M&Aによる買収を検討する場面や、事業承継で自社を譲り渡す場面で「ビジネスデューデリジェンス(ビジネスDD/事業DD)」という言葉に出会い、財務DDや法務DDと何が違うのか、具体的に何をどこまで調べる作業なのかがつかみきれないという声は少なくありません。
ビジネスDDは、対象会社の事業の将来性を精査し、買収価格の妥当性や買収後の成長シナリオを見極める調査です。ここが甘いまま取引を進めると、買収後に想定した収益が上がらない、統合(PMI)でつまずくといった形で、買った側が損失を抱えることになりかねません。
本記事では、ビジネスDDとは何かという定義や他のDDとの違いから、目的・調査項目・進め方・費用相場と期間までを整理します。あわせて、DDを含むM&Aを社内で回すか専門家に任せるか、任せるならM&A仲介とFA(ファイナンシャル・アドバイザー)のどちらを選ぶべきかまで解説します。
目次
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ビジネスデューデリジェンス(事業DD)とは
ビジネスデューデリジェンス(ビジネスDD、事業DD)とは、M&Aに際して対象会社の事業状況を精査し、事業計画の妥当性や将来性を検証する調査です。ビジネスDDと事業DDは同じ調査を指す呼び方で、本記事では以降「ビジネスDD」に統一します。
大手FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)のPwCアドバイザリーは、ビジネスDDを次のように説明しています。
ビジネスDDとは、ざっくりいうと、M&A等に際して対象会社(事業)の事業状況を精査し、将来計画を精緻化することになります。一般的には、「市場状況(マクロ環境や競合動向など)」と「対象会社(事業)の強みと課題」を分析することで、対象会社の作成した事業計画の妥当性を検証していくことです。
M&Aを成功に導くビジネスDD(デューデリジェンス)の進め方【第1回】|PwC Japanグループ
財務DDが過去から現在の数字の実態を確かめるのに対し、ビジネスDDは市場環境と対象会社の強み・課題を分析して、将来の事業計画が実現できるかどうかを見極める点に特徴があります。買収価格の根拠となる事業計画に踏み込むため、M&Aの成否を左右する重要な調査です。
買い手・売り手それぞれにとってのビジネスDD
ビジネスDDは主に買い手(譲り受け側)が対象会社を精査するために実施しますが、売り手(譲り渡し側)にとっても他人事ではありません。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」は、DDが買い手・売り手双方にとって重要なプロセスであり、売り手側の調査が不十分だと最終契約での義務負担が増えうると指摘しています。
譲り渡し側はデュー・デリジェンス(DD)の調査が十分になされない場合には、最終契約において譲り渡し側が負う各種義務(表明保証の範囲や補償額・補償期間等)の負担の増加に繋がりうる点に留意が必要である。
中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁
事業承継で自社を譲り渡す立場でも、買い手からのビジネスDDに備えて事業の実態や将来計画を整理しておくことが、条件面での不利を避けることにつながります。
財務DD・法務DDなど他のデューデリジェンスとの違い
デューデリジェンス(DD)は、買い手が対象会社のリスクを精査するために行う調査の総称で、調べる領域ごとに種類が分かれます。ここでは、ビジネスDDがDD全体のどこを担うのかを整理します。
過去を見る財務DD、未来を見るビジネスDD
財務DDは、対象会社の業績や財務状況の実態(正常収益力・運転資本・簿外債務など)を調べる、いわば過去から現在を確かめる調査です。これに対してビジネスDDは、市場環境と対象会社の強み・課題を分析し、事業計画が将来にわたって実現できるかを見極める、未来に向けた調査です。両者は対象とする時間軸が異なり、M&Aではこれらを組み合わせて対象会社を多面的に評価します。
主要な6つのDDの守備範囲
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」は、DDの主な種類を次のように挙げています。
