脱炭素やカーボンニュートラルへの対応が事業活動の前提になるなかで、その手段の一つとして「カーボンクレジット」という言葉を目にする機会が増えています。取引先や社内から「排出をオフセット(相殺)できないか調べてほしい」と求められても、仕組みや種類、価格の相場が整理されていないと、検討の土台をつくりにくいのが実情です。
本記事では、カーボンクレジットとは何かという定義から、価値が生まれる仕組み、国内外の種類、1トンあたりの価格相場、買い方と自社での使い道、そしてグリーンウォッシュなどの課題までを整理します。
制度が多く混同しやすい種類と、制度・種類によって幅のある価格相場は、それぞれ表で一覧できるようにまとめました。カーボンクレジットの全体像を把握し、自社での調達を検討する際の判断材料としてご活用ください。
目次
カーボンクレジットとは
カーボンクレジットとは、省エネ設備の導入や森林管理などによって生まれた温室効果ガスの排出削減量・吸収量を、第三者機関が認証し、売買できるようにした「環境価値の証書」です。取引の単位は原則として、CO2換算で1トン(1t-CO2)を1クレジットとして数えます。
自社の努力だけでは減らしきれない排出量を、他者が生み出したこの削減価値を購入して埋め合わせる(オフセットする)、というのが基本的な使われ方です。
削減・吸収という取り組みに、金額に換算できる価値の裏づけを与えるのがカーボンクレジットの役割です。その価値が売買されることで、脱炭素に向けた取り組みに資金が回るようにする狙いがあります。
カーボン・オフセットとの違い(削減の努力が先)
カーボンクレジットとよく一緒に使われる言葉に「カーボン・オフセット」があります。オフセットはクレジットそのものではなく、クレジットを使って排出を埋め合わせるという「考え方・行為」を指します。環境省は、その順序を次のように定義しています。
カーボン・オフセットとは、日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方です
出典:J-クレジット制度及びカーボン・オフセットについて|環境省
ここで重要なのは「まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い」という順序です。クレジットの購入は、自社の削減努力を尽くしたうえで、どうしても残る排出を埋め合わせる最後の手段と位置づけられています。クレジットを買えば自社で減らさなくてよい、という性質のものではない点は、後述する品質やグリーンウォッシュの論点にも関わります。
カーボンクレジットの仕組み
ここからは、削減・吸収の取り組みがどのように「取引できる価値」へと変わるのかを解説します。
削減・吸収から取引・相殺までの流れ
カーボンクレジットは、およそ次の順序で生まれ、使われます。まず、企業や自治体が省エネ設備の導入や森林の適切な管理といった削減・吸収の取り組みを実施します。次に、その削減量・吸収量を定められた計算方法(方法論)にもとづいて算定します。算定結果は審査機関による第三者の認証を受け、国や認証機関によってクレジットとして登録・発行されます。
発行されたクレジットは、削減の取り組みをした側から、埋め合わせをしたい企業へ売買されます。買い手はそのクレジットを自社の排出量から差し引く(無効化してオフセットに充てる)ことで、報告や目標達成に活用します。この「削減・吸収 → 算定 → 第三者認証 → 登録・発行 → 取引 → 無効化(オフセット)」という流れが、カーボンクレジットの基本的な仕組みです。

ベースライン&クレジットとキャップ&トレードの2つの考え方
クレジットや排出枠が生まれる仕組みには、大きく2つの考え方があります。1つ目は「ベースライン&クレジット」です。取り組みをしなかった場合に想定される排出量(ベースライン)を基準に置き、実際の排出量との差分を削減量としてクレジット化します。国内のJ-クレジット制度はこの方式で、制度事務局は次のように説明しています。
「プロジェクト実施後排出量」と「ベースライン排出量」の差分である排出削減量を、国が「J-クレジット」として認証する。「ベースライン排出量」とは、仮にプロジェクトを実施しなかった場合に想定されるCO2排出量を指す。
出典:J-クレジット制度について(2026年6月)|J-クレジット制度事務局
