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取引先が倒産したら売掛金はどうなる?回収方法・貸倒損失・事前対策まで解説

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督促・売掛金回収代行比較表(2026年版)のプレビュー

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督促・売掛金回収代行比較表(2026年版)

取引先が倒産すると、まだ入金されていない売掛金が回収できなくなり、自社の資金繰りに直接響きます。掛取引が中心の会社ほど、一社の倒産が連鎖的な資金ショートを招きかねません。

本記事では、取引先が倒産したときに、売掛金が倒産手続きの種類ごとにどこまで回収できるのかを整理します。あわせて、今すぐ取れる回収手段、倒産を知った直後の初動、回収できない分の貸倒損失の税務処理、そして再発を防ぐ予防策まで解説します。

「結局いくら戻るのか」という結論から順に、実務でそのまま使えるよう具体的に解説します。

取引先が倒産すると売掛金はどうなる?手続き別の回収可能性

まず結論から整理します。取引先が倒産したとき、担保のない売掛金がどこまで戻るかは、その取引先がどの倒産手続きに入ったかで大きく変わります。ここでは主な手続きごとの扱いを一覧で示し、続いて「担保のない売掛金がなぜ回収しにくいのか」を根拠とともに解説します。

倒産手続きの種類と売掛金への影響

「倒産」は法律上の用語ではなく、会社が支払不能や債務超過に陥った状態の総称です。実際には次のような法的手続きに分かれ、それぞれ売掛金の扱いが異なります。

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倒産手続きの種類と売掛金への影響破産民事再生会社更生特別清算私的整理・任意整理
手続きの概要会社の財産を清算して債権者に配当し、法人格が消滅する手続き。事業を続けながら再生計画に沿って債務を圧縮・返済する手続き。主に大規模な株式会社を対象に、更生計画で再建を図る手続き。解散した株式会社が裁判所の監督のもとで清算する手続き。裁判所を介さず、債権者との協議で返済条件を調整する手続き。
担保のない売掛金への影響一般の破産債権として配当を待つのみ。配当は財団の残余財産次第で、ゼロか少額にとどまることが多い。再生債権として、再生計画で定めた割合(多くは大幅カット後)で弁済される。相殺は債権届出期間内という時期制限がある。更生債権として更生計画に従い弁済される。担保権も手続内に取り込まれ、自由な行使が制限される。協定や個別和解で定めた範囲で弁済される。回収額は残余財産と合意内容による。合意した内容に応じて弁済される。手続きの透明性や拘束力は事案ごとに異なる。

※各手続きの一般的な扱いをまとめたものです。個別の回収可能性は財産状況・契約内容・担保の有無により異なります。

担保のない売掛金(一般債権)は配当待ちで回収は僅少という現実

破産手続きが始まると、債権者が個別に売掛金を取り立てることは原則できなくなります。破産法は、破産財団に属する財産への強制執行などを禁じ、すでに行われている執行も破産財団に対しては効力を失うと定めています。

破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行、企業担保権の実行又は外国租税滞納処分で、破産債権若しくは財団債権に基づくもの又は破産債権若しくは財団債権を被担保債権とするものは、することができない。

出典:破産法 第42条第1項|e-Gov法令検索

その後は、裁判所に届け出た債権に対して配当が行われます。配当は、同じ順位の債権であれば債権額に応じて按分されます。担保のない売掛金は「一般の破産債権」に位置づけられ、担保権者や、税金・社会保険料・従業員の給料といった優先度の高い債権に劣後します。破産手続開始前3か月間の給料は財団債権とされ、財団債権は破産債権に先立って弁済されるため、一般債権への配当は残った財産からになります。

同一順位において配当をすべき破産債権については、それぞれその債権の額の割合に応じて、配当をする。

出典:破産法 第194条第2項|e-Gov法令検索

そのため、担保も保証もない売掛金は、破産では配当がゼロか、あってもごく一部にとどまるのが実情です。「全額は戻らない可能性が高い」ことを前提に、次章の回収手段のうち自社で使えるものがないかを確認していくことになります。

配当率は破産財団に残る財産しだいで、配当がゼロのことも、数%程度にとどまることもあります。たとえば配当率が数%なら、売掛金100万円でも戻るのは数万円程度です。最終的な配当までには、手続きの規模によって1年から数年かかることも珍しくありません。

出典・参考資料(1件)

倒産した取引先から売掛金を回収する手段

配当を待つだけでなく、状況によっては優先的に、あるいは実質的に回収できる手段があります。ここからは代表的な手段を、それぞれ「自社のケースで使えるか」の判断ポイントとともに解説します。急ぐ必要があるものもあるため、当てはまるものがないかを早めに確認してください。

相殺による回収(買掛金がある場合)

取引先に対して自社も買掛金など支払うべき債務を負っている場合、売掛金と買掛金を相殺できれば、その分は実質的に回収できます。破産手続きでも、破産債権者は開始時に破産者へ債務を負っていれば、手続きによらずに相殺できます。