デュー・ディリジェンス(Due Diligence)とは、対象企業である譲り渡し側における各種のリスク等を精査するため、主に譲り受け側が FA や士業等専門家に依頼して実施する調査をいう(「DD」と略することが多い。)。(中略)その他にも、ビジネスモデル等に関するビジネス(事業)DD、税務 DD(財務 DD 等に一部含まれることがある。)、人事労務 DD(法務 DD 等に一部含まれることがある。)、知的財産(知財)DD、環境 DD、不動産 DD、ITDD といった多様な DD が存在する。
中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁
M&Aで実施される主なDDの守備範囲を、大手FASの解説もふまえて一覧にすると次のとおりです。
| DDの種類 | 主な調査対象 | 見る時間軸 |
|---|---|---|
| ビジネスDD(事業DD) | 市場・競合などの外部環境と、対象会社の強み・課題。事業計画の妥当性 | 主に将来 |
| 財務DD | 正常収益力・運転資本・簿外債務など財務の実態 | 過去〜現在 |
| 法務DD | 株式・契約内容・訴訟リスクなど法務面 | 過去〜現在 |
| 税務DD | 引き継ぐ可能性のある潜在的な税務リスク(財務DDに一部含まれることがある) | 過去〜現在 |
| 人事労務DD | 労務管理・人事制度など(法務DDに一部含まれることがある) | 過去〜現在 |
| ITDD | 情報システム・ITインフラの実態とリスク | 現在 |
このほかにも知的財産DD・環境DD・不動産DDなどがあり、どのDDをどこまで実施するかは、M&Aの規模や対象会社の事業内容によって変わります。ビジネスDDは、こうしたDDのなかで「事業そのものの将来性」を担う調査です。
出典・参考資料(2件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)令和6年8月|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html)
- 出典:デューデリジェンス|KPMGジャパン(https://kpmg.com/jp/ja/services/advisory/deal-advisory/merger-acquisition-pmi/due-diligence.html)
ビジネスデューデリジェンスの目的
ビジネスDDの目的は、買収価格(バリュエーション)の妥当性を検証し、買収後の事業戦略を描くための材料を得ることにあります。PwCアドバイザリーは、その目的を「Valuationへの反映」(企業価値評価への反映)と「今後の事業戦略の立案」の大きく2つに整理しています。
ビジネスDDでは対象会社の事業計画を精査し、その多くは営業利益(またはEBITDA=償却前営業利益)までを検証します。市場の先行きや対象会社の強み・課題が明らかになることで、買収価格が妥当かを判断でき、M&A後にどう成長させるかという事業戦略の検討にもつながります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:M&Aを成功に導くビジネスDD(デューデリジェンス)の進め方【第1回】ビジネスDDの目的と概要|PwC Japanグループ(https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/journal/marr-dd/ma-200129.html)
ビジネスDDを怠るとどうなるか
ビジネスDDが不十分なままM&Aを進めると、事業計画の前提が崩れて想定した収益が実現しない、対象会社の強みだと思っていた点が競合環境の変化で失われる、といったリスクを見落とすおそれがあります。結果として買収後の統合(PMI)が計画どおりに進まず、支払った買収価格に見合う価値を得られない事態にもなりかねません。
中小企業庁のガイドラインも、DDを通じて最終契約の条件——譲渡額や、売り手が一定の事実を契約で保証し違反時に補償する「表明保証」、補償など——を調整でき、M&A成立後のトラブルを防止できるほか、成立後の成長に重要なPMIに資する情報を得られると説明しています。裏を返せば、ビジネスDDを省くことは、こうした調整やリスク把握の機会を手放すことを意味します。
出典・参考資料(1件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)令和6年8月|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html)
