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資本業務提携とは?業務提携・M&Aとの違いと出資比率でみる経営権への影響を解説

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資本業務提携とは、複数の企業が業務面で協力し合う「業務提携」と、一方が他方へ出資して株式を持つ「資本提携」を同時に行う提携の形です。株式の持ち合いや第三者割当増資によって資本関係を結びながら、買収(M&A)とは違って相手の経営権までは取得しない点が、最大の特徴になります。

他社から出資の話を持ちかけられたとき、あるいは自社が他社に出資して関係を強めたいとき、まず気になるのは「これは買収とどう違うのか」「株式を持たれると経営にどこまで口を出されるのか」という点ではないでしょうか。資本業務提携は独立性を保ったまま協業できる一方、出資比率次第で相手に一定の権限が生じるため、仕組みを正しく押さえておく必要があります。

本記事では、資本業務提携の定義と業務提携・M&Aとの違いから、出資比率ごとに相手へ生じる会社法上の権利、メリット・デメリット、進め方と契約の注意点、実際の企業事例までを整理します。

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資本業務提携とは

資本業務提携とは、企業同士が業務上の協力関係(業務提携)を結ぶと同時に、一方または双方が相手企業の株式を取得して出資する(資本提携)ことで、資本の裏付けを伴う強い協業関係をつくる提携の形です。技術・販売・生産などで手を組む業務提携に、株式という資本のつながりを加えることで、単なる契約関係よりも継続性と実行力が高まりやすくなります。

肝になるのは、出資は行うものの、相手の経営権を握るほどの株式は取得しないという点です。買収(M&A)が相手の議決権の過半数などを取得して経営権を移すのに対し、資本業務提携では両社が独立した会社として意思決定を続けられる範囲での出資にとどめるのが一般的です。互いに独立性を保ちながら、資本の面でも利害を一致させる中間的な選択肢と位置づけられます。

ここでいう「出資」は相手企業の株式を取得して株主になることで、返済義務のある「融資(貸付)」とは異なります。出資では株主として配当や議決権を得る代わりに、払い込んだ資金は原則として返ってきません。単に値上がり益を狙う純粋な投資とも違い、業務上の協業を前提に相手との関係を強める点に特徴があります。

出資の方法には、既存株式を買い取る「株式譲渡」、相手企業が新株を発行して引き受ける「第三者割当増資」、上場企業同士で株式を持ち合う「株式持ち合い」などがあり、選ぶ方法によって出資比率の変わり方も異なります。

業務提携・資本提携・M&A(買収・合併)との違い

ここからは、資本業務提携と混同されやすい業務提携・資本提携・M&A(買収・合併)との違いを整理します。判断の軸になるのは、「資本(出資)の移動があるか」「経営権が移るか」「関係の強さはどの程度か」の3点です。

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提携・手法 / 観点業務提携資本提携資本業務提携M&A(買収・合併)
資本(出資)の移動なし(契約による協力のみ)あり(出資・株式取得)あり(出資+業務連携)あり(過半数〜全株式の取得など)
経営権の移転なし原則なし原則なし移転する
関係の強さ比較的ゆるやか(解消しやすい)資本でつながる(業務連携は必須でない)強い(資本と協業の両面)最も強い(経営の一体化)

業務提携との違い

業務提携は、技術提携・共同開発・共同販売などで協力し合う契約ベースの関係で、株式のやり取りは行いません。資本業務提携は、この業務提携に出資(資本提携)を組み合わせた形です。株式を持ち合うことで、一方が他方の株主として利害を共有するため、業務提携だけの場合より関係が強固になり、途中で簡単には解消しにくくなります。

資本提携との違い

資本提携は出資(株式の取得)を伴う提携で、資本業務提携はそこに具体的な業務上の連携を明確に組み合わせたものです。実務では資本提携と資本業務提携が近い意味で使われることも多く、出資と業務連携の両方を伴う関係を指して「資本業務提携」と呼ぶのが一般的です。

M&A(買収・合併)との違い

特に気になるのが、買収との違いです。買収(M&A)は相手企業の議決権の過半数などを取得し、経営権を自社側へ移すのが目的です。合併は複数の会社が一つの法人に統合されます。これに対し資本業務提携は、経営権が移らない範囲の出資にとどめ、両社が独立した会社として並び立つ点が根本的に異なります。

