締結したはずの契約書が、キャビネットにも共有フォルダにも見当たらない。取引先とのやり取りや監査で「あの契約書を出してほしい」と言われて探し、原本や控えが見つからないと気づいたとき、まず頭をよぎるのは「この契約はもう無効になってしまうのか」という不安ではないでしょうか。
結論から言えば、原本を紛失しただけで契約が当然に無効になるわけではありません。ただし、放置すると立証や更新管理で不利が残るため、いま何をすべきかを落ち着いて進める必要があります。
本記事では、紛失しても契約が無効にならない法的な理由から、いま取るべき初動と挽回策までを扱います。さらに、相手方への切り出し方、再作成時の印紙税や証拠力の注意点、再発防止の管理体制までを、法令の根拠とあわせて整理します。読み終えるころには、自社のケースで次に何をすればよいかを判断できるようになります。
目次
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契約書を紛失しても契約は無効にならない(結論)
最初に、いちばん気がかりな点にお答えします。契約書という書面を紛失しても、それだけで成立済みの契約が無効になったり失効したりするわけではありません。契約は、原則として当事者の合意によって成立するものだからです。
その根拠は民法にあります。民法第522条は、契約が申込みと承諾という当事者の意思表示の合致によって成立すること、そして成立には原則として書面などの方式を必要としないことを定めています。
第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
出典:民法 第522条|e-Gov法令検索
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
第2項が定めるとおり、契約は書面がなくても合意だけで成立するのが原則です。したがって、契約書の原本が手元から失われても、契約そのものが消えるわけではありません。
ただし条文には「法令に特別の定めがある場合を除き」という留保があります。保証契約のように、書面がなければ効力を生じないと法律で定められた契約(要式契約)は例外です。自社のケースがこうした書面必須の契約に当たるかどうかは、念のため確認しておくと安心です。
出典・参考資料(1件)
契約書を紛失すると残るリスク
ここからは、契約が無効にならないとしても残るリスクを整理します。実務で問題になるのは、契約の効力そのものより「証明できるか」という点です。
民事訴訟で契約書を証拠として使うには、その文書が本当に作成名義人によって作られたこと(成立の真正)を、提出する側が証明しなければなりません。民事訴訟法第228条は次のように定めています。
第二百二十八条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
出典:民事訴訟法 第228条|e-Gov法令検索
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
第4項のとおり、本人の署名や押印がある私文書は真正に成立したものと推定されます。裏を返すと、署名・押印のある原本を失ってコピーしか出せない状態では、相手方が「その文書は本物か」と争ったときに、真正であることを立証しにくくなります。これが紛失で生じる最大の実務リスクです。
このほかにも、更新期限や自動更新の条件を確認できず不利な条件のまま契約が続いてしまう、監査や取引先からの提示要求に応えられない、社内・社外の信用に影響するといった問題が重なります。無効ではないからと放置せず、次の初動に進みましょう。
もっとも、相手方が契約内容を争っていない状態であれば、手元のコピーやPDFでも実務上は問題なく通ることが多いのが実情です。証拠力が問題になるのは、相手方と内容をめぐって争いになったときです。監査や取引先から提示を求められている場合は、まず手元のコピー・PDFを提示しつつ、原本を紛失した経緯と後述の挽回状況を添えれば、当座の対応としては足ります。
出典・参考資料(1件)
まず何をどの順で探すか(初動フロー)
ここからは、紛失に気づいたときの初動を順番に示します。あわてて相手方に連絡する前に、まず社内を徹底的に探すのが基本です。

社内で探す(コピー・データ・関連書類)
