電子契約システムの導入を検討していると、コスト削減や締結スピードといったメリットの陰で、「入れたあとに何か不便やトラブルはないのか」が気になるものです。特に、取引先が対応してくれるのか、自社が扱う契約は本当に電子化できるのか、といった不安は、導入を決める前に解消しておきたいところではないでしょうか。
結論から言えば、電子契約のデメリットの多くは、事前の切り分けと運用の工夫、そして法要件に準拠したシステムの選択で軽減できます。一方で、公正証書が必要な一部の契約のように、電子契約だけでは締結できない例外も確かに存在します。大切なのは、対処できるデメリットと、そもそも電子化できない契約とを正しく見分けることです。
この記事では、電子契約システムの主なデメリット・注意点・リスクを、それぞれの中身と対処法まで一覧で整理します。そのうえで、電子化できない契約の具体名と根拠法、取引先への進め方、法的効力や保存義務といった不安の解消、デメリットを踏まえたシステムの選び方までをまとめます。自社が導入して問題ないか、どこに気をつければよいかを判断する材料にしてください。
目次
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電子契約システムの主なデメリット・注意点・リスク一覧
ここでは、電子契約システムを導入したときに起こりうるデメリット・注意点・リスクを、具体的な中身と対処法まで対にして整理します。多くは事前の準備や運用、システム選びで軽減できるものです。それぞれの詳細は、この後の各章で掘り下げます。
| デメリット・注意点 | 具体的な中身 | 対処法 |
|---|---|---|
| 取引先の対応・同意が必要 | 相手方も電子契約を使える状態でなければ締結できない。取引先が難色を示すと導入が進まない | 相手の負担が少ない署名方式(立会人型)を選ぶ/対応可否を事前確認し、一部の契約類型に絞って段階的に移行を提案する |
| 電子化できない契約がある | 公正証書が必要な契約など、電子契約だけでは締結できないものが一部ある | 該当する契約を切り分け、その契約だけ書面で残す(次章の一覧で自社の契約が該当しないか確認) |
| 業務フロー・社内ルールの変更が必要 | 押印規程・稟議・保管ルールなど、紙を前提にした社内手続きの見直しが要る | 電子契約に合わせて押印規程を改定し、承認ワークフロー機能で社内の申請・承認を電子化する |
| 導入後のシステム移行が難しい | 締結済みデータの移行や別サービスへの乗り換えに手間がかかる。契約書は長期保存が必要なため、サービス終了時のデータの持ち出し(ベンダーロックイン)も課題になる | 契約データのエクスポート可否・他社で締結した契約の取り込み可否に加え、サービス終了時に長期保存中の契約を持ち出せるかを選定時に確認しておく |
| 法的に有効か不安が残る | 「電子署名で本当に有効なのか」「立会人型でも問題ないか」という懸念 | 電子署名法の要件(固有性を担保する2要素認証など)を満たすサービスを選ぶ(後述) |
| 電子帳簿保存法の保存要件を満たす必要がある(未対応だと税務調査での否認リスク) | 電子で受け渡した取引情報は要件を満たして電子のまま保存する義務があり、満たさないと税務調査で否認されるおそれがある | タイムスタンプ付与や検索性の確保など、電子帳簿保存法の保存要件に対応したシステムと社内の保存ルールを整える |
| セキュリティ・情報漏洩のリスク | 契約書という機密情報をクラウド上で扱うため、不正アクセスやサイバー攻撃の懸念がある | 多要素認証・IPアドレス制限・アクセス権限管理・第三者認証(ISMS等)を備えたサービスを選ぶ |
| 紙と電子の契約が混在する | 書面必須の契約や未対応の取引先が残ると、紙と電子を二重に管理することになる | 他社締結分や紙の契約も取り込める一元管理機能を使い、混在を前提に運用を設計する |
| 導入・運用に費用がかかる | 月額基本料や送信ごとの従量課金が発生する | 無料・小規模プランから始め、印紙税や郵送費の削減効果と照らして費用対効果を見極める |
このように、電子契約のデメリットは「対処できるもの」が大半です。次章以降で、特に不安の大きい「電子化できない契約」と「取引先の同意」、そして「法律まわり」を順に詳しく見ていきます。
ただし、対処をしても完全にはなくせない負担もあります。月々の利用料というランニングコスト、社内規程の改定や社員が新しい操作に慣れるまでの一時的な手間、どうしても電子契約に応じない取引先が一定数残ることなどです。軽減できるデメリットと、残る負担の両方を見込んだうえで導入を判断するのが現実的です。