破産債権者は、破産手続開始の時において破産者に対して債務を負担するときは、破産手続によらないで、相殺をすることができる。

出典:破産法 第67条第1項|e-Gov法令検索

ただし相殺には制限があります。破産手続開始後に負担した債務や、支払停止があったことを知りながら負った債務では相殺できません。民事再生では相殺できる期間が債権届出期間内に限られるなど、破産より制約が強くなります。相殺のために倒産間際に取引を作るような行為は認められないため、もともとの取引で生じた債権債務の範囲で検討することになります。

出典・参考資料(3件)

所有権留保による商品の引き上げ・取戻権

販売した商品の代金が完済されるまで所有権を売主に残す「所有権留保」を契約で定めていれば、その商品はまだ自社の所有物です。破産手続きが始まっても、破産者に属さない財産を取り戻す権利は影響を受けないため、要件を満たせば商品の引き上げを検討できます。

破産手続の開始は、破産者に属しない財産を破産財団から取り戻す権利(第六十四条及び第七十八条第二項第十三号において「取戻権」という。)に影響を及ぼさない。

出典:破産法 第62条(取戻権)|e-Gov法令検索

ただし、商品が加工・転売されて特定できなくなっている場合や、担保としての性質から別除権として扱われる場合など、単純な引き上げが認められないケースもあります。実際に引き上げる際は、破産管財人と協議のうえで進めるのが安全です。

所有権留保の定めがない場合でも、代金が支払われないことを理由に売買契約を解除できることがあります(民法541条・542条)。契約解除の効果として、引き渡した商品の返還を求められる場合があります(民法545条の原状回復義務)。ただし倒産手続きの開始後は解除や返還の可否が制限されるため、この場合も破産管財人との協議が前提になります。

無断での商品引き上げ(自力救済)は違法評価のおそれ

所有権留保があるからといって、取引先に無断で倉庫から商品を持ち出すのは避けてください。日本では、権利の実現は裁判所などの手続きによるのが原則で、私人が実力で取り立てる「自力救済」は判例上、原則として認められていません(許されるのは極めて限定的な緊急の場合のみ)。

無断での引き上げは、かえって違法と評価され、損害賠償や刑事責任のリスクを負いかねません。相手の同意を得るか、破産管財人との協議・正規の手続きを通じて回収します。

動産売買先取特権・物上代位(売った商品・転売代金からの優先回収)

所有権留保の特約がなくても、商品を売った売主には法律上「動産売買の先取特権」が認められています。これは、売った動産について、他の債権者に優先して代金と利息の弁済を受けられる担保権です。

動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在する。

出典:民法 第321条(動産売買の先取特権)|e-Gov法令検索

動産売買先取特権は「特別の先取特権」にあたり、破産手続きでも別除権として手続きによらずに行使できます(別除権については後述します)。売った商品が取引先の手元に残っていればその商品から、すでに転売されていれば、取引先が受け取る転売代金に対して「物上代位」により権利を及ぼせます。

ただし物上代位は、転売代金が取引先に支払われる前に差押えをする必要があり、対応が遅れると使えなくなります。動産売買先取特権を使える可能性があるなら、早急に弁護士へ相談してください。

出典・参考資料(1件)

担保権・別除権の手続外行使

抵当権・質権・特別の先取特権といった担保を持っている場合、その担保権は破産手続きのなかで「別除権」として扱われ、手続きによらずに行使できます。担保のない一般債権が配当を待つのに対し、別除権者は担保からの回収を優先的に進められる点が大きな違いです。

この法律において「別除権」とは、破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき特別の先取特権、質権又は抵当権を有する者がこれらの権利の目的である財産について第六十五条第一項の規定により行使することができる権利をいう。

出典:破産法 第2条第9項(別除権の定義)|e-Gov法令検索

抵当権や質権を持つ債権者は、この別除権にもとづいて担保物を売却するなどして、配当を待たずに優先的に回収できます(行使の根拠は破産法第65条第1項)。ただし会社更生では担保権の行使も更生手続きに取り込まれ、破産のように自由には行使できません。自社が持つ担保がどの手続きでどこまで使えるかは、手続きの種類によって変わります。

保証人・保証会社への請求

取引の開始時に連帯保証人を付けていたり、取引信用保険・売掛保証を利用していたりする場合は、取引先の倒産手続きとは別に、保証人や保証会社へ直接支払いを請求できます。倒産手続きの配当を待たずに回収できる可能性があるため、契約書や保証委託契約の内容を確認し、保証の有無を早めにチェックします。

債権届出で配当を受ける

担保も相殺もない売掛金でも、配当を受けるには裁判所への「債権届出」が欠かせません。破産手続きに参加する債権者は、裁判所が定めた債権届出期間内に、債権額や発生原因を届け出る必要があります。

破産手続に参加しようとする破産債権者は、第三十一条第一項第一号又は第三項の規定により定められた破産債権の届出をすべき期間(以下「債権届出期間」という。)内に、次に掲げる事項を裁判所に届け出なければならない。