原本が見つからなくても、社内には契約内容を確認できる手がかりが残っていることが多くあります。次のような場所を順に確認しましょう。
- 契約書のコピー(写し)やスキャンしたPDFが、共有フォルダ・担当者のPC・複合機の保存先に残っていないか
- 押印記録簿や契約書管理台帳に、契約日・相手先・契約内容の記録がないか
- 稟議書や法務部門への申請書に、契約書の写しやドラフトが添付されていないか
- 経理伝票・請求書・支払記録・発注書・メールなど、契約内容を裏づける関連資料が残っていないか
コピーやPDFが見つかれば、契約内容の確認には十分役立ちます。原本と同じ証拠力があるかどうかは別問題ですが、次の対応を決めるための材料になります。
相手方が原本を保管しているか確認する
社内で見つからない場合は、契約の相手方が保管しているか確認します。契約書は通常、双方が1通ずつ原本を保管しているため、相手方の原本が残っていれば、そこから写しを受け取って立て直せます。相手方への依頼の進め方は後述しますが、まずは「相手方が原本を持っている可能性が高い」ことを前提に、社内の探索と並行して連絡の準備を進めておくとスムーズです。
契約の種別によっては、相手方以外に契約内容の記録が残っていることもあります。不動産取引なら仲介会社・法務局・司法書士、賃貸借なら管理会社、雇用契約なら労働条件通知書や就業規則などが手がかりになります。種別ごとの入手先は後半の「契約種別ごとの注意点」で整理します。
見つからないときの挽回策(状況別の選び分け)
ここからは、探しても原本が見つからないときの挽回策を整理します。主な選択肢は、相手方からの写しの取得、写しへの原本証明(認証)、確認書・覚書の作成、そして契約の再締結です。それぞれ有効性と注意点が異なるため、まず一覧で比較します。
挽回策の選択肢と注意点
| 挽回策 | 内容 | 証拠力・有効性の目安 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 相手方からコピーを取得 | 相手方が保管する原本のコピーを受け取り、契約内容を確認する | 内容確認には有効。単なる写しは訴訟での証拠力に限界 | 全ページ・署名押印欄・別紙・変更契約が揃っているか確認する |
| 写しへの原本証明(認証) | コピーに、当事者が「原本と相違ない」旨を署名・押印して証明を付す | 認証のある謄本として、単なる写しより証拠力が高まる | 証明を付した写しは印紙税の課税対象になる場合がある(後述) |
| 確認書・覚書の作成 | 現在の契約内容を双方で確認し、確認書や覚書として残す | 双方の認識が一致していれば、内容確認の資料として有効 | 元の契約との関係・作成日を明記する。日付をさかのぼって作らない |
| 契約の再締結 | 同じ内容で新たに契約書を締結し直す | 新たな契約書として有効 | 過去の原本そのものではない。再作成した文書に印紙税がかかる場合がある |
いずれの場合も、契約日をさかのぼって記載する「バックデート」は避けてください。実際の作成日と異なる日付を記すと、文書の信頼性を損ない、かえってトラブルの原因になります。新しく作る文書には現在の作成日を記し、元の契約との関係(いつ締結した契約の内容確認か)を明確にしておきます。
たとえば確認書であれば「本覚書は、20XX年X月X日付で締結した〇〇契約の内容を確認するものである」といった一文を冒頭に入れておくと、元の契約との関係が明確になります。
写しを原本と同等に扱えるかどうかは、訴訟での提出方法にも関わります。民事訴訟規則第143条は、文書の提出方法を次のように定めています。
第百四十三条 文書の提出又は送付は、原本、正本又は認証のある謄本でしなければならない。
出典:民事訴訟規則 第143条|最高裁判所
単なるコピーはこの原則に含まれません。相手方の「原本と相違ない」旨の証明を付して認証のある謄本の形にしておくと、証拠として扱いやすくなります。
原本のみを紛失している場合
自社の原本だけを失い、相手方が原本を保管している場合は、相手方からコピーを受け取り、必要に応じて「原本と相違ない」旨の証明を付してもらうのが基本です。受け取る際は、全ページ・署名押印欄・別紙・仕様書・変更契約書が揃っているかを確認しましょう。社内では「相手方保管原本の写し」であることが分かる形で保管しておくと、後から取得経緯を説明できます。
