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M&Aの手法(スキーム)とは?株式譲渡・事業譲渡など種類の違いと税金を一覧で解説

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M&Aアドバイザリー・FA比較表(2026年版)

会社の売却や事業承継、あるいは他社の買収を考え始めると、仲介会社や銀行との会話に「株式譲渡」「事業譲渡」「スキーム」といった言葉が出てきます。M&A(企業の合併・買収)には複数の手法(スキーム)があり、どれを選ぶかによって、引き継がれる範囲・かかる税金・手続きの重さが大きく変わります。

ところが、それぞれの手法が「結局なにをするものなのか」は、専門用語のまま説明されて掴みづらいのが実情です。手法の違いを理解しないまま話が進むと、自社にとって不利な条件や想定外の税負担に後から気づくことにもなりかねません。

本記事では、株式譲渡・事業譲渡・会社分割・合併・株式交換・株式移転・株式交付・第三者割当増資といったM&Aの主要な手法を、何が動くのか・対価は誰が受け取るのか・何を引き継ぐのか・税金はどうなるかの観点から一覧で整理します。

あわせて、手法別のメリット・デメリット、自社に合う手法の選び方、実行までの流れ、相談先の選択肢まで解説します。自社の目的に合う手法の当たりをつけるための判断材料としてご活用ください。

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M&Aの手法(スキーム)とは

M&Aの手法(スキーム)とは、会社や事業の経営権・資産を移転するための法的な枠組みを指します。同じ「会社を売る・買う」でも、動かすのが株式か事業か、対価を受け取るのが株主か会社か、引き継ぐ範囲が全部か一部かによって、いくつかの手法に分かれます。

手法は、大きく次の3つの系統に整理すると理解しやすくなります。

  • 株式を動かす手法(買収):株式譲渡・株式交換・株式移転・株式交付・第三者割当増資。会社の株式(=経営権)を移転する
  • 事業を動かす手法:事業譲渡・会社分割。会社そのものではなく、事業や資産を移転する
  • 会社を統合・再編する手法:合併。複数の会社を1つに統合する
M&Aの主要な手法を3つの系統に分類した図。株式を動かす手法(買収)は株式譲渡・株式交換・株式移転・株式交付・第三者割当増資で、会社の株式(経営権)を移転する。事業を動かす手法は事業譲渡・会社分割で、会社ではなく事業や資産を移転する。会社を統合・再編する手法は合併で、複数の会社を1つに統合する。

このうち合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付は、会社法が「組織再編行為」として定義している手法です。会社法第2条は各手法を号ごとに定義しており、たとえば合併・会社分割・株式交換については次のように規定しています(抜粋)。

  • 二十七 吸収合併 会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいう。
  • 二十九 吸収分割 株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後他の会社に承継させることをいう。
  • 三十一 株式交換 株式会社がその発行済株式……の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいう。
出典:会社法 第2条|e-Gov法令検索

これらに、会社法上の組織再編には当たらない株式譲渡・事業譲渡を加えたものが、M&Aで用いられる主要な手法です。このほか、経営に参加する目的で新株を引き受ける第三者割当増資や、公開買付け(TOB)・マネジメント・バイアウト(MBO)といった手法・取引類型もあり、これらは後半で改めて解説します。

M&Aの手法(スキーム)の種類一覧

ここからは、主要な手法を一覧で比較します。何が動くか・対価の受取人・引き継ぎ範囲・税金の要点・向く場面の観点で並べると、各手法の位置づけがつかみやすくなります。

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手法名株式譲渡事業譲渡会社分割合併株式交換・株式移転株式交付第三者割当増資
何が動くか株式(経営権)事業・資産(選んで移す)事業(包括的に承継)会社(1社に統合)株式(完全子会社化・持株会社化)株式(子会社化)新株(資本注入)
対価の受取人株主(多くは経営者)会社会社または株主消滅会社の株主対象会社の株主対象会社の株主会社(資本に入る)
引き継ぎ範囲包括承継(負債・契約・許認可もそのまま)個別承継(対象を選択。契約・許認可は個別移転)包括承継(分割対象の権利義務をまとめて)包括承継(権利義務の全部)包括承継(発行済株式の全部)取得した株式の範囲(完全子会社化は前提としない)経営権の一部(出資比率に応じる)
税金の要点個人株主は譲渡益に20.315%
法人株主は法人税
譲渡益に法人税
課税資産に消費税
原則は時価課税
適格要件を満たせば課税繰延
原則は時価課税
適格要件を満たせば課税繰延
原則は時価課税
適格要件を満たせば課税繰延
原則は時価課税
要件により課税繰延の措置あり
会社への払込みで、譲渡益課税は生じにくい
向く場面会社全体をそのまま引き継ぐ特定の事業だけを売買する事業を切り出して再編・承継する複数の会社を1つに統合するグループ化・持株会社体制をつくる自社株式を対価に子会社化する資金調達と資本提携を同時に進める

