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組込ウォレットとは?暗号資産型と組込型決済型の違い・仕組み・国内サービスをわかりやすく解説

組込ウォレットとは?のサムネイル画像

自社のアプリやサービスに「ウォレット機能を載せたい」と検討を始めると、まず出てくるのが「組込ウォレット」という言葉です。ところが検索してみると、暗号資産(仮想通貨)を扱う話と、自社ポイントやチャージ残高を扱う決済の話が入り混じっていて、自分が調べるべきものがどちらなのか分かりにくいと感じた方も多いはずです。

組込ウォレット(エンベデッドウォレット)とは、ひとことで言えば、ユーザーが別のウォレットアプリを導入しなくても、自社のアプリ・サービスの中で資産や残高を保管・送受信できるウォレット機能を、外部から組み込んで提供する仕組みです。この考え方は「組込型金融(Embedded Finance)」の一部として整理されています。

そして「組込ウォレット」には、大きく分けて2つの意味があります。ひとつは暗号資産やNFTを扱うウォレット機能をアプリに組み込むタイプ、もうひとつは自社ポイントやチャージ残高といった決済用の価値を扱うタイプです。この2つは仕組みも関わる法規制も違うため、混同したままでは検討が進みません。

この記事では、組込ウォレットの定義から2つの意味の切り分け、埋め込む目的、噛み砕いた仕組み、国内の代表的な提供サービス、自前開発と調達の違い、導入前に押さえておきたい検討観点までを整理します。自社のケースがどちらのタイプなのかを見極め、次の比較検討に進むための土台にしてください。

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組込ウォレットとは?

組込ウォレット(エンベデッドウォレット)とは、ユーザーが専用のウォレットアプリを別途インストールしなくても、自社のアプリ・サービスの中に資産や残高の保管・送受信ができるウォレット機能を埋め込んで提供する仕組みを指します。利用者から見ると、いつも使っているアプリの中でそのまま完結するため、外部アプリへ移動する手間がありません。

この「金融機能をアプリやサービスに組み込む」という考え方は、より広くは組込型金融(Embedded Finance)と呼ばれます。組込型金融は、これまで金融機関のチャネルでしか使えなかった機能を分解し、APIの形で一般企業のアプリやサービスに組み込む発想で、組込ウォレットはその金融機能のひとつという位置づけです。

組込型金融(Embedded Finance)とは、従来、金融機関のチャネルを通じてのみ提供していた金融機関機能を分解し、APIの形で行政や一般企業のアプリやwebサービスに提供して、サービスに組み込まれた形でシームレスに金融機能を利用することでユーザー体験を向上するものです。

出典:国内初となる共同利用型の地域金融機関向け組込型金融基盤と地域DXアプリを提供|NTTデータ・インフキュリオン・DearOne(2023年6月14日)

組込ウォレットは、「次世代の価値の入り口」といった漠然としたものではなく、自社サービスの中に資産・残高を扱う機能を組み込み、ユーザーがアプリを離れずに操作できるようにする、具体的な仕組みだと捉えると分かりやすくなります。

組込ウォレットの2つの意味|暗号資産型と組込型決済型の違い

ここからは、「組込ウォレット」という言葉が指す2つのタイプについて解説します。検索して情報が噛み合わないと感じるのは、この2つが同じ言葉で語られているためです。自社が扱いたいのがどちらなのかを、先に切り分けておきましょう。

ひとつは、暗号資産・NFT・独自トークンといったブロックチェーン上の資産を扱う「暗号資産ウォレットSDK型(A型)」です。もうひとつは、自社ポイントやチャージ残高、ハウスコイン(自社発行の電子的な価値)など、法定通貨建ての決済用の価値を扱う「組込型決済型(B型)」です。同じ「ウォレットをアプリに組み込む」でも、扱う資産・鍵の考え方・関わる法規制が異なります。