双方が紛失している場合
自社も相手方も原本を失っている場合は、まずPDF・見積書・発注書・メール・請求書・支払記録などから契約内容を確認しましょう。双方の認識が一致していれば、現在の契約内容を確認する確認書や覚書を作成するか、同じ内容で新たに契約書を締結し直す方法を検討します。いずれも過去の原本を復元するものではないため、作成日と元の契約との関係を明確に記しておきます。
契約内容にトラブル・争いがある場合
すでに契約内容をめぐって相手方と見解が食い違っている、あるいは紛争に発展しそうな場合は、慎重な対応が必要です。相手方とのやり取りは記録として残し、確認書や再締結の前に、契約内容の証拠をどこまで確保できているかを整理します。判断に迷う場合や訴訟が視野に入る場合は、早い段階で弁護士など専門家に相談するのが安全です。
出典・参考資料(1件)
相手方への切り出し方と社内報告の進め方
ここからは、言い出しづらい「相手方への連絡」と「社内報告」の進め方を整理します。紛失は誰にでも起こりうることで、隠すよりも早めに動くほうがリスクを抑えられます。
相手方に写しの提供を依頼するときは、「いつ締結した、どの契約書か」を特定して伝えましょう。受け取る写しの範囲(全ページ・署名押印欄・別紙・変更契約書)は前掲の挽回策で触れたとおりで、依頼の段階でこれらを含めてほしい旨を添えておくと、受け取り後の確認がスムーズです。切り出しにくいと感じても、契約管理を見直すために写しを整えたい、といった前向きな文脈で伝えれば角は立ちにくくなります。
社内報告では、紛失した契約書の特定・現時点で確認できている契約内容・取っている対応(社内探索の結果、相手方への依頼状況)をあわせて共有すると、責任の所在よりも立て直しの議論に進みやすくなります。相手方とのやり取りは記録に残し、後から経緯をたどれるようにしておきます。
原本・正本・謄本・写しの違いと証拠力・印紙税

挽回策を選ぶうえで、原本・正本・謄本・認証のある謄本・単なる写しの違いと、それぞれの証拠力・印紙税の扱いを押さえておくと判断しやすくなります。自社が今どの状態の文書を持っているかを、次の表で確認してください。
| 文書の種類 | 内容 | 訴訟での証拠力の目安 | 印紙税(再作成・写し) |
|---|---|---|---|
| 原本 | 署名・押印のある正規の契約書そのもの | 署名・押印により真正が推定される(民訴228条4項) | 締結時に課税済み |
| 正本 | 原本と同一の効力を持つものとして作成された文書 | 原本に準じて提出できる(民訴規則143条) | 作成内容により課税対象となる場合がある |
| 認証のある謄本 | 当事者が「原本と相違ない」旨を証明した写し | 認証のある謄本として提出できる(民訴規則143条) | 証明を付した写しは課税対象となる場合がある |
| 単なる写し(コピー) | 原本を複写しただけで署名・押印・証明のないもの | 内容確認には有効だが、証拠力に限界 | 課税対象とはならない |
再作成・コピー時に印紙税はかかるか
写しや再作成した文書に印紙税がかかるかどうかは、「契約の成立を証明する目的で作られたか」で分かれます。国税庁のタックスアンサーは次のように示しています。
写し、副本、謄本と表示された文書であっても、契約の成立を証明する目的で作成されるものは印紙税の課税対象となります。
出典:国税庁 タックスアンサー No.7120「契約書の写し、副本、謄本等」
(1)契約当事者の双方または文書の所持者以外の一方の署名または押印があるもの
(2)正本などと相違ないこと、または写し、副本、謄本等であることなどの契約当事者の証明のあるもの
また、契約書の正本を複写機でコピーしただけのもので、上記のような署名もしくは押印または証明のないものは、単なる写しにすぎませんから、課税対象とはなりません。
単純にコピーを取るだけなら印紙税はかかりません。一方で、写しに「原本と相違ない」旨の署名・押印を付したり、同じ内容で契約書を作り直したりして、契約の成立を証明する目的の文書になる場合は課税対象になり得ます。
課税される契約書の税額は、文書の種類ごとに定められています。たとえば不動産売買契約書は第1号文書、業務委託契約書や取引基本契約書のような継続的取引の基本となる契約書は第7号文書(記載金額にかかわらず4,000円)に区分されます。具体的な税額区分は国税庁の印紙税額一覧表で確認してください。