署名方式やセキュリティ対策、料金体系はサービスごとに違うため、複数の候補を並べて比べると自社に合うものを見極めやすくなります。
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電子化できない・書面で残すべき契約【契約類型×根拠法令×可否×条件】
電子契約のデメリットとしてよく挙げられるのが「すべての契約を電子化できるわけではない」という点です。前提として、業務委託契約・売買基本契約・秘密保持契約・発注書といった日常的に交わす多くの契約は、相手方の合意があれば特別な条件なく電子で締結できます。書面が求められる・電子化に制約があるのは、以下に挙げる例外的な契約に限られます。
実際に原文を確認すると、電子契約だけでは締結できない契約はごく限られており、書面が原則の契約も多くは条件付きで電子化できます。自社の扱う契約がこの例外に該当しないかを、契約類型と根拠法令で確認してください。
全体像としては、契約は「電子化の可否」で次の3段階に分かれます。電子契約だけでは締結できないのはごく一部で、多くは条件なし、または相手方の承諾などの条件付きで電子化できます。

まず、電子契約単独では締結できないのは、公正証書が必要な次の3類型です。公正証書は公証人が作成する書面のため、当事者間の電子契約だけでは成立させられません。
| 契約類型 | 根拠法令 | 電子契約単独での可否 | 条件・補足 |
|---|---|---|---|
| 事業用定期借地契約 | 借地借家法 第23条3項 | 不可 | 公正証書によって締結する必要がある |
| 任意後見契約 | 任意後見契約に関する法律 第3条 | 不可 | 法務省令で定める様式の公正証書が必要 |
| 企業担保権の設定・変更 | 企業担保法 第3条 | 不可 | 公正証書によって締結する必要がある |
たとえば事業用定期借地契約について、借地借家法は次のように定めています。
前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。
出典:借地借家法(平成三年法律第九十号)第23条3項|e-Gov法令検索
一方で、「書面が原則」とされてきた契約や、取引の相手方に交付する書面でも、相手方の承諾などの条件を満たせば電子化できるものが多くあります。近年の法改正で電子化が認められた類型も増えています。次の表は、契約書だけでなく交付書面も含めて、書面が原則とされてきた主なものと電子化の可否を整理したものです。
| 契約類型 | 根拠法令 | 電子契約の可否 | 条件・補足 |
|---|---|---|---|
| 定期建物賃貸借契約 | 借地借家法 第38条2項 | 可 | 電磁的記録によって締結すれば、書面によってされたものとみなされる |
| 建設工事の請負契約 | 建設業法 第19条3項 | 可 | 相手方の承諾を得れば電磁的方法で契約できる |
| 訪問販売等の交付書面 | 特定商取引法 第4条2項 | 可 | 申込者(消費者)の承諾を得れば電磁的方法で提供できる(2023年6月施行) |
| 労働者派遣契約 | 労働者派遣法 第26条・同施行規則 第21条3項 | 可 | 2021年1月から電磁的記録での作成が認められている |
| 宅地建物取引業法の交付書面(37条書面等) | 宅地建物取引業法 第37条4項 | 可 | 相手方の承諾を得れば電磁的方法で提供できる(2022年5月施行) |
| 金融商品取引の顧客交付書面(契約締結前交付書面等) | 金融商品取引法(令和7年施行) | 可(書面/デジタル選択制) | 2025年4月から書面かデジタルかを選べる。当事者間の契約書ではなく、証券会社等が顧客に交付する開示書面 |
| 下請取引の発注時明示書面 | 中小受託取引適正化法(旧・下請法)第4条 | 可 | 書面又は電磁的方法により明示できる |
たとえば建設工事の請負契約は、建設業法で原則として書面の交付が求められますが、同じ条文の中で電子化も認められています。
建設工事の請負契約の当事者は、前二項の規定による措置に代えて、政令で定めるところにより、当該契約の相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて、当該各項の規定による措置に準ずるものとして国土交通省令で定めるものを講ずることができる。
