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ブロックチェーン事業の法規制まとめ|暗号資産・NFT・ステーブルコインに関わる日本の法律を一覧で解説

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ブロックチェーンやWeb3を使った新しいプロダクトを企画すると、必ず出てくるのが「これは法律的に問題ないのか」という問いです。独自トークンを発行するのか、NFTを配るのか、ゲーム内でランダム性のある販売を行うのか。企画の中身によって、資金決済法・金融商品取引法・刑法(賭博罪)・景品表示法・税務など、関係してくる法律は変わってきます。

やっかいなのは、日本には「ブロックチェーン法」という一本の法律があるわけではなく、企画のどの部分が、どの既存法令のどの要件に触れるのかを、自分で見極めなければならない点です。上司や取引先に説明する前に、まずは全体像を押さえておきたいところです。

本記事では、日本でブロックチェーン事業を進める際に関係する主な法律を一覧で示したうえで、各法令について「どんな企画が、どの条文の、どのラインに触れるのか」を、条文や公的見解とともに整理します。自社の企画に当てはまる法律の当たりをつけ、専門家への相談や社内での説明につなげるための地図としてご活用ください。

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ブロックチェーン事業に関係する日本の主な法律【一覧マップ】

まず、ブロックチェーン/Web3事業で押さえておきたい主な法律を一覧にまとめます。企画のどの部分が、どの法律の規制対象になりやすいかを把握するための出発点として確認してください。各法律の詳しい要件は、この後の各セクションで条文とともに解説します。

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関係する法律資金決済法(暗号資産)資金決済法(前払式支払手段)資金決済法(電子決済手段)犯罪収益移転防止法金融商品取引法刑法(賭博罪)景品表示法税務(所得税・法人税)
主な規制対象決済手段等の経済的機能を持つトークンの発行・交換・管理前払いで発行し、物品購入やサービスの代価に使える価値法定通貨に価値を連動させたデジタルマネー類似型ステーブルコイン特定事業者(暗号資産交換業者・電子決済手段等取引業者など)の取引収益分配を受ける権利など投資性のあるトークン偶然性で財産の得喪を争う行為取引に付随して提供する景品類暗号資産・NFTの取得・売却・期末保有
当てはまりやすい企画例独自トークンの発行、暗号資産の交換・管理サービス円建てで販売するゲーム内通貨・ポイントステーブルコインの発行・仲介・活用暗号資産の交換・管理、ステーブルコインの仲介セキュリティトークン(ST)、収益分配型トークンの発行NFTのランダム型販売(ガチャ)、Play to Earn購入特典・キャンペーンでのトークン/NFT配布トークンを保有・売却する事業、自己発行トークン
押さえるポイント暗号資産に該当すると交換業の登録が必要。無登録営業には刑事罰第三者型は登録制。発行額の供託など利用者保護義務発行は銀行・資金移動業・特定信託会社に限定。仲介は登録制本人確認(取引時確認)と疑わしい取引の届出が義務集団投資スキーム持分などに当たると開示・業規制の対象「ハズレ」の設計などで賭博罪の成否が分かれる景品類に当たると価額の上限規制がかかる所得区分や法人の期末時価評価の扱いを確認

※上記は主な法律と典型的な企画例の対応の概観です。実際の該当性は企画の具体的な内容に応じて個別に判断されます。

資金決済法|暗号資産・前払式支払手段・電子決済手段(ステーブルコイン)

ブロックチェーン事業で最も広く関わってくるのが資金決済法です。同じ法律の中に、暗号資産・前払式支払手段・電子決済手段という複数の枠組みがあり、発行するトークンの性質によって、どれに当たるかが変わります。ここでは、企画が引っかかりやすいポイントを条文とともに整理します。

