会社や事業の売却・買収を進めるなかで、アドバイザーから示された条件やドラフト契約書に「アーンアウト」という見慣れない言葉が出てきて、戸惑ってはいないでしょうか。M&A(企業の買収・合併)の対価をすべて成立時に支払うのではなく、買収後の業績に応じて後から追加で支払う仕組みで、近年のスタートアップ買収や事業承継で採用が増えています。
アーンアウト条項は、売り手にとっては手取りの増減、買い手にとっては追加負担の見通しに直結します。仕組みを正しく理解しないまま条件を受け入れると、「業績目標を達成できず対価が減った」「想定より税負担が重かった」といった後悔につながりかねません。
本記事では、アーンアウト条項の定義と仕組みから、買い手・売り手それぞれのメリット・デメリット、対価の計算方法、税務・会計上の扱い、トラブルを防ぐ契約上の注意点までを整理します。マネックスグループによるコインチェック買収などの実例も交えながら、自社のM&Aで採用・受諾を判断するための材料としてご活用ください。
目次
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アーンアウト条項とは?
アーンアウト条項とは、M&Aの対価を成立(クロージング)時に全額支払うのではなく、買収後の一定期間に定めた業績目標を達成した場合に、追加の対価を支払うことを定める契約条項です。英語では earn-out(earn out clause)、会計上は「条件付取得対価(contingent consideration)」と呼ばれます。
会計基準では、条件付取得対価を次のように定義しています。
条件付取得対価とは、企業結合契約において定められるものであって、企業結合契約締結後の将来の特定の事象又は取引の結果に依存して、企業結合日後に追加的に交付される若しくは引き渡される又は返還される取得対価をいう。
出典:企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(注2)|企業会計基準委員会
支払いの全体像は、大きく2段構えになります。まずクロージング時に固定額を支払い、その後の一定期間で業績目標が達成された場合に、あらかじめ定めた算定式にもとづく追加額を支払う、という構造です。
- クロージング時の固定対価:成立時に確定して支払う金額
- 業績達成に応じた追加対価:買収後の一定期間に業績目標を満たした場合、算定式にもとづき追加で支払う金額

アーンアウトの仕組み
ここからは、追加対価がどのように決まるのか、その中身を見ていきます。アーンアウトの設計で中心になるのは、「何を基準に達成を測るか(評価指標)」と「いつまでの業績で測るか(評価期間)」の2点です。
評価指標の種類
追加対価の支払い条件となる業績目標には、財務指標と非財務指標があります。財務指標では、売上高・営業利益・EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)・純利益・営業キャッシュフローなどが使われます。買い手の買収後の経営方針や会計処理の影響を受けにくい指標が選ばれる傾向があります。
非財務指標としては、新規ユーザー数・契約件数・特定製品の開発完了・許認可の取得といった、事業の進捗そのものを測る基準が用いられることもあります。売り手の事業特性に合わせて、達成度を客観的に判定できる指標を選ぶことが重要です。
評価期間の設定
業績を測る期間(アーンアウト期間)は、一般的に買収後1〜3年程度で設定されることが多いとされています。期間が長いほど売り手は目標達成の不確実性を負い、買収後の外部環境の変化による影響も受けやすくなります。一方で期間が短すぎると、事業の成果が数字に表れる前に判定時期が来てしまうため、事業の性質に応じたバランスが求められます。
アーンアウトが使われる場面・目的
アーンアウト条項は、売り手と買い手の間で企業価値の見立てに差があるときに、その差を埋める手段として用いられます。代表的な場面は次の3つです。
価格評価のギャップを埋める場面。売り手は将来の成長を織り込んだ高い価格を望み、買い手は不確実性を踏まえて慎重な価格を提示しがちです。将来の業績達成を条件に追加対価を支払う形にすることで、双方が納得できる着地点を探れます。