出典:建設業法(昭和二十四年法律第百号)第19条3項|e-Gov法令検索
注意したいのは、下請取引の発注時に交付する書面です。かつての下請法では「3条書面」と呼ばれていましたが、法律の改題により現在は中小受託取引適正化法の第4条に定められています。この第4条では、発注内容を「書面又は電磁的方法により」明示できると規定されており、電磁的方法での明示が書面と並ぶ選択肢として認められています。
このように、「書面必須」に見える契約の多くは、実際には条件付きで電子化できます。自社が本当に電子化できない契約を抱えているのかを、根拠法令にさかのぼって確認することが、過剰に導入をためらわないための第一歩です。
出典・参考資料(9件)
- 出典:借地借家法(平成三年法律第九十号)|e-Gov法令検索(条文)
- 出典:任意後見契約に関する法律(平成十一年法律第百五十号)|e-Gov法令検索(条文)
- 出典:企業担保法(昭和三十三年法律第百六号)|e-Gov法令検索(条文)
- 出典:建設業法(昭和二十四年法律第百号)|e-Gov法令検索(条文)
- 出典:特定商取引に関する法律(昭和五十一年法律第五十七号)|e-Gov法令検索(条文)
- 出典:宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)|e-Gov法令検索(条文)
- 出典:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(昭和三十一年法律第百二十号)|e-Gov法令検索(条文)
- 出典:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)|e-Gov法令検索(条文)
- 出典:金融商品取引契約に係る顧客交付書面のデジタル化について(令和7年4月1日施行)|金融庁(解説)
取引先の同意が必要な理由と、段階的に移行を進める手順
電子契約のデメリットとして、多くの担当者が最初に気にするのが「取引先が対応してくれるか」です。電子契約は自社だけで完結せず、相手方も電子で締結できる状態にあってはじめて成立します。ここでは、取引先の同意が必要になる理由と、無理なく移行を進める手順を整理します。
相手方の負担を抑えるうえで効くのが、署名方式の選択です。契約当事者自身が電子証明書で署名する当事者型は本人性が直接的ですが、相手にも証明書の準備が必要になります。これに対し、事業者が当事者の指示を受けて署名する立会人型(事業者署名型)は、相手はメールのリンクから承認するだけで済むため、取引先の導入ハードルが低くなります。
移行を一気に進めようとすると、取引先の抵抗や社内の現状維持志向にぶつかりがちです。次の手順で、対応できる範囲から段階的に広げるのが現実的です。
- 電子化しやすい契約類型(雇用契約書・秘密保持契約・発注書など)から着手し、対象を絞って始める
- 取引先ごとに電子契約への対応可否・希望を確認し、対応可能な相手から順に切り替える
- 相手が未対応の間は紙と電子を併用し、一元管理できる仕組みで混在に備える
- 押印規程・稟議フローなど社内ルールを電子契約に合わせて改定し、承認ワークフロー機能で運用する
取引先への説明では、相手側の登録費用がかからないこと、締結までの時間が短くなること、契約書の保管が楽になることなど、相手にとっての利点も併せて伝えると理解を得やすくなります。
電子契約の法律・制度で押さえるべきこと(法的効力・保存要件・印紙税)
「電子契約は法的に有効なのか」「税務調査で問題にならないか」、そして印紙税の扱いはどうなるのか——こうした法律まわりの不安は、根拠を押さえれば解消できます。ここでは、法的効力・電子帳簿保存法の保存要件・印紙税の3点を、条文や公的な見解にもとづいて整理します。
電子契約に法的効力はあるのか(電子署名法3条・立会人型と当事者型)
電子契約の法的な後ろ盾になるのが、電子署名及び認証業務に関する法律(以下、電子署名法)です。同法第3条は、本人による一定の電子署名が行われた電磁的記録について、真正に成立したものと推定すると定めています。
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
出典:電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)第3条|e-Gov法令検索
これは、押印のある書面が真正に成立したものと推定される仕組み(民事訴訟法の考え方)を、電子の世界になぞらえたものです。本人の電子署名から真正成立が推定される流れを、実務では「二段の推定」と呼ぶこともあります。