資金決済法の3つの枠組みを比較した図解。暗号資産(決済手段としての経済的機能を持つトークン、業として売買・交換・管理するなら暗号資産交換業の登録が必要)、前払式支払手段(前払いで発行し物品・サービスの代価に使えるトークン、第三者型は登録制で残高が一定額を超えると供託など利用者保護義務)、電子決済手段(法定通貨に価値を連動させたステーブルコイン、発行は銀行・資金移動業者・特定信託会社に限定、仲介は登録制)を、発行するトークンの性質によってどれに当たるかが変わる関係として整理している。

暗号資産の定義と、NFTなどが該当しない判断の考え方

「暗号資産」は、資金決済法第2条第14項で定義されています。不特定の者に対して代価の弁済に使え、かつ不特定の者との間で売買・交換ができる財産的価値(1号)と、それと相互に交換できる財産的価値(2号)が対象です。ポイントは、決済手段としての経済的機能を持つかどうかにあります。

資金決済に関する法律 第2条第14項 この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法第二十九条の二第一項第八号に規定する権利を表示するものを除く。
一 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(略)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

出典:資金決済に関する法律|e-Gov法令検索

この定義との関係で実務上よく問題になるのが、NFTやゲーム内アイテムが暗号資産に当たるかどうかです。この点について金融庁は、2019年9月3日のパブリックコメント回答で、決済手段等の経済的機能を持たないものは暗号資産に該当しないという考え方を示しています。当時は「仮想通貨」という呼称で、条文番号も現在とは異なりますが、判断の考え方は現在も参照されています。

例えば、ブロックチェーンに記録されたトレーディングカードやゲーム内アイテム等は、1号仮想通貨と相互に交換できる場合であっても、基本的には1号仮想通貨のような決済手段等の経済的機能を有していないと考えられますので、2号仮想通貨には該当しないと考えられます。

出典:事務ガイドライン(第三分冊)の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果について|金融庁

金融庁は同じ回答の中で、該当性は「実態に即して個別具体的に判断される」とも述べています。NFTだから一律に非該当というわけではなく、そのトークンが決済手段のように使われる設計になっていないかを、企画ごとに見ていく必要があります。

実務の解説では「販売単価がおおむね1,000円を超え、発行数量が100万個以下」といった目安が示されることもあります。これはGVA法律事務所やSo&Sato法律事務所などの実務解説が経験則として示している考え方であり、金融庁が公式に定めた基準ではありません。

判断の芯はあくまで「決済手段等の経済的機能を持つかどうか」にあるため、数値の目安だけを頼りにせず、具体的な設計に即して確認することが大切です。

出典・参考資料(2件)

暗号資産交換業の登録が必要になる場合と、無登録営業の罰則

発行したトークンが暗号資産に該当し、その売買・交換や、他人のための管理(カストディ)を業として行う場合、資金決済法第2条第15項の「暗号資産交換業」に当たります。暗号資産交換業を行うには、内閣総理大臣(金融庁)の登録が必要です。

資金決済に関する法律 第63条の2 暗号資産交換業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行ってはならない。

出典:資金決済に関する法律|e-Gov法令検索

登録の対象になるのは、暗号資産の売買・交換、その媒介・取次ぎ・代理、それらに関する利用者の金銭の管理、そして他人のための暗号資産の管理です。自社サービスの中でこれらの行為を行う設計になっていないかは、早い段階で確認しておきたいところです。

あわせて押さえておきたいのが、マネー・ローンダリング対策です。暗号資産交換業者や電子決済手段等取引業者は、犯罪収益移転防止法(犯収法)上の「特定事業者」に位置づけられ、取引時確認(利用者の本人確認)や疑わしい取引の届出が義務づけられます。サービス紹介で見かける「KYC/AML対応」は、この犯収法上の義務に対応するための機能を指します。

出典・参考資料(1件)

登録を受けずに暗号資産交換業を行った場合、資金決済法第107条により、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科という刑事罰の対象になります。「まずは小さく試してから登録を考えよう」といった進め方が思わぬリスクになりかねないため、該当性の判断は慎重に行う必要があります。

資金決済に関する法律 第107条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(略)
十二 第六十三条の二の登録を受けないで暗号資産交換業を行ったとき。