※上記は各手法の一般的な傾向を整理したものです。税金の取扱いや必要な手続きは、当事者が個人か法人か、適格要件を満たすかなどにより変わるため、個別の判断は専門家にご確認ください。

各M&A手法の特徴

ここからは、各手法を「何が動くか・対価・引き継ぎ範囲」の順に、系統ごとに詳しく見ていきます。まず株式を動かす手法から解説します。

株式を動かす手法(買収)

株式譲渡

株式譲渡は、譲渡する側の株主(多くは経営者)が、保有する株式を買い手に売却する手法です。会社の株主が入れ替わるだけで、会社の法人格そのものには変動がありません。そのため、資産・負債・従業員との雇用契約・取引先との契約・許認可などを、原則としてまとめて引き継ぐ包括承継となります。

手続きが比較的シンプルで、会社全体をそのまま引き継げるため、中小企業のM&Aで広く用いられています。一方で、法人格が変わらないことから、貸借対照表に表れない簿外債務や、将来発生し得る偶発債務もそのまま引き継ぐ点には注意が必要です。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」も、この特徴を次のように整理しています。

(株式譲渡)……手続は比較的シンプルだが、譲り渡し側の法人格に変動はないため、(未払残業代等、貸借対照表上の数字には表れない)簿外債務・(紛争に関する損害賠償債務等、現時点では未発生だが将来的に発生し得る)偶発債務リスクが比較的高くなりやすく、より詳細なデュー・ディリジェンス(DD)が実施される傾向にある。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁

株式交換・株式移転

株式交換は、対象会社の発行済株式の全部を、別の会社に取得させる手法です。これにより対象会社は、取得した会社の完全子会社になります。株式移転は、1つまたは複数の会社が発行済株式の全部を、新たに設立する会社に取得させる手法で、既存の会社を子会社とする持株会社(ホールディングス)体制をつくるときに使われます。

いずれも会社法上の組織再編行為で、現金ではなく株式を対価にできる点が特徴です。グループ全体の資本関係を整理したい場合や、既存企業をまとめて持株会社の傘下に置きたい場合に選ばれます。

株式交付

株式交付は、自社の株式を対価として相手会社の株式を譲り受け、相手会社を子会社にする手法です。2019年に成立した改正会社法(令和元年法律第70号)で新設され、2021年3月1日から施行されました。法務省は、この制度を次のように説明しています。

「株式会社が他の株式会社を子会社化するに当たって、自社の株式を当該他の株式会社の株主に交付することができる制度を創設することとしています」(法務省)。発行済株式の全部を取得する株式交換と異なり、完全子会社化を前提としない子会社化に使える点が特徴です。買収資金を現金で用意せずに子会社化を進めたい場合の選択肢になります。

出典・参考資料(2件)

第三者割当増資

第三者割当増資は、特定の相手に新株を引き受けてもらい、その払込金を会社の資本に入れる手法です。株式の売買と違い、対価は既存株主ではなく会社に入ります。買い手は出資比率に応じて経営に参加でき、資金調達と資本提携を同時に進められる点が特徴です。

発行する株式数によって経営権の移り方が変わるため、業務提携の一環として一部の株式を引き受けるケースから、過半数を取得して子会社化するケースまで幅があります。既存株主の持分割合が薄まる(希薄化する)点は、あらかじめ整理しておく必要があります。

事業を動かす手法

事業譲渡

事業譲渡は、会社そのものではなく、会社が営む事業を対象に売買する手法です。譲渡する資産・負債・契約を個別に選べる(個別承継)ため、必要な事業だけを移し、不要な資産や負債は手元に残せます。中小企業庁のガイドラインも、承継対象を選べる点と、その代わりに個別の移転手続きが必要になる点を次のように整理しています。

