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債権回収の弁護士費用は相手に請求できる?相場と「費用倒れ」を避ける実務

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督促・売掛金回収代行比較表(2026年版)

取引先や貸付先が支払期日を過ぎても入金せず、督促を重ねても解決しないとき、弁護士への債権回収の依頼が選択肢に入ります。このとき多くの担当者が気にするのが、「弁護士費用はいくらかかるのか」と「その費用を、支払わない相手に負担させられないのか」という2点です。

結論から言えば、売掛金や貸金の回収では、弁護士費用を相手(債務者)に請求することは原則としてできません。相手に上乗せして請求できるのは、元金と遅延損害金までです。この原則を知らずに依頼すると、「回収はできたが弁護士費用で手元がほとんど残らない」という費用倒れに陥ることがあります。

本記事では、弁護士費用を相手に請求できるのかという結論とその法的根拠、手続き別の費用相場、遅延損害金の考え方、費用倒れを避けるための判断基準を整理します。あわせて、少額債権や多数の未収案件で弁護士より現実的な選択肢となる、督促・売掛金回収代行サービスの活用方法も紹介します。

自社の債権額に費用を当てはめ、「弁護士に頼むべきか」「別の手段が合うか」を今日判断できる状態を目指して読み進めてください。

弁護士費用は相手(債務者)に請求できるのか【結論】

まず、多くの人が最も知りたい「弁護士費用を相手に負担させられるか」に答えます。売掛金や貸金といった契約にもとづく債権の回収では、弁護士費用を相手に請求することは原則としてできません。相手に請求できるのは、元金(未払いの売掛金など)と、その支払いが遅れたことによる遅延損害金までです。弁護士費用が相手の負担になるのは、詐欺や横領といった不法行為が絡む限られた場合だけです。

弁護士費用そのものの相場は、たとえば300万円の回収を依頼した場合で着手金と報酬金の合計70万円前後が一つの目安です。詳しくは後半の費用相場で手続き別に解説します。

債権の種類で変わる、弁護士費用を相手に請求できるかの早見

弁護士費用を相手に負担させられるかどうかは、回収したい債権が「契約にもとづくもの」か「不法行為にもとづくもの」かで大きく変わります。自社のケースがどちらにあたるかを、次の早見で確認してください。

債権の種類典型例弁護士費用を相手に請求できるか
契約にもとづく債権(債務不履行)売掛金、貸金、請負代金、賃料原則できない。相手に請求できるのは元金+遅延損害金まで
不法行為にもとづく債権詐欺、横領、商品の持ち逃げなどによる損害認められた損害額の一部が弁護士費用相当額として認容され得る(実務の目安で認容額の1割程度)

不法行為の場合に「認容額の1割程度」とされるのは、法律や判決が定めた固定の割合ではなく、裁判実務で用いられている目安です。

最高裁も昭和44年2月27日の判決で、不法行為の被害者が訴訟を余儀なくされて弁護士に委任した場合の弁護士費用について判断を示しています。その弁護士費用は、事案の難易・請求額・認容された額その他の事情を斟酌して相当と認められる範囲で、不法行為と相当因果関係のある損害になる、という内容です。

出典・参考資料(1件)
  • 参考資料:最高裁判所第一小法廷 昭和44年2月27日判決(民集23巻2号441頁)|裁判所ウェブサイト(リンク

そのため金額は事案ごとに変わります。売掛金や貸金の回収は通常この不法行為にあたらないため、原則として弁護士費用の上乗せはできません。

なお、単なる支払いの遅れは契約不履行ですが、はじめから支払う意思がないのに商品やサービスを受け取って代金を踏み倒したような場合は、詐欺(不法行為)と評価される余地があります。自社のケースがどちらにあたるかは、弁護士に相談して確認するのが確実です。

なぜ弁護士費用は相手に請求できないのか

「勝訴すれば相手が弁護士費用も負担するはず」と考える人は少なくありませんが、日本の民事訴訟には、そのような仕組みがありません。理由は、裁判で敗訴者が負担する「訴訟費用」の範囲にあります。

