取引先に何度電話してもつながらず、メールも郵便も宛先不明で戻ってくる。支払期日はとうに過ぎ、売掛金の回収の見込みが立たない。こうした状況で最初に頭をよぎるのが、「この売掛金を貸倒損失として損金に計上できるのか」という疑問ではないでしょうか。
結論からいえば、取引先と連絡が取れないという事実だけでは、その債権をただちに貸倒損失にはできません。ただし、売掛債権であれば取引停止から1年以上が経過することで損金計上できる道があり、資産状況から全額回収できないことが明らかな場合にも計上が認められます。どの要件に当てはまるかで、計上できる時期も残す金額も変わります。
本記事では、連絡が取れない取引先の売掛金を貸倒損失にできるかの判断基準を、法人税基本通達の3つの類型に沿って解説します。要件・計上時期・対象になる債権を一覧で整理し、税務調査で否認されないための証拠の残し方や、損金計上の前に試したい回収手段までまとめました。あわせて、こうした未回収を繰り返さないための請求・督促・債権保証サービスも紹介します。
目次
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【結論】取引先と連絡が取れない売掛金は貸倒損失にできるのか
まず、多くの人が誤解しやすい点をはっきりさせます。取引先と連絡が取れなくなっただけでは、その売掛金をただちに貸倒損失として損金に算入することはできません。貸倒損失が認められるのは、法人税基本通達が定める3つの類型のいずれかに当てはまる場合に限られます。
連絡が取れない取引先の売掛金でまず検討したいのは、次の2つの道です。自社のケースがどちらに近いかを、以下の順で確認してください。
- 形式上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-3):相手が継続的に取引していた売掛先で、取引を停止してから1年以上が経過している場合。売掛債権に限り、備忘価額を残した残額を損金にできます。全額が回収できないことの立証までは求められないため、連絡が取れない売掛金では最初に検討したい現実的な選択肢です。
- 事実上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-2):債務者の資産状況・支払能力からみて、その全額が回収できないことが明らかになった場合。1年を待たずに計上できますが、「全額回収不能が明らか」といえる状況と、それを裏づける資料が必要です。
会社更生や債権放棄などによる法律上の貸倒れ(同9-6-1)もありますが、これらは相手方への手続きや書面通知が前提となるため、そもそも連絡が取れない相手には通常使えません。連絡不通のケースでは、上の2つ、とりわけ売掛債権に使える9-6-3を軸に検討することになります。
ここまでの判断の流れは、次の図のように整理できます。

3つの類型の要件は、国税庁のタックスアンサーでも次のように整理されています。
出典・参考資料(1件)
- 出典:No.5320 貸倒損失として処理できる場合|国税庁タックスアンサー(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5320.htm)
貸倒損失とは(3つの類型の全体像)
貸倒損失とは、回収できなくなった売掛金や貸付金などの金銭債権を、損金(税務上の費用)として処理することをいいます。ただし、経営者や経理担当者が「もう回収できない」と判断しただけでは認められず、法人税基本通達が定める客観的な要件を満たす必要があります。
認められる形は、法律上の貸倒れ(9-6-1)・事実上の貸倒れ(9-6-2)・形式上の貸倒れ(9-6-3)の3類型です。連絡が取れない売掛金がどの類型に当てはまるかで、計上できる時期・金額・対象になる債権が変わります。次章で、要件・計上時期とあわせて具体的に見ていきます。
【類型別】貸倒損失の要件・計上時期・対象債権
ここからは、3つの類型それぞれの要件・計上時期・損金経理の要否を整理します。まず全体像を一覧で示し、自社のケースを当てはめてください。
| 類型 | 主な要件 | 計上時期 | 損金経理 | 対象債権 |
|---|---|---|---|---|
| 形式上の貸倒れ(9-6-3) | 取引停止から1年以上経過(担保物がない場合)など | 要件を満たした事業年度 | 必要(備忘価額を残した残額) | 売掛債権のみ(貸付金は対象外) |
| 事実上の貸倒れ(9-6-2) | 資産状況・支払能力からみて全額回収不能が明らか | 回収不能が明らかになった事業年度 | 必要 | 金銭債権全般 |
| 法律上の貸倒れ(9-6-1) | 更生・再生・特別清算・債権者集会の決定・書面による債務免除など | その事実が発生した事業年度 | 不要(損金算入) | 金銭債権全般 |
※「損金経理」とは、決算で費用として計上する会計処理をいいます。「損金経理が必要」な類型は、決算で貸倒損失を計上して初めて損金に認められます。
