飲食店を開こうと考えたとき、まず気になるのが「結局いくら必要なのか」という総額です。物件を借り、内装を整え、厨房機器をそろえ、さらに開業してからしばらくの運転資金まで見込むと、必要な金額は想像以上にふくらみます。
この記事では、日本政策金融公庫の調査データをもとに開業資金の総額と費用の内訳の相場を示したうえで、自己資金はいくら用意すればよいのか、足りない分をどこからどう調達するのかを、具体的な数字とともに整理します。公庫の創業融資を軸にしつつ、補助金の「後払い」への備えや、公庫だけでまかないきれないときの選択肢まで含めて、開業前に描いておきたい資金計画の全体像がつかめる内容です。
目次
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飲食店の開業資金はいくら?平均・中央値の相場
ここでは、公的な調査データから開業資金の相場を確認します。飲食店だけに絞った開業費用の公的な平均値は公表されていないため、まずは全業種の開業データを基準にし、飲食店の実態(規模別・業態別の目安)で補正していく形で読み進めてください。
日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」によると、開業費用は平均975万円、中央値は600万円でした。平均と中央値に差があるのは、一部の大型開業が平均を押し上げているためで、より実感に近いのは中央値の600万円前後です。飲食店開業でも「おおむね1,000万円前後」が一つの目安として語られることが多く、この調査結果とも重なります。
開業費用の平均値は975万円、中央値は600万円であり、長期的にみると少額化の傾向にある。
出典:2025年度新規開業実態調査(2025年12月)|日本政策金融公庫総合研究所
調査では開業費用の分布も示されており、「250万円未満」が20.1%、「250万〜500万円未満」が21.7%と、あわせて4割以上が500万円未満で開業しています。小規模なカフェやバーを居抜き物件で始めるなど、工夫しだいで数百万円規模の開業も十分に現実的だといえます。一方で、大型店や設備投資の重い業態では1,000万円を大きく超えることもあり、必要額は店舗の規模と業態で大きく変わります。
調査によると、開業業種のうち「飲食店・宿泊業」は14.5%を占め、開業の多い業種の一つです。以降では、この総額が実際にどんな費目に分かれるのかを見ていきます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:2025年度新規開業実態調査|日本政策金融公庫総合研究所(https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kaigyo_251205_1.pdf)
飲食店の開業資金の費用内訳【項目別の目安】
ここからは、開業資金の総額を費目ごとに分解します。飲食店の開業費用は、開店までに一度きりでかかる「初期費用」と、開店後に毎月出ていく「運転資金・生活資金」に分けて考えると、必要額を漏れなく見積もれます。

初期費用の内訳(物件取得費・内外装工事費・厨房設備費)
初期費用の中心は、物件取得費・内外装工事費・厨房設備費の3つです。金額は物件の広さや立地、居抜きかスケルトンかで大きく変わるため、次の表は坪単価や家賃の月数から逆算した一般的な目安として捉えてください(実額は物件・業者の見積もりで確認します)。
| 費目 | 物件取得費 | 内外装工事費 | 厨房設備・備品費 | その他 |
|---|---|---|---|---|
| 目安の考え方 | 保証金・敷金(家賃の6〜10ヶ月分)+礼金・仲介手数料・前家賃 | 坪単価×坪数。居抜きは圧縮でき、スケルトン(内装のない空室状態)は高くなる | 新品かリース・中古かで変動 | 販促費・食器備品・当面の仕入れ・開業手続き費用など |
| 金額の目安(15坪前後の例) | 家賃20万円なら約150万〜250万円 | 居抜き150万〜450万円/スケルトン450万〜750万円 | 新品200万〜400万円/中古活用で圧縮可 | 数十万〜100万円前後 |
※物件の条件・業者の見積もりで変わる一般的な目安です。実額は保証するものではありません。