民事訴訟法は、訴訟費用を敗訴した当事者の負担とすると定めています。しかし、ここでいう訴訟費用は、印紙代や書類の送達費用など法律で定められた実費であり、各当事者が依頼した弁護士の報酬は含まれません。つまり、勝訴して相手に負担させられるのは訴訟費用であって、弁護士費用ではないのです。

(訴訟費用の負担の原則)第六十一条 訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする。

出典:民事訴訟法第61条(e-Gov法令検索

敗訴した側が相手の弁護士費用まで負担する制度は「敗訴者負担制度」と呼ばれ、ドイツやフランスなどでは採用されています。日本でも導入が議論されましたが、費用負担への不安が裁判の利用をためらわせ、経済的に弱い立場の当事者が権利を主張しにくくなるという理由から、一般的な導入は見送られてきました。日本弁護士連合会も、この敗訴者負担の一般的な導入に強く反対しています。

この点を正しく理解するには、請求できること・認められること・回収できることを分けて考えると混乱しません。訴状で弁護士費用を請求すること自体は妨げられませんが、契約にもとづく債権の回収では裁判所がそれを損害として認める(認容する)ことは原則なく、認められなければ回収もできません。判決に「訴訟費用は被告の負担とする」と書かれていても、それは弁護士費用を相手が払うという意味ではない点にも注意が必要です。

契約にもとづく債権(売掛金・貸金)で弁護士費用を相手に求める場合の3段階を示した図。段階1「請求する」は訴状に弁護士費用を書くこと自体は妨げられずできる。段階2「認められる(認容される)」は契約債権では裁判所が弁護士費用を損害と認めることが原則なく、ここで止まる。段階3「回収できる」は認められなければ回収もできない。相手に上乗せできるのは元金と遅延損害金まで。
出典・参考資料(3件)
  • 出典:民事訴訟法第61条・第62条|e-Gov法令検索(リンク
  • 参考資料:日本弁護士連合会「弁護士報酬の敗訴者負担制度に関する決議」2000年10月18日(リンク
  • 参考資料:日本弁護士連合会「司法改革宣言2003」2003年5月23日(リンク

売掛金・貸金の回収で弁護士費用を上乗せできない2つの理由

売掛金や貸金といった金銭債務の回収で弁護士費用を相手に請求できないことには、独立した2つの法的な理由があります。

1つ目は、金銭の支払いを目的とする債務の不履行では、損害賠償の額が遅延損害金に法定されている点です。民法は、金銭債務の不履行による損害賠償を法定利率(約定利率が上回る場合は約定利率)で定めると規定し、しかも債権者は損害を証明する必要がないとしています。裏を返せば、弁護士費用のような実際の損害を立証して上乗せする構成が、そもそも予定されていないということです。

(金銭債務の特則)第四百十九条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。

出典:民法第419条(e-Gov法令検索

2つ目は、契約の履行を求める訴訟の弁護士費用は、そもそも債務不履行の損害にあたらないという最高裁の判断です。最高裁は令和3年1月22日の判決で、契約上の債務の履行を求めることは、不法行為のように侵害された権利利益の回復を求めるものではなく、契約による利益を得ようとするものだと述べました。

そのうえで、契約の履行を求める訴訟の弁護士報酬を、債務不履行にもとづく損害賠償として相手に請求することはできないと示しています。売掛金や請負代金の支払いを求める訴訟も、この「契約の履行を求める訴訟」にあたります。

契約当事者の一方が他方に対して契約上の債務の履行を求めることは,不法行為に基づく損害賠償を請求するなどの場合とは異なり,侵害された権利利益の回復を求めるものではなく,契約の目的を実現して履行による利益を得ようとするものである。

出典:最高裁判所第三小法廷 令和3年1月22日判決(裁判所ウェブサイト

なお、契約にもとづく請求でも例外的に弁護士費用が認められた例はあります。最高裁は、使用者の安全配慮義務違反による損害賠償を労働者が求めた事案で、その主張立証すべき事実が不法行為の場合とほとんど変わらないことを理由に、相当と認められる範囲の弁護士費用が損害になり得ると判断しました。

