残業代を計算しようとして、基本給の額をそのまま時給の計算に使ってよいのか、それとも役職手当や通勤手当も足すべきなのか、手が止まった経験はないでしょうか。給与明細の残業代が正しいかを自分で検算したい場面や、上司や監査に計算の根拠を説明したい場面で、最初につまずくのがこの一点です。
結論から言うと、残業代の計算に使うのは基本給そのものではなく「基礎賃金」です。基本給に一部の手当を足し、法律が定める手当を差し引いた金額を、月平均所定労働時間で割って1時間あたりの単価を出します。この「足す手当・引く手当」の線引きを誤ると、残業代が過小にも過大にもなります。
本記事では、基本給から残業代を計算する手順を、基礎賃金の求め方・足す手当と引く手当の仕分け・割増率・具体的な計算例まで、労働基準法の該当条文とあわせて解説します。基本給に固定残業代(みなし残業代)が含まれる場合の扱いや、給与計算ソフトが出した残業代を自分で検算するときの確認箇所も整理しました。
目次
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残業代の計算に使うのは基本給ではなく「基礎賃金」
残業代(時間外労働に対する割増賃金)は、労働基準法第37条にもとづき「1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 残業時間」の3要素で計算します。このうち出発点になる「1時間あたりの基礎賃金」は、基本給そのものではなく、法律上の「割増賃金の基礎となる賃金」から求めます。
労働基準法第37条第5項は、割増賃金の基礎となる賃金について、家族手当・通勤手当などを算入しないと定めています。逆に言えば、基本給に加えて支払われる手当のうち、この除外対象に当たらないものは基礎賃金に含めて計算します。
第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。
出典:労働基準法 第37条第5項|e-Gov法令検索
基礎賃金は「基本給+労働の対償として一律に支払う手当(役職手当など)− 法律が定める除外手当」という構成になります。基本給の額をそのまま時給計算に使うと、役職手当のように本来は含めるべき手当を落としたり、通勤手当のように除くべき手当を含めたりして、残業代の単価がずれてしまいます。まずは自社の給与項目を「足す手当」と「引く手当」に仕分けるところから始めます。
基本給から残業代までの計算は、大きく次の3ステップに分かれます。以降の各章はこの流れに沿って解説します。

基礎賃金に足す手当・引く手当(労基法37条5項・施行規則21条)
基礎賃金の分子(月給部分)は、基本給に「足す手当」を加え、法律が定める「引く手当」を差し引いて求めます。引く手当は法律に列挙された7種類に限られ、そのほかの手当は原則として基礎賃金に含めます。まず両者を並べて確認します。
| 基礎賃金に足す手当(含める) | 基礎賃金から引く手当(除外できる7項目) |
|---|---|
| 役職手当・職務手当 | 家族手当 |
| 営業手当・特殊作業手当 | 通勤手当 |
| 精皆勤手当 | 別居手当 |
| 資格手当・技能手当 | 子女教育手当 |
| 物価手当・地域手当(一律支給の場合) | 住宅手当 |
| — | 臨時に支払われた賃金 |
| — | 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など) |
右側の「引く手当」は限定列挙です。この7項目に当たらない手当は、名称にかかわらず基礎賃金に含めて計算します。
引く手当=除外できる7項目
基礎賃金から除外できる手当は、法律で7種類に限定されています。このうち家族手当・通勤手当は労働基準法第37条第5項が本文で名指しし、残りの5種類は労働基準法施行規則第21条が定めています。施行規則第21条の条文は次のとおりです。
法第三十七条第五項の規定によつて、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第一項及び第四項の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。
出典:労働基準法施行規則 第21条|e-Gov法令検索
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
あわせて、家族手当・通勤手当(労働基準法第37条第5項)と、上記の施行規則第21条が定める5種類の合計7種類が除外対象です。賞与は「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」の代表例です。
