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電子決済手段(ステーブルコイン)の裏付資産とは?種類・発行形態別の要件・2025年改正を解説

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ステーブルコイン・RWA発行支援比較表(2026年版)のプレビュー

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ステーブルコイン・RWA発行支援比較表(2026年版)

自社でステーブルコイン(電子決済手段)の発行を検討するとき、最初に固めなければならないのが「裏付資産として何を、どの条件で保有できるのか」という点です。裏付資産の種類や保全の方法は、発行するステーブルコインがどの発行形態に当たるかによって変わり、根拠となる条文も分かれています。

2025年(令和7年)6月13日に公布された資金決済に関する法律の一部を改正する法律(令和7年法律第66号)は、2026年(令和8年)6月1日に施行されました。この改正により、信託型ステーブルコインの裏付資産の管理・運用が一部緩和され、従来は全額を要求払預貯金で管理する必要があったところ、一定の条件のもとで国債などによる運用が認められています。

本記事では、電子決済手段の裏付資産に使える資産の種類と数値要件を結論から示したうえで、発行形態(銀行預金型・資金移動業型・信託型・外国電子決済手段)ごとの裏付資産・保全方法・償還のルールを条文レベルで整理します。あわせて、要件を確定したあとに発行スキームの設計や裏付資産の管理体制の構築を相談できるサービスも紹介します。

電子決済手段(ステーブルコイン)の裏付資産に使える資産と数値要件

最初に結論を示します。裏付資産の要件が最も細かく定められているのは、信託を用いて発行する「信託型(特定信託受益権。3号電子決済手段)」です。信託型で裏付資産に使えるのは、次の資産です。

  • 要求払預金(預金者がいつでも払戻しを請求できる預金)
  • 中途解約が可能な定期預金(元本欠損が生じるおそれのないものに限る)
  • 国債証券など金融庁長官が指定する債券(金融庁の説明では、満期・残存期間が3か月以内のもの)

そのうえで、数値の要件は次のとおりです。

  • 要求払預金で信託財産の50%以上を管理(残りの50%以内で、中途解約が可能な定期預金や満期・残存3か月以内の国債などによる運用が認められる)
  • 同一通貨建てに限定(円建てのステーブルコインは円建ての資産、外貨建ては同一の外貨建ての資産で管理・運用)
  • 元本毀損を防ぐ仕組み(国債などで運用する場合、信託財産の元本評価額が発行額の合計に満たなくなったら、その翌日から2営業日以内に委託者が不足額を解消する)

この「要求払預金50%以上・残りは国債など」という運用は、2026年(令和8年)6月1日施行の改正で新たに認められたものです。改正前は、受託者が受け入れた金銭の全額を要求払預貯金で管理する必要がありました。従来と改正後の違いを整理すると、次のようになります。

  • 改正前:裏付けとなる金銭は全額を要求払預貯金で管理
  • 改正後(2026年6月1日〜):要求払預金で50%以上を管理し、残りを中途解約が可能な定期預金や満期・残存3か月以内の国債などで運用可能(同一通貨建て・元本毀損防止つき)

数値の根拠となるのは、電子決済手段等取引業者に関する内閣府令(以下、取引業府令)第3条です。裏付資産に占める預貯金の割合について、次のように定めています。

第三条 法第二条第九項に規定する内閣府令で定める割合は、百分の五十とする。

出典:資金移動業者に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(新旧対照表)|金融庁

この「割合」が引用される資金決済に関する法律(以下、資金決済法)第2条第9項は、特定信託受益権を「受託者が信託契約により受け入れた金銭の総額のうち預貯金により管理する額の……割合が内閣府令で定める割合以上であること、当該金銭の総額のうち当該預貯金により管理する額以外の額を内閣府令で定める国債証券その他の内閣府令で定める債券……の保有により運用するものであること」と定義しています。

条文が定める「内閣府令で定める割合」が、取引業府令第3条の50%にあたります。

出典・参考資料(2件)

なお、ここで整理したのは信託型を中心とする要件です。ステーブルコインは発行形態によって裏付資産や保全の仕組みが異なるため、次に発行形態ごとの違いを一覧で確認します。

発行形態別の裏付資産・保全・償還 比較表

電子決済手段は、資金決済法第2条第5項で第1号から第4号までが定義されています。実務では、第1号(通貨建資産型)を発行主体によって「銀行預金型」と「資金移動業型」に分けて呼び、これに信託型の第3号、そして海外で発行される外国電子決済手段を加えて整理することが一般的です。以下は、発行形態ごとの裏付資産・保全方法・償還と破綻時の扱い・根拠条文をまとめた比較表です。