出典:資金決済に関する法律|e-Gov法令検索

前払式支払手段に当たるケース(円建てのゲーム内通貨など)

暗号資産に当たらないトークンでも、前払いで発行し、物品購入やサービスの代価に使えるものは、資金決済法の「前払式支払手段」に該当することがあります。たとえば円建てで販売するゲーム内通貨は、この枠組みで捉えられる典型です。

前払式支払手段には、発行者自身への支払いにしか使えない「自家型」(資金決済法第3条第4項)と、それ以外の「第三者型」(同条第5項)があります。第三者型を発行するには登録が必要で、未使用残高が一定額を超えると、発行保証金の供託など利用者保護の義務も生じます。トークンの使いみちを発行者の外に広げるほど、規制は重くなる関係にあります。

出典・参考資料(1件)

電子決済手段(ステーブルコイン)の4分類と2023年改正

法定通貨に価値を連動させたデジタルマネー類似型のステーブルコインは、2022年の資金決済法改正で新設された「電子決済手段」の枠組みで規制されています。この改正は2023年6月1日に施行されました。電子決済手段は、資金決済法第2条第5項で次のように分類されています。

資金決済に関する法律 第2条第5項 この法律において「電子決済手段」とは、次に掲げるものをいう。
一 (不特定の者に対して代価の弁済に使え、かつ不特定の者との間で売買できる通貨建資産。略)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値(略)
三 特定信託受益権
四 前三号に掲げるものに準ずるものとして内閣府令で定めるもの

出典:資金決済に関する法律|e-Gov法令検索

1号は通貨建資産型、2号は1号と相互に交換できる型、3号は信託を使った「特定信託受益権」型で、4号はこれらに準ずるものを内閣府令で定めるための受け皿の規定です。発行できるのは、銀行・資金移動業者・特定信託会社に限られます。

発行者はこれらの免許・登録を持つ主体に限定されるため、事業会社がステーブルコインを扱う場合は、自ら発行するのか、発行された電子決済手段を仲介・活用するのかで、必要な対応が大きく変わります。

電子決済手段の売買・交換や管理を仲介する業務は「電子決済手段等取引業」として登録制の対象で、利用者資産の分別管理などの義務が課されます。また、海外で発行された外国電子決済手段を取り扱う場合には、1回あたりの移転額に上限が設けられています。

この上限額(100万円)は資金決済法本体ではなく、電子決済手段等取引業者に関する内閣府令で定められています。銀行が発行する預金型のステーブルコインの取次ぎなどについては、銀行法第2条第17項の「電子決済等取扱業」も関係します。

出典・参考資料(3件)

金融商品取引法|投資性トークン・有価証券への該当性

トークンに投資的な性格がある場合、資金決済法ではなく金融商品取引法(金商法)の規制が問題になります。代表的なのは、投資家が拠出した資金で行う事業の収益を分配する権利を、トークンの形で発行するケースです。

このような権利は、金商法第2条第2項第5号の「集団投資スキーム持分」(いわゆるファンド持分。組合契約などに基づき、出資者が拠出した金銭を充てて行う事業から生じる収益の配当を受けられる権利)に当たり、有価証券とみなされます。セキュリティトークン(ST)と呼ばれるものの多くは、この集団投資スキーム持分に該当します。

さらに、こうした権利が電子的に記録され、流通性を持つトークンとして表示される場合には、金商法第2条第3項が定める「電子記録移転権利」として、より開示規制の厳しい第一項有価証券として扱われます。トークンに「配当」「利回り」「収益分配」といった投資的な要素を持たせる企画は、この金商法の領域に入る可能性が高く、資金決済法とは別に検討が必要です。

出典・参考資料(1件)

刑法(賭博罪)|NFTのランダム型販売・ブロックチェーンゲーム

NFTのランダム型販売(いわゆるガチャ)やPlay to Earn型のゲームを企画する場合、刑法の賭博罪に触れないかが論点になります。賭博罪は、偶然の勝敗によって財産の得喪を争う行為を処罰するもので、条文は次のとおりです。

