの効率化を狙う場面でも扱いやすい方式です。
ボックスファイルを契約書種別ごとに用意し、各ボックスの中は取引先名の五十音順、その中を契約日順に並べるという二層構造が一般的です。同一取引先の契約書が種別ごとに別ファイルに分散する点を許容できるかが、この方式を選ぶかどうかの判断ポイントになります。
案件(プロジェクト)で綴じる
建設・SIer・M&Aの周辺業務など、1つの案件に元請・下請・顧問先・監査法人など複数当事者が絡み、案件単位で契約書点数が多い業種では、案件別の分類が実務と噛み合います。案件終結時に「その案件で結んだ契約書一式」を一括で取り出せる利点があります。
案件別ファイルの背表紙には案件コード・案件名・期間を明記し、内訳は契約書種別ごとの中仕切りで整理する運用が扱いやすくなります。案件終結後の分類変更(アーカイブへの移動)を運用ルールで決めておかないと、進行中案件と終結案件が混在してファイルが膨らむため、棚卸しの頻度をあらかじめ決めておきます。
契約日・契約番号で綴じる
更新期限管理を最優先する、または契約書に社内採番の契約書番号を付けて台帳運用している企業では、契約日・契約番号による綴じ方が扱いやすくなります。更新期限が近い契約書を時系列で並べておけば、月次の更新チェックで先頭のファイルを見るだけで済むため、更新漏れの発生を抑えやすい方式です。
契約書番号の採番ルール(例: `YYYY-MM-連番`)を先に決めておき、契約締結時に必ず番号を採る運用と、台帳(後述の紙運用の台帳と棚卸しルールの節を参照)を同期させることが前提になります。取引先や業務種別で探す視点が失われるため、Excel 台帳を検索窓として併用する運用が一般的です。
4分類ごとの実装ガイド:背表紙・ファイル名・インデックスの書式サンプル
分類方式を決めても、背表紙とファイル名の書式がバラつくと、実際にキャビネットの前で探すときに「どの棚を見ればよいか」が担当者によって変わってしまいます。今日から真似できるレベルまで書式サンプルを具体化します。
背表紙の記入ルール
背表紙は、キャビネットに並べたとき視線を横に流すだけで内容が把握できる粒度で書きます。区切り記号は半角スラッシュ(/)で統一し、要素の順序を全ファイルで揃えるのが基本です。
- 取引先名で綴じる場合の書式:
A社 / 業務委託契約・秘密保持契約 / 2024-08〜 - 業務内容で綴じる場合の書式:
業務委託契約 / あ〜お / 2024年度 - 案件で綴じる場合の書式:
案件P-2024-042 / ○○システム開発 / 2024-04〜2025-03 - 契約日・契約番号で綴じる場合の書式:
2024-Q3 / 契約書No.2024-07-001〜050
背表紙のフォントは印刷して貼るのが読み違いを防ぐ観点で望ましく、書き直しの頻度が高い場合はラベルライターの活用も選択肢に入ります。手書きで運用する場合は、油性ペンの色(青=現行・赤=アーカイブ済みなど)を運用ルールに含めておくと視認性が上がります。
ファイル名・タグの命名規則
ボックス内の1つ1つの契約書(原本または写し)に付けるファイル名・タグにも命名規則を統一します。次の要素を含めると、更新期限管理・原本性の確認・貸出返却台帳との紐づけが同時にできます。
- 取引先名(略称)
- 契約種別(業務委託/秘密保持/賃貸借など)
- 契約日(YYYY-MM-DD)
- 更新期限(自動更新の有無と満了日)
- 原本/写しの区別
- 契約書番号(社内採番があれば)
命名規則の例: A社_業務委託_2024-08-15_満了2025-08-14_原本_No.2024-08-003。この命名規則は、後段で扱う Excel 台帳・貸出返却台帳・棚卸しチェックリストとキーが揃うため、紙運用のまま情報の統一性を保ちやすくなります。
インデックス・タブ・カラーラベルの運用
ファイル内部の探索時間を短縮するには、インデックスタブ・カラーラベルの運用ルールを決めます。カラーラベルの色分けは、契約状態(現行・満了間近・満了済み)や重要度(高・中・低)を視覚的に伝える手段として有効です。
- タブは目次と一致させ、五十音や種別の区切りごとに立てる
- カラーラベルは3色までに抑える(例: 青=現行・黄=更新期限3か月以内・赤=満了)
- ラベルの意味は運用マニュアルに1枚で明記し、キャビネット扉裏に掲示する
紙で保管するときの実務ルール(穴あけ・施錠・保管用品)
分類方式と書式が決まったら、紙の契約書を物理的に保管する際の実務ルールを整えます。保管期間中に原本性が疑われる状態を作らないこと、盗難・紛失・改ざんのリスクを抑えることが目的です。
原本に穴を開けない(改ざんの疑いを避ける)