将来の不確実性が高いスタートアップの買収。実績が乏しく先行きが読みにくい企業では、成立時の一括払いは買い手のリスクが大きくなります。業績連動にすることで、買い手は買収後の実績を見ながら支払いを分散できます。
創業者・キーパーソンの引き留め。売却後も売り手の経営者が事業を率いる場合、追加対価を業績に連動させることで、買収後も事業成長に取り組む動機づけになります。
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買い手・売り手それぞれのメリット・デメリット
アーンアウト条項の損得は、買い手か売り手かで大きく異なります。自社がどちらの立場かに引きつけて、次の対比を確認してください。
| 買い手 | 売り手 | |
|---|---|---|
| メリット | 将来の不確実性に備えてリスクを分散できる。買収資金の流出を分散でき、目標未達なら追加支払いを抑えられる。買収後の事業成長を売り手に促せる。 | 将来の業績に応じて、一括払いより多くの対価を得られる可能性がある。成長性を正当に評価されやすく、買収後の経営を続ける動機づけにもなる。 |
| デメリット・注意点 | 業績が伸びれば総支払額が当初想定より増える。指標や達成判定をめぐる条件設計が複雑で、交渉が長期化しやすい。買収後の会計処理や将来負担の見通しが立てにくい。 | 成立時にまとまった資金を一括で受け取れない。業績目標が未達だと追加対価が減額・不払いとなり、想定した手取りに届かないリスクがある。買収後の経営方針は買い手の影響下にあり、達成が自分の努力だけでは決まらない。 |
特に売り手が意識すべきは、追加対価が「もらえるとは限らない」点です。クロージング時の固定額を低めに設定し、大部分を業績連動の追加対価に振り分ける条件では、目標未達のときに当初期待した総額を大きく下回る可能性があります。
提示された条件を見極める目安として、固定対価が総額に占める割合が小さいほど売り手のリスクは高まります。また、営業利益のように買収後の費用計上のしかたで動きやすい指標が使われている場合は、達成が自分の努力だけでは決まりにくい設計といえます。こうした観点で、受け取った条件が自社にとって不利になっていないかを確認するとよいでしょう。
アーンアウト対価の計算方法(型別・具体例)
追加対価の算定式にはいくつかの型があります。ここからは代表的な5つの型を、それぞれ簡単な数値例とともに説明します。以下の金額は仕組みを示すための例で、実際の設計は取引ごとに異なります。
閾値超過型
あらかじめ定めた業績の基準値(閾値)を超えた場合に、追加対価を支払う型です。たとえば「対象年度の営業利益が2億円を超えたら、追加で1億円を支払う」といった設計です。目標を達成したかどうかで支払いの有無がはっきり分かれるため条件がわかりやすい一方、閾値をわずかに下回ると追加対価がゼロになります。
利益分配型
対象期間に生じた利益の一定割合を追加対価に充てるのがこの型です。たとえば「買収後3年間の当期純利益の合計額の2分の1を追加で支払う」といった設計になります。業績に比例して支払額が増減するため、売り手の努力が対価に反映されやすくなります。
段階型
業績の水準に応じて、追加対価を段階的に定める型です。たとえば「営業利益2億円で5,000万円、3億円で1億円、4億円で1.5億円」のように、達成度合いごとに支払額を刻みます。閾値超過型のように「達成か未達か」の二者択一にせず、成果を段階的に反映できます。
マイルストーン達成型
財務数値ではなく、特定の事業上の到達点(マイルストーン)の達成を条件にするのがこの型です。新製品の開発完了・許認可の取得・特定顧客との契約締結などが条件の例になります。研究開発型の事業や、成果が売上に表れるまで時間がかかる事業で用いられます。
複数指標連動型
売上高と利益、財務指標と非財務指標など、複数の基準を組み合わせて追加対価を算定する型です。単一の指標では事業の実態を測りにくい場合に、複数の観点から達成度を評価します。設計が複雑になりやすいため、算定式と判定方法を契約書で明確に定めておくことが欠かせません。
