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内部通報窓口とは?設置義務の有無と社内・社外・併用の選び方をわかりやすく解説

内部通報窓口とは?設置義務と社内・社外・併用の選び方のサムネイル画像

企業の不正やハラスメントを早い段階で把握する仕組みとして、内部通報窓口を設ける企業が増えています。公益通報者保護法は一定規模以上の事業者に通報体制の整備を求めており、上場準備や取引先からの要請をきっかけに、窓口の設置・見直しを検討する企業も少なくありません。

一方で、自社は設置義務の対象なのか、窓口を社内・社外・併用のどの形にすればよいのか、運用で何を整えるべきかは、制度を一から調べると分かりにくい部分です。

本記事では、内部通報窓口の基本と近接する窓口との違いから、設置義務の有無を人数・立場で判断する方法、社内・社外・併用の3つの設置パターンの比較、運用で整備すべきこと、外部委託先の選び方と費用の目安までを解説します。上場企業に関わる2026年の法改正とコーポレートガバナンス・コードへの対応も取り上げます。

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内部通報窓口とは?公益通報窓口・ハラスメント相談窓口との違い

内部通報窓口をめぐっては、公益通報窓口・相談窓口・内部告発など、似た言葉が使われます。まずは、それぞれの関係を整理します。

内部通報窓口とは、従業員や役員などが社内の不正・法令違反やその疑いを、通常の指揮命令系統とは別のルートで通報・相談するために設けられる窓口です。不正を早い段階で把握し、外部への告発や行政処分に至る前に自ら是正することを目的としています。

法令上は、公益通報者保護法とその指針が「内部公益通報受付窓口」という呼称を用います。実務で使われる「内部通報窓口」「公益通報窓口」は、この内部公益通報受付窓口をおおむね指しており、大きな違いはありません。

公益通報者保護法(平成16年法律第122号)は、保護の対象となる「公益通報」を次のように定めています。

この法律において「公益通報」とは、次の各号に掲げる者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく、…通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしている旨を、…通報することをいう。(第2条第1項)

出典:公益通報者保護法 第2条第1項|e-Gov法令検索

一方、「内部告発」は法令上の用語ではありません。一般には、従業員などが不正を社外(行政機関や報道機関など)に知らせることを含めて広く指す言葉として使われます。社内の窓口へ通報する内部通報とは、知らせる相手が異なります。

ハラスメント相談窓口は、職場のハラスメントに関する相談を受け付ける窓口です。法令違反全般を対象とする内部通報窓口とは目的が異なりますが、外部委託のサービスの中には、内部通報とハラスメント相談を一つの窓口で受け付けるものもあります。

出典・参考資料(1件)

自社に内部通報窓口の設置義務はある?(人数・立場でわかる条件表)

設置義務があるかどうかは、従業員の人数で線引きされます。結論から示すと、常時使用する労働者が301人以上の事業者は体制整備が義務、300人以下の事業者は努力義務です(2026年9月時点)。

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事業者の規模常時使用する労働者が301人以上常時使用する労働者が300人以下
内部通報窓口に関する扱い通報を扱う従事者の指定と、通報に対応する体制の整備が義務同じ内容が努力義務(同条第3項による読み替え)
根拠公益通報者保護法 第11条第1項・第2項公益通報者保護法 第11条第3項

条文に「301人」という数字が直接あるわけではありません。第11条第3項が「三百人以下」の事業者について義務を努力義務に読み替えているため、その裏返しとして301人以上は本則どおり義務が適用される、という関係です。

  • 事業者は、…公益通報対応業務…に従事する者(次条において「公益通報対応業務従事者」という。)を定めなければならない。(第11条第1項)
  • 事業者は、前項に定めるもののほか、…適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならない。(第11条第2項)
  • 常時使用する労働者の数が三百人以下の事業者については、第一項中「定めなければ」とあるのは「定めるように努めなければ」と、前項中「とらなければ」とあるのは「とるように努めなければ」とする。(第11条第3項)
出典:公益通報者保護法 第11条|e-Gov法令検索

人数を数えるときの「常時使用する労働者」は、常態として使用している労働者を指します。消費者庁のQ&Aによれば、繁忙期だけ一時的に雇い入れる人は含まれません。一方でパート・アルバイト・契約社員・非正規社員・出向者は、臨時雇用でなければ数に含まれます。役員は労働基準法上の労働者にあたらないため、この人数には含まれません。

