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不正アクセスを防ぐ技術一覧|入口・認証・端末・内部を守る仕組みと選び方

不正アクセスを防ぐ技術一覧|入口・認証・端末・内部を守る仕組みと選び方のサムネイル画像

「自社の不正アクセス対策は大丈夫か」と問われたとき、何がどこまで守れているのかを整理できず、答えに詰まった経験はないでしょうか。不正アクセスを防ぐ技術は、ファイアウォールや多要素認証、EDRなど数多くありますが、それぞれが「何を・どこで・どのように防ぐのか」を役割ごとに押さえておかないと、対策の抜けや重複に気づけません。

この記事では、不正アクセスを防ぐ主要な技術を名前ごとに一覧で示し、「入口・認証・端末・内部/監視・運用」という守る場所の役割分担(多層防御)で整理します。そのうえで、各技術の中身と違い、どこから着手すべきかの優先順位、万一侵入された場合の初動対応、不正アクセス禁止法で押さえておくべき最低限までを解説します。

技術の全体像と役割分担がわかれば、自社に今どの対策が入っていて何が足りないのかを棚卸しでき、次の一手を社内で提案する材料になります。まずは、防ぐ技術の一覧から確認していきましょう。

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不正アクセスを防ぐ技術の一覧

不正アクセスを防ぐ技術は、ひとつの製品ですべてをカバーするものではなく、通信の入口・利用者の認証・端末・社内ネットワークの内部といった、守る場所ごとに役割が分かれています。まずは代表的な技術を「何を防ぐか」「守る場所」「自前の設定運用が中心か、製品の導入が必要か」で一覧にまとめました。

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技術ファイアウォール(FW)WAF(Webアプリケーションファイアウォール)IDS・IPS(侵入検知・侵入防止システム)多要素認証(MFA)アクセス権限管理暗号化・VPNEDR・ウイルス対策ソフトNDR・ログ監視脆弱性診断・パッチ適用セキュリティ教育
何を防ぐかルールに合わない不要な通信の出入りを遮断する脆弱性を突いてWebアプリを狙う攻撃を防ぐ不正侵入や攻撃を検知(IPSは自動で遮断も)パスワード漏えい時のなりすまし・不正ログインを防ぐ権限を超えた内部からのアクセス・情報持ち出しを抑える通信の盗聴や、漏えい時の内容の悪用を防ぐ端末上のマルウェア実行や、侵入後の不審な挙動を検知・対応する侵入後の内部の不審な通信や異常を検知する悪用される弱点を洗い出して塞ぐ(予防)フィッシングなど人を狙う手口への備えをつくる
守る場所入口(ネットワーク境界)入口(Webアプリ層)入口・監視認証内部端末・通信端末内部・監視運用運用(人)
導入形態製品導入+設定運用製品導入(クラウド型・アプライアンス)製品導入設定・製品導入設定・運用中心設定・製品導入製品導入製品導入+運用診断サービス+運用研修・運用

各技術の分類・役割は本文で解説します。導入形態は一般的な提供形態の目安です。

技術は「入口・認証・端末・内部/監視・運用」で役割分担する(多層防御)

一覧を見ると、それぞれの技術が守る場所が異なることがわかります。ひとつの機器やソフトウェアだけに頼ると、それが突破されたときに被害を止められません。そこで、複数の対策を層のように重ねて守る「多層防御」の考え方が基本になります。IPA(情報処理推進機構)は多層防御を次のように説明しています。

物理層、ネットワーク層からデータ層までの多層防御を導入することで、1つの機器やソフトウェアに依存する拠点防御対策や、単一の境界防御層(主としてネットワーク境界)に依存する対策の場合より、未知のマルウェアや新たな攻撃手法の登場により容易に突破されるリスクの軽減が期待される

出典:サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver3.0 実践のためのプラクティス集(第4版)用語集|IPA

公的な整理としては、対策は次の3つの層で語られます。攻撃者が入ってくる段階を防ぐ「入口対策」、入られたあとに重要な情報へ届かせない「内部対策」、そして感染後に情報を外へ持ち出させない「出口対策」です。