出典:破産法 第111条第1項(破産債権の届出)|e-Gov法令検索

届出期間は破産手続開始と同時に裁判所が定めます。期限を過ぎると配当を受けられなくなるおそれがあるため、後述の初動でまず期限を確認してください。届出が期限に間に合わなかった場合の取り扱いは事案によって異なるので、遅れそうなときは早めに裁判所や代理人へ相談します。

強制執行・債権譲渡(サービサーへの売却を含む)

倒産手続きがまだ始まっていない段階(支払遅延にとどまる段階)であれば、裁判所を通じた支払督促や訴訟、強制執行で回収を図る余地があります。ただし破産手続きが開始されると個別の強制執行はできなくなるため、タイミングの見極めが重要です。さらに、取引時に「強制執行認諾文言」つきの公正証書(執行証書)を作成していれば、訴訟や判決を経ずに強制執行を申し立てられます(民事執行法22条5号)。

自社で回収を続けるのが難しい場合は、債権回収を専門とするサービサー(法務大臣の許可を受けた債権管理回収業者)へ債権を譲渡して早期に資金化する方法もあります。回収の手間から解放される一方、譲渡額は債権額を下回るのが一般的です。

自社に代わって督促や回収を担うサービスは、弁護士・サービサー・回収代行会社など依頼先のタイプによって対応できる範囲や費用相場が異なります。どこに何を任せられるかを比較して選びたい場合は、次の記事が参考になります。

取引先の倒産を知った直後にやるべき初動対応【チェックリスト】

回収できる手段は、初動のスピードで結果が変わります。動産売買先取特権の物上代位のように「差押えが間に合うか」で使えるかどうかが決まるものもあります。倒産の一報や通知書を受け取ったら、次の順で確認・準備を進めてください。

倒産を知った直後の初動チェックリスト
  1. 通知書で差出人・事件番号・手続きの種類・債権届出の期限を確認する
  2. 基本契約書・注文書・納品書・請求書・入金履歴を集め、未回収額を確定する
  3. 納品済み商品の現物・在庫が取引先に残っていないか確認する(所有権留保・動産売買先取特権の可否に関わる)
  4. 相殺できる買掛金、担保・保証人・所有権留保の有無を洗い出す
  5. これ以上の出荷や追加の掛け取引(与信)を止める
  6. 物上代位の差押えなど急ぐ手段は、早めに弁護士へ相談する

届いた通知書の見方(差出人・事件番号・債権届出の期限)

裁判所や破産管財人(多くは弁護士)から届く通知書には、どの手続きが始まったか、担当する管財人は誰か、そして債権届出の期限がいつかが書かれています。まず差出人・事件番号・手続きの種類(破産か民事再生かなど)と、債権届出期間の締め切りを確認しましょう。期限は手続きの入口で決まるため、見落とすと配当を受けられなくなるおそれがあります。

集めておく資料(契約書・請求書・入金履歴・担保/保証/相殺の有無)

債権届出や回収手段の検討には、債権の存在と金額を示す資料が必要です。基本契約書・注文書・納品書・請求書・入金履歴をそろえ、未回収額を確定させましょう。あわせて、所有権留保の特約はあるか、担保や保証人はいるか、相殺できる買掛金はあるかを洗い出しておくと、前章のどの手段が使えるかを素早く判断できます。

弁護士マター・税理士マターの役割分担

取引先の倒産対応は、専門家によって守備範囲が分かれます。回収そのもの(相殺・先取特権の行使・債権届出・訴訟など、法的手段による回収)は弁護士の領域です。一方、回収できなかった売掛金を貸倒損失として計上する処理や、消費税の扱いは税理士の領域になります。回収の可否は弁護士に、税務処理は顧問税理士に、と相談先を整理しておくと対応がスムーズです。

回収できない売掛金を貸倒損失として処理する方法

回収できなかった売掛金は、一定の要件を満たすと「貸倒損失」として損金に算入できます。ただし「取引先が倒産した=すぐに全額を損金にできる」わけではありません。法人税基本通達は、貸倒れを次の3つの類型に分けて要件と計上時期を定めています。

取引先に預けていた自社の在庫・金型・支給材などは、売掛債権ではなく自社の資産です。これらは貸倒損失ではなく、まず返還を求め、回収できなければ棚卸資産の評価損や除却損として税務処理を検討することになります。売掛金の貸倒れとは扱いが分かれる点に注意してください。

会社更生や民事再生の認可決定、特別清算の協定認可などにより、法律上、債権が切り捨てられた場合です。切り捨てられた金額を、その事実が発生した事業年度に貸倒れとして損金算入します。この類型は損金経理(帳簿上で費用処理すること)が不要で、要件を満たせば損金になります。

法人の有する金銭債権について次に掲げる事実が発生した場合には、その金銭債権の額のうち次に掲げる金額は、その事実の発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する。

出典:法人税基本通達 9-6-1(金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合等の貸倒れ)|国税庁

事実上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-2)

債務者の資産状況や支払能力からみて、債権の全額が回収できないことが明らかになった場合です。切り捨ての法的手続きがなくても計上できますが、要件は厳格です。

法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。この場合において、当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないものとする。

