従業員や取引先に「手取りでいくら支払う」と約束する場面では、社会保険料や税金を差し引く前の総支給額を、手取り額から逆算する必要があります。この計算は「グロスアップ計算」と呼ばれ、手取りを保証する給与や、源泉徴収が必要な報酬を支払うときに使われます。
本記事では、グロスアップ計算の考え方と、手取り額から総支給額を逆算する具体的な手順を、社会保険料・所得税を反映した実額の例で解説し、住民税の扱いもあわせて整理します。増額した分にもさらに税金や社会保険料がかかるため、単純な割り算では終わらず「反復計算」が必要になる点が、この計算のつまずきどころです。
あわせて、グロスアップ計算が必要になる主な場面や、住民税・社会保険料の上限など実務上の注意点、そして手計算の負担を減らす方法まで整理します。自社のケースに当てはめて計算・判断するための材料としてご活用ください。
目次
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グロスアップ計算とは?通常の給与計算との違い
グロスアップ計算とは、支払う側が保証したい手取り額をあらかじめ決め、そこから社会保険料や税金を逆算して総支給額を求める計算方法です。通常の給与計算とは、計算の向きが逆になります。
通常の給与計算では、まず総支給額が決まっていて、そこから社会保険料や所得税などを差し引いて手取り額を求めます。順序は「総支給額 → 各種控除 → 手取り額」です。これに対してグロスアップ計算は、「手取り額 → 逆算 → 総支給額」という順序で、先に手取り額を固定し、控除される分を上乗せした総支給額を割り出します。
たとえば「手取りで月30万円を支払う」と約束した場合、実際に支給する総額は30万円より多くなります。社会保険料や所得税として差し引かれる分を、あらかじめ総支給額に含めておく必要があるからです。この上乗せ分を正しく求めるのがグロスアップ計算です。
手取り額から総支給額を逆算する計算例(社会保険料・所得税を反映した実額計算)
ここからは、手取り額から総支給額を逆算する流れを、実際の料率と税額表を使って具体的な金額で追っていきます。まず多くの人が思いつく単純な計算式を確認し、それだけでは正しい答えにならない理由を押さえたうえで、実額での計算手順を見ていきます。
まず単純な計算式(総支給額=手取り額÷(1−税率))を当てはめてみる
グロスアップ計算で最初に思いつくのは、控除される割合を使って手取り額を割り戻す方法です。式にすると「総支給額 = 手取り額 ÷ (1 − 控除の割合)」となります。
たとえば手取りで30万円を支払いたいとき、給与から差し引かれる社会保険料(被保険者負担分)の割合を約14.575%として計算すると、総支給額は「300,000円 ÷ (1 − 0.14575) ≒ 351,200円」と求められます。
しかし、この金額を総支給額にしても、実際の手取りは30万円に届きません。この式では所得税が計算に入っていないうえ、総支給額が増えれば所得税もその分増えるという関係が反映されていないためです。
なぜ単純な割り算では終わらないのか(反復計算が必要な理由)
単純な割り算で終わらないのは、上乗せした金額そのものにも、また社会保険料と所得税がかかるからです。手取りを増やそうと総支給額を上げると、それに連動して控除額も増え、手取りが目標に届かなくなります。
社会保険料は、総支給額をもとに決まる標準報酬月額に料率をかけて計算されます。所得税は、社会保険料を差し引いた後の課税対象額が大きいほど税額が上がる仕組みです。この結果、「総支給額を上げる → 社会保険料と所得税が増える → 手取りが減る」という関係が生まれ、総支給額と控除額が互いに影響し合って循環します。

この循環があるため、グロスアップ計算では、仮の総支給額を置いて控除後の手取りを計算し、目標との差を埋めるように総支給額を少しずつ調整する「反復計算」で正しい金額に近づけていきます。次の項目で、その手順を実額で追います。
実額に近づける反復計算のステップ(令和8年度の料率・源泉徴収税額表)
ここでは、手取りで月30万円を保証するケースを例に、令和8年度(2026年度)の料率と源泉徴収税額表を使って総支給額を逆算します。前提は、東京都・40歳未満(介護保険料の対象外)・扶養親族0人・令和8年度とします。