派遣労働者は、派遣先・派遣元の双方でそれぞれ「常時使用する労働者」に数えます。301人前後で義務か努力義務かの判断に迷う場合は、消費者庁の解説やQ&Aで自社の該当性を確認したうえで判断してください。

常時使用する労働者が300人以下で努力義務にとどまる場合でも、窓口を整えておく意味は小さくありません。取引先や親会社から体制の整備を求められることがあり、上場を目指す企業では、ガバナンス面の審査で通報体制の有無が問われます。

不正やハラスメントを早い段階で把握できれば、被害の拡大を防ぎ、社内外からの信頼を保つことにもつながります。2026年12月の改正で保護の範囲が広がる流れもあり、努力義務の段階から準備を進めておくと、後の見直しがしやすくなります。

次に、誰からの通報が保護の対象になるか(=窓口で受け付けるべき相手)を立場ごとに整理します。

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立場労働者(正社員・パート・アルバイト・派遣労働者など)退職者役員フリーランス(特定受託業務従事者)
保護の対象になるか対象通報の日前1年以内に使用されていた者(退職後1年以内)が対象対象2026年12月1日施行の改正で対象に追加(施行前は対象外)

退職者は、通報した日からさかのぼって1年以内に、その事業者に使用されていた元労働者が対象です。フリーランスは現時点(2026年9月)では対象に含まれず、2026年12月1日に施行される改正で新たに加わります(改正の詳細は後述します)。

事業者への通報が内部公益通報となり得る退職者は、当該通報の日前1年以内に退職した労働者等である(法第2条1項)。

出典:公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第118号)の解説|消費者庁
出典・参考資料(3件)

内部通報窓口の3つの設置パターンを比較(社内・社外・併用)

窓口をどこに置くかには、社内窓口のみ・社外窓口のみ・両方を併用する、の3つの形があります。仕組み・メリット・デメリット・向く企業・実際の採用割合を横並びで比較します。

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社内窓口のみ社外窓口のみ社内・社外の併用
仕組み自社の部署(法務・人事・コンプライアンス部門など)が通報を受け付ける弁護士や専門の受付サービスなど、外部に窓口を委託する社内窓口と社外窓口の両方を設ける
メリット外部への費用を抑えやすく、社内事情を踏まえた対応がしやすい経営陣からの独立性と匿名性を確保しやすく、通報のハードルが下がる通報者が状況に応じて窓口を選べ、独立性と社内対応の両方を確保しやすい
デメリット経営陣からの独立性を確保しにくく、身元の発覚を懸念して通報をためらわれやすい社内事情の把握や通報後の調査は自社と連携する必要があり、費用がかかる窓口が複数になるぶん、運用ルールや窓口間の連携を設計する必要がある
向く企業通報件数が限られ、社内に対応できる人員と独立性を確保できる企業社内リソースが乏しく、独立性・匿名性を重視する企業通報しやすい環境を幅広く用意したい企業(大企業ほど採用が多い)
採用割合20.5%6.0%73.4%

※採用割合は、消費者庁「令和5年度 民間事業者等における内部通報制度の実態調査 報告書」(令和6年4月公表、内部通報制度を導入していると回答した2,448社が対象)の窓口の設置状況の数値に基づきます。メリット・デメリットは各パターンの一般的な傾向を整理したものです。

実際の採用状況を見ると、社内と社外の併用が73.4%と最も多く、社内のみは20.5%、社外のみは6.0%です。多くの企業が、社内で受けきれない独立性・匿名性を社外窓口で補う形をとっています。従業員規模が大きい企業ほど、併用の比率が高い傾向があります。

出典・参考資料(1件)

内部通報窓口の設置・運用で整備すべきこと(チェックリスト)

窓口を設けるだけでは足りず、通報者が安心して利用でき、通報が是正につながる運用を整える必要があります。公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第118号)が求める措置を、自社で確認できる形に並べます。