出典:法人税基本通達 9-6-2(回収不能の金銭債権の貸倒れ)|国税庁

ポイントは2つあります。1つは「一部でなく全額」が回収不能であること。もう1つは、担保があるときはそれを処分した後でなければ計上できないことです。破産手続開始の通知が届いただけでは、配当額が確定しておらず「全額回収不能が明らか」とはいえないため、この時点で即座に損金にはできない点に注意してください。

形式上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-3)

取引を停止してから1年以上弁済がない場合などに、売掛債権から備忘価額を差し引いた残額を損金経理したときに認められる類型です。回収不能が明らかでなくても使える一方で、対象は売掛債権に限られ、貸付金などは含まれません。

債務者について次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対して有する売掛債権(売掛金、未収請負金その他これらに準ずる債権をいい、貸付金その他これに準ずる債権を含まない。以下9−6−3において同じ。)について法人が当該売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理をしたときは、これを認める。

出典:法人税基本通達 9-6-3(一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ)|国税庁

「備忘価額」は帳簿に債権の存在を残すための名目的な金額で、実務では1円とすることが一般的です(通達本文は金額を定めず「備忘価額」とのみ規定しています)。

損金算入時期と仕訳例

計上時期は類型ごとに異なります。法律上の貸倒れ(9-6-1)は切捨ての事実が生じた事業年度、事実上の貸倒れ(9-6-2)は全額回収不能が明らかになった事業年度、形式上の貸倒れ(9-6-3)は取引停止から1年以上経過した後に損金経理をした事業年度が基本です。

仕訳は、たとえば売掛金100万円が回収不能になった場合、借方に「貸倒損失 1,000,000円」、貸方に「売掛金 1,000,000円」を計上します。

一部だけ回収できた場合は、回収額を除いた残りを貸倒損失にします。売掛金100万円のうち20万円を回収し、残り80万円が回収不能となったときは、借方に「現金預金 200,000円」「貸倒損失 800,000円」、貸方に「売掛金 1,000,000円」を記帳します。

すでに貸倒引当金を積んでいた場合は、まず引当金を取り崩して充当します。たとえば80万円の貸倒引当金がある売掛金100万円が貸倒れになったときの仕訳は、次のとおりです。借方に「貸倒引当金 800,000円」「貸倒損失 200,000円」、貸方に「売掛金 1,000,000円」とし、引当額を超える不足分だけを貸倒損失に計上します。

いったん貸倒処理した債権を後日回収できたときは、回収額を「償却債権取立益」として収益に計上します。処理の判断が難しいケースも多いため、計上時期と要件は顧問税理士に確認するのが確実です。

貸倒損失と貸倒引当金の違い

混同しやすいのが「貸倒損失」と「貸倒引当金」です。貸倒損失は、実際に回収不能となった債権を損失として確定的に処理するものです。これに対し貸倒引当金は、将来発生するかもしれない貸倒れに備えて、あらかじめ見積もって計上しておく準備的なものです。取引先の倒産で現実に回収できなくなった売掛金は、要件を満たせば貸倒損失として処理します。

消費税の貸倒れに係る税額控除(消費税法39条)

売掛金には、売上に伴って預かった消費税分が含まれています。その売掛金が貸倒れになると、預かったはずの消費税を回収できないまま納税する形になりかねません。消費税法は、こうした場合に、貸倒れとなった税込価額に含まれる消費税額を、その課税期間の消費税額から控除できると定めています。

控除できる消費税額は、貸倒れとなった税込価額に標準税率なら110分の7.8、軽減税率なら108分の6.24を乗じて算出します。たとえば税込110万円の売掛金が貸倒れになった場合、110万円×7.8/110=78,000円を、その課税期間の売上に係る消費税額から控除できます。

控除を受けるには、貸倒れの事実を証する書類の保存が要件です。控除後にその債権を回収できたときは、回収額に対応する消費税額を納税額に加算します。

出典・参考資料(2件)

連鎖倒産・資金繰り悪化に備える公的制度

取引先の倒産で大口の売掛金が焦げ付くと、自社の資金繰りが急速に苦しくなり、連鎖倒産のリスクが高まります。急場をしのぐための公的制度が用意されているので、要件と申請先を押さえておきましょう。

経営セーフティ共済(中小機構)

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、あらかじめ掛金を積み立てておくことで、取引先が倒産した際に無担保・無保証人で共済金の貸付けを受けられる制度です。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。

共済金貸付額の上限は「回収困難となった売掛金債権等の額」か「納付された掛金総額の10倍(最高8,000万円)」の、いずれか少ないほうの金額となります。

出典:経営セーフティ共済(制度の概要)|独立行政法人中小企業基盤整備機構

利用には、加入してから6か月以上の掛金を納付していること、倒産の事態が生じてから6か月以内に借入手続きを行うことなどの要件があります。事前の加入が前提となる制度で、取引先の「夜逃げ」は制度上の倒産に該当しない点にも注意してください。