  • 入口対策:ネットワークへの不正侵入を防ぎ、マルウェア等に感染しないための対策(ファイアウォール・WAF・IDS/IPSなど)
  • 内部対策:不正侵入があった場合にも重要な情報へのアクセスを防ぎ、感染拡大を防止するための対策(アクセス権限管理・EDR・ログ監視など)
  • 出口対策:マルウェアが外部へ通信しようとするのを遮断し、感染後の被害を最小限に食い止めるための対策

本記事では読者が自社の状況を当てはめやすいように、この入口・内部・出口の考え方を「入口・認証・端末・内部/監視・運用」という5つの視点に広げて技術を整理します。認証・端末・運用という区分けは理解のための枠であり、公的に定められた分類ではありませんが、どの技術がどの場面で効くのかを掴む助けになります。

とくに、ファイアウォールやWAFが「入口で通信を制御する」のに対し、後半で紹介する不正検知の仕組みは「侵入されたあと・通常運用のなかで異常を見つける」役割を担います。この違いを意識すると、なぜ複数の技術が必要なのかが理解しやすくなります。

感染後にマルウェアが外部へ通信するのを遮断する「出口対策」は、内部/監視の層(EDR・ログ監視など)に含まれます。

内部/監視の層で使う技術のうち、NDR(Network Detection and Response)は、社内ネットワークを流れる通信を常時分析する仕組みです。侵入後の不審な通信や水平移動(感染がネットワーク内で横に広がる動き)の兆候を検知します。

ログ監視は、機器やサーバーが記録するログを集めて突き合わせ、不正ログインや不審な設定変更などの異常に早く気づくための仕組みです。どちらも、入口をすり抜けた脅威を「入られたあとに」見つける役割を担います。

この役割分担を1枚に整理すると、次のようになります。攻撃者と守るべき情報資産の間に、各層の技術を重ねて守るのが多層防御の考え方です。

不正アクセスを防ぐ多層防御の層と各層の代表技術を示した図。外部からの攻撃と守るべき情報資産の間に、入口(ファイアウォール・WAF・IDS/IPS)、認証(多要素認証)、端末(EDR・ウイルス対策ソフト・暗号化/VPN)、内部/監視(アクセス権限管理・NDR/ログ監視)、運用(脆弱性診断/パッチ適用・セキュリティ教育)の5つの層を重ねて守ることを表す。

主な技術の中身と違い

ここからは、一覧で挙げた技術のうち、名前は聞くものの違いがわかりにくいものを中心に、それぞれの中身を確認します。似た役割に見える技術も、守る対象や動き方が異なります。

ファイアウォールとWAFの違い

ファイアウォール(FW)は、ネットワークを流れる通信がルールに合うかどうかを判断し、許可するか拒否するかを振り分ける仕組みです。IPAの用語集では「ネットワークの通信において、その通信がルールにマッチするか否かを判断し許可(通過)するか、または拒否する仕組み」と定義されています。おもにネットワークの境界(入口)で、不要な通信の出入りを遮断します。

一方WAF(Web Application Firewall)は、同じ「ファイアウォール」の名前を持ちますが、守る対象が異なります。IPAはWAFを「脆弱性を突いた攻撃から、Webアプリケーションを守るためのファイアウォール」と定義しており、Webサイトやアプリケーションの脆弱性を悪用する攻撃(後述のSQLインジェクションなど)を対象とします。

通信の通過可否を判断する一般的なファイアウォールでは防ぎきれない、アプリケーション層の攻撃を担う点が違いです。

出典・参考資料(2件)

IDSとIPSの違い

IDS(侵入検知システム)とIPS(侵入防止システム)は、いずれも不正な侵入や攻撃を見つける仕組みですが、検知したあとの動作が異なります。総務省「国民のためのサイバーセキュリティサイト」は、IDSを「不正なアクセスが発見された場合には、電子メールやアラームなど、事前に設定した方法で、管理者に連絡する機能を持ちます」と説明しています。IDSは検知して管理者に知らせるところまでを担う仕組みです。

