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M&Aの手法一覧|11種類の仕組み・税金・選び方をまとめて解説

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M&Aアドバイザリー・FA比較表(2026年版)

自社の売却や事業承継、あるいは同業の買収を考え始めると、「M&Aにはやり方が何種類かある」という話を耳にします。株式譲渡・事業譲渡・会社分割・合併といった言葉が並びますが、それぞれが何をする方法なのか、自社のケースではどれにあたるのかは、名前だけでは掴みにくいものです。

M&Aの手法は、大きく「買収」「合併」「提携」に分けられ、その下に会社ごと譲る方法・事業の一部だけを譲る方法・株式を渡す方法などが並びます。手法によって経営権の移り方、引き継がれる範囲、かかる税金、手続きの重さが変わるため、全体像を掴んだうえで自社に合う手法を見極めることが大切です。

本記事では、M&Aの手法を一覧で整理し、それぞれの仕組みとメリット・デメリット、手法ごとにかかる税金、自社のケースに合わせた選び方、費用相場や手続きの流れまでを解説します。手法選びや企業価値の評価を相談できる専門家の探し方もあわせて紹介します。

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M&Aの手法の全体像|買収・合併・提携の分類と一覧比較

ここでは、M&Aにどのような手法があるのかを最初に整理します。細かい税金や選び方に入る前に、まず全体の地図を掴んでおくと、後の解説が自分ごととして読み進めやすくなります。

M&A(企業の合併・買収)の手法は、大きく次の3つに分類できます。会社や事業を取得する買収、複数の会社を1つに統合する合併、経営権は移さず資本や業務で協力する提携です。多くのM&Aは買収に含まれ、その中でさらに「株式を取得する方法」と「事業そのものを取得する方法」に分かれます。全体を図にすると次のとおりです。

M&Aの手法を買収・合併・提携の3つに分類した図。買収は株式を取得する方法(株式譲渡・株式交換・株式移転・株式交付・第三者割当増資・TOB・MBO)と事業を取得する方法(事業譲渡・会社分割)に分かれ、合併は吸収合併・新設合併、提携は資本提携・業務提携・合弁を含む。

手法を見分けるうえで役立つのが、引き継がれ方の違いです。株式譲渡や合併のように会社の権利義務をまるごと引き継ぐ方式を包括承継、事業譲渡のように資産や契約を1つずつ選んで移す方式を個別承継と呼びます。包括承継は手続きが比較的シンプルな一方で不要な負債も引き継ぎやすく、個別承継は必要なものだけを選べる代わりに契約や許認可の移転手続きが個別に必要になります。

下の表は、代表的なM&Aの手法を「何をする方法か」「引き継ぎ方」「主な対価」「かかる税金の要点」で一覧にしたものです。各手法の詳しい仕組みは次章で個別に解説します。

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M&Aの主な手法株式譲渡事業譲渡会社分割株式交換株式移転株式交付第三者割当増資TOB(株式公開買付け)MBO合併資本業務提携
何をする方法か株式を買い手に売り、会社の経営権ごと引き継いでもらう特定の事業や資産を選んで売買する事業を切り出して他の会社に承継させる発行済株式の全部を取得させ、完全子会社にする発行済株式の全部を新設会社に移し、持株会社化する自社株式を対価に相手を子会社化する(100%取得は不要)特定の相手に新株を割り当て、資本参加を受け入れる上場企業の株式を市場外で公告して買い集める経営陣が自社の株式を買い取り、経営権を取得する複数の会社を1つの会社に統合する出資と業務協力を組み合わせ、独立性を保ったまま協業する
引き継ぎ方包括承継(会社まるごと)個別承継(資産・契約を個別に移転)包括承継(分割対象の部分)包括承継(株主が入れ替わる)包括承継(株主が入れ替わる)株式の取得株式の新規発行株式の取得株式の取得包括承継承継なし(経営権は移さない)
主な対価現金現金株式・現金株式など新設会社の株式買い手の株式現金現金など現金(借入等を活用)株式・現金出資金
税金の要点売主個人は譲渡益に約20.315%(申告分離課税)課税資産の譲渡に消費税10%(土地・有価証券は非課税)税制適格なら課税を繰延べ税制適格なら課税を繰延べ税制適格なら課税を繰延べ要件により株主の課税繰延べの場合あり発行会社は資本取引で原則課税なし売却株主は譲渡益に課税売却株主は譲渡益に課税税制適格なら課税を繰延べ手法により異なる