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ビジネスデューデリジェンスの調査項目【チェックリスト】
ここからは、ビジネスDDで具体的に何を調べるのかを整理します。調査項目は大きく、外部環境・内部環境・事業計画の妥当性・シナジーの4つに分けて捉えると全体像がつかみやすくなります。

外部環境分析(市場・業界・競合・顧客)
対象会社が置かれた市場の規模や成長性、業界構造、競合の動向、主要顧客の状況を調べます。市場が縮小局面にある、特定顧客への依存度が高いといった外部要因は、事業計画の実現性に直結するため、ビジネスDDの起点になります。主に確認する項目は次のとおりです。
- 市場規模と成長性(拡大・横ばい・縮小のトレンド)
- 業界構造と競争環境(競合のシェア、参入障壁)
- 主要顧客の状況(顧客の集中度、取引の継続性)
- 規制・法制度など事業環境の変化要因
内部環境分析(事業モデル・収益構造・人材)
対象会社のビジネスモデル、収益の稼ぎ方(収益構造)、原価やコストの構造、事業を支える人材や組織を分析します。外部環境で見えた機会やリスクに対して、対象会社が自社の強みで応えられるのか、弱みがどこにあるのかを見極めます。主に確認する項目は次のとおりです。
- ビジネスモデルと収益構造(何で・どこで稼いでいるか)
- 原価・コスト構造と利益率
- 主力の製品・事業への依存度(収益源の偏り)
- キーパーソン・組織・人材への依存度
事業計画の妥当性検証
ビジネスDDの中核が、対象会社が作成した事業計画の妥当性検証です。ここで精査した事業計画が、買収価格の算定(バリュエーション)の土台になります。外部・内部環境の分析結果と突き合わせて、次の点を確かめます。
- 売上・利益計画の前提条件が現実的か
- 過去の実績と計画に整合性があるか
- 将来のキャッシュフローがどれだけ確からしいか
- 計画の達成に必要な投資・施策が実行可能か
シナジー効果の検証
買い手と対象会社が一緒になることで生まれる相乗効果(シナジー)を検証します。売上を伸ばす売上シナジーと、コストを削減するコストシナジーに分けて評価し、統合後の実務(PMI)につなげます。主に確認する項目は次のとおりです。
- 売上シナジー(販路の相互活用・クロスセルなど)の見込み
- コストシナジー(重複機能の統合・調達改善など)の見込み
- シナジー実現に伴うコスト・リスクと、効果が出るまでの時間軸
- 統合実務(PMI)で必要になる施策
分析フレームワークの使い分け
ビジネスDDでは、経営分析の代表的なフレームワークを目的に応じて使い分けます。どの分析に何を使うかを整理すると次のとおりです。
| 分析の目的 | 主に使うフレームワーク | 捉えるもの |
|---|---|---|
| 外部環境の分析 | PEST分析/5フォース分析 | マクロ環境の変化、業界の競争構造 |
| 内部環境の分析 | VRIO分析/バリューチェーン分析 | 経営資源の競争優位性、価値を生む活動 |
| 全体の統合整理 | SWOT分析 | 強み・弱み・機会・脅威の整理 |
それぞれのフレームワークが何を捉える道具なのかを押さえておくと、調査結果の読み解きに役立ちます。
- PEST分析:政治・経済・社会・技術という4つのマクロ環境要因から、事業を取り巻く外部環境の変化と先行きを捉えます。
- 5フォース分析:競合・新規参入・代替品・買い手・売り手という5つの力で、業界の競争構造と稼ぎやすさを分析します。
- VRIO分析:経済価値・希少性・模倣困難性(まねされにくさ)・組織の4つの観点から、対象会社の経営資源が競争優位の源泉になるかを評価します。
- バリューチェーン分析:事業活動を機能ごとに分解し、どの工程で価値が生まれ、強み・弱みがどこにあるかを見極めます。
- SWOT分析:強み・弱み・機会・脅威の4区分で、外部環境と内部環境の分析結果を1枚に統合し、戦略の方向性を描きます。
ビジネスデューデリジェンスの進め方・手順
ビジネスDDは、M&Aの基本合意後に、財務DDなど他のDDと並行して進めるのが一般的です。中小企業庁のガイドラインは、DDは通常、譲り受け側(買い手)がFAや士業等の専門家に依頼して実施すると説明しています。おおまかな流れは次のとおりです。

- 全体計画の策定:限られた時間と費用のなかで、重点的に調べる項目を絞り込み、調査範囲とスケジュールを決めます。
- 資料分析:対象会社から開示された事業計画・財務資料・契約書などをもとに、外部環境・内部環境を分析します。