アーンアウトの税務・会計
アーンアウトは、売り手の手取りと買い手の会計処理の両方に影響します。特に売り手にとっては、追加対価がどの所得に区分されるかで税率が大きく変わり、手取りを左右します。まず両者の要点を対比してから、それぞれを詳しく見ていきます。
| 税務上の主な論点 | 会計処理の主な論点 | |
|---|---|---|
| 売り手(個人株主の場合) | 追加対価の所得区分によって税率が変わる。株式譲渡による譲渡所得なら申告分離課税で約20%、雑所得と扱われる場合は総合課税で最大約55%になりうる。 | 個人株主の場合は会計処理ではなく所得税・住民税の課税関係が中心となる。 |
| 買い手(取得法人) | 支払った対価は株式の取得原価に反映される。追加対価が確実になった時点で取得原価に加算し、のれんに反映する。 | アーンアウトは会計上「条件付取得対価」に当たる。日本基準とIFRS(国際会計基準)で、追加対価をいつ・どこに認識するかが異なる。 |
アーンアウトの税務上の扱い(売り手の所得区分)
売り手が個人株主の場合、追加対価がどの所得に区分されるかは、手取りに直結する重要な論点です。ここは税率が大きく変わるため、条件を受け入れる前に押さえておく必要があります。

税務専門誌や法律事務所の解説で紹介されている国税庁の内部文書の見解では、アーンアウトの追加対価は、支払いが確定した年分の雑所得として総合課税されるのが基本とされています。これは公式に公表された通達ではありませんが、実務ではこの見解が起点になります。その背景には、収入金額はその年に収入すべき金額とする権利確定主義(所得税法第36条)があります。
譲渡の時点では追加対価の権利が確定的に発生しておらず、株式の譲渡による所得(譲渡所得)とはいえない、という整理です。所得税法上、雑所得は他のいずれの所得にも該当しない所得と定義されています。
ただし、所得区分は常に雑所得になるわけではありません。追加対価を受け取る権利が譲渡の時点で確定していたと評価できる場合には、株式譲渡による譲渡所得(所得税法第33条)となる余地があります。
実際に、国税不服審判所の平成29年2月2日裁決では、株式譲渡代金の一部を発行会社の将来業績に応じて分割支払する条項があった事案について、支払いが不確実とはいえないとして、譲渡代金の全額を譲渡時の収入金額に計上すべき(=譲渡所得)とした課税処分が適法と判断されています。
雑所得とした裁判例として引用される大阪地裁平成27年判決・大阪高裁平成28年判決は、特許を受ける権利の持分譲渡に伴うマイルストンペイメントの事案で、譲渡時点で支払いを受ける権利が停止条件付きで確定していなかったという特殊事情にもとづくものです。
M&Aの株式譲渡そのものの事案ではないため、射程を限定して理解する必要があります。所得区分の判断は個別の契約内容によって分かれるため、税理士など専門家への確認が欠かせません。
税率の目安は次のとおりです。株式の譲渡所得は申告分離課税で、所得税15%(租税特別措置法第37条の10・第37条の11)に住民税5%と復興特別所得税を加えた約20.315%です。
一方、雑所得として総合課税される場合は、所得税が最大45%(所得税法第89条の累進税率)に住民税10%を加えて最大約55%(復興特別所得税を含めると約55.9%)になりうる水準です。累進課税のため、所得水準によっては手取りが大きく変わります。
出典・参考資料(3件)
アーンアウトの会計処理(条件付取得対価・のれん)
買い手側では、アーンアウトは会計上の「条件付取得対価」として扱われます。日本基準では、追加対価をいつ取得原価に反映するかについて、次のように定めています。
条件付取得対価が企業結合契約締結後の将来の業績に依存する場合において、対価を追加的に交付する又は引き渡すときには、条件付取得対価の交付又は引渡しが確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、支払対価を取得原価として追加的に認識するとともに、のれんを追加的に認識する又は負ののれんを減額する。
出典:企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」第27項(1)|企業会計基準委員会