2つ目は「キャップ&トレード」です。排出できる総量の上限(キャップ)をあらかじめ定め、その枠内で排出枠を企業間で売買します。欧州連合の排出量取引制度(EU-ETS)が代表例で、排出枠は「CO2換算1トンの排出権を与える1単位(アロワンス)」として発行され、オークションでの売却や取引の対象になります。日本でも、後述するGXリーグの排出量取引制度(GX-ETS)がこの考え方を取り入れています。
出典・参考資料(1件)

「追加性」とは(なぜ価値になるのか)
クレジットが価値を持つうえで欠かせない考え方が「追加性」です。これは、その制度やクレジット収入がなければ実施されなかったであろう削減・吸収の取り組みだけをクレジットの対象とする、という原則です。J-クレジット制度では、追加性を持つ事業を次のように定めています。
本制度がない場合に、経済的障壁等により排出削減活動が実施されない事業が対象。
出典:J-クレジット制度について(2026年6月)|J-クレジット制度事務局
すでに実施されるはずだった取り組みをクレジット化しても、社会全体の排出量は追加的に減りません。放っておけば行われなかった削減に資金を回すからこそ、クレジットに環境価値が認められます。追加性は、後述するクレジットの品質を見分けるうえでも中核となる観点です。
カーボンクレジットの種類
カーボンクレジットには、国が運営する国内制度、国が関与する国際制度、民間団体が運営するボランタリー(任意)の制度など、複数の種類があります。まずは主な制度を一覧で整理します。
| 制度・クレジットの種類 | J-クレジット | JCM(二国間クレジット制度) | Jブルークレジット | パリ協定6条4項メカニズム | VCS(Verra) | Gold Standard |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 運営主体 | 国(経済産業省・環境省・農林水産省) | 国(環境省・経済産業省ほか) | 民間(ジャパンブルーエコノミー技術研究組合) | 国連(UNFCCC) | 民間(非営利団体Verra) | 民間(スイスの非営利団体) |
| 市場区分 | ボランタリー中心(報告にも利用) | 国の制度(パリ協定6条) | ボランタリー(任意) | 国連・コンプライアンス寄り | ボランタリー(任意) | ボランタリー(任意) |
| 対象・特徴 | 省エネ・再エネ設備の導入や森林管理等による削減・吸収量を国が認証。削減量の算定ルール(方法論)は76件(2026年4月時点) | 日本とパートナー国が協力して実施した削減・吸収量を両国で配分。32か国と署名(2026年4月時点) | 藻場・干潟など海洋生態系によるCO2吸収(ブルーカーボン)を対象とした国内の認証制度 | 京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)を引き継ぐ国連主導の国際的な仕組み | 世界で広く使われる民間のボランタリークレジット。1VCU=1トンのCO2削減・除去 | 環境・社会面への配慮を重視する国際的なボランタリークレジットの認証基準 |
※各制度の運営主体・対象は各公式情報にもとづく(2026年時点)。方法論数・署名国数は時点により変動します。
以下では、国内制度と国際・ボランタリー制度に分けて主な種類を解説し、あわせて「コンプライアンス市場」と「ボランタリー市場」という2つの市場の違いも整理します。
日本が関わる制度(J-クレジット・JCM・Jブルークレジット)
国内で中心となるのがJ-クレジット制度です。もとは2008年に創設されたオフセット・クレジット(J-VER)制度などが、2013年度に一本化されて始まりました。制度事務局と環境省は、その位置づけを次のように説明しています。
「オフセット・クレジット(J-VER)制度」を2008年11月に創設し、2013年度からは、J-VER制度及び国内クレジット制度が発展的に統合したJ-クレジット制度が開始しました。J-クレジット制度とは、環境省、経済産業省、農林水産省が運営するベースライン&クレジット制度であり、省エネ・再エネ設備の導入や森林管理等による温室効果ガスの排出削減・吸収量をJ-クレジットとして認証しています。
出典:J-クレジット制度及びカーボン・オフセットについて|環境省
削減・吸収の取り組みごとに、削減量を算定する共通ルールが「方法論」として定められており、2026年4月時点で76件が承認されています。この方法論に沿って算定・認証されるため、どの取り組みがどれだけの削減になるかが客観的に評価されます。