組込型金融という大枠の中での位置づけを整理すると、次のようになります。

組込ウォレットの全体像を示した入れ子の図解。大枠の組込型金融(Embedded Finance)の中に組込ウォレットがあり、それが扱う価値によってA型(暗号資産ウォレットSDK型:暗号資産・NFT・独自トークンを扱い秘密鍵の管理が前提)とB型(組込型決済型:前払い残高・ポイント・ハウスコインを口座・残高で管理)に分かれることを表す
比較軸A型:暗号資産ウォレットSDK型B型:組込型決済・残高・ハウスコイン型
扱う価値暗号資産・NFT・独自トークン(ブロックチェーン上の資産)前払い残高・ポイント・自社発行の電子的な価値(法定通貨建て)
秘密鍵の考え方秘密鍵の管理が前提。ユーザー自身が持つ(非カストディ)か、事業者が預かる(カストディ)かを選ぶ秘密鍵という概念は基本的になく、口座・残高としてシステム側で管理する
主な用途Web3サービス、NFTの配布・受け取り、暗号資産の保管・送受信をアプリ内で完結アプリ内決済、自社ポイント経済圏、ハウスコイン、地域通貨
主に関わる法規制資金決済法上の「暗号資産」。事業者が資産・鍵を預かると暗号資産交換業に該当し得る資金決済法上の「前払式支払手段」など(設計により資金移動業や電子決済手段の類型もあり得る)
代表的なサービス例TORMO、Spize wallet、HashPort Studio などWallet Station(地域金融機関向け組込型金融基盤)など

おおまかには、ブロックチェーン上の資産(暗号資産やNFT)を扱いたいならA型、自社の決済・ポイント・ハウスコインを扱いたいならB型が出発点になります。法規制の該当性は設計次第で変わるため断定はできませんが、まずこの切り分けができると、読むべき情報も相談すべき相手も絞り込めます。関わる法令の考え方は後半の「導入前に押さえておきたい検討観点」で改めて整理します。

この記事では、以降おもにA型(暗号資産ウォレットSDK型)を軸に、仕組みや提供サービスを解説します。ただしB型(組込型決済型)を検討している読者にも、次の一歩の当たりがつくようにします。

B型を検討している場合は、前払式支払手段の発行支援・資金移動業・決済代行といった決済領域のサービスが選択肢になります。選ぶときは「口座直結の決済か、プリペイド(チャージ残高)か」「対応する金融機関・加盟店網」「資金決済法上の登録・供託の要否」を軸に、決済系の提供事業者を調べるとよいでしょう。国内の代表例としては、後述する「Wallet Station」などが挙げられます。

なぜ自社サービスに組込ウォレットを埋め込むのか

なぜウォレット機能を外部アプリに任せず、自社サービスの中に埋め込むのでしょうか。理由は独立した複数のメリットというより、「ユーザーをアプリから離さない」という一続きの狙いに集約されます。

従来のように外部のウォレットアプリを別途用意させる方式では、ユーザーはアプリをインストールし、シードフレーズ(秘密鍵を復元するための単語列)を管理し、アプリ間を行き来する必要がありました。この過程で離脱が起きやすく、暗号資産やWeb3に不慣れな一般ユーザーほど途中でやめてしまいます。

組込ウォレットは、この一連の操作を自社アプリの中で完結させることで、オンボーディング(利用開始までの導入プロセス)の摩擦を減らします。

アプリ内で資産の受け取りや決済までを済ませられれば、ユーザーは目的の体験に集中でき、事業者にとっては自社サービス内にユーザーをとどめて継続利用や再訪につなげやすくなります。たとえばコインチェックが提供する「Coincheck OnRamp」は、事業者のゲームやアプリなどのWeb3プロダクトの中で、暗号資産の購入からウォレットへの送金までをそのまま完結できるサービスとして提供されています。

「Coincheck OnRamp」は、事業者が提供するゲームやアプリなどのweb3プロダクトにおいて、暗号資産の購入からweb3ウォレットへの送金までをシームレスに実現するサービスです。