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発行形態別の裏付資産・保全・償還銀行預金型(1号)資金移動業型(1号)信託型(3号)外国電子決済手段
使える裏付資産銀行への預金そのもの(発行体=銀行)発行見合い額(未達債務など)以上の履行保証金要求払預金50%以上+満期3か月以内の国債など(残り50%まで)発行国の制度に基づく裏付資産(取扱いは国内の取引業者)
分別・保全方法預金として銀行が保有。預金保険の対象になり得る履行保証金の供託/保全契約/信託契約で保全信託財産として受託者の固有財産と分別。全額を信託で保全国内の電子決済手段等取引業者が利用者資産を保全
償還・破綻時保護額面での払戻し。破綻時は預金保険(1金融機関あたり元本1,000万円と利息)額面での払戻し。破綻時は権利実行手続で利用者が優先弁済を受ける全額を信託財産として保全し償還に充てる(信託財産の運用リスク等により元本が常に保証されるわけではない)取引業者を通じた同額買取など。国内での資産保全が求められる
根拠条文資金決済法2条5項1号資金決済法2条5項1号・43〜45条資金決済法2条9項・取引業府令3条資金決済法2条5項・電子決済手段等取引業の規制

※2026年6月1日施行の改正資金決済法および関係内閣府令等にもとづく整理です。個別の要件は各条文・出典をご確認ください。

電子決済手段(ステーブルコイン)とは?裏付資産が求められる理由

電子決済手段は、資金決済法第2条第5項で定義される財産的価値で、法定通貨に価値が連動し、電子情報処理組織を用いて移転できるものを指します。いわゆるステーブルコインのうち、法定通貨の価値に連動し発行価格と同額で償還されるタイプ(デジタルマネー類似型)が、この電子決済手段に該当します。

条文は電子決済手段を第1号から第4号に分けて定義しています。第1号は不特定の者に対する支払いに使える通貨建資産型、第3号は特定信託受益権(信託型)です。第1号には「銀行預金型」と「資金移動業型」という区別語は登場しませんが、実務では発行主体に応じてこの2つに分けて説明されます。

出典・参考資料(1件)

裏付資産の保全が厳格に求められるのは、ステーブルコインの発行・償還が資金決済法上の「為替取引」に当たり、これを業として行うには銀行業免許または資金移動業の登録が必要になるためです。資金決済法は、銀行等以外の者が為替取引を業として営むことを資金移動業と定めています(第2条第2項)。

利用者が預けた資金が確実に払い戻される状態を保つために、発行形態ごとに預金・供託・信託といった保全の仕組みが法令で定められています。

発行形態別の詳説(裏付資産・分別管理・償還・破綻時保護)

ここからは、比較表の各行を条文レベルで掘り下げます。自社が発行しようとするステーブルコインがどの形態に当たるかを確かめながら読み進めてください。

銀行預金型1号電子決済手段

銀行が発行するステーブルコインは、その価値の裏付けが銀行への預金そのものになります。発行体である銀行が預金として資金を保有するため、裏付資産を別に用意して分別管理するというより、預金の受入れという銀行本来の枠組みのなかで管理される点が特徴です。利用者は額面での払戻しを受けられ、銀行が破綻した場合には預金保険の対象になり得ます。

ただし預金保険による保護は1金融機関あたり元本1,000万円とその利息までで、信託型のように裏付資産が全額保全されるわけではありません。まとまった額を扱う前提では、この保護の範囲の違いも発行形態を選ぶ際の判断材料になります。

トークン化預金との違い

銀行が関わる点で混同されやすいのが「トークン化預金」です。トークン化預金は、預金債権そのものをブロックチェーン上で移転できるようにしたもので、法的な本体はあくまで銀行に対する預金債権です。したがって預金保険の対象となり、1金融機関あたり元本1,000万円とその利息までが保護されます。

一方、電子決済手段(1号・3号)は、預金保険ではなく、履行保証金の供託や信託による分別管理といった別の保全スキームで利用者を保護します。同じ「デジタルのおかね」に見えても、破綻したときに何によって守られるかが異なる点は、発行形態を選ぶうえで押さえておきたい違いです。

出典・参考資料(1件)