出典・参考資料(3件)
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契約種別ごとの注意点
ここからは、契約の種別ごとに紛失時の注意点を整理します。企業間契約を中心に、個人・不動産の契約についても触れます。
企業間契約の注意点(業務委託・取引基本契約・雇用)
業務委託契約・取引基本契約は、継続的な取引の土台になるため、紛失すると個別契約や発注の前提条件が確認できなくなります。再作成する場合は、前掲のとおり第7号文書として印紙税がかかる点にも注意します。関連する発注書・請求書・個別契約から内容を確認し、必要に応じて確認書を交わします。
雇用契約は、労働条件の記録として重要です。労働条件通知書や就業規則、給与台帳など、契約内容を裏づける社内資料が別に残っていることが多いため、それらとあわせて内容を確認し、必要なら書面を整え直します。
個人・不動産の契約の注意点(不動産売買・賃貸借)
不動産売買契約書は第1号文書にあたり、再作成時の印紙税額は契約金額によって変わります。また、売却時の譲渡所得税の計算では取得費を示す資料が必要になるため、契約書を紛失した場合は、購入代金が分かる通帳の記録・領収書・仲介業者の資料などが代替になり得ます。取引を仲介した不動産会社や、登記を扱った法務局・司法書士に相談すると、契約内容を確認できる書類が残っていることがあります。
賃貸借契約書は、再発行が可能かどうかを管理会社や貸主に相談します。原本の再発行ではなく、契約内容を確認できる写しの提供や、覚書での確認で対応するケースが一般的です。更新時期や敷金・原状回復の条件など、後で争いになりやすい項目を優先して確認しておきます。
出典・参考資料(2件)
二度と紛失しないための管理体制
紛失への対応が一段落したら、再発防止に取り組みます。契約書は法令上も一定期間の保存が求められており、確実な管理体制を整えることが、紛失の予防と法令順守の両面で役立ちます。
契約書の保管義務と保存年限
契約書は、税法上の保存対象として扱われます。法人税法は青色申告法人に帳簿書類の保存義務を課しており、その具体的な範囲と期間は法人税法施行規則が定めています。施行規則第59条第1項は帳簿書類を原則7年間保存すべきことを、同項第三号は保存対象に「契約書」が含まれることを明示しています。
青色申告法人は、次に掲げる帳簿書類を整理し、起算日から七年間、これを納税地(略)に保存しなければならない。
出典:法人税法施行規則 第59条第1項|e-Gov法令検索
三 取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し
さらに、欠損金の繰越しの適用を受ける事業年度については、法人税法施行規則第26条の3により保存期間が10年間に延長されます。会社法でも、株式会社は会計帳簿および事業に関する重要な資料を10年間保存すべきものとされており(会社法第432条第2項)、事業に関する重要な資料に該当する契約書はこの対象に含まれると解されています。
いずれにしても、契約書は数年単位で確実に保存する必要があり、紙のまま各部門に分散していると、この保存義務を満たしにくくなります。
出典・参考資料(2件)
紙の契約書をスキャンして電子データで保存し、紙の原本を廃棄してよいかは、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たすかどうかで決まります。要件の一覧と、原本を廃棄できる条件は以下の記事で解説しています。
電子帳簿保存法のスキャナ保存とは?要件一覧と原本廃棄の条件を解説
紙で受け取った請求書や領収書をスキャンして電子データで保存し、できれば紙の原本は処分したい——そう考えたときにまず確認したいのが、電子帳簿保存法の「スキャナ保存」制度です。スキャナ保存には解像度やタイムスタンプ、検索といった保存要件が定めら…
紛失を防ぐ業務フロー(一元管理・電子化・電子契約)
紛失の根本原因は、契約書が紙・PDF・各部門のフォルダに分散し、どこに何があるか分からなくなることにあります。再発防止の基本は、契約書を1か所に集約し、検索できる状態にすることです。具体的には、次のような取り組みが有効です。