形式上の貸倒れ(9-6-3):取引停止から1年以上経過した売掛金
連絡が取れない売掛金でまず検討したいのが、この形式上の貸倒れです。法人税基本通達9-6-3は、売掛債権について次の事実が生じた場合に、備忘価額を控除した残額を損金経理により貸倒れとできると定めています。
債務者について次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対して有する売掛債権(売掛金、未収請負金その他これらに準ずる債権をいい、貸付金その他これに準ずる債権を含まない。(略))について法人が当該売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理をしたときは、これを認める。
出典:法人税基本通達9-6-3|国税庁
(1) 債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上経過した場合(当該売掛債権について担保物のある場合を除く。)
ここで押さえておきたい要点は3つあります。第1に、対象は売掛債権に限られ、貸付金は含まれません。同じ相手への債権でも、商品やサービスの代金である売掛金は対象になりますが、お金を貸した貸付金はこの規定を使えません。
第2に、「1年以上」の起算点は、取引を停止した時・最後の弁済期・最後の弁済の時のうち、最も遅い時です。取引停止を明確に宣言していなくても、相手が音信不通になって取引が自然に途絶えた場合は、通常は最後の入金や最後の納品の日を起点に1年を数えることになります。取引履歴でその時期を確認してください。
第3に、この規定は継続的に取引していた相手が対象で、不動産取引のようにたまたま一度だけ取引した相手の売掛債権には適用されません。
担保物がある場合はこの規定の対象から外れる点にも注意が必要です。要件を満たせば、全額が回収できないことの立証までは求められないため、連絡が取れない売掛金では取り組みやすい類型といえます。
計上する事業年度についても、次の事実上の貸倒れ(9-6-2)とは扱いが異なります。形式上の貸倒れは損金経理をした事業年度に計上する形なので、1年経過の要件を満たしたあと、決算で貸倒損失を計上した事業年度で処理できます。
事実上の貸倒れ(9-6-2):全額回収不能が明らかな場合
取引停止から1年を待たずに計上したい場合や、貸付金など売掛債権以外の債権が対象の場合は、事実上の貸倒れを検討します。法人税基本通達9-6-2は次のように定めています。
法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。この場合において、当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないものとする。
出典:法人税基本通達9-6-2|国税庁
この類型のポイントは、「その全額が回収できないことが明らか」である点です。一部でも回収の見込みがある場合は対象にならず、債権の全額が回収不能であることが求められます。連絡が取れないという事実に加えて、相手に資産がなく支払能力もないことを示せる状況が必要です。
連絡が取れない相手でも、登記情報の変更(解散・清算の登記など)、破産や清算を示す官報の記載、現地を訪問して営業の実態がないことの確認などから、支払能力がないことを裏づけられる場合があります。こうした資料は、後述する証拠として残しておきましょう。
計上時期にも注意が必要です。この規定は「回収できないことが明らかになった事業年度」に計上すると定められ、後から利益が出た年度に遡ることはできません。担保物があるときは処分した後でなければ計上できず、保証人がいる場合は保証債務を履行した後でなければ貸倒れの対象にできない点も押さえておきましょう。
法律上の貸倒れ(9-6-1):連絡不通では通常使えない
法律上の貸倒れは、会社更生法・民事再生法の認可決定、特別清算に係る協定の認可、債権者集会の協議決定、または書面による債務免除などで、債権が法的に切り捨てられた場合に認められます。この場合は損金経理をしなくても、その事実が発生した事業年度に損金の額へ算入されます。
ただし、これらはいずれも法的手続きや相手方への書面通知が前提です。書面による債務免除も、相手に免除の書面が届くことが必要になります。連絡が取れず所在も不明な相手には、これらの手続きを進めること自体が難しいため、法律上の貸倒れは連絡不通のケースでは通常使えないと考えておくとよいでしょう。
貸倒損失の仕訳(貸倒引当金の有無・備忘価額の扱い)
ここでは、実際の仕訳を確認します。貸倒損失の仕訳は、貸倒引当金を設定しているかどうかで変わります。
貸倒引当金を設定していない場合は、回収不能となった債権をそのまま貸倒損失として計上します。たとえば売掛金50万円が回収不能になったケースでは、借方に「貸倒損失 500,000円」、貸方に「売掛金 500,000円」を計上します。