これに対しIPSは、同サイトで「侵入検知システムの機能に加えて、不正なパケットを自動的に遮断する機能を持ちます」と説明されています。検知にとどまらず、不正な通信をその場で自動的に止める点がIPSの特徴です。検知を重視するか、自動遮断まで求めるかで使い分けます。

出典・参考資料(1件)

多要素認証(MFA)で認証を守る

不正アクセスの多くは、他人のIDとパスワードを使ったなりすましで発生します(なりすまし型は検挙件数の9割超を占めます。詳しくは後述)。多要素認証(MFA)は、パスワード(知識)に加えて、スマートフォンなどの所持や生体情報といった複数の要素を組み合わせて本人確認を行う仕組みです。パスワードが漏れても、もう一つの要素がなければログインできないため、なりすましによる不正ログインを大きく抑えられます。

IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」も、取り扱う情報の重要性に応じた本人認証の方法を定め、複数の要素を組み合わせて認証を行う多要素認証を活用するよう促しています。認証を守る対策の中心に位置づけられます。

出典・参考資料(1件)

多要素認証を実際に導入するとなると、SMS・認証アプリ・生体認証・ハードウェアキーといった認証方式や料金は製品ごとに異なります。自社に合う方式を製品単位で比較して選びたい場合は、以下の記事で主要な多要素認証システムを解説しています。

アクセス権限管理で内部からの不正を抑える

アクセス権限管理は、社員それぞれに業務上必要な範囲だけの権限を与え、不要な権限を持たせない対策です。権限を絞っておくと、万一アカウントが乗っ取られた場合や、内部の関係者による不正があった場合でも、被害が及ぶ範囲を限定できます。

とくに、退職者や異動者のアカウントを速やかに棚卸しして停止すること、システム管理者などの強い権限(特権ID)を必要なときだけ使えるよう管理することが重要です。IPAのガイドラインも、情報の重要性に応じてアクセスを制御・管理する対策を求めています。

出典・参考資料(1件)

暗号化・VPNで通信とデータを守る

暗号化は、万一データや通信が第三者に渡っても内容を読み取られないようにする対策で、守る対象によって大きく2つに分けられます。ひとつは通信の暗号化で、Webアクセスを守るTLS(HTTPS)や、拠点間・テレワークの通信を守るVPN(仮想私設網)がこれにあたります。もうひとつは保存データの暗号化で、サーバー・パソコン・外部記憶媒体のファイルを暗号化し、端末の紛失・盗難や持ち出しに備えます。

IPAのガイドラインは、情報漏えい等を防止するため、暗号化などの保護措置を講じるルールを定めて従業員に周知するよう求めています。

VPN(仮想私設網)は、インターネット上に暗号化された通信経路をつくり、拠点間やテレワーク時の通信を保護する仕組みとして使われます。いずれも、通信の盗聴や漏えい時の悪用というリスクを緩和する役割を担います。

ただし、VPN機器自体の脆弱性が侵入の入口になる事例も知られています。VPNは導入すれば安心というものではなく、後述の脆弱性診断・パッチ適用の対象として継続的に管理することが欠かせません。

出典・参考資料(1件)

EDR・ウイルス対策ソフトで端末を守る

ウイルス対策ソフトが既知のマルウェアの実行を防ぐのに対し、EDR(Endpoint Detection and Response)は、端末で起きた不審な挙動を検知して調査・対応することに重点を置きます。IPAはEDRを「感染した端末の検知・調査・隔離する用途で導入されるマルウェア対策製品のこと」と定義しています。

侵入や感染を完全に防ぎきることは難しいという前提に立ち、端末に入り込んだ脅威をいち早く見つけて封じ込める役割を担う点が、従来のウイルス対策との違いです。

出典・参考資料(1件)

脆弱性診断・パッチ適用で弱点を塞ぐ

脆弱性診断は、システムやネットワークを調査して、悪用されうる弱点(脆弱性)を洗い出す取り組みです。IPAは脆弱性診断を「システムやネットワークを調査し、システム上の脆弱性などのセキュリティリスクを洗い出すこと」と定義しています。

