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電子帳簿保存法における契約書の保存方法|紙・電子の要件と原本の扱いを解説

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契約書の保存は、電子帳簿保存法によってその扱いが定められています。2024年1月以降、電子データでやり取りした契約書は電子データのまま保存することが求められ、紙に印刷して保管するだけでは要件を満たさない場合があります。一方、紙で締結した契約書をスキャンして保存するかどうかは任意で、紙のまま保管し続けることもできます。

同じ契約書でも「紙で受け取ったのか」「電子でやり取りしたのか」によって、取るべき対応が分かれます。自社の契約書がどちらに当たり、何をすれば法律の要件を満たせるのかは、担当者が迷いやすいところです。

本記事では、電子帳簿保存法における契約書の保存方法を、紙・電子それぞれの保存要件、保存期間、紙の原本を破棄してよいかの判断まで、根拠となる条文や国税庁の資料とともに解説します。

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契約書は電子帳簿保存法の対象|紙と電子で保存の扱いが2系統に分かれる

契約書は、電子帳簿保存法の対象となる書類です。同法は電子取引の定義のなかで契約書を明示的に挙げており、取引に関して電子的にやり取りした契約書は「電子取引」に該当します。

電子取引 取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。以下同じ。)の授受を電磁的方式により行う取引をいう。

出典:電子帳簿保存法 第2条第1項第5号|e-Gov法令検索

一方、紙で受領・作成した契約書は、法人税法などの規定により保存が義務づけられた「国税関係書類」に当たります。契約書という同じ書類でも、紙で受け取ったものと電子でやり取りしたもので、電子帳簿保存法上の位置づけが変わる点が出発点になります。

電子帳簿保存法の3区分と契約書の位置づけ

電子帳簿保存法は、書類を電子的に保存する方法を3つの区分で定めています。国税庁は、このうち「電子帳簿等保存」と「スキャナ保存」は希望者のみが行う任意の制度、「電子取引データ保存」は対応が必要な義務として区別しています。

① 電子帳簿等保存【希望者のみ】…② スキャナ保存【希望者のみ】…③ 電子取引データ保存【法人・個人事業者は対応が必要です】

出典:電子帳簿保存法の内容が改正されました|国税庁(令和5年4月)

契約書に引き付けると、紙で締結した契約書を電子化して保存するのが「スキャナ保存」(任意)、電子契約やメール添付など電子でやり取りした契約書を保存するのが「電子取引データ保存」(義務)に当たります。①の電子帳簿等保存は、最初から一貫してパソコンで作成する帳簿などが対象のため、契約書には基本的に関係しません。以下では、契約書に関わる②スキャナ保存と③電子取引データ保存の対応を順に整理します。

各区分の概要は、国税庁の解説ページでも確認できます。

出典・参考資料(1件)

自社の契約書は紙か電子か──取るべき対応の早見整理

自社が扱う契約書について、まず「紙で受け取った(作成した)ものか」「電子でやり取りしたものか」を分けると、取るべき対応が判断しやすくなります。次の表に、契約書の入手経路ごとの保存区分・対応の要否・主な要件をまとめました。

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契約書の保存区分と対応電子で授受した契約書(電子契約・メール添付PDFなど)紙で受領・作成した契約書
保存区分電子取引データ保存スキャナ保存(電子化する場合)または紙のまま保存
対応義務任意
主な要件真実性の確保と可視性の確保を満たしてデータのまま保存スキャナ保存する場合は入力期間・タイムスタンプ・検索機能など

電子で授受した契約書は電子データのまま保存が義務

電子契約サービスで締結した契約書や、メールに添付されて届いた契約書は「電子取引」に当たり、そのデータを電子のまま保存することが義務づけられています。電子帳簿保存法第7条は、電子取引を行った場合の保存義務を次のように定めています。