刑法 第185条 賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
第186条第1項 常習として賭博をした者は、三年以下の拘禁刑に処する。
第186条第2項 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の拘禁刑に処する。

出典:刑法|e-Gov法令検索

ランダム型販売について、業界団体は一定の整理を示しています。日本ブロックチェーン協会(JBA)など5団体が2022年10月12日に公表した「NFTのランダム型販売に関するガイドライン」は、賭博罪の「得喪を争う」という要件を整理しています。

具体的には、勝者が財物を得て敗者が財物を失うという相互得喪の関係が必要であり、当事者の一方が財物を失うことがない場合は得喪を争うものとはいえない、という解釈です。

NFT のランダム型販売においては、NFT が交付されない等のいわゆる「ハズレ」を明確に設定しない限り、原則として、販売会社は実際の販売価格に相当する金額の金銭等(財物)を得て、ユーザーは実際に支払った金額に相当する価値を有する NFT(財物)を得ることになるといえるため、勝者が財物を得て敗者は財物を失うという相互得喪の関係は認められず、財物の「得喪を争う」関係は生じないものと考えられる。

出典:NFTのランダム型販売に関するガイドライン|日本ブロックチェーン協会ほか4団体

ただし、この整理はあくまで業界団体の考え方であり、ガイドライン自身が「規制当局が同様の立場を採ることを保証するものではない」と明記しています。刑事法学の観点からも、NFTの客観的な価値を明確に算定することの難しさが指摘されており、賭博罪の成否について確定した公的見解があるわけではありません。

「ハズレを設けない」「販売会社が二次流通市場で自ら買い取らない」といった条件設計が実務上のポイントになりますが、個別の企画については専門家への確認が欠かせない領域です。

出典・参考資料(2件)

景品表示法|トークン・NFTを景品として配る場合の上限規制

商品の購入特典やキャンペーンでトークン・NFTを配布する企画では、景品表示法(景表法)の景品規制が関係します。取引に付随して提供する物品や経済上の利益は「景品類」に当たり(景表法第2条第3項)、その提供には価額の上限などの制限がかかります。

具体的な上限額は、景表法第4条を根拠とする消費者庁の告示で定められています。主な区分ごとの限度額は次のとおりです。

  • 総付景品(もれなく提供):取引価額1,000円未満は景品の最高額200円、1,000円以上は取引価額の10分の2まで
  • 一般懸賞(抽選などで提供):取引価額5,000円未満は取引価額の20倍、5,000円以上は10万円が最高額。総額は懸賞に係る売上予定総額の2%まで
  • 共同懸賞:最高額は取引価額にかかわらず30万円、総額は売上予定総額の3%まで

ブロックチェーンゲームでのログイン報酬やランキング報酬としてNFT・トークンを付与する場合も、それが取引に付随する景品類に当たるかどうかを確認し、当たる場合は上限額の範囲に収める必要があります。トークンの価額の評価が難しいケースもあるため、設計段階での検討が求められます。

出典・参考資料(2件)

税務|暗号資産・NFTの課税と法人の期末時価評価

ブロックチェーン事業では、法令だけでなく税務の扱いも押さえておく必要があります。ここでは、事業者が実務で確認しておきたい所得区分・法人の期末評価・NFTの課税について整理します。個別の申告実務は税理士への相談が前提ですが、論点の所在を把握しておくと検討がスムーズです。

個人・法人の所得区分

暗号資産取引で生じた利益の所得区分について、国税庁は「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」で考え方を示しています。個人の場合は原則として雑所得に区分されますが、事業用資産として保有し、棚卸資産の購入の決済手段として使用した場合など、事業に付随する取引は事業所得に区分されるとされています。事業としてトークンを継続的に扱う場合は、どの所得区分になるかを早めに確認しておくとよいでしょう。

出典・参考資料(1件)