契約書の原本にパンチで穴を開けてリングファイルに綴じる方法は、実務上避けるのが原則です。契約書は民事訴訟で証拠として提示される可能性があり、原本の物理的な加工は「事後に手が加えられていないか」の疑いを生じさせる要因になるためです。
民事訴訟法第228条第4項は、私文書は本人またはその代理人の署名または押印があるときは真正に成立したものと推定すると定めており、原本の署名・押印部分を含む完全性は証拠力の前提になります。
実務では、原本はボックスファイルまたはA4ファイルボックスに立てて収納し、リングファイルで綴じたい場合はスキャン写しに対して行うのが安全です。原本の順序管理は、透明ポケット付きファイル(穴あけ不要)や、契約書ごとに厚紙のフォルダに入れる方法が広く採用されています。
保管用品の選び方(ボックスファイル・A4ファイルボックス・ポケット付きリングファイル・耐火キャビネット)
紙の契約書を保管する用品には、契約書の量・保管期間・機密性に応じた選び方があります。主な選択肢と適した用途を整理します。
| 保管用品 | 適した用途 | 選び方のポイント |
|---|---|---|
| ボックスファイル | 契約書点数が多く、厚みで管理したい/取引先ごと・種別ごとに1区画を割り当てる方式 | A4サイズ対応・背幅は10cm前後が扱いやすい/立てて収納するタイプを選ぶ |
| A4ファイルボックス | 契約書に穴を開けずに保管したい/原本を立てて収納したい | 手前に開くフラップ付きが取り出しやすい/中仕切りを追加すると案件別・種別別に細分化できる |
| ポケット付きリングファイル(クリアファイル) | スキャン写し・関連書類の一体保管/持ち運びが必要な契約書 | ポケットはA4対応で入替可能なタイプ/原本は入れずスキャン写しに用いる |
| 耐火キャビネット・耐火金庫 | 重要契約書(M&A関連・不動産賃貸借・重要業務委託など)/原本の紛失・災害リスクを抑えたい | 耐火性能(時間・温度)と施錠方式を確認/設置場所は防火区画内が望ましい |
市販のボックスファイル・A4ファイルボックスは、コクヨ・キングジム・ライオン事務器などから安価に入手でき、契約書量に応じて追加購入する運用が一般的です。耐火キャビネットは設置スペースと予算に応じて選択肢を絞り込みます。
キャビネットの施錠・耐火・アクセス制御
契約書は個人情報保護法・秘密保持契約・不正競争防止法の営業秘密の観点から、施錠可能なキャビネットまたは書庫で保管するのが実務標準です。次の3点を運用ルールに含めます。
- 施錠キャビネットまたは施錠可能な書庫内で保管し、鍵の管理者を指名する
- アクセス権を「原本にアクセスできる人」「写しのみアクセスできる人」で分ける
- 執務室から離れた耐火区画(もしくは耐火キャビネット)に、重要契約書の原本を集約する
民事訴訟法第228条と原本性の実務注意点
契約書の原本は、紛争が生じた場合に真正に成立した文書として証拠に用いられます。民事訴訟法第228条は、第1項で文書の成立の真正について挙証責任の一般則を定め、第4項で「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」と規定しています。契約書は署名・押印による真正の推定を前提に証拠力を持つため、原本の完全性が実務上の重要な論点になります。
- 原本には穴あけ・折り目・書き込みを行わない(スキャン写しでは可)
- 製本テープや契印の押印状態を保つ
- 原本の紛失・毀損の際は、代替となる写し・電磁的記録の有無をすぐに確認する
契約書の保管期間と根拠条文一覧
契約書の保管期間は、契約書の性質と適用される法令によって異なります。実務では「概ね5〜10年」と丸めて説明されることが多いのですが、根拠条文まで戻ると「どの契約書を、どの条文の何年に基づいて、いつまで保管するか」が明確になります。ここでは主要な根拠条文と、契約書種別ごとの必要保管年数の目安をまとめます。
各根拠条文の要旨
- 会社法第432条第2項: 株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿およびその事業に関する重要な資料を保存しなければならないと定めます。契約書のうち、会計上の重要な資料に該当するものはこの規定に基づき10年間の保管が必要です。
- 法人税法施行規則第59条第1項: 帳簿書類(契約書を含む)を、確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存することを義務付けています。青色申告の欠損金の繰越控除を受ける場合には10年間の保存が必要になる点にも留意します。