国が関与する国際制度としては、二国間クレジット制度(JCM)があります。日本とパートナー国が技術や資金を出し合って海外で削減・吸収の取り組みを行い、その成果を両国で分け合う仕組みで、2026年4月時点で32か国と実施のための文書に署名しています。
JCMは2024年の地球温暖化対策推進法の改正で法制化され、2025年4月以降は同法にもとづいて実施されています。
このほか、藻場や干潟など海洋生態系が吸収するCO2(ブルーカーボン)を対象にしたJブルークレジットもあります。ジャパンブルーエコノミー技術研究組合が第三者委員会の審査を経て認証・発行する国内の制度です。
出典・参考資料(3件)
国際制度・ボランタリークレジット(パリ協定6条4項・VCS・Gold Standard)
国際的な仕組みとしては、まず京都議定書で導入されたクリーン開発メカニズム(CDM)があります。先進国が途上国で削減事業を実施してクレジット(CER)を得る仕組みで、2000年代後半から2010年代にかけて世界で多数のクレジットを生み出しました。一方で、追加性やクレジットの品質をめぐる批判もあり、京都議定書の終了とパリ協定への移行にともなって新規の登録は事実上終了しています。その経験や基盤は、パリ協定第6条4項にもとづく国連主導のメカニズムへと引き継がれており、後継にあたるのはこの国連の6条4項メカニズムです。
一方、民間の非営利団体が独自の基準で運営するボランタリークレジットもあります。
代表的なのが、非営利団体Verraが運営するVCS(Verified Carbon Standard)で、世界で広く使われている民間のクレジット制度です。1VCUが1トンのCO2削減・除去を表します。スイス・ジュネーブに拠点を置く非営利団体が運営するGold Standardも、環境・社会面への配慮を重視する国際的な認証基準の一つです。これらのボランタリークレジットは、企業が自主的な脱炭素目標やカーボン・オフセットの達成に用いられます。加えて、国際航空分野の排出削減枠組み(CORSIA)が認める適格クレジットにも、VCSやGold Standardの一部が含まれます。こうしたクレジットは国境を越えて取引されています。
これらの民間基準は国連のCDMや6条4項メカニズムとは別系統で、独立して運営されている点に注意が必要です。
出典・参考資料(3件)
コンプライアンス市場とボランタリー市場の違い
カーボンクレジットが取引される市場は、大きく「コンプライアンス(義務)市場」と「ボランタリー(任意)市場」に分かれます。コンプライアンス市場は、法令や制度にもとづいて排出枠の取引が行われる市場で、EU-ETSや日本のGX-ETSがこれにあたります。一定規模以上の大規模な排出者に参加が義務づけられ、排出上限(キャップ)の範囲で枠を売買します。
これに対しボランタリー市場は、企業などが自主的に脱炭素へ取り組むために、民間基準のクレジット(VCSやGold Standard等)を売買する市場です。義務ではないため参加や活用の判断は各社に委ねられます。一般に、国際的なコンプライアンス市場で使えるクレジットは、ボランタリー市場向けのクレジットより高い価格がつく傾向があると報告されています。
出典・参考資料(2件)
カーボンクレジットの価格相場
カーボンクレジットの価格は「1トンあたりいくら」で表され、制度やクレジットの種類によって異なります。国内のJ-クレジットの相場は、東京証券取引所のカーボン・クレジット市場で公表されている約定価格が一つの目安になります。以下は、市場開設以降(2023年10月11日〜2026年8月31日)の種類別の約定価格です。
| 制度・種類別の価格相場(1トンあたり) | J-クレジット(省エネルギー由来) | J-クレジット(再生可能エネルギー・電力由来) | J-クレジット(森林由来) | EU-ETS(欧州の排出枠・海外コンプライアンス市場の参考) | 海外ボランタリークレジット(VCS・Gold Standard等) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1トンあたりの相場 | 加重平均 2,933円(1,510〜5,450円) | 加重平均 4,664円(1,500〜6,600円) | 加重平均 5,393円(4,300〜9,900円) | 2024年平均 約64.74ユーロ(高値75.35・安値49.50)。為替により変動しますが日本円でおおむね1万円前後 | 種類・品質で幅が大きい。再エネ・排出回避系は概ね数ドル、森林等の自然由来の除去系は20ドル前後〜それ以上。相対取引中心で単一の公表実額はなし |