法人の期末時価評価と自己発行トークンの除外

法人が暗号資産を保有する場合、法人税法第61条により、活発な市場が存在する暗号資産は期末に時価評価し、評価益・評価損を益金・損金に算入するのが原則です。含み益に課税されうるため、トークンを保有する法人にとっては資金繰り上も見過ごせない論点です。

この点は令和5年度税制改正で見直され、自己が発行し、発行時から継続して保有する一定の譲渡制限付きトークン(特定自己発行暗号資産)は、期末時価評価の対象外とされました。自らトークンを発行して事業を行う企業にとっては、この改正が保有コストの前提を変えています。除外の要件は国税庁FAQでも解説されているため、自己発行トークンを扱う場合は確認しておきたいところです。

出典・参考資料(2件)

NFTの課税と、徴収局面の論点

NFTの取得・譲渡に伴う課税については、暗号資産のFAQとは別に、国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)」がまとめています。たとえば、購入したNFTを転売して得た所得は、原則として譲渡所得に区分されます。

ただし、そのNFTの譲渡が棚卸資産の譲渡や、営利を目的として継続的に行う資産の譲渡に当たる場合は、事業所得または雑所得に区分されます。NFTを扱う事業では、自社の取引がどの類型に当たるかを確認しておくとよいでしょう。

税務に関しては、国税庁の税務大学校が「デジタル社会における新たな財産権に対する滞納処分について」という論叢も公表しています。これはNFT財産を国税徴収法に基づいて差し押さえる際の手続き(徴収の局面)に焦点を当てた学術的な検討であり、事業者の所得区分や課税タイミングそのものを解説したものではありません。課税の扱いを確認する際は、上記の国税庁FAQを出発点にするのが確実です。

出典・参考資料(2件)

企画パターン別・当たりやすい法律の逆引き

ここまで法律ごとに見てきた内容を、企画のパターンから逆に引けるように整理します。まずは下の表で自社の企画に近いものを探し、当たりやすい法律の全体像をつかんでください。各パターンの詳しい注意点は、表の後で解説します。

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企画パターン独自トークンの発行NFTの販売・配布ブロックチェーンゲーム・Play to Earnステーブルコインの活用
当たりやすい法律資金決済法(暗号資産・交換業登録)/金融商品取引法(投資性トークン)資金決済法(暗号資産該当性)/景品表示法(特典配布)/刑法(ランダム型販売)刑法(賭博罪)/景品表示法/資金決済法(暗号資産・前払式支払手段)資金決済法(電子決済手段・仲介業)/犯罪収益移転防止法

独自トークンを発行する場合

まず確認すべきは、発行するトークンが暗号資産に当たるかどうかです。決済手段としての経済的機能を持つ場合は資金決済法の暗号資産に該当し、売買・交換・管理を業として行うなら暗号資産交換業の登録が必要になります。

一方、収益分配など投資的な性格を持たせる場合は、金融商品取引法の集団投資スキーム持分などに当たり、金商法側の規制が問題になります。トークンの設計次第で、資金決済法と金商法のどちらの世界に入るかが分かれます。

NFTを販売・配布する場合

コレクションやアートとしてのNFTは、決済手段の機能を持たなければ暗号資産には当たらないのが一般的な整理です。ただし、購入特典やキャンペーンで配る場合は景品表示法の景品規制、ランダム性のある販売を行う場合は刑法の賭博罪が論点になります。また、NFTが表す権利(利用許諾か、著作権の移転か等)の設計は、規制該当性とは別に、購入者との契約関係として整理しておく必要があります。

ブロックチェーンゲーム・Play to Earnの場合

ゲームは、複数の法律が同時に関わりやすい領域です。ガチャなどのランダム型販売は賭博罪、報酬やアイテムの配布は景品表示法、ゲーム内アイテムやトークンが暗号資産・前払式支払手段に当たるかは資金決済法、と論点が広がります。