共済金は補償金ではなく返済が必要な貸付で、借り入れると貸付額の一部に相当する掛金が控除される(実質的な負担が生じる)点にも留意しましょう。

セーフティネット保証1号(中小企業庁)

セーフティネット保証1号は、大型倒産の影響で資金繰りに支障が生じている中小企業が、信用保証協会の保証を通常とは別枠で受けられる制度です。国が指定した「大型倒産事業者」に対して債権を持っていることが前提となります。

民事再生手続開始の申立等を行った大型倒産事業者に対し、売掛金債権等を有していることにより資金繰りに支障が生じている中小企業者を支援するための措置です。

出典:セーフティネット保証1号|中小企業庁

対象となるのは、指定事業者に50万円以上の売掛金債権を持つ中小企業か、50万円未満でも取引規模が20%以上を占める中小企業です。利用するには、本店所在地の市区町村(特別区)の認定を受けたうえで、信用保証協会や金融機関に保証付き融資を申し込みます。

取引企業倒産対応資金(日本政策金融公庫)

取引企業倒産対応資金は、取引先など関連企業の倒産で経営に困難を来している事業者向けに、日本政策金融公庫が緊急に必要な長期運転資金を融資する制度(セーフティネット貸付)です。

倒産した企業(注)に対して50万円以上の売掛金債権などを有する方。倒産した企業に対する取引依存度が20%以上である方。

出典:取引企業倒産対応資金|日本政策金融公庫(中小企業事業)

いずれかの要件に当てはまる場合に利用でき、中小企業事業では融資限度額は1億5千万円です。日本政策金融公庫には中小企業事業と国民生活事業があり、事業区分によって限度額などの条件が異なります。主な要件と申請先は次の表のとおりです。

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連鎖倒産・資金繰りに備える公的制度経営セーフティ共済セーフティネット保証1号取引企業倒産対応資金
運営中小機構中小企業庁・信用保証協会日本政策金融公庫
主な要件事前に加入し6か月以上掛金を納付/倒産日から6か月以内に請求(夜逃げは対象外)国が指定した大型倒産事業者に50万円以上の売掛金債権(または取引規模20%以上)倒産した企業に50万円以上の売掛金債権、または取引依存度20%以上
上限・内容「回収困難な売掛金債権等の額」と「掛金総額の10倍(上限8,000万円)」の少ない額を無担保・無保証で貸付信用保証協会の保証限度額を通常枠とは別枠化緊急に必要な長期運転資金を融資(中小企業事業で限度額1億5千万円)
申請先中小機構(事前加入が必要)市区町村(特別区)の認定→信用保証協会・金融機関日本政策金融公庫

※各制度の要件・上限は2026年9月時点の公式情報にもとづきます。最新の適用要件は各制度の公式ページでご確認ください。

取引先倒産による売掛金の未回収を繰り返さないための予防策

倒産後の回収には限界があるため、根本的な対策は「未回収を起こさない・起きても損失を被らない」仕組みを平時から整えておくことです。代表的な予防策を整理します。

倒産の兆候を早期に察知する(与信管理・信用調査)

倒産には前兆が現れることが少なくありません。支払いの遅れや支払条件の変更を申し出てくる、手形の支払期日の延期(ジャンプ)を求めてくる、融通手形(実際の商取引を伴わない資金繰り目的の手形)が増える、急な値引き販売や在庫処分が目立つ、担当者の退職や連絡の悪化が続く、といった変化は注意信号です。

取引開始時の信用調査に加え、既存取引先も定期的にモニタリングし、与信限度額を見直すことで、焦げ付く前に取引条件を調整できます。

こうした兆候をより体系的に捉えるには、財務指標や信用調査会社のスコアで取引先の倒産リスクを数値で測る方法があります。どの指標をどの水準で警戒すべきかは、次の記事で具体的に解説しています。

契約での相殺合意・担保・所有権留保条項・期限の利益喪失条項

回収手段は、契約であらかじめ手当てしておくほど強くなります。基本契約書に所有権留保条項を入れておけば商品の引き上げ余地が広がり、相殺の合意や担保・保証人の設定は、いざというときの優先的な回収につながります。支払いが滞ったら残債の一括請求ができる「期限の利益喪失条項」も、早期の回収行動を可能にします。

取引信用保険・売掛保証によるリスク移転

自社で抱えきれないリスクは、外部に移す方法があります。取引信用保険や売掛保証は、取引先の倒産・支払遅延で売掛金が回収できなくなった場合に、保険会社・保証会社が補填する仕組みです。保険料・保証料は各社の商品や取引先の信用度によって幅がありますが、一般に売掛債権額に対して年率0.数%〜数%程度が目安とされます。貸倒れが一度でも起きると損失は大きいため、費用対効果を試算して検討する価値があります。

請求代行・掛け払い/回収代行/ファクタリングの活用

請求から回収までの業務そのものを外部に任せる選択肢もあります。与信審査・請求書発行・入金確認・督促をまとめて代行し、条件を満たす債権の未回収を保証する「請求代行・掛け払い(企業間後払い)」型のサービスは、与信と回収の負担を軽くしながら未回収リスクを移せます。