特に内外装工事費は総額を左右しやすく、居抜き物件を選ぶかスケルトン物件をゼロから作り込むかで数百万円単位の差が出ます。厨房設備も、新品でそろえるか中古・リースを活用するかで大きく変わります。費用を抑える具体的な方法は後半で解説します。
上の15坪前後の例を積み上げると、初期費用の合計はおおよそ500万〜1,500万円程度の幅になります。自分の店の規模での総額イメージは、次の「規模別・業態別の目安」もあわせて確認してください。
運転資金・生活資金の目安(開業後6ヶ月分)
見落とされがちなのが、開店してから軌道に乗るまでの運転資金と、経営者自身の生活資金です。開業直後は売上が安定しないことが多いため、家賃・人件費・仕入れといった毎月の固定費と、自分の生活費のそれぞれ半年分ほどを、初期費用とは別に確保しておくと安心です。
たとえば家賃・人件費・仕入れなどの固定費が月60万円、生活費が月25万円なら、その半年分として運転資金・生活資金におよそ500万円を別に見込む計算になります。「売上がゼロでも半年は店を回せる現金を手元に残す」という考え方で見積もると、開店後に資金が尽きるリスクを大きく下げられます。初期費用だけを見て予算を組み、運転資金を軽視した結果、開業から数ヶ月で資金繰りに行き詰まるケースは少なくありません。
【規模別・業態別】飲食店の開業資金の目安
ここでは、自分の店に当てはめて考えられるよう、規模別・業態別の目安を整理します。飲食店に限定した開業費用の公的な平均値は公表されていないため、以下は坪数×坪単価や設備投資の重さから導いた相場観です。特定の調査による数値ではなく、計画づくりの出発点として参考にしてください。
規模(坪数)別の目安
店舗が大きくなるほど、物件取得費・内装費・厨房設備費・人件費のいずれもふくらみます。小規模なら自己資金を抑えて始めやすい一方、席数が限られるため売上の上限も低くなる、という関係があります。
- 小規模(5〜10坪・カウンター中心):居抜きを活用すれば300万〜500万円台からの開業も現実的
- 中規模(10〜20坪):700万〜1,000万円前後が一つの目安
- 大規模(20坪以上):内装・設備投資が重くなり、1,000万円を大きく超えることも
業態別の目安
業態によって設備投資の重さが変わります。厨房設備や客席の作り込みが大きいほど、初期費用は高くなる傾向があります。
- カフェ・バー:厨房設備が比較的軽く、小規模・居抜きなら初期費用を抑えやすい。目安はおおむね300万〜800万円程度
- ラーメン店・定食店:厨房設備の比重が上がり、目安は中規模で800万〜1,200万円程度
- レストラン・居酒屋:客席・厨房ともに作り込みが大きく、目安は1,000万〜2,000万円程度と、1,000万円を超えることも多い
飲食店の開業に自己資金はいくら必要?
総額の相場が見えたら、次は「そのうち自分でいくら用意するのか」です。ここでは自己資金の目安と、自己資金ゼロで開業できるのかを整理します。
自己資金の目安は開業資金の2〜4割
前述の「2025年度新規開業実態調査」では、開業時の資金調達額は平均1,219万円で、その内訳は金融機関等からの借り入れが平均827万円(67.9%)、自己資金が平均279万円(22.9%)でした。両者で全体の9割を占めています。
つまり実態の平均は自己資金が約2〜3割ですが、融資審査を通しやすくするという観点では、3〜4割を目安に厚めに用意しておくとより安心です。本記事で「2〜4割」を目安として示すのは、この実態値(下限)と審査対策としての推奨(上限)を合わせた幅だと捉えてください。
資金調達先は、「金融機関等からの借り入れ」が平均827万円(平均調達額に占める割合は67.9%)、「自己資金」が平均279万円(同22.9%)であり、両者で全体の90.7%を占める。
出典:2025年度新規開業実態調査(2025年12月)|日本政策金融公庫総合研究所
自己資金は、見せ方も審査に影響します。自分名義の預貯金は自己資金として説明しやすい一方、直前に他人から借りて口座に入れた「見せ金」は審査で見抜かれやすく、逆効果になります。コツコツ積み立ててきた通帳の履歴は、計画性を示す材料として評価されやすい点も押さえておきましょう。
自己資金ゼロで飲食店を開業できる?