ただしこれは労働災害などの特殊な類型に限られ、通常の売掛金・貸金の回収には及びません。自社のケースが単純な代金の未払いであれば、原則どおり弁護士費用の上乗せはできないと考えるのが妥当です。

出典・参考資料(3件)
  • 出典:民法第419条|e-Gov法令検索(リンク
  • 出典:最高裁判所第三小法廷 令和3年1月22日判決(取立債権請求事件)|裁判所ウェブサイト(リンク
  • 参考資料:最高裁判所第二小法廷 平成24年2月24日判決|裁判所ウェブサイト(リンク

次の取引から相手負担を効かせる、契約書の弁護士費用負担条項

「原則として相手に請求できない」なら、事前に手を打つ方法はないのでしょうか。B2Bの取引で相手負担を効かせる現実的な手段が、契約書にあらかじめ弁護士費用の負担条項を入れておくことです。

「債務不履行があった場合、債務者は債権者が要した弁護士費用を負担する」といった条項は、損害賠償額をあらかじめ定める合意として、民法上は原則有効に働きます。

消費者を保護する消費者契約法には、過大な違約金や一方的に不利な条項を無効とする規定がありますが、これらは事業者と消費者の契約に適用されるもので、事業者間(B2B)の売掛金・請負代金の契約には適用されません。そのため、事業者どうしの取引では、こうした費用負担条項は比較的認められやすいといえます。

ただし、無条件に有効になるわけではありません。金額が著しく過大で不当な場合には、公序良俗に反するものとして無効と判断される余地があります。条項を設けるときは、負担の対象と範囲を明確な文言で定め、金額を合理的な水準にとどめることが実務上の留意点です。既存の未回収債権にはこの手は使えませんが、今後の契約書を見直しておけば、次の取引以降で相手負担を効かせられます。

出典・参考資料(2件)
  • 出典:民法第420条・第90条|e-Gov法令検索(リンク
  • 出典:消費者契約法第2条・第9条・第10条|e-Gov法令検索(リンク

債権回収を弁護士に依頼したときの費用相場【手続き別】

ここからは、弁護士に債権回収を依頼した場合に実際にかかる費用を、内訳と手続き別の目安で確認します。自社の債権額に当てはめて、出ていく費用を概算してみてください。

弁護士費用の5つの内訳

債権回収の弁護士費用は、主に次の5つで構成されます。中心となるのは、依頼時に支払う着手金と、回収に成功したときに支払う報酬金です。

  • 相談料:依頼前の法律相談の費用。初回無料、または30分5,000円・1時間10,000円程度が目安
  • 着手金:依頼時に支払う費用。結果にかかわらず原則返金されない
  • 報酬金:回収に成功した場合に、回収額に応じて支払う成功報酬
  • 実費:収入印紙代、郵便切手代、内容証明の郵送費など、実際にかかった費用
  • 日当:出張をともなう対応にかかる費用。半日3万円・1日5万円程度が目安

着手金・報酬金の料率の目安

着手金と報酬金は、回収を目指す金額(経済的利益)に対する料率で決まるのが一般的です。多くの事務所が今も目安として用いているのが、かつて日本弁護士連合会が定めていた旧報酬基準の料率です。2004年(平成16年)4月に弁護士報酬は自由化され、現在は各事務所が料金を自由に設定できます。以下は統一された基準ではなく、あくまで相場をつかむための目安として参照してください。

経済的利益の額着手金の料率報酬金の料率
300万円以下の部分8%16%
300万円を超え3,000万円以下の部分5%10%
3,000万円を超え3億円以下の部分3%6%
3億円を超える部分2%4%

この料率は金額の区分ごとに段階的に適用されます。たとえば経済的利益が500万円なら、300万円までの部分に8%、残り200万円に5%を適用して積み上げる形です。また、旧基準には着手金の最低額(10万円程度)の定めがあり、少額の依頼ほど料率よりも最低額が効いてくる点にも注意が必要です。