- 労働基準法第109条: 労働関係に関する重要な書類(労働者名簿、賃金台帳、雇入れ・解雇・災害補償・賃金その他労働関係に関する重要な書類)の保存を義務付けています。本則は5年間の保存ですが、附則第143条第1項により、当分の間は「3年間」と読み替える経過措置が置かれています。雇用契約書はこの規定に基づいて保管します。
- 商法第19条第3項: 商人は、商業帳簿およびその営業に関する重要な資料を10年間保存しなければならないと定めています。会社法の対象外の商人(個人事業主等)にも準用される規定です。
契約書種別×必要保管年数の一覧表
実務で扱う代表的な契約書について、根拠条文と必要保管年数の目安を整理します。実際の運用では、複数の条文が重なる契約書は「最も長い年数」に合わせるのが安全です。
| 契約書の種別 | 主な根拠条文 | 必要保管年数の目安 |
|---|---|---|
| 売買契約書・請負契約書・業務委託契約書(会計上の重要資料) | 会社法第432条第2項/法人税法施行規則第59条第1項 | 10年(青色欠損金繰越の場合は要件を要確認) |
| 賃貸借契約書 | 会社法第432条第2項/法人税法施行規則第59条第1項 | 10年(会計処理に関わる部分) |
| 雇用契約書・労働条件通知書 | 労働基準法第109条 | 本則5年(附則第143条第1項により当分の間3年に読み替え。実務は3年を目安に運用) |
| 秘密保持契約書(NDA) | NDA自体の存続期間+民事上の消滅時効 | NDAの存続期間+関連紛争の消滅時効まで(実務では10年を目安に) |
| 株主総会議事録 | 会社法第318条第2項 | 10年(本店) |
| 領収書・請求書 | 法人税法施行規則第59条第1項 | 7年 |
各条文の詳細な文言・最新の改正状況は e-Gov 法令検索でご確認ください。上表の年数は目安であり、契約書の内容や適用される個別法(下請法・建設業法・特定商取引法など)により延長される場合があります。
保管期限管理の実務ポイント
保管期限の起算日は法令によって異なる点に注意します。会社法432条2項は「会計帳簿の閉鎖の時」から、法人税法施行規則59条1項は「確定申告書の提出期限の翌日」から、労働基準法は書類の種別ごとに起算日が定められています。
実務ではファイルの背表紙や台帳に「保管起算日/保管満了日(見込み)」を併記し、「概ね5〜10年」で丸めずに、契約書ごとに満了日を管理します。満了日を過ぎた契約書は、廃棄の際にも社内の廃棄ルールに従います(機密文書は溶解処理・シュレッダーなどの記録を残す運用が望ましい)。
紙で運用するための台帳と棚卸しルール
ファイリングの型と保管ルールが揃っても、担当者1人の頭の中にだけルールが残ると、担当者の異動や退職で運用が止まります。台帳と棚卸しのルールを文書化し、チームで運用できる状態にします。
マスタ管理者の指名と保管ルールの文書化
まず、契約書ファイリングのマスタ管理者(1名以上)を社内で指名します。マスタ管理者は次の役割を担います。
- ファイリング分類方式・書式の変更を承認する
- 鍵・アクセス権の付与と剥奪を管理する
- 棚卸しの実施と結果の記録を担う
- 保管ルールを社内マニュアル(1〜3ページ)にまとめ、キャビネット扉裏や共有ドライブに掲示する
社内マニュアルには、分類方式・書式サンプル・保管用品の一覧・アクセス権のルール・棚卸し頻度・貸出返却の手順を含めます。マニュアルは異動・退職のたびに引継ぎ資料として使えるよう、抽象論ではなく実物名・具体例で記述します。
マスタ契約書台帳の列項目(雛形)
物理保管とは別に、契約書全体を横断で管理するマスタ台帳(Excel 想定)を用意します。列項目を統一しておくと、契約書番号・満了日・原本の保管場所を1画面で追跡でき、分類方式を変更するときにも台帳側で紐づけが崩れません。
| 列項目 | 記入内容 | 例 |
|---|---|---|
| 契約書ID | 命名規則で決めた社内採番 | 2024-08-003 |
| 取引先 | 相手方の社名(略称) | A社 |
| 契約種別 | 業務委託/秘密保持/賃貸借など | 業務委託 |
| 契約日 | YYYY-MM-DD | 2024-08-15 |
| 満了日 | YYYY-MM-DD(法定保管期間の起算日を別列で管理する場合もあり) | 2025-08-14 |
| 自動更新の有無 | あり/なし(更新条件を備考へ) | あり |
| 原本の保管場所 | 棚番号・ボックス名など物理保管の位置 | 棚A-01 / 取引先ボックス「あ〜お」 |
| 写しの所在 | スキャン写しの保存先/通常参照用の写しファイル | 共有ドライブ/契約書/A社/ |
| 担当部門 | 主管部門・担当者 | 法務部・○○ |