資金移動業型1号電子決済手段

資金移動業者が発行するステーブルコインでは、発行見合い額(利用者に対する未達債務など)以上の金額を「履行保証金」として保全します。保全の方法は、供託所への供託を基本としつつ、保全契約や信託契約によって供託の全部または一部に代えることも認められています。資金決済法第43条は履行保証金の供託義務を、次のように定めています。

第四十三条 資金移動業者は、次の各号に掲げる資金移動業の種別に応じ、当該各号に定めるところにより、資金移動業の種別ごとに履行保証金をその本店……の最寄りの供託所に供託しなければならない。

出典:資金決済に関する法律 第43条|e-Gov法令検索

さらに第44条は履行保証金保全契約、第45条は履行保証金信託契約を定めており、これらを締結して内閣総理大臣に届け出た場合は、供託の全部または一部を省くことができます。利用者は額面での払戻しを受けられ、発行体が破綻した際には権利実行の手続を通じて履行保証金から優先的に弁済を受けられる建て付けです。

裏付けとなる資産の中身は、この履行保証金として保全される資産に対応します。履行保証金は現金のほか、国債証券・地方債証券など内閣府令で定める債券で充てることもできます(第43条第3項)。信託契約で保全する場合の信託財産も、金銭・預貯金または国債・地方債などに限られます(第45条第3項)。

出典・参考資料(1件)

信託型3号電子決済手段(特定信託受益権)

信託型は、発行を依頼する事業者(委託者)が信託銀行など(受託者)に金銭を信託し、その信託受益権をステーブルコインとして発行する形態です。資金決済法第2条第9項が定める特定信託受益権にあたり、裏付けとなる資産が受託者の固有財産と分別して管理されるため、発行体の財産状況と切り離して保全されます。

この記事の冒頭で整理したとおり、信託型の裏付資産は取引業府令第3条により、要求払預金で50%以上を管理し、残りを中途解約が可能な定期預金や満期・残存3か月以内の国債などで運用できます。

国債などで運用する場合は、信託財産の元本評価額が発行額に満たなくなったときに、翌日から2営業日以内に委託者(発行を依頼する事業者)が不足額を解消する仕組みが求められ、元本の毀損を防ぐ設計です。裏付資産は全額が信託で保全され、原則として全額の償還を受けられる建て付けです。

ただし、信託財産の運用リスク(国債の処分損など)や信託にかかる費用などにより信託財産が不足する可能性は残り、元本が常に保証されるわけではありません。

国債などによる運用の対象は同一通貨建てに限られ、円建てのステーブルコインは円建て資産、外貨建ては同一の外貨建て資産で運用します。外貨建てで運用できる外国の国債は、金融庁の告示により、適格格付機関による信用力の区分が高格付で、かつその国が発行する債券の総額が100兆円に相当する額以上であることが基準とされ、米国債などが該当します。

出典・参考資料(3件)

外国電子決済手段

海外で発行されたステーブルコイン(外国電子決済手段)は、日本国内では電子決済手段等取引業者を介して取り扱われます。発行そのものは発行国の制度にもとづきますが、国内で取り扱う取引業者に対して、利用者資産の保全や同額での買取りに応じる体制などが求められます。

出典・参考資料(1件)

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2025年改正(令和7年法律第66号)による裏付資産運用の柔軟化

信託型の裏付資産で国債などによる運用が認められたのは、資金決済に関する法律の一部を改正する法律(令和7年法律第66号)による見直しです。ここでは、いつから・何が変わったのかを整理します。

信託型ステーブルコインの裏付資産の運用ルールを改正前後で比較した図。改正前は受け入れた金銭の全額を要求払預貯金で管理。2026年6月1日施行の改正後は、要求払預金で50%以上を管理し、残り50%までを中途解約が可能な定期預金や満期・残存3か月以内の国債などで運用できる。国債などによる運用は同一通貨建てに限定され、元本評価額が発行額を下回ったら翌日から2営業日以内に不足額を解消する元本毀損防止の歯止めがつく。

改正法は2025年(令和7年)6月13日に公布され、2026年(令和8年)6月1日に施行されました。あわせて、関係する政令・内閣府令・告示・事務ガイドラインも2026年(令和8年)5月22日に公布され、同年6月1日に施行されています。裏付資産の運用に関する具体的な数値(要求払預金50%以上・満期3か月以内の国債など)は、この施行済みの取引業府令および金融庁の公表資料で確定しています。