100万円・300万円の債権を依頼した場合の目安

上記の料率をもとに、着手金と報酬金の合計の目安を試算すると、次のようになります。全額回収できた前提での概算で、実費・日当・相談料は別途かかります。

債権額着手金の目安報酬金の目安(全額回収時)着手金+報酬金の合計
100万円約10万円(料率では8万円だが最低額が効く)約16万円約26万円前後
300万円約24万円約48万円約72万円前後
500万円約34万円(300万円まで8%+超過分5%)約68万円約102万円前後

どの手続き段階まで依頼するかによっても、費用は変わります。以下は手続き別の費用イメージで、統一基準ではなく実務でよく見られる目安です。

手続き段階着手金の目安特徴
内容証明・催告書の送付3万〜5万円程度(単発依頼の場合)弁護士名の通知で任意の支払いを促す。最も手軽に始められる
交渉(示談)経済的利益に対する料率(旧基準で8%〜)+成功報酬相手と直接交渉して回収を図る
支払督促着手金5万円前後〜裁判所を通じた簡易な手続き。相手の異議で通常訴訟へ移行する
民事訴訟経済的利益に対する料率が基本(60万円以下は少額訴訟)判決を得て、強制執行の土台をつくる
強制執行別途着手金・報酬(債権執行・動産執行で異なる)判決などをもとに相手の財産から回収する

交渉だけで済むか、支払督促・訴訟、さらに強制執行まで進むかによって、着手金は段階的に加算されるのが一般的です。正確な金額は、依頼前に見積もりを取って確認してください。

出典・参考資料(1件)
  • 参考資料:旧・日本弁護士連合会報酬等基準(2004年4月に自由化・廃止。現在は各事務所が自由に料金を設定)|旧弁護士報酬会規の解説(リンク

弁護士費用が取り戻せなくても、遅延損害金は請求できる

弁護士費用そのものは相手に請求できませんが、支払いが遅れたことに対するペナルティである遅延損害金は、元金に上乗せして請求できます。取り戻せる金額を少しでも増やすために、押さえておきたい要素です。

遅延損害金は、契約で利率(約定利率)を定めていればその利率で、定めていなければ民法の法定利率で計算します。現在の法定利率は年3%で、3年ごとに見直される変動制です(2020年施行の改正民法で、従来の年5%固定から変更されました)。契約書に「遅延損害金は年14.6%とする」といった約定利率の定めがあり、それが法定利率を上回る場合は、約定利率を適用できます。

(法定利率)第四百四条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2 法定利率は、年三パーセントとする。

出典:民法第404条(e-Gov法令検索

計算式は「元金 × 利率 × 遅延日数 ÷ 365」です。たとえば200万円の売掛金が法定利率年3%で1年間遅延した場合、遅延損害金は200万円 × 3% = 6万円になります。契約書で「年14.6%」と約定利率を定めていれば、同じ200万円・1年でも200万円 × 14.6% = 約29万円となり、法定利率だけの場合より取り戻せる額は大きくなります。

金額は大きくなくても、正当に請求できる範囲を漏れなく請求することが、回収額を最大化する基本です。約定利率を定めていなかった場合は、次回以降の契約で遅延損害金の利率を明記しておくと、回収できる金額を増やせます。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:民法第404条・第419条|e-Gov法令検索(リンク
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費用倒れを避けるための判断ライン

弁護士に依頼するかどうかを決める最大のポイントが、費用倒れを避けられるかです。費用倒れとは、回収できた金額よりも弁護士費用のほうが高くつき、結果的に損をしてしまう状態を指します。弁護士費用は原則相手に請求できないため、この見極めが特に重要になります。

債権額ごとの費用倒れリスクの目安

費用倒れのリスクは、債権額と、相手から実際に回収できる見込み(相手の支払い能力や財産の有無)で変わります。次の目安は全額回収を前提とした概算で、実際は相手の資力によって回収できないリスクもある点に注意してください。