足す手当=役職手当・営業手当・精皆勤手当など
除外7項目に該当しない手当は、労働の対償として支払われている限り基礎賃金に含めます。役職手当・営業手当・精皆勤手当・資格手当などが代表例です。これらを基礎賃金から落とすと1時間あたりの単価が下がり、残業代が過小になります。
基本給とは別に「役職手当5万円」を支払っている場合、この5万円も基礎賃金の分子に加えて時給を計算します。基本給だけで計算すると、役職者の残業代がその分だけ少なく算定されてしまいます。
名称ではなく支給の実態で判定する
家族手当・住宅手当は、名称が同じでも支給の実態によって除外できるかどうかが分かれます。厚生労働省の労働局は、皆勤手当や家族手当などを例に、扶養家族の有無にかかわらず一律に支払われる手当は、名称が「家族手当」であっても基礎賃金に算入しなければならないとしています。
独身でも家族手当が支払われるなど一律に必ず支払われる賃金については、上記の名称であっても算入しなければなりません。
出典:割増賃金の基礎となる賃金には皆勤手当を算入しなければならないのですか|厚生労働省 鹿児島労働局
除外できるのは、家族手当が「配偶者1万円・子1人5,000円」のように扶養家族数に応じて増減する場合や、住宅手当が家賃実費や地域の家賃相場に応じて変動する場合です。「持家・賃貸を問わず全員一律月2万円」のような住宅手当や、扶養の有無で金額が変わらない家族手当は、名称にかかわらず基礎賃金に含めます。就業規則の手当マスタを、この7項目と実態要件に照らして再確認してください。
基本給から1時間あたりの基礎賃金(時給)を出す式
足す手当・引く手当を仕分けて基礎賃金の分子(月額)が決まったら、これを月平均所定労働時間で割って1時間あたりの基礎賃金を求めます。月給制の場合の式は次のとおりです。
1時間あたりの基礎賃金 = 基礎賃金(月額)÷ 月平均所定労働時間
分母に「月平均所定労働時間」を用いるのは、労働基準法施行規則第19条第1項第4号の定めによります。同号は、月給制の賃金を「月における所定労働時間数(月によつて所定労働時間数が異る場合には、一年間における一月平均所定労働時間数)で除した金額」としています。月ごとに所定労働時間が変わる企業では、1年間の合計を12か月で平均した時間を使います。
月平均所定労働時間は、就業規則の年間所定休日と1日の所定労働時間から次の式で算出します。
月平均所定労働時間 =(365日 − 年間所定休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12か月
年間所定休日が120日・1日の所定労働時間が8時間の企業であれば、(365 − 120)× 8 ÷ 12 = 163.33…時間となります。本記事では計算を追いやすいよう163.3時間(小数第1位)に丸めますが、給与計算ソフトが小数第2位(163.33)まで用いる場合、1時間あたりの単価が数円変わることがあります。
うるう年は366日で計算します。就業規則上の「年間所定休日」と「1日の所定労働時間」を確認し、給与計算ソフトのマスタに登録された月平均所定労働時間と一致しているかを見てください。分母が実態より小さいと時給が過大に、大きいと過小になります。
出典・参考資料(1件)
割増率一覧と根拠条文
1時間あたりの基礎賃金が出たら、労働の種類ごとの割増率を掛けます。労働基準法第37条は、時間外労働・深夜労働・休日労働のそれぞれに最低割増率を定めており、いずれも「以上」の下限規制です。表の「25%以上」は基礎賃金に0.25を上乗せする(=基礎賃金×1.25)という意味で、就業規則でより高い率を設定している場合はその率が適用されます。
| 労働の種類 | 割増率(下限) | 根拠 |
|---|---|---|
| 時間外労働(法定労働時間超) | 25%以上 | 労働基準法 第37条第1項 + 平成6年政令第5号 |
| 月60時間を超える時間外労働 | 50%以上 | 労働基準法 第37条第1項ただし書 |
| 深夜労働(原則22時〜翌5時) | 25%以上 | 労働基準法 第37条第4項 |
| 法定休日労働 | 35%以上 | 労働基準法 第37条第1項 + 平成6年政令第5号 |
時間外25%・法定休日35%の具体的な率は、労働基準法第37条第1項が「二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上」とし、これを受けた政令(平成6年政令第5号)が確定しています。
労働基準法第三十七条第一項の政令で定める率は、同法第三十三条又は第三十六条第一項の規定により延長した労働時間の労働については二割五分とし、これらの規定により労働させた休日の労働については三割五分とする。