貸倒引当金を設定している場合は、まず引当金を取り崩して充当し、引当額を超える分を貸倒損失とします。売掛金50万円に対して貸倒引当金を30万円設定していたなら、借方に「貸倒引当金 300,000円」「貸倒損失 200,000円」、貸方に「売掛金 500,000円」となります。
形式上の貸倒れ(9-6-3)で処理する場合は、通達が「備忘価額を控除した残額」を損金経理すると定めているため、債権の全額ではなく備忘価額を残す必要があります。備忘価額は債権が帳簿上まだ存在することを示すための金額で、実務上は1円とするのが一般的です。
たとえば売掛金50万円なら、貸倒損失として499,999円を計上し、売掛金1円を帳簿に残します。通達自体が残す金額を1円と定めているわけではなく、備忘価額を残すことを求めている点に注意してください。
いずれの類型でも、消費税の課税取引にかかる売掛金が貸倒れとなった場合は、貸倒れに係る消費税額の控除という仕組みにより、貸倒れが生じた課税期間の売上に対する消費税額から、その貸倒れに含まれる消費税相当額を差し引ける場合があります。適用の可否や具体的な処理は取引の状況によって異なるため、顧問税理士にも確認しておくと安心です。
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税務調査で否認されないための立証責任と証拠保全
ここでは、計上した貸倒損失が税務調査で否認されないための備えを解説します。見落とされがちですが、貸倒損失をめぐっては、その事実を裏づける立証の負担が実質的に納税者側にある点を理解しておく必要があります。
貸倒損失は所得計算上の減算項目で、本来はその不存在を課税庁が立証するのが原則です。しかし裁判例では、納税者が貸倒れの発生を合理的に推認させる立証をしなければ、事実上その不存在が推定されると判断されています(仙台高裁平成8年4月12日判決)。貸倒れの証拠は納税者側が保持しているため、回収不能を示す資料がないと貸倒損失は認められにくいのです。
そこで、連絡が取れなくなった経緯や回収を試みた記録を、証拠として残しておくことが重要になります。法律で必要書類が定められているわけではありませんが、否認されないために残しておきたい証拠には、たとえば次のようなものがあります。
- 督促状・催告書の控え、内容証明郵便の控えと配達結果(宛先不明で返送された郵便物を含む)
- 電話・メールで連絡を試みた日時と結果の記録
- 取引先の所在地を訪問した際の現地確認の記録
- 取引先の登記情報や、破産・清算などがわかる官報の記載
- 取引契約書・注文書・請求書など、債権の発生を示す書類
とくに形式上の貸倒れ(9-6-3)では取引停止時期や最後の弁済時期が、事実上の貸倒れ(9-6-2)では全額回収不能が明らかになったことが、それぞれ判断の分かれ目になります。その時期や事実を後から説明できるよう、日付のわかる資料をそろえておきましょう。
あわせて、税務調査で否認されやすい典型的なケースも押さえておきましょう。次のような計上は、ここまで見てきた各類型の要件や対象債権を満たしていないと判断されやすいものです。
- 一部でも回収の見込みが残る段階で、事実上の貸倒れ(9-6-2)として計上しているケースです。9-6-2はその全額が回収できないことが明らかな場合に限られ、一部でも回収の余地があると認められにくくなります。
- 担保物や保証人があるのに、担保を処分せず、保証債務の履行も求めないまま9-6-2で計上しているケースです。通達は、担保物は処分した後、保証がある場合は保証債務を履行した後でなければ損金経理できないと定めています。
- 形式上の貸倒れ(9-6-3)の「1年以上」を、最初の支払期日から数えているケースです。起算点は取引停止の時・最後の弁済期・最後の弁済の時のうち最も遅い時で、ここを取り違えると1年の経過が認められません。
- 貸付金など売掛債権以外の債権に9-6-3を適用しているケースです。9-6-3の対象は売掛債権に限られ、貸付金は含まれません。
- 9-6-3で備忘価額を残さず、債権の全額を損金経理しているケースです。通達は、備忘価額(実務上は1円とするのが一般的)を控除した残額の損金経理を求めています。
- 継続的な取引ではなく、一度だけの取引で生じた売掛債権に9-6-3を適用しているケースです。9-6-3は、継続していた取引が停止したことを前提としています。
いずれも、自社のケースがどの類型に当てはまるかを、要件と対象債権に照らしてひとつずつ確認すれば防げます。計上時期の判断に迷うときは、決算を締める前に顧問税理士に確認しておくと確実です。
貸倒損失として落とす前に試みたい回収手段と時効の注意
ここでは、損金計上の前に検討したい回収手段を整理します。貸倒損失として処理する前に、まだ取れる回収手段が残っていないかを確認しておくと、回収できた場合の損失を減らせます。
一般的な回収手段は、負担の軽いものから順に次のように並びます。