整備すべきことの前提として、通報を受けてから通報者への通知までは、次の流れで進みます。

内部通報の対応の流れを4ステップで示した図。STEP1受付(従事者が通報を受け付ける)、STEP2調査(受付から是正までを担う部署・責任者が事実関係を調べる)、STEP3是正(調査結果をふまえ必要な措置をとる)、STEP4通知(是正措置をとったときは通報者に速やかに通知する)の順に矢印でつなぐ。
  • 通報を受け、通報者を特定させる事項を扱う担当者を「従事者」として定める
  • 受付から調査・是正までを担う部署と責任者を明確に定める
  • 経営陣(組織の長その他幹部)に関係する事案では、これらの者からの独立性を確保する
  • 事案に関係する者を対応業務に関与させない(利益相反の排除)
  • 通報者の特定につながる情報の共有範囲を絞り、通報者を探索する行為を防ぐ
  • 通報を理由とする不利益な取扱いを防ぐ措置をとる
  • 是正に必要な措置をとったときは、通報者に速やかに通知する
  • 対応の記録を作成・保管し、体制を定期的に評価・点検して改善する
  • 労働者等・役員・退職者に対して、制度の教育・周知を行う
  • これらを社内規程として定め、規程に従って運用する

このうち、通報者の秘密を守ることは制度の根幹です。指針は「経営陣からの独立性の確保」と「利益相反の排除」を次のように求めています。

  • 内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に係る公益通報対応業務に関して、組織の長その他幹部に関係する事案については、これらの者からの独立性を確保する措置をとる。
  • 内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関し行われる公益通報対応業務について、事案に関係する者を公益通報対応業務に関与させない措置をとる。
出典:公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第118号)の解説|消費者庁

あわせて、通報対応に携わる従事者には法律上の守秘義務が課されています。

公益通報対応業務従事者又は公益通報対応業務従事者であった者は、正当な理由がなく、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならない。(第12条)

出典:公益通報者保護法 第12条|e-Gov法令検索

上のチェックリストは、現行の指針にもとづく内容です(2026年9月時点)。2026年12月1日の法改正にあわせて指針も改正されるため、施行後は最新の指針で見直すことになります。

出典・参考資料(2件)

内部通報窓口を外部委託する場合の選び方

社外窓口や外部委託に関心が向いた場合、誰に頼めるのか、何を基準に選ぶのか、費用はどのくらいかが判断の材料になります。ここでは、委託先の選択肢から費用の目安までをまとめて確認します。

委託先の選択肢(弁護士委託と専門の通報受付サービス)

外部委託の相手は、大きく分けて2つです。1つは弁護士(法律事務所)への委託、もう1つは通報の受付を専門に手がけるサービス会社への委託です。指針も、独立性を確保する方法の一つとして窓口を外部に置くことを挙げています。

組織の長その他幹部からの独立性を確保する方法の一環として、内部公益通報受付窓口を事業者外部(外部委託先、親会社等)に設置することも考えられる

出典:公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第118号)の解説|消費者庁

弁護士への委託は、通報内容の法的な評価や、重大な案件での調査・助言に強みがあります。専門の受付サービスへの委託は、電話・Web・メールなど複数チャネルでの受付、24時間対応、多言語対応、通報件数が多い場合の処理体制やシステム面に強みがあります。どちらか一方に限らず、受付は専門サービス、法的判断は弁護士、と役割を分けて組み合わせる企業もあります。

弁護士への委託が向くのは、通報が少なくても法的な評価を重視したい企業や、重大な不正の調査・助言まで一貫して任せたい企業です。費用の形は契約によって幅があり、この点は後述の「費用の目安」で整理します。

ただし、委託する弁護士が会社側の立場と重なると利益相反が生じることがあり、顧問弁護士に任せてよいかは後述の点に注意が必要です。専門の受付サービスが向くのは、通報件数が多い企業や、多言語・24時間など受付の間口を広げたい企業です。自社の通報の見込みと重視する点を整理してから、委託先の型を選ぶとよいでしょう。

出典・参考資料(1件)

外部委託先を選ぶときのチェックポイント

委託先を比べるときは、次の観点を自社の要件と照らし合わせると判断しやすくなります。

  • 受付チャネル(電話・Web・メールなど)と対応時間が、自社の従業員の使い方に合うか
  • 匿名通報に対応しているか、通報者と継続してやり取りできるか
  • 外国人従業員や海外拠点がある場合、必要な言語に対応しているか
  • 相談員の資格・経験や、通報後のレポート・助言の質
  • 経営陣からの独立性が保たれる仕組みになっているか
  • 情報の取り扱いに関する体制(プライバシーマークやISMSなどの認証の有無)
  • 利用社数や受付件数などの実績
  • 費用体系(初期費用・月額または年額、通報件数による追加費用の有無)

顧問弁護士に任せてよいか(利益相反の注意)