- 既存の紙・PDF・電子契約を1つの契約台帳に集約し、契約名・相手先・契約期間・金額で検索できるようにする
- 更新期限や自動更新の期日をアラートで管理し、見落としを防ぐ
- 今後の契約は電子契約に切り替え、そもそも紛失しうる紙原本を作らない
- 紙の原本は、非破壊スキャンや原本保管の代行サービスを使い、物理的にも一元管理する
契約書が社内に分散し、どこに保管されているか分からなくなる状況は、契約管理サービスの導入相談を受ける現場でも共通して見られます。株式会社Hubbleの安田氏は、企業から寄せられる相談の実態を次のように話しています。

もっとも多いのは、「全社のガバナンスをきちんと統制したい」という、ある意味で概念的な理由です。これを少し噛み砕きますと、契約依頼の入り口の部分が、電話、メール、口頭などバラバラになっていて、誰が今どの案件を対応しているのか分からない、どんな契約書を誰が作っているのか把握できない、完成した契約書がどこに保管されているのかも人によってバラバラ、といったご状況が多いです。こうした課題に対して、入り口から出口まで一元的に管理したい、というのがご相談の中心になります。
電子契約は、紛失リスクを下げるだけでなく、証拠力の面でも裏づけがあります。電子署名法第3条は、本人による電子署名がある電子文書は真正に成立したものと推定すると定めており、紙の私文書における署名・押印の推定(民訴228条4項)と同様の効力が認められています。
第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(略)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(略)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
出典:電子署名及び認証業務に関する法律 第3条|e-Gov法令検索
出典・参考資料(1件)
今後の契約を電子で締結すれば、そもそも紛失しうる紙の原本を作らずに済みます。自社に合う電子契約システムを選びたい方は、料金やタイプ別の選び方を整理した以下の記事もあわせてご覧ください。
電子契約システムおすすめ比較|料金とタイプ別の選び方で自社に合う一社を選ぶ
契約のたびに印刷・製本・押印・郵送を繰り返し、取引先の返送を待つあいだ業務が止まってしまう。そんな紙の契約に伴うリードタイムと印紙税の負担を、見直したいと感じていませんか。 電子契約システムを導入すれば、押印や郵送のやり取りをオンラインに置…
紛失防止に使える契約管理・電子契約サービス
再発防止の手段は、大きく3つに分かれます。今後の契約を電子化する電子契約サービス、既存の紙・PDFを取り込んで台帳化する契約管理サービス、紙原本の保管まで代行するサービスです。新規契約の電子化を進めたいのか、過去の紙契約の散在を解消したいのかという自社の課題に合わせて選ぶのが基本です。まずは主なサービスを比較し、そのうえで個別の特徴を紹介します。
| サービス名 | クラウドサイン | 電子印鑑GMOサイン | Contract One | TOKIUM契約管理 | 契約管理DX ConPass | WAN-Sign |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供会社 | 弁護士ドットコム株式会社 | GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 | Sansan株式会社 | 株式会社TOKIUM | 株式会社日本パープル | 株式会社NXワンビシアーカイブズ |
| 再発防止アプローチ | 電子契約で紙原本を作らない | 電子契約で紙原本を作らない | 紙・PDFを取り込み台帳化 | 紙原本を保管代行+台帳化 | 紙原本を保管代行+台帳化 | 電子契約+紙原本の保管連携 |
| 既存の紙・PDFの取り込み | △書類インポートはCorporate以上 | ●スキャン文書の管理に対応 | ◎過去契約のスキャン代行を内包 | ◎郵送で非破壊スキャンを代行 | ◎スキャン・データ入力を代行 | ●書面契約・他社締結PDFも登録可 |
| 紙原本の物理保管代行 | × | × | × | ◎スキャン後の原本保管まで代行 | ◎保管庫で保管・廃棄まで代行 | △オプションの原本保管サービスと連携 |