変わった点の中心は、これまで全額を要求払預貯金で管理する必要があった信託型の裏付資産について、一定の条件のもとで一部を国債などで運用できるようにしたことです。具体的な資産の種類や数値要件(要求払預金50%以上・満期3か月以内の国債など)は、冒頭の「裏付資産に使える資産と数値要件」で整理したとおりで、同一通貨建て・元本毀損防止といった歯止めもあわせて設けられています。

出典・参考資料(2件)

なお、令和7年法律第66号は裏付資産の柔軟化だけでなく、電子決済手段・暗号資産に関する仲介業の創設や、資産の国内保有命令の導入なども含む改正です。本記事では、このうち裏付資産に関わる部分に絞って解説しています。

国内の発行事例(JPYC・JPYSC・USDC・RLUSD)で見る裏付資産管理

発行形態ごとの裏付資産の考え方は、国内で実際に取り扱われているステーブルコインを見ると具体的に理解できます。

JPYC(資金移動業型1号)は、JPYC株式会社が発行する円建てステーブルコインです。同社は2025年(令和7年)8月18日に資金決済法第37条にもとづく資金移動業者として登録し(登録番号:関東財務局長第00099号)、同年10月27日に発行を開始しました。裏付資産は日本円(預貯金および国債)とされています。

JPYSC(信託型3号)は、SBI新生信託銀行が発行する、日本円の価格に連動するよう設計されたステーブルコインで、信託型にあたり、2026年(令和8年)6月に提供が開始されています。裏付けとなる資産が信託により保全される点が、資金移動業型のJPYCとの違いです。

USDC・RLUSD(外国電子決済手段)は、海外の発行体が発行するステーブルコインで、日本国内では電子決済手段等取引業者を介して発行・償還や売買が行われます。たとえばSBI VCトレードは電子決済手段等取引業(関東財務局長第00001号)として登録し、これらを取り扱っています。

出典・参考資料(2件)

電子決済手段の発行・裏付資産管理を進めるには(相談先)

裏付資産の要件を確認できても、実際の発行では、自社の事業に合った発行形態の選択、信託銀行の起用、分別管理・償還体制の構築、当局対応といった実務を組み立てる必要があります。これらを自社だけで完結させるのは難しく、発行スキームの設計や規制対応を支援するコンサルティング、裏付資産の管理・保全を実装する発行基盤を活用するのが現実的です。

ここでは、この記事のテーマである裏付資産の管理・保全を含む発行スキームの実装に役立つサービスを紹介します。

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裏付資産管理・発行スキーム実装に対応するサービスの比較finojectProgmat CoinSimplex Stablecoinソラミツ
提供形態コンサルティング
(伴走支援)
発行・管理基盤
(プラットフォーム)
発行・運用事業者向け業務システム
(受託構築)
コンサルティング+開発支援
(自社基盤 Hyperledger Iroha)
主な支援・機能ライセンス登録支援
規制・AML・CFT態勢構築
システム構築支援
信託型ステーブルコインの発行・管理基盤
複数パブリックチェーン対応
発行・償還
裏付資産管理
リスクモニタリング
口座管理(eKYC・反社チェック連携)
資金決済法等の要件整理・AML・CFT設計
発行・償還・資金管理スキーム策定
PoC・実装・運用監視
対応する発行形態特定の形態に限定せず
要件整理から個別に支援
信託型(3号電子決済手段)資金移動業型(1号)が現状対応
預金型・信託型は対応予定
特定の形態に限定せず
スキーム策定から個別に支援
裏付資産管理への対応発行スキーム設計の一部として支援
(範囲は要問い合わせ)
裏付けの法定通貨を全額信託財産として保全
(原則として全額の償還を受けられる設計)
業務システムの機能として実装資金管理スキームの策定として支援
料金要お問い合わせ要お問い合わせ要お問い合わせ要お問い合わせ
詳細情報公式資料を見る公式サイト公式サイト公式サイト

発行支援サービスの種類や選び方、日本の規制と発行スキームの全体像まで含めて広く比較検討したい場合は、以下の記事で詳しく解説しています。

1. finoject(株式会社finoject)

finojectの公式サイト

finojectは、暗号資産・ステーブルコイン・デジタル証券などWeb3金融領域に特化した実務型のコンサルティングを提供する会社です。代表者は日本興業銀行出身で、bitFlyerホールディングスの代表取締役社長や日本暗号資産取引業協会の会長を務めた経歴を持ちます。

提供する支援は、各種ライセンスの登録支援、コンプライアンス態勢の構築、AML・CFT態勢の構築、システム構築支援などです。裏付資産の分別管理や保全を含む発行スキームをどう組むかを、要件整理の段階から運用開始まで伴走して支援します。2026年(令和8年)2月には、暗号資産・ステーブルコインなどのAML高度化の取り組みが金融庁「FinTech実証実験ハブ」の支援案件に選ばれています。

