「いつもと違うログイン通知が届いた」「操作した覚えのない履歴が残っている」——そんな変化に気づいて、不正アクセスされたのではないかと不安になる場面は、企業の担当者にも個人にも起こり得ます。実際、令和7年(2025年)の不正アクセス行為の検挙件数では、他人のIDやパスワードを盗んで悪用する「識別符号窃用型」が9割以上を占めています。
不正アクセスされたかどうかは、多くの場合、まず自分で・追加の費用をかけずに確認できます。ただし、それが本当に不正アクセスなのか、どこを確認すればよいのかが分からず判断に迷う人は少なくありません。被害を広げないためには、まず現状を正しく切り分けることが大切です。
本記事では、不正アクセスされたかどうかを自分で確認する方法を、兆候(サイン)の見分け方から、クラウドサービスのアカウント・業務用パソコンやスマートフォン・社内ネットワークといった対象別の具体的な手順まで整理します。個人の利用者にも企業の担当者にも役立つよう、疑わしいときの初動対応と届出、以後こうした兆候を継続的に検知するための手段まであわせて解説します。
目次
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不正アクセスの兆候(サイン)|これが出ていたら要注意
不正アクセスは、日常の操作の中に小さな違和感として現れることがほとんどです。まずは、手元の状況が次のサインに当てはまらないかを確認してください。多くの不正アクセスは、盗んだIDとパスワードで正規の利用者になりすましてログインする手口のため、「本人の操作では説明できない記録や変化」がそのまま兆候になります。
- 身に覚えのないログイン通知が届く:本人がログインしていない時間帯・端末での通知は、第三者がIDとパスワードでログインを試みた(または成功した)可能性を示します。
- 見慣れないIPアドレス・地域からのアクセス履歴がある:普段の勤務地と離れた国・地域からのアクセスは、なりすましログインの典型的な痕跡です。
- 深夜・休日など不自然な時間帯の操作記録が残っている:業務時間外の操作は、本人の行動と切り分けやすい手がかりになります。
- ログイン失敗が短時間に何度も記録されている:総当たりでパスワードを試す攻撃(ブルートフォース)や、他サービスから流出したパスワードの使い回しを試す攻撃の痕跡である場合があります。
- パスワードや登録情報が勝手に変更されている:ログインできなくなった、再設定用のメールアドレス・電話番号が書き換えられている場合、侵入者が本人を締め出してアカウントを乗っ取ろうとしている可能性があります。
- 覚えのないメール転送ルールや連携アプリが追加されている:受信メールを外部へ自動転送する設定や、見覚えのない外部アプリとの連携は、侵入後に情報を盗み続けるために仕込まれることがあります。
- 身に覚えのない送金・購入・投稿がある:金銭被害や、SNS・メールからの不審なメッセージ送信は、乗っ取りが実際の被害に発展しているサインです。
これらは、警察庁が公表している不正アクセスの相談事例(ウェブメールの送受信履歴が勝手に操作されていた、SNSのパスワードが変更されてログインできなくなった、クレジットカードに身に覚えのない購入があった、など)とも重なります。1つでも当てはまる場合は、次章の手順で対象ごとに詳しく確認してください。
出典・参考資料(2件)
【対象別】不正アクセスされたか調べる方法
ここからは、不正アクセスされたかどうかを自分で確認する具体的な手順を、クラウドサービス・アカウント、業務用端末、社内ネットワーク・サーバーの3つの対象に分けて解説します。攻撃の痕跡は残る場所が対象ごとに異なるため、どこを見れば「シロ・クロ・要精査」を切り分けられるかを押さえておくことが重要です。
クラウドサービス・アカウントで調べる
メール・グループウェア・SNSなどのクラウドサービスは、多くが管理画面にログイン履歴や利用中デバイスの一覧を備えています。まずは各アカウントの設定画面から、次の4点を確認してください。
- ログイン履歴・アクセスしたデバイスの一覧:身に覚えのない端末・地域・時間帯のアクセスがないかを確認します。
- 再設定用の連絡先(メールアドレス・電話番号):勝手に書き換えられていないかを確認します。書き換えられている場合、アカウント乗っ取りが進行している可能性があります。
- 連携している外部アプリ:覚えのないアプリにアクセス権が付与されていないかを棚卸しします。
- メールの自動転送ルール:受信メールを外部へ転送する設定が無断で追加されていないかを確認します。