ここで気になるのが、事業者が署名する立会人型でも第3条の推定を受けられるのか、という点です。総務省・法務省・経済産業省の3省は、立会人型のサービスでも「固有性の要件」を満たせば第3条が適用され得るとの見解を示しています。
上記サービスについて、電子署名法第3条が適用されるためには、(略)当該サービスが十分な水準の固有性を満たしていること(固有性の要件)が必要であると考えられる。
出典:総務省・法務省・経済産業省「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)」(令和2年9月4日)問2|法務省
3省の見解では、固有性を満たす方法の一例として2要素認証が挙げられています。ただし2要素認証が必須というわけではなく、他の方法も否定されていません。つまり、立会人型か当事者型かにかかわらず、本人性を担保する仕組みを備えたサービスを選べば、法的効力の面での不安は小さくできます。
出典・参考資料(2件)
電子帳簿保存法の保存要件(電子取引データの保存・検索要件・免除・猶予)
電子契約で受け渡した契約書は、電子帳簿保存法上の「電子取引」に当たり、電磁的記録のまま保存する義務があります。同法第7条は次のように定めています。
所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。
出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成十年法律第二十五号)第7条|e-Gov法令検索
具体的な保存の仕方は財務省令(施行規則)に委ねられています。国税庁の案内によれば、保存したデータは「取引年月日・取引金額・取引先」で検索できるようにすることが求められます。この検索要件については、2年(期)前の売上高が5,000万円以下の事業者は不要とされています。
また、要件どおりの保存が難しい場合の猶予措置も設けられています。施行規則は、所轄税務署長が相当の理由があると認め、かつ税務調査の際にデータの提示・出力に応じられるようにしているときは、要件を満たさなくても電磁的記録の保存を認めるとしています。これは令和5年度の税制改正で設けられた恒久的な措置です。
いずれにせよ、タイムスタンプの付与や検索性の確保など、電子帳簿保存法の要件に対応したシステムを選べば、保存や税務調査での不安は避けられます。
出典・参考資料(2件)
印紙税は非課税になる(根拠と誤解の整理)
電子契約のメリットとして印紙税の削減がよく挙げられますが、その根拠を押さえておくと安心です。国税庁は、電磁的記録は印紙税法上の「文書」に含まれないため、印紙税は課税されないとの見解を示しています。
印紙税の課税対象となるのは、課税物件表の物件名欄に掲げられている文書であり、電磁的記録は文書に含まれません。したがって、おたずねの電磁的記録に印紙税は課税されません。
出典:国税庁 質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」(印紙税法第2条関係)
ここで誤解しやすいのが、電子で作成したデータを紙に出力して現物として交付する場合です。出力した紙が課税文書に当たると印紙税の対象になりうるため、電子で締結したものは電子のまま保存・授受するのが基本になります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」|国税庁(質疑応答事例)
法律まわりの不安が整理できたら、次はデメリットを軽減できるシステムの選び方です。署名方式や法令対応はサービスごとに差があるため、複数の候補を見比べて選ぶのが近道になります。
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デメリットを踏まえた電子契約システムの選び方
ここまで見てきたデメリットの多くは、システムの選び方で軽減できます。以下の観点で候補を絞ると、導入後のつまずきを減らせます。
法的要件(電子署名法・電子帳簿保存法)に準拠しているか
法的効力と保存の不安に直結する観点です。本人性を担保する仕組み(2要素認証など固有性の要件)を備え、タイムスタンプの付与や検索性の確保といった電子帳簿保存法の保存要件に対応しているかを確認しましょう。公式サイトで対応状況が明記されているサービスを選ぶと安心です。
取引先の負担が少ない署名方式を選べるか