そのため、将来的なM&Aを見据えた前段階として、まず資本業務提携で協業の相性を確かめ、関係を深めてから段階的に株式譲渡へ移行するケースも実務では見られます。資本業務提携は、独立を保ちたい段階と、経営統合まで進める段階の中間に位置する選択肢と捉えると整理しやすくなります。

出資比率と株主権利(会社法でみる経営権への影響)

ここからは、資本業務提携で最も実務的な関心を集める「出資比率と経営権の関係」を、会社法の条文にもとづいて確認します。相手にどれだけの株式(議決権)を渡すかによって、相手が行使できる権利は段階的に変わります。「経営権を守るには相手の出資比率を3分の1以下に抑える」という目安も、この会社法上の議決権要件から導かれます。

議決権割合ごとに生じる主な権利

株主が持つ議決権の割合に応じて、株主総会で行使できる権利は次のように変わります。割合は議決権ベースで、上位の権利は下位の権利を含みます。

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議決権の割合 / 内容3%以上3分の1(約33.3%)超過半数(2分の1超)3分の2以上(会計上)20%以上 ※経営権の段階とは別軸
生じる主な権限・影響株主総会の招集請求、会計帳簿の閲覧・謄写の請求などができる(保有期間などの要件あり)特別決議を単独で否決できる(実務でいう拒否権)。定款変更や組織再編を相手だけで進められなくなる普通決議を単独で可決できる。取締役の選任・解任など日常的な経営を主導できる特別決議を単独で可決できる。定款変更・事業譲渡・合併などの重要事項を進められる株主総会での権限ではなく、出資する側の連結決算上の扱い。出資先が「持分法適用の関連会社」に該当しうる(15%以上でも一定要件を満たせば該当)
主な根拠会社法297条・433条会社法309条2項の裏返し会社法309条1項会社法309条2項企業会計基準第16号

議決権割合と権利の対応は代表的なものを整理したものです。定款による別段の定めや保有期間などの要件により異なる場合があります。会計上の扱い(持分法)は、議決権による経営権の段階とは別の軸です。

普通決議は、取締役の選任・解任や剰余金の配当など通常の事項を決めるもので、会社法は次のように定めています。過半数の議決権を握れば、この普通決議を単独で通せるため、日常的な経営の主導権に直結します。

株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。

出典:会社法 第三百九条第一項|e-Gov法令検索

一方、定款変更や事業譲渡、合併・会社分割などの組織再編といった重要事項は、より厳しい「特別決議」で決めます。会社法は特別決議の要件を、出席株主の議決権の3分の2以上と定めています。

前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。

出典:会社法 第三百九条第二項|e-Gov法令検索

この特別決議の要件を裏返すと、議決権の3分の1超を持つ株主が反対すれば、特別決議は3分の2に届かず成立しません。これが実務で「拒否権」と呼ばれるもので、会社法の条文に「拒否権」という言葉があるわけではなく、特別決議の要件から導かれる帰結です。

相手に3分の1超を渡すと、自社の重要事項の決定に相手の同意が必要になります。経営の自由度を守りたい場合は、相手の出資比率を3分の1以下に抑えるのが一つの目安とされます。

出資比率が低くても、株主には一定の権利が生じます。会社法では、議決権の3%以上を持つ株主に株主総会の招集請求権(297条)や会計帳簿の閲覧・謄写の請求権(433条)を認めています。取締役会設置会社では、議決権の1%以上または300個以上を持つ株主に株主提案権(303条)が認められます。いずれも保有期間などの要件があるため、実際の可否は個別に確認が必要です。

会計の面でも、出資する側の扱いは変わります。企業会計基準第16号は、議決権の20%以上を保有する場合などに、出資先を「持分法適用の関連会社」として扱うと定めています。これは会社法上の経営権とは別の、出資する側の連結決算(会計)上の取り扱いです。

「関連会社」とは、企業(当該企業が子会社を有する場合には、当該子会社を含む。)が、出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、子会社以外の他の企業の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該子会社以外の他の企業をいう。