外部委託を弁護士に頼む場合、「自社の顧問弁護士を社外窓口にしてよいか」は実務でよく迷う点です。判断の土台になるのは、指針が求める利益相反の排除です。指針は、事案に関係する者を通報対応業務に関与させないことを求めています(前掲の引用ブロックを参照)。

この原則をふまえ、弁護士事務所や弁護士会からは、顧問弁護士を窓口にすることに注意を促す指摘があります。経営陣が関与した不正の通報や、会社と従業員が対立する労働問題の通報では、会社側に立つ立場の顧問弁護士が対応すると利益相反が生じうる、という考え方です。

法律や指針が「顧問弁護士は不適切」と直接定めているわけではありませんが、独立性・利益相反の観点から、委託先を顧問弁護士とは別にする、あるいは利益相反が生じる事案の対応ルートをあらかじめ分けておく、といった設計が検討されています。

出典・参考資料(4件)

内部通報窓口の外部委託にかかる費用の目安

外部委託の費用は、いくつかの条件で上下します。法令や制度に費用の定めはなく、金額は各社が設定します。まずは、何が費用を左右するのかを押さえておくと、見積もりの読み解きや社内での比較がしやすくなります。

専門の受付サービスの場合、主に次のような要素で費用が変わります。

  • 従業員数(窓口を利用する対象者の規模)
  • 受付チャネルの数(電話・Web・メールなど、いくつ用意するか)
  • 24時間対応や夜間・休日対応の有無
  • 多言語対応の範囲(対応言語の数、電話・Webのどちらまで)
  • 相談員の資格・体制(有資格者による対応か、専任か)
  • 受付後のレポート・調査支援の範囲(一次受付のみか、対応まで支援するか)

弁護士に委託する場合は、費用の形そのものが企業ごとに異なります。既存の顧問契約の範囲内で対応するケース、案件ごとにスポットで依頼するケース、窓口業務として別途の月額(顧問料)を設けるケースなどがあり、契約の内容によって負担の姿が変わります。依頼する前に、対応の範囲と費用の関係を確認しておくとよいでしょう。

実際には、料金の具体額を公開せず、規模に応じた個別見積もりとしているサービスが多いのが現状です。そのため、正確な費用を知るには複数社に問い合わせて比較するのが確実です。

見積もりを取る際は、初期費用と月額(または年額)の別、通報1件ごとの追加費用の有無、ハラスメント相談まで含むかどうかを確認しておくと、社内での比較がしやすくなります。

2026年の公益通報者保護法改正とコーポレートガバナンス・コードへの対応

ここまでは現行の制度をもとに整理しました。最後に、これから対応が必要になる2つの動きを押さえます。1つはすべての企業に関わる2026年の法改正、もう1つは上場企業に関わるコーポレートガバナンス・コードへの対応です。

2026年の公益通報者保護法改正の要点(保護範囲の拡大)

公益通報者保護法の改正法は、令和7年法律第62号として2025年6月11日に公布され、2026年12月1日(令和8年12月1日)に施行されます。すべての企業に関わる改正で、2026年9月時点ではまだ施行前です。

主な変更点は、保護される通報者の範囲の拡大です。これまで対象だった労働者・退職者・役員に加え、2026年12月1日の改正でフリーランス(特定受託業務従事者)が公益通報者の範囲に加わります

公益通報者の範囲に、特定受託業務従事者(…特定受託業務従事者をいう。…)及び特定受託業務従事者であった者を追加すること。(第二条第一項第三号関係)

出典:公益通報者保護法の一部を改正する法律 要綱|消費者庁

あわせて、通報を理由とする解雇その他の不利益な取扱いをした者に対する刑事罰(6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)が新設されます。法人に対する両罰規定(違反した個人と法人の双方を罰する規定)として、不利益な取扱いには3,000万円以下の罰金も設けられます。

また、通報者を特定しようとする探索行為を禁止する規定も新設されます。ただし、探索行為そのものに罰則が付くわけではなく、罰則の対象は不利益な取扱いや行政機関の命令違反などです。

出典・参考資料(2件)

【上場企業向け】コーポレートガバナンス・コード(原則2-3)への対応

上場企業・上場準備企業では、コーポレートガバナンス・コードへの対応として内部通報の体制整備が求められます。コードは2026年7月版(2026年7月21日施行)で全面的に再編され、内部通報に関する規律は原則2-3の解釈指針に置かれています。従来この内容は補充原則2-5①に規定されていましたが、その後継にあたります。