制度上は、自己資金がゼロでも融資などの手段を組み合わせれば開業できる可能性はあります。実際、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」には、一定割合の自己資金を必須とする要件はありません(かつて新創業融資制度が課していた「創業資金総額の10分の1以上」という自己資金要件は、同制度の廃止・統合にともない現在は制度上撤廃されています)。
ただし、自己資金がまったくない状態での開業は現実には難易度が上がります。融資審査では、自己資金の比率や事業計画の妥当性が重視されるためです。自己資金は「制度上の必須条件」ではありませんが、「審査で計画性と本気度を示す材料」として実質的に重要です。
出典・参考資料(2件)
- 出典:2025年度新規開業実態調査|日本政策金融公庫総合研究所(https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kaigyo_251205_1.pdf)
- 参考資料:新規開業・スタートアップ支援資金|日本政策金融公庫(https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html)
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飲食店の開業資金の調達方法を比較【公庫を軸に、足りない分の手段まで】
ここからは、開業資金を「どこから調達するか」を整理します。まず主な調達手段を金利・限度額・スピード・審査の通りやすさ・向いている人で一覧にし、そのうえで公庫を軸にした現実的な組み立て方を解説します。
| 調達手段 | 日本政策金融公庫の創業融資 | 銀行・信用金庫/制度融資 | 補助金・助成金 | ノンバンクのビジネスローン |
|---|---|---|---|---|
| 金利の目安 | 低め(年1〜3%台が中心) | 低め(制度融資は自治体の利子補給あり) | 返済不要(ただし後払い) | 高め(実質年率3〜18%程度) |
| 限度額の目安 | 最大7,200万円 | 中〜大 | 制度による | 数十万〜1,000万円程度 |
| スピード | 着金まで1ヶ月前後 | やや時間がかかる | 公募・採択・実績報告を経るため長い | 速い(最短即日〜数日) |
| 審査の通りやすさ | 事業計画しだい。創業者向け制度あり | 創業実績が乏しいと単独では難しい場合も | 要件適合と申請書の質しだい | 比較的通りやすい |
| 向いている人 | 開業資金の中心をまかないたい人 | 地域の金融機関と関係を作りたい人 | 対象事業で自己負担を軽くしたい人 | 公庫で足りない分・つなぎ・急ぎの資金が要る人 |
※各手段の一般的な傾向をまとめた目安です。金利・限度額・スピードは制度・商品・審査により異なります。
日本政策金融公庫の創業融資(本命ルート)
開業資金の調達で最初に検討したいのが、日本政策金融公庫の創業融資です。政府系金融機関で、これから事業を始める人や事業開始後おおむね7年以内の人を対象とした「新規開業・スタートアップ支援資金」を用意しています(2025年3月に旧「新規開業資金」から名称変更されました)。
融資限度額は最大7,200万円、返済期間は設備資金が最長20年以内、運転資金が最長10年以内(いずれも据置期間〈元金の返済を待ってもらえる期間〉5年以内)と、民間ローンに比べて長期・低金利で借りやすいのが特徴です。担保・保証人については相談のうえ決まりますが、新たに事業を始める人や税務申告を2期終えていない人は、原則として無担保・無保証人で利用できる枠が用意されています。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:新規開業・スタートアップ支援資金|日本政策金融公庫(https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html)
銀行・信用金庫/自治体の制度融資
民間の銀行・信用金庫からの融資や、自治体・信用保証協会・金融機関が連携する「制度融資」も選択肢です。制度融資は自治体が利子や保証料の一部を補助する場合があり、創業者でも比較的利用しやすい設計になっています。地元の信用金庫と早めに関係を作っておくと、開業後の資金繰り相談でも心強い味方になります。
補助金・助成金と「後払い」への備え
小規模事業者持続化補助金やIT導入補助金など、飲食店でも活用できる補助金があります。補助額や補助率は制度・年度で変わるため、実際に使う際は最新の公募要領で上限額・対象経費を確認してください。返済不要な点は大きな魅力ですが、注意したいのは補助金が「後払い(精算払い)」である点です。多くの補助金は、先に自分で経費を支払い、実績報告を経て金額が確定してから入金されます。
補助金事務局は実績報告書等の確認が終わった後、補助金の額の「確定通知書」を通知します。通知を受け取った後は、「精算払請求書」(交付規程・様式第9)に必要事項を入力し、提出してください。