つまり日本基準では、追加対価の交付が確実になり金額が合理的に決まった時点で、その額を株式の取得原価に加算し、のれんに反映します。このとき、のれんは企業結合日に認識されていたものと仮定して計算し、それまでに対応する償却額などは損益として処理します。
これに対しIFRS(国際会計基準)では、扱いが異なります。IFRS第3号では、条件付対価を取得日の公正価値で見積もって取得対価(のれんの計算)に含めます。
その後、負債に分類された条件付対価の公正価値が業績によって変動した場合は、原則としてその変動を純損益(P/L)に認識し、のれんを事後的に修正しません。追加対価をいつ・どこに反映するかが日本基準と異なるため、どの基準を適用するかで買収後の財務数値の見え方が変わります。
出典・参考資料(2件)
アーンアウト条項の契約上の注意点とトラブルを防ぐ設計
アーンアウトは、業績という「後から動く数字」に対価を連動させる仕組みであるため、条件のあいまいさがそのままトラブルの原因になります。まず起きやすいトラブルを押さえ、次にそれを防ぐ条項設計の勘所を確認します。
アーンアウトで起きやすいトラブルの類型
典型的なトラブルには、次のようなものがあります。指標の解釈が売り手と買い手で食い違うケースでは、たとえばEBITDAにどの費用を含めるかで達成の判定が変わります。買収後の経営は買い手の影響下にあるため、買い手が意図的か否かを問わず、費用計上や事業方針の変更によって業績(=追加対価)が下がることもあります。
また、達成判定の根拠となる数字を売り手が確認できず、判定そのものをめぐって争いになるケースもあります。アーンアウト期間中に売り手が対象事業を再売却する場合の扱いを定めていないと、条項が適用できなくなることもあります。
トラブルを防ぐ条項設計のポイント
アーンアウトの追加対価を支払う義務は、株式譲渡契約という売買契約上の債務として発生します(民法第555条)。もっとも、個別の条項をどう設計するかを直接定めた法令はなく、次の点は契約自由のもとでの実務上の工夫として、契約書に具体的に落とし込むことが求められます。
- 業績指標の明確な定義:EBITDAや営業利益などの指標について、どの勘定科目を含め・除くかまで契約書で定義する。解釈の余地を残さないことが、後の食い違いを防ぐ
- 利益操作の防止:買収後の会計方針の変更や、グループ内取引による業績への影響について、一定のルールや調整の取り決めを設ける
- 達成判定と異議申立の手続き:誰が・いつ・どの資料で達成を判定するか、売り手が結果に異議を申し立てられる期間と方法を定める
- 情報提供義務:売り手が達成状況を確認できるよう、買い手が業績に関する資料を開示する義務を定める
- 再売却・事業変更時の扱い:アーンアウト期間中に対象事業が再売却・統合された場合の追加対価の扱いをあらかじめ決めておく
いずれも「なぜその取り決めが必要か」を売り手・買い手の双方が理解したうえで、契約書のワーディングに落とし込むことが重要です。設計には法務・税務の専門的な判断が関わるため、弁護士やM&Aアドバイザーの関与が望ましい領域です。
出典・参考資料(1件)
アーンアウトと関連条項の違い
アーンアウトは、対価の支払い方や取引後のリスク分担を調整する条項の1つです。似た目的を持つ条項と混同されやすいため、それぞれの違いを整理します。
| アーンアウト条項 | 価格調整条項 | エスクロー・ホールドバック | ロックアップ | みなし清算条項 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 目的 | 買収後の業績達成に応じて追加対価を支払い、価格ギャップや将来の不確実性を調整する | クロージング時点の運転資本や純資産の実際値と基準値との差を精算する | 表明保証違反などに備え、対価の一部を留保・預託しておく | 売却後も売り手の経営者などを一定期間会社に残し、事業の継続性を確保する | M&Aで会社を売却した際、株主間で優先的に分配を受ける取り決め(主に投資契約・株主間契約) |