社会保険料の被保険者負担分は、健康保険4.925%(東京都・協会けんぽ)、厚生年金9.15%、雇用保険0.5%(一般の事業)で、合計14.575%です。40歳以上65歳未満の方は、これに介護保険料(令和8年度は全国一律1.62%、被保険者負担0.81%)が加わります。所得税は、社会保険料を差し引いた後の金額と扶養親族の数を、源泉徴収税額表(令和8年分・月額表・甲欄)に当てはめて求めます。
ただし、健康保険料と厚生年金保険料は本来、総支給額をもとに決まる標準報酬月額の等級で計算します。以下では仕組みを分かりやすくするために、総支給額に対するおおよその割合として計算します(実際の金額は各等級表で確認してください)。
実際に、仮の総支給額を置いて手取りを計算し、目標の30万円との差を埋めるように調整すると、次のように収束していきます。
| 1回目 | 2回目 | 3回目 | |
|---|---|---|---|
| 仮の総支給額 | 351,200円 | 360,000円 | 361,000円 |
| 社会保険料(概算) | 51,188円 | 52,470円 | 52,616円 |
| 社保控除後 | 300,012円 | 307,530円 | 308,384円 |
| 所得税 | 7,930円 | 8,180円 | 8,300円 |
| 手取り | 292,082円 | 299,350円 | 300,084円 |
| 目標30万円との差 | −7,918円 | −650円 | +84円 |
1回目は、単純な割り算で求めた351,200円を仮の総支給額として社会保険料と所得税を計算すると、手取りは292,082円にとどまり、目標を7,918円下回ります。そこで総支給額を引き上げて再計算すると、3回目でおおむね手取り30万円に到達します。この例では、手取り30万円を保証するために必要な総支給額は、約361,000円という結果になりました。
この約361,000円は社会保険料と所得税を反映した金額で、住民税は含んでいません。住民税がある従業員に、住民税を差し引いたうえで手取り30万円を残したい場合は、次に見るように住民税分を上乗せした総支給額が必要になります。
所得税は、社会保険料控除後の金額と扶養親族の数を源泉徴収税額表(令和8年分・月額表・甲欄)に当てはめた実額です。たとえば1回目は社保控除後300,012円なので「299,000円以上302,000円未満」の行の7,930円、3回目は約308,384円なので「308,000円以上311,000円未満」の行の8,300円になります。
総支給額を約1万円上げると所得税が7,930円から8,300円へ増えており、増額分にも税金がかかる様子が数字で確認できます。自社の総支給額で計算するときは、社会保険料を引いた後の金額と扶養親族の数で同じ表を引くことになります。
出典・参考資料(4件)
住民税まで含めて計算する場合
手取りを保証する際に住民税まで考慮したい場合は、扱い方が社会保険料や所得税と異なる点に注意が必要です。住民税は、その年の給与額ではなく前年の所得に対して課税され、毎月ほぼ定額を給与から特別徴収(天引き)する仕組みだからです。所得割の標準税率は10%(道府県民税4%+市町村民税6%)です。
住民税は当月の総支給額に連動しない定額なので、反復計算そのものには含めず、保証したい手取り額に住民税分を上乗せして目標を置き直します。たとえば月々の住民税を15,000円と仮定すると、住民税を差し引いた後に30万円を残すには、反復計算の目標手取りを315,000円(30万円+15,000円)として同じ手順を行います。
この例では総支給額は約380,000円となり、そこから社会保険料・所得税・住民税を差し引くと手取りが約30万円になります。実際の住民税額は前年の所得で決まるため、従業員ごとに金額を確認する必要があります。
出典・参考資料(1件)
報酬(士業報酬・原稿料など)を手取りで支払うときのグロスアップ計算
グロスアップ計算が必要になるのは、給与だけではありません。弁護士・税理士などの士業への報酬や、原稿料・講演料といった報酬・料金を「手取りでいくら」と約束して支払うときにも、源泉徴収される所得税を逆算する必要があります。
手取り額から支払額を逆算する根拠は、国税庁の法令解釈通達に明記されています。
給与等その他の源泉徴収の対象となるものの支払額が税引手取額で定められている場合には、当該税引手取額を税込みの金額に逆算し、当該逆算した金額を当該源泉徴収の対象となるものの支払額として、源泉徴収税額を計算することに留意する。