すでに滞っている債権には、多チャネルで督促を自動化する「回収代行」型が向きます。売掛債権を早期に資金化したい場合はファクタリングという手段もあります。次章では、こうした課題に対応する具体的なサービスを紹介します。

取引先の倒産に備える手段の全体像を押さえたところで、自社に合う売掛保証・請求代行・回収代行の資料をまとめて取り寄せて比較できます。

料金や機能は各社の資料でまとめて比較できます 【無料】督促・売掛金回収代行の資料を
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売掛金の未回収リスクに備えるサービス

ここからは、取引先の倒産による売掛金の未回収を防ぐ・軽くするサービスを紹介します。倒産前のリスク移転(売掛保証・掛け払い・請求代行)と、滞留した債権の回収代行の両面から、代表的なサービスを取り上げます。まずは全体像を比較表で確認してください。

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売掛金の未回収に備えるサービスの比較請求まるなげロボギャランティ for 弥生ユーザー債権回収ロボURIHO(ウリホ)Paid(ペイド)Mamotte(マモッテ)eGuarantee(イー・ギャランティ)
サービス種別請求代行+売掛保証売掛保証回収代行(督促自動化)売掛保証企業間決済・請求代行売掛保証売掛保証
未回収時の仕組み与信通過した適格債権を100%保証+督促を代行(弁護士法人対応を含む)回収不能になった売掛金を保証限度額まで保証(回収代行なし)メール・SMS・オートコール・郵送の4チャネルで督促を自動化(保証はなし)回収不能になった売掛金を保証会社が支払い(回収代行なし)請求・回収を代行し、所定条件の債権を100%保証回収不能分を保証限度額内で実損失まで補填(回収代行・債権譲渡なし)倒産・未払い時に限度額の範囲で保証金を支払い(代位弁済)
料金体系月額利用料+手数料1.0%〜
(請求書発行件数に応じ変動)
月額2,000円〜(プラン別定額)
初月無料
要問い合わせ
(公式に金額の掲載なし)
月額4,980円〜(プラン別定額)
保証料は月額に含む(取引先数の上限なし)
月額0円〜+保証料0.5〜3.5%
事務手数料125円/件
パッケージ 月額19,800円〜(公式は要問い合わせ)
オーダーメイドは年額・個別見積
保証残高×保証料率
(限度額課金/売上高課金・料率は個別設定)
保証・対応の対象自社審査で適格・与信通過したBtoB売掛金
(与信落ち分は保証対象外)
倒産(破産・民再・会社更生等)・支払い遅延
1社80万〜500万円/総額80万〜1,000万円
BtoB売掛金・BtoC消費者債権など
すでに滞留した債権の督促・回収
倒産・1か月以上の支払い遅延
法人・屋号ある個人事業主のBtoB売掛債権
BtoB取引債権(与信限度額 最大5,000万円)
反社該当・支払不能状態等は対象外
倒産・夜逃げによる回収不能
国内法人間の売掛・請負債権等(回収サイト最長180日)
売掛金・請負債権・少額取引等
包括保証/個別保証を選択
初期費用要問い合わせ要問い合わせ要問い合わせ0円0円0円要問い合わせ
詳細情報公式資料を見る公式資料を見るオンライン相談を予約詳細を見る詳細を見る詳細を見る詳細を見る

※料金・保証条件は2026年9月時点の各社公式情報にもとづきます。最新の内容は各社公式サイトでご確認ください。

請求まるなげロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

請求まるなげロボのウェブサイト

請求まるなげロボは、企業間取引の与信審査・請求書発行・代金回収・入金消込(入金データと請求データの照合)・督促をまとめて代行するサービスです。提供元の株式会社ROBOT PAYMENTが自社審査で適格債権と判断し、与信を通過した債権については、回収の結果にかかわらず売掛金を100%保証します。

与信を通過しなかった取引先分も、同じプラットフォーム上で請求書発行や入金管理を自社で行えるため、請求業務を一元化できます。督促はメール・電話に加え、弁護士法人による対応まで用意されています。保証されるのは与信通過分に限られる点をふまえ、新規取引先の与信をアウトソースしたい企業に向いています。

ギャランティ for 弥生ユーザー(弥生株式会社)

ギャランティ for 弥生ユーザーのウェブサイト

弥生の会計・販売管理ソフトの利用者向けに提供される、月額定額制の売掛保証サービスです。取引先の倒産や支払い遅延で売掛金が回収できなくなった場合に、保証限度額の範囲で保証金が支払われます。実際の審査・保証は、弥生のグループ会社であるアラームボックス株式会社が担います。

料金は月額2,000円のフリーランスプランから用意され、保証料率のような従量課金がない定額制が特徴です。審査は最短2営業日で、取引先に知られずに利用できます。「弥生販売」の得意先台帳データをそのまま審査依頼に使える連携もあり、弥生製品を使う中小企業が低コストで始めやすいサービスです。