ケース弁護士費用の目安費用倒れリスクと判断
債権額30万円(少額)着手金の最低額(10万円程度)+報酬金で、回収額の多くが費用に消える高い。通常の依頼は費用倒れになりやすく、内容証明のみや完全成功報酬型の活用を検討
債権額300万円着手金+報酬金で70万円前後+実費中程度。回収見込みが高ければ依頼の合理性あり
少額債権が多数(例:10万円×50件)1件ずつ弁護士に依頼すると総額が膨らむ高い。個別依頼は非効率で、督促の自動化や回収代行サービスのほうが合理的

弁護士費用を抑える方法

費用倒れが心配なケースでも、依頼の仕方を工夫すれば費用を抑えられます。少額債権であれば、着手金を抑えて回収時の成功報酬に比重を置く完全成功報酬型の事務所を選ぶ、あるいは内容証明による催告だけを単発で依頼する方法があります。内容証明は弁護士名で送るだけでも相手に心理的な圧力を与え、任意の支払いにつながることがあります。

また、債権額が140万円以下であれば、認定司法書士に依頼する選択肢もあります。認定司法書士は140万円以下の請求について代理や書類作成を行え、弁護士に依頼するより費用を抑えられることがあります。

依頼前には、初回無料相談で回収の見込みと費用の見積もりを必ず確認し、複数の事務所を比較することも有効です。一方で、少額の債権が多数あるケースや、督促の手間そのものを減らしたいケースでは、弁護士への依頼よりも、督促や回収を仕組み化するサービスのほうが合理的です。次章で具体的に見ていきます。

弁護士以外の選択肢(サービス活用・解決策)

弁護士への依頼は、金額が大きく法的手続きが必要なケースには有効ですが、費用が原則相手に請求できないうえ、少額・多数の債権では費用倒れになりやすいのが実情です。ここでは、弁護士より安く、あるいは手間をかけずに未回収債権へ対応するための選択肢を整理します。

  • 自社での督促・支払督促:電話・メール・書面での督促や、裁判所を通じた支払督促の申立て(本人申立てが可能)。費用は抑えられるが、件数が多いと手間がかかる
  • 督促・売掛金回収代行サービス:メール・SMS・電話などの督促を自動化・代行する。少額・多数の未収案件を効率的に処理したい場合に向く
  • 保証型の請求代行・ファクタリング:売掛金の保証や早期資金化で、貸し倒れ自体を防ぐ。ただし既存の未回収債権をそのまま取り戻すものではなく、今後の取引の予防策
  • サービサー(債権回収会社):法律にもとづき債権回収を専門に行う。ただし取り扱えるのは特定金銭債権(金融機関の貸付債権やリース・クレジット債権など、法律で定められた種類の債権)に限られる

サービサーや回収代行に依頼した場合の費用が気になる方もいるでしょう。弁護士・サービサー・回収代行それぞれの手数料相場と、どのラインで費用倒れになるかの目安は、以下の記事で比較しています。

このうち、支払期日を過ぎた売掛金の督促・回収を効率化したい企業の現実的な選択肢が、督促・売掛金回収代行サービスです。ここでは中心となる督促・回収代行サービスを比較します(サービサーやファクタリングの費用の目安は、上で紹介した記事もあわせて参照してください)。

弁護士に依頼すると着手金と報酬金でまとまった費用がかかるのに対し、督促・回収代行サービスは月額制や成功報酬制で始められるものが多く、少額・多数の未収債権ほど費用を抑えやすい傾向があります。ここからは代表的なサービスの特徴を紹介します。