- 現地調査・マネジメントヒアリング:経営陣へのインタビューや現地確認を通じて、資料だけでは分からない実態や事業計画の前提を確かめます。
- 報告書の作成:分析結果を整理し、事業計画の妥当性・リスク・シナジーの評価をまとめます。
- 買収判断・条件への反映:報告内容を、買収の可否や価格、最終契約の条件(表明保証・補償など)、そして統合後のPMI計画に反映します。
調査で判明した実態を最終契約の条件に反映することで、成立後のトラブルを防ぎやすくなり、買収後の成長に必要な情報も得られます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)令和6年8月|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html)
ビジネスデューデリジェンスの費用相場と期間
ビジネスDDの費用と期間は「案件による」と説明されがちですが、公開されている専門機関の解説から、規模別のおおよその目安と、幅が出る理由を押さえておくことができます。
費用相場(規模別の目安と、幅が出る理由)
費用は案件の規模と調査範囲によって大きく変わるため、単一の相場ではなく幅で捉えるのが実態に近いといえます。各社の公式解説で示されている目安は次のとおりです。
- M&Aサクシードは、コンサルティングファームなどへの依頼費用の目安を「数十万円から200万円程度」と説明しています。
- TRANBI(トランビ)は、中小企業のM&Aでは数十万円程度から、外部の専門家に本格的に依頼する場合は数百万円に及ぶこともあるとしています。
- 船井総研あがたFASは、規模の大きい案件ではビジネスDDだけで1,000万円を超えることもあると説明しています。
買い手側の目安として、船井総研あがたFASは「DDにかける費用を投資金額の2%以内に収めたい」という考え方を持つ買い手が多いとしています。この考え方に当てはめると、買収額が1億円ならDD費用は200万円以内が一つの目安になります(財務DDなど他のDDも含む場合の考え方です)。費用は原則として買い手が負担します。
中小規模の案件で調査範囲を絞れば数十万円台から、大規模で網羅的に調べれば1,000万円超と、案件規模と調査の深さに応じて費用感が変わると理解しておくとよいでしょう。
期間の目安
期間も対象会社の規模によりますが、TRANBIは数週間から1〜2か月程度が一般的としています。調査範囲を広げるほど期間は長くなるため、費用と同様に、重点項目を絞り込むことがスケジュール管理の鍵になります。
出典・参考資料(3件)
- 出典:ビジネスデューデリジェンスとは?調査項目・進め方・費用相場|M&Aサクシード(https://ma-succeed.jp/content/knowledge/post-10604)
- 出典:事業デューデリジェンス(ビジネスDD)とは?|TRANBI(https://www.tranbi.com/ma-column/detail?id=328)
- 出典:ビジネスDD(事業デューデリジェンス)とは|船井総研あがたFAS(https://ma.funaisoken.co.jp/column/business-due-diligence-guide)
ビジネスデューデリジェンスを成功させるポイントと注意点
限られた時間と費用のなかでビジネスDDの精度を高めるには、次の点が重要になります。
- 重点項目を絞り込む:すべてを網羅的に調べようとすると費用と期間が膨らみます。中小企業庁のガイドラインも、予算等の制約がある場合は検討対象を絞るなどの工夫をして、実施する調査の内容を検討することが望ましいとしています。
- 他のDDと連携させる:ビジネスDDで精査した事業計画は、財務DDの結果と突き合わせることで妥当性が高まります。DDごとに分断せず、全体で対象会社を評価します。
- PMIまで見据える:ビジネスDDはシナジーの検証を通じて、買収後の統合(PMI)計画にも直結します。買った後にどう成長させるかを意識して調査項目を設計します。
出典・参考資料(1件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)令和6年8月|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html)
ビジネスデューデリジェンスは誰に依頼すべきか
ここからは、ビジネスDDを含むM&Aを社内で回すのか、専門家に任せるのか、任せるなら誰を選ぶのかを整理します。