出典:労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(平成6年政令第5号)|e-Gov法令検索
深夜労働の25%は労働基準法第37条第4項が定めるもので、時間外労働や休日労働とは別枠で上乗せされます。時間外労働が深夜に及んだ場合や、休日労働が深夜に及んだ場合は、それぞれの率を合算します(合算した具体例は後述の計算例で示します)。
2023年4月から中小企業にも月60時間超50%が適用
月60時間を超える時間外労働への50%以上の割増は、労働基準法第37条第1項ただし書に定められています。この規定は従来、中小企業には猶予措置により適用が免除されていましたが、2023年(令和5年)4月1日から、中小企業を含むすべての企業に適用されるようになりました。
「月60時間超50%は大企業だけ」という記述は2023年3月以前の旧情報にもとづくもので、現在は誤りです。基本給ベースで残業代を手計算している場合や、給与計算ソフトの割増率マスタが「月60時間超=25%」または「大企業のみ50%」の設定のまま残っている場合は、月60時間超の残業が発生した従業員の残業代が過小になります。
50%が効くのは「60時間を超えた分」だけです。たとえば時間外労働が月65時間なら、60時間までの60時間は25%(×1.25)、超えた5時間は50%(×1.5)で計算します。1時間あたりの基礎賃金が1,837円なら、超過5時間分は 1,837 × 1.50 × 5 = 13,778円です(この5時間が深夜に及べばさらに+25%)。
出典・参考資料(3件)
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基本給から残業代を出す具体的な計算例
ここまでの手順を、基本給から残業代まで途中式を省かずに計算します。基本給に手当を足し、除外手当を引いて基礎賃金の分子を出し、月平均所定労働時間で割って時給を求め、割増率と残業時間を掛ける、という流れをそのまま数字で追ってください。
例1:時間外労働のみ(基本給28万円+役職手当2万円)
基本給28万円、役職手当2万円(足す手当)、通勤手当1万5,000円・家族手当1万円(いずれも除外手当)、年間所定休日120日・1日の所定労働時間8時間の企業で、時間外労働を月25時間行った場合を計算します。
- 基礎賃金の分子:280,000円(基本給)+ 20,000円(役職手当)= 300,000円。通勤手当・家族手当は除外
- 月平均所定労働時間:(365 − 120)× 8 ÷ 12 = 163.3時間
- 1時間あたりの基礎賃金:300,000 ÷ 163.3 ≒ 1,837円
- 時間外労働(25時間):1,837 × 1.25 × 25 = 57,406円
ここで役職手当2万円を基礎賃金に含め忘れて基本給28万円だけで計算すると、時給は 280,000 ÷ 163.3 ≒ 1,715円となり、残業代は 1,715 × 1.25 × 25 = 53,594円まで下がります。役職手当を足すかどうかだけで、この例では約3,800円の差が出ます。
1時間あたりの基礎賃金の商は 1,837.1… で、円未満の端数は、労働基準法上認められる端数処理の取扱い(昭和63年3月14日基発第150号)にもとづき、50銭未満を切り捨て・50銭以上を1円に切り上げます。この例では端数が約11銭のため切り捨てて1,837円としています。
出典・参考資料(1件)
例2:深夜労働・法定休日労働を含む場合
同じ従業員(1時間あたりの基礎賃金1,837円)が、時間外労働30時間(うち深夜労働5時間)と、法定休日労働8時間(うち深夜労働2時間)を行った場合を計算します。深夜労働は時間外・休日とは別枠で25%が上乗せされるため、重なった時間はそれぞれの率を合算します。
- 時間外労働・深夜以外(25時間):1,837 × 1.25 × 25 = 57,406円
- 時間外労働+深夜労働(5時間):1,837 × 1.50 × 5 = 13,778円(時間外25%+深夜25%=50%)
- 法定休日労働・深夜以外(6時間):1,837 × 1.35 × 6 = 14,880円
- 法定休日労働+深夜労働(2時間):1,837 × 1.60 × 2 = 5,878円(法定休日35%+深夜25%=60%)
- 残業代合計:57,406 + 13,778 + 14,880 + 5,878 = 91,942円
時間外労働が深夜に及んだ場合は50%以上、休日労働が深夜に及んだ場合は60%以上という合算率は、労働基準法施行規則第20条が定めています。また、法定休日に働かせた時間は全時間を休日労働(35%以上)として扱い、時間外労働の25%とは重複させません。時給・日給・年俸など月給以外の給与形態での計算方法は、『残業代の計算方法をわかりやすく解説』で給与形態別に解説しています。