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サービス名請求まるなげロボDHKクラウドオートコール債権回収ロボLecto
提供会社株式会社ROBOT PAYMENT株式会社電話放送局株式会社ROBOT PAYMENTLecto株式会社
回収アプローチ請求〜回収を
丸ごと外注(代行)
自動架電で督促
(オートコール)
多チャネル督促を
自動化(SaaS)
督促・回収を
一元管理(SaaS)
督促チャネルメール・電話
弁護士法人対応
オートコール(自動音声)
SMS
メール・SMS
オートコール・郵送
メール・SMS
オートコール・郵送
売掛金保証適格・与信通過債権が対象×××
得意な場面今後の取引の請求・回収を
丸ごと外注したい
電話での督促を
大量・自動で行いたい
多チャネルの督促を
段階設計で仕組み化したい
多数の債権を管理・分析
しながら運用改善したい
初期費用要問い合わせ50,000円〜要問い合わせ要問い合わせ
月額費用件数に応じ変動50,000円〜
(月1,000件まで含む)
要問い合わせ要問い合わせ
(基本料+従量)
詳細情報公式資料を見る公式資料を見るオンライン相談を予約サービス詳細を見る

1. 請求まるなげロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

請求まるなげロボのウェブサイト

株式会社ROBOT PAYMENTが提供する請求まるなげロボは、請求書の発行から入金確認、督促、集金までの請求業務を丸ごと代行します。未入金が発生した場合の督促まで任せられるため、社内で督促を続ける負担そのものを手放したい企業に向いています。

特徴は、請求代行に売掛金の保証を組み合わせられる点です。与信審査を通過した取引については、万一入金がなくても保証を受けられる仕組みがあり、貸し倒れの不安を軽減できます。ただしこの保証は与信審査を通過した適格な債権が対象で、すでに未回収となっている既存の売掛金をそのまま取り戻すものではない点は理解しておく必要があります。今後の取引で督促と貸し倒れ対策をまとめて仕組み化したい企業に適しています。

2. DHKクラウドオートコール(株式会社電話放送局)

DHKクラウドオートコールのウェブサイト

あらかじめ録音した音声を自動で架電するのが、株式会社電話放送局のDHKクラウドオートコールです。入金の督促や支払い忘れの案内を、人手をかけずに大量の相手へ一斉に発信できます。

電話は督促の到達率が高い一方で、担当者が1件ずつ架電すると膨大な工数がかかります。オートコールなら、督促の初期段階を自動化して、電話がつながった相手や支払い意思のある相手にだけ人的対応を集中させられます。少額の未収案件が多数あり、電話での督促を効率化したい場合に向いた選択肢です。

督促の自動化を考えるうえでは、工数の削減だけでなく、案内の仕方が相手とのトラブルや苦情につながらないかという実務上の配慮も論点になります。オートコールを提供する株式会社電話放送局の前田氏は、督促を自動化する際の設計について次のように述べています。

前田氏
株式会社電話放送局 営業部 営業推進課 課長
前田氏
独自インタビューより

入金案内や督促は、伝える内容が定型化しやすい一方で、案内の仕方によってはトラブルや苦情につながりやすい業務です。一方で、入金コールは人が案内する場合と比べて、トラブルや苦情を軽減できる側面もあります。だからこそ、まずは“自動化しても顧客体験を損ねにくい設計”をすることが大切だと考えています。

3. 債権回収ロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

債権回収ロボのウェブサイト

未入金となった売掛金の督促に特化して自動化するのが、株式会社ROBOT PAYMENTの債権回収ロボです。メール・SMS・オートコール(自動音声架電)に加えて郵送による督促まで、複数のチャネルを組み合わせて回収を進められます。

督促の進捗に応じて、次にどのチャネルで連絡するかを段階的に設計できるため、対応の抜け漏れを防ぎながら回収率の向上を狙えます。督促の一連の流れを仕組み化し、担当者の手作業を減らしたい企業に適しています。

4. Lecto(Lecto株式会社)

Lectoのウェブサイト

Lecto株式会社が運営するLectoは、督促・回収業務のためのプラットフォームです。支払い状況に応じた督促の自動化や、回収業務の管理・分析までを一つの環境で行えるように設計されています。

メールやSMSなどのチャネルを使った督促の自動化に加えて、督促の履歴や回収の状況をデータで管理できるため、督促の効果を検証しながら運用を改善しやすいのが特徴です。多数の債権を抱え、督促を属人的な作業から仕組みへ移したい企業に向いています。