買い手自身の関与と専門家(M&Aアドバイザリー・FA)の役割
中小企業庁のガイドラインは、DDは通常、譲り受け側(買い手)がFAや士業等の専門家に依頼して実施すると説明しています。事業計画の妥当性検証や市場分析には専門的な知見が必要なため、外部の専門家を活用するのが一般的です。ただし、対象会社の事業をよく理解し、買収後にその事業を運営するのは買い手自身であるため、専門家に丸投げするのではなく、買い手が主体的に関与することが調査の質を左右します。
M&A仲介とFAの違い、DDでの関わり方
M&Aの支援者には、大きく「仲介者」と「FA(ファイナンシャル・アドバイザー)」があります。中小企業庁のガイドラインは両者を、契約する相手の違いで整理しています。仲介者は売り手・買い手の双方と契約してマッチングを支援する立場、FAは売り手または買い手の一方と契約して依頼者の利益のために支援する立場です。
DDとの関わりで注意したいのは、仲介者はDDを直接実施する立場ではない点です。ガイドラインは次のように述べています。
本ガイドライン上、仲介者の場合には、利益相反の防止の観点からデュー・ディリジェンス(DD)を直接実施すべきでないとしているところ(中略)、譲り受け側がデュー・ディリジェンス(DD)の実施にあたって専門的な支援を必要とする場合には、別の支援機関から支援を受ける場合もある。
中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁
つまり、ビジネスDDを含む調査を専門家に任せたい場合は、仲介者とは別に、買い手側に立つFASやコンサルティングファーム、士業等に依頼するのが基本になります。
規模の面では、大規模なM&Aでは高度な助言を提供するFASが関与する傾向があり、中堅・中小企業のオーナー経営者の事業承継や売却では、独立系のコンサルティングファームや地域の専門家が担うことも多くみられます。自社の案件規模と、売り手・買い手どちらの立場かをふまえて依頼先を選ぶとよいでしょう。
出典・参考資料(1件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)令和6年8月|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html)
ここからは、ビジネスDDを含むM&Aを相談できるアドバイザリー・FAを3社紹介します。売り手(事業承継で譲り渡す側)に専属で伴走するタイプ、Web3など特定領域に特化したタイプ、買い手側も含めてDDから事業再生まで総合的に対応するタイプと、立場や得意領域が異なります。
自社が買い手か売り手か、対象事業の領域はどこかをふまえ、比較表の「立場・タイプ」を手がかりに選んでください。より幅広い選択肢から比較したい場合は、M&Aをはじめとする金融コンサル会社を専門領域別に比較した記事もあわせてご覧ください。
| サービス名 | M&A Lead | Consensus Base | 山田コンサルティンググループ |
|---|---|---|---|
| 立場・タイプ | 売主専門のM&Aアドバイザリー (片手取引) | Web3・ブロックチェーン特化の M&Aアドバイザリー | 独立系の総合コンサルティングファーム (東証プライム上場) |
| 得意領域・対象 | 業種を問わない売却・事業承継 (売主の条件最大化に専念) | GameFi・NFT・DeFi・ウォレット等 Web3領域のM&A | 中堅・中小オーナー企業の 事業承継・M&A・事業再生 |
| M&Aでの主な支援範囲 | 買い手候補の探索・条件交渉 (売主専属で伴走) | 候補探索からPMIまで一気通貫 技術DD・ビジネスDDに対応 | M&A・事業承継から事業再生まで 買収監査(DD)にも対応 |
| 料金体系 | 完全成功報酬制(着手金・中間金なし) レーマン方式・譲渡対価の1〜5% | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| 対応エリア | 全国対応 | 国内外(クロスボーダー対応) | 全国+アジア圏に拠点 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式サイト |
1. M&A Lead(M&A Lead株式会社)