出典:所得税基本通達 181〜223共−4|国税庁
報酬・料金等の源泉徴収税率は、同じ相手に1回に支払う金額のうち100万円以下の部分が10.21%です。したがって、支払額が100万円以下に収まる場合の報酬のグロスアップは、「報酬額 = 手取額 ÷ (1 − 0.1021)」で求められます。給与のように社会保険料が絡まないため、反復計算は不要で、この式で逆算できます。
たとえば原稿料を手取りで10万円支払いたい場合、報酬額は「100,000円 ÷ (1 − 0.1021) ≒ 111,371円」となります。この報酬額に対する源泉徴収税額は約11,370円(1円未満切り捨て)で、差し引くと手取りが約10万円になります。
ただし、1回の支払額が100万円を超えると、超える部分の税率が20.42%に上がる段階税率になります。この場合は単純な割り算では終わらず、100万円までの部分と超えた部分を分けて計算します。
出典・参考資料(1件)
グロスアップ計算が必要になる主な場面
グロスアップ計算は、手取り額を先に約束するさまざまな場面で使われます。ここでは、実務で登場しやすい代表的な4つの場面を整理します。
役員・専門職などの手取りを保証する場合
役員や専門職を招く際に、「手取りで月◯円」と条件を提示して合意するケースがあります。この場合、提示した手取り額を実現するために、社会保険料と所得税を上乗せした総支給額を逆算する必要があります。福利厚生として特定の手当を手取り保証するときも、同じ考え方でグロスアップ計算を行います。
海外赴任者の場合(タックスイコライゼーション/タックスプロテクション)
海外赴任者では、赴任先の税率が日本と大きく異なることで手取りが変わってしまうのを避けるため、会社が税負担を調整する仕組みが使われます。代表的なのが、赴任前と同じ税負担に揃える「タックスイコライゼーション」や、税負担が重くならないよう会社が補填する「タックスプロテクション」です。会社が負担した税額を手取りベースで調整する際に、グロスアップ計算が関わります。
赴任者の課税関係は、所得税法上の居住者か非居住者かで変わります。国税庁は「居住者」を国内に住所を有する、または現在まで引き続き1年以上居所を有する個人と定義し、それ以外を「非居住者」としています。
非居住者に支払う国内源泉の給与は、原則20.42%の税率で源泉徴収されるため、非居住者の手取りを保証する場合の逆算では、この税率を用います。海外赴任に伴う税務は制度が入り組むため、個別の判断は税務の専門家に確認することをおすすめします。
外国人を雇用する場合
母国に社会保険や源泉徴収の仕組みがない国から来た従業員を雇用する場合、総支給額と手取り額の差が理解されにくく、「聞いていた金額と違う」という不信につながることがあります。採用時に手取り額を明確に伝え、その手取りを実現する総支給額をグロスアップ計算で提示しておくと、こうした認識のずれを防ぎやすくなります。
士業・個人への報酬を手取りで支払う場合
弁護士・税理士などの士業や、個人に原稿料・講演料を支払う際に、手取り額で金額を取り決めることがあります。この場合の計算方法は、前掲の「報酬(士業報酬・原稿料など)を手取りで支払うときのグロスアップ計算」で解説したとおりで、社会保険料は関わらず、源泉徴収税率を使って報酬額を逆算します。
グロスアップ計算の実務上の注意点
グロスアップ計算は、料率や税額表を正しく使うだけでなく、見落としやすい前提がいくつかあります。計算後に想定外を招かないよう、実務で押さえておきたい注意点を整理します。
前年に所得がない従業員は住民税の徴収がない期間に注意
住民税は前年の所得に対して課税されるため、前年に所得がない新入社員や、転職して間もない従業員では、特別徴収がまだ始まっていない期間があります。この期間は住民税の控除がない一方、翌年からは徴収が始まって手取りが変わります。いつから・いくら差し引かれるかを見込んでおくと、手取りの見込み違いを防げます。
社会保険料の上限(標準報酬月額の上限)と所得税の累進
健康保険料と厚生年金保険料の計算に使う標準報酬月額には上限があります。厚生年金保険は標準報酬月額65万円(第32等級)、健康保険は139万円(第50等級)が上限で、これを超える部分には保険料がかかりません。
総支給額が高い場合、上限を超えた分は社会保険料が増えないため、その範囲では反復計算の調整が小さくなります。一方で所得税は、課税対象額が大きいほど税率が上がる累進構造のため、総支給額が高いほど上乗せ分に対する税負担が重くなります。