| 対価への効き方 | 業績目標の達成度に応じて、成立後に追加額が上乗せされる | 成立時点の財政状態の差に応じて、対価が増減調整される | 対価の一部の支払いを一定期間留保し、問題がなければ後日支払う | 対価そのものではなく、在籍・協力義務を課す(アーンアウトと組み合わせることもある) | 売却対価の株主間での分配順位・金額を定める |
※上記は各条項の一般的な位置づけの整理です。みなし清算条項は主に株主間の分配に関する取り決めで、他の対価調整条項とは目的の軸が異なります。実際の効果は契約内容により異なります。
アーンアウトの実事例
アーンアウトが実際にどう使われたかを、公表されている国内外のM&A事例で見てみます。契約の組み立てを知ると、自社のケースにあてはめる際の相場観がつかめます。
マネックスグループによるコインチェックの買収
マネックスグループは2018年4月、暗号資産(仮想通貨)交換業を手がけるコインチェックを完全子会社化しました。株式の取得価額は36億円で、これに加えてアーンアウト条項が設けられました。追加対価は、買収後の一定期間(今後3事業年度)の当期純利益の合計額の2分の1を上限とし、一定の事業上のリスクを控除して算定されるものです。
この取引でアーンアウトが用いられた背景には、コインチェックが当時まだ暗号資産交換業の登録業者ではなかったことや、追加の訴訟リスクが想定されたことがありました。将来の不確実性が高い状況で、業績連動の追加対価により買い手のリスクを抑えつつ取引を成立させた例といえます。
DeNAによるngmocoの買収
ディー・エヌ・エー(DeNA)は2010年、米国のソーシャルゲーム開発会社ngmocoを買収しました。買収総額は最大で約4.03億ドルとされ、このうちクロージング時に約3.03億ドルを支払い、残りの最大約1.00億ドルを、ngmocoの2011年12月期の業績に応じて支払う業績連動の追加対価としました。
成長段階にあった海外のスタートアップを買収する際に、将来業績に応じて対価の一部を後払いにすることで、買い手が価格の妥当性を確保した例です。国境をまたぐM&Aでもアーンアウトが用いられることがわかります。
出典・参考資料(1件)
アーンアウトを含むM&Aの相談先
アーンアウト条項を採用すべきか、提示された条件を受け入れてよいかは、自社の事業特性や交渉状況によって答えが変わります。指標の設計・税務の見通し・契約書のワーディングまで踏み込んだ判断が必要になるため、M&Aアドバイザリー・FA(ファイナンシャル・アドバイザー)に相談し、自社の立場に立って条件を精査してもらうのが実務的です。ここでは、そうした相談先となるサービスを紹介します。
以下はご紹介するM&Aアドバイザリー・FAの比較表です。
| サービス名 | M&A Lead | Web3業界特化M&Aアドバイザリー|Consensus Base |
|---|---|---|
| サービス形態 | 売主専門(セルサイド専任)のM&Aアドバイザリー | Web3・ブロックチェーン特化のM&Aアドバイザリー |
| 特化領域・強み | 買主から手数料を受け取らない片手取引で、譲渡価格・雇用・契約条件など売主に有利な条件の追求に専念 | ブロックチェーン開発の知見を活かした技術デューデリジェンス(技術DD)・スマートコントラクト監査観点でのアセスメント |
| 主な支援範囲 | 買い手候補の探索・提案、条件交渉、成約後のPMIまで | 候補先探索・基本合意(LOI/MOU)・デューデリジェンス管理・取引スキーム設計・契約交渉・買収後統合(PMI)まで一気通貫 |
| 報酬体系 | 完全成功報酬制(レーマン方式・譲渡対価の1〜5%)。着手金・中間金は0円 | 要お問い合わせ(レーマン方式の採用有無は非公開) |
| 対応エリア | 全国対応 | 国内外(東南アジア・欧州・北米のネットワーク) |
| 無料相談 | あり | あり |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る |
※上記は各社の公式サイトおよび公式資料にもとづく整理です(2026年9月時点)。最新の料金・支援内容は各社の資料でご確認ください。