出典:精算払請求について|小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>事務局
このため、補助金をあてにしていても、入金までの間は経費を立て替える必要があります。この立て替え期間の「つなぎ資金」をどう確保するかまで含めて資金計画を立てておかないと、採択されても手元資金が回らない、という事態になりかねません。
出典・参考資料(2件)
- 参考資料:精算払請求について|小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>事務局(https://r6.jizokukahojokin.info/seisan.php)
- 参考資料:交付決定後に必要な手続き|IT導入補助金(https://it-shien.smrj.go.jp/aftergrantdecision/measures/)
いくら貯めていくら借りるか(複数調達の組み合わせ設計)
調達手段は一つに絞る必要はありません。むしろ実態は、自己資金と融資を組み合わせるのが一般的です。公庫調査の平均像でいえば、調達額1,219万円のうち自己資金279万円・借り入れ827万円という構成でした。
現実的な組み立ての順序は、まず自己資金で総額の2〜3割を用意し、中心となる部分を公庫の創業融資でまかなう形です。それでも足りない分や補助金入金までのつなぎには、スピードの速いノンバンクのビジネスローンを充てる三層構成が現実的です。自己資金を厚くするほど融資審査は通りやすくなり、金利負担も軽くなります。

公庫でまかないきれない・審査に通らない場合の選択肢
公庫の創業融資は本命ですが、「希望額に満たなかった」「審査に時間がかかり物件契約に間に合わない」「開業後に急な資金が必要になった」といった場面もあります。こうしたときに、公庫を補う選択肢になるのがノンバンクのビジネスローンです。
金利は公庫より高めですが、最短即日〜数日で資金化できるスピードと、比較的通りやすい審査が強みです。足りない分の補填・補助金入金までのつなぎ・急ぎの運転資金といった用途に向きます。
以下は開業前にすぐ申し込むものではなく、公庫の審査結果しだいで「いざという時」に検討する候補として押さえておくとよいものです。法人・個人事業主が事業資金として利用できる代表的なビジネスローンを紹介します。
金利・限度額・スピードは各社で異なるため、下の比較表と各サービスの特徴をあわせて確認してください(掲載条件は2026年時点の各社公式情報にもとづく目安で、最新の条件は各社公式サイトでご確認ください)。
| サービス名 | ビジネスパートナー スモールビジネスローン | AGビジネスサポート 事業者向けビジネスローン | アイフル 事業サポートプラン |
|---|---|---|---|
| 実質年率 | 9.98%〜18.0% | 3.1%〜18.0% | 無担保 3.0%〜18.0% 不動産担保 3.0%〜12.0% |
| 融資限度額 | 50万円〜500万円 | 50万円〜1,000万円 | 無担保 1万〜500万円 不動産担保 100万〜1億円 |
| 融資スピード | 最短5日(公式表記) | 最短即日 | 明示なし |
| 担保 | 不要 | 不要 | 無担保・不動産担保 の2形態 |
| 対象 | 法人・個人事業主 | 法人・個人事業主 | 法人・個人事業主 |
| 詳細情報 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
1. ビジネスパートナー スモールビジネスローン(株式会社ビジネスパートナー)

株式会社ビジネスパートナーが提供する、法人・個人事業主向けのカードローン型ビジネスローンです。決算書または確定申告書1期分でも審査の対象となるため、創業してまだ実績の浅い事業者でも相談しやすいのが特徴です。実質年率は9.98%〜18.0%、融資限度額は50万円〜500万円で、限度額の範囲内なら繰り返し借入できます。
来店不要で郵送手続きが完結し、借入・返済はセブン銀行ATMでも行えます。事務手数料や繰上返済手数料がかからない点も、資金繰りの読みやすさにつながります。開業直後の小口の資金や、当面の運転資金の補填を無理なく組みたい人に向く一社です。
2. AGビジネスサポート 事業者向けビジネスローン(AGビジネスサポート株式会社)

アイフルグループで事業者向け融資を専門に扱うAGビジネスサポートのビジネスローンです。実質年率3.1%〜18.0%、融資限度額は50万円〜1,000万円と、今回紹介する中では枠が大きく、最短即日融資に対応する点が強みです。まとまった開業資金の一部を素早く補いたい場面で力を発揮します。
無担保で利用でき、対象は法人(75歳まで)と個人事業主(69歳まで)。必要書類は、法人なら決算書、個人事業主なら確定申告書と事業内容確認書が基本です。返済は元利均等(毎月一定額を返す方式)で最長5年、元金一括なら最長1年と、資金の使い方に合わせて選べます。公庫の審査を待つ間のつなぎや、希望額に届かなかった分の上乗せに向いています。
3. アイフル 事業サポートプラン(アイフル株式会社)