M&A Leadは、売主(譲り渡し側)だけの立場に立つことに特化したM&Aアドバイザリーです。売り手・買い手の双方から手数料を受け取る「両手取引」ではなく、売主からのみ手数料を受け取る「片手取引」を採用し、譲渡価格や雇用・契約条件など、売主にとって有利な条件の追求に専念できる点を掲げています。
自社のアドバイザーに加えて100を超えるM&Aネットワークを活用し、買い手候補へのアプローチ数とスピードを高める仕組みを持ちます。事業承継で自社を譲り渡す立場から、買い手側のビジネスDDに備えつつ有利な条件で交渉を進めたい経営者にとって、売主専属で伴走してくれる相手といえます。
料金は完全成功報酬制で、着手金・中間金・月額報酬は無料、相談も無料です。対応エリアは全国です。
2. Consensus Base(コンセンサス・ベイス株式会社)

コンセンサス・ベイスが提供するのは、Web3・ブロックチェーン業界に特化したM&Aアドバイザリーです。ブロックチェーン受託開発で培った技術理解を、M&Aの技術DDや事業評価に活かす点が特徴で、公式の相談例にも「Web3/ブロックチェーン領域に特化したビジネスデューデリジェンス(DD)を依頼したい」というケースが挙げられています。
買収・売却候補の探索からPMIまでを一気通貫で支援し、スマートコントラクトを監査的な視点で評価するアセスメントや、トークンの取り扱いに関する法務面の整理など、Web3特有の論点にも対応します。GameFiやDeFi、ウォレット開発企業など、専門知識が求められる領域のM&Aで、技術とファイナンスの両面から精査できる相手を探している場合に適しています。
3. 山田コンサルティンググループ(山田コンサルティンググループ株式会社)

山田コンサルティンググループは、事業承継・M&A・事業再生・会計税務・海外事業支援などを横断的に手がける独立系の総合コンサルティングファームです(東証プライム上場、証券コード4792)。公認会計士・税理士・中小企業診断士など多様な有資格者を擁し、経営課題をワンストップで支援する体制を強みとしています。
M&Aコンサルティングでは、事業の売却・買収からグループ再編、事業再生まで、資本政策に関わる課題に案件規模・国内外を問わず対応するとしています。年間2,000件を超える事業承継・資本政策・相続の相談実績があり、中堅・中小のオーナー企業が、DDを含むM&Aを会計・税務まで含めて相談したい場合に選択肢になります。費用は案件ごとの個別見積りです。
また、以下の記事では、M&Aをはじめとする金融コンサル会社を専門領域別に比較し、選び方や費用相場まで詳しく解説しています。ビジネスDDを含むM&Aの依頼先を、より多くの選択肢のなかから本格的に比較検討したい方は、あわせてご覧ください。
まとめ
ビジネスDD(事業DD)は、対象会社の事業の将来性と事業計画の妥当性を精査し、買収価格の判断と買収後の成長シナリオづくりに使う調査です。過去の数字を確かめる財務DDとは役割が異なり、外部環境・内部環境・事業計画・シナジーを軸に、市場と対象会社の実態を将来に向けて見極めます。
費用は案件規模と調査範囲によって数十万円台から1,000万円超まで幅があり、重点項目の絞り込みが費用・期間の両面で鍵になります。DDを含むM&Aを専門家に任せる場合は、仲介者ではなく買い手側に立つFAやコンサルティングファーム、士業等に依頼するのが基本です。自社の案件規模と立場に合った相手を選び、資料を取り寄せて比較検討することから始めるとよいでしょう。
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よくある質問(FAQ)
Q. ビジネスデューデリジェンス(事業DD)とは何ですか?
A. ビジネスデューデリジェンス(事業DD)とは、M&Aに際して対象会社の事業状況を精査し、事業計画の妥当性や将来性を検証する調査です。市場環境(市場・競合など)と対象会社の強み・課題を分析することで、買収価格の妥当性や買収後の成長シナリオを見極めます。過去から現在の数字を確かめる財務DDに対し、ビジネスDDは事業の「未来」を見る点に特徴があります。
Q. ビジネスDDと事業DDは違うものですか?
A. ビジネスDDと事業DDは、呼び方が異なるだけで同じ調査を指します。「ビジネスデューデリジェンス(ビジネスDD)」「事業デューデリジェンス(事業DD)」はいずれも対象会社の事業の将来性・事業計画の妥当性を検証する調査のことで、本記事でも同義として扱っています。文脈によってどちらの表記も用いられるため、同じものと理解して差し支えありません。