出典:コインチェック、組込型の暗号資産購入サービス「Coincheck OnRamp」を提供開始|コインチェック

組込型金融の市場規模やオンボーディングの離脱率は各調査会社が数値を出していますが、発表元によって幅が大きく、単一の数値として断定できるものではありません。ここでは「アプリ内で完結させて離脱を減らす」という便益として捉え、実際の効果は導入時に自社の指標で検証することをおすすめします。

組込ウォレットの仕組み

ここからは、組込ウォレット(A型)がどのように動いているのかを、専門用語をその場で補いながら解説します。中心にあるのは「秘密鍵をどう管理するか」という論点です。

秘密鍵の管理方式(カストディ/非カストディ)

ブロックチェーン上の資産は、秘密鍵(資産を動かすための署名に使う鍵)を持つ人がその資産を操作できます。この鍵を誰が管理するかで、ウォレットは大きく2つに分かれます。事業者が利用者に代わって鍵を預かる方式を「カストディ(受託保管)」、利用者自身が鍵を管理し事業者が保持しない方式を「非カストディ(ノンカストディアル)」と呼びます。

カストディ方式は利用者の負担が軽い一方、事業者が資産・鍵を預かることで法規制上の責任が重くなります。非カストディ方式は事業者の保管責任を避けられますが、鍵を失うと資産を取り戻せないという課題があります。どちらを選ぶかは、後述する法規制やサービス設計に直結する重要な分岐点です。

MPC・アカウントアブストラクション(秘密鍵の難しさを隠す仕組み)

従来のウォレットは、ユーザーがシードフレーズを自分で管理する前提でした。この難しさを利用者から見えなくするために、近年の組込ウォレットではMPCやアカウントアブストラクションといった技術が使われています。

MPC(マルチパーティ計算)は、ひとつの秘密鍵を複数に分割して別々の当事者が分散管理し、単独では資産を動かせないようにする方式です。米国の標準化機関NIST(米国立標準技術研究所)も、暗号処理における信頼を複数の当事者に安全に分散する考え方として整理しています。利用者にとっては単純なログインに見えても、内部では鍵が分散管理されている、という体験の差を生み出します。

アカウントアブストラクション(Account Abstraction)は、Ethereumの標準規格ERC-4337として定義されている考え方で、秘密鍵で管理する従来のアカウントに縛られず、アカウント自身が独自の検証ロジックを持てるようにする仕組みです。

これにより、生体認証やソーシャルログインでの操作、手数料(ガス代)の肩代わりといった、Web2に近い使い勝手を実現しやすくなります。仕組みの詳細は、下記のERC-4337やNISTの資料で確認できます。

出典・参考資料(2件)

WaaS・ソーシャルログイン

これらの仕組みを、事業者が自前で作らず外部から調達できる形にまとめた提供形態がWaaS(Wallet as a Service)です。ウォレットの生成・鍵管理・送受信といった機能を、SDK(開発を助ける部品一式)やAPI経由で自社サービスに組み込めるようにしたもので、組込型金融の一種として位置づけられます。

あわせて使われるのがソーシャルログインです。Googleアカウントやメールアドレスでログインするだけでウォレットをつくれるようにすることで、暗号資産に不慣れなユーザーでも迷わず使い始められます。MPCやアカウントアブストラクションと組み合わせることで、「難しい鍵管理は裏側に隠しつつ、セキュリティは保つ」という設計が可能になります。

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国内の代表的な組込ウォレット提供サービス・事例

国内では、どのような組込ウォレットが提供されているのでしょうか。A型・B型の別と提供形態がわかる形で、大型の導入事例を含めた市場の全体像を整理します。自社アプリに実際に調達できる具体的なサービスの比較は、次章で紹介します。

A型(暗号資産ウォレットSDK型)では、他社アプリへの組込を明示的に掲げる提供者が国内にも登場しています。たとえばdouble jump.tokyoの「Wallet Engine」は、法人向けウォレット基盤「N Suite」を土台にした組み込み型のウォレット基盤です。