主要なサービスでは、確認する場所が公式に案内されています。Googleアカウントでは「セキュリティ」画面の「最近のセキュリティ関連のアクティビティ」「お使いのデバイス」から不審なログインや端末を確認でき、「アカウントにアクセスできるアプリ」で連携アプリを、「2段階認証プロセス」で追加の保護状況を確認できます。
個人向けのMicrosoftアカウントでは「最近のアクティビティ」ページに、過去30日以内にアカウントを使用した日時と場所が表示されます。不審なサインインを「これは自分ではない」と申告すれば、アカウント保護の手続きに進めます。
Microsoft 365などの職場・学校アカウントでは、マイアカウントポータル(myaccount.microsoft.com)の「最近のアクティビティ」から、本人のサインインの成功・失敗の履歴を確認できます。
Apple ID・LINE・X(旧Twitter)・Instagramなど、個人でよく使うサービスでも考え方は同じです。各サービスの設定にある「セキュリティ」「ログイン履歴」「ログイン中の端末」「連携アプリ」にあたる項目を開き、身に覚えのないログインや連携がないかを確認します。項目の名称はサービスごとに異なりますが、アカウントのセキュリティ設定をたどれば見つかります。
出典・参考資料(4件)
業務用パソコン・スマートフォン(端末)で調べる
端末そのものが乗っ取られていないかは、OSに残るログイン記録とセキュリティ対策ソフトの状態から確認します。Windowsの場合、スタートメニューで「イベントビューアー」と検索して起動し、「Windows ログ」内の「セキュリティ」に記録されるログオンの記録を確認します。
ログオンの成否はイベントIDで区別され、成功は「4624(アカウントが正常にログオンしました)」、失敗は「4625(アカウントのログオンに失敗しました)」として記録されます。深夜など不自然な時間帯の記録や、繰り返されるログオン失敗がないかを確認できます。
あわせて、セキュリティ対策ソフトでの全体スキャンを実行し、マルウェアが検出されないかを確認します。タスクマネージャーやインストール済みアプリの一覧に、見覚えのない常駐プログラムや、本人が入れた記憶のないソフトがないかも点検してください。セキュリティ対策ソフトが無断で無効化されている場合は、侵入者が検知を回避しようとした痕跡の可能性があります。
Macの場合も、標準の「コンソール」アプリでシステムのログを、「システム設定」のログイン項目で自動起動するプログラムを確認できます。あわせて、身に覚えのないプロファイルや構成が追加されていないかも点検します。
スマートフォンでは、まず利用しているサービス(Google・Appleのアカウント、メール、SNSなど)のセキュリティ画面で、身に覚えのないログインや連携アプリがないかを確認します。
あわせて端末側でも、インストールした覚えのないアプリ、勝手に追加された構成プロファイル、データ通信量やバッテリー消費の急な増加、勝手に表示される広告といった異常がないかを点検してください。不審な点があれば、パスワードの変更と多要素認証の設定を行います。
出典・参考資料(1件)
社内ネットワーク・サーバーで調べる
複数の端末やサーバーが接続する社内ネットワークでは、個々の端末だけでなく、通信と認証の記録から全体を俯瞰して確認します。侵入者が内部に潜んでいる場合、その活動はネットワークの通信ログや各サーバーの認証ログに痕跡として残ります。
- ファイアウォール・プロキシの通信ログ:通常業務では通信しない国や外部サーバーへの不審な通信、深夜帯の大量のデータ送信がないかを確認します。外部の攻撃者と通信する不正プログラムの痕跡が見つかることがあります。
- サーバー・業務システムの認証ログ:短時間に集中したログイン失敗や、管理者権限での不審なログイン、普段使われないアカウントの利用がないかを確認します。
- 端末間の内部通信:ある端末から社内の他の端末・サーバーへ次々とアクセスする動き(横移動)は、侵入範囲を広げようとする攻撃の兆候です。
ログが分散していて追い切れない場合や、そもそもログを取得・保存できていない場合は、この後で解説する継続的な検知の仕組みの導入もあわせて検討することをおすすめします。
対象別「どこを見る × クロのサイン」早見表
ここまでの確認ポイントを、対象・主な確認場所・不正が疑われるサインの3点で整理しました。自社の状況に照らして、どこから確認すべきかの見取り図として活用してください。
| 対象別・不正アクセスの確認ポイント | クラウドサービス・アカウント | 業務用パソコン・スマホ(端末) | 社内ネットワーク・サーバー |
|---|---|---|---|