出典:企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」第5項・第5-2項|企業会計基準委員会

関連会社に該当するのは、原則として議決権の20%以上を保有する場合ですが、15%以上20%未満でも役員の派遣・重要な融資・重要な技術提供・重要な取引などの要件を満たせば該当します。持分法は保有比率だけでなく「重要な影響を与えることができるか」で判断される点に注意が必要です。

出資の方法(株式譲渡・第三者割当増資)

資本業務提携で出資する方法は、大きく「株式譲渡」と「第三者割当増資」に分かれます。どちらを選ぶかで、資金の入り先や出資比率の変化が変わります。

  • 株式譲渡:既存株主が持つ株式を出資者へ売却する方法です。売却代金は既存株主(経営者個人など)に入り、会社の発行済株式総数は変わりません。株式が分散している場合は集約に時間がかかることがあります。
  • 第三者割当増資:相手企業が新たに株式を発行し、出資者がそれを引き受ける方法です。払い込まれた資金は会社に入り、財務基盤の強化につながります。新株の発行で発行済株式総数が増えるため、既存株主の持株比率は薄まります。
  • 株式の持ち合い:上場企業同士が互いに相手の株式を持ち合う方法です。相互に第三者割当増資を引き受けたり、市場や相対で取得したりして、双方が株主となることで関係を固定します。

出資を受ける側にとって、資金が会社に入るか、既存株主(経営者個人など)に入るかは重要な違いです。会社の成長資金を得たいなら第三者割当増資、経営者が保有株の一部を現金化したいなら株式譲渡、というように目的に応じて方法を使い分けます。

株式の持ち合いは主に上場企業同士で用いられる方法です。株式に市場価格が付かず譲渡もしにくい非上場の中小企業では持ち合いは選ばれにくく、成長資金を受け入れる第三者割当増資や、経営者が保有株の一部を譲る株式譲渡が中心になります。資本業務提携は大企業だけのものではなく、上場企業が有望な中小・ベンチャー企業へ出資して協業を強める形も多く行われています。

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資本業務提携のメリット・デメリット

ここからは、資本業務提携のメリットとデメリットを、出資を受ける側と出資する側の両方の立場から整理します。同じ提携でも、立場によって得られるものとリスクは異なります。

出資を受ける側のメリット・デメリット

出資を受ける側の主なメリットは次のとおりです。

  • 成長資金を調達でき、財務基盤を強化できる(第三者割当増資の場合)
  • 出資元の信用力・ブランド・販売網などの経営資源を活用し、成長スピードを高められる
  • 経営権を渡さない範囲の出資であれば、独立性を保ったまま協業できる

一方で、次のようなデメリット・注意点があります。

  • 出資元が株主として経営に関与・干渉してくる可能性がある(出資比率が高いほど影響は大きい)
  • いったん結んだ資本関係は解消が難しく、解消時には出資元の株式を買い取る必要が生じることがある
  • 意思決定に相手との調整が必要になり、単独より判断が遅くなる場面がある

出資する側のメリット・デメリット

出資する側にとっては、次のようなメリットがあります。

  • 買収より少ない資金・リスクで、相手企業の技術や事業と強く結びつける
  • 株主として利害を共有することで、業務提携だけの場合より協業の実行力が高まる
  • 相性を確かめながら関係を深め、将来的なM&Aへの足がかりにできる

デメリット・注意点としては、次の点が挙げられます。

  • 株式取得のための資金を用意する必要がある
  • 経営権を握るわけではないため、相手の経営をコントロールできる範囲は限られる
  • 想定したシナジー(相乗効果)が発揮されない場合もあり、出資が期待した成果に結びつかないリスクがある

資本業務提携の進め方と契約書の注意点

ここからは、資本業務提携を実際に進める流れと、契約で押さえておきたい要点を確認します。大枠は、目的の整理から始まり、相手の選定・条件交渉を経て契約締結に至る流れです。