HashPortは、大阪・関西万博の公式ウォレット提供の実績を基に、既存アプリへノンカストディアルウォレットを組み込む法人向けソリューション「HashPort Studio」を展開しています。先に触れたコインチェックの「Coincheck OnRamp」も、アプリ内で暗号資産の購入・送金を完結させるA型の事例です。

海外では、MetaMask Embedded Wallets(旧Web3Auth)、Privy、thirdwebなどが暗号資産ウォレットSDK・WaaSを提供しています。いずれも機能は充実していますが、主に英語での提供で国内の導入体制は個別確認が必要なため、日本国内での調達を前提にする場合は国内提供者とあわせて比較するとよいでしょう。

一方のB型(組込型決済・残高・ハウスコイン型)では、インフキュリオンらが提供する地域金融機関向けの組込型金融基盤「Wallet Station」が代表例です。オープンAPIを活用し、QRコードやバーコードでの認証、銀行口座からのダイレクト決済やプリペイド決済をアプリに組み込めるサービスで、地域通貨や自治体のプレミアム付電子商品券などで導入されています。

暗号資産ではなく決済・残高を扱いたい場合は、このタイプが検討対象になります。

ここで挙げたのは市場を俯瞰するための代表例です。このうち自社アプリに調達できる具体的なサービスは、次章でTORMO・Spize wallet・Consensus Base・HashPort Studioを取り上げて比較します。

出典・参考資料(3件)

自前開発と調達(SDK/WaaS)はどちらを選ぶか

ここからは、組込ウォレットをゼロから自前開発する場合と、SDK・WaaSで調達する場合の違いを整理します。判断の分かれ目は、鍵管理やセキュリティといった専門性の高い部分を自社で抱えるかどうかです。

組込ウォレットの自前開発と調達(SDK/WaaS)の違いを対比した図解。自前開発は鍵の生成・保管方式の設計、署名処理、対応チェーンの実装、セキュリティ監査、保守までを自社で担い、自由度は高いが開発・維持のコストが大きい。調達(SDK/WaaS)は鍵管理・セキュリティ・対応チェーンなど負担の大きい部分を提供者が肩代わりし、まず早く立ち上げて必要に応じて要件を詰められる

自前開発では、秘密鍵の生成・保管方式の設計、署名処理、対応チェーンの実装、セキュリティ監査、その後の保守までを自社で担うことになります。暗号資産を扱う以上、鍵の漏えいは資産の喪失に直結するため、専門知識と継続的な運用体制が欠かせません。要件に完全に合わせられる自由度がある反面、開発と維持のコストは大きくなります。

自社仕様で作り込みたいが、鍵管理やセキュリティの実装を自前だけで抱えるのが難しい場合は、ブロックチェーンに精通した開発会社に委託する方法もあります。各社の得意分野・実績・費用を比較して委託先を探したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。

一方、SDKやWaaSで調達する場合は、鍵管理やセキュリティ、対応チェーンといった負担の大きい部分を提供者が肩代わりします。たとえばパスキー(生体認証などの端末に保存された認証情報)や前述のMPC・アカウントアブストラクションを使った鍵管理は、実装済みの部品として組み込めます。

まずは調達で早く立ち上げ、必要に応じて要件を詰めるという進め方が現実的なケースは少なくありません。次章では、国内で調達できる代表的なサービスを紹介します。

組込ウォレットを調達できるサービス

ここからは、「自前で作らず調達する」場合に検討できる、国内で組込ウォレットを提供するサービスを紹介します。既製のSDK・WaaSとして組み込めるプロダクト型(TORMO・Spize wallet・HashPort Studio)と、要件に合わせて実装を任せる開発支援(受託)型(Consensus Base)の両方を並べています。