| 主な確認場所 | ログイン履歴・利用中デバイス一覧・連携アプリ・メール転送設定(各アカウントのセキュリティ設定画面) | OSのログオン記録(Windowsはイベントビューアーの「セキュリティ」)、セキュリティ対策ソフトのスキャン結果、常駐プロセス・インストール済みアプリ | ファイアウォール・プロキシの通信ログ、サーバー・業務システムの認証ログ、端末間の内部通信 |
| 不正が疑われるサイン | 身に覚えのないデバイス・地域からのログイン、覚えのない連携アプリ、無断で追加されたメール転送ルール、再設定用連絡先の書き換え | 深夜など不自然な時間帯のログオン記録、繰り返されるログオン失敗、見覚えのない常駐プログラム、セキュリティ対策ソフトの無断停止 | 通常業務にない国・時間帯の外部通信、集中したログイン失敗、管理者権限の不審な利用、端末間を次々とたどる横移動 |
※確認できる項目名や画面構成は、利用するサービス・OSのバージョンや契約プランによって異なります。詳細は各サービスの公式ヘルプをご確認ください。
不正アクセスが疑われるときの初動対応と届出
確認の結果、不正アクセスが疑われる場合は、被害の拡大を防ぎながら、後の調査や届出に必要な情報を残すことが重要です。慌てて操作すると証拠が消えてしまうことがあるため、順序を意識して対応します。
対応の順序と理由
以下は、被害の拡大防止と証拠の保全を両立させるための実務的な進め方です。状況によって前後することはありますが、それぞれの行動が「なぜ必要か」を押さえておくと判断しやすくなります。
- 証拠を保全する:ログイン履歴や不審な画面は、スクリーンショットや印刷で保存します。この後の操作で履歴が上書き・消去される前に残しておくことで、調査や警察への相談・届出の材料になります。
- ネットワークから切り離す:感染や侵入が疑われる端末は、LANケーブルを抜くかWi-Fiを切断し、被害の拡大や社内の他端末への横移動を止めます。ただし電源は切らず、通電したまま切り離すのが基本です(電源を落とすと、調査に有効なメモリ上の情報が失われることがあります)。
- パスワードを変更し、多要素認証を設定する:侵害されていない別の安全な端末から、対象アカウントのパスワードを変更します。同じパスワードを使い回している他サービスもあわせて変更し、多要素認証を設定して侵入経路を塞ぎます。
- 関係者・窓口へ報告する:利用しているサービスの提供会社や社内の情報セキュリティ担当に連絡し、必要に応じて警察・専門窓口へ相談します。個人データの漏えいが疑われる場合は、後述の報告義務も確認します。
警察庁も、不正アクセスの被害に遭った場合の対応として、ログイン履歴等を保存して証拠を保全すること、パスワードを変更すること、サービス提供会社に相談すること、警察に通報・相談することを案内しています。
出典・参考資料(1件)
証拠保全でやってはいけないこと
被害が疑われる端末に対して、次のような対応をとると、後の調査に必要な証拠が失われたり、被害が拡大したりするおそれがあります。
- 端末の初期化・OSの再インストールを急ぐ:一見「きれいにする」対応に見えますが、侵入の痕跡やマルウェア本体といった証拠も同時に消えてしまい、原因の特定や被害範囲の確認ができなくなります。
- 感染が疑われる端末をそのまま使い続ける:通常業務を続けると、ログが上書きされて証拠が失われるうえ、侵入者に活動を継続させ、他の端末やサーバーへ被害が広がる余地を与えます。
- 自己判断で不用意にファイルを削除・操作する:不審なファイルを消すと、攻撃の手口を示す手がかりが失われます。切り離したうえで、調査担当や専門家の指示を待つのが安全です。
相談窓口・届出先
自社だけで対応が難しい場合や、被害の届出を行いたい場合は、公的な相談窓口を利用できます。
- 警察(サイバー犯罪相談窓口):各都道府県警察にサイバー犯罪の相談窓口が設けられており、警察庁のオンライン受付窓口からも通報・相談ができます。保存したログイン履歴などの証拠を持参・提示するとスムーズです。人命に関わる緊急の場合は110番へ連絡します。
- IPA(情報セキュリティ安心相談窓口):独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が、情報セキュリティに関する技術的な相談を受け付けています(電話:03-5978-7509)。コンピュータウイルスや不正アクセスに関する届出も同機構が受け付けています。
出典・参考資料(2件)
漏えい時の報告義務(個人情報保護委員会への報告・本人通知)
この項目は、事業として個人データを取り扱う事業者に向けた内容です。個人のプライベートなアカウントが不正アクセスされた場合に、個人が負う義務ではありません。