(事業譲渡)……譲渡の対象となる財産(承継対象財産)を選択でき、譲り渡し側の法人格から切り離すことができるため、簿外債務・偶発債務リスクを比較的遮断しやすいが、手続には(土地、建物や機械設備等といった)承継対象財産の特定や、(不動産登記手続等の)対抗要件具備、許認可の取得等の作業が必要になる。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁

事業の全部、または重要な一部(譲り渡す資産の帳簿価額が総資産額の5分の1を超える場合が目安)を譲渡するときは、株主総会の決議による承認が必要です(会社法第467条)。契約や許認可は自動では引き継がれず、取引先の同意取得や許認可の取り直しといった手続きが個別に発生する点が、株式譲渡との大きな違いです。

出典・参考資料(1件)

会社分割(吸収分割・新設分割)

会社分割は、会社が営む事業に関する権利義務の全部または一部を、他の会社に承継させる組織再編行為です。既存の会社に承継させる吸収分割と、新たに設立する会社に承継させる新設分割があります。対価を誰が受け取るかは分割の型によって分かれ、分割する会社が対価を受け取る形(分社型)と、対価が株主に交付される形(分割型)があります。

事業譲渡と似ていますが、会社分割は対象となる事業の権利義務を包括的に承継させる点が異なります。個別の資産・契約を1つずつ移転するのではなく、分割計画・分割契約で定めた範囲をまとめて引き継げるため、大きな事業単位を切り出して再編・承継する場面に向いています。一方で、後述する債権者保護手続などが必要になり、手続きは事業譲渡より重くなる傾向があります。

会社を統合・再編する手法

合併(吸収合併・新設合併)

合併は、複数の会社を1つの会社に統合する手法です。存続する会社が消滅する会社の権利義務の全部を引き継ぐ吸収合併と、新たに設立する会社が全ての権利義務を引き継ぐ新設合併があります。消滅する会社の権利義務は全部が承継されるため、包括承継の代表的な手法です。

グループ内の会社を統合して重複する機能を整理したい場合などに用いられますが、消滅する会社が法的になくなるため、株主・債権者への影響が大きく、後述する株主総会の特別決議や債権者保護手続を伴います。

「手法」と分けて考える取引類型

MBO・TOB

マネジメント・バイアウト(MBO)と公開買付け(TOB)は、株式譲渡などの手法と組み合わせて使われる「取引の類型」であり、手法そのものとは分けて理解すると混乱しません。

MBOは、対象会社の経営陣が買い手側に立って株式を取得する取引を指します。オーナーからの承継や、上場会社の非公開化などの場面で使われます。TOBは、上場会社の株式を、価格や期間を公告したうえで市場外で買い集める方法です。いずれも中小の非上場企業のM&Aで日常的に使う手法というより、上場会社や特定の局面で用いられる類型として押さえておくとよいでしょう。

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手法別のメリット・デメリット(売り手/買い手の立場別)

ここからは、代表的な手法である株式譲渡・事業譲渡・組織再編について、売り手・買い手それぞれの立場でメリットとデメリットを整理します。判断のポイントは、経営権の移り方・簿外債務や不要な負債を切り離せるか・手続きの重さと期間の3点です。

株式譲渡のメリット・デメリット

株式譲渡は、会社全体をそのまま引き継ぐシンプルさが強みですが、簿外債務まで引き継ぐ点が注意点になります。

  • 売り手のメリット:手続きが比較的シンプルで、対価が個人株主に直接入る
  • 売り手のデメリット:買い手の調査(デューデリジェンス)が慎重になり、価格・条件の交渉に影響することがある
  • 買い手のメリット:契約や許認可をそのまま引き継げ、事業の継続性を保ちやすい
  • 買い手のデメリット:簿外債務や偶発債務など、想定外のリスクまで抱え込む可能性がある

事業譲渡のメリット・デメリット

事業譲渡は、必要な資産・負債・契約を選んで移せる手法で、リスクの切り離しがしやすい反面、個別の移転手続きに手間がかかります。

  • 売り手のメリット:一部の事業だけを整理でき、残したい資産・負債は手元に残せる
  • 売り手のデメリット:譲渡益に法人税がかかり、契約や従業員の移転手続きが必要になる
  • 買い手のメリット:不要な負債やリスクを切り離し、必要な事業だけを取得できる
  • 買い手のデメリット:契約・許認可の個別移転や従業員の転籍同意など、手続きの負担と期間が増える