- 催告・督促状の送付:まずは書面や電話で支払いを求めます。
- 内容証明郵便による催告:いつ・どんな内容の請求をしたかを郵便局が証明する方法で、時効の完成を一時的に猶予する効果もあります。
- 支払督促:裁判所を通じて支払いを求める簡易な手続きです。ただし後述のとおり、相手の所在が不明な場合は利用できません。
- 訴訟:判決を得て、強制執行の根拠となる債務名義を取得します。
ここで、連絡が取れない相手ならではの注意点があります。支払督促は、相手に公示送達によらずに書類を送達できる場合に限って利用できる手続きです(民事訴訟法382条ただし書)。相手が所在不明で通常の方法では書類が届かない場合、支払督促は使えません。
その場合でも、訴訟であれば、相手の住所や居所がわからないときに裁判所の掲示などで送達したものとみなす「公示送達」(民事訴訟法110条)により、手続きを進めて判決を得ることが可能です。所在不明の相手には、支払督促ではなく訴訟と公示送達によるルートを検討することになります。
あわせて時効にも注意してください。売掛金などの債権は、権利を行使できることを知った時から5年で時効により消滅するのが原則です(民法166条)。回収を後回しにしているうちに時効が完成すると、回収も貸倒損失としての処理も難しくなります。回収の見込みを見極めつつ、必要な手続きは早めに進めましょう。
実際の回収は、書面での催告から支払督促・訴訟・強制執行まで段取りが多く、相手の状況によって取れる手が変わります。売掛金回収の初動から法的手段・時効・回収できないときの対処までの具体的な進め方は、以下の記事で詳しく解説しています。
出典・参考資料(2件)
- 出典:民事訴訟法 第382条(支払督促の要件)|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109)
- 出典:民法 第166条(債権等の消滅時効)|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)
【解決策】売掛金の未回収・滞留を防ぐサービス
ここからは、同じような未回収・滞留を繰り返さないための手段を紹介します。連絡が取れなくなってから対応するのは負担が大きく、貸倒損失として処理できても回収できた場合の利益は戻りません。そこで有効なのが、請求・督促・債権保証を仕組みとして外部に任せる方法です。
手段は大きく2種類に分かれます。1つは、与信審査から請求・回収・保証までを代行して未回収リスクそのものを移転するタイプで、これは将来の滞留・貸倒れの予防に効きます。もう1つは、督促の連絡(架電・SMS)を自動化するタイプで、こちらは今まさに滞っている債権の督促・回収にも活用できます。
ここでは、役割の異なる代表的なサービスを取り上げます。同種のサービスをより広く比較したい場合は、後述の関連記事もあわせてご覧ください。まず、主なサービスを比較します。
| サービス名 | 請求まるなげロボ | DHKクラウドオートコール | RP掛け払い | 債権回収ロボ |
|---|---|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社ROBOT PAYMENT | 株式会社電話放送局 | 株式会社ROBOT PAYMENT | 株式会社ROBOT PAYMENT |
| 主な役割 | 請求代行+売掛金保証 (与信〜請求・回収・消込・督促) | 督促架電の自動化 (オートコール・IVR・SMS) | 掛け払い(後払い)決済代行+売掛金保証 | 督促・回収業務の自動化 (多チャネル督促) |
| 売掛金保証 | ●適格・与信通過債権を100%保証 | × | ●適格・与信通過債権を100%保証 | × |
| 与信審査 | ●3営業日内で代行 | × | ●独自基準で代行 | × |
| 督促の手段 | メール・電話・ 弁護士法人による対応 | オートコール(自動音声)・SMS | メール・電話による対応 | メール・SMS・ オートコール(IVR) |
| 料金の考え方 | 月額利用料+手数料1.0%〜 (商材・金額により個別算出) | 初期・月額5万円〜 +応答従量(固定21円/携帯32円) | 要問い合わせ (手数料は公式表記に幅あり) | 要問い合わせ |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 | オンライン相談を予約 |
※2026年9月時点の各社公式情報にもとづきます。料金・保証条件は変動するため、最新の内容は各社の公式資料でご確認ください。
1. 請求まるなげロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