料率・源泉徴収税額表は毎年更新される(年度をまたぐ計算での注意)
社会保険料率も源泉徴収税額表も、毎年見直されます。たとえば雇用保険料率(一般の事業の労働者負担分)は令和7年度の0.55%から令和8年度は0.5%へ引き下げられ、健康保険料率も都道府県ごとに毎年改定されます。年度をまたいで手取りを保証する場合は、適用する年度の料率・税額表を使い、改定時には計算をやり直す必要があります。都道府県によって健康保険料率が異なる点にも注意が必要です。
グロスアップした分も給与として課税・源泉徴収の対象になる(会社負担の増加)
手取りを保証するために上乗せした金額も、給与や報酬として課税・源泉徴収の対象になります。加えて、社会保険料は会社と従業員が折半で負担するため、総支給額が増えれば会社が負担する社会保険料も増えます。
手取り額だけを見て条件を決めると、会社が実際に負担する総額は想定より膨らむことがあります。そのため、グロスアップ計算では「手取り」「総支給額」「会社の実負担」を分けて把握しておくことが重要です。
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手計算・エクセルの限界と、給与計算の自動化・代行という選択肢
ここまで見てきたとおり、グロスアップ計算は仮の総支給額を置いて何度も計算をやり直す反復計算が必要で、社会保険料率や源泉徴収税額表の年度更新、都道府県ごとの料率差、住民税の扱いまで踏まえる必要があります。表計算ソフトで自作すると、料率の改定漏れや税額表の当てはめミスが起こりやすく、対象者が増えるほど確認の手間と手戻りのリスクが大きくなります。
こうした複雑な給与計算の負担を減らす方法として、給与計算を自動化するソフトや、給与計算を含む経理・労務業務を専門会社に委託するアウトソーシングがあります。ここでは、給与計算の代行・自動化に対応するサービスをいくつか紹介します。
以下は、ご紹介するサービスの比較表です。
| サービス比較 | Wheat Accounting | Tenbook(テンブック) | マネーフォワード おまかせ経理 |
|---|---|---|---|
| 提供形態 | 経理アウトソーシング(代行) | 会計・経理アウトソーシング (クラウド会計「10book」を無料提供) | 経理BPO(アウトソーシング) (実務提供はグループ会社キャシュモ) |
| 給与計算の対応 | ●標準対応(賞与計算・年末調整はオプション) | △オプション対応(賞与計算・年末調整も) | ●標準対応(賞与計算含む) |
| 主な対応業務 | 記帳・請求書発行・売掛金管理・経費精算・振込・給与計算・月次決算 (税務は連携税理士、社保・労務は連携社労士) | 記帳・月次・決算書作成・法人税/住民税/事業税/消費税の申告 (給与計算等はオプション) | クラウド導入支援・記帳・請求書発行・支払/振込代行・入金消込・給与/賞与計算・月次試算表 |
| 対象企業規模の目安 | 年商数千万〜100億円 (従業員1〜100人) | 売上5億円以下が目安 | 中小企業 (従業員5〜50名・年商1億円以上が目安) |
| 初期費用 | 要お問い合わせ (初月にフロー構築・初期設定費用) | 0円 | 要お問い合わせ (個別見積もり) |
| 月額費用 | 30,000円〜(スモール) 40,000円〜(スタンダード) 60,000円〜(アドバンス) | 29,500円〜(免税事業者) 43,500円〜(課税事業者) (税別) | 要お問い合わせ (従業員5名程度で月額10万円は一例) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 |
※上記は2026年9月時点で各社の公式サイト・掲載情報をもとに整理したものです。給与計算の対応欄は、●=標準対応(基本料金内)、△=オプション対応(別料金)を表します。料金は税抜・税込の前提や対象範囲が各社で異なり、Wheat Accountingのスモール料金は初年度キャンペーン価格、マネーフォワード おまかせ経理の「月額10万円」は従業員5名程度の一例です。実際の料金・対応範囲は各社の見積もり・資料でご確認ください。
1. Wheat Accounting(株式会社Wheat)