出典・参考資料(1件)
基本給に固定残業代が含まれる場合の扱い
基本給に固定残業代(みなし残業代)が組み込まれている場合、基本給の額をそのまま基礎賃金の分子に使うことはできません。固定残業代の部分はそれ自体が割増賃金であり、基礎賃金には含めないためです。基本給から固定残業代相当分を外してから、1時間あたりの基礎賃金を計算します。
固定残業代を外してから時給を出す
たとえば「基本給30万円(うち固定残業代5万円・時間外20時間分を含む)」と労働条件で明示されている場合、基礎賃金の分子は固定残業代5万円を差し引いた25万円です。
- 基礎賃金の分子:300,000 − 50,000(固定残業代)= 250,000円
- 1時間あたりの基礎賃金:250,000 ÷ 163.3 ≒ 1,531円
- 実際の時間外労働が25時間なら、みなし20時間を超える5時間分:1,531 × 1.25 × 5 = 9,569円を別途支給
固定残業代を外さずに基本給30万円のまま時給を計算すると、超過分の単価が実際より高くなり、逆に固定残業代の範囲を超えた分を支払わないと未払いになります。どちらもトラブルのもとになるため、まず固定残業代を分離するのが第一歩です。
固定残業代として認められる要件と、超過分の別途支払い
固定残業代は、導入していれば追加の残業代計算が不要になるものではありません。最高裁は、ある手当が時間外労働などの対価として支払われるものかどうかを、労働契約の内容や使用者の説明、実際の勤務状況などから判断するとしています(日本ケミカル事件・最高裁平成30年7月19日判決)。
この判断枠組みでは、通常の労働時間の賃金部分と割増賃金部分が判別できること(明確区分性)と、固定分が時間外労働などの対価として支払われていること(対価性)が求められます。これらを欠く固定残業代は、割増賃金の支払いとして認められない場合があります。
また、厚生労働省は求人・募集要項に固定残業代を記載する場合、次の3点をすべて明示するよう求めています。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代に関する労働時間数と金額の計算方法
- 固定残業時間を超える時間外・休日・深夜労働分の割増賃金を追加で支払う旨
基本給に固定残業代が含まれる場合の扱いを、要点ごとに整理すると次のとおりです。
| 論点 | 扱い |
|---|---|
| 基礎賃金の求め方 | 基本給から固定残業代相当分を外し、(基本給 − 固定残業代)÷ 月平均所定労働時間 で1時間あたりの基礎賃金を出す |
| 認められる要件 | 通常の賃金と固定残業代部分が判別できること(明確区分性)と、固定分が時間外労働などの対価であること(対価性)。労働条件通知書・就業規則での明示が前提 |
| 要件を欠く場合 | 固定残業代が割増賃金の支払いとして認められず、基本給全体を基礎賃金として残業代を再計算・追加請求される場合がある |
| 超過分の支払い | みなし時間を超えた時間外・深夜・法定休日労働分は、本記事の計算式で算出して別途支給する義務がある |
給与明細・給与ソフトの残業代を自分で検算するチェック観点
給与計算ソフトが出した残業代や、給与明細の割増賃金が想定と合わないとき、多くは基礎賃金の設定に原因があります。基本給からの計算手順に沿って、次の4点を確認してください。
- 除外手当マスタ:役職手当・営業手当・精皆勤手当などが誤って「除外」に設定されていないか。除外できるのは家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7項目に限られる
- 月平均所定労働時間:就業規則の年間所定休日・1日の所定労働時間と、(365 − 年間所定休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12 の計算結果が一致しているか
- 割増率マスタ:時間外25%・深夜25%・法定休日35%・月60時間超50%が、法定率どおり(または就業規則で定めたより高い率)に設定されているか
- 固定残業代の設定:基本給に固定残業代が組み込まれている場合、固定分が基礎賃金から外れているか。超過分が自動で追加計算される設定になっているか
手当の仕分けや月平均所定労働時間の管理を毎月手作業で行うと、これらの設定ミスが残業代の過小・過大や未払いにつながります。従業員数が増えて手計算での検算が現実的でない場合や、法令改正への追従漏れが心配な場合は、割増率の自動判定と法令自動対応を備えた給与計算ソフトの活用が実務的な選択肢になります。