取引先の同意という最大の壁を下げる観点です。相手が証明書を用意せずメール承認で完結する立会人型に対応しているか、当事者型と使い分けられるかを見ておきましょう。取引先の重要度や契約の性質に応じて署名方式を選べると、社内外の合意を取りやすくなります。
セキュリティ対策が十分か
契約書という機密情報を扱うため、多要素認証・IPアドレス制限・アクセス権限の管理といった機能があるか、ISMSなどの第三者認証を取得しているかをチェックするとよいでしょう。特に、部門ごとにアクセスを分けたい規模の企業では、権限管理の細かさが選定の分かれ目になります。
紙や他社締結分も一元管理でき、移行しやすいか
紙と電子の混在や、将来の乗り換えに備える観点です。他社サービスで締結した契約書や紙の契約も取り込んで管理できるか、契約データをエクスポートできるかを確かめておくと安心です。これらが備わっていれば、混在の負担と乗り換えの手間を抑えられます。
費用対効果を見込めるか
「費用がかかる」というデメリットに向き合う観点です。月額基本料や送信ごとの費用は、印紙税や郵送費・保管コストの削減効果と照らして見極めましょう。無料プランや小規模プランがあれば、まず対象を絞って試し、効果を確認してから広げられます。送信件数が多い場合は、送信料の単価や無料枠の有無が総額に効いてきます。
主な電子契約システムの紹介
ここでは、前章の選び方の観点を踏まえ、デメリットの軽減につながる代表的な電子契約システムを、切り口の異なる3サービスに絞って紹介します。3サービスだけでは選びきれない場合は、料金体系や署名方式のタイプ別の選び方まで整理した比較記事で全体像をつかみ、自社に合う一社を絞り込むと効率的です。
1. クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社)

弁護士ドットコム株式会社が運営するクラウドサインは、書類のアップロードから電子署名・タイムスタンプの付与、契約書の保管・検索までをオンラインで完結できる電子契約サービスです。標準の署名方式は立会人型(事業者署名型)で、相手方は認証局での本人確認が不要なため、取引先の導入ハードルが低いのが特徴です。
2023年からは、マイナンバーカードの電子証明書を使って契約当事者自身が署名する当事者型の「マイナンバーカード署名」も提供しており、契約の性質に応じた使い分けができます。導入社数は250万社以上、累計送信件数は4,000万件を超えると公式が公表しています(2024年度実績)。株式会社富士キメラ総研の2025年版調査(電子契約ツール部門)ではシェア首位とされています。
2. 電子印鑑GMOサイン(GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社)

電子印鑑GMOサインの強みは、署名方式の柔軟さにあります。立会人型(契約印タイプ)と当事者型(実印タイプ)の両方に対応し、両者を組み合わせた「ハイブリッド署名」も選べます。取引先の重要度や契約の性質に応じて署名方式を使い分けられるため、取引先の対応というデメリットに向き合いやすいサービスです。
運営はGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社で、契約書の作成・レビュー・締結・管理までを1つのプラットフォームで完結できます。公式によれば導入は350万社以上(公式トップページ・時点の記載なし)、上場企業の82%が利用しているとされます(2026年6月末時点の利用企業数にもとづく公式記載値)。累計送信件数は5,000万件を超えています。
3. マネーフォワード クラウド契約(株式会社マネーフォワード)

紙と電子の混在という悩みに向くのが、マネーフォワード クラウド契約です。契約書の作成・社内申請(ワークフロー)・締結・保管・管理までをクラウド上で完結でき、他社の電子契約サービスで締結した契約書も取り込んで一元管理できます。締結した電子契約には自動でタイムスタンプが付与され、電子帳簿保存法の電子取引に対応しています。
署名方式は立会人型(事業者署名型)で、本人確認はメール認証で行います。会計・請求書・経費など同社のバックオフィスSaaS群と同一アカウント体系で連携できるため、契約から会計までを一つの基盤で運用したい企業に向きます。
デメリットを踏まえて選ぶ電子契約システム比較
ここまで紹介したサービスを、デメリットの軽減に関わる観点で比べます。署名方式・電子帳簿保存法への対応・取引先の負担・料金体系などを横並びで確認してください。