円建てで売るゲーム内通貨は前払式支払手段に、暗号資産と交換できる設計は暗号資産該当性に、それぞれ注意が必要です。企画全体を通して、どの機能がどの法律に触れるかを一つずつ確認していくことになります。

ステーブルコインを活用する場合

ステーブルコインは、資金決済法の電子決済手段として規制されます。自ら発行する場合は、銀行・資金移動業者・特定信託会社のいずれかである必要があり、事業会社が単独で発行するハードルは高いのが実情です。

発行済みの電子決済手段を決済や送金に活用・仲介する場合は、電子決済手段等取引業の登録や、外国電子決済手段の移転上限といった論点の確認が必要です。決済インフラに組み込む企画ほど、早い段階での規制確認が重要になります。

直近の法改正と今後の動向

ブロックチェーン関連の規制は、ここ数年で確定した部分と、これから議論が進む部分が混在しています。両者を分けて捉えておくと、確定した規制への対応と、動向のウォッチを切り分けやすくなります。

すでに確定・施行済みの主なものとしては、2022年の資金決済法改正によるステーブルコイン(電子決済手段)の枠組みの新設(2023年6月1日施行)と、その売買・仲介を担う電子決済手段等取引業の登録制があります。税務面でも、令和5年度税制改正で自己発行トークンを法人の期末時価評価から除外する見直しが行われました。これらはすでに実務に適用されている規制です。

一方で、暗号資産を金融商品取引法の枠組みへ位置づけ直す議論や、税制のさらなる見直しなど、方向性が議論されている段階のテーマもあります。こうした政策動向は、報道で「規制緩和」「見直し」と語られることも多いものの、条文として確定するまでは企画の前提にはできません。確定した規制に沿って設計しつつ、動向は動向として把握しておく、という切り分けが安全です。

規制対応を専門家・開発パートナーに任せるという選択肢

ここまで見てきたように、ブロックチェーン事業は、一つの企画が複数の法律にまたがって検討を要します。自社に専門人材がいない場合、規制を踏まえたスキーム設計から実装・運用までを伴走してもらえる開発パートナーに相談するのも有力な選択肢です。

ただし、法的な該当性の最終的な判断は弁護士などの専門家に委ね、開発パートナーはその整理を踏まえた設計・実装の相談先として活用するのが基本です。ここでは、規制対応を含めて相談できる国内のサービスを紹介します。

ブロックチェーン開発・実装支援|Consensus Base(コンセンサス・ベイス株式会社)

ブロックチェーン開発・実装支援|Consensus Base

コンセンサス・ベイス株式会社は、2015年の創業以来、ブロックチェーン・Web3領域に特化してきた技術企業です。事業企画の相談から、スマートコントラクトやウォレットの受託開発、セキュリティ監査、運用支援、社内向けの研修まで、構想から実装・運用までを一気通貫で手がけている点が特徴です。

特定のチェーンに限定せず、Ethereum系から非EVM系、Hyperledgerなどのエンタープライズ基盤まで、要件に応じて基盤を選定できる体制を備えています。

規制対応との関わりでは、2025年11月に、企業・金融機関向けのステーブルコイン事業戦略の立案・導入支援サービスの提供を開始しています。スマートコントラクトやウォレット・カストディの設計に加え、本人確認(KYC)やマネー・ローンダリング対策(AML)、分散型ID(DID)への対応も支援範囲に含まれるとしています。

規制が絡む事業の相談先として検討しやすいサービスです。料金は受託開発のため案件ごとの見積もりで、初回のヒアリングや要件整理・技術調査は無料としています。

Web3 CONSULTING & DEVELOPMENT(株式会社アツラエ)

Web3 CONSULTING & DEVELOPMENT

株式会社アツラエが提供するWeb3 CONSULTING & DEVELOPMENTは、Web3事業の企画段階の相談から、PoC(概念実証)・MVP開発、受託開発、リリース後の運用までをワンストップで支援するサービスです。「なぜWeb3を使うのか」という課題起点から一緒に整理する進め方を掲げており、技術の導入そのものを目的にしない姿勢を特徴としています。