※税金の要点は代表的なケースの概要です。実際の課税関係は取引の内容や当事者(個人・法人)によって異なるため、詳細は「M&Aの手法ごとにかかる税金」の章および税務の専門家にご確認ください。

M&Aの各手法をわかりやすく解説

ここからは、一覧で概観した各手法について、「一言で言うと何をするのか」と仕組み、メリット・デメリット、どんな場面で使われるかを個別に見ていきます。並び順は全体像と同じく、買収系(株式を取得する方法・事業を取得する方法)から始め、合併、提携の順に解説します。組織再編にあたる合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付は会社法に手続きが定められており、根拠となる条文もあわせて示します。

株式譲渡

株式譲渡は、会社の株主が保有する株式を買い手に売却し、会社の経営権ごと引き継いでもらう手法です。中小企業のM&Aで最も多く使われ、会社という器はそのまま残るため、従業員の雇用や取引先との契約、許認可も原則としてそのまま引き継がれます(包括承継)。

手続きが比較的シンプルで、株式を売買するだけで経営権を移せる点が最大のメリットです。一方で、買い手から見ると簿外債務や不要な資産・負債もまとめて引き継ぐことになるため、後述するデューデリジェンス(買収前の精査)が重要になります。オーナー経営者の引退や後継者不在による事業承継で多く選ばれる手法です。

事業譲渡

事業譲渡は、会社が営む事業の全部または一部を、対象となる資産・負債・契約を選んで売買する手法です。株式譲渡が会社まるごとの取引であるのに対し、事業譲渡は「どの事業・どの資産を譲るか」を個別に決められる点が特徴です(個別承継)。

買い手は必要な事業だけを取得でき、不要な負債や簿外リスクを切り離せる一方、従業員の雇用契約・取引先との契約・許認可は個別に移転手続きを行う必要があり、手間と時間がかかります。会社法では、事業の全部の譲渡や重要な一部の譲渡について、原則として株主総会の特別決議による承認が求められています。

(事業譲渡等の承認等)第四百六十七条 株式会社は、次に掲げる行為をする場合には、当該行為がその効力を生ずる日(以下この章において「効力発生日」という。)の前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならない。

出典:会社法 第467条|e-Gov 法令検索

会社分割(吸収分割・新設分割)

会社分割は、会社が営む事業に関する権利義務の全部または一部を、他の会社に承継させる手法です。既存の会社に承継させる吸収分割と、新しく設立する会社に承継させる新設分割があります。事業譲渡と似ていますが、会社分割は対象部分を包括的に承継させるため、個々の契約の移転手続きを省ける場合がある点が異なります。

  • 二十九 吸収分割 株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後他の会社に承継させることをいう。
  • 三十 新設分割 一又は二以上の株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割により設立する会社に承継させることをいう。
出典:会社法 第2条第29号・第30号|e-Gov 法令検索

グループ内で事業を再編したい場合や、複数事業のうち特定の事業だけを切り出して譲渡・独立させたい場合に用いられます。手続きは会社法第757条以下(吸収分割)・第762条以下(新設分割)に定められ、原則として株主総会の特別決議が必要です。

事業譲渡と違い、契約や許認可を個別に移す手間を省ける場合があります。ただし組織再編として特別決議や債権者保護の手続きが必要で、事業譲渡より準備に時間と手間がかかりやすい点は念頭に置く必要があります。

株式交換

株式交換は、ある株式会社の発行済株式の全部を、別の会社(完全親会社となる会社)に取得させ、完全子会社(100%子会社)にする手法です。対象会社の株主は、対価として親会社の株式や金銭を受け取ります。会社を存続させたまま、既存のグループに完全子会社として取り込みたい場合に使われます。

三十一 株式交換 株式会社がその発行済株式(株式会社が発行している株式をいう。以下同じ。)の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいう。