| サービス名 | クラウドサイン | 電子印鑑GMOサイン | マネーフォワード クラウド契約 |
|---|---|---|---|
| 提供会社 | 弁護士ドットコム株式会社 | GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 | 株式会社マネーフォワード |
| 電子署名タイプ | 立会人型(事業者署名型)が標準/当事者型(マイナンバーカード署名)にも対応 | 立会人型(契約印タイプ)・当事者型(実印タイプ)に対応。ハイブリッド署名も可能 | 立会人型(事業者署名型)。本人確認はメール認証 |
| 取引先の負担 | 立会人型なら相手方は本人確認・証明書が不要(メール承認のみ) | 立会人型なら相手方はメール認証のみ・証明書不要 | 立会人型で相手方はメール認証のみ |
| 電子帳簿保存法対応 | ●全プランで認定タイムスタンプを標準付与(フリープランは検索要件など一部を自社側で対応) | ●JIIMA認証(電子帳簿保存法の要件適合を示す第三者認証)を取得(契約印&実印プラン向け) | ●電子取引に対応・自動タイムスタンプ付与(スキャナ保存は非対応) |
| セキュリティ認証 | ISO/IEC 27001・27017/SOC2 Type1/ISMAP(政府情報システムのセキュリティ評価制度)登録 | ISO/IEC 27001・27017/SOC2 Type2/ISMAP登録 | サービス単体の第三者認証は未公表(暗号化・IP制限・SSO等の対策を実施) |
| 他社契約書・紙の一元管理 | ●書類インポートで他社締結分も取り込み可(Corporateプラン以上) | ●スキャン文書管理で紙の契約書も取り込み可 | ◎他社締結の電子契約も取り込み一元管理(AI-OCR自動入力) |
| 無料プラン | フリープランあり(ユーザー1名・月2件まで送信可、電子署名+タイムスタンプ利用可) | お試しフリープランあり(月5件まで送信可・1ユーザー・契約印タイプのみ) | 無料プランは送信不可(閲覧・ダウンロードのみ)/1ヶ月無料トライアルあり(カード登録不要) |
| 初期費用 | 要問い合わせ(公式料金ページに明示なし) | 0円(基本サービス。オプションは別途) | 0円 |
| 月額費用(最安) | 無料〜(有料はLightプラン月額11,000円〜、税抜) | 無料〜(有料はライトプラン月額8,800円〜、年間契約・税抜) | 2,480円/月〜(法人・年払い、税抜。会計など12サービス込み) |
| 送信料 | 220円/件(税抜。フリープランは月2件まで無料) | 立会人型100円/件・当事者型300円/件(いずれも税抜) | 0円(有料プラン契約後。送信・保管の従量課金なし) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | サービス詳細を見る |
まとめ:デメリットは切り分けと選び方で軽減できる
電子契約システムのデメリットは、その多くが事前の切り分け・運用の工夫・法要件に準拠したシステムの選択で軽減できます。取引先の同意は署名方式の選択と段階的な移行で、法的効力や保存の不安は電子署名法・電子帳簿保存法に対応したサービスの選定で、それぞれ対処できます。
一方で、公正証書が必要な事業用定期借地契約・任意後見契約・企業担保権の設定などは、電子契約だけでは締結できません。自社が扱う契約にこうした例外が含まれないかを根拠法令にさかのぼって確認したうえで、残りの契約を電子化していくのが現実的な進め方です。デメリットを正しく見極めれば、導入して問題ないか、どこに気をつけるべきかを自社の状況に合わせて判断できます。
自社に合う電子契約システムの資料は、MCB FinTechカタログでまとめて請求し、署名方式や電子帳簿保存法への対応・料金を見比べられます。
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導入するかどうかは、デメリットだけでなくメリットと併せて総合的に判断するのが現実的です。以下の記事では、コスト削減や締結スピード、契約書管理の効率化といった電子契約の利点を、紙契約との比較で整理しています。ここまで見てきたデメリットと読み比べて、自社にとって導入する価値があるかを見極める材料にしてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 電子契約システムとは何ですか?