組織再編(合併・会社分割など)のメリット・デメリット

合併や会社分割などの組織再編は、現金を用意せずに株式を対価として統合・再編できる反面、法定の手続きが重くなりがちです。

  • メリット:買収資金を現金で用意せずに統合・再編でき、事業をまとめて包括的に承継できる
  • デメリット:株主総会の特別決議・反対株主の株式買取請求・債権者保護手続などで、手続きと期間の負担が大きい

手続きの重さを、もう少し具体的に見てみます。合併・会社分割・株式交換などでは、原則として株主総会の特別決議が必要です。会社法は特別決議の要件を次のように定めています。

……当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数……を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。

出典:会社法 第309条第2項|e-Gov法令検索

さらに、組織再編に反対する株主は、自己の株式を「公正な価格」で買い取るよう請求できます(会社法第469条・第785条)。合併や会社分割などでは、債権者が異議を述べる機会を保障する債権者保護手続(官報での公告と、判明している債権者への個別の催告)も必要です(会社法第789条・第799条)。

異議を述べる期間は1か月以上と定められており、これらの手続きに時間がかかるため、組織再編は株式譲渡より実行に日数を要する傾向があります。

出典・参考資料(1件)

手法別の税金(誰に・どの税・課税対象)

M&Aの手法を選ぶうえで、税金は避けて通れない論点です。ここでは、誰に・どの税が・何に対してかかるのかを手法別に整理します。個別の税額は事案ごとに変わるため、実際の試算は税理士など専門家への確認が必要ですが、制度の骨格を押さえておくと相談がスムーズになります。

株式譲渡にかかる税金

個人の株主が株式を売却して得た譲渡益には、他の所得と分けて計算する申告分離課税が適用されます。国税庁は税率を次のように示しています。

上場株式等に係る譲渡所得等(譲渡益) 20%(所得税15%、住民税5%)/一般株式等に係る譲渡所得等(譲渡益) 20%(所得税15%、住民税5%)……平成25年から令和29年までの各年分については、復興特別所得税を所得税と併せて申告・納付します。復興特別所得税額は、基準所得税額に2.1パーセントの税率を掛けて計算します。

出典:No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)|国税庁

内訳をみると、譲渡益に対して所得税15%・住民税5%の合計20%に、所得税額の2.1%分の復興特別所得税が上乗せされます。これらを合わせると、実質的な負担は所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=20.315%となります。株主が法人の場合は、この分離課税ではなく、譲渡益が法人税の課税対象になります。

事業譲渡にかかる税金

事業譲渡では、譲渡益が会社(法人)の益金として法人税の課税対象になります(法人税法第22条)。法人税は他の所得と合算して計算されるため、実際の税負担は会社の規模や状況によって変わります。加えて、譲渡する資産のうち課税対象となる資産には消費税(税率10%)がかかる点が、株式譲渡との大きな違いです。

法人にかかる税負担の目安として、2026年9月時点で、地方税を含めた法人実効税率は標準で約29.74%です(財務省)。ただし、資本金1億円以下の中小法人には軽減税率があり、現行の特例では所得のうち年800万円以下の部分には15%(所得が年10億円以下の場合)が適用されます(国税庁)。実際の税額は資本金や所得の規模、繰越欠損金の有無などで変わるため、具体的な試算は税理士に確認してください。

株主が法人である株式譲渡でも、譲渡益にはこの法人税がかかります。

消費税は、建物・機械設備・のれん(営業権。事業のブランド力や超過収益力などに付く価値)といった課税資産の譲渡にかかる一方、土地や有価証券(株式)の譲渡は非課税とされています(消費税法第6条・別表第二)。株式譲渡が「有価証券の譲渡」として消費税の対象外であるのに対し、事業譲渡では対象資産を課税・非課税に区分して計算する必要があります。

また、事業譲渡や会社分割で不動産などの登記・登録を伴う資産を引き継ぐ場合は、買い手側に登録免許税や不動産取得税がかかることもあります。

出典・参考資料(5件)