どの相談先が自社に合うかは、M&Aの仲介会社とFAの違いや報酬体系、得意とする専門領域によって変わります。以下の記事では、事業承継・M&Aを含む金融コンサル会社を専門領域別に比較し、費用相場や失敗しない選び方まで解説しています。相談先を幅広く見比べて選びたい場合は、あわせてご覧ください。
金融コンサル会社徹底比較|専門領域別おすすめ19選と選び方【費用相場も解説】
資金繰りや財務戦略、事業承継やM&Aといった経営の重要局面では、社内の知見だけで最適解にたどり着くのが難しい場面が少なくありません。「専門家に相談したいが、どの金融コンサルに頼めばよいのか分からない」と迷う方も多いでしょう。 金融コ…
1. M&A Lead(M&A Lead株式会社)

M&A Leadは、売り手(譲渡側)に特化したM&Aアドバイザリーサービスです。売り手と買い手の双方から手数料を得る仲介ではなく、依頼者である売り手の利益に専念して交渉を支援する点が特徴です。アーンアウトのように売り手・買い手の利害が対立しやすい条項について、売り手側の立場で条件を精査したい場合に適しています。
報酬は完全成功報酬制で、着手金・中間金はかかりません。成功報酬はレーマン方式(取引金額に応じた料率)で算定されます。全国対応でオンライン相談にも対応しているため、地域を問わず相談できます。
2. Web3業界特化M&Aアドバイザリー(コンセンサス・ベイス株式会社)

コンセンサス・ベイスが手がけるのは、Web3・ブロックチェーン業界に特化したM&Aアドバイザリーです。ブロックチェーン開発の知見を背景に、技術デューデリジェンスやスマートコントラクト監査の観点からの評価、トークンの取扱いに関する法務的な整理、取引スキームの設計まで支援します。
暗号資産・Web3領域のM&Aでは、事業の将来性やトークン・スマートコントラクトの技術評価が対価設計を大きく左右します。この領域でアーンアウトを含む条件を検討する場合は、技術デューデリジェンスやトークンの法務整理まで踏み込める、業界特有の論点を理解した相談先が候補になります。
相談先の目安としては、一般的な事業のM&Aでは前述のM&A Leadのような売主側のアドバイザーが、Web3・暗号資産領域ではこうした特化型が向いています。
まとめ
アーンアウト条項は、M&Aの対価の一部を買収後の業績達成に連動させ、売り手と買い手の価格評価のギャップや将来の不確実性を調整する仕組みです。売り手には追加対価を得られる可能性がある一方、目標未達なら手取りが減るリスクがあり、追加対価の所得区分によって税負担も変わります。買い手にとっては、リスクを分散できる反面、指標の設計や達成判定をめぐるトラブルに備えた契約設計が欠かせません。
採用の可否や条件の受諾は、指標の設計・税負担・契約書の文言が絡む総合的な判断です。本記事の要点を手元の条件と照らし合わせ、固定対価と業績連動の割合や指標の選び方、想定される所得区分を確認したうえで、判断に迷う部分は税理士・弁護士やM&Aアドバイザーに相談し、次の一歩に進めてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. アーンアウト条項とは何ですか?
A. アーンアウト条項とは、M&Aの対価を成立(クロージング)時に全額支払わず、買収後の一定期間に定めた業績目標を達成した場合に追加の対価を支払うことを定める契約条項です。会計上は「条件付取得対価」とも呼ばれ、売り手と買い手の価格評価のギャップや将来の不確実性を調整する目的で用いられます。
Q. アーンアウトは英語で何といいますか?
A. アーンアウトは英語で、「earn-out」または「earn-out clause(アーンアウト条項)」と表記します。会計の文脈では「contingent consideration(条件付取得対価)」という呼称も用いられます。
Q. アーンアウトの評価期間はどのくらいですか?
A. アーンアウトの評価期間は、一般的に買収後1〜3年程度で設定されることが多いとされています。期間が長いほど売り手は目標達成の不確実性を負い、外部環境の変化による影響も受けやすくなる一方、短すぎると事業の成果が数字に表れる前に判定時期が来てしまうため、事業の性質に応じて設定します。