| 備考 | 解約条件・更新期限アラート日など | 満了3か月前に更新可否確認 |
列項目は前節「ファイル名・タグの命名規則」の6要素と対応しており、命名〜台帳〜物理保管が同じキーで繋がります。マスタ台帳は Excel のセル編集履歴が残る形(変更履歴のログ・共有ロック)で運用します。
貸出返却台帳の項目名と雛形
契約書を執務室内で貸し出す際・キャビネットから取り出す際は、貸出返却台帳に記録を残す運用にします。次の項目を含めると、監査や法定調査で「誰が、いつ、どの契約書を、どの目的で参照したか」を追跡できる状態になります。
| 台帳項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 契約書ID | 命名規則で決めた契約書番号または略称 |
| 貸出者(申請者) | 氏名・所属部門 |
| 貸出日 | YYYY-MM-DD |
| 貸出目的 | 監査対応/取引先との協議/社内レビューなど |
| 返却予定日 | YYYY-MM-DD(3営業日以内を目安) |
| 返却日 | YYYY-MM-DD(返却時に記入) |
| 複写有無 | あり(枚数)/なし |
| マスタ管理者承認 | 署名または押印 |
台帳は紙のノートでもExcelでも問題なく回りますが、Excelで運用する場合は編集履歴が残る形(変更履歴のログ・共有ロック)にしておきます。契約書の原本自体を執務室外に持ち出す場合は、返却予定日を短めに設定し、マスタ管理者の事前承認を必須にする運用が実務で採用されています。
原本と写しの区別・アクセス権・持ち出しのルール
紙運用では、原本と写しを物理的に別のキャビネット・別のボックスファイルに分けて保管するのが基本です。原本は施錠キャビネット、写しは通常のキャビネットに置き、日常の参照は写しで済ませることで、原本の物理的な劣化・紛失リスクを抑えられます。
アクセス権は「原本の閲覧・持ち出しはマスタ管理者の承認必須」「写しの閲覧は所属部門内で自由」といったレベル分けを社内ルールで定めます。原本の複写・写真撮影は、原本性の証拠力に影響しうるため、マスタ管理者の承認記録を残す運用が安全です。
棚卸し頻度と点検チェックリスト
棚卸しは半期に1回、または年1回のペースで実施します。棚卸しは次のチェック項目で行うと、監査・法定調査で即時提示できる状態を維持できます。
- すべての契約書が台帳と一致しているか(台帳に無い契約書・契約書に無い台帳エントリのチェック)
- 更新期限が近い契約書のリストアップ(3か月以内・6か月以内で層別)
- 保管満了日を過ぎた契約書の廃棄処理(廃棄記録の残置)
- 原本の物理的劣化(紙の変色・製本の緩み)の確認
- アクセス権の見直し(異動・退職を反映)
- 鍵の管理状況の確認
棚卸しの結果は簡易な報告書(1枚)にまとめ、マスタ管理者と部門長で共有します。次回棚卸しまでの改善事項(分類方式の調整・保管用品の追加購入など)もこの報告書に記録しておくと、運用が徐々に洗練されます。
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紙で回らなくなったら:自社整理・外部倉庫・電子化の3方向とその判断軸
ファイリングの型と実務ルールを整えても、契約書点数が増え続けると、探索時間・保管スペース・紛失リスクの3つの観点で紙運用の限界が来ます。限界を超えたときの選択肢は、大きく「自社の整理ルールをさらに徹底する」「外部の文書保管サービスに委託する」「電子化・契約管理システムに移行する」の3方向です。それぞれの判断軸を整理します。
まず紙のまま整理ルールを徹底する
契約書の量がキャビネット1〜2本に収まる規模、更新頻度が月数件程度、部門横断の参照が少ない、といった条件が揃う場合は、本記事で述べた分類方式・書式・台帳運用を徹底することで紙のまま回せる場合が多くあります。判断軸としては次の3点を確認します。
- 執務室内の保管スペースがまだ余裕がある
- マスタ管理者を継続的に確保できる
- 探索時間・棚卸し工数が業務時間の許容範囲内
外部の文書保管サービスに委託する
執務室のスペースが逼迫し始めた、しかし電子化への全面移行は当面難しい、というフェーズでは、外部の文書保管サービスへの委託が選択肢に入ります。国内では、寺田倉庫の CloudCabinet、富士ロジテックホールディングスの文書保管サービスをはじめ、専門事業者から物流企業まで複数の選択肢があります。
料金は箱単価(月額)と初期預入費用、呼び出し(原本返送)料金の組み合わせで決まります。実務では箱単価が月100円前後から数百円のレンジに分布し、初期費用・呼び出し料金は事業者ごとに大きく異なるため、必ず複数社の見積もりを取り、社内保管との使い分けを含めて総コストを比較します(各社の公式サイトで最新の料金体系を要確認)。