| 電子契約での締結 | ● | ● | ×他社サービスと連携 | ×締結後の管理に特化 | ×他社サービスと連携 | ● |
| 全文検索 | △項目検索に対応(全文は明記なし) | △項目検索に対応(全文は明記なし) | ●OCR全文データ化で検索 | ●AI-OCR全文データ化で検索 | ●項目検索+本文検索 | △項目検索に対応(全文は明記なし) |
| 更新期限アラート | ● | ● | ● | ● | ● | △リマインドメール送信に対応(更新期限アラートは明記なし) |
| 初期費用 | 要問い合わせ | 0円(基本サービス) | あり(要問い合わせ) | あり(要問い合わせ) | あり(要問い合わせ) | 0円(基本プラン) |
| 月額費用 | 0円〜(フリー無料、Light 11,000円〜/税抜) | 0円〜(お試しフリー無料、ライト 8,800円〜/税抜) | 非公開(見積制) | 1万円〜+従量課金 | 3万円〜(ライト)/5万円〜(スタンダード) | 0円〜(基本プラン無料枠+従量課金) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
※2026年9月時点の各社公式サイト情報にもとづく。最新の料金・機能は各公式サイトでご確認ください。
ここからは、それぞれのサービスの特徴を紹介します。
1. クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社)

クラウドサインは、弁護士ドットコム株式会社が提供する電子契約サービスです。書類のアップロードから電子署名・タイムスタンプの付与、締結後の保管・検索までをオンラインで完結でき、印刷・押印・郵送を不要にします。今後の契約を電子で締結すれば、そもそも紛失しうる紙の原本を作らずに済むのが再発防止の観点での強みです。
標準は事業者署名型(立会人型)で、認証局での本人確認が不要なため導入のハードルが低く、2023年からはマイナンバーカードの電子証明書で当事者本人が署名する方式も提供しています。締結後は契約書名・相手先・契約期間・金額で検索でき、解約通知期限のアラートで更新漏れも防げます。富士キメラ総研の2025年版調査(電子契約ツール部門)でシェア首位と紹介されています。
2. 電子印鑑GMOサイン(GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社)

契約ごとに求められる本人性のレベルを選びたい企業に向くのが、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社の電子印鑑GMOサインです。立会人型(契約印タイプ)と当事者型(実印タイプ)の両方に対応し、両者を組み合わせたハイブリッド署名も選べます。
電子契約に加え、文書検索・フォルダ管理・スキャン文書の管理・契約更新通知といった文書管理機能を備えており、締結後の一元管理と更新漏れ防止まで1つでカバーできます。電子署名法についてデジタル庁・法務省・財務省の3省庁から適法性の確認を得ているほか、電子帳簿保存法にもJIIMA認証で対応しており、官公庁・自治体・上場企業での利用実績があります。
3. Contract One(Sansan株式会社)

社内に散らばった既存の紙契約の移行負担を抑えたい企業に向くのが、Sansan株式会社のContract One(コントラクトワン)です。紙・PDF・電子契約など形式を問わず契約書を取り込み、名刺管理事業で培ったデータ化の仕組みでデータ化して、全社で使える契約データベースを構築します。過去に取り交わした紙契約書のスキャン代行を初期費用に含んでいるのも特徴です。
基本契約と個別契約・覚書の親子関係を自動で判定して紐づける契約ツリーや、社名変更・企業統合があっても取引先ごとに履歴を追える名寄せを備え、更新期限が近づくとアラートで知らせます。電子帳簿保存法に対応するJIIMA認証も取得しています。既存の紙・PDFを取り込んで探せる状態にしたい企業に向く「取り込み型」の代表格です。
4. TOKIUM契約管理(株式会社TOKIUM)

紙の契約書を郵送するだけで、スキャンから原本保管まで任せられるのが、株式会社TOKIUMのTOKIUM契約管理です。製本されたままの状態で非破壊スキャンを代行し、スキャン後の原本保管まで引き受けるため、社内に大量の紙契約書を抱え、その保管と紛失防止に悩む企業の負担を肩代わりします。