提供形態や鍵管理方式が異なるため、まず一覧でその違いを確認し、そのうえで各サービスの特徴を見ていきましょう。

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サービス名TORMO(とるも)Spize walletConsensus BaseHashPort Studio
提供形態既存アプリ・サービスに
「ワンリンク」で組み込むSDK型
独自トークン発行者向けの
ウォレットシステム
(Spizeシリーズの一製品)
ウォレット開発の受託・技術支援
(SDK外販ではなく個別開発)
既存アプリへの組込ウォレット
SDK・OEM提供
(システム連携まで一気通貫)
秘密鍵管理方式パスキー方式
(ERC-4337・秘密鍵の
個人管理が不要)
秘密鍵管理不要の
コールドウォレット方式
案件に応じて選択
(MPC・スマートコントラクト・
パスキー等に対応)
MPC方式の
ノンカストディアル
主な特徴・用途NFTの受け取り・クレカ決済での
購入・発行・本人認証・特典引換を
1リンクで完結
知識がないユーザーにも
トークンを配布。BTC・ETH等に対応し、
EC・QR決済への拡張も想定
要件に合わせた個別開発。
ブラウザ拡張・モバイル・MPC・
Webログイン型など幅広く対応
大阪・関西万博公式ウォレットの
実績を基に、金融機関・自治体・
大手事業会社へ導入
料金要問い合わせ要問い合わせ要問い合わせ要問い合わせ
詳細情報公式資料を見る公式資料を見る公式資料を見る公式サイト

1. 生体認証スマートウォレット「TORMO(とるも)」(株式会社PBADAO)

生体認証スマートウォレット「TORMO(とるも)」のウェブサイト

TORMO(とるも)は、パスキー(生体認証などの端末に保存された認証情報)でブロックチェーン上の取引を実行できるスマートウォレットです。ERC-4337(アカウントアブストラクション)方式を採用し、ユーザーに秘密鍵の管理を求めない設計です。

特徴は、既存のWebサービス・アプリに「ワンリンク」で組み込める点です。NFTの受け取り、クレジットカード決済でのNFT購入、NFTの発行(Mint)、本人認証、特典の引き換えといった機能を、ひとつのリンク上で完結できます。暗号資産に不慣れなユーザーにも使ってもらいやすい、A型の組込ウォレットの代表的な選択肢です。料金は要問い合わせで、詳細は資料で確認できます。

2. 暗号資産ウォレットシステム「Spize wallet(スパイズウォレット)」(株式会社テコテック)

暗号資産ウォレットシステム「Spize wallet(スパイズウォレット)」のウェブサイト

独自の暗号資産・トークンを発行するプロジェクト向けに、株式会社テコテックが提供するのがSpize wallet(スパイズウォレット)です。ブロックチェーンの複雑さや手数料の負担をユーザーに意識させない設計を重視しています。

秘密鍵管理が不要なコールドウォレット方式を採用し、BTC・ETHなどの既存チェーンにも対応します。ブロックチェーンの知識がないユーザーにもトークンを配布でき、EC決済への組み込みやQR決済への機能拡張も想定されています。提供元のテコテックは2007年設立で、資本金・準備金あわせて10億円超の企業です。料金は要問い合わせです。

出典・参考資料(1件)

3. ブロックチェーン開発・実装支援|Consensus Base(コンセンサス・ベイス株式会社)

Consensus Baseのウェブサイト

コンセンサス・ベイスは、ブロックチェーン/Web3領域に特化した技術企業で、ウォレット機能を自社サービスに組み込む際の設計・実装を受託する開発パートナーです。既製のSDKを外販するプロダクトではなく、企業ごとの要件に合わせてウォレットを個別開発する点が、これまで紹介したサービスと異なります。

対応するウォレットの種別は幅広く、ブラウザ拡張型、モバイルアプリ型、ERC-4337準拠のスマートコントラクトウォレット、秘密鍵分割型のMPCウォレット、パスキーやソーシャルログインを使うWebログイン型などをカバーします。「既製の部品では要件に合わない」「自社仕様で作り込みたい」という場合に、専門家に実装を任せる選択肢になります。初回のヒアリング・要件整理は無料で、料金は案件ごとの見積もりです。