洗い出した弱点は、ソフトウェアの更新(パッチ適用)などで塞いでいきます。攻撃を受ける前に弱点をなくしておく予防的な運用であり、次に述べる着手の優先順位でも土台となる対策です。

出典・参考資料(1件)

自社の弱点を洗い出すために脆弱性診断を外部へ依頼する場合、診断の方法や費用相場、カバーする対象は依頼先によって幅があります。診断サービスの選び方や費用の目安を詳しく知りたい場合は、以下の記事が参考になります。

何から着手すべきか(導入の優先順位と自社での組み合わせ方)

技術の全体像がわかると、次に迷うのは「どれから手を付けるか」です。個別の技術(ファイアウォールが先か、EDRが先か)の順番を公的機関が一律に定めているわけではありませんが、IPAのガイドラインは「まずできるところから始める」という段階的な進め方を示しています。その出発点として挙げられているのが、次の「情報セキュリティ6か条」です。

1.OSやソフトウェアは常に最新の状態にしよう!/2.ウイルス対策ソフトを導入しよう!/3.パスワードを強化しよう!/4.共有設定を見直そう!/5.バックアップを取ろう!/6.脅威や攻撃の手口を知ろう!

出典:中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版(情報セキュリティ6か条)|IPA

ガイドラインは、これらを「企業の規模に関わらず、必ず実行すべき重要な対策」と位置づけています。裏を返せば、高度な検知製品を導入する前に、OS・ソフトの更新、ウイルス対策、パスワードの強化と多要素認証、バックアップといった基本を固めることが最優先だということです。

そのうえで、ガイドラインは「できるところから始める」→「組織的な取り組みを開始する」→「本格的に取り組む」という順で対策を広げる進め方を示しています。自社に当てはめると、次のような段階で考えると整理しやすくなります。

  1. 基本の徹底:OS・ソフトの更新とパッチ適用、ウイルス対策、パスワード強化と多要素認証、バックアップ。まず全社で実行する
  2. 入口と権限の整備:ファイアウォールによる境界防護とネットワークのセグメント分離、アクセス権限を必要な範囲に絞る運用を整える
  3. 検知と点検の強化:守るべき情報資産の重要度に応じて、EDRや侵入検知、ログ監視、脆弱性診断を組み合わせ、侵入を前提とした検知体制を整える
不正アクセス対策の導入の優先順位を、土台から積み上げる3段階で示した図。①基本の徹底(OS・ソフトの更新/パッチ適用、ウイルス対策、パスワード強化・多要素認証、バックアップ)をまず全社で実行し、②入口と権限の整備(ファイアウォールによる境界防護、ネットワークのセグメント分離、アクセス権限を必要な範囲に)、③検知と点検の強化(EDR、侵入検知、ログ監視、脆弱性診断)へと積み増すことを表す。

どこまで手厚くするかは、自社が扱う情報の重要度と守るべき範囲によって変わります。まず基本を固め、資産の重要度に応じて入口・内部・監視の対策を積み増していく、という順序で自社の現状と足りない部分を突き合わせるとよいでしょう。

出典・参考資料(1件)

不正アクセスの主な手口(相手を知って備える)

どの技術がどの攻撃に効くのかを理解するには、相手である手口を知っておくことが役立ちます。警察庁の統計では、不正アクセス行為の手口は大きく2つに分類されています。他人のID・パスワードを使ってなりすます「識別符号窃用型」と、システムの脆弱性を突く「セキュリティ・ホール攻撃型」です。

警察庁の資料によれば、令和6年(2024年)における不正アクセス行為の検挙件数のうち、識別符号窃用型が511件と全体の90%以上を占めています。さらにその識別符号窃用型(511件)の内訳では、「パスワードの設定・管理の甘さにつけ込んで入手」が最も多く174件、次いで「識別符号を知り得る立場にあった元従業員や知人等による犯行」が107件と続きます。