残業代計算を自動化する給与計算ソフト
基礎賃金の算定・割増率の判定・月60時間超50%の切替を自動化できる給与計算ソフトの対応状況を、代表的な製品で整理します。就業規則にもとづく除外手当マスタと月平均所定労働時間を初期設定しておけば、勤怠データから残業代を自動計算できます。給与計算ソフト全体を機能や料金で幅広く比較したい場合は、この後の関連記事もあわせてご覧ください。
| 比較項目 | 弥生給与 Next |
|---|---|
| 提供形態 | クラウド型 |
| 対象規模 | 300名未満の中小企業(公式サイト記載) |
| 残業代の自動計算 | ●除外手当マスタ・月平均所定労働時間を設定し、勤怠実績から自動計算 |
| 月60時間超50%の割増判定 | ●法令改正に自動対応し、2023年施行の月60時間超50%にも追従(公式サイト記載) |
| 法令改正への自動対応 | ●社会保険料率・税制改正に自動対応(公式サイト記載) |
| 勤怠システム連携 | ●弥生勤怠 Next(KING OF TIMEのOEM提供)と連携 |
| 料金(年契約・税抜) | 年20,400円〜84,000円(2026年8月時点・税抜) 月あたり1,700〜7,000円換算 |
| 初期費用 | 0円 |
| 無料トライアル | あり 初回申込限定・最大2か月間 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る |
対象規模・年末調整の対応範囲・勤怠システム連携など、給与計算ソフトを幅広く比較して選びたい場合は、選び方を整理したまとめ記事も参考になります。主要な給与計算ソフトを機能・料金・対象規模で比較し、自社に合う1台の選び方まで解説しています。
1. 弥生給与 Next(弥生株式会社)

弥生株式会社が提供するクラウド型の給与計算・勤怠管理・労務管理ソフトです。給与・賞与計算、Web給与明細配信、年末調整、法定調書作成に加え、勤怠管理・労務管理を1つのサービス上で扱えます。公式サイトでは「300名未満の中小企業」を主な対象と明記し、20名以上・20名未満で導入導線を分けています。
残業代の計算では、就業規則にもとづく除外手当マスタと月平均所定労働時間を初期設定しておけば、勤怠データから残業手当を含む給与を自動計算できます。クラウド型のため、社会保険料率や税制改正などの法令改正にも自動対応すると公式に案内されており、2023年施行の月60時間超50%のような割増率の改正にも追従できる仕組みです。
料金は年契約で、業務の内製化の度合いに応じた4プラン構成です。給与計算・勤怠管理を自社で行い年末調整は税理士等に依頼する「エントリー」プラン(年20,400円)と、年末調整まで自社で行う「ベーシックライト」プラン(年36,000円)が基本です。さらに、労務管理も含む「ベーシック」プラン(年55,200円)、電話サポート・労務相談を含む「ベーシックプラス」プラン(年84,000円)があります。
初期費用は0円で、いずれも2026年8月時点・税抜表記です。初回申込に限り、最大2か月間ベーシックプラス相当の機能を無料で試せます。
勤怠管理は「弥生勤怠 Next」(株式会社ヒューマンテクノロジーズのKING OF TIMEをOEM提供)と連携します。労務管理は「弥生労務 Next」(株式会社エフアンドエムのオフィスステーション 労務をOEM提供)と連携します。2026年6月からは「弥生会計 Next」との仕訳ワンクリック連携も提供され、弥生給与 Nextと弥生会計 Nextのセット申込で初年度利用料が25%割引になります。
まとめ
残業代の計算に使うのは基本給そのものではなく「基礎賃金」です。基本給に役職手当などの一律手当を足し、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7項目を引いた金額を、月平均所定労働時間で割って1時間あたりの単価を求めます。これに時間外25%・深夜25%・法定休日35%・月60時間超50%の割増率と残業時間を掛けて算出します。
2023年4月からは中小企業にも月60時間超50%の割増が適用され、基本給に固定残業代が含まれる場合は固定分を外してから時給を計算する必要があります。手当の仕分けや月平均所定労働時間の管理を手作業で続けるとミスが起きやすいため、除外手当マスタ・割増率・固定残業設定を自動化できるクラウド型の給与計算ソフトの活用も、実務負担と法令追従漏れの両方を下げる選択肢になります。
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よくある質問(FAQ)