所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。

出典:電子帳簿保存法 第7条|e-Gov法令検索

ここでの「電磁的記録を保存しなければならない」とは、受け取ったデータそのものを保存するという意味です。令和3年度(2021年度)の税制改正で、電子取引データを紙に出力して保存する措置は廃止されました。そのため、電子で受け取った契約書を印刷して紙のファイルに綴じるだけでは、原則として要件を満たさない点に注意が必要です。

電子取引に該当する契約書の例

電子取引に当たるのは、書面をやり取りせずデータで契約を交わしたケースです。具体的には、電子契約サービス上で締結した契約書、PDFをメールに添付して受け渡した契約書、クラウドストレージや専用システムを介して共有した契約書などが該当します。

いずれも、取引先とデータで授受した時点で電子取引データ保存の対象になります。相手方から届いたPDFを一度印刷して保管しても、元のデータの保存義務はなくなりません。

2024年1月からの義務化と猶予措置

電子取引データの保存をめぐる制度は、段階的に切り替わってきました。令和3年度(2021年度)改正(施行は令和4年〈2022年〉1月1日)でデータ保存が原則となった後、準備が間に合わない事業者に配慮して、令和5年(2023年)12月31日までは書面に出力して保存する「宥恕措置」が設けられていました。この宥恕措置は、適用期限をもって廃止されています。

令和6年(2024年)1月以降は、代わりに恒久的な「新たな猶予措置」が整備されました。要件どおりに保存できないことに相当の理由があると所轄税務署長が認め、かつ税務調査の際にデータのダウンロードの求めと書面の提示・提出に応じられるようにしている場合は、要件を満たさない保存も認められます。

⑵ 令和4年度税制改正で措置された「宥恕措置」は、適用期限(令和5年 12 月 31 日)をもって廃止されます。
⑶ 新たな猶予措置が整備されました。…イ 保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要です。)ロ 税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合

出典:電子帳簿保存法の内容が改正されました|国税庁(令和5年4月)

この猶予措置は期限の定めのない恒久的な措置で、期間限定だった宥恕措置とは別のものです。ただし、あくまで相当の理由がある場合の例外であり、原則はデータを要件に従って保存することに変わりありません。

電子取引データ保存の要件|真実性の確保と可視性の確保

電子取引データ保存では、「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つを満たす必要があります。真実性はデータが後から改ざんされていないことを、可視性は必要なときに内容を確認・検索できることを担保するための要件です。それぞれ具体的に見ていきます。

電子取引データ保存の2つの要件を示す図。左が真実性の確保で、タイムスタンプの付与、訂正・削除を確認または防止できるシステムの利用、事務処理規程の整備・運用のいずれか1つを行えば満たせる。右が可視性の確保で、見読可能性、システムの概要書等の備付け、取引年月日・取引金額・取引先による検索機能の3つを満たす。電子で授受した契約書はこの2つをともに満たしてデータのまま保存する。

真実性の確保(タイムスタンプ・訂正削除防止・事務処理規程のいずれか)

真実性の確保は、電子帳簿保存法施行規則が定める措置のうち、いずれか1つを行えば満たせます。大きく分けると、タイムスタンプの付与、訂正・削除を確認または防止できるシステムの利用、事務処理規程の整備の3系統です。次の条文の一号・二号がタイムスタンプ、三号がシステム、四号が事務処理規程に対応します。

  • 一 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプが付された後、当該取引情報の授受を行うこと。
  • 二 次に掲げる方法のいずれかにより、当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すこと。
  • 三 次に掲げる要件のいずれかを満たす電子計算機処理システムを使用して当該取引情報の授受及び当該電磁的記録の保存を行うこと。イ 〔訂正削除の事実・内容を確認できる〕ロ 〔訂正削除を行うことができない〕
  • 四 当該電磁的記録の記録事項について正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、当該規程に沿った運用を行い、当該電磁的記録の保存に併せて当該規程の備付けを行うこと。
出典:電子帳簿保存法施行規則 第4条第1項|e-Gov法令検索