外部倉庫委託を検討する際の判断軸は次のとおりです。
- 保管スペースの節約効果(社内スペースの家賃相当と月額料金の対比)
- 呼び出し(原本の返送)の頻度と料金(月数回程度なら実運用に耐える)
- セキュリティ体制(施錠倉庫・入退室記録・災害対策)
- 電子化オプション(一部の事業者はスキャン電子化サービスも併設)
契約管理システム/電子契約で電子化する
契約書の点数が数千件を超える、部門横断の参照や検索が業務のボトルネックになっている、更新期限管理が手作業では追いきれない、というフェーズでは、契約管理システムや電子契約サービスへの移行が現実的な解になります。
電子化には既存の紙契約書をスキャンして保存する方法と、新規契約を電子契約で締結する方法があります。スキャン保存では 電子帳簿保存法 のスキャナ保存要件(解像度200dpi以上・RGB各256階調以上・入力期間はおおむね7営業日以内など。国税庁の電子帳簿保存法一問一答で最新版を確認)を満たす必要があります。
電子契約については 電子署名法第3条により、本人による電子署名がなされた電磁的記録は真正に成立したものと推定されます。
電子化への移行を検討する判断軸は次のとおりです。
- 契約書の点数と月あたりの新規契約数
- 取引先の電子契約への対応可否(相手方の準備状況)
- 更新期限アラート・全文検索・台帳自動生成の必要性
- 電子帳簿保存法・電子署名法などの要件を満たしたシステムを選ぶこと
契約書ファイリングを効率化する契約管理システム
契約書ファイリングの電子化を進めるうえで、実務でよく比較検討される契約管理システム・電子契約サービスをスポット比較表で整理します。契約書の台帳自動生成・更新期限アラート・全文検索・電子帳簿保存法対応の観点で、契約書ファイリングの効率化に強いサービスを取り上げます。
| サービス名 | 電子印鑑GMOサイン | クラウドサイン | Hubble | Hubble mini | 法務オートメーション「OLGA」 |
|---|---|---|---|---|---|
| 契約書のスキャン/取込機能 | ●スキャン文書管理・AI自動入力(AI-OCR、2025年12月提供開始) | ●書類インポート(Corporate以上)/「クラウドサイン SCAN」で他社締結の紙書面を取込 | ●PDF取込・高精度OCR(テキスト情報を持たないPDFもデータ化) | ●PDFアップロード・OCR(紙書類・手書きにも対応) | ●AI契約レビューモジュールでWord/PDF両対応(OCR対応) |
| 台帳自動生成 | ●AI自動入力で文書情報項目を抽出 | ●AI契約書管理(締結先企業名・契約期間などを自動入力)/「クラウドサイン カンリ」 | ●AIが取引先名・自動更新の有無など主要項目を自動抽出 | ●締結済みPDFをアップロードするだけでAIが契約台帳を自動作成 | ●受付・案件情報から管理台帳を自動生成 |
| 更新期限アラート | ●契約更新通知機能を標準搭載 | ●解約通知期限などの年月日データにアラート設定可 | ●終了・更新・解約の通知を月次メールで配信 | ●月1回、任意ユーザーへメール通知 | ●締結後の契約更新期限を通知 |
| 全文検索 | △文書検索・文書情報項目カスタマイズ(全文検索の明示なし) | △契約書名・会社名・契約期間・金額などの項目検索 | ●全文・条項・コメント・取引先で横断検索 | ●全文・条項タイトルを横断検索(紙もOCRで対象化) | ●全文検索機能(2025年5月リリース) |
| 電子帳簿保存法対応 | ●JIIMA認証(契約印&実印プラン向け) | ●全プランで認定タイムスタンプ標準付与(フリーは検索要件を利用者側で個別対応) | ●JIIMA認証(公式トップに表示) | ●JIIMA認証(オプション) | 要お問い合わせ |
| 料金の目安 | 無料プランあり 月額8,800円〜(税抜) 送信料100円/件〜 | 無料プランあり 月額11,000円〜(税抜) 送信料220円/件〜 | 無料プランあり 有料は要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| 詳細情報 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
上記5サービスは契約書のファイリング効率化に強いものを絞って取り上げたスポット比較です。契約書管理システム全体をタイプ別の選び方・料金・電子帳簿保存法対応まで含めて広く比較検討したい場合は、以下の記事にまとめています。