AI-OCRで契約書の全文をデータ化したうえで、取引先名・契約期間・自動更新の有無などの管理項目を生成AI(GPT-4o)が自動抽出し、台帳作成の手入力を軽減します。更新期限のアラートや電子帳簿保存法に対応した保管も備えます。紙原本そのものを物理的に一元化したい企業に向く「原本保管型」の代表です。
5. 契約管理DX ConPass(株式会社日本パープル)

契約管理DX ConPass(コンパス)は、機密文書の保管・廃棄事業を手がける株式会社日本パープルが提供する契約書管理特化型のクラウドサービスです。紙の契約書をPDF化してアップロードすると、AIが契約書名・相手先・契約日などの管理項目を読み取り、契約台帳を自動生成します。紙契約と電子契約の双方を一元管理でき、更新期限のアラートや全文検索にも対応します。
機密文書保管の事業基盤を持つ強みを生かし、原本のセキュリティ保管庫での保管、スキャン、データ入力、原本の廃棄までをワンストップで代行できる点が、ソフトウェア専業の契約管理ツールにはない特徴です。クラウドサインやGMOサインなど主要な電子契約サービスとも連携し、社内に散在する紙の契約書を物理・データの両面で一元化したい企業に向きます。
6. WAN-Sign(株式会社NXワンビシアーカイブズ)

WAN-Sign(ワンサイン)は、文書保管・文書管理を本業とする株式会社NXワンビシアーカイブズが、GMOインターネットグループと共同開発した電子契約・契約管理サービスです。電子証明書による当事者型署名と、メール認証による立会人型署名の両方に対応し、両者を組み合わせたハイブリッド締結もできます。
文書保管を本業とする背景を生かし、電子契約だけでなく、書面契約(紙原本)や他社で締結したPDFも含めて一元管理できるのが特徴です。紙の原本は情報管理センターでの物理保管にも対応します。今後の契約の電子化と、既存の紙原本の保管の両方を1つのサービスで橋渡ししたい企業に向きます。金融機関・官公庁・医療機関など、内部統制やセキュリティ要件の高い領域での導入を主なターゲットとしています。
ここまで紹介したサービスを含め、契約書管理システムをタイプ別の選び方や料金、電子帳簿保存法への対応まで比較して検討したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
まとめ
契約書を紛失しても、原本を失っただけで契約が無効になることはありません。まずは落ち着いて社内を探し、見つからなければ相手方からの写しの取得や認証、確認書・再締結といった挽回策を、自社の状況に合わせて選びます。写しや再作成時の印紙税・証拠力の扱いを押さえ、相手方への連絡と社内報告を早めに進めることが、リスクを最小限に抑える近道です。
そのうえで、二度と同じことを繰り返さないために、契約書を一元管理し、今後の契約は電子化するなどの再発防止に取り組むことをおすすめします。自社に合った契約管理・電子契約サービスを比較して、紛失しない仕組みづくりを始めてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 契約書の原本を紛失すると、契約は無効になりますか?
A. 契約書の原本を紛失しても、いったん成立した契約が無効になることはありません。契約は当事者の合意によって成立し、原則として書面の作成を必要としないためです(民法第522条)。契約書は「契約が成立した事実を示す証拠」であって、契約の効力そのものの条件ではありません。
ただし、保証契約など法律で書面が効力の要件とされている契約(要式契約)は例外なので、自社のケースが該当しないかは確認しておくと安心です。
出典・参考資料(1件)
Q. 契約書の「原本」「謄本」「写し(コピー)」は何が違いますか?
A. 原本は署名・押印のある正規の契約書そのもの、謄本はその内容を証明して作られた写し、単なる写し(コピー)は複写しただけで証明のないものを指し、証拠力の強さがこの順に異なります。
署名・押印のある原本は成立の真正が推定され(民事訴訟法228条4項)、当事者が「原本と相違ない」旨を証明した認証のある謄本は原本に準じて訴訟に提出できます。一方、証明のない単なるコピーは契約内容の確認には役立ちますが、証拠力には限界があります。