| 出所・時点 | 東証 約定価格(2023/10/11〜2026/8/31) | 東証 約定価格(同上) | 東証 約定価格(同上) | 欧州委員会 カーボン市場報告(2024年) | 市場各社の相場報告(2024年) |
※東証の値は市場開設以降の約定価格(加重平均・安値〜高値)。日々更新されるため最新値は各出所をご確認ください。
同じJ-クレジットでも、省エネルギー由来が加重平均2,933円、森林由来は5,393円と、種類によって価格に差があります。
価格が幅を持つのは、削減・吸収の方法(省エネ・再エネ・森林など)、供給量と需要のバランス、そしてクレジットの品質への評価が異なるためです。海外のボランタリークレジットは相対(あいたい)取引が中心で、発行元が一律の価格を公表していません。そのため単一の実額は示せませんが、市場各社の相場報告によると価格は種類・品質で幅があります。再生可能エネルギーなどの排出回避系はおおむね1トンあたり数ドル、森林など自然由来の除去系は20ドル台からそれを上回る水準です。高品質な自然由来の除去クレジットには、1トンあたり数十ドル〜100ドル超の値がつく取引もあります。
出典・参考資料(3件)
カーボンクレジットの買い方・使い道
ここからは、カーボンクレジットをどこで買い、自社の何に使えるのかを整理します。
どこで買えるか(購入経路)
国内でカーボンクレジットが取引される代表的な「場」が、東京証券取引所のカーボン・クレジット市場です。2022年度の実証事業を経て、2023年10月11日に正式に開設されました。取引対象はJ-クレジットと、GXリーグ(経済産業省が主導する、企業が排出削減に取り組む枠組み)の参加企業が生む超過削減枠で、売買単位は1t-CO2です。
ただし、この市場で直接売買するには参加者としての登録が必要です。そのため、多くの事業会社は取引参加者や仲介する事業者を通じてクレジットを調達します。
市場を介さず、クレジットの創出者や仲介する事業者から相対(あいたい)で購入する方法もあります。まとまった量を特定の種類で調達したい場合や、購入から報告までの手続きを支援してほしい場合には、こうした事業者を利用するのが一般的です。購入経路ごとに、価格の決まり方や手続きの負担が変わる点を押さえておくとよいでしょう。
出典・参考資料(1件)
自社の報告・オフセットでの使い方
購入したクレジットは、自社の脱炭素の取り組みを対外的に示す場面で活用できます。J-クレジットの場合、制度事務局は活用者の用途として次を挙げています。
① 温対法の調整後温室効果ガス排出量の報告 ② 省エネ法の共同省エネルギー事業および非化石エネルギー使用量の報告 ③ カーボン・オフセット、CSR活動 (環境・地域貢献) 等 ④ GXリーグにおける排出量実績の報告 ⑤ CDP質問書及びRE100達成のための報告(再エネ電力由来のクレジットに限る) ⑥ SHIFT事業の削減目標達成への利用 ⑦ 経団連カーボンニュートラル行動計画の目標達成
出典:J-クレジット制度について(2026年6月)|J-クレジット制度事務局
温室効果ガスの排出量やエネルギー使用の報告を一定規模以上の事業者に求める温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)・省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)への対応や、GXリーグでの排出量実績の報告、CDP(企業の環境情報開示の国際的な枠組み)やRE100(使用電力を再生可能エネルギー100%にする国際的な取り組み)への報告にも使えます。
ただし⑤にあるとおり、CDPやRE100での活用は再生可能エネルギー電力由来のクレジットに限られるなど、用途によって使えるクレジットの種類に条件がある点には注意が必要です。
カーボンクレジットのメリット・デメリットと課題
導入を検討するうえで、メリットと課題の両面を押さえておくことが欠かせません。
導入・活用のメリット