法務や情シスの専任担当を置けない体制で導入・運用しやすいサービスに絞り、料金の実額や補助金の適用可否、紙契約書の取り込み方法まで踏み込んで比較検討したい場合は、以下の記事もご参照ください。
中小企業向け契約書管理システムおすすめ20選を比較|料金の実額とデジタル化・AI導入補助金、紙の契約書の取り込みまで解説
取引先ごとの基本契約書はキャビネットの中、最近交わした契約書は共有フォルダのPDF。どれが原本で、どれが最新版なのかを確かめるために、毎回誰かに聞いて回っていないでしょうか。 契約書が分散したままだと、自動更新条項の期限に気づかず不利な条件…
サービス個別紹介
1. 電子印鑑GMOサイン(GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社)

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が提供する電子契約サービスで、立会人型(契約印タイプ)と当事者型(実印タイプ)の両方式に対応しています。ハイブリッド署名により、自社は実印相当の当事者型で本人性を確保しつつ、相手方はメール認証のみの立会人型で署名できる運用が組めます。
締結後の管理では、文書検索・フォルダ管理・文書情報項目のカスタマイズ・CSV出力・スキャン文書管理を本体機能として持ち、契約更新通知機能も標準搭載しています。AI自動入力機能も備えており、既存の紙契約書をスキャンして台帳化する動線が本体内で完結します。
電子帳簿保存法はJIIMA認証(契約印&実印プラン向け)で対応し、セキュリティ認証はISO/IEC 27001・27017・ISMAP・SOC2 Type2の4認証を本体で保有しています。立会人型の送信料は100円/件(税込110円)、有料プランの最低料金はライトプランで年間契約 月額8,800円(税込9,680円、ユーザー数無制限)から利用できます。
2. クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社)

導入社数250万社以上、累計送信件数4000万件超(いずれも2024年度実績、公式トップページ)という稼働実績を持つ電子契約サービスです。運営は弁護士ドットコム株式会社です。標準は事業者署名型(立会人型)で、確実な本人確認が必要な契約向けにマイナンバーカードによる当事者署名型も提供しています。
締結後の管理では、契約書名・氏名・会社名・契約期間・金額での検索に加え、AI契約書管理が締結先企業名や契約期間などを読み取って書類情報を自動入力します。解約通知期限などの年月日データにアラートを設定でき、紙台帳での更新見落としを電子側で拾い直す動線がつくれます。
認定タイムスタンプは全プランで標準付与され、電子帳簿保存法の真実性と検索要件に対応します。フリープランはユーザー1名・月2件までの制限付きで、電子署名とタイムスタンプの基本機能を無料で試せます(有料プランの最低はLightプランで月額11,000円・税抜/12,100円・税込)。
3. Hubble(株式会社Hubble)

株式会社Hubbleが提供する契約業務・管理クラウドで、契約書の作成・レビュー・締結・締結後管理までを1つのプラットフォームで扱います。累計約9万人へのID発行のうち90%以上が法務部門以外で、法務に閉じず契約書に関わる全部署を対象としたCLM(Contract Lifecycle Management)として設計されています。
Word/Excelで編集・保存するたびに版が自動管理され、前バージョンとの差分も自動抽出されます。締結後は取引先名・自動更新の有無などをAIが台帳へ自動反映し、終了・更新・解約の通知を月次メールで配信します。全文・条項・コメント・取引先で契約書を横断検索でき、フォルダ・ドキュメント・契約書単位で権限を細かく設定できます。
電子契約はクラウドサイン・DocuSign・GMOサイン・Adobe Acrobat Signと連携し、チャット系はSlack・Teams・Chatworkに対応しています。ISO/IEC 27001(JIS Q 27001:2023)とJIIMA認証(電子帳簿保存法対応)を本体で保有し、公式導入事例ページでは継続率99%(2025年10月時点)が公表されています。
料金は初期費用0円で、月額はユーザー数と利用機能に応じた見積もり制です。
4. Hubble mini(株式会社Hubble)

契約業務の中でも締結後管理(出口)に範囲を絞ったプロダクトです。株式会社Hubbleが2024年1月にリリースし、締結済みの契約書PDFをアップロードするだけで、AIが契約書名・相手方・開始日・終了日・自動更新の有無・締結日・反社条項の主要7項目を自動抽出して台帳に展開します。