なりすまし型では、パスワードの管理の甘さと、内部関係者による犯行が大きな割合を占めているのが実態です。

個別の手口の名称は、IPAの用語集で次のように整理されています。読者がニュースなどで目にする用語と、上記の大分類を結びつけて理解すると、どの対策が効くのかが見えてきます。

  • フィッシング:正規のサービスを装ってIDやパスワードを入力させ、なりすまし(識別符号窃用型)に使う手口。多要素認証や、利用者の見分ける力を高める教育が備えになる
  • SQLインジェクション:IPAの定義では「ブラウザを介してWebアプリケーションに不正なSQL文を入力することで、動作不良を起こさせ、データベースを不正に操作したり個人情報などを詐取する」攻撃。脆弱性を突く型で、WAFや脆弱性診断が効く
  • マルウェア:IPAの定義では「セキュリティ上の被害を及ぼすウイルス、スパイウエア、ボットなどの悪意をもったプログラムを指す総称」。ウイルス対策ソフトやEDRが検知・対応を担う
  • ゼロデイ攻撃:IPAの定義では「セキュリティホールが発見されてから実際にパッチが提供されるまでの間の時間差を利用した攻撃手法」。パッチ適用だけでは防ぎきれないため、侵入後の検知(EDR・ログ監視)が重要になる

ここまでの手口の内訳は「検挙件数」(実際に検挙に至った件数)をもとにしたものです。把握された不正アクセス全体を示す「認知件数」で見ると、令和6年は5,358件で、前年(令和5年)と比べて954件(約15.1%)減少しています。

件数の増減にかかわらず、なりすまし型と脆弱性悪用型の双方に備えることが、不正アクセス対策の基本である点は変わりません。

出典・参考資料(2件)

不正アクセスされた場合の初動対応

技術で守っていても、侵入を完全にゼロにはできません。だからこそ、万一不正アクセスされた場合に何をどの順で行うかをあらかじめ決めておくことが、被害を最小限に抑える鍵になります。ここでは、企業システムを想定した初動対応の流れを整理します。

  1. 隔離する:被害の拡大を防ぐため、不正アクセスを受けた端末やサーバをネットワークから切り離す(被害拡大防止の一般的な初動)
  2. 認証情報を変更する:侵害された可能性のあるアカウントのパスワードなど認証情報を変更し、攻撃者による再侵入を断つ
  3. 証拠を保全する:ログイン履歴などを確認できる場合は、ログイン画面の保存・印字を行い、証拠を保全する
  4. 原因を調査する:どこから、どの範囲に侵入されたか、情報が漏えいしていないかを調べる
  5. 関係先・監督官庁へ報告する:サービス提供会社等に相談するとともに、個人データの漏えいが疑われる場合は、後述の報告義務を確認する
  6. 警察へ通報・相談する:保存したログイン履歴等を持参して、最寄りの警察署またはサイバー犯罪相談窓口に通報・相談する

警察庁は、不正アクセスの被害に遭った場合の対応として「①サービス提供会社等に相談する ②パスワードを変更する ③ログイン履歴等を保存する ④警察に通報・相談する」を挙げ、ログイン履歴等を保存して証拠を保全し、最寄りの警察署またはサイバー犯罪相談窓口へ通報・相談するよう案内しています。

また、不正アクセスによって個人データが漏えい・滅失・毀損した場合、企業には個人情報保護法にもとづく報告義務が生じることがあります。個人情報保護委員会は、不正の目的をもって行われた漏えい等や、1,000人を超える漏えい等など一定の事態について、令和4年4月1日から個人情報保護委員会への報告(速報は概ね3〜5日以内)と本人への通知を義務づけています。

自社の事案がこれに該当しないかを、初動の段階で確認しておくことが重要です。

こうした初動を実際に回すには、誰が指揮し、どこへ連絡するかという体制をあらかじめ決めておくことが欠かせません。専門の対応チーム(CSIRT)を置く企業もありますが、専任が難しい場合でも構いません。発見者の報告先・社内の意思決定者・外部の相談先(サービス提供会社、セキュリティベンダー、警察)を一覧にしておくだけで、いざというときの初動が速くなります。