提供メニューには、市場リサーチやペルソナ設計を行う「Web3サービスデザイン」、検証を進める「Web3 PoC開発支援」に加えて、制度・規制の論点整理やシステム導入・運用体制の構築を支援する「Web3バックオフィスコンサルティング」があります。法規制の整理と事業設計を並行して相談したい企業にとって、入り口として検討しやすい構成です。

料金はプロジェクト単位の個別見積もりで、資料請求やミーティング予約から相談を始められます。

【比較表】規制対応を相談できる開発パートナー

以下は、ご紹介した2社の比較表です。いずれも企画から実装・運用までを伴走できる国内の受託・コンサル型のサービスです。

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サービス名Consensus BaseWeb3 CONSULTING & DEVELOPMENT
提供会社コンセンサス・ベイス株式会社株式会社アツラエ
(旧クリプトリエ事業を承継)
提供形態受託開発・技術支援
(構想〜実装・運用を一気通貫)
コンサル+受託開発
(企画〜運用をワンストップ)
規制対応で相談できる範囲ステーブルコイン事業戦略・導入支援の一環でKYC/AML・DIDへの対応を掲げる(2025年11月提供開始)Web3バックオフィスコンサルティングで制度・規制の論点整理と運用体制の構築を支援
主な対応領域NFT・トークン発行/STO(セキュリティトークン)/DeFi/ステーブルコイン/スマートコントラクト監査/DIDWeb3企画/PoC・MVP開発/受託開発/NFTマーケティング
対応チェーン・技術Ethereum/Polygon/Solana/Cosmos SDK/Hyperledger Fabric ほか(EVM・非EVM・エンタープライズを横断)オンチェーン分析・セキュリティ設計・ステーキング・レンディング等(対応チェーンの公表なし)
詳細情報公式資料を見る公式資料を見る

※各社の公式情報にもとづく(2026年9月時点)。詳細は各社の資料でご確認ください。

ここで紹介したのは規制対応まで相談できる2社ですが、ブロックチェーン開発会社をより幅広く比較して選びたい場合は、次の記事で選び方の観点や各社の特徴、おすすめ企業を詳しく解説しています。導入を具体的に検討する段階で、あわせて確認してみてください。

まとめ

日本でブロックチェーン事業を進める際は、一本の「ブロックチェーン法」ではなく、資金決済法・金融商品取引法・刑法(賭博罪)・景品表示法・税務といった既存の法律が、企画の中身に応じて関わってきます。要点を整理すると次のとおりです。

  • トークン発行:決済機能があれば資金決済法の暗号資産(交換業は登録制)、投資性があれば金融商品取引法の集団投資スキーム持分などを確認する
  • NFT・ゲーム:ランダム型販売は賭博罪、特典配布は景品表示法、ゲーム内通貨は前払式支払手段が論点になる
  • ステーブルコイン:資金決済法の電子決済手段として、発行主体や仲介業の登録が規制される
  • 税務:所得区分、法人の期末時価評価(自己発行トークンは令和5年度改正で除外)を確認する

該当性の最終的な判断は、企画の具体的な設計に応じて個別に行われます。自社の企画に当たりそうな法律の目星がついたら、その領域に強い専門家や、規制対応を含めて伴走できる開発パートナーへの相談に進むのが、合法かつ着実に事業を前へ進める近道です。

よくある質問(FAQ)

Q. ブロックチェーン事業に適用される「ブロックチェーン法」という専用の法律はありますか?

A. 日本には、ブロックチェーン事業だけを対象とする「ブロックチェーン法」という単一の法律は存在しません。代わりに、資金決済法・金融商品取引法・刑法(賭博罪)・景品表示法・税務といった既存の法律が、企画の中身に応じてそれぞれ適用されます。

独自トークンを発行するのか、NFTを配るのか、ランダム性のある販売を行うのかによって関係する法律が変わるため、まずは自社の企画がどの法律に触れるのかを一つずつ見極めることが出発点になります。