大手消費者金融のアイフルが直接提供する事業者向け融資で、個人事業主向けの個人プランと法人プランを用意しています。無担保ローン(実質年率3.0%〜18.0%、契約限度額1万円〜500万円)と、不動産担保ローン(実質年率3.0%〜12.0%、100万円〜1億円)の2形態から選べるのが特徴です。
無担保ローンは最長10年(120回)の長期返済に対応しており、毎月の返済額を抑えたい場合に検討しやすい設計です。まとまった額を担保付きで低金利に借りたいなら不動産担保、手早く無担保で借りたいなら無担保ローン、と資金計画に応じて使い分けられます。ただし、同じアイフルグループでも前述のAGビジネスサポートとは別会社・別商品のため、混同しないよう注意してください。
ここで挙げた3社以外にも、法人・個人事業主が事業資金として使えるビジネスローンは数多くあります。金利・限度額・融資スピードや審査の柔軟性を横並びで見比べて、公庫でまかないきれない分を補う一社を選びたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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飲食店の開業資金を抑えるコツ
必要な資金を調達で埋めるだけでなく、そもそもの開業資金を抑えれば、借入額も返済負担も軽くなります。ここでは総額を圧縮する現実的な方法を紹介します。
居抜き物件・中古設備を活用する
最も効果が大きいのが、前の店舗の内装や厨房設備が残る居抜き物件の活用です。スケルトン物件をゼロから作り込む場合に比べ、内外装工事費を数百万円単位で圧縮できることがあります。厨房機器も、中古やアウトレット品を活用すれば初期費用を大きく下げられます。ただし居抜きは設備の残り寿命しだいで後から交換費用がかさむこともあるため、「あと何年使えるか」を見て判断すると失敗が減ります。
内装のDIY・リース/レンタルで初期投資を分散する
内装の一部を自分で手がけたり、厨房機器をリース・レンタルにしたりすると、開業時にまとめて出ていく現金を減らせます。ただし電気・ガス・水道の工事は資格を持つ専門業者でなければ行えないため、DIYは対象を見極めて取り入れることが大切です。リースは総支払額が購入より高くなる場合もあるので、初期の現金負担と総コストのバランスで判断します。
小規模・テイクアウトから始める/相見積もりで工事費を圧縮する
いきなり大型店を目指さず、小規模店やテイクアウト専門・キッチンカーから始めれば、初期費用も運転資金も抑えられます。また、内外装工事は業者によって見積もりが大きく異なるため、複数社から相見積もりを取るだけで工事費が下がることがあります。予備費として工事費の15〜20%ほどを別に見込んでおくと、想定外の追加工事にも慌てずに対応できます。
開業資金の準備〜融資までの進め方
最後に、資金計画づくりから融資の実行までの段取りを確認します。順序を押さえておくと、物件契約や開業のタイミングと資金調達がかみ合いやすくなります。
事業計画書で融資審査を通す
融資審査で最も重視されるのが事業計画書です。開業の総額と内訳、売上・利益の見通し、返済の計画を、根拠となる数字とともに具体的に示せるかが通過のカギになります。「なぜこの立地・この業態なのか」「どうやって集客するのか」といった問いに、自分の言葉で答えられる状態にしておきましょう。商工会議所などの無料の創業相談を活用し、計画を第三者の目でチェックしてもらうのも有効です。
公庫への事前相談〜申込〜面談〜着金まで
公庫の融資は、申込から着金まで面談を挟んでおおむね1ヶ月前後かかります。物件契約や工事の発注より前に、余裕をもって事前相談を済ませておくのが安全です。融資実行のタイミングと物件契約・工事の支払い時期がずれると、一時的に資金が不足することもあるため、その間を短期の資金でつなぐ備えも視野に入れておくと安心です。
まとめ
飲食店の開業資金は、公庫調査で平均975万円・中央値600万円が一つの相場です。物件取得費・内外装工事費・厨房設備費といった初期費用に加え、開業後の運転資金と生活資金を半年分ほど見込むと、必要額を漏れなく見積もれます。そのうち自己資金は2〜4割を用意し、中心を公庫の創業融資でまかない、足りない分や補助金入金までのつなぎをノンバンクのビジネスローンで補う、という組み立てが現実的です。
まずは総額と内訳を書き出して自己資金と借入額の配分を決め、事業計画書を固めたうえで、公庫への事前相談から動き出すのがおすすめです。早めに全体像を描いておけば、想定外の出費や審査結果にも落ち着いて対応できます。
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飲食店の開業資金に関するよくある質問(FAQ)
Q. 飲食店の開業資金とは何ですか?
A. 飲食店の開業資金とは、店をオープンするまでにかかる初期費用(物件取得費・内外装工事費・厨房設備費など)と、開業後に軌道に乗るまでの運転資金・生活資金を合わせた資金全体を指します。初期費用だけで予算を組むと開業後に資金がショートしやすいため、当面の運転資金・生活資金まで含めて見積もることが、無理のない資金計画のポイントです。