発行スキームの設計や受託発行の具体的な範囲は案件ごとに異なるため、詳細は資料や問い合わせで確認するとよいでしょう。

発行にあたって規制対応をどこまで実務に落とし込むべきかについて、同社の三根氏はインタビューで次のように述べています。

三根氏
株式会社finoject 代表取締役
三根氏
独自インタビューより

机上の整理で終わらせないことを最も重視しています。ライセンス取得はあくまでスタートラインであり、取得後に実際の業務が滞りなく回ることがゴールです。そのために、態勢構築の段階から実務を想定した設計を行い、マニュアルやフローを作って終わりではなく、実際に運用してみた際に起こりうる課題まで想定した仕組みづくりを心がけています。

2. Progmat Coin(株式会社Progmat)

Progmat Coinの公式サイト

信託型(特定信託受益権/3号電子決済手段)のステーブルコインを発行・管理するための基盤が、Progmat Coinです。発行体である信託銀行と発行を依頼する企業をつなぎ、各社が自社ブランドのステーブルコインをパブリックチェーン上で発行・管理できる共通基盤として設計されています。運営する株式会社Progmatには、三菱UFJ信託銀行やNTTデータグループ、信託銀行各社などが出資しています。

裏付資産の保全という観点では、裏付けとなる法定通貨を全額信託財産として保全し、利用者が原則として全額の償還を受けられる設計です。ただし、信託財産の運用リスク等により元本が常に保証されるわけではありません。信託型で発行したい事業者にとって、裏付資産の分別管理・保全を実装する選択肢になります。

基盤上で各社が発行を検討する銘柄には共同検討の段階のものも含まれるため、個別銘柄の稼働状況は公式情報で確認してください。

3. Simplex Stablecoin(シンプレクス株式会社)

Simplex Stablecoinの公式サイト

メガバンクや大手証券向けの金融システム構築を手がけてきたシンプレクス株式会社が提供するのが、ステーブルコインの発行体・流通業者向けの業務システム「Simplex Stablecoin」です。

機能区分に「ステーブルコイン発行・償還」「裏付資産管理」「リスクモニタリング」を掲げており、裏付資産の管理を業務システムとして実装したい事業者に向いています。KYC・アドレススクリーニング・反社チェックといった規制上の要件も業務フローに組み込まれています。

対応する発行形態は、資金移動業型(1号)が現状対応で、預金型・信託型は対応予定とされています。単体での導入実績は公表されていないため、適用範囲は個別に確認するとよいでしょう。

4. ソラミツ(ソラミツ株式会社)

ソラミツのステーブルコイン発行コンサルティング事業の公式サイト

ソラミツは、ブロックチェーン基盤「Hyperledger Iroha」の原開発元で、カンボジア国立銀行と中央銀行デジタル通貨「バコン」を共同開発した実績を持つ日本発のテクノロジー企業です。2025年(令和7年)10月に、国内向けのステーブルコイン発行コンサルティング事業を開始しました。

公式に掲げる支援メニューには「資金決済法等の要件整理、AML・CFT設計、発行・償還・資金管理スキーム策定」が含まれ、裏付資産を含む資金管理のスキーム策定から、システムの設計・実装・運用までを一気通貫で支援します。要件整理から発行基盤の実装までを相談したい事業者の選択肢になります。ライセンス取得の代行までを担うかは公式に明記されていないため、支援範囲は問い合わせで確認してください。

まとめ

電子決済手段の裏付資産は、発行形態によって使える資産・保全方法・破綻時の保護が異なります。信託型(3号)では、2026年(令和8年)6月1日施行の改正により、要求払預金で50%以上を確保したうえで、満期・残存3か月以内の国債などで残りを運用できるようになりました。

同一通貨建て・元本毀損防止といった条件がかかる点、資金移動業型(1号)は履行保証金の供託・保全契約・信託契約で保全する点など、形態ごとの違いを押さえることが、発行スキームを検討する出発点になります。

裏付資産の要件を確認したら、次は自社に合った発行形態の選択と、信託起用・分別管理・償還体制の構築です。発行スキームの設計や規制対応、裏付資産の管理を実装するサービスの資料をまとめて請求し、比較検討を進めてみてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. 電子決済手段(ステーブルコイン)の裏付資産とは何ですか?