組織再編(合併・会社分割など)にかかる税金

合併や会社分割などの組織再編では、原則として、移転する資産・負債を時価で譲渡したものとして扱い、譲渡損益に課税されます(法人税法第62条)。ただし、一定の要件を満たす「適格組織再編」に該当する場合は、資産・負債を帳簿価額のまま引き継ぐことができ、譲渡損益が生じないため課税が繰り延べられます。法人税法は次のように定めています。

内国法人が適格合併により合併法人にその有する資産及び負債の移転をしたときは、前条第一項及び第二項の規定にかかわらず、当該合併法人に当該移転をした資産及び負債の当該適格合併に係る最後事業年度終了の時の帳簿価額……による引継ぎをしたものとして、当該内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する。

出典:法人税法 第62条の2|e-Gov法令検索

適格組織再編に当たるかどうかは、対価の要件や支配関係の継続、事業の継続などの基準で判断されます。要件は細かく、政令にゆだねられている部分も多いため、自社のケースが適格に該当するかは、税理士など専門家に確認することをおすすめします。

株式交換・株式移転も組織再編に含まれ、同じく原則は時価課税で、適格要件を満たせば課税が繰り延べられます。株式交付についても、自社株式を対価とする部分には課税を繰り延べる措置が設けられていますが、適用の可否は要件によって異なるため、専門家への確認が必要です。

自社に合う手法の選び方

手法の違いを踏まえたうえで、自社の目的に照らして候補を絞り込みます。中小企業のM&Aでは、株式譲渡と事業譲渡が最も多く用いられ、会社全体を譲る場合は株式譲渡、事業の一部を移す場合は事業譲渡が中心になります。個人事業主のM&Aは、事業譲渡(営業譲渡)の手法を用いるのが通常です。

目的別に候補となる手法を整理すると、次のようになります。

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目的会社全体をそのまま譲りたい(後継者不在の事業承継など)特定の事業だけを売買したい・不要な負債を残したい事業を切り出してグループ内で再編したい現金を用意せず株式を対価に統合・子会社化したい資金調達と資本提携を同時に進めたい
候補となる手法株式譲渡事業譲渡会社分割合併・株式交換・株式移転・株式交付第三者割当増資
判断のポイント簿外債務・偶発債務も引き継がれるため、事前の調査と情報開示が重要契約・許認可の個別移転や従業員の転籍手続きが必要包括承継できるが、債権者保護手続などで期間を要する適格要件を満たせば課税繰延。株主総会の特別決議が原則必要既存株主の持分割合が薄まる点を整理しておく

※目的と手法の対応は一般的な整理です。実際の選択は、税務・法務・会計への影響を踏まえて専門家と検討してください。

選ぶ際は、引き継ぐ範囲(負債や契約をまるごと引き継ぐか、選んで移すか)・対価が現金か株式か・買い手が資金を用意できるか・手続きにかけられる期間を、自社の状況に当てはめて比べることが判断の軸になります。手法によって税負担も変わるため、税務・法務・会計への影響は早い段階で専門家を交えて確認するのが安全です。

M&Aの実行の流れ(相談〜クロージング〜PMI)

手法の当たりがついたら、実際のM&Aは概ね次の流れで進みます。着手から成約までは、案件の規模や交渉次第で数か月から1年程度かかることが多く、全体像を押さえておくと、各段階でどの専門家に何を相談すればよいかが見えてきます。

M&A実行の流れを示した図。STEP1相談・準備(目的を整理しアドバイザーを選定)、STEP2探索・秘密保持(候補先へ打診し秘密保持契約を結んで情報開示)、STEP3面談・基本合意(トップ面談で条件の大枠を基本合意書にまとめる)、STEP4買収監査DD(買い手が財務・法務・税務などを精査)、STEP5最終契約・クロージング(契約を締結し対価の支払いと引き渡し)と進む。クロージング後はPMI(買収後の統合作業)として経営方針の共有・業務プロセスや人事制度の統合・システムの連携を段階的に進める。
  1. 相談・準備:M&Aの目的を整理し、アドバイザーを選定する
  2. 相手先の探索・秘密保持契約:候補先へ打診し、秘密保持契約を結んだうえで情報を開示する
  3. トップ面談・基本合意:経営者同士が面談し、条件の大枠を基本合意書にまとめる
  4. デューデリジェンス(買収監査):買い手が対象会社の財務・法務・税務などを精査する
  5. 最終契約・クロージング:最終条件を契約書にまとめ、対価の支払いと引き渡しを行う