スキャンした紙契約書もOCRでテキスト化して取り込める設計になっており、既存の紙契約書を電子台帳へ移す動線がプロダクト内で完結します。
更新期限は月1回、任意のユーザーへメールで通知が届き、契約書全文と条項タイトルを横断した検索も紙・電子問わず可能です。基本7項目に加えて自社で管理したいカスタム項目を設定すれば、その項目もAIが読み取って台帳に反映します。フォルダ・ドキュメント単位で権限設定できるため、事業部にも解放しつつ機密性の高い契約は分離する運用が組めます。
電子契約はクラウドサイン・GMOサイン・Docusignと連携し、電子帳簿保存法対応はJIIMA認証をオプションで用意しています。ISMS認証(IS742235)を本体で保有し、モリト株式会社の導入事例では営業における契約業務工数が1/3に削減された実績が公表されています。料金は公式に金額の掲載がなく、月額は要問い合わせです。
5. 法務オートメーション「OLGA」(GVA TECH株式会社)

GVA TECH株式会社が2024年11月に「GVA manage」「GVA assist」「GVA契約書管理」を統合して「OLGA」として再構成した法務プラットフォームです。法務案件の依頼受付から契約書管理・ナレッジ活用までを1つのサービスで扱います。
「AI法務アシスタント」「法務データ基盤」「AI契約レビュー」「契約管理」の4モジュールで構成され、運営元は2024年12月に東証グロース市場へ上場しています(証券コード298A)。
事業部はメール・Slack・Teamsのまま法務へ依頼でき、専用アカウントは不要です。受け付けた案件は契約書・関連資料・やりとり履歴とともに案件単位で蓄積され、そこから管理台帳が自動生成されます。締結後の更新期限アラート、AIによるリスク自動検知、全文検索(2025年5月機能リリース)まで一連の動線を備えます。
外部連携はOkta・Azure・Google WorkspaceのSSOに加え、Salesforce AppExchange上のOLGA for Salesforceも提供しています。数千件以上の契約更新管理を行う企業で更新漏れ・失念がゼロになったという定量成果や、株式会社EPGでの契約管理工数が体感3分の1へ減少した事例が公表されています。
料金は要問い合わせで、無料トライアルはなくデモツール体験を提供しています。
まとめ
契約書ファイリングを実務で回すには、まず4分類方式(取引先名/業務内容/案件/契約日・契約番号)から自社に合うものを選び、背表紙・ファイル名・保管用品まで書式を具体化することが起点になります。その上で、穴あけ禁止・施錠・原本と写しの区別といった実務ルールを社内で文書化し、貸出返却台帳と棚卸しチェックリストで担当者依存を脱する運用に整えます。
法定保管期間は「概ね5〜10年」で丸めず、会社法432条2項・法人税法施行規則59条1項・労働基準法109条・商法19条3項の各条文に立ち返って、契約書種別ごとに満了日を管理します。契約書点数の増加や更新管理の負荷が紙で回らなくなってきたときは、自社整理の徹底・外部倉庫委託・電子化への段階移行を、スペース・頻度・セキュリティ・コストの判断軸で選び直してください。
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よくある質問
Q. 契約書ファイリングとは何ですか?
A. 契約書ファイリングとは、紙の契約書を一定の分類方式にそって綴じ、必要なときに素早く取り出せる状態で保管する実務全般を指します。
実務では、取引先名(五十音)/業務内容(契約書の種類)/案件(プロジェクト)/契約日・契約番号の4つの分類方式から自社に合うものを選び、背表紙・ファイル名の書式、保管用品(ボックスファイル・A4ファイルボックスなど)、施錠・アクセス権の運用ルール、貸出返却台帳、棚卸しまでを一体で設計するのが基本です。
Q. 契約書の原本にパンチで穴を開けてリングファイルに綴じてもよいですか?
A. 契約書の原本にパンチで穴を開けてリングファイルに綴じる方法は、原則として避けるのが実務標準です。
原本の物理的な加工は、民事訴訟で証拠として提示された際に「事後に手が加えられていないか」という疑いを生じさせる要因となり、原本の完全性は証拠力の前提になるためです(民事訴訟法第228条第4項の私文書真正の推定は本人・代理人の署名または押印の状態を前提としています)。原本はボックスファイルまたはA4ファイルボックスに立てて収納し、リングファイルで綴じたい場合はスキャン写しに対して行う運用が安全です。