Q. 飲食店の開業資金の平均はいくらですか?
A. 飲食店を含む開業費用は、日本政策金融公庫の調査で平均975万円、中央値600万円です。飲食店開業では「おおむね1,000万円前後」が目安として語られることが多いですが、一部の大型開業が平均を押し上げているため、より実感に近いのは中央値の600万円前後です。店舗の規模と業態で必要額は大きく変わります。
Q. 飲食店は最低いくらから開業できますか?
A. 飲食店は、小規模なカフェやバーを居抜き物件で始める場合、運転資金を含めて300万〜500万円台からの開業も現実的です。前述の公庫調査でも4割以上が500万円未満で開業しており、規模と業態を絞り込み、居抜きや中古設備を活用すれば初期費用を大きく抑えられます。
Q. 自己資金ゼロで飲食店を開業できますか?
A. 飲食店は、制度上は自己資金がゼロでも融資などを組み合わせれば開業できる可能性はありますが、現実には難易度が上がります。公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」に一定割合の自己資金を必須とする要件はないものの、融資審査では自己資金の比率や事業計画の妥当性が重視されるためです。自己資金は「制度上の必須条件」ではなく「審査で計画性と本気度を示す材料」として実質的に重要だと理解しておきましょう。
Q. 飲食店の開業に自己資金はどのくらい必要ですか?
A. 飲食店の開業では、自己資金は開業資金の2〜4割が目安です。公庫調査の平均像でも、調達額1,219万円のうち自己資金が平均279万円(約23%)を占めています。自己資金を厚くするほど融資審査は通りやすくなり、金利負担も軽くなります。
また、直前に他人から借りて口座に入れた「見せ金」は審査で見抜かれやすいため、コツコツ積み立ててきた通帳の履歴のほうが計画性を示す材料として評価されやすい点も押さえておきましょう。
Q. 飲食店の開業で運転資金は何ヶ月分用意すべきですか?
A. 飲食店の運転資金は、家賃・人件費・仕入れといった毎月の固定費と、経営者自身の生活費のそれぞれ半年(6ヶ月)分ほどを、初期費用とは別に確保しておくのが目安です。開業直後は売上が安定しないことが多いため、「売上がゼロでも半年は店を回せる現金を手元に残す」という考え方で見積もると、開店後に資金が尽きるリスクを大きく下げられます。
Q. 日本政策金融公庫では飲食店の開業資金をいくらまで借りられますか?
A. 日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、融資限度額が最大7,200万円です。返済期間は設備資金が最長20年以内、運転資金が最長10年以内(いずれも据置期間5年以内)と長期・低金利で、新たに事業を始める人や税務申告を2期終えていない人は、原則として無担保・無保証人で利用できる枠も用意されています。
Q. 公庫の創業融資は申し込みから実行までどのくらいかかりますか?
A. 公庫の創業融資は、申し込みから面談を挟んで着金までおおむね1ヶ月前後かかります。物件契約や工事の発注より前に、余裕をもって事前相談を済ませておくのが安全です。融資実行のタイミングと支払い時期がずれると一時的に資金が不足することもあるため、その間をスピードの速い短期資金でつなぐ備えも視野に入れておくと安心です。
Q. 飲食店開業では居抜き物件とスケルトン物件のどちらが得ですか?
A. 初期費用の面では、内外装工事費を数百万円単位で抑えられる居抜き物件が有利です。ただし居抜きは前の店舗から残された設備の寿命しだいで、後から交換費用がかさむこともあります。「あと何年使えるか」を確認したうえで、目先の初期費用と後々の交換コストの両面で判断すると失敗が減ります。
Q. 融資の審査に落ちた場合、ほかに開業資金を調達する方法はありますか?
A. 公庫の審査に通らなかった場合や希望額に届かなかった場合は、ノンバンクのビジネスローンが公庫を補う選択肢になります。金利は公庫より高めですが、最短即日〜数日で資金化できるスピードと、比較的通りやすい審査が強みで、足りない分の補填・審査を待つ間のつなぎ・急ぎの運転資金といった用途に向きます。公庫を本命に据えつつ、こうした代替ルートも押さえておくと資金計画に厚みが出ます。
Q. 補助金を使う場合、飲食店の開業資金の準備で何に注意すればよいですか?
A. 補助金は、多くが「後払い(精算払い)」のため、入金までの経費を立て替える「つなぎ資金」を別に用意しておく必要があります。多くの補助金は、先に自分で経費を支払い、実績報告を経て金額が確定してから入金される仕組みです。つなぎ資金まで含めて資金計画を立てておかないと、採択されても手元資金が回らない事態になりかねないため、スピードの速いノンバンクの短期資金などを備えておくと安心です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。