企業間取引の請求業務を丸ごとアウトソースできるのが、請求まるなげロボです。与信審査・請求書の発行と送付・代金回収・入金消込・督促までをROBOT PAYMENTが代行し、自社の審査を通過した適格債権については売掛金を100%保証します。未回収リスクそのものを引き受けてもらえるため、取引先と連絡が取れなくなるような事態が起きても、保証対象であれば損失を回避できます。
与信を通過しなかった取引先分も同じプラットフォーム上で請求書発行・送付・自動消込を管理でき、請求業務全体を一元化できるのも特徴です。手数料は公式サイトで1.0%〜と案内されていますが、実際の料率は取扱商材や金額により個別に算出されるため、導入時に見積もりで確認するとよいでしょう。
2. DHKクラウドオートコール(株式会社電話放送局)

株式会社電話放送局が提供するDHKクラウドオートコールは、システムが自動で一斉に電話をかけるクラウド型のオートコール・IVR(自動音声応答)サービスです。あらかじめ用意した発信リストに対して合成音声や録音音声で入金案内・督促を流せるため、未入金者への連絡を人手をかけずに大量・定時に実施できます。在宅率の高い時間帯に一斉発信することで、そもそも「連絡が取れない」件数を減らす狙いに向いています。
1時間に5,000件以上の自動架電に対応し、料金は月額5万円〜(月間1,000件までの応答を含む)に応答分の従量課金を組み合わせた体系です。応答しなかった架電には課金されないため、全件でコストがかかる郵送督促と比べ単位あたりの費用を抑えやすい設計です。運営会社はプライバシーマークとISMS(ISO/IEC 27001)を取得しています。
督促や入金の連絡を自動化するうえで何を重視しているかについて、DHKクラウドオートコールを提供する株式会社電話放送局の担当者は次のように述べています。

入金案内や督促は、伝える内容が定型化しやすい一方で、案内の仕方によってはトラブルや苦情につながりやすい業務です。入金コールは人が案内する場合と比べて、トラブルや苦情を軽減できる側面もあります。だからこそ、まずは“自動化しても顧客体験を損ねにくい設計”をすることが大切だと考えています。
3. RP掛け払い(株式会社ROBOT PAYMENT)

企業間取引の掛け払い(後払い)を代行する決済サービスが、RP掛け払いです。取引先には従来どおり後払いで販売しながら、与信審査・請求書発行・代金回収・入金消込・督促までをROBOT PAYMENTに任せられます。与信を通過した適格債権は、入金遅延や貸し倒れが発生しても100%保証されるため、自社が未回収リスクを負わずに掛け取引を続けられる点が強みです。
利用企業は毎月の請求情報をアップロードするだけで、請求から回収までの業務が完結します。法人間取引が対象で、対応する決済手段は銀行振込・口座振替・クレジットカードです。料金は公式サイト上で複数の表記があるため、初期費用・月額・手数料率は問い合わせで確認することをおすすめします。
4. 債権回収ロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

未入金の督促・回収業務を自動化するのが、債権回収ロボです。メール・SMS・オートコール(自動音声)といった複数のチャネルを組み合わせた督促シナリオを設計し、債務者の属性や債権額に応じて自動で実行します。督促の状況や受信・返信の履歴を一元管理できるため、担当者に依存しがちで心理的負担も大きい督促業務を標準化できます。
2026年3月に提供が始まった比較的新しいサービスで、決済手段や過去の支払い履歴をもとに督促のタイミングを最適化する技術について特許を出願しています。同社の「請求管理ロボ」と連携して請求から督促・回収まで一元管理できるほか、単独での導入も可能です。料金は公式サイトに具体額の記載がないため、見積もりでの確認が必要です。
また、以下の記事では売掛金回収代行サービスについて、依頼先タイプ別の選び方や費用相場、督促の自動化までを詳しく比較しています。ここで紹介した以外のサービスも含めて、自社に合う回収・保証の仕組みを検討したい方はあわせてご覧ください。
まとめ
取引先と連絡が取れないという事実だけでは、その売掛金をただちに貸倒損失にはできません。連絡が取れない売掛金では、まず売掛債権に使える形式上の貸倒れ(9-6-3)で取引停止から1年以上経過しているかを確認し、全額回収不能が明らかなら事実上の貸倒れ(9-6-2)も検討します。計上時期や必要書類は類型ごとに異なる点にも注意しましょう。
また、貸倒損失は納税者側が回収不能を合理的に示せないと否認されやすいため、連絡を試みた記録や回収努力の証拠を残しておくことが欠かせません。損金計上の前に取れる回収手段を確認しつつ、同じ未回収を繰り返さないために、請求・督促・債権保証を仕組みとして外部に任せる方法も検討してみてください。具体的な処理は、自社の状況に応じて顧問税理士にも相談しながら進めてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 貸倒損失と貸倒引当金は何が違いますか?