出典・参考資料(2件)

不正アクセス禁止法で押さえる最低限と相談先

不正アクセスは、技術的な脅威であると同時に法律で禁止された行為です。「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(不正アクセス禁止法)は、不正アクセス行為そのものを禁じています。

第三条 何人も、不正アクセス行為をしてはならない。

第十一条 第三条の規定に違反した者は、三年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。

出典:不正アクセス行為の禁止等に関する法律|e-Gov法令検索

禁止されているのは、他人のIDやパスワードを使って本来アクセスできないシステムに侵入する行為だけではありません。同法は、不正アクセスに使う目的で他人の識別符号(ID・パスワード等)を取得すること(第四条)や保管すること(第六条)、正当な理由なく他人の識別符号を第三者に提供すること(第五条)も禁じています。

加えて、管理者になりすましてID・パスワードの入力を求める、いわゆるフィッシングにあたる行為も第七条で禁止されています。これらに違反した場合の罰則も定められています。

自社が被害に遭った場合は、前項のとおり最寄りの警察署またはサイバー犯罪相談窓口が相談先になります。加害・被害のいずれの観点でも、まず禁止されている行為の範囲を押さえておくことが、社内ルールの整備や従業員教育の土台になります。

出典・参考資料(1件)

検知・防御を担うソリューションと選び方

ここまで見てきたとおり、不正アクセスへの備えは「入口で防ぐ」だけでなく「侵入後・運用中の異常を検知する」ことが欠かせません。ここでは、自社に足りない層を補うための代表的なソリューションを、守る場所(ネットワーク・認証・端末)ごとに紹介します。

どれも扱う層が異なるため、自社の現状と照らして必要な範囲を見極める視点で読んでみてください。より多くのサービスを横断して比較したい場合は、この分野をまとめた比較記事もあわせて参考になります。

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サービスNetwork BlackboxSardineCrowdStrike FalconSentinelOneTrend Vision One
検知レイヤーネットワーク型(NDR)アカウント不正型(ATO・行動分析)エンドポイント型(EDR/XDR)エンドポイント型(EDR/XDR)統合型(XDR)※端末・サーバー・クラウド・メール・ネットワークを横断
主な検知対象外部からの侵入・内部の不審な通信・水平移動・データ持ち出しなど、ネットワーク上に痕跡が残る不正アクセス不正ログイン・アカウント乗っ取り(ATO)・なりすまし登録・ボットなど(決済や取引の不正も併せてカバー)端末上のマルウェア実行・ファイルレス攻撃・ゼロデイ攻撃・侵入後の不審な挙動端末上のマルウェア・ランサムウェア・侵入後の不正なプロセスやファイル(AIによる自律検知・隔離)複数レイヤーを横断した侵入痕跡の相関検知(各層のデータを突き合わせて攻撃の全体像を把握)
提供形態アプライアンス(ミラーリング方式で導入)SaaS(登録・ログイン・決済など各タッチポイントに適用)SaaS(単一の軽量エージェント)SaaS(単一の軽量エージェント+統合コンソール)SaaS(統合プラットフォーム、クレジット制ライセンス)
料金要問い合わせ要問い合わせ要問い合わせ
(中小向けは月額7.99ドル〜/デバイスの公開プランあり)
要問い合わせ要問い合わせ
国内の提供・サポート主体株式会社クワッドマイナージャパン(国内総代理店の株式会社フーバーブレインが資本参加)株式会社DGビジネステクノロジー(Sardine AI の正規代理店)クラウドストライク合同会社(中小向けは公式の直販プラン、大規模導入は販売代理店経由が一般的)SentinelOne Japan株式会社(国内は代理店経由の販売・導入)トレンドマイクロ株式会社
詳細情報公式資料を見る公式資料を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見る

1. Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

Network Blackboxのウェブサイト

Network Blackboxは、ネットワークを流れるパケットを収集して脅威を可視化・分析するNDR(Network Detection and Response)製品です。ミラーリング方式で導入するためネットワークへの影響を抑えつつ、収集・検知・ハンティング・フォレンジック・対応の機能を備えます。