進め方の基本的な流れ

  1. 提携の目的を整理する:資金調達なのか、技術・販売網の獲得なのか、将来のM&Aを見据えた関係構築なのか、何を得たいのかを明確にします。目的が定まると、必要な出資比率や相手像も具体化します。
  2. 提携先を選定する:目的に合う経営資源やシナジーを持つ相手を探します。事業の補完関係や企業文化の相性も、提携後の実行力を左右します。
  3. 条件を交渉・調整する:出資比率・出資額・出資方法(株式譲渡か第三者割当増資か)、業務連携の範囲、役員派遣の有無などを詰めます。経営権への影響が大きい論点のため、出資比率は特に慎重に調整します。
  4. 契約を締結する:合意した内容を資本業務提携契約書などにまとめ、正式に締結します。出資の実行(払い込み・株式の移転)と業務連携の開始条件を定めます。

条件交渉の中心になるのが出資額、すなわち1株あたりの価格(株価)の算定です。非上場企業には市場株価がないため、複数の手法を組み合わせて企業価値を見積もるのが一般的です。将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くDCF法、類似する上場企業の株価倍率と比較する類似会社比較法、資産・負債を時価で評価し直す時価純資産法などが代表的です。

算定した価値がそのまま出資額になるわけではなく、提携で見込むシナジーや当事者の交渉力を加味して最終的な株価が決まります。出資比率や役員派遣の有無、重要事項の事前協議の範囲とあわせて、これらの条件を一体で調整していきます。

契約書に定める主な事項

資本業務提携では、出資と業務連携の両面を契約で定めます。契約書に盛り込む主な事項は次のとおりです。

  • 提携の目的と対象となる事業・業務の範囲
  • 出資の方法・出資額・出資比率、株式の取得時期
  • 業務連携の具体的な内容と、役割・費用の分担
  • 役員派遣・情報開示・重要事項の協議に関する取り決め
  • 秘密保持、成果物・知的財産の権利の帰属
  • 提携解消の条件と、解消時の株式の取り扱い(買い取りの方法など)

手続き上の注意点として、一定規模以上の株式取得では、独占禁止法(独禁法)にもとづく企業結合の事前届出が必要になる場合があります。届出後は原則として受理日から30日を経過するまで株式取得ができない待機期間があります。

公正取引委員会は、取得する側の企業グループの国内売上高の合計が200億円を超え、株式発行会社グループの合計が50億円を超え、かつ取得後の議決権保有割合が新たに20%または50%を超える場合に、届出が必要としています。

出典・参考資料(1件)

この基準は一定規模以上の大きな取得が対象で、中小規模の案件の多くは届出義務に達しません。自社の案件が対象になるかは、売上高や取得後の議決権割合を基準に照らして確認する必要があります。

資本業務提携の事例

ここからは、実際に公表された資本業務提携の事例を、出資比率・出資額・時期とともに紹介します。いずれも出資比率が経営権の移転に至らない水準にとどまっている点が共通します。

日本郵政グループ×楽天グループ(第三者割当増資)

2021年3月、日本郵政グループと楽天グループは物流・モバイル・DX分野での業務提携と、日本郵政による出資に合意しました。日本郵政は楽天が実施する第三者割当増資を引き受け、約1,500億円(149,999百万円)を出資して楽天の株式の8.32%を取得しています。経営権が移らない範囲の出資で、業務面の協業を資本の裏付けで強めた典型例です。

出典・参考資料(1件)

NTT×トヨタ自動車(相互出資)

2020年3月、NTTとトヨタ自動車は、スマートシティの共同構築などを目的とした業務資本提携に合意しました。両社が各社約2,000億円規模で相互に出資し、トヨタはNTT株式の約2.07%、NTTはトヨタ株式の約0.90%を取得しています。互いに株式を持ち合うことで、少ない比率でも提携関係を固定する狙いがうかがえる事例です。

出典・参考資料(1件)

みずほ証券・みずほフィナンシャルグループ×楽天グループ(株式譲渡)

金融領域でも、資本業務提携は活発です。みずほ証券は2022年10月、楽天証券ホールディングスの株式19.99%を約800億円で取得する資本業務提携を発表しました。続いて2024年11月には、みずほフィナンシャルグループが楽天カードの株式14.99%を約1,650億円で取得する提携を発表しています。

いずれも議決権20%を下回る比率での提携で、経営権の移転を伴わない資本業務提携の形をとっています。

提携が解消・見直しに至ることもある

資本業務提携は、必ずしも当初の狙いどおりに続くとは限りません。想定したシナジーが得られなかったり、経営方針が食い違ったりして、提携を解消・見直しする場合もあります。