出典:会社法 第2条第31号|e-Gov 法令検索

現金を用意せず、自社株式を対価に完全子会社化できるのが利点です。ただし対象会社の株主に買い手の株式が渡るため、買い手の株主構成が変わり、株式の価値評価をめぐる調整も必要になります。

株式移転

株式移転は、1つまたは複数の株式会社が発行済株式の全部を、新たに設立する会社に取得させる手法です。株式交換が既存の会社を親会社にするのに対し、株式移転は新しく設立する会社を完全親会社にする点が違いです。持株会社(ホールディングス)を新設してその傘下に既存会社をぶら下げる場合や、複数社が共同で持株会社をつくる場合に用いられます。

三十二 株式移転 一又は二以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることをいう。

出典:会社法 第2条第32号|e-Gov 法令検索

グループ全体を持株会社の下に再編し、資本関係を整理しやすくなります。反面、新会社の設立手続きが必要で、上場企業では新設会社の上場手続きなど、準備の負担も大きくなります。

株式交付

株式交付は、自社の株式を対価として相手企業の株式を譲り受け、その企業を子会社にする手法です。2019年(令和元年)改正の会社法で新しく設けられ、2021年3月1日から施行されました。株式交換が発行済株式の全部を取得して完全子会社にするのに対し、株式交付は子会社にできる範囲(過半数の取得など)で足り、100%取得までは求められない点が大きな違いです。

三十二の二 株式交付 株式会社が他の株式会社をその子会社(法務省令で定めるものに限る。第七百七十四条の三第二項において同じ。)とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対して当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付することをいう。

出典:会社法 第2条第32号の2|e-Gov 法令検索

買い手は現金を用意せず自社株式を対価にできるため、資金負担を抑えて他社を子会社化したい場合に活用されます。完全子会社化まで求められない分だけ株式交換より柔軟に使える一方、対価に自社株式を用いるため、買い手の既存株主の持株比率は薄まります。

出典・参考資料(1件)

第三者割当増資

第三者割当増資は、特定の相手(提携先や投資家など)に新たに発行する株式を割り当て、出資を受け入れる手法です。既存株主から株式を買い取るのではなく、新株を発行して資本を増やすため、対象会社に資金が入る点が特徴です。会社法上は「募集株式の発行等」(第199条以下)に位置づけられます。

資本提携やグループ入りの手段として使われ、割り当てる株式数によって出資者の持株比率が変わります。既存株主にとっては持株比率が下がる(希薄化する)点に注意が必要です。

TOB(株式公開買付け)

TOB(Take Over Bid、株式公開買付け)は、上場企業の株式を、買付け期間・株数・価格を公告したうえで、証券取引所の市場外で不特定多数の株主から買い集める手法です。上場企業の経営権取得や完全子会社化の局面で用いられ、会社法ではなく金融商品取引法の公開買付制度に基づいて行われます。

買付け条件を公告して多数の株主から一度に株式を集められますが、価格や期間の公告など金融商品取引法上の手続きが求められ、非上場の中小企業では基本的に使えません。非上場企業のM&Aで直接使われる場面は多くないものの、上場企業が関わるM&Aのニュースで頻繁に登場するため、手法の1つとして押さえておくとよいでしょう。

MBO(マネジメント・バイアウト)

MBO(Management Buyout)は、会社の経営陣が自社の株式を買い取り、経営権を取得する手法です。買収資金は金融機関からの借入や投資ファンドの出資で用意することが一般的です。オーナーからの事業承継を経営陣が引き受ける場合や、上場企業が非上場化して意思決定を迅速にしたい場合などに使われます。

事業をよく知る経営陣が引き継ぐため、事業の継続性を保ちやすいのが利点です。ただし買収資金の多くを借入で賄うと、その返済が買収後の経営を圧迫することがあります。

合併(吸収合併・新設合併)

合併は、複数の会社を法的に1つの会社へ統合する手法です。存続する会社が消滅する会社の権利義務を引き継ぐ吸収合併と、新たに設立する会社に全社の権利義務を引き継がせる新設合併があります。消滅会社の権利義務は全部が包括的に承継されます。

  • 二十七 吸収合併 会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいう。
  • 二十八 新設合併 二以上の会社がする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させるものをいう。
出典:会社法 第2条第27号・第28号|e-Gov 法令検索