債権回収ロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

債権回収ロボのウェブサイト

未入金の督促・回収業務を自動化するのが債権回収ロボです。メール・SMS・オートコール(自動音声)・郵送の4つのチャネルを組み合わせた督促シナリオを設計し、債務者の属性や債権額に応じて自動で実行します。督促状況や返信履歴は一元管理でき、属人化しがちな電話・郵送の督促を標準化できます。

すでに滞留している売掛金の回収を効率化したい場合に向くサービスで、決済手段や過去の支払い履歴から最適な督促タイミングを導く技術で特許出願も行われています。同社の請求管理システムや外部の販売管理システムとAPI連携し、請求から督促までをつなぐこともできます。

URIHO(株式会社ラクーンフィナンシャル)

URIHO(ウリホ)のウェブサイト

URIHO(ウリホ)は、申込から取引先登録、保証金請求までをオンラインで完結できる、月額定額制の売掛保証サービスです。取引先の倒産や1か月以上の支払い遅延で売掛金が回収できなくなった場合に、保証会社が取引代金を支払います。

月額4,980円からのミニプランを含む複数プランがあり、保証する取引先数に上限を設けず月額定額で複数社をカバーできる料金体系です。取引先の信用リスクを5段階の保証推奨度で可視化する与信機能も備え、新規取引の可否判断にも使えます。保証料の従量課金がないため、費用を見積もりやすい点も特徴です。

Paid(株式会社ラクーンフィナンシャル)

Paid(ペイド)のウェブサイト

Paid(ペイド)は、企業間取引の請求業務を一括代行する企業間決済サービスです。取引先の与信管理・請求書発行・代金回収・入金消込・督促を代行し、所定の条件を満たす債権については、未入金が発生しても代金を100%保証します。ただし、反社会的勢力への該当や支払不能状態などでは対象外となるケースもあります。

取引ごとではなく企業単位で与信を行うため、初回審査を通過すれば与信限度額(最大5,000万円)の範囲で都度審査なしに取引できます。初期費用・月額利用料は0円から始められ、料金は保証料と請求1件あたりの事務手数料が中心です。反復的なBtoB取引の請求・回収をまとめて外部化したい企業に向いています。

Mamotte(リコーリース株式会社)

Mamotte(マモッテ)のウェブサイト

東証プライム上場のリコーリースが提供する、法人向けの債権保証サービスです。取引先の倒産・夜逃げなどで売掛金が回収不能になった場合に、保証限度額の範囲で実損失分に相当する保証金が支払われます。回収業務の代行や債権の譲渡は行わず、貸倒れリスクだけを保証会社に移せる点が特徴です。

高額債権に個別対応するオーダーメイドプランと、小口・少数の取引先向けの定額パッケージプランの2系統があります。リコーリースがリース事業で蓄積した与信審査データを活用して保証限度額を設定し、審査は取引先に知られずに行えます。初期費用・審査依頼は無料です。

eGuarantee(イー・ギャランティ株式会社)

eGuarantee(イー・ギャランティ)のウェブサイト

eGuarantee(イー・ギャランティ)は、伊藤忠商事を主要株主とする東証プライム上場企業が提供する、売掛債権保証サービスです。企業が取引先に対して持つ売掛債権の信用リスクを引き受け、取引先の倒産・未払いが発生した場合に、契約で定めた限度額の範囲で保証金を支払います。

料金は「保証残高×保証料率」で算定され、保証料率は与信審査に基づき取引先ごとに設定されます。あらかじめ設定した限度額に対して課金する方式と、毎月の売上高に対して課金する方式から選べます。引き受けたリスクを再保証や証券化で外部に移転するビジネスモデルにより、幅広い取引先の保証に対応できる点が強みです。

まとめ

取引先が倒産したとき、担保のない売掛金は破産では配当を待つほかなく、回収額はごくわずかにとどまるのが実情です。それでも、相殺・所有権留保による取戻し・動産売買先取特権・別除権の行使・保証人への請求・債権届出といった手段のうち、自社で使えるものがないかを早めに確認することが回収額を左右します。物上代位のように差押えのタイミングで使えるかが決まるものもあるため、初動のスピードが重要です。

回収できなかった売掛金は、法人税基本通達9-6-1〜9-6-3の要件に沿って貸倒損失として処理し、消費税の税額控除もあわせて検討します。そして、連鎖倒産に備える公的制度と、与信管理・売掛保証・請求代行などの予防策を平時から整えておくことが、同じ損害を繰り返さない最善の備えになります。自社に合うサービスは、資料を取り寄せて比較検討してみてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. 別除権とは何ですか?