タイムスタンプや訂正削除防止の仕組みは電子契約サービスが標準で備えていることが多く、自社で規程を整える負担を抑えられます。システムを使わない場合でも、事務処理規程を定めて運用すれば要件を満たせます。

タイムスタンプを付与せず事務処理規程で真実性を確保する方法は、費用や既存システムの改修を抑えられる一方、規程に何を書けば要件を満たせるのかが判断しづらいところです。タイムスタンプが不要になる条件や、訂正削除の履歴が残るシステムの要件、事務処理規程の記載項目は、条文と国税庁のサンプルまでさかのぼると具体的に確認できます。詳しく知りたい方は、以下の記事で解説しています。

可視性の確保(見読可能性・システム概要書・検索機能)

可視性の確保では、保存したデータをディスプレイや書面で明瞭に確認できること(見読可能性)、システムの概要書や操作説明書を備え付けること、そして一定の条件で検索できることが求められます。とくに検索機能は、取引年月日・取引金額・取引先を条件に指定できることが要件です。

五 当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を確保しておくこと。イ 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先(ロ及びハにおいて「記録項目」という。)を検索の条件として設定することができること。ロ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。ハ 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。

出典:電子帳簿保存法施行規則 第2条第6項第5号|e-Gov法令検索

ファイル名に「日付・金額・取引先」を規則的に付けて表計算ソフトの索引で管理する方法でも要件は満たせますが、件数が増えると手作業の負担が大きくなります。契約書の情報を登録すると自動で検索できるようになるサービスを使えば、この要件を継続的に満たしやすくなります。

出典・参考資料(1件)

令和5年度改正による検索要件の緩和

検索機能の要件は、令和5年度(2023年度)の税制改正で緩和されました。検索機能そのものが不要になる対象者の範囲が、基準期間の売上高1,000万円以下から5,000万円以下の保存義務者へと広がっています。

イ 検索機能が不要とされる対象者の範囲が、基準期間(2課税年度前)の売上高が「1,000 万円以下」の保存義務者から「5,000 万円以下」の保存義務者に拡大されました。
ロ 対象者に「電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている保存義務者」が追加されました。

出典:電子帳簿保存法の内容が改正されました|国税庁(令和5年4月)

この緩和は期限の定めのない恒久的な措置です。売上規模が要件に当てはまる場合は検索機能の準備を省ける一方、事業の成長で基準を超えれば検索機能が必要になるため、あらかじめ対応できる体制を考えておくと安心です。

検索機能そのものが不要になる対象に当てはまらない場合でも、税務調査でのダウンロードの求め(電磁的記録の提示・提出の要求)に応じられるようにしていれば、検索機能の要件は一部が不要になります。

具体的には、範囲を指定して条件を設定できること(ロ)と、複数の記録項目を組み合わせて条件を設定できること(ハ)は不要となり、取引年月日・取引金額・取引先で検索できること(イ)だけを満たせば足ります。自社がどの区分に当たるかで、準備すべき検索機能の範囲が変わります。

紙で締結した契約書の扱い|スキャナ保存は任意・原本破棄には注意

紙で受け取った契約書は、電子で授受した契約書とは扱いが異なります。ここでは、紙の契約書をそのまま保存してよいのか、スキャンして電子化する場合の要件、そして紙の原本を破棄してよいかを順に整理します。

そのまま紙で保存してもよい/スキャナ保存は任意

紙で締結した契約書は、紙のまま保存し続けても差し支えありません。スキャンして電子データで保存する「スキャナ保存」は任意の制度で、電子帳簿保存法第4条第3項は、要件を満たせば書類の保存に代えて電子的な保存を行うことが「できる」と定めています。

保存義務者は、国税関係書類…の全部又は一部について、当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる。

出典:電子帳簿保存法 第4条第3項|e-Gov法令検索

電子取引データ保存が「保存しなければならない」(義務)と定められているのに対し、スキャナ保存は「保存に代えることができる」(任意)と、条文の文末が明確に異なります。紙の契約書を電子化するかどうかは、自社の運用に合わせて選べます。