グループ内の会社を統合して経営を効率化する場合などに使われます。合併は組織再編にあたり、原則として当事会社それぞれで株主総会の特別決議が必要です。特別決議は、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立します。

第三百九条 2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。

出典:会社法 第309条第2項|e-Gov 法令検索

組織を一本化し、重複する部門やコストを統合できます。反面、消滅会社の権利義務を全部引き継ぐため、システムや人事制度をそろえる統合作業(PMI)の負担は大きくなりがちです。

資本業務提携(資本提携・業務提携・合弁)

資本業務提携は、株式の持ち合いや出資(資本提携)と、技術・販売などの協力(業務提携)を組み合わせ、両社が独立性を保ったまま協業する手法です。共同で新会社を設立する合弁会社(ジョイントベンチャー)もこの枠に含まれます。

買収と違って経営権をまるごと移すわけではないため、関係の解消がしやすく、まず提携から始めて将来的な買収につなげるといった段階的なアプローチも取れます。一方で、経営権を握れないため意思決定の主導権は限定的です。

出典・参考資料(1件)
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M&Aの手法ごとにかかる税金

手法を選ぶうえで、税金は避けて通れない論点です。ここでは、中小企業のM&Aで登場しやすい株式譲渡・事業譲渡・組織再編について、誰にどの税金がかかるのかを整理します。実際の税額は取引の内容や当事者の状況で変わるため、具体的な試算は税務の専門家に確認してください。

株式譲渡にかかる税金

個人の株主が株式を譲渡して利益(譲渡益)が出た場合、その利益は他の所得と分けて計算する「申告分離課税」の対象になります。国税庁のタックスアンサーでは、税率は次のように示されています。

税率 20%(所得税15%、住民税5%)
(注)平成25年から令和29年までの各年分については、復興特別所得税を所得税と併せて申告・納付します。復興特別所得税額は、基準所得税額に2.1パーセントの税率を掛けて計算します。

出典:No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)|国税庁

所得税15%に復興特別所得税(所得税額の2.1%=0.315%分)が上乗せされ、住民税5%と合わせて、実際の負担はおおむね20.315%となります。中小企業のオーナーが会社を株式譲渡で売却するケースでは、この個人の譲渡益課税が中心になります。法人が株式や事業を譲渡した場合は、譲渡益が他の所得と合算されて法人税などの課税対象となり、税率は会社の規模や自治体によって変わるため一律ではありません。

上場企業の株式を買い集めるTOB(株式公開買付け)や、経営陣が株式を買い取るMBOも、株式を手放す株主の側から見れば株式の売却です。したがって、売却した株主の譲渡益には株式譲渡と同じ課税関係が当てはまり、個人株主であれば原則としてこの申告分離課税(おおむね20.315%)の対象になります。

事業譲渡にかかる税金(消費税)

事業譲渡では、譲渡する資産のうち課税対象となるものに消費税がかかります。消費税の標準税率は10%です。一方、土地や有価証券の譲渡は消費税の非課税取引とされているため、これらには消費税がかかりません。

出典・参考資料(2件)

一般に、建物などの有形固定資産(土地を除く)や、のれん・棚卸資産といった課税資産の譲渡が消費税の対象になるとされます。事業譲渡では譲渡する資産の範囲によって消費税額が変わるため、どの資産を対象にするかを検討する段階で税負担も見込んでおくことが大切です。

また、事業譲渡では譲渡益に対して売り手の会社に法人税などが課され、その資金を株主が配当や会社の清算で受け取る際には、さらに課税される場合があります。個人株主の株式譲渡が譲渡益への課税で完結しやすいのに対し、事業譲渡は会社と個人の二段階で税負担が生じうる点が、手法選びで意識される違いです。

組織再編と適格・非適格の判定、繰越欠損金の引継ぎ

合併・会社分割・株式交換・株式移転などの組織再編では、税制上の一定の要件(適格要件)を満たすかどうかで課税関係が変わります。要件を満たす適格組織再編にあたる場合、資産や負債を帳簿価額のまま引き継ぎ、譲渡損益を認識せずに課税が繰り延べられます。法人税法は次のように定めています。