Wheat Accountingは、株式会社Wheatが提供する、中小企業やスタートアップ向けの経理アウトソーシングサービスです。記帳や請求書発行、売掛金管理、経費精算などに加えて給与計算までを代行し、税務申告は税理士、社会保険や労務は社労士と連携して、バックオフィス全体をワンストップで支援します。
特徴は、既存の業務フローにツールを後付けするのではなく、クラウド会計の活用を前提に業務プロセスをゼロから設計し、その運用まで一貫して担う点です。給与計算そのものを委託できるため、グロスアップ計算のように手間のかかる計算も含めて任せられ、担当者の退職や属人化で経理が止まるリスクを抑えられます。
表計算ソフトでの手作業による給与計算がどの程度の負担になり得るかについて、代表取締役の佃誠吾氏はMCB FinTechカタログの独自インタビューで、実際の事例に言及しています。

業務効率化の事例としては、従業員100名規模のお客様で、Excelを用いた手作業で、完了までに1週間を要していた給与計算業務の事例です。システムの最適化と人員配置の再設計を徹底した結果、2〜3日での完了を実現。コスト・工数ともに50%以上の削減に繋がりました。これは個人のスキルに頼るのではなく、業務プロセスを正しく組み立て直したことによる成果です。
2. Tenbook(シンアカウンティングサービス株式会社)

Tenbookは、公認会計士・税理士が代表を務めるシンアカウンティングサービス株式会社が運営する会計・経理アウトソーシングサービスです。自社開発のクラウド会計ソフト「10book」を活用し、記帳から月次処理、決算書作成、法人税申告までをオンラインで完結できます。契約者には10bookが無料で提供されます。
中核は記帳から決算・税務申告までの会計業務ですが、給与計算・賞与計算・年末調整はオプションとして代行に対応し、無料提供される10bookにも給与計算の機能があります。会計・税務とあわせて給与計算まで一元的に任せたい企業に向いています。経理専任者を置かない中小企業・スタートアップを主な対象としています。
3. マネーフォワード おまかせ経理(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード おまかせ経理は、株式会社マネーフォワードが提供する中小企業向けの経理業務アウトソーシングサービスです。実務はグループ会社の株式会社キャシュモが担います。「マネーフォワード クラウド」の導入支援から記帳代行、請求書発行、支払・振込代行、給与計算・賞与計算、月次試算表の作成などをオンラインで一括対応します。
クラウド導入から日々の経理実務、給与・賞与計算までを同一ブランド内で一気通貫で委託できる点が特徴です。月次試算表は公式サイトで最短5営業日での作成を掲げています。給与計算を含めて経理をまとめて外部に任せ、社内の担当者を本来の業務に集中させたい中小企業に適しています。
ここで紹介したのは、給与計算に対応するサービスの一例です。委託できる業務範囲や料金相場、委託先の選び方まで含めて給与計算アウトソーシング全体を比較検討したい場合は、以下の記事で詳しく解説しています。
給与計算アウトソーシングおすすめ34選を比較|業務範囲・料金体系・規模別の選び方
毎月の給与計算や賞与計算、年末調整、社会保険の手続きに、特定の担当者が追われていないでしょうか。社会保険料率や税制は毎年のように改正され、その都度の確認作業まで含めると、経理や人事、総務の少人数体制では業務が属人化しやすくなります。担当者が…
まとめ
グロスアップ計算は、保証したい手取り額から、社会保険料や税金を上乗せした総支給額を逆算する計算です。上乗せした分にもさらに社会保険料と所得税がかかるため、単純な割り算では終わらず、仮の総支給額を調整しながら近づける反復計算で求めます。
給与では社会保険料・所得税・住民税を、報酬では源泉徴収税率を用います。住民税は前年所得ベースで当月の給与額に連動しない点や、料率・税額表が毎年更新される点が実務上の注意点です。
手取り保証や海外赴任者、外国人雇用、士業への報酬など、グロスアップ計算が必要になる場面は幅広く、正確に行うには最新の料率と税額表への追従が欠かせません。対象者が増えるほど手計算の負担は大きくなるため、給与計算ソフトやアウトソーシングの活用も選択肢に入れて、自社に合った進め方を検討するとよいでしょう。
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よくある質問(FAQ)