スキャナ保存の要件(入力期間・タイムスタンプ・検索)

スキャナ保存を行う場合は、一定の要件を満たす必要があります。施行規則は、書類の作成・受領後に速やかに入力すること、または事務処理の規程を定めたうえで通常の期間を経過した後に速やかに入力することを求めています。あわせて、真実性を担保するタイムスタンプの付与や、電子取引データ保存と同様の検索機能も必要です。

入力期間の具体的な目安として、国税庁は一問一答などで「最長約2か月とおおむね7営業日以内」という取り扱いを示しています。契約書は資金や物の流れに直結する「重要書類」に位置づけられ、領収書などと同じく一般書類より満たすべき要件が多くなります。

契約書をスキャナ保存する場合に満たすべき要件は、大きく3つです。入力期間内にスキャンして入力すること、真実性を担保するタイムスタンプを付与すること、取引年月日・取引金額・取引先で検索できる状態にすることが求められます。

画像の読み取りにも条件があり、解像度200dpi相当以上・赤緑青それぞれ256階調以上のカラーで読み取る必要があります。重要書類である契約書は、一般書類で認められるグレースケール(白黒)での保存が使えない点が主な違いです。

上記の入力期間・タイムスタンプ・解像度・検索に加えて、契約書のスキャナ保存では次の要件も満たす必要があります。運用体制やシステムの選定に直結するため、あわせて確認しておきましょう。

  • 訂正・削除の事実と内容の確認(バージョン管理):スキャンしたデータを訂正・削除した場合にその事実と内容を確認できること。訂正・削除ができないシステムを使う方法でも要件を満たせます。
  • 入力者等情報の確認:データを入力した人、またはその人を直接監督する人に関する情報を確認できるようにしておくこと。
  • 帳簿との相互関連性の確保:スキャナ保存した契約書と、関連する帳簿の記録との対応関係を確認できるようにしておくこと。
  • 見読可能装置・システム概要書の備付け:14インチ以上のカラーディスプレイとカラープリンタ、操作説明書を備え、4ポイントの大きさの文字を認識できる状態で速やかに出力できること。システムの概要を記載した書類も備え付けること。

これらは電子取引データ保存よりも項目が多く、紙の契約書をスキャナ保存に切り替える際は、要件を満たすシステムの利用が現実的です。

出典・参考資料(2件)

過去に受け取って保管してきた契約書(過去分重要書類)をスキャナ保存する場合は、あらかじめ所轄税務署長へ適用届出書を提出する必要があります。これから受け取る契約書のスキャナ保存には、この事前届出は不要です。

紙の原本を破棄してよいか(証拠力・印紙税の観点)

スキャナ保存の要件を満たせば、税務上は紙の原本を破棄することが認められます。ただし、税務以外の観点では慎重な判断が必要です。民事訴訟では、文書の証拠提出は原本・正本・認証のある謄本で行うのが原則で、裁判所は原本の提出を命じることができます。

第百四十三条 文書の提出又は送付は、原本、正本又は認証のある謄本でしなければならない。
2 裁判所は、前項の規定にかかわらず、原本の提出を命じ、又は送付をさせることができる。

出典:民事訴訟規則 第143条|裁判所

スキャンした画像は原本ではなく複製の位置づけになるため、原本を破棄していると、契約の成立をめぐって争いになった際に不利に働く可能性があります。重要な契約書は、税務上の要件を満たしていても、原本を一定期間残す運用が無難です。

原本を破棄してよいかとは別の論点ですが、印紙税の負担も紙と電子で異なります。紙で作成した契約書のうち課税文書に当たるものには印紙税がかかり、収入印紙の貼付で納付します。一方、電子契約のようにデータで授受した契約書は、課税文書の作成に当たらないとされ、印紙税はかかりません。

出典・参考資料(2件)