Q. アーンアウトの評価指標にはどのようなものがありますか?
A. アーンアウトの評価指標には、売上高・営業利益・EBITDA・純利益・営業キャッシュフローといった財務指標と、新規ユーザー数・契約件数・製品開発の完了・許認可の取得といった非財務指標があります。買い手の買収後の経営方針や会計処理の影響を受けにくく、達成度を客観的に判定できる指標を選ぶことが重要です。
Q. アーンアウトの追加対価はどのように計算しますか?
A. アーンアウトの追加対価は、閾値超過型・利益分配型・段階型・マイルストーン達成型・複数指標連動型といった型ごとの算定式にもとづいて計算します。たとえば閾値超過型は「営業利益が基準値を超えたら追加で支払う」、利益分配型は「一定期間の利益の一定割合を支払う」といった設計で、いずれも算定式と判定方法を契約書で明確に定めておくことが欠かせません。
Q. アーンアウト条項の売り手にとってのデメリット・リスクは何ですか?
A. アーンアウト条項の売り手にとっての最大のリスクは、業績目標が未達だと追加対価が減額・不払いとなり、想定した手取りに届かない可能性がある点です。成立時にまとまった資金を一括で受け取れないこと、買収後の経営が買い手の影響下にあり達成が自分の努力だけでは決まらないこと、達成判定をめぐってトラブルになりうることも、あわせて押さえておく必要があります。
Q. アーンアウトで売り手が受け取る追加対価にはどのような税金がかかりますか?
A. アーンアウトで売り手(個人株主)が受け取る追加対価は、その所得区分によって税率が大きく変わり、株式譲渡による譲渡所得なら申告分離課税で約20%、雑所得として総合課税される場合は最大約55%になりうるとされています。手取りに直結するため、条件を受け入れる前の確認が欠かせません。
税務専門誌などで紹介されている国税庁の内部文書では、支払いが確定した年分の雑所得とする見解が示されていますが、これは公式に公表された通達ではなく、実際の所得区分は契約内容によって分かれます。税理士へ確認したうえで判断してください。
Q. アーンアウトの追加対価が雑所得になるか譲渡所得になるかは、どう分かれますか?
A. アーンアウトの追加対価が雑所得か譲渡所得かは、追加対価を受け取る権利が株式譲渡の時点で確定的に発生していたと評価できるかどうかで分かれると考えられます。譲渡時点で権利が確定していないとみれば雑所得(総合課税)、確定していたとみれば株式の譲渡所得(申告分離課税)という整理です。
実際に国税不服審判所の平成29年裁決では、分割支払の条項があった事案について支払いが不確実とはいえないとして譲渡所得として扱う課税処分が適法とされました。判断は個別の契約内容によって異なるため、区分の見極めには専門家への相談が必要です。
Q. アーンアウトの会計処理はどのように行いますか?
A. 買い手側では、アーンアウトは会計上「条件付取得対価」として扱い、日本基準では追加対価の交付が確実になり時価が合理的に決まった時点で取得原価に加算し、のれんに反映します(企業会計基準第21号)。一方IFRS(国際会計基準)では取得日の公正価値で見積もって取得対価に含め、その後の変動を原則として純損益に認識するため、適用する基準によって買収後の財務数値の見え方が変わります。
Q. アーンアウト条項と価格調整条項はどう違いますか?
A. アーンアウト条項と価格調整条項の違いは、アーンアウトが「買収後の業績達成」に応じて対価を上乗せするのに対し、価格調整条項は「クロージング時点の運転資本や純資産」の実際値と基準値との差を精算する点にあります。アーンアウトは将来の不確実性の調整を、価格調整条項は成立時点の財政状態の精算を目的とする、という違いです。
Q. アーンアウト条項でトラブルを防ぐにはどうすればよいですか?
A. アーンアウトのトラブルを防ぐには、業績指標の定義(どの勘定科目を含め・除くか)、利益操作の防止、達成判定と異議申立の手続き、情報提供義務、再売却時の扱いを契約書に具体的に定めておくことが重要です。アーンアウトは「後から動く数字」に対価を連動させるため条件のあいまいさが争いの原因になりやすく、条項設計には弁護士やM&Aアドバイザーの関与が望ましい領域です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。