上場会社は、その従業員等が、不利益を被る危険を懸念することなく、違法又は不適切な行為・情報開示に関する情報や真摯な疑念を伝えることができるよう、また、伝えられた情報や疑念が客観的に検証され適切に活用されるよう、内部通報に係る体制整備の一環として、経営陣から独立した窓口の設置を行うべきであり、また、情報提供者の秘匿と不利益取扱の禁止に関する規律を整備すべきである。

出典:コーポレートガバナンス・コード(2026年7月版)原則2-3|東京証券取引所

ここで求められているのは「経営陣から独立した窓口の設置」です。外部窓口を使えばこの要件を満たせるとは限らない、という指摘もあります。東京弁護士会の公益通報者保護特別委員会は、外部窓口が通報内容を匿名化して会社にそのまま渡すだけの「パス・スルー」窓口では、経営陣から独立した窓口と評価されない可能性があると指摘しています。

あわせて、外部窓口から会社へ報告する際の報告先を、社外取締役・監査役と、社内窓口・内部通報制度の所管部門というように複数設定することを挙げています。外部委託を選ぶ場合でも、通報を会社に伝える経路と報告先を独立性の観点から設計しておくことが、上場企業では特に重要になります。

このコラムは旧コードのもとでの論考ですが、外部窓口に求められる独立性の確保や利益相反の排除という考え方は現行の指針(令和3年内閣府告示第118号)にも受け継がれており、論点は現在も通用します。

出典・参考資料(2件)
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内部通報窓口の外部委託・代行サービス

ここでは、内部通報窓口の受付を外部で引き受ける代表的なサービスを紹介します。受付チャネル・多言語対応・実績・料金の開示状況を整理します。

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サービス名企業倫理ホットライン(ダイヤル・サービス)DQヘルプライン(ディー・クエスト)リスクホットライン®(RHL)(エス・ピー・ネットワーク)AI通報窓口(NaLaLys)
提供形態相談窓口専業会社の外部委託窓口
(内部通報+ハラスメント相談)
内部通報の第三者窓口
(Web匿名双方向システム)
危機管理専門会社が運営する
第三者窓口
AIチャットボットによる
通報の一次受付
受付チャネル電話・Web・チャットWeb・電話・メール電話・メール・WebAIチャットボット
対応時間Web 24時間365日
電話 平日12〜21時・土日祝9〜17時
24時間365日の有人監視平日 9〜18時24時間365日(AI受付)
多言語対応電話7言語/Web15言語以上Web36言語以上/電話 英・中・韓
(GDPR対応)
公式サイトに記載なし公式サイトに記載なし
対応体制有資格の相談員
(社労士・産業カウンセラー・公認心理師など)
有人対応・24時間365日監視
(相談員の資格は非公開)
危機管理の専門担当が対応
(案件ごとに自社見解を付与)
AIが一次受付
(有人チャネルは非公開)
主な実績約3,000社の企業・大学が利用3,200社(2025年5月時点)利用法人1,200社・年間受付2,292件
累計17,000件超(2023年度)
公表なし
第三者認証Pマーク・ISMS(ISO/IEC 27001)ISMS(ISO/IEC 27001)PマークISMS(詳細は非公開)
料金要お問い合わせ要お問い合わせ
(標準版・Lite版)
要お問い合わせ要お問い合わせ
詳細情報公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト

※各社公式サイト等の公開情報にもとづき2026年9月時点で整理したものです。料金はいずれも公式サイトに具体額の記載がなく、従業員規模などに応じた個別見積もりのため「要お問い合わせ」としています。多言語対応・実績などの表記は各社公式の記載に準じます。

1. 企業倫理ホットライン(ダイヤル・サービス株式会社)

企業倫理ホットライン(ダイヤル・サービス)のウェブサイト

ダイヤル・サービス株式会社は、1969年設立の相談窓口専業の会社です。企業倫理ホットラインは、内部通報とハラスメント相談の受付を外部で引き受けるサービスで、公式サイトでは約3,000社の企業・大学が利用していると説明されています。

相談には、社会保険労務士・産業カウンセラー・公認心理師などの有資格者が対応します。受付はWebが24時間365日、電話は平日12〜21時と土日祝9〜17時、チャットは平日12〜21時で、電話は7言語、Webは15言語以上に対応します。