内国法人が適格合併により合併法人にその有する資産及び負債の移転をしたときは、前条第一項及び第二項の規定にかかわらず、当該合併法人に当該移転をした資産及び負債の当該適格合併に係る最後事業年度終了の時の帳簿価額として政令で定める金額による引継ぎをしたものとして、当該内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する。

出典:法人税法 第62条の2|e-Gov 法令検索

要件を満たさない非適格の場合は、資産を時価で移転したものとして扱われ、含み益に課税が生じます。適格要件は支配関係の継続や事業の継続など細かく定められており、判定は複雑なため、組織再編を検討する際は早めに税務の専門家に相談することが重要です。

赤字が出た年度の欠損金を将来の黒字と相殺できる繰越欠損金にも、手法によって影響があります。法人税法上は、原則として10年以内に生じた欠損金を、各事業年度の所得の50%を限度に損金へ算入できます(中小法人等には全額控除の特例があります)。適格合併などでは繰越欠損金を引き継げる場合がありますが、引継ぎには制限が設けられているため、条文(法人税法第57条・第57条の2)の要件を確認する必要があります。

出典・参考資料(1件)

自社に合うM&A手法の選び方(使い分けの目安)

ここでは、数ある手法から自社のケースに合うものを見極めるための目安を整理します。手法選びは、次の観点を組み合わせて考えると絞り込みやすくなります。特定の手法が常に有利というわけではなく、目的と状況に応じて適した手法は変わります。

  • 目的:会社を丸ごと引き継いでほしいのか、特定の事業だけを譲りたいのか、資本や技術で協力したいのか
  • 対象範囲:会社そのものを対象にするのか(株式譲渡・合併・株式交換など)、事業の一部を対象にするのか(事業譲渡・会社分割)
  • 対価:現金で受け取りたいのか、株式を対価にできるのか(買い手が現金を用意できない場合は株式交換・株式交付・合併・会社分割などが選択肢)
  • 税務・手続きの負担:課税関係や、株主総会の特別決議・契約の個別移転など手続きの重さ

たとえば「会社を丸ごと後継者や第三者に譲りたい」なら株式譲渡が基本線になります。「複数事業のうち1つだけを譲りたい」なら事業譲渡や会社分割、「買い手が現金を用意しづらい」なら株式を対価にできる株式交換・株式交付・合併・会社分割が候補に挙がります。後継者が社内にいるなら経営陣による買収(MBO)も選択肢です。

中小企業で最も多い手法とその理由

中小企業のM&Aでは、株式譲渡が最も多く選ばれています。手続きが比較的シンプルで、株式を売買するだけで会社の経営権をまとめて引き継げること、従業員の雇用や取引先との契約もそのまま維持しやすいことが理由です。

加えて、オーナー個人にとっては譲渡益への課税が申告分離課税で完結しやすく、税負担の見通しを立てやすいことも選ばれる背景にあります。後継者不在に悩むオーナー経営者が、第三者への株式譲渡によって事業承継を実現するケースが増えています。

ただし、どの手法が最適かは会社の状況や相手との条件交渉によって変わります。自己判断で手法を固定せず、次章で紹介する専門家に相談しながら、税務・法務の両面から検討することをおすすめします。

M&Aの費用相場と手続きの流れ

M&Aを進めるときは、仲介会社やアドバイザーに支払う費用と、相談から成約までの手続きの流れも把握しておきたいところです。ここでは、中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」で示されている費用の考え方と、一般的な手続きの流れを紹介します。

M&Aにかかる費用の相場(着手金・成功報酬・レーマン方式)

M&Aの支援を依頼する際の費用は、着手金・月額報酬・中間金・成功報酬などで構成され、どの費用を請求するか、金額はいくらかは仲介会社やアドバイザーによって異なります。成功報酬の計算には、譲渡額などの金額に応じて料率が段階的に下がる「レーマン方式」が広く使われています。中小M&Aガイドラインでは、その一例として次の料率が示されています。

【レーマン方式の一例】基準となる価額(円)/乗じる割合(%):5億円以下の部分 5/5億円超10億円以下の部分 4/10億円超50億円以下の部分 3/50億円超100億円以下の部分 2/100億円超の部分 1 ※あくまで一例であり、各階層における価額・割合は各仲介者・FA により異なる。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁

この一例では、5億円以下の部分に5%を乗じます。たとえば譲渡額が1億円なら、この一例に当てはめると成功報酬は500万円(1億円×5%)が目安です。ただし料率や基準となる価額(譲渡額・移動総資産額など)は各社で異なり、譲渡額が小さい場合に備えて最低手数料を設ける仲介会社・アドバイザーも多くあります。

着手金についても、ガイドラインの事例では100万円・50万円のケースや、請求しないケースが紹介されており、依頼先によって幅があります。実際の費用は、依頼先の料金体系を資料や見積りで確認することが欠かせません。

M&Aの手続きの流れとおおよその期間

M&Aは、相談・準備から始まり、相手候補の探索、条件のすり合わせ、契約と続きます。中小M&Aガイドラインなどで示される一般的な流れは、おおむね次のように進みます。

  1. 相談・アドバイザーの選定と事前準備(企業価値の把握、資料の整理)
  2. 相手候補の探索・打診とトップ面談
  3. 基本合意の締結
  4. デューデリジェンス(DD=買い手による対象企業の精査)
  5. 最終契約の交渉・締結
  6. クロージング(決済・株式や財産の引渡し)

デューデリジェンスは、対象企業の財務・法務などのリスクを精査するために、主に買い手が専門家に依頼して行う調査です。クロージングは、最終契約を締結したうえで、株式・財産の譲渡と対価の支払いを行う最終工程を指します。

出典・参考資料(1件)

全体の期間は案件によって大きく異なります。中小M&Aガイドラインが示す費用の事例では、相談から成約までに数か月から1年程度を要したものがみられ、相手探しや条件交渉、買い手による精査の進み方によって変わります。

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M&Aの手法選びや企業価値評価を相談できる専門家

ここまで見てきたように、M&Aは手法ごとに仕組み・税金・手続きが大きく異なり、自社に合う手法を見極めるには専門的な判断が必要です。手法の選定や企業価値の評価、相手候補の探索、条件交渉、デューデリジェンスの進行までを任せられる相手として、M&A仲介会社やファイナンシャル・アドバイザー(FA)があります。

M&A仲介と売主側FA(アドバイザリー)の違い

相談先を選ぶうえで、まず知っておきたいのが「仲介」と「FA」の違いです。M&A仲介は、売り手と買い手の双方の間に立ち、双方から手数料を受け取って成約までを中立的な立場で支援します。幅広い相手候補とのマッチングに強い一方、売り手・買い手のどちらか一方の利益を最大化する立場ではありません。

これに対してFA(ファイナンシャル・アドバイザー)は、売り手か買い手のどちらか一方と契約し、その依頼者の利益のために助言する立場です。たとえば売り手専任のFAは、買い手から手数料を受け取らないため、譲渡価格や雇用・契約条件など売り手にとって有利な条件の追求に専念しやすいという特徴があります。どちらが適しているかは、重視する点(幅広いマッチングか、一方の立場に立った交渉か)によって変わります。

中小企業が安心してM&Aに取り組めるよう、国は令和3年8月に「M&A支援機関登録制度」を創設しています。登録した仲介会社・FAは中小M&Aガイドラインの遵守を宣言しており、相談先を選ぶ際の目安の1つになります。

出典・参考資料(1件)

ここからは、手法選定や企業価値評価を相談できるサービスとして、売り手専任のFAとM&A仲介の代表例を紹介します。以下は両者を比較した表です。

← 横にスクロールできます →
M&Aの相談先(FA・仲介の比較)M&A Lead日本M&Aセンター
提供形態売主専任FA(片手取引)M&A仲介(両手取引)
手数料を受け取る相手売主のみ(買主からは受領しない)売主・買主の双方
主な報酬体系完全成功報酬制
(着手金・中間金・月額報酬はいずれも0円)
成功報酬はレーマン方式で譲渡対価の1〜5%
着手金100万〜500万円+成功報酬
成功報酬はレーマン方式(売り手の最低手数料2,000万円)
主な対象・特徴売主の利益(譲渡価格・雇用条件等)の追求に専念する片手モデル
全国対応・無料相談あり
東証プライム上場(証券コード2127)のM&A仲介会社
地方銀行約9割・信用金庫約8割と提携、累計成約11,000件超(公式サイト)
詳細情報公式資料を見る公式サイト