外部からの侵入や内部の不審な通信、水平移動、データ持ち出しといった、ネットワーク上に痕跡が残る不正アクセスの検知と事後調査を担います。

検知の方式は、既知の脅威を捉えるシグネチャベース検知と、通常と異なる挙動を捉える振る舞い異常検知の両方を備えます。EDRやSIEM(セキュリティログを集約・分析する基盤)と連携する設計で、端末やログの対策と組み合わせて内部・監視の層を厚くする位置づけです。国内では総代理店が資本参加しており、日本法人によるサポート体制が整えられています。

2. Sardine(株式会社DGビジネステクノロジー)

Sardineのウェブサイト

デバイスインテリジェンス(端末情報の収集・分析)と行動バイオメトリクス(ユーザーの行動から本人性を判定する技術)を組み合わせ、AIと機械学習で不正を検知するのがSardineです。米Sardine AIが開発し、国内では正規代理店の株式会社DGビジネステクノロジーが販売・導入・サポートを担っています。

とくに不正ログイン・アカウント乗っ取り(ATO)対策に強みがあり、ログイン中の異常な操作パターン、ヘッドレスブラウザやプロキシを使ったクレデンシャルスタッフィング、メールや電話番号・多要素認証設定の変更といったアカウント変更の監視など、なりすましの兆候を複数のシグナルから捉えます。

会員登録・ログイン・決済といった各タッチポイントに適用できるため、会員サイトやオンラインサービスを運営し、利用者による不正ログイン・なりすまし登録を防ぎたい事業者に適した仕組みです。

3. CrowdStrike Falcon(クラウドストライク合同会社)

CrowdStrike Falconのウェブサイト

CrowdStrike Falconは、単一の軽量エージェントでエンドポイントを保護するクラウド型のセキュリティプラットフォームです。次世代アンチウイルス(NGAV)にあたる「Falcon Prevent」と、検知・対応を担う「Falcon Insight XDR」が中核で、端末層の不正アクセス対策を担います。

ハッシュ照合に依存しない機械学習と、独自の攻撃の兆候(IOA)分析を組み合わせ、実行前の段階で不正なファイルをブロックしつつ、ファイルレス攻撃やゼロデイ攻撃など実行後の挙動も継続監視します。クラウドに接続していないオフラインの端末でも、センサーに組み込まれた検知機能で基本的な防御を維持する設計です。

4. SentinelOne(SentinelOne Japan株式会社)

SentinelOneのウェブサイト

SentinelOneの「Singularity Platform」は、次世代アンチウイルス・EDR・XDRを単一の軽量エージェントと統合コンソールで提供するエンドポイント保護のプラットフォームです。エージェント側のAIが脅威を自律的に検知し、不正なプロセスやファイルをリアルタイムで隔離・停止する点が中核機能として位置づけられています。

ランサムウェアの被害を受けた際に、システムの再構築なしでファイルを復旧(ロールバック)できる機能や、攻撃の流れを自動で再構成する技術「Storyline」を備え、検知から対処までを自動化する設計です。端末を起点に、クラウドやアイデンティティ、ネットワークへ保護範囲を広げられます。

5. Trend Vision One(トレンドマイクロ株式会社)

Trend Vision Oneのウェブサイト

トレンドマイクロが提供するTrend Vision Oneは、エンドポイント・サーバー・クラウド・メール・ネットワークといった複数の層を単一コンソールで管理する統合サイバーセキュリティプラットフォームです。各層で集めたデータを相関分析し、攻撃の全体像を可視化するXDR(拡張検知・対応)を中核とします。

個別の製品では分断されがちな侵入の痕跡を、複数レイヤーを横断して結びつけて捉えられる点が特徴です。国内法人による日本語での提供・サポートに対応しており、既存のトレンドマイクロ製品を利用している場合は同一のコンソールに集約して運用しやすい構成です。