解消時には、出資元が保有する株式の買い取りを求められ、その資金負担や価格の折り合いが問題になることがあります。関係を結ぶ前に、解消の条件や株式の取り扱いを契約書で定めておくことが、後のトラブルを避けるうえで重要です。

実際に解消へ至った例として、東証グロース上場の株式会社アスタリスクは2025年1月31日、伊藤忠紙パルプ株式会社との資本業務提携を解消したと発表しました。きっかけは、伊藤忠紙パルプが同月17日付で保有するアスタリスク株式のすべてを売却したことです。資本関係を維持するより柔軟な連携体制のほうが双方に効果的だと合意したとされ、解消後も商品売買などの取引関係は継続するとしています。

資本関係の解消は、必ずしも対立によるものとは限りません。出資元による株式の売却をきっかけに、協業の実態は残しつつ資本のつながりだけを解く形もあります。

出典・参考資料(1件)
出典・参考資料(2件)

資本業務提携とM&A、自社に向くのはどちらか

用語の意味が整理できたところで、「自社の場合、資本業務提携とM&A(経営権の移転を伴う株式譲渡など)のどちらが向くのか」という判断の物差しを確認します。分かれ目になるのは、提携の目的と、経営権を自社に残すかどうかです。

  • 資本業務提携が向くケース:独立性を保ったまま、成長資金や相手の経営資源を得て事業を伸ばしたい場合です。経営の主導権を手放さずに協業を強めたい成長志向の企業に適します。
  • M&A(経営権の移転)が向くケース:事業承継や創業者の資産化(イグジット)が目的で、経営を引き継いでくれる相手に事業を託したい場合です。経営権を移すことを前提に、譲渡価格や引き継ぎ条件を重視します。

どちらが正解というものではなく、目的次第で最適な手法は変わります。まず資本業務提携で相性を確かめ、関係を深めてから段階的にM&Aへ進むという選択肢もあります。

将来の売却(イグジット)を視野に入れる売り手であれば、いきなり全株を譲渡しない選択もあります。まず一部の出資を受け入れて協業で企業価値を高め、実績を示したうえで残りを売却すると、より有利な条件を引き出しやすくなります。自社の目的と、経営権をどうしたいかを整理したうえで、専門家に相談しながら手法を検討するのが現実的です。

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資本業務提携・M&Aを検討するときの相談先

資本業務提携やM&Aは、出資比率の設計・企業価値の算定・契約交渉など専門的な判断が多く、当事者だけで進めるのは容易ではありません。ここからは、相手候補の探索から条件交渉、契約までを支援するM&Aアドバイザリー・FA(ファイナンシャル・アドバイザー)を紹介します。

一般的な業種の資本業務提携・M&AはM&A Lead、Web3・ブロックチェーン領域の事業はConsensus Baseというように、自社の事業領域に合わせて選びましょう。

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サービス名M&A LeadConsensus Base
提供会社M&A Lead株式会社コンセンサス・ベイス株式会社
サービス形態売主専門(セルサイド専任)M&AアドバイザリーWeb3・ブロックチェーン特化M&Aアドバイザリー
得意領域業種を問わず対応
(事業承継〜子会社カーブアウトまで)
Web3・ブロックチェーン特化
(GameFi/NFT/DeFi/DID/ZK技術等)
立場・対象売主(譲渡企業)専門
買主からは手数料を受け取らない片手取引
買い手・売り手の双方に対応
クロスボーダー案件にも対応
主な支援範囲買い手候補の探索・提案
売主に有利な条件での交渉
相談〜クロージングまで
候補先探索・技術DD・取引スキーム設計
契約交渉・PMIまで一気通貫
料金体系完全成功報酬制
(レーマン方式・譲渡対価の1〜5%)
着手金・中間金・月額報酬0円
要お問い合わせ
(料金体系は非公開)
対応エリア全国対応(オンライン・電話相談可)国内外(東南アジア・欧州・北米のネットワーク)
無料相談ありあり
詳細情報公式資料を見る公式資料を見る