※料金・実績は2026年9月時点の各社公式情報等によります。個別の条件は各社の資料や問い合わせでご確認ください。

1. M&A Lead(M&A Lead株式会社)

M&A Lead(売主専門M&Aアドバイザリー)の公式サイト

M&A Leadは、売り手(譲渡企業)だけのために働くことを掲げる、売主専任のM&Aアドバイザリーです。一般的なM&A仲介が売り手・買い手の双方から手数料を受け取るのに対し、M&A Leadは売り手からのみ手数料を受け取る「片手取引」を採用し、買い手からは手数料を受け取りません。

買い手から報酬を受け取らないことで、譲渡価格や雇用・契約条件など、売り手に有利な条件の追求に専念できる立場を明確にしている点が特徴です。料金は完全成功報酬制で、着手金・中間金・月額報酬は0円、成功報酬はレーマン方式(譲渡対価の1〜5%)とされています。

自社に加えて他社の仲介会社・独立系アドバイザーとも連携するネットワークを活用し、買い手候補への幅広いアプローチを図ります。相談は無料で、全国に対応しています。最低報酬額は公式サイトでは明示されていないため、小規模な譲渡を検討する場合は資料や問い合わせで確認しておくとよいでしょう。

事業承継から上場企業の子会社の譲渡(カーブアウト)まで幅広い成約実績があり、中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」にも登録しています。買い手ではなく自社の利益に寄り添って売却を進めたい経営者に向いた選択肢です。

2. 日本M&Aセンター(株式会社日本M&Aセンター)

日本M&Aセンターの公式サイト

日本M&Aセンターは、1991年創業・東証プライム市場上場(証券コード2127)のM&A仲介会社です。中堅・中小企業の事業承継やM&Aを主な対象とし、売り手と買い手の双方を支援する仲介モデルでサービスを提供しています。

全国の地方銀行の約9割・信用金庫の約8割と提携する金融機関ネットワークや、会計事務所・士業とのネットワークを情報源とした案件創出力を強みとしています。支援範囲は、企業価値評価から相手候補のマッチング、交渉、経営統合(PMI)まで及びます。累計成約件数は公式サイトで11,000件を超えると案内されています。

料金は着手金(簿価総資産額に応じ100万〜500万円)と、レーマン方式による成功報酬(売り手の最低手数料2,000万円)が公式サイトで公開されています。

幅広い相手候補とのマッチングを重視し、実績のある大手に相談したい場合に候補となります。仲介モデルのため、売り手・買い手のどちらか一方の立場に立った交渉を重視する場合は、前述のFAとの違いを踏まえて検討するとよいでしょう。

ここで取り上げた2社はあくまで代表例です。M&Aアドバイザリー・FAを含む金融コンサル会社を、専門領域や費用相場、選び方の観点まで幅広く比較したうえで相談先を絞り込みたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。

まとめ

M&Aの手法は、買収・合併・提携に大別され、その中に株式譲渡・事業譲渡・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付・合併・資本業務提携などがあります。会社ごと引き継ぐか事業の一部を譲るか、株式を渡すか資産を渡すか、経営権をどこまで移すかによって、引き継がれる範囲・かかる税金・手続きの重さが変わります。

中小企業では、手続きがシンプルで経営権をまとめて引き継げる株式譲渡が多く選ばれますが、最適な手法は目的と状況によって変わります。税務・法務の判断が絡むため、自己判断で手法を固定せず、手法選定や企業価値評価を相談できる専門家とともに検討することが、納得のいくM&Aへの近道です。

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M&Aの手法に関するよくある質問(FAQ)

Q. M&Aの手法とは何ですか?

A. M&Aの手法とは、会社や事業の経営権を移転・統合するための具体的なやり方(スキーム)の総称です。大きくは、会社や事業を取得する「買収」、複数の会社を1つに統合する「合併」、経営権は移さず資本や業務で協力する「提携」に分けられ、買収の中にさらに株式譲渡・事業譲渡・会社分割・株式交換・株式交付などが含まれます。手法によって経営権の移り方や引き継がれる範囲、かかる税金、手続きの重さが変わります。