Q. ビジネスDDと財務DDは何が違いますか?
A. ビジネスDDと財務DDは、見る時間軸が異なります。財務DDが正常収益力や簿外債務など「過去から現在」の財務の実態を確かめるのに対し、ビジネスDDは市場環境と事業計画をもとに「将来」の実現性を見極めます。M&Aでは両者を組み合わせ、ビジネスDDで精査した事業計画を財務DDの結果と突き合わせることで、対象会社を多面的に評価します。
Q. ビジネスDDの費用相場はどのくらいですか?
A. ビジネスDDの費用相場は、案件規模と調査範囲によって幅があり、中小規模で調査項目を絞れば数十万円台から、大規模で網羅的に調べる案件ではビジネスDDだけで1,000万円を超えることもあります。
M&Aサクシードはコンサルティングファーム等への依頼費用の目安を「数十万円から200万円程度」、船井総研あがたFASは規模の大きい案件では1,000万円超もあるとしています。重点項目を絞り込むほど費用は抑えられます。
費用は原則として、調査を行う買い手(譲り受け側)が負担します。船井総研あがたFASによれば、「DDにかける費用を投資金額の2%以内に収めたい」と考える買い手が多く、投資額に対する比率を目安に費用感を検討できます。
Q. ビジネスDDの期間はどのくらいかかりますか?
A. ビジネスDDの期間は、対象会社の規模や調査範囲によりますが、数週間から1〜2か月程度が一つの目安です(TRANBIの解説による)。調査範囲を広げるほど期間は長くなるため、費用と同様に重点項目を絞り込むことがスケジュール管理の鍵になります。ビジネスDDはM&Aの基本合意後に、財務DDなど他のDDと並行して進めるのが一般的です。
Q. ビジネスDDは誰が実施しますか?
A. ビジネスDDは、通常、買い手(譲り受け側)がFAや士業等の専門家に依頼して実施します。事業計画の妥当性検証や市場分析には専門的な知見が必要なためです。ただし、買収後に対象会社の事業を運営するのは買い手自身であるため、専門家に丸投げせず、買い手が主体的に関与することが調査の質を左右します。
社内で一部を担うことも可能ですが、事業計画の妥当性検証や市場・競合分析など専門性が要る部分は、FASやコンサルティングファーム、士業等の外部専門家を活用するのが一般的です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)令和6年8月|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html)
Q. 中小企業やスモールM&AでもビジネスDDは必要ですか?
A. 中小企業やスモールM&Aでも、ビジネスDDは基本的に必要ですが、予算や時間の制約に応じて調査対象を絞り込むのが現実的です。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」も、予算等の制約がある場合は検討対象を絞るなどの工夫をして、実施する調査の内容を検討することが望ましいとしています。小規模な案件では重点項目に絞ることで、数十万円台からDDを実施することも可能です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)令和6年8月|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html)
Q. ビジネスDDの結果は買収の判断や価格にどう反映されますか?
A. ビジネスDDで精査した事業計画は買収価格(バリュエーション)の土台となり、判明したリスクは買収の可否や最終契約の条件(表明保証・補償など)に反映されます。想定した将来性やシナジーが見込めないと分かれば、価格の引き下げ交渉や買収の見送りにつながることもあります。DDは、成立後のトラブルを防ぎ、PMI(統合実務)に必要な情報を得るための判断材料でもあります。
Q. ビジネスDDを含むM&Aは、M&A仲介とFAのどちらに依頼すべきですか?
A. ビジネスDDを含む調査を専門家に任せたい場合は、売り手・買い手の双方と契約するM&A仲介者ではなく、買い手側に立つFAやコンサルティングファーム、士業等に依頼するのが基本です。中小企業庁のガイドラインは、仲介者は利益相反の防止の観点からDDを直接実施すべきでないとしています。
大規模なM&Aでは高度な助言を提供するFASが、中堅・中小企業の事業承継や売却では独立系のコンサルティングファームや地域の専門家が担うことも多く、自社の案件規模と立場に合った依頼先を選ぶことが大切です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)令和6年8月|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html)
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