不正アクセスによって、事業として取り扱う個人データが外部に漏れた(そのおそれがある)場合、個人情報取扱事業者には、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が法律上義務づけられています。個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)第26条は、次のように定めています。
個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失、毀損その他の個人データの安全の確保に係る事態であって個人の権利利益を害するおそれが大きいものとして個人情報保護委員会規則で定めるものが生じたときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該事態が生じた旨を個人情報保護委員会に報告しなければならない。
出典:個人情報の保護に関する法律 第二十六条|e-Gov法令検索
報告が必要になる「個人の権利利益を害するおそれが大きい事態」は、施行規則第7条で次の4類型が定められています。不正アクセスなど不正な目的で行われた行為による漏えい(またはそのおそれ)は、このうち第3号に該当するのが典型です。
- 要配慮個人情報が含まれる個人データの漏えい等(またはそのおそれ)
- 不正に利用されることにより財産的被害が生じるおそれがある個人データの漏えい等(またはそのおそれ)
- 不正の目的をもって行われたおそれがある行為による個人データの漏えい等(またはそのおそれ)
- 本人の数が1,000人を超える個人データの漏えい等(またはそのおそれ)
出典・参考資料(1件)
報告の期限は施行規則第8条に定められており、事態を知った後「速やかに」行う報告(速報)と、原則30日以内に行う報告(確報)の2段階です。ただし、不正の目的で行われた行為による事態(前述の第3号)については、確報の期限が60日以内とされています。「速報」「確報」という呼び方は、個人情報保護委員会の解説・実務で使われている通称です。
前項の場合において、個人情報取扱事業者は、当該事態を知った日から三十日以内(当該事態が前条第三号に定めるものである場合にあっては、六十日以内)に、当該事態に関する前項各号に定める事項を報告しなければならない。
出典:個人情報の保護に関する法律施行規則 第八条|e-Gov法令検索
実際の報告は、個人情報保護委員会のウェブサイトの報告フォームから行えます。個人のプライベートなアカウントが不正アクセスされた場合は報告義務の対象ではなく、前述の相談窓口やサービス提供会社への連絡が中心となります。
出典・参考資料(1件)
混同されやすい点として、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)があります。同法第3条は「何人も、不正アクセス行為をしてはならない」と定めており、これは不正アクセスを行う加害者の行為を禁止する法律です。
不正アクセスを受けた被害側の事業者に報告等の義務を課すものではなく、被害側の報告義務は上記の個人情報保護法に基づくものである、という切り分けを押さえておきましょう。
出典・参考資料(1件)
目視の確認では限界がある|継続的に検知する手段
ここまでの確認は、疑いが生じたときに自分で行う「その時点」の切り分けです。しかし、手作業での確認は見落としが起きやすく、記録が残っていなければ後から遡って調べることもできません。侵入から発見までの時間が長いほど被害は広がるため、こうした兆候を継続的に検知する仕組みをあわせて備えておくことが有効です。
検知手段の種類と使いどころ
不正アクセスの検知手段は、どの層に痕跡が残るかによって役割が分かれます。自社が守りたい対象に合わせて、複数を組み合わせて使うのが基本です。
- ネットワーク層:ネットワークを流れる通信を監視し、外部からの侵入や内部の不審な通信を検知します。不正な通信を見つけて警告・遮断するIDS/IPS(不正侵入検知・防御)、Webアプリケーションを狙う攻撃を防ぐWAF、通信を記録・分析するNDR(Network Detection and Response)などがあり、NDRは検知後に過去の通信まで遡って調べる用途にも向きます。
- エンドポイント層:パソコンやサーバーといった端末の挙動を監視し、マルウェアの実行や不審な操作を検知・対応します。端末を監視するEDR(Endpoint Detection and Response、端末での検知・対応)や、端末・ID・メール・クラウドを横断してアラートを関連付けるXDRが、攻撃の全体像を把握しやすくします。