契約書の保存期間と違反した場合の扱い

保存方法とあわせて押さえておきたいのが、どのくらいの期間保存すればよいか、そして要件を満たさなかった場合にどうなるかです。対応方針を固める前提として整理します。

保存期間は原則7年、繰越欠損金があると10年

契約書を含む帳簿書類の保存期間は、法人の場合は原則7年です。青色申告法人の帳簿書類の保存について、法人税法施行規則は次のように定めています。

青色申告法人は、次に掲げる帳簿書類を整理し、起算日から七年間、これを納税地…に保存しなければならない。

出典:法人税法施行規則 第59条第1項|e-Gov法令検索

ただし、欠損金(青色繰越欠損金)が生じた事業年度については、保存期間が10年になります。起算日は、その事業年度の確定申告期限の翌日から数える点にも注意が必要です。

個人事業主の場合も契約書などの取引に関する書類の保存義務があり、保存期間は事業形態で異なります。白色申告では、取引に関して作成・受領した書類は5年です。青色申告では帳簿や決算関係書類が7年となるなど区分ごとに扱いが分かれるため、詳細は国税庁の案内で確認してください。起算日は、法人が確定申告期限の翌日であるのに対し、個人はその年の翌年3月15日の翌日から数えます。

あわせて、消費税の課税事業者(適格請求書発行事業者を含む)は、仕入税額控除を受けるために、受領した適格請求書(インボイス)などの請求書等と帳簿を原則7年間保存する必要があります。所得税・法人税の書類保存とは別枠の要件のため、契約書だけでなく請求書等もあわせて保存年数を管理する必要があります。

出典・参考資料(2件)

要件を満たさなかった場合の扱い

電子取引データを要件どおりに保存していない場合でも、直ちに罰則が科されるわけではありません。前述の猶予措置に相当の理由が認められれば、要件を満たさない保存も許容されます。一方で、保存データに隠蔽や仮装があった場合は、通常の重加算税に10%が上乗せされます。

…重加算税の額は、これらの規定にかかわらず、これらの規定により計算した金額に、これらの規定に規定する基礎となるべき税額…に百分の十の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。

出典:電子帳簿保存法 第8条第5項|e-Gov法令検索

たとえば、過少申告に対する重加算税の割合は35%と定められており、これに電子帳簿保存法の10%が加わると45%になります。ただし、この10%の加重が適用されるのは保存データに隠蔽・仮装があった場合で、単に保存要件を満たしていないだけで自動的に科されるわけではありません。それでも負担は重いため、日頃から要件に沿って保存する体制を整えておくことが結果的にリスクを抑えます。

加算税とは別に、帳簿書類を財務省令に従って備付け・記録・保存していないと、青色申告の承認が取り消される可能性もあります。取り消されると、欠損金の繰越控除や各種特別控除といった税務上の特典を受けられなくなるため、金銭的な影響は加算税だけにとどまりません。契約書を含む帳簿書類を要件どおりに保存しておくことは、こうした不利益を避ける意味でも重要です。

出典・参考資料(2件)
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電子帳簿保存法に対応した契約書管理を進める方法

ここまで見た要件は、契約書の締結や保管に対応したサービスを使うことで満たしやすくなります。とくに電子取引データ保存では、真実性の確保に必要なタイムスタンプの付与と、可視性の確保に必要な検索機能を、サービス側が標準で備えていることが多いためです。

具体的には、締結時に認定タイムスタンプを自動で付与する機能、記録の訂正・削除を防ぐ仕組み、取引年月日・取引金額・取引先での検索機能などが、要件と直接対応します。紙の契約書のスキャナ保存や原本の保管に対応するサービスもあります。ここからは、電子帳簿保存法への対応を公式に明示している契約書関連サービスを紹介します。

以下は、ご紹介するサービスの比較表です。電子取引データ保存への対応・認定タイムスタンプの付与・検索機能・紙のスキャナ保存への対応に加え、第三者機関が電子帳簿保存法の要件への適合を認証した目印である「JIIMA認証」の有無を軸に並べています。自社が電子・紙のどちらの契約書を主に扱うかに照らして見比べてください。