4. HashPort Studio(株式会社HashPort)

HashPortのウェブサイト

HashPortは、自社開発のノンカストディアル型ウォレット「HashPort Wallet」の開発・運用ノウハウを基に、他社アプリへの組込ウォレットを提供する法人向けソリューション「HashPort Studio」を展開しています。大阪・関西万博の公式ウォレット提供という大規模な実績が土台です。

HashPort Studioは、既存アプリ・サービスへノンカストディアルウォレット機能を組み込むためのSDK提供からシステム連携までを一貫して支援します。秘密鍵はMPC方式で分割・管理する設計で、金融機関や自治体、大手事業会社への導入実績があります。国内で組込ウォレットのSDK・OEM提供を明確に掲げる代表的なサービスで、国内での提供体制を重視する場合の比較対象になります。

出典・参考資料(1件)

導入前に押さえておきたい検討観点

組込ウォレットを導入する前に、発注する側として押さえておきたい観点があります。コスト・法規制・カストディ責任の3点は、社内で検討を進めるうえで欠かせません。

コスト構造(初期・月額・従量)

組込ウォレットの多くは料金を公開しておらず「要問い合わせ」としています。費用は初期費用・月額費用に加え、ウォレット発行数やトランザクション数に応じた従量課金が組み合わさることが一般的です。ガス代(ブロックチェーンの手数料)を事業者が肩代わりする設計にすると、その分のコストも見込む必要があります。自社の想定利用規模を伝えたうえで、複数社から見積もりを取って比較するとよいでしょう。

法規制(資金決済法・暗号資産交換業)の該当性

組込ウォレットで扱う価値の種類によって、関わる法規制が変わります。暗号資産を扱うA型では、資金決済に関する法律(資金決済法)上の「暗号資産」に該当するかが論点になります。自社ポイントやチャージ残高を扱うB型では、同法上の「前払式支払手段」に該当することが多いものの、設計によっては資金移動業や電子決済手段など別の類型になる場合もあります。

国内で暗号資産と法定通貨を交換するサービスを行うには、暗号資産交換業の登録が必要です。金融庁は次のように案内しています。

平成29年4月1日から、「暗号資産」に関する新しい制度が開始され、国内で暗号資産と法定通貨との交換サービスを行うには、暗号資産交換業の登録が必要となりました。

出典:暗号資産に関連する事業を行うみなさまへ|金融庁

自社のサービスがどの類型に該当するかは、扱う価値と設計によって個別に判断されます。断定は避け、企画の段階で監督官庁の情報や専門家に確認することをおすすめします。詳しくは金融庁の案内や資金決済法の条文にあたってください。

出典・参考資料(2件)

カストディ責任・社内統制

前半で触れたカストディ(受託保管)か非カストディかの選択は、法規制上の責任に直結します。資金決済法は、暗号資産交換業のなかで「暗号資産の管理」を次のように定めています。

「暗号資産の管理」とは、第四号に掲げる行為をいう。(中略)四 他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く。)。

出典:資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)第2条第15項|e-Gov法令検索

このように、事業者がユーザーの暗号資産や秘密鍵を預かる設計(カストディ)にすると、暗号資産交換業に該当し得ます。非カストディ方式を選べばこの負担を避けやすくなりますが、鍵の紛失時のサポート体制など別の設計が必要です。どちらを選ぶかは、法規制対応の負担と利用者の使い勝手のバランスで決まります。

あわせて、資産や鍵を扱う以上、社内での権限管理・監査ログ・障害時の対応といった内部統制も重要です。提供サービスを選ぶ際は、機能だけでなく、こうした統制機能や運用サポートが用意されているかも確認しましょう。該当性の最終的な判断は、必ず専門家や監督官庁に相談してください。