Q. 相手方から契約書のコピーをもらえば、自社の原本の代わりになりますか?
A. 相手方からコピーを受け取っても、失った紙の原本そのものが復元されるわけではありません。ただし、相手方が保管する原本のコピーは契約内容を確認する重要な資料になり、「原本と相違ない」旨の証明(認証)を付してもらえば証拠力を高められます。受け取る際は全ページ・署名押印欄・別紙・変更契約書が揃っているかを確認し、社内では「相手方保管原本の写し」と分かる形で管理しておきましょう。
Q. 契約書を紛失すると、訴訟のときに不利になりますか?
A. 署名・押印のある原本を失ってコピーしか出せない状態では、相手方が文書の成立を争ったときに、真正であることを立証しにくくなります。民事訴訟では、文書の提出は原本・正本・認証のある謄本で行うのが原則で(民事訴訟規則143条)、単なるコピーはこれに含まれません。相手方の「原本と相違ない」旨の証明を付して認証のある謄本の形にしておくと、証拠として扱いやすくなります。
出典・参考資料(2件)
Q. なくした契約書と同じ内容を印刷して押印し直せば、元の原本として使えますか?
A. 新しく印刷して署名・押印した文書は、紛失した過去の原本そのものではなく、あくまで新たに作成した別の文書です。同じ内容で作り直すこと自体は有効ですが、契約日をさかのぼって記載する「バックデート」は文書の信頼性を損ない、かえってトラブルの原因になります。作成日は実際の日付を記し、元の契約との関係(いつ締結した契約の内容確認か)を明確にしておきましょう。
Q. 契約書を再作成すると、収入印紙(印紙税)は必要になりますか?
A. 単純にコピーを取るだけなら印紙税はかかりませんが、契約の成立を証明する目的で新たに文書を作成する場合は課税対象になり得ます。国税庁の取扱いでは、当事者の署名・押印や「原本と相違ない」旨の証明のあるコピーは課税対象、証明のない単なる写しは非課税と線引きされています。たとえば業務委託契約や取引基本契約などの継続的取引の基本となる契約書は第7号文書(記載金額にかかわらず4,000円)にあたります。
出典・参考資料(1件)
Q. 契約書を紛失したことを、相手方に伝えるべきですか?
A. 相手方から写しの提供を受ける必要がある場合は、紛失した事実を伝え、対象の契約書を特定して依頼するのが基本です。紛失は誰にでも起こりうることで、隠すより早めに動くほうがリスクを抑えられます。
依頼の際は「いつ締結した、どの契約書か」を明示し、全ページ・署名押印欄・別紙・変更契約書まで含めて提供してもらいます。契約内容をめぐる問題がすでに生じている場合は、相手方とのやり取りを記録として残しておきましょう。
Q. 自社と相手方の双方が契約書を紛失している場合はどうすればよいですか?
A. 双方が原本を失っている場合は、まずPDF・見積書・発注書・メール・請求書・支払記録などから契約内容を確認します。双方の認識が一致していれば、現在の契約内容を確認する確認書や覚書を作成するか、同じ内容で契約書を締結し直す方法を検討します。いずれも過去の原本を復元するものではないため、作成日と元の契約との関係を明確に記しておきましょう。
Q. 契約書はどのくらいの期間、保管する義務がありますか?
A. 契約書は税法上、原則として7年間の保存が必要で、欠損金の繰越しの適用を受ける事業年度では10年間に延長されます。法人税法施行規則は青色申告法人の帳簿書類の保存対象に契約書を含め、原則7年間の保存を求めています(同規則第59条)。
会社法でも、事業に関する重要な資料に該当する契約書は10年間の保存が求められます(会社法第432条第2項)。紙のまま各部門に分散していると保存義務を満たしにくくなるため、一元管理が有効です。
出典・参考資料(2件)
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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