A. 電子契約システムとは、インターネット上で電子文書に電子署名とタイムスタンプを付与し、契約の締結から保管・管理までをオンラインで完結できるサービスです。紙の契約書のような印刷・押印・郵送・保管が不要になり、印紙税や郵送費の削減、締結までの時間短縮につながります。契約当事者自身が署名する当事者型と、事業者が当事者の指示で署名する立会人型(事業者署名型)の署名方式があります。
Q. 電子契約が電子であることを理由に法的に無効になることはありますか?
A. 電子契約は、電子署名法の要件を満たしていれば書面契約と同等の法的効力を持ち、電子であることを理由に無効になることはありません。電子署名法第3条は、本人による電子署名が行われた電磁的記録を真正に成立したものと推定すると定めています。ただし、公正証書の作成が必要な契約など、電子契約だけでは締結できない一部の類型は例外です(次の質問を参照)。
出典・参考資料(1件)
- 出典:電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)第3条|e-Gov法令検索(条文)
Q. 立会人型(事業者署名型)の電子契約でも法的に有効ですか?
A. 立会人型の電子契約でも、本人性を担保する「固有性の要件」(2要素認証など)を満たせば電子署名法第3条の推定を受けられ、法的に有効です。総務省・法務省・経済産業省の3省は、事業者が利用者の指示にもとづき署名するサービスにも第3条が適用され得るとの見解を示しています。相手方に電子証明書の準備が不要で、取引先の導入ハードルが低い点も立会人型の利点です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)(令和2年9月4日)|総務省・法務省・経済産業省(PDF)
Q. 電子契約で締結できない契約には具体的に何がありますか?
A. 電子契約だけでは締結できないのは、公正証書の作成が必要な「事業用定期借地契約」「任意後見契約」「企業担保権の設定・変更」などです。公正証書は公証人が作成する書面のため、当事者間の電子契約では成立させられません。
一方で、かつて書面が原則とされた定期建物賃貸借契約・建設工事の請負契約・労働者派遣契約などは、法改正により相手方の承諾などの条件付きで電子化できます。自社の契約が該当するかは、電子化できない・書面で残すべき契約の一覧で根拠法令まで確認してください。
出典・参考資料(3件)
Q. 取引先が電子契約を拒否した場合はどうすればよいですか?
A. 取引先が対応できない・拒否する場合は、その取引先とは従来どおり紙で締結し、電子契約と併用するのが現実的です。相手方の負担が少ない立会人型を選ぶと、相手はメールの承認だけで締結できます。
登録費用がかからないこと・締結までの時間が短くなることなど、相手にとっての利点を併せて伝えると理解を得やすくなります。紙と電子を一元管理できるシステムを使えば、対応可能な取引先から段階的に切り替えつつ、混在しても管理の手間を抑えられます。
Q. 電子契約書の保存方法と保存期間はどうすればよいですか?
A. 電子契約で受け渡した契約書は、電子帳簿保存法上の「電子取引」に当たり、電子データのまま保存する義務があります(紙に出力して保存する方法は原則として認められません)。
取引年月日・取引金額・取引先で検索できる状態にし、改ざん防止などの真実性を確保して保存します(2年(期)前の売上高が5,000万円以下の事業者は検索要件が免除されます)。保存期間は、法人税法上、原則として7年間です(欠損金額が生じた事業年度などは10年間)。
出典・参考資料(3件)
Q. 電子契約に収入印紙は必要ですか?
A. 電子契約に収入印紙は不要です。国税庁は、電磁的記録は印紙税法上の「文書」に含まれないため、印紙税は課税されないとの見解を示しています。ただし、電子で作成したデータを紙に出力して現物として交付すると、その紙が課税文書に当たり印紙税の対象になりうるため、電子で締結したものは電子のまま保存・授受するのが基本です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」|国税庁(質疑応答事例)
Q. 電子契約と紙の契約が混在しても問題ありませんか?
A. 電子契約と紙の契約が混在しても、法的には問題ありません。ただし、締結方法が分かれると契約書の所在や更新期限を見落としやすくなります。他社サービスで締結した契約書や紙の契約も取り込める一元管理機能を備えたシステムを使い、混在を前提に運用を設計すると、管理の抜け漏れを防げます。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