ここで取り上げた4サービスのほかにも、督促の自動化や売掛金の回収代行に対応するサービスは多数あります。依頼先のタイプ別の選び方や費用相場、督促自動化の仕組みまでまとめて比較したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

まとめ

売掛金や貸金の回収では、弁護士費用を相手(債務者)に請求することは原則としてできません。相手に上乗せして請求できるのは元金と遅延損害金までで、弁護士費用が相手負担になるのは詐欺・横領などの不法行為が絡む限られた場合です。この原則を踏まえずに依頼すると、費用倒れに陥るリスクがあります。

依頼を検討する際は、自社の債権額に弁護士費用を当てはめ、回収見込みと照らして費用倒れにならないかを見極めることが重要です。金額が大きく法的手続きが必要なケースは弁護士が有力な選択肢ですが、少額債権や多数の未収案件では、督促の自動化や売掛金回収代行サービスのほうが合理的なことも少なくありません。

あわせて、今後の契約書に弁護士費用の負担条項や遅延損害金の利率を定めておけば、次回以降の回収を有利に進められます。

自社の状況に合った回収手段を選ぶために、まずは各サービスの資料を取り寄せて、対応範囲や費用を比較してみてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. 敗訴者負担制度とは何ですか?

A. 敗訴者負担制度とは、裁判で負けた側が、勝った側の弁護士費用まで負担する制度のことです。ドイツやフランスなどでは採用されていますが、日本の民事訴訟では、費用負担への不安が裁判の利用をためらわせるといった理由から、一般的には採用されていません。そのため日本では、各当事者が自分の弁護士費用を自分で負担するのが原則です。

Q. 訴訟費用と弁護士費用は何が違うのですか?

A. 訴訟費用は印紙代や書類の送達費用など法律で定められた実費を指し、各当事者が依頼した弁護士の報酬(弁護士費用)は含まれません。民事訴訟法第61条は訴訟費用を敗訴者の負担と定めていますが、この訴訟費用に弁護士費用は入らないため、判決に「訴訟費用は被告の負担とする」と書かれていても、相手が自社の弁護士費用を払うという意味ではありません。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:民事訴訟法第61条|e-Gov法令検索(リンク

Q. 売掛金の回収で弁護士費用を相手に請求できますか?

A. 売掛金の回収では、弁護士費用を相手に請求することは原則としてできません。相手に上乗せして請求できるのは、元金と遅延損害金までです。売掛金の支払いを求めることは契約にもとづく債務の履行を求めるもので、最高裁も令和3年1月22日の判決で、契約の履行を求める訴訟の弁護士報酬は債務不履行の損害として相手に請求できないと示しています。

出典・参考資料(2件)
  • 出典:民法第419条|e-Gov法令検索(リンク
  • 出典:最高裁判所第三小法廷 令和3年1月22日判決|裁判所ウェブサイト(リンク

Q. 貸したお金を裁判で取り戻す場合、弁護士費用は相手に請求できますか?

A. 貸金(貸したお金)の返還請求でも、弁護士費用を相手に請求することは原則としてできません。貸金は売掛金と同じく金銭の支払いを目的とする債務で、民法上その損害賠償は遅延損害金として扱われるためです。取り戻せるのは元金と遅延損害金までで、弁護士費用を実際の損害として上乗せする構成は、そもそも予定されていません。

Q. 詐欺や横領の被害でも弁護士費用は相手に請求できませんか?

A. 詐欺や横領のような不法行為が絡む場合は例外で、弁護士費用の一部が損害として認められることがあります。実務上の目安は認容額の1割程度ですが、これは法律や判決が定めた固定の割合ではなく、事案の難易・請求額・認容された額などに応じて裁判所が相当と認める範囲で決まります。通常の売掛金・貸金の未払いはこの不法行為にあたらないため、原則どおり弁護士費用の上乗せはできません。