Q. 契約書を保管するファイルは、ボックスファイルとポケット付きリングファイルのどちらがよいですか?
A. 原本はA4ファイルボックスまたはボックスファイルに立てて収納し、ポケット付きリングファイルはスキャン写しや関連書類の一体保管に用いるのが基本です。
ボックスファイルは契約書点数が多く、取引先ごと・種別ごとに1区画を割り当てて厚みで管理したい運用に向きます。ポケット付きリングファイルは穴を開けずに1件ずつ差し込めるため写しの管理に扱いやすく、原本は入れずスキャン写し用に使い分ける運用が実務で定着しています。重要契約書の原本は、耐火キャビネットや施錠可能な書庫に集約するのが望ましい保管形態です。
Q. 契約書は法律上、何年保管する必要がありますか?
A. 契約書の保管年数は契約書の性質と適用法令によって異なり、実務では「概ね5〜10年」で丸めず条文単位で管理するのが安全です。
会計上の重要資料に該当する契約書(売買・請負・業務委託・賃貸借など)は会社法第432条第2項に基づき10年、法人税法施行規則第59条第1項では確定申告書の提出期限の翌日から7年(青色申告の欠損金繰越控除を受ける場合は10年)、雇用契約書は労働基準法第109条(本則5年・附則第143条第1項により当分の間3年)に基づいて保管します。
複数条文が重なる契約書は「最も長い年数」に合わせて満了日を管理するのが実務の安全側の運用です。
Q. 契約書の原本と写しは、それぞれどのように保管すればよいですか?
A. 契約書の原本と写しは、物理的に別のキャビネット・別のボックスファイルに分けて保管し、日常の参照は写しで済ませる運用が基本です。
原本は施錠キャビネット(重要契約書は耐火キャビネット)に集約し、写しは通常のキャビネットに置くことで、原本の物理的な劣化・紛失リスクを抑えられます。アクセス権は「原本の閲覧・持ち出しはマスタ管理者の承認必須」「写しの閲覧は所属部門内で自由」といったレベル分けを社内ルールで定め、原本の複写・写真撮影も承認記録を残す運用が安全です。
Q. スキャンで電子化した後、契約書の原本は廃棄してもよいですか?
A. スキャン後の原本廃棄は、電子帳簿保存法の要件(解像度・タイムスタンプ・訂正削除履歴の確保など)を満たしていることが前提になります。
要件を満たさないまま原本を廃棄すると、税務調査で原本提示を求められた際に対応できなくなるほか、民事訴訟の証拠として提示する場面でも不利になり得ます。とくにM&A関連・不動産賃貸借・重要業務委託などの重要契約書は、電子帳簿保存法の要件を満たしていても、証拠力の観点から原本保管を並行する運用が実務では広く採用されています。
Q. 契約書の原本を外部の文書保管サービスに預けることは法的に問題ありませんか?
A. 契約書の原本を外部の文書保管サービスに預けること自体に、一般的な法的禁止はありません(一部の業法や個別契約で保管場所・持ち出しが制限される場合を除きます)。
実務上は、施錠倉庫・入退室記録・災害対策などのセキュリティ体制、原本の呼び出し(返送)にかかる所要日数と料金、電子帳簿保存法の要件を満たすスキャン電子化オプションの有無を委託先選定の判断軸にします。
監査・法定調査で原本の即時提示を求められる可能性がある契約書は、返送に何営業日かかるかを事前に確認したうえで、社内保管との使い分け(重要契約書は社内、保管期間の後半に入った契約書は外部委託など)を決めておくと運用が安定します。
Q. 契約書ファイリングの整備と、契約管理システムの導入はどちらを先に進めるべきですか?
A. まず紙の分類・保管ルールを整えてから、契約管理システムの導入を検討する順序が実務で回りやすいです。
分類方式・背表紙・ファイル名の書式・原本と写しの区別・台帳項目が決まっていない状態でシステムを導入しても、既存契約書のスキャン取込時にメタ情報が定まらず、電子化後の検索や台帳自動生成・更新期限アラートの精度が上がりにくいためです。
契約書の量がキャビネット1〜2本規模で更新頻度が月数件程度なら紙運用の徹底で足り、契約書点数が数千件を超える・部門横断の検索や更新期限管理が業務のボトルネックになるフェーズで、外部倉庫委託または契約管理システムへ段階移行するのが判断軸になります。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