1. M&A Lead(M&A Lead株式会社)

M&A Lead(売主専門M&Aアドバイザリー)の公式サイト

M&A Leadは、譲渡企業(売主)だけのために働く売主専属のM&Aアドバイザリーサービスです。売主・買主の双方から手数料を受け取る一般的な仲介と異なり、売主からのみ手数料を受領する片手取引モデルを採用し、譲渡価格や雇用条件など売主に有利な条件の追求に専念する立場を明確にしています。

料金は完全成功報酬制で、相談料・着手金・中間金・月額報酬はいずれも0円。成功報酬は譲渡対価に応じて料率が変わるレーマン方式(1〜5%)で算出されます。他社のM&A仲介会社や独立系アドバイザーとも連携するネットワークを活用し、買い手候補へのアプローチ数とスピードを高める仕組みをとっています。

全国対応で、オンラインや電話での無料相談にも対応します。中小企業庁のM&A支援機関登録制度にも登録しています。

2. Web3業界特化M&Aアドバイザリー|Consensus Base(コンセンサス・ベイス株式会社)

Web3業界特化M&Aアドバイザリー|Consensus Base の公式サイト

Web3・ブロックチェーン業界に絞ってM&Aを支援するのが、コンセンサス・ベイスが手がけるConsensus Baseです。ブロックチェーンやDApps、DeFi、NFT、GameFiといった専門知識が求められる領域を対象に、買収・売却・資本提携の候補探索からPMI(統合後の実務)まで一気通貫で支援します。

Web3・ブロックチェーン領域の事業を扱う企業に向いたサービスで、一般的な業種のM&Aを広く扱うものではありません。

特徴は、自社のブロックチェーン受託開発で培った技術理解を、M&Aプロセスの技術デューデリジェンスや事業評価に活用する点です。スマートコントラクトの監査観点でのアセスメントや、トークンの取り扱いに関する法務的整理、取引スキームの設計まで、Web3特有の論点に踏み込んだ支援を掲げています。料金体系は公式に公開されておらず、詳細は問い合わせが必要です。

相手候補の探索から企業価値の算定・条件交渉まで任せる相談先は、支援範囲や料金体系を見比べて選びたいものです。M&Aアドバイザリー・FAを含む金融コンサル会社を専門領域別に整理し、依頼するメリットや費用相場、選び方まで確認したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。

まとめ

資本業務提携は、業務提携に出資(資本提携)を組み合わせ、経営権が移らない範囲で資本の裏付けを伴う協業関係をつくる手法です。買収(M&A)が経営権を移すのに対し、両社が独立性を保ったまま利害を一致させられる点が最大の違いになります。

実務では、相手に渡す出資比率が経営権への影響を左右します。3分の1超で特別決議の拒否権、過半数で普通決議の単独可決、3分の2以上で特別決議の単独可決という会社法上の議決権要件を踏まえ、目的に合った比率と出資方法を設計することが重要です。自社の目的が成長志向か事業承継かを整理し、専門家の支援も得ながら検討を進めてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. 資本業務提携とは何ですか?

A. 資本業務提携とは、企業同士が業務面で協力し合う「業務提携」と、一方または双方が相手の株式を取得して出資する「資本提携」を同時に行う提携の形です。

買収(M&A)と違って相手の経営権を握るほどの株式は取得せず、両社が独立した会社として意思決定を続けられる範囲での出資にとどめるのが一般的です。業務提携に資本のつながりを加えることで、単なる契約関係よりも協業の継続性と実行力が高まりやすくなります。

Q. 資本業務提携と業務提携・M&A(買収)は何が違いますか?

A. 資本業務提携が業務提携・M&Aと分かれる境目は、出資(資本の移動)があるか、そして経営権が相手に移るかの2点です。

業務提携は契約による協力だけで出資を伴いません。資本業務提携は業務提携に出資を組み合わせますが、経営権は移りません。M&A(買収)は議決権の過半数などを取得して経営権そのものを移す点で、資本業務提携と根本的に異なります。

Q. 資本業務提携で経営権を守るには、相手の出資比率をどのくらいに抑えればよいですか?

A. 資本業務提携で自社の経営権を守りたい場合、相手の出資比率を議決権の3分の1(約33.3%)以下に抑えるのが一つの目安とされます。

議決権の3分の1を超える株式を渡すと、相手は定款変更や組織再編などの特別決議を単独で否決できる(実務でいう拒否権)ようになるためです。ただし実際の支配関係は、他の株主構成にも左右されます。