コスト・法規制・カストディ責任という3つの軸に加えて、候補サービスを比べる段階では実装・運用面の確認も欠かせません。次のような項目を各社の資料や問い合わせで確認しておくと、社内での比較がぶれません。

  • 対応ブロックチェーンの範囲:自社が扱いたいトークンやチェーンに対応しているか。ここでのチェーンは、EthereumやそのL2(Ethereumの外側で処理を担い負荷を軽くする上位ネットワーク)、複数チェーンなどを指し、対応範囲は製品ごとに異なります。
  • 鍵の復旧手段:利用者がアカウントへのアクセスを失ったときのソーシャルリカバリー(信頼できる第三者や複数の端末を使ってアカウントを復旧する手段)やバックアップが用意されているか。
  • 稼働率・サポート体制:障害時の対応窓口や SLA(サービス品質保証)の有無、導入時の技術サポートの範囲。
  • 管理・分析機能:発行数やトランザクションを把握できる管理画面・レポート機能があるか。
  • 本人確認(KYC)・不正対策:提供する機能や対象の法域に応じて必要になる本人確認やモニタリングに対応しているか。

これらは扱う価値の種類(A型かB型か)や自社の想定利用規模によって重み付けが変わります。優先順位を社内で決めたうえで、複数社を同じ観点で並べて比べると、判断の材料がそろいます。

まとめ

組込ウォレットは、ユーザーが別のアプリを使わずに、自社サービスの中で資産や残高を扱えるようにする仕組みです。まず押さえたいのは、暗号資産を扱うA型と、決済・残高を扱うB型という2つの意味があり、仕組みも法規制も異なるという点です。自社が扱いたいのがどちらかを見極めることが、検討の出発点になります。

A型を検討する場合は、秘密鍵の管理方式(カストディ/非カストディ)やMPC・アカウントアブストラクションといった仕組みを理解したうえで、自前開発と調達のどちらが適するかを見極めましょう。国内でもTORMO・Spize wallet・HashPort Studioなど調達できるサービスが登場しています。

コスト・法規制・カストディ責任の観点を社内で整理し、まずは資料請求で各社の詳細を比べるところから始めてみてください。

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組込ウォレットに関するよくある質問(FAQ)

Q. 組込ウォレットとは何ですか?

A. 組込ウォレットとは、ユーザーが別のウォレットアプリを導入しなくても、自社のアプリ・サービスの中で資産や残高を保管・送受信できるウォレット機能を、外部から組み込んで提供する仕組みです。

「組込型金融(Embedded Finance)」の一部として整理される考え方で、暗号資産やNFTを扱うタイプと、自社ポイントやチャージ残高などの決済用の価値を扱うタイプに大きく分かれます。

Q. 組込ウォレットの「暗号資産型」と「組込型決済型」はどう違いますか?

A. 組込ウォレットの2つの型は、扱う価値が「ブロックチェーン上の暗号資産・NFT」か「法定通貨建ての前払い残高・ポイント」かで分かれます。

暗号資産型(A型)は秘密鍵の管理が前提で、資金決済法上の「暗号資産」や暗号資産交換業が論点になります。組込型決済型(B型)は口座・残高としてシステム側で管理し、前払式支払手段などが関わります。ブロックチェーン上の資産を扱いたいならA型、自社の決済・ポイントを扱いたいならB型が出発点になります。

Q. 組込ウォレットと組込型金融(Embedded Finance)は何が違いますか?

A. 組込ウォレットは、組込型金融(Embedded Finance)という大きな枠組みのなかで、資産・残高を扱う「ウォレット機能」を指す一部分です。

組込型金融は、従来は金融機関のチャネルでしか使えなかった機能を分解し、APIの形で一般企業のアプリ・サービスに組み込む発想全般を指します。組込ウォレットは、その金融機能のひとつという位置づけです。