ここで取り上げた5つのサービスは代表例で、検知方式や対応する層は製品によってさらに幅があります。タイプ別の選び方も含めて主要な製品を広く比較したい方は、以下の記事で不正アクセス検知システムを詳しく解説しています。

まとめ

不正アクセスを防ぐ技術は、ファイアウォールやWAF、IDS/IPSといった入口の対策から、多要素認証、暗号化、EDR、脆弱性診断まで、守る場所ごとに役割が分かれています。ひとつの技術で完結するものではなく、入口・認証・端末・内部/監視・運用の各層を重ねる多層防御の考え方が基本です。

まずはOSの更新やパスワード強化、多要素認証、バックアップといった基本を全社で固め、扱う情報の重要度に応じて入口・内部・監視の対策を積み増していくのが現実的な進め方です。あわせて、万一侵入された場合の初動対応と、不正アクセス禁止法や個人情報保護法上の報告義務も押さえておきましょう。自社に足りない層が見えてきたら、それを補うサービスの資料を取り寄せて、具体的な比較検討を進めてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 多層防御とは何ですか?

A. 多層防御とは、入口・認証・端末・内部/監視・運用など、守る場所の異なる複数の対策を層のように重ねて不正アクセスを防ぐ考え方です。ひとつの機器やソフトウェアだけに頼ると、それが突破されたときに被害を止められません。複数の層で守ることで、未知のマルウェアや新たな攻撃手法に容易に突破されるリスクを軽減できるとIPAは説明しています。

不正アクセスを防ぐ技術は単体で完結するものではなく、この多層防御が対策の基本になります。

Q. ファイアウォールとWAFの違いは何ですか?

A. ファイアウォールはネットワークの通信がルールに合うかを判断して不要な通信を遮断する仕組みで、WAFは脆弱性を突いてWebアプリケーションを狙う攻撃を防ぐ仕組みです。どちらも「ファイアウォール」の名を持ちますが、守る対象が異なります。通信の通過可否を判断する一般的なファイアウォールでは防ぎきれない、SQLインジェクションなどのアプリケーション層の攻撃をWAFが担います。

Q. EDRとウイルス対策ソフトの違いは何ですか?

A. ウイルス対策ソフトが既知のマルウェアの実行を未然に防ぐのに対し、EDRは端末に入り込んだあとの不審な挙動を検知して調査・対応することに重点を置きます。侵入や感染を完全に防ぎきることは難しいという前提に立ち、端末上の脅威をいち早く見つけて封じ込める役割を担う点が、従来のウイルス対策との違いです。両者は競合するものではなく、組み合わせて端末の層を厚くする位置づけになります。

Q. 不正アクセス対策は何から始めるべきですか?

A. まずはOS・ソフトの更新、ウイルス対策、パスワードの強化と多要素認証、バックアップといった基本を全社で固めることが最優先です。IPAのガイドラインは、これらを企業の規模に関わらず必ず実行すべき対策と位置づけています。高度な検知製品の導入はそのあとで、自社が扱う情報の重要度に応じて入口・内部・監視の対策を段階的に積み増していくのが現実的な進め方です。

Q. 多要素認証だけで不正アクセスは防げますか?

A. 多要素認証だけでは不十分で、防げるのは主にパスワード漏えい時のなりすまし(識別符号窃用型)に限られます。不正アクセスの手口には、なりすましのほかにシステムの脆弱性を突く攻撃もあり、こちらは認証を強化しても防げません。ファイアウォールやWAF、脆弱性診断、EDRなど、守る場所の異なる対策と組み合わせる多層防御が必要です。

Q. 中小企業でも不正アクセス対策は必要ですか?

A. 企業規模にかかわらず必要で、IPAのガイドラインも基本の対策を規模を問わず必ず実行すべきものと位置づけています。実際、なりすまし型の不正アクセスでは、パスワード管理の甘さにつけ込むものや、元従業員・知人など内部関係者による犯行が大きな割合を占めており、大企業に限らず備えが求められます。まずは基本を固め、扱う情報の重要度に応じて対策を広げていくとよいでしょう。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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