Q. 株式譲渡と事業譲渡の違いは何ですか?

A. 株式譲渡は会社をまるごと引き継ぐ「包括承継」、事業譲渡は資産や契約を選んで移す「個別承継」である点が最大の違いです。株式譲渡は負債や取引先との契約、許認可も原則そのまま引き継がれ手続きが比較的シンプルな一方、事業譲渡は不要な負債や簿外リスクを切り離せる代わりに、契約や許認可を1つずつ移転する手間と時間がかかります。

Q. 中小企業のM&Aで最も多い手法は何ですか?

A. 中小企業のM&Aでは、株式譲渡が最も多く選ばれています。株式を売買するだけで会社の経営権をまとめて引き継げること、従業員の雇用や取引先との契約もそのまま維持しやすいことが理由です。後継者不在に悩むオーナー経営者が、第三者への株式譲渡によって事業承継を実現するケースが増えています。

Q. 買収資金を用意できない場合に向くM&Aの手法はありますか?

A. 自社の株式を対価にできる株式交換・株式交付・合併・会社分割などが選択肢になります。これらは現金を準備しなくても経営権の取得や会社の統合が可能で、手元資金が限られる買い手でも実行しやすい手法です。ただし、相手が現金ではなく株式での対価を受け入れるかどうかは、条件交渉によって決まります。

Q. 株式交換と株式交付は何が違いますか?

A. 株式交換は相手の発行済株式の全部を取得して100%子会社にするのに対し、株式交付は過半数の取得など子会社にできる範囲でよく、100%取得までは求められない点が違いです。株式交付は2021年3月1日に施行された改正会社法で新しく設けられた手法で、いずれも自社株式を対価に相手を子会社化できるため、現金の負担を抑えたい買い手に活用されます。

Q. M&Aの手法はどうやって選べばよいですか?

A. 「目的」「対象範囲(会社まるごとか一部事業か)」「対価(現金か株式か)」「税務・手続きの負担」の4つの観点を組み合わせて絞り込むのが基本です。たとえば会社を丸ごと譲りたいなら株式譲渡、一部の事業だけを譲りたいなら事業譲渡や会社分割が候補になります。最適な手法は目的と状況によって変わるため、専門家に相談しながら決めるのが安全です。

Q. 株式譲渡にかかる税金はどのくらいですか?

A. 個人株主が株式譲渡で得た譲渡益には、申告分離課税でおおむね20.315%が課されます。これは所得税15%に復興特別所得税(所得税額の2.1%=0.315%分)が上乗せされ、住民税5%と合わせた税率です。法人が株式や事業を譲渡した場合は、譲渡益が他の所得と合算されて法人税などの課税対象となり、税率は会社の規模や自治体によって変わるため一律ではありません。

Q. M&Aにかかる費用の相場はどのくらいですか?

A. M&Aの支援費用は着手金・月額報酬・中間金・成功報酬などで構成され、成功報酬には譲渡額に応じて料率が段階的に下がる「レーマン方式」が広く使われます。中小企業庁の中小M&Aガイドラインが示す一例では、5億円以下の部分に5%を乗じる料率が挙げられています。ただし、料率や着手金の有無、最低手数料は依頼先によって大きく異なるため、実際の費用は資料や見積りで確認することが欠かせません。

Q. M&Aの手続きにはどのくらいの期間がかかりますか?

A. M&Aは相談・準備から相手候補の探索、基本合意、デューデリジェンス、最終契約、クロージングまで進み、実際のケースでは数か月から1年程度かかることもあります。相手候補の見つかり方や条件交渉、買い手による精査の進み方によって、全体の期間は案件ごとに大きく変わります。

Q. M&A仲介とFA(ファイナンシャル・アドバイザー)は何が違いますか?

A. M&A仲介は売り手と買い手の双方の間に立って中立的に成約を支援するのに対し、FAは売り手か買い手のどちらか一方と契約し、その依頼者の利益のために助言する点が違います。幅広い相手候補とのマッチングを重視するなら仲介、譲渡価格や雇用・契約条件など一方の立場に立った交渉を重視するなら片手のFAが向いています。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
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