- アカウント層:ログインの挙動やデバイスの特徴を分析し、なりすましによる不正ログインを検知します。乗っ取りを入り口で止めたい場合に有効です。
- スポットでの侵害診断(事後調査型のフォレンジック診断):常時監視ではなく、退職者の端末返却時やインシデントが疑われたときなど、タイミングを区切って端末やログを調査し、侵害の有無を確認します。
自社が「何を・どこで」守りたいかによって、適した手段は変わります。ここまでは外部からの侵入やなりすましログインの検知が中心ですが、ECの不正注文やなりすまし注文といった取引そのものの不正を見分けたい場合は、対象とする仕組みが異なります。以下の記事では、そうした取引不正検知のサービスを、守る対象・検知方式・料金の観点から比較しています。
自力での調査が難しい場合
ログが残っていない、専門知識を持つ担当者がいない、被害範囲や原因を正確に特定する必要がある、といった場合は、外部の専門サービスに相談するのが確実です。
侵害の有無や範囲を調べるフォレンジック調査、監視と対応を専門チームが代行するSOC・MDR、端末を対象にした侵害診断サービスなど、目的に応じた選択肢があります。証拠保全の観点からも、端末の初期化などをする前に早めに相談することを推奨します。
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不正アクセスの検知・対策に役立つサービス
ここからは、不正アクセスの調査や継続的な検知に役立つサービスを紹介します。侵害の有無を調べる端末の侵害診断から、ネットワーク・端末を継続的に監視する仕組みまで、対象とする層が異なります。自社が守りたい範囲に照らして比較してください。
| サービス名 | CoWorker 端末侵害診断サービス | Network Blackbox | Microsoft Defender XDR |
|---|---|---|---|
| 検知・調査の対象レイヤー | エンドポイント(業務用端末) | ネットワーク(NDR/フルパケットキャプチャ) | エンドポイント・ID・メール・クラウドを横断(XDR) |
| 提供形態 | スポット/定期のフォレンジック診断 (常駐エージェント不要) | アプライアンス(ミラーリング導入) 継続監視 | SaaS (複数のDefender製品を組み合わせて有効化する統合レイヤー) |
| 主な用途 | 退職者のパソコン返却時やインシデント疑い時に、端末のログを収集して侵害の有無を事後調査 | 外部からの侵入・内部の不審な通信・横移動を継続検知し、保存した通信をさかのぼって調査 | 各製品のアラートを関連付け、フィッシングから端末侵害・横移動までを一連で継続検知・対応 |
| 料金 | 端末1台あたりの単価制 (導入事例掲載を条件とするトライアル価格200,000円/台・税別〜) | 要問い合わせ(個別見積り) | Microsoft 365 E5などのライセンスに含む (単独購入は不可) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | サービス詳細を見る |
※上記は2026年9月時点の各社公式情報に基づく概要です。最新の仕様・料金は各社の公式情報をご確認ください。
1. CoWorker 端末侵害診断サービス(CoWorker株式会社)

CoWorker株式会社が提供する、業務用端末を対象にした事後調査型(フォレンジック)の侵害診断サービスです。常時稼働するエージェントを入れ続けるのではなく、退職者のパソコン返却時やインシデントが疑われたとき、年1〜2回の定期棚卸しといったタイミングを区切って、対象端末からログを収集し不正の痕跡を調べます。
自社開発のAI「Blue Agent」が収集した端末ログを解析し、その結果をセキュリティエンジニアが精査する二段構えで、マルウェア感染・認証情報の流出・データの外部持ち出しなどの痕跡を洗い出します。速報レポートは1週間以内、最終レポートと報告会は1か月以内という流れで提供され、訴訟を見据えた電子証拠の保全にも対応します。
ChatGPTなど生成AIツールへの機密情報の入力といった、新しいタイプの情報漏えいの調査を診断対象に含めている点も特徴です。対応OSはWindowsとMacで、最大100台までの一括診断に対応します。料金は端末1台あたりの単価制で、導入事例としての掲載を条件とするトライアル価格として1台200,000円(税別)から案内されています。
出典・参考資料(1件)
2. Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