クロージング後のPMI(M&A成立後に何が起きるか)

M&Aは成約して終わりではありません。クロージング後には、統合を進めて期待した効果を実現するためのPMI(Post Merger Integration、買収後の統合作業)が続きます。経営方針の共有・業務プロセスや人事制度の統合・システムの連携などを段階的に進め、両社の強みを引き出していく工程です。

各段階の詳細や必要書類は事案によって異なります。ここでは全体像の把握にとどめ、具体的な進め方は次に紹介する専門家に相談しながら固めていくのが現実的です。

最適なスキーム設計は誰に相談するか

ここまで見てきたとおり、どの手法を選ぶかは、税務・法務・会計が複雑に絡み合う判断です。自社の目的に合う最適なスキームを設計し、交渉や実行まで進めるには、専門家の支援を受けるのが一般的です。相談先には、M&A仲介会社・FA(ファイナンシャル・アドバイザー)・弁護士・税理士などがあり、それぞれ役割が異なります。

M&A仲介とFA(ファイナンシャル・アドバイザー)の違い

M&A仲介は、売り手と買い手の間に立ち、双方から依頼を受けて成約を目指す立場です(両手取引)。当事者双方の橋渡しをするため、中立的な調整がしやすい一方、売り手・買い手のどちらか一方の利益だけを追求する立場ではありません。

FA(ファイナンシャル・アドバイザー)は、売り手または買い手の一方と契約し、その依頼者の利益のために助言・交渉支援を行う立場です(片手取引)。依頼者の側に立って条件交渉を進めるため、「相手や仲介に主導権を握られたくない」「自社に有利な条件を追求したい」という場合に適しています。どちらが良い・悪いということではなく、自社の立場や重視する点によって選び分けるものです。

買い手として検討する場合も、買い手側に立って助言するFAや仲介に相談するのが一般的です。ここでは、譲渡(売却)を検討する企業の相談先の一例として、売り手専門のFAサービスを紹介します。

M&A Lead(M&A Lead株式会社)

M&A Leadのウェブサイト

M&A Leadは、譲渡企業(売り手)だけのために働く、売主専属のM&Aアドバイザリーサービスです。一般的なM&A仲介会社が売り手・買い手の双方から手数料を受け取る両手取引であるのに対し、M&A Leadは売り手からのみ手数料を受け取る片手取引モデルを採用しています。

買い手から手数料を受け取らないため、譲渡価格・雇用条件・契約条件など、売り手にとって有利な条件の追求に専念できる点を特徴として掲げています。料金は完全成功報酬制で、着手金・中間金は無料、成功報酬はレーマン方式(取引金額に応じて料率が決まる方式)で算定されます。全国対応で、オンラインでの相談も可能です。

中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録し、中小M&Aガイドラインの遵守を宣言しているため、公的な枠組みに沿った支援を受けたい売り手企業の選択肢になります。

M&A Leadのほかにも、売り手・買い手それぞれの立場で最適なスキームの設計から交渉・実行まで支援するM&Aアドバイザリー・FAは数多くあり、次の記事では各社の専門領域や費用相場、依頼先の選び方を比較できます。

まとめ

M&Aの手法(スキーム)は、株式を動かす手法(株式譲渡・株式交換・株式移転・株式交付・第三者割当増資)、事業を動かす手法(事業譲渡・会社分割)、会社を統合・再編する手法(合併)に大きく分けられます。何が動くか・対価を誰が受け取るか・何を引き継ぐか・税金がどうなるかによって、それぞれ向く場面が異なります。

中小企業のM&Aでは株式譲渡と事業譲渡が中心で、会社全体を譲るなら株式譲渡、事業の一部を移すなら事業譲渡が候補になります。ただし、簿外債務の引き継ぎや税負担、手続きの重さは手法によって変わるため、自社の目的に照らして慎重に選ぶ必要があります。

最適なスキームの設計には、税務・法務・会計の専門的な検討が欠かせません。M&Aアドバイザリー・FAをはじめとする専門家に早めに相談し、自社に合った手法と条件を固めていくことをおすすめします。MCB FinTechカタログでは、これらのサービスの資料を無料で請求できます。ぜひ各社の資料を取り寄せて、比較検討を進めてください。

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M&Aの手法に関するよくある質問(FAQ)