A. 電子決済手段の裏付資産とは、発行したステーブルコインの価値を裏づけ、額面での償還を確実にするために発行体が保有・管理する資産です。法定通貨に価値が連動する電子決済手段(資金決済法2条5項)では、利用者がいつでも額面で払戻しを受けられるよう、預貯金・国債・履行保証金・信託財産といった資産で裏付けを保全することが、発行形態ごとに法令で義務づけられています。

出典・参考資料(1件)

Q. 電子決済手段の裏付資産にはどんな資産を使えますか?

A. 信託型(3号)で裏付資産に使えるのは、要求払預金・中途解約が可能な定期預金(元本欠損のおそれがないもの)・国債証券など金融庁長官が指定する債券(満期・残存期間3か月以内)です。円建てのステーブルコインは円建て資産、外貨建ては同一の外貨建て資産に限られ、外貨建てで運用できる外国国債は米国債などが基準に該当します。

なお資金移動業型(1号)は履行保証金として国債・地方債等での保全が、銀行預金型(1号)は銀行への預金そのものが裏付けになるなど、使える資産は発行形態で異なります。

出典・参考資料(2件)

Q. 電子決済手段の裏付資産は国債などでどこまで運用できますか?

A. 信託型(3号)では、裏付資産の50%以上を要求払預金で管理し、残りの50%までを中途解約が可能な定期預金や満期・残存3か月以内の国債などで運用できます。あわせて同一通貨建てに限定され、国債などで運用する場合は、信託財産の元本評価額が発行額を下回ったときに翌日から2営業日以内に不足額を解消する(元本毀損防止)仕組みが求められます。

この「百分の五十」という割合は、電子決済手段等取引業者に関する内閣府令(取引業府令)第3条で定められています。

出典・参考資料(2件)

Q. 電子決済手段の裏付資産や保全は発行形態によってどう違いますか?

A. 電子決済手段の裏付資産・保全は、発行形態(銀行預金型1号・資金移動業型1号・信託型3号・外国電子決済手段)ごとに、使える資産も保全スキームも異なります。

銀行預金型は銀行への預金そのもの(預金保険の対象になり得る)、資金移動業型は発行見合い額以上の履行保証金を供託・保全契約・信託契約で保全、信託型は信託財産としての分別管理(要求払預金50%以上+国債など)、外国電子決済手段は国内の取引業者による利用者資産の保全、という建て付けです。

自社がどの形態に当たるかで根拠条文も変わるため、まず発行形態の見極めが出発点になります。

出典・参考資料(1件)

Q. 2026年6月施行の改正で電子決済手段の裏付資産は何が変わりましたか?

A. 改正により、信託型(3号)の裏付資産は、これまで全額を要求払預貯金で管理する必要があったところ、要求払預金で50%以上を確保すれば残りを満期・残存3か月以内の国債などで運用できるようになりました。

この見直しは資金決済に関する法律の一部を改正する法律(令和7年法律第66号。2025年6月13日公布・2026年6月1日施行)と、同年5月22日公布・6月1日施行の政令・内閣府令・告示によるもので、数値要件はすでに施行済みの確定要件です(「予定」ではありません)。同一通貨建て・元本毀損防止といった歯止めもあわせて設けられています。

出典・参考資料(2件)

Q. 電子決済手段は発行体が破綻したとき保護されますか?

A. 発行形態ごとに定められた保全の仕組みにより、破綻時にも利用者が保護される建て付けになっています。銀行預金型は預金保険(1金融機関あたり元本1,000万円と利息)の対象になり得、資金移動業型は権利実行の手続を通じて履行保証金から優先的に弁済を受けられます。

信託型は裏付資産が信託財産として分別保全されるため、原則として全額の償還を受けられます(信託財産の運用リスク等により元本が常に保証されるわけではありません)。

いずれも発行価格と同額での償還を前提とした保護スキームです。

出典・参考資料(2件)

Q. 電子決済手段とトークン化預金は何が違いますか?

A. 電子決済手段は履行保証金の供託や信託による分別管理で保全されるのに対し、トークン化預金は法的には銀行への預金債権そのもので、預金保険の対象になる点が異なります。トークン化預金は預金債権をブロックチェーン上で移転できるようにしたもので、1金融機関あたり元本1,000万円とその利息までが預金保険で保護されます。

同じ「デジタルのおかね」に見えても、破綻したときに何によって守られるかが違うため、発行形態を選ぶうえで押さえておきたい区別です。

出典・参考資料(1件)

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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