株式会社クワッドマイナージャパンが提供する、ネットワークを流れる通信を監視して脅威を検知・調査するNDR(Network Detection and Response)製品です。ネットワークの通信をミラーリングで取り込み、全パケットを保存する「100%フルパケットキャプチャ」を基盤にしています。
収集・検知・ハンティング・フォレンジック・対応の5つの機能を1つの製品に備え、外部からの侵入や内部の不審な通信、感染後の横移動、データの持ち出しといった、ネットワーク上に痕跡が残る不正アクセスの検知と事後の遡及調査に対応します。全パケットを保存しているため、検知した後に過去の通信までさかのぼって「何が起きたか」を再構成できる点が、通信の一部だけを記録する方式との違いです。
EDRやSIEM(各種ログを集約して分析する仕組み)とはSyslog・REST APIで連携する補完的な位置づけで、エンドポイント単体の操作やクラウドへの不正ログインなど、ネットワーク通信に現れない事象は連携製品の担当となります。料金は対象ネットワークの規模などに応じた個別見積りです。
出典・参考資料(1件)
3. Microsoft Defender XDR(日本マイクロソフト株式会社)

日本マイクロソフト株式会社が提供する、エンドポイント・ID(アカウント)・メール・クラウドアプリを横断して脅威を検知・調査・対応するXDR(Extended Detection and Response)プラットフォームです。単独で購入する製品ではなく、複数のDefender製品を組み合わせて展開することで有効になる統合レイヤーである点に注意が必要です。
各製品が検知したアラートを関連付け、1つのインシデントとして追跡できるため、フィッシングメールから端末の侵害、他の端末への横移動までを一連の流れとして把握できます。アカウントの不正利用の検知は、構成製品のMicrosoft Defender for IdentityがActive Directoryのシグナルをもとに担います。
Microsoft 365 E5などのライセンスに含まれる形で提供されるため、すでに該当するライセンスを利用している組織では追加の負担を抑えて有効化できます。対応OSはWindows・macOS・Linux・Android・iOSです。
出典・参考資料(1件)
ここで取り上げたのは、端末・ネットワーク・横断監視という異なる層を対象にした3サービスの例です。監視する層や検知方式の違いを踏まえ、自社が守りたい範囲に合うタイプと製品を幅広く比べたい場合は、以下の記事でタイプ別の選び方と各製品を詳しく解説しています。
不正アクセス検知システムおすすめ18選|4タイプ別の選び方を徹底比較
ファイアウォールやWAF(Web Application Firewall:Webアプリケーション用の防御壁)で入口は固めたものの、漏えいしたIDとパスワードを使った大量ログインや、すり抜けたマルウェア(ウイルス)が社内で広がる動きまでは捉…
まとめ
不正アクセスされたかどうかは、まずサインで手元の状況を照合し、クラウドサービス・業務用端末・社内ネットワークという対象ごとに、ログイン履歴や通信・認証の記録を確認することで切り分けられます。多くの不正アクセスは盗まれたIDとパスワードによるなりすましであり、「本人の操作では説明できない記録」が有力な手がかりになります。
不正アクセスが疑われる場合は、証拠の保全・ネットワークからの切り離し・パスワード変更と多要素認証・関係者への報告という順序で対応し、個人データの漏えいが疑われるときは個人情報保護法に基づく報告義務も確認します。手作業での確認には限界があるため、継続的な検知の仕組みや、専門サービスによる調査もあわせて検討し、次に同じ事態が起きても早く気づける体制を整えておくことが重要です。
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よくある質問(FAQ)
Q. 不正アクセスとは何ですか?
A. 不正アクセスとは、本来アクセス権限を持たない第三者が、他人のID・パスワードを悪用するなどして、コンピューターやオンラインサービスに不正にログイン・侵入する行為です。
令和7年(2025年)の検挙件数でも、盗んだID・パスワードでなりすます「識別符号窃用型」が全体の9割以上を占めており、入手経路として最も多いのはパスワード管理の甘さにつけ込む手口、次いでフィッシングでした。こうした行為は、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)で禁止されています。