Q. ブロックチェーンで独自トークンを発行するのに、登録や免許は必要ですか?

A. 独自トークンが資金決済法上の「暗号資産」に該当し、その売買・交換や他人のための管理を業として行う場合は、暗号資産交換業の登録が必要です。決済手段としての経済的機能を持たないトークンであれば暗号資産には当たらないのが一般的な整理ですが、収益分配などの投資的な性格を持たせる場合は、金融商品取引法の集団投資スキーム持分などに当たります。

無登録で暗号資産交換業を行うと、資金決済法第107条により3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科もあり)の対象となるため、該当性の判断は早い段階で行うことが大切です。

出典・参考資料(1件)

Q. NFTの発行・販売は資金決済法の「暗号資産」に当たりますか?

A. NFTの発行・販売は、決済手段等の経済的機能を持たなければ、資金決済法の「暗号資産」には該当しないのが一般的な整理です。金融庁は2019年9月3日のパブリックコメント回答で、ブロックチェーンに記録されたトレーディングカードやゲーム内アイテム等は、基本的に決済手段等の経済的機能を持たないため2号仮想通貨(現行の暗号資産)に該当しないという考え方を示しています。

ただし該当性は実態に即して個別具体的に判断されるため、そのNFTが決済手段のように使われる設計になっていないかを、企画ごとに確認する必要があります。

出典・参考資料(2件)

Q. ガチャ型(ランダム型)のNFT販売は刑法の賭博罪になりますか?

A. ガチャ型(ランダム型)のNFT販売が賭博罪に当たるかについては、規制当局の確定した見解はまだありません。日本ブロックチェーン協会など業界5団体のガイドラインは、「ハズレ」を設けない設計であれば、販売会社と購入者の双方が支払額に相当する財物を得るため「得喪を争う」関係が生じず賭博罪には当たらない、と整理しています。

ただしガイドライン自身が「規制当局が同様の立場を採ることを保証するものではない」と明記しており、賭博罪の成否について確定した公的見解があるわけではありません。ハズレを設けない・二次流通市場で自ら買い取らないといった条件設計に加え、個別の企画は専門家への確認が欠かせません。

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Q. 円建てで販売するゲーム内通貨は、どの法律の規制対象になりますか?

A. 円建てで発行し、物品購入やサービスの代価に使えるゲーム内通貨は、資金決済法の「前払式支払手段」に該当することがあります。前払式支払手段には、発行者自身への支払いにしか使えない「自家型」と、それ以外の「第三者型」があり、第三者型を発行するには登録が必要で、未使用残高が一定額を超えると発行保証金の供託など利用者保護の義務も生じます。

また、暗号資産と交換できる設計にすると暗号資産該当性の論点も加わるため、通貨の使いみちを発行者の外に広げるほど確認すべき点が増えます。

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Q. ステーブルコインは、事業会社が自社で発行できますか?

A. 法定通貨に価値を連動させたステーブルコイン(電子決済手段)を発行できるのは、銀行・資金移動業者・特定信託会社に限られ、一般の事業会社が単独で発行することはできません。事業会社がステーブルコインを扱う場合は、自ら発行するのではなく、発行済みの電子決済手段を決済・送金に活用したり、仲介したりする形が中心になります。

その仲介業務は「電子決済手段等取引業」として登録制の対象で、利用者資産の分別管理などの義務が課されます。

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Q. 暗号資産取引で得た利益は、どの所得区分になりますか?

A. 個人が暗号資産取引で得た利益は、原則として雑所得に区分されます。国税庁のFAQによれば、事業用資産として暗号資産を保有し、棚卸資産の購入の決済手段として使用した場合など、事業に付随する取引は事業所得に区分されるとされています。事業として継続的にトークンを扱う場合は、どの所得区分になるかを早めに確認しておくとよいでしょう。個別の申告実務は税理士への相談が前提です。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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