実名・匿名のどちらの通報・相談も受け付けます。情報の取り扱いについては、プライバシーマークとISMS(ISO/IEC 27001)を取得しています。料金は公開されておらず、従業員規模などに応じた見積もりとなるため、問い合わせでの確認が必要です。

2. DQヘルプライン(株式会社ディー・クエスト)

DQヘルプライン(ディー・クエスト)のウェブサイト

内部通報の第三者窓口として2003年から提供されているサービスの一つが、株式会社ディー・クエストのDQヘルプラインです。Webを使った匿名双方向の通報システムを軸に、2025年5月時点で3,200社が利用しています。

強みは多言語・グローバル対応です。Web窓口は36言語以上、電話窓口は英語・中国語・韓国語に対応し、2018年にはドイツ・フランクフルトに拠点を設けて、現地弁護士の協力のもとGDPR(EU一般データ保護規則)など海外の法制にも対応します。

情報セキュリティ面ではISMS(ISO/IEC 27001。国内規格はJIS Q 27001:2025)を取得し、24時間365日の有人監視を行っています。公式サイトでは、公認不正検査士協会(ACFE)が推奨する第三者外部通報窓口であると説明しています。標準版のほかLite版も用意されており、料金はいずれも公開されていないため見積もりが必要です。

3. リスクホットライン®(RHL)(株式会社エス・ピー・ネットワーク)

リスクホットライン®(RHL)(エス・ピー・ネットワーク)のウェブサイト

株式会社エス・ピー・ネットワークが運営するリスクホットライン®(RHL)は、企業危機管理の専門会社が手がける社外の内部通報窓口です。反社対応や不祥事対応などを本業とする知見を通報対応に持ち込んでいる点が、他社と異なります。

受付は電話・メール・Webで、対応時間は平日9〜18時です。通報を受け付けるだけでなく、案件ごとに危機管理会社としての見解を付けて企業に返す運用をとり、受付から対応までを支援する形を打ち出しています。

2023年度の実績として、利用法人1,200社、年間の通報受付2,292件、累計17,000件超を公表しています。情報の取り扱いについては、プライバシーマークを取得しています。料金は従業員数などに応じた個別見積もりで、公式サイトに具体額の記載はありません。

4. AI通報窓口(株式会社NaLaLys)

AI通報窓口(NaLaLys)のウェブサイト

AIを使って通報の一次受付を自動化するのが、株式会社NaLaLysのAI通報窓口です。2023年設立のスタートアップが提供しており、有人ではなくAIチャットボットが、初回のヒアリングから内容整理までを担います。

AIチャットボットが24時間365日にわたって通報の一次受付に対応し、通報内容を5W1Hで整理してダッシュボードで一元管理します。記名・匿名を問わず、通報者と継続的にやり取りできる双方向のコミュニケーションにも対応します。

社内窓口としても、弁護士が設ける社外窓口や既存の顧問弁護士窓口との併用でも組み込める設計です。入力データは学習に使わず国内サーバーで管理するとしており、ISMS認証のロゴを掲げています。導入社数や料金は公開されていないため、詳細は問い合わせで確認します。

内部通報窓口の整備は、コンプライアンス体制づくりの一部です。窓口の運用で求められる従業員への教育・周知にあたっては、コンプライアンス研修サービスの選び方や教材テーマを比較した次の記事もあわせて参考になります。

まとめ

内部通報窓口は、従業員などが社内の不正を通常のルートとは別に通報・相談できる仕組みです。常時使用する労働者が301人以上の事業者は体制整備が義務、300人以下は努力義務で、まずは自社がどちらに当たるかの確認が出発点になります。

設置の形は社内・社外・併用の3つがあり、実際には社内と社外を併用する企業が7割を超えています。窓口を設けたら、秘密保持・経営陣からの独立・利益相反の排除・対応フロー・社内規程・周知といった運用を、指針にもとづいて整えることが欠かせません。

社内リソースが乏しい場合は、弁護士や専門の受付サービスへの外部委託が選択肢になります。費用は非公開のことが多いため、受付チャネル・多言語対応・独立性・実績・料金体系を軸に複数社を比較するとよいでしょう。

2026年12月には保護範囲を広げる法改正が施行され、上場企業ではコーポレートガバナンス・コードへの対応も求められます。最新の制度をふまえて、自社に合う窓口の設置・見直しを進めてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. 内部通報窓口とは何ですか?