Q. 不正アクセスされたかどうかは自分で無料で調べられますか?
A. 不正アクセスされたかどうかは、多くの場合、追加の費用をかけずに自分で確認できます。クラウドサービスやアカウントのログイン履歴・利用中デバイスの一覧、パソコンのOSに残るログオン記録、社内ネットワークの通信・認証ログは、いずれも標準機能で確認できるためです。
ただし、そもそもログが残っていない場合や、被害範囲・侵入原因を正確に特定したい場合は、専門のフォレンジック調査や侵害診断など有料のサービスが必要になります。
Q. スマホが不正アクセスされたかどうかはどうやって調べますか?
A. スマホの不正アクセスは、各アカウントのログイン履歴と、端末に入っているアプリ・設定の変化から確認します。利用しているサービス(Google・Appleのアカウントやメール、SNSなど)のセキュリティ画面で、身に覚えのないログインや覚えのない連携アプリがないかを確認します。
あわせて端末側でも、入れた記憶のないアプリの追加、バッテリーやデータ通信量の急な増加、勝手に表示される広告といった異常がないかを点検してください。不審な場合は、パスワードの変更と多要素認証の設定を行います。
Q. 不正アクセスされたか調べても分からない場合はどうすればよいですか?
A. 自分で調べても不正アクセスの有無がはっきりしない場合は、証拠を保全したうえで、外部の専門サービスや公的な相談窓口に相談するのが確実です。ログが残っていない、専門知識を持つ担当者がいない、被害範囲を正確に特定する必要があるといった場合は、フォレンジック調査や端末の侵害診断サービスが有効です。
端末の初期化などをする前に早めに相談すると、原因特定に必要な痕跡を残せます。公的機関では、警察のサイバー犯罪相談窓口や、IPA(情報処理推進機構)の情報セキュリティ安心相談窓口を利用できます。
Q. 不正アクセスが発覚したらまず何をすればよいですか?
A. 不正アクセスが発覚したら、証拠の保全 → ネットワークからの切り離し → パスワード変更と多要素認証 → 関係者・窓口への報告、の順で対応します。慌てて端末を初期化したり、そのまま使い続けたりすると証拠が失われるため注意が必要です。
まずログイン履歴などをスクリーンショットで保存し、電源は切らず通電したまま通信を遮断します。その後、侵害されていない別の安全な端末からパスワードを変更し、サービス提供会社や社内のセキュリティ担当へ連絡します。
Q. 不正アクセスを防ぐにはどうすればよいですか?
A. 不正アクセスを防ぐには、パスワードの使い回しをやめて多要素認証を設定し、OSやソフトを最新の状態に保つことが基本です。多くの不正アクセスは盗まれたID・パスワードによるなりすましのため、推測されにくいパスワードの設定と多要素認証が特に効果的です。
あわせて、セキュリティ対策ソフトの導入、不要な連携アプリやアカウント権限の削除、フィッシングメールへの警戒を徹底してください。従業員側・管理者側それぞれのやるべきことをチェックリストで確認したい場合は、以下の記事が役立ちます。
不正アクセス対策とは?従業員・管理者がやるべきことをチェックリストで解説
不正アクセスの被害が報じられるたびに、「自社は大丈夫なのか」と不安を感じる担当者は少なくありません。経営層から確認を求められることもあります。そんなとき、まず整理したくなるのが「具体的に何をすればよいのか」という対策の全体像です。 対策は、…
Q. 個人のアカウントと事業者で、不正アクセス後にすべき対応は違いますか?
A. 個人と事業者では、不正アクセス後にとるべき対応の範囲が異なります。個人は、パスワードの変更・多要素認証の設定と、サービス提供会社や警察・IPAへの相談が中心です。
一方、事業として個人データを取り扱う事業者には、これらに加えた対応が求められます。不正アクセスにより個人データが漏えいした(そのおそれがある)場合は、個人情報保護法に基づき、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務づけられています。
出典・参考資料(1件)
Q. 不正アクセスを継続的に検知するにはどうすればよいですか?
A. 不正アクセスを継続的に検知するには、守りたい対象に応じて、ネットワーク・端末・アカウントの各層に検知の仕組みを備えます。ネットワークの通信はIDS/IPS・WAF・NDR、パソコンやサーバーの挙動はEDR/XDR、アカウントのなりすましは不正ログイン検知が担います。
手作業の確認では見落としやログの欠落が起きやすいため、これらを組み合わせて自動で監視・記録する体制を整えると、侵入から発見までの時間を短くできます。自社での運用が難しい場合は、SOC・MDRなどの監視サービスの活用も選択肢です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