Q. 残業代の計算に使う「基礎賃金」とは何ですか?
A. 基礎賃金とは、残業代(割増賃金)の1時間あたりの単価を出すための元になる賃金で、基本給に役職手当などの一律に支払う手当を足し、家族手当・通勤手当など法律が定める7項目を除いた金額です。基本給そのものとは異なります。
この金額を月平均所定労働時間で割って1時間あたりの基礎賃金を求め、割増率と残業時間を掛けて残業代を算出します。除外できる手当は、労働基準法第37条第5項と施行規則第21条が定める7種類に限られます。
Q. 役職手当や家族手当は基礎賃金に含めますか?
A. 役職手当は基礎賃金に含め、家族手当は原則として除外します。ただし判定は名称ではなく支給の実態によります。役職手当・営業手当・精皆勤手当・資格手当など、労働の対償として一律に支払う手当は基礎賃金に含めます。家族手当は扶養家族数に応じて増減する場合に除外でき、扶養の有無にかかわらず全員一律に支払う家族手当は、名称にかかわらず基礎賃金に含めます(厚生労働省 鹿児島労働局)。
Q. 賞与(ボーナス)は残業代の基礎賃金に含めますか?
A. 賞与は基礎賃金に含めません。労働基準法施行規則第21条が除外する「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」に賞与が該当するためです。同じく「臨時に支払われた賃金」も基礎賃金から除きます。一方、毎月支払う役職手当などは1か月を超える期間ごとの賃金には当たらないため、基礎賃金に含めます。
Q. 月60時間を超える残業の50%割増は、中小企業も対象ですか?
A. 中小企業も対象です。2023年(令和5年)4月1日から猶予措置が廃止され、企業規模を問わずすべての企業で、月60時間を超える時間外労働には50%以上の割増賃金が必要になりました。「50%は大企業だけ」という説明は2023年3月以前の旧情報で、現在は誤りです。
給与計算ソフトの割増率マスタが「月60時間超=25%」や「大企業のみ50%」の旧設定のままだと、残業代が過小になります(厚生労働省 山口労働局)。
Q. 基本給に固定残業代が含まれる場合、基本給をそのまま使って残業代を計算してよいですか?
A. 基本給をそのまま使うことはできず、固定残業代相当分を外してから1時間あたりの基礎賃金を計算します。固定残業代はそれ自体が割増賃金であり、基礎賃金には含めないためです。実際の残業がみなし時間を超えた分は、外した後の基礎賃金をもとに別途支給する義務があります。
固定残業代が有効と認められるには、通常の賃金部分と割増賃金部分が判別できること(明確区分性)と、固定分が時間外労働などの対価として支払われていること(対価性)が必要です(日本ケミカル事件・最高裁平成30年7月19日判決)。
Q. 時給制・日給制・年俸制の場合、残業代の基礎になる時給はどう計算しますか?
A. 給与形態によって、1時間あたりの基礎賃金を出すときの分母が変わります。時給制はその時給がそのまま基礎になり、日給制は日給を1日の所定労働時間で割って求めます。本記事は月給制(基本給からの計算)を中心に解説しているため、月給制以外の詳しい計算方法や年俸制の扱いは、給与形態別に解説した『残業代の計算方法をわかりやすく解説』で確認してください。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
