A. 内部通報窓口とは、従業員や役員などが社内の不正・法令違反やその疑いを、通常の指揮命令系統とは別のルートで通報・相談するために設けられる窓口です。不正を早い段階で把握し、外部への告発や行政処分に至る前に自ら是正することを目的としています。法令上は公益通報者保護法とその指針が「内部公益通報受付窓口」という呼称を用いており、実務でいう「内部通報窓口」「公益通報窓口」はおおむね同じものを指します。

Q. 内部通報窓口とハラスメント相談窓口は何が違いますか?

A. 内部通報窓口とハラスメント相談窓口は、扱う対象の範囲が異なります。内部通報窓口が不正・不祥事など法令違反全般を対象とするのに対し、ハラスメント相談窓口は職場のハラスメントに関する相談に対象を絞った窓口です。ただし外部委託のサービスの中には、内部通報とハラスメント相談を一つの窓口でまとめて受け付けるものもあります。

Q. 内部通報窓口の設置は義務ですか?自社が対象か知りたいです。

A. 内部通報に対応する体制の整備は、常時使用する労働者が301人以上の事業者では義務、300人以下の事業者では努力義務です(2026年9月時点)。公益通報者保護法第11条が体制整備を義務づけたうえで、同条第3項が「三百人以下」の事業者について義務を努力義務に読み替えているため、その裏返しとして301人以上は本則どおり義務が適用されます。まずは自社がどちらに当たるかの確認が出発点になります。

出典・参考資料(1件)

Q. 内部通報窓口は社内・社外・併用のどれにすべきですか?

A. 内部通報窓口の設置形態に唯一の正解はありませんが、実際には社内窓口と社外窓口を併用する形が最も多く、7割を超える企業が採用しています(併用73.4%/社内のみ20.5%/社外のみ6.0%)。

社内のみは費用を抑えやすい一方で経営陣からの独立性を確保しにくく、社外のみは独立性・匿名性を確保しやすい反面で費用と社内連携の負担があります。自社の通報件数・社内リソース・独立性への要求度を踏まえて選ぶとよいでしょう。

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Q. グループ会社の内部通報窓口は、まとめて1つにできますか?

A. 親会社などにグループ共通の窓口を設け、子会社や関連会社がそれを自社の内部公益通報受付窓口とすることは可能です。消費者庁のQ&Aでも認められています。ただし、共通窓口を使う場合でも、その窓口を経由した対応業務の責任者は、子会社や関連会社ごとに定める必要があります。共通化できるのは受付の入り口で、対応の責任まで一つにまとめられるわけではない点に注意してください。

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Q. 内部通報窓口を顧問弁護士に任せてもよいですか?

A. 顧問弁護士を社外窓口にすることは、利益相反が生じうるため慎重な検討が必要です。法律や指針が「顧問弁護士は不適切」と直接定めているわけではありませんが、指針は事案に関係する者を通報対応業務に関与させないこと(利益相反の排除)を求めています。

経営陣が関与した不正や、会社と従業員が対立する労働問題の通報では、会社側に立つ顧問弁護士が対応すると独立性・利益相反の点で問題になり得ます。委託先を顧問弁護士とは別にする、あるいは利益相反が生じる事案の対応ルートをあらかじめ分けておく、といった設計が検討されます。

出典・参考資料(2件)

Q. 内部通報窓口では匿名の通報も受け付けられますか?

A. 内部通報窓口では、匿名での通報も受け付けられます。多くの外部委託サービスは実名・匿名のどちらの通報にも対応し、匿名のまま通報者と継続してやり取りできる仕組みを備えるものもあります。公益通報者保護法に基づく指針も、通報者の特定につながる情報の共有範囲を絞り、通報者を探索する行為を防ぐ措置を求めており、匿名性の確保は制度の信頼を支える要素です。

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Q. 2026年の公益通報者保護法改正で内部通報窓口の何が変わりますか?

A. 2026年12月1日に施行される改正で、保護される通報者の範囲にフリーランス(特定受託業務従事者)が加わり、通報を理由とする不利益な取扱いに対する刑事罰が新設されます

これまで対象だった労働者・退職者・役員に加えてフリーランスが公益通報者の範囲に含まれるため、窓口で受け付けるべき通報者の範囲も広がります。あわせて通報者を特定しようとする探索行為を禁止する規定も設けられます。施行後は最新の指針にあわせて体制を見直すことになります。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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