Q. 契約書に弁護士費用の負担条項を入れておけば相手に請求できますか?

A. 契約書にあらかじめ弁護士費用の負担条項を入れておけば、事業者間(B2B)の取引では相手に負担させられる可能性が高まります。損害賠償額をあらかじめ定める合意として原則有効に働き、消費者を守る消費者契約法も事業者間の契約には適用されないためです。ただし金額が著しく過大だと公序良俗に反するものとして無効とされる余地があり、既存の未回収債権には使えないため、次回以降の契約書で備える打ち手になります。

Q. 弁護士費用が取り戻せなくても遅延損害金は請求できますか?

A. 弁護士費用そのものは請求できませんが、支払いの遅れに対する遅延損害金は元金に上乗せして請求できます。契約で利率を定めていればその約定利率、なければ民法の法定利率(現在は年3%、3年ごとに見直される変動制)で計算します。「元金×利率×遅延日数÷365」で求め、正当に請求できる範囲を漏れなく請求することが、取り戻せる金額を増やす基本です。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:民法第404条・第419条|e-Gov法令検索(リンク

Q. 少額訴訟なら弁護士費用を相手に払わせられますか?

A. 少額訴訟という手続きを選んだこと自体では、弁護士費用を相手に負担させることはできません。相手に請求できるかどうかは、あくまで不法行為や契約書の費用負担条項といった別の根拠があるかで決まり、訴訟の種類によって変わるものではありません。60万円以下の金銭の支払いを求めるときに使える少額訴訟でも、この原則は同じです。

Q. 弁護士費用が払えない場合はどうすればよいですか?

A. 着手金を抑えて成功報酬に比重を置く完全成功報酬型の事務所を選ぶ、内容証明の送付だけを単発で依頼するといった方法で、初期費用を抑えられます。なお、費用を立て替える法テラスの民事法律扶助は原則として個人の生活上の問題が対象で、法人や事業上の債権回収は対象外です。少額・多数の債権であれば、弁護士より督促・売掛金回収代行サービスのほうが費用を抑えられることもあります。

Q. 相手が支払いを無視し続けたらどうなりますか?

A. 相手が督促を無視しても支払義務は消えず、支払督促や訴訟で判決など強制執行の根拠となる文書(債務名義)を得れば、相手の財産を差し押さえる強制執行に進めます。ただし、相手に差し押さえる財産や資力がなければ、判決を得ても実際には回収できないことがあります。回収の見込みは、依頼前に相手の支払い能力とあわせて見極めることが大切です。

Q. 債権回収は弁護士と司法書士のどちらに依頼すべきですか?

A. 請求額が140万円以下なら認定司法書士にも代理を依頼でき、140万円を超える場合や複雑な訴訟は弁護士が対応します。認定司法書士が代理できるのは簡易裁判所が扱う訴額140万円以下の案件に限られ、それを超える請求や地方裁判所の手続きは弁護士の担当です。書類の作成だけを頼むなら司法書士、交渉から訴訟まで一任するなら弁護士が向いています。

Q. 売掛金にも時効はありますか?

A. 売掛金などの債権には消滅時効があり、権利を行使できると知った時から5年で時効にかかるのが原則です。時効が完成すると相手に時効の援用をされて回収できなくなるおそれがあるため、未回収のまま放置せず、督促や請求で早めに動くことが重要です。時効の完成が近い場合は、内容証明の送付や裁判上の請求で時効の進行を止める手当ても検討してください。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:民法第166条|e-Gov法令検索(リンク

Q. 弁護士に頼まず督促・売掛金回収代行サービスを使っても問題ありませんか?

A. 督促・売掛金回収代行サービスは、督促の自動化やサービサー(許可を受けた債権回収会社)といった法律の枠内で提供されており、少額・多数の未収債権を効率的に処理したい企業の現実的な選択肢になります。

メール・SMS・電話などの督促を、弁護士法が禁じる非弁行為(弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を扱うこと)に当たらない範囲で仕組み化するもので、弁護士費用が原則相手に請求できず費用倒れが心配なケースと相性のよい手段です。ただし、法的な争いに発展した案件の代理交渉は弁護士の領域となる点は理解しておきましょう。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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