買い手にとっての主なメリットは、自社の努力だけでは減らしきれない排出を埋め合わせ、脱炭素の目標達成や各種の報告に対応できることです。取引先や投資家から求められる環境対応の姿勢を、具体的な行動として示す手段にもなります。売り手(クレジットを創出する側)にとっては、省エネ設備の導入や森林管理といった取り組みが、クレジットの売却収入という形で経済的に評価される点がメリットです。
デメリット・課題(グリーンウォッシュ・品質のばらつき)
一方で、クレジットの購入だけを脱炭素の実績として強調すると、実態を伴わない環境訴求とみなされる「グリーンウォッシュ」の懸念があります。前述のとおりオフセットはあくまで自社の削減努力を尽くしたうえでの埋め合わせであり、購入が削減の代わりになるわけではありません。
また、クレジットには品質のばらつきがあります。World Bankの報告では、クレジットの価格と、格付け事業者による品質評価との間に正の相関が生まれつつあると指摘されており、品質の差が市場でも意識され始めています。
さらに、同じ削減価値を売り手と買い手の双方が主張してしまう「二重計上」を避ける必要もあります。J-クレジット制度では、クレジットを他者に移転・発行した場合、その削減価値はもう主張できないと定められています。
出典・参考資料(2件)
品質を見分ける観点(追加性・永続性・第三者認証)
信頼できるクレジットを選ぶうえでは、制度が求める要件が参考になります。J-クレジット制度では、プロジェクトが満たすべき要件として次を定めています。
・追加性を有すること。・本制度で定められた方法論が適用できること。・環境社会配慮を行い持続可能性を確保すること。・審査機関による第三者認証を受けていること。・(方法論が定める場合のみ)永続性担保措置が取られていること。・クレジットを他者に移転・発行した場合、その削減価値は主張できなくなること。
出典:J-クレジット制度について(2026年6月)|J-クレジット制度事務局
ここに挙がる「追加性」「第三者認証」「永続性の担保」「二重計上の回避」は、クレジットの品質を見分ける観点としてそのまま使えます。特に、森林などの吸収系クレジットは、山火事や伐採で吸収した炭素が再び放出されるリスクがあるため、永続性がどう担保されているかを確認しておくと安心です。どの制度・方法論にもとづいて認証されたクレジットかを確かめることが、品質を見極める第一歩になります。
自社でカーボンクレジットを調達するには
ここまでの内容を踏まえ、自社で実際にクレジットを調達する場合の選択肢を整理します。前述の東京証券取引所の市場のような「取引の場」で自ら売買する方法のほかに、調達を支援する事業者を活用する方法があります。
調達を支援する事業者は、大きく次のような類型に分かれます。1つ目は、買い手の代わりに適したクレジットを選んで調達する調達代行・仲介です。2つ目は、オンライン上でクレジットの売買や情報閲覧ができる調達プラットフォーム・取引所です。3つ目は、クレジットの創出から販売までを一貫して支援する事業者です。
自社で銘柄を選び、品質を見極め、報告までの手続きを行う負担が大きい場合には、こうした事業者を利用することで検討を進めやすくなります。
事業者を選ぶ際は、「カーボンクレジット取引所」などの名称を掲げる民間サービスと、東京証券取引所のカーボン・クレジット市場とでは運営主体が異なる点に注意しましょう。どの事業者が何を提供しているのかを、名称のイメージだけで判断せず個別に確認することが大切です。
また、自社の省エネや森林管理などからクレジットを創出して売却する側を検討する場合は、発行の申請から登録までの支援内容や実績を会社ごとに比較した以下の記事が参考になります。
まとめ
カーボンクレジットは、温室効果ガスの削減・吸収量を第三者が認証し、1トンを単位として売買できるようにした環境価値の証書です。国内のJ-クレジットや国が関与するJCM、民間のVCS・Gold Standardなど種類は多岐にわたり、価格も種類・品質・市場によって幅があります。
活用にあたっては、まず自社の削減努力を尽くしたうえで残る排出を埋め合わせるという順序と、追加性・第三者認証・永続性といった品質の観点を押さえることが欠かせません。全体像を理解したうえで、自社に合った種類と調達方法を検討していきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. カーボンクレジットとは何ですか?