A. 別除権とは、破産手続開始時に破産財団に属する財産について特別の先取特権・質権・抵当権を持つ債権者が、破産手続によらずにその担保財産から優先的に弁済を受けられる権利です。担保のない一般の売掛金が配当を待つしかないのに対し、別除権を持つ債権者は担保からの回収を手続きの外で進められます。売った商品に生じる動産売買の先取特権も「特別の先取特権」にあたるため、別除権として行使できる場合があります。

出典・参考資料(1件)

Q. 取引先が破産すると、担保のない売掛金はもう回収できないのですか?

A. 担保のない売掛金(一般の破産債権)は配当を待つことになり、配当はゼロか少額にとどまるのが実情ですが、「まったく回収できない」と決まるわけではありません。買掛金との相殺、所有権留保による商品の取戻し、動産売買の先取特権、保証人への請求など、自社で使える手段が残っていないかをまず確認しましょう。届いた通知書と契約書・請求書・入金履歴も確認してください。

Q. 倒産した取引先に、督促や取り立てをしてもよいですか?

A. 破産手続の開始後は、個別に督促して取り立てることはできず、裁判所への債権届出を通じて配当を受ける形になります。 破産手続開始前の支払遅延の段階であれば督促や法的手段による回収の余地がありますが、開始後は財産の管理処分権が破産管財人に移り、個別の取り立ては効力を持ちません。取り立てを続けるのではなく、期限内の債権届出に切り替えて対応します。

Q. 債権届出の期限を過ぎてしまった場合でも、届出はできますか?

A. 期限後の届出が認められるかや不利益は手続き・事案により異なり、一律に「もう届出できない」とはいえません。 債権届出期間を過ぎると配当から除外されるおそれがあり、追完の可否は事件ごとの運用によります。放置せず早めに裁判所や破産管財人、弁護士へ確認してください。届出期限は破産手続開始と同時に裁判所が定めるため、通知書で最初に締め切りを確認しておきましょう。

Q. 取引先に無断で、納品した商品を引き上げてもよいですか?

A. 所有権留保があっても、取引先に無断で商品を引き上げるのは避けてください。無断の引き上げ(自力救済)は違法と評価されるおそれがあります。 日本では権利の実現は裁判所などの正規の手続きによるのが原則で、自力救済は判例上、原則として認められていません(例外は極めて限定的)。相手の同意を得るか、破産管財人と協議のうえ取戻権・別除権などの正規の手続きで回収します。

Q. 取引先への売掛金と、自社の買掛金は相殺できますか?

A. 自社が取引先に買掛金などの債務を負っていれば、破産手続によらずに売掛金と相殺でき、その分は実質的に回収できます。 ただし相殺には制限があり、破産手続開始後に負担した債務や、支払停止を知りながら負った債務では相殺できません。民事再生では相殺できる期間が債権届出期間内に限られます。倒産間際に相殺目的で取引を作る行為は認められない点にも注意してください。

出典・参考資料(3件)

Q. 取引先が倒産しても、保証人がいれば売掛金を請求できますか?

A. 連帯保証人や保証会社がいる場合、保証債務は取引先の倒産手続きとは別のものなので、倒産手続きの外で保証人に直接請求できます。 同様に、信用保証を付けていたり売掛保証サービスに加入していたりする場合も、契約に沿って保証を受けられます。保証や担保の有無は回収可能性を大きく左右するため、倒産の一報を受けたら、初動で契約内容に保証人・担保の定めがないかを確認しておくことが重要です。

Q. 取引先が民事再生に入った場合、今後も取引を続けてよいですか?

A. 取引を続けるかどうかは自社の経営判断で、契約条項や支払条件を確認したうえで判断します。 民事再生は事業の継続を前提とする手続きのため、取引が続くケースもあります。その際は、再生手続開始前に生じた売掛金(再生債権)と、開始後の取引で生じる売掛金を区別することが大切です。開始後の取引分については、前払い・現金取引・支払サイトの短縮などで新たな未回収が生じないよう手当てを検討してください。

Q. 取引先が倒産したら、売掛金はすぐに貸倒損失として経費にできますか?

A. 取引先の倒産や破産手続開始の通知が届いただけでは、すぐに全額を貸倒損失にはできません。 税務上の貸倒れには法人税基本通達の要件があり、事実上の貸倒れ(9-6-2)は「全額が回収できないことが明らか」で、担保があるときは処分後でなければ計上できません。破産手続開始の段階では配当額が確定せず「全額回収不能が明らか」とはいえないため、計上時期は各類型の要件に沿って判断します。

出典・参考資料(2件)

Q. 法的な手続きがなくても、売掛金を貸倒損失にできますか?

A. 法的整理がなくても、全額回収できないことが明らかなら事実上の貸倒れ(9-6-2)、取引停止から1年以上弁済がない場合などは形式上の貸倒れ(9-6-3)として損金にできます。 9-6-2は全額回収不能・担保があれば処分後が要件、9-6-3は対象が売掛債権に限られ(貸付金は含まず)備忘価額を残します。いずれも回収不能を裏づける客観的な資料の保存が欠かせません。

出典・参考資料(1件)

Q. いったん貸倒処理した売掛金を、後から回収できた場合はどうすればよいですか?

A. 過去に貸倒損失として処理した売掛金を後日回収できたときは、その回収額を「償却債権取立益」として、回収した事業年度の収益(益金)に計上します。 前期の貸倒れをさかのぼって修正するのではなく、回収した期の収益として処理するのが原則です。あわせて、貸倒れの際に消費税の税額控除を受けていた場合は、回収額に対応する消費税額を、その課税期間の納税額に加算します。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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