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サービス名クラウドサイン電子印鑑GMOサインWAN-Signマネーフォワード クラウド契約
提供会社弁護士ドットコム株式会社GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社株式会社NXワンビシアーカイブズ株式会社マネーフォワード
電子取引データ保存への対応
認定タイムスタンプの付与
検索機能(日付・金額・取引先)
スキャナ保存(紙契約書の電子化)公式に記載なし×(公式に非対応)
JIIMA認証公式に記載なし(契約印&実印プラン)(3保存方法すべて)公式に記載なし
詳細情報公式資料を見る公式資料を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見る

クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社)

クラウドサインのウェブサイト

クラウドサインは、弁護士ドットコム株式会社が運営する電子契約サービスです。契約の締結から締結後の管理までをクラウド上で完結でき、全プランで総務大臣認定のタイムスタンプを標準付与します。これにより、電子取引データ保存の真実性の確保に対応します。

締結した契約データは記録の訂正・削除ができない設計で、取引年月日・取引金額・取引先といった書類情報を登録して検索できるため、可視性の確保の要件にも対応可能です。電子で授受した契約書を要件を満たして保存したい場合の選択肢になります。

電子印鑑GMOサイン(GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社)

電子印鑑GMOサインのウェブサイト

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が提供する電子契約サービスで、電子取引ソフト法的要件認証(JIIMA認証)を取得し、電子帳簿保存法への対応を公式に明示しています。認定タイムスタンプを標準で付与し、文書の検索や文書情報のカスタマイズにも対応します。

スキャンした文書の管理機能も備えており、電子でやり取りした契約書だけでなく、紙で受け取った契約書の電子化まで一つのサービスで扱える点が特徴です。電子取引とスキャナ保存の両面を検討する企業に向いています。

WAN-Sign(株式会社NXワンビシアーカイブズ)

WAN-Signのウェブサイト

文書保管サービスの実績を持つ株式会社NXワンビシアーカイブズが提供します。電子帳簿保存法の3つの保存方法(電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データ保存)すべてで、令和5年(2023年)改正の基準に対応したJIIMA認証を取得している点が強みです。

認定タイムスタンプや長期署名、文書検索に加え、紙の原本を預けて保管する書庫サービスとの連携も用意されています。電子でやり取りした契約書と紙で締結した契約書の両方を、要件を満たしながら一元的に扱いたい場合に適した選択肢です。

マネーフォワード クラウド契約(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウド契約のウェブサイト

バックオフィス向けクラウドサービスを手がける株式会社マネーフォワードの電子契約サービスです。締結した電子契約に自動でタイムスタンプを付与し、契約書名・契約開始日と終了日・契約金額を登録して検索できるため、電子取引データ保存の真実性と可視性の要件に対応します。

他社の電子契約サービスで締結した契約書も取り込んで一元管理できるため、電子で授受した契約書の保存義務に直接効きます。ただし、紙の契約書をスキャンして保存するスキャナ保存には公式に対応していないため、紙の契約書の電子化まで求める場合は別の手段を検討する必要があります。

ここで挙げたのは電子帳簿保存法への対応を公式に明示するサービスの一部です。契約書管理システムは電子契約特化型から台帳管理型まで提供形態が幅広く、料金や機能も差があるため、自社の契約書の保存要件に合う一社は全体を見比べて選ぶのが近道です。以下の記事では、契約書管理システムをタイプ別の選び方・料金・電帳法対応の観点から比較しています。

まとめ

電子帳簿保存法における契約書の扱いは、紙で締結したものと電子で授受したもので分かれます。紙の契約書はそのまま保存してもよく、スキャナ保存は任意です。一方、電子でやり取りした契約書は電子データのまま保存することが義務づけられ、真実性の確保と可視性の確保という2つの要件を満たす必要があります。