カーボンクレジットとは、省エネ設備の導入や森林管理などで生まれた温室効果ガスの排出削減量・吸収量を、第三者機関が認証して売買できるようにした「環境価値の証書」です。取引の単位は原則としてCO2換算で1トン(1t-CO2)を1クレジットと数えます。自社の努力だけでは減らしきれない排出量を、他者が生み出したこの削減価値を購入して埋め合わせる(オフセットする)のが、基本的な使われ方です。
Q. カーボンクレジットとカーボン・オフセットは何が違いますか?
両者の違いは、カーボンクレジットが売買できる「証書(モノ)」であるのに対し、カーボン・オフセットはそのクレジットを使って排出を埋め合わせる「考え方・行為」を指す点にあります。
環境省の定義では、オフセットはまずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても残る排出を削減活動への投資で埋め合わせる、という順序が前提とされています。クレジットを買えば自社で減らさなくてよい、という性質のものではありません。
Q. カーボンクレジットの価格は1トンあたりいくらですか?
価格は制度・種類によって大きく異なり、国内のJ-クレジットは東京証券取引所の約定価格で1トンあたり加重平均およそ2,900〜5,400円(省エネ由来は約2,933円、森林由来は約5,393円)が目安です(2023年10月〜2026年8月の実績)。
海外のコンプライアンス市場を代表するEU-ETSの排出枠は2024年平均で約64.74ユーロ/トンと高く、民間のボランタリークレジットは相対取引が中心で種類・品質により幅があります。制度別の一覧は本文の価格相場の表をご確認ください。
Q. カーボンクレジットはどこで買えますか?
カーボンクレジットは、東京証券取引所が2023年10月に開設したカーボン・クレジット市場や、クレジットの創出者・仲介事業者との相対(あいたい)取引で購入できます。
東証市場ではJ-クレジットとGXリーグの超過削減枠を、売買単位1t-CO2で市場価格により売買できます。まとまった量を特定の種類で調達したい場合や、購入から報告までの手続き支援を受けたい場合には、調達を支援する事業者を利用するのが一般的です。
Q. J-クレジットと海外のボランタリークレジットは何が違いますか?
大きな違いは運営主体にあります。J-クレジットは国(経済産業省・環境省・農林水産省)が運営する国内制度で、海外のVCS(Verra運営)やGold Standardは民間の非営利団体が独自基準で運営するボランタリー(任意)制度です。
J-クレジットは温対法・省エネ法など国内の報告制度と結びついて使いやすい一方、ボランタリークレジットは国際的に広く流通しています。どの制度・方法論で認証されたクレジットかによって、価格や使える用途が変わる点を押さえておくとよいでしょう。
Q. カーボンクレジットを買えば、自社の排出量を減らしたことになりますか?
クレジットを買っても、自社が実際に排出したCO2そのものが減るわけではなく、あくまで他者が生み出した削減価値で排出を相殺(オフセット)し、報告や目標達成に反映できるという位置づけです。環境省の定義でも、まず自社の削減努力を尽くしたうえで、どうしても残る排出を埋め合わせる最後の手段とされています。購入が自社の削減の代わりになるものではないため、削減努力とセットで活用することが前提になります。
Q. カーボンクレジットの活用はグリーンウォッシュになりませんか?
クレジットの購入自体は正当な脱炭素の手段ですが、削減努力を伴わずクレジットの購入だけを実績として強調すると、実態を伴わない環境訴求=グリーンウォッシュとみなされる懸念があります。
これを避けるには、まず自社の排出削減を優先し、そのうえで残る排出の埋め合わせにクレジットを使うこと、そして追加性・第三者認証・永続性の担保といった品質の観点から信頼できるクレジットを選ぶことが重要です。どの制度・方法論で認証されたクレジットかを確かめることが、その第一歩になります。
Q. カーボンクレジットは自社のどんな報告や目標達成に使えますか?
J-クレジットの場合、温対法や省エネ法にもとづく排出量の報告、GXリーグでの排出量実績の報告、CDP質問書やRE100の達成報告、カーボン・オフセットやCSR活動などに活用できます。
ただしCDP・RE100への活用は再生可能エネルギー電力由来のクレジットに限られるなど、用途によって使えるクレジットの種類に条件があります。自社がどの制度・枠組みに対応したいかを踏まえて、適したクレジットの種類を選ぶ必要があります。
Q. 自社でカーボンクレジットを調達するには、何から始めればよいですか?
まず自社の排出削減を進めたうえで、埋め合わせが必要な排出量を把握し、報告・オフセットの目的に合う種類のクレジットを選ぶのが出発点です。購入は、東京証券取引所のカーボン・クレジット市場(直接売買には参加者登録が必要)か、調達を支援する事業者を通じて行うのが一般的です。購入時は、追加性・第三者認証・永続性といった品質の観点で信頼できるクレジットかを見極めることが大切です。
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