出典・参考資料(1件)

Q. 資本業務提携で出資を受けると、お金は会社と既存株主のどちらに入りますか?

A. 資本業務提携で出資を受けたとき、第三者割当増資なら資金は会社に入り、株式譲渡なら既存株主(経営者個人など)に入ります

会社の成長資金を得たいなら新株を発行して引き受けてもらう第三者割当増資、経営者が保有株の一部を現金化したいなら株式譲渡、というように、資金の入り先の違いを踏まえて目的に応じて方法を使い分けます。

Q. 資本業務提携で相手に20%以上出資すると、会計上はどう扱われますか?

A. 資本業務提携で議決権の20%以上を出資すると、出資先を「持分法適用の関連会社」として扱うのが原則です。

15%以上20%未満でも、役員の派遣や重要な融資・技術提供・取引などで「重要な影響を与えることができる」と判断されれば関連会社に該当します。これは会社法上の経営権とは別の、出資する側の連結決算(会計)上の取り扱いです。

出典・参考資料(1件)

Q. 資本業務提携は途中で解消できますか?

A. 資本業務提携は契約上は解消できますが、いったん結んだ資本関係は業務提携だけの場合より解消が難しく、解消時に相手が持つ株式を買い取る必要が生じることがあります

このため、契約書の段階で提携解消の条件と、解消時の株式の取り扱い(買い取りの方法など)をあらかじめ定めておくことが重要です。

Q. 資本業務提携をするとき、独占禁止法の届出は必要ですか?

A. 資本業務提携での株式取得は、一定規模以上の場合に独占禁止法にもとづく企業結合の事前届出が必要になります。

公正取引委員会は、取得する側の企業グループの国内売上高合計が200億円を超え、株式発行会社グループの国内売上高合計が50億円を超え、かつ取得後の議決権保有割合が新たに20%または50%を超える場合に届出が必要としています。この基準に達しない中小規模の案件の多くは、届出義務がありません。

出典・参考資料(1件)

Q. 資本業務提携から、将来的にM&A(完全な買収)へ切り替えることはできますか?

A. 資本業務提携から将来的なM&Aへの移行は可能で、まず提携で協業の相性を確かめてから、段階的に株式譲渡へ進むケースも実務では見られます

資本業務提携は、独立を保ちたい段階と経営統合まで進める段階の中間に位置する選択肢のため、M&Aの前段階(お見合い)として活用されることがあります。

Q. 上場企業と未上場企業が資本業務提携する場合、どのような形が多いですか?

A. 上場企業と未上場企業の資本業務提携では、未上場企業が第三者割当増資や株式譲渡で上場企業の出資を受け入れる形が一般的です。

一方、上場企業同士では互いに株式を持ち合う(相互に第三者割当増資を引き受ける)ケースが多く見られます。前者は成長資金や信用力の獲得、後者は対等な関係の固定を狙う形といえます。

Q. 資本業務提携での出資額は、M&Aで会社を売却するときと同じ金額になりますか?

A. 資本業務提携での出資額(株価)は、M&Aで経営権ごと売却するときの金額と必ずしも同じにはなりません

出資比率や取得する株式の性質が異なるうえ、提携後にシナジーが進んで企業価値が高まれば、将来の評価額が変わる可能性もあります。具体的な算定は、企業価値評価に通じた専門家に相談するのが現実的です。

Q. 資本業務提携では、どのような税金がかかりますか?

A. 資本業務提携でかかる税金は、出資の方法と立場によって異なります。株式譲渡で既存株主(個人)が株式を売却した場合、売却益(譲渡所得)に対して申告分離課税で20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)がかかります。

一方、第三者割当増資は会社が新株を発行して資金を受け入れる取引で、時価相当額での発行であれば増資の時点で直ちに課税が生じないのが原則です。ただし時価より著しく低い価額で発行する「有利発行」に当たる場合は、引受側などに課税が生じることがあります。適用関係は取引の形態で変わるため、税理士など専門家への確認が必要です。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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