Q. グロスアップ計算とは何ですか?
A. グロスアップ計算とは、支払う側が保証したい手取り額から、社会保険料や税金を逆算して総支給額を求める計算方法です。通常の給与計算が「総支給額 → 控除 → 手取り」の順に進むのに対し、グロスアップ計算は「手取り → 逆算 → 総支給額」と向きが逆になります。
上乗せした金額にもさらに税金や社会保険料がかかるため、単純な割り算では手取りが目標額に届かず、仮の総支給額を調整する反復計算で求めるのが基本です。
Q. 賞与(ボーナス)のグロスアップ計算は、月給と同じ方法で行えますか?
A. 基本の考え方は月給と同じですが、賞与では所得税の計算方法と社会保険料の計算基礎が異なるため、月給の計算をそのまま流用することはできません。上乗せした金額にもさらに所得税・社会保険料がかかり、反復計算が必要になる点は給与と共通します。
一方で、賞与の所得税は月額の源泉徴収税額表ではなく賞与用の算出率で求め、社会保険料は月給の標準報酬月額ではなく標準賞与額をもとに計算します。社会保険料の上限額の扱いも月給とは別のルールになるため、賞与は賞与用の計算に置き換えて逆算する必要があります。
Q. 非居住者(海外赴任者)に手取りで給与を支払う場合、何%で逆算しますか?
A. 非居住者に支払う国内源泉の給与は原則20.42%で源泉徴収されるため、「支払額 = 手取額 ÷ (1 − 0.2042)」で逆算します。居住者か非居住者かは所得税法上の区分で決まり、国内に住所がある、または現在まで引き続き1年以上居所がある個人が居住者、それ以外が非居住者です。
海外赴任者では社会保険料の扱いや租税条約の適用など制度が入り組むため、実際の税率や区分の判定は税務の専門家に確認することをおすすめします。
Q. グロスアップ計算をエクセルで組むのは難しいですか?
A. 反復計算を再現するために循環参照や近似の仕組みを組む必要があり、正確に運用し続けるには手間がかかります。手取りと総支給額が互いに影響し合うため、仮の総支給額から手取りを計算して目標との差を詰める処理を関数で表現しなければなりません。
加えて、社会保険料率や源泉徴収税額表は毎年更新され、健康保険料率は都道府県ごとに異なります。表計算で自作すると料率の改定漏れや税額表の当てはめミスが起こりやすく、対象者が増えるほど確認の手間と手戻りのリスクが大きくなります。
Q. グロスアップ計算をすると、会社の負担はどのくらい増えますか?
A. 手取り保証のために上乗せした総支給額そのものに加え、労使折半の社会保険料の会社負担分も増えるため、実際のコストは手取り額よりかなり大きくなります。たとえば手取りで月30万円を保証するケースでは、逆算した総支給額は約361,000円になり、まず手取りとの差額分の負担が生じます。
さらに社会保険料は会社と従業員が折半で負担するため、総支給額が増えれば会社が支払う社会保険料も増えます。手取り額だけで条件を決めると実負担が想定より膨らむため、「手取り」「総支給額」「会社の実負担」を分けて把握することが大切です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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