対応を進める際は、まず自社が扱う契約書を紙と電子に仕分けることから始めます。電子で授受した契約書は、真実性の確保をタイムスタンプ・システム・事務処理規程のどれで満たすかを決め、取引年月日・取引金額・取引先で検索できる状態を整える必要があります。紙で締結した契約書は、そのまま保存するか、要件を満たしてスキャナ保存するかを選ぶ流れになります。

保存期間は原則7年(繰越欠損金がある事業年度は10年)で、スキャナ保存後に紙の原本を破棄する場合は民事訴訟上の証拠力にも目を向けておくと安心です。要件を満たす体制づくりには、タイムスタンプや検索機能を備えた契約書関連サービスの活用が現実的な手段になります。自社の契約書が紙か電子かを整理したうえで、必要な対応を進めていきましょう。

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よくある質問(FAQ)

Q. 電子帳簿保存法において契約書は保存の対象になりますか?

A. 契約書は電子帳簿保存法の対象です。紙で受領・作成した契約書は「国税関係書類」、電子でやり取りした契約書は「電子取引」に該当し、同じ契約書でも紙で受け取ったか電子で授受したかによって保存の扱いが分かれます。電子帳簿保存法第2条は、電子取引の定義のなかに契約書を明示的に挙げています。

出典・参考資料(1件)

Q. 電子で結んだ契約書は、紙に印刷して保管すればよいですか?

A. 電子で授受した契約書は、紙に印刷して保管するだけでは足りず、受け取った電子データのまま保存する必要があります。令和3年度の税制改正で、電子取引データを書面に出力して保存する措置が廃止されたためです。

ただし、要件どおりに保存できないことに相当の理由があると所轄税務署長が認め、税務調査の際にデータのダウンロードの求めや書面の提示に応じられるようにしている場合は、恒久的な猶予措置により要件を満たさない保存も認められます。

出典・参考資料(1件)

Q. 契約書を電子帳簿保存法に対応させるのに、税務署への事前届出や承認は必要ですか?

A. 電子取引データ保存や、これから受け取る契約書のスキャナ保存には、税務署への事前の届出や承認は不要です。以前はスキャナ保存に事前承認が必要でしたが、法改正により廃止されました。要件を満たすシステムや事務処理規程を用意すれば、すぐに始められます。ただし、過去に受け取って保管してきた契約書(過去分重要書類)をスキャナ保存する場合に限り、あらかじめ所轄税務署長への適用届出書の提出が必要です。

出典・参考資料(1件)

Q. 紙の契約書をスキャンして保存すれば、紙の原本は捨ててよいですか?

A. スキャナ保存の要件を満たせば、税務上は紙の原本を破棄できます。ただし、スキャンした画像は原本ではなく複製の位置づけになります。

民事訴訟では文書の提出を原本・正本・認証のある謄本で行うのが原則で、裁判所は原本の提出を命じることができるため、契約の成立をめぐって争いになった際に不利に働く可能性があります。重要な契約書は、税務上の要件を満たしていても原本を一定期間残す運用が無難です

出典・参考資料(1件)

Q. 電子帳簿保存法における契約書の保存期間は何年ですか?

A. 契約書を含む帳簿書類の保存期間は、法人の場合は原則7年です。ただし、欠損金(青色繰越欠損金)が生じた事業年度については10年になります。起算日は、その事業年度の確定申告期限の翌日から数える点にも注意が必要です。

出典・参考資料(1件)

Q. 契約書を電子契約に切り替えると、印紙税はかからなくなりますか?

A. 電子データで授受した契約書は印紙税の課税文書の作成に当たらず、印紙税はかかりません。一方、紙で作成した契約書のうち課税文書に当たるものには印紙税が課され、収入印紙の貼付で納付します。契約書を電子でやり取りする運用に切り替えると、この印紙税の負担がなくなる点も電子化の利点の一つです。

出典・参考資料(1件)

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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