Q. M&Aのスキーム(手法)とは何ですか?

A. M&Aのスキーム(手法)とは、会社や事業の経営権・資産を移転するための法的な枠組みのことです。株式を動かす手法(株式譲渡・株式交換・株式移転・株式交付・第三者割当増資)、事業を動かす手法(事業譲渡・会社分割)、会社を統合・再編する手法(合併)に大きく分かれ、何が動くか・対価を誰が受け取るか・何を引き継ぐかによって、引き継がれる範囲や税金、手続きの重さが変わります。

Q. 中小企業のM&Aで最も多く使われる手法は何ですか?

A. 中小企業のM&Aでは、株式譲渡・事業譲渡が最も多く用いられ、会社全体を譲る場合は株式譲渡が中心です。株式譲渡は会社の株主が入れ替わるだけで、資産・負債・契約・許認可をまとめて引き継げるため、手続きが比較的シンプルだからです。一部の事業だけを移す場合や、個人事業主のM&Aでは事業譲渡が用いられます。

Q. 株式譲渡と事業譲渡はどちらを選べばよいですか?

A. 会社全体をそのまま引き継いでもらいたい場合は株式譲渡、必要な事業だけを移して不要な負債やリスクを切り離したい場合は事業譲渡が向いています。株式譲渡は簿外債務や偶発債務もそのまま引き継がれる一方、事業譲渡は承継対象を選べる代わりに、契約・許認可の個別移転や従業員の転籍手続きが必要です。税金の扱いも異なるため、自社の目的と併せて比較するとよいでしょう。

Q. 事業譲渡と会社分割はどう使い分けますか?

A. 移す対象を個別に選びたい場合は事業譲渡、事業に関する権利義務をまとめて包括的に承継させたい場合は会社分割が候補になります。事業譲渡は契約や許認可を1つずつ移す必要がある反面、対象を柔軟に選べます。会社分割は分割契約・計画で定めた範囲をまとめて引き継げますが、債権者保護手続などが必要で、手続きは事業譲渡より重くなる傾向があります。

Q. 買収資金が少なくても使えるM&Aの手法はありますか?

A. 自社の株式を対価にできる株式交換・株式移転・株式交付・合併や、出資を活用する第三者割当増資などが、現金を用意せずに進められる手法です。これらは株式を対価に経営権の取得や統合ができるため、多額の買収資金を準備しにくい場合の選択肢になります。ただし、組織再編に当たる手法では株主総会の特別決議など会社法上の手続きが必要になる点は押さえておく必要があります。

Q. M&Aの手法によって税金はどのくらい変わりますか?

A. M&Aは手法によって、誰に・どの税がかかるかが変わります。株式譲渡では、個人株主の譲渡益に所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=合計20.315%の申告分離課税がかかります(株主が法人の場合は譲渡益に法人税)。事業譲渡では譲渡益に法人税がかかるほか、建物やのれんなどの課税資産に消費税がかかります。

合併・会社分割などの組織再編は、適格要件を満たせば課税が繰り延べられます。個別の税額は事案により変わるため、実際の試算は税理士など専門家への確認が必要です。

出典・参考資料(2件)

Q. M&Aの手法(スキーム)はいつ、どの段階で決めればよいですか?

A. M&Aの手法は、相手先との具体的な交渉に入る前後の段階で方向性を固めるのが一般的です。手法によって税金・手続き・引き継ぐ範囲が変わり、後から変更すると価格や契約条件の交渉をやり直すことになりかねません。自社の目的(会社全体か一部か、後継者不在か、買い手の資金)を整理したうえで、早い段階で候補を絞り込んでおくとスムーズです。

Q. M&Aのスキーム設計は誰に、どの段階で相談すべきですか?

A. 相談先はM&A仲介会社・FA(ファイナンシャル・アドバイザー)・弁護士・税理士に分かれ、役割が異なります。仲介は売り手と買い手の橋渡し、FAは依頼者の一方に立った助言・交渉支援、弁護士は契約・法務、税理士は税務の設計を担います。

手法選択は税務・法務・会計が絡むため、手法を1つに絞り込む前の早い段階から相談しておくと、許認可・従業員・債務承継・株主手続の設計で後戻りを防げます。とくに売り手として有利な条件を追求したい場合は、売り手の立場に専念するFAという選択肢もあります。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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