貸倒損失と貸倒引当金の違いは、実際に回収不能が確定した債権を損金として処理するのが貸倒損失、将来の貸倒れに備えてあらかじめ見積り計上しておくのが貸倒引当金という点にあります。貸倒損失は3類型(法人税基本通達9-6-1〜9-6-3)の要件を満たして計上できる確定的な損失です。
一方の貸倒引当金は、回収不能が確定する前に予防的に設定する見積りです。すでに引当金を設定している債権が実際に貸倒れになったときは、まず引当金を取り崩して充当し、それを超える分を貸倒損失として計上します。
Q. 取引先が個人事業主でも、貸倒損失の要件は同じですか?
取引先が個人事業主でも、貸倒損失を計上できるかの判断基準(法人税基本通達の3類型)は、相手が法人の場合と変わりません。要件は債務者の資産状況・支払能力や取引停止からの経過期間で判断され、相手が個人か法人かによって変わらないためです。形式上の貸倒れ(9-6-3)を使えるのは債権が売掛債権の場合に限られ、貸付金が対象外となる点も個人事業主で同じです。
Q. 時効が過ぎて消滅した売掛金は、貸倒損失にできますか?
時効によって法的に消滅した売掛金は、債権そのものが消滅するため、貸倒れとして損金処理の対象と考えられます。ただし、本来は回収不能が明らかになった時点で事実上の貸倒れ(9-6-2)として処理すべきだったと見られる場合など、計上時期をめぐって税務上の論点になることがあります。
売掛金などの債権は、権利を行使できると知った時から原則5年で時効消滅します(民法166条)。時効が完成すると回収も難しくなるため、完成前に内容証明郵便による催告や訴訟で手を打ち、処理の要否・時期は顧問税理士に確認してください。
Q. 貸倒損失として処理した売掛金を、後から回収できたらどうなりますか?
貸倒損失として処理した売掛金を後から回収できた場合は、回収した金額を、その回収した事業年度の益金(償却債権取立益)として計上します。過去に計上した貸倒損失を遡って取り消すのではなく、回収できた年度の収益として処理するのが原則です。回収の見込みが残る段階で急いで計上すると、こうした戻し入れの手間が後から生じます。損金計上の前に取れる回収手段を確認しておきましょう。
Q. 子会社やグループ会社への売掛金も貸倒損失にできますか?
子会社やグループ会社への売掛金も、3類型の要件を満たせば貸倒損失にできますが、実質的に相手を支援する目的とみなされると寄附金と認定されるおそれがあります。回収できる余地があるのに債権を放棄したと判断されると、貸倒損失ではなく寄附金として扱われ、損金算入が制限される場合があるためです。関連会社への債権を処理するときは、回収不能であることを通常の取引先以上に丁寧に裏づけておく必要があります。
Q. 貸倒損失を計上するには、どこまで回収努力をすればよいですか?
回収努力に法律上の明確な基準はありませんが、督促状や内容証明郵便の控え、連絡を試みた記録など「回収を試みたが取れなかった」ことを示す証拠を残しておくことが重要です。貸倒れの立証責任は実質的に納税者側にあるとされ(仙台高裁平成8年4月12日判決)、回収不能を合理的に示せないと税務調査で否認されやすいためです。形式上の貸倒れ(9-6-3)では取引停止や最後の弁済の時期がわかる資料も残しましょう。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