Q. 組込ウォレットはカストディとノンカストディのどちらですか?

A. 組込ウォレットは、事業者が鍵を預かる「カストディ」と、利用者自身が鍵を管理する「非カストディ(ノンカストディアル)」のどちらの設計も選べます。

近年はMPC(秘密鍵を複数に分割して分散管理する方式)やアカウントアブストラクションを使い、利用者にはシンプルなログイン体験に見えても、内部では非カストディで鍵を分散管理する製品が増えています。ただし方式は製品によって異なるため、事業者が鍵を預かるか否かは導入前に各サービスへ確認してください。カストディか非カストディかは、法規制上の責任に直結する重要な分岐点です。

Q. 組込ウォレットはソーシャルログインを使ってもセキュリティは大丈夫ですか?

A. 組込ウォレットのソーシャルログインは、MPCによる鍵の分割や多要素認証と組み合わせることで、手軽さを高めつつセキュリティを保つ設計が一般的です。

GoogleアカウントやメールでログインできるとWeb2に近い手軽さになる一方、鍵管理の安全性は裏側の方式に依存します。利用者がアカウントへのアクセスを失った場合に備え、ソーシャルリカバリーやバックアップといった復旧手段が用意されているかも、あわせて確認するとよいでしょう。

Q. 組込ウォレットは複数のブロックチェーンに対応できますか?

A. 組込ウォレット(暗号資産型)は、対応チェーンの範囲が製品ごとに異なり、複数のブロックチェーンに対応するものもあります。

EthereumやそのL2、複数チェーンをひとつのSDKでカバーする製品もあれば、特定チェーンに絞ったものもあります。自社が扱いたいトークンや想定するチェーンを整理したうえで、対応範囲を各サービスに確認してください。

Q. 組込ウォレットは既存のアプリに後から組み込めますか?

A. 組込ウォレットの多くは、SDKやAPI、リンク単位での提供によって、既存のアプリ・サービスへ後付けで組み込める形で提供されています。

リンク一つで組み込める製品や、SDK提供からシステム連携まで一貫して支援する製品があります。ただし対応環境や連携方法は製品によって異なるため、自社の技術構成に合うかは事前に確認しましょう。

Q. 組込ウォレットを導入するには暗号資産交換業の登録が必要ですか?

A. 組込ウォレットの導入に暗号資産交換業の登録が必要かは、扱う価値とサービス設計によって個別に判断されるため、一概には言えません。

金融庁は、国内で暗号資産と法定通貨を交換するサービスを行うには暗号資産交換業の登録が必要としています。また、事業者がユーザーの暗号資産や秘密鍵を預かる(カストディ)設計は、暗号資産交換業に該当し得ます。非カストディ方式ならこの負担を避けやすくなりますが、該当性の最終的な判断は、企画の段階で監督官庁や専門家に確認してください。KYC(本人確認)の要否も、提供する機能や法域によって変わります。

出典・参考資料(2件)

Q. 組込ウォレットの費用はどのくらいかかりますか?

A. 組込ウォレットの費用は、多くが「要問い合わせ」で、初期費用・月額費用に加え、ウォレット発行数やトランザクション数に応じた従量課金が組み合わさるのが一般的です。

暗号資産型では、ガス代を事業者が肩代わりする設計にすると、その分のコストも加わります。導入前に自社の想定利用規模を提示し、複数社の見積もりを取り寄せて比べるのが確実です。

Q. 組込ウォレットは自前開発と調達(SDK/WaaS)のどちらがよいですか?

A. 組込ウォレットは、鍵管理やセキュリティなど専門性の高い部分を自社で抱えるかどうかが、自前開発と調達の分かれ目です。

自前開発は要件に合わせられる自由度がある反面、鍵の生成・保管方式の設計やセキュリティ監査、その後の保守までを自社で担う負担が大きくなります。SDK・WaaSでの調達は、負担の大きい部分を提供者が肩代わりするため、まず調達で早く立ち上げるのが現実的なケースも少なくありません。国内でもTORMO・Spize wallet・HashPort Studioなど、調達できるサービスがあります。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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