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電子契約の導入事例|業種・規模別の効果(削減時間・コスト・電子化率)と自社に合う選び方

電子契約の導入事例|業種・規模別の効果と選び方のサムネイル画像
電子契約システム比較表(2026年版)のプレビュー

主要22サービスの料金・機能を無料で一覧比較

電子契約システム比較表(2026年版)

電子契約の導入を検討するとき、最も気になるのは「自社と近い会社で本当に効果が出ているのか」という点です。メリットの一般論だけでは、導入を判断する材料になりません。

この記事では、実名の企業・自治体が電子契約を導入して得た効果を、公式の導入事例から数値つきで一覧にまとめました。業種・規模・電子化した契約類型・導入効果を横に並べ、自社に近い事例をすぐ見つけられるようにしています。

あわせて、効果の相場感、事例の契約がなぜ電子化できたのかという法的な前提、導入時につまずきやすい課題と乗り越え方、そして事例を踏まえた自社に合うサービスの選び方まで、意思決定に必要な情報を一本にまとめています。

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電子契約の導入事例一覧【業種・規模・契約類型・効果数値】

まずは、実名の企業・自治体が電子契約を導入して得た効果を一覧で示します。いずれも各サービスの公式導入事例ページで公表されている数値で、自社に近い業種・規模の行から読むと、導入後の姿を具体的に描けます。

企業・団体業種規模電子化した契約主な導入効果サービス
タマホーム建設(戸建て住宅)大手(全国約250拠点)工事請負契約、追加変更契約印紙代を全社・年間で1億円超削減(工事請負1件あたり2万円の印紙が不要に)クラウドサイン
後藤組建設中堅雇用契約、請負契約、注文書・注文請書、工事指示書契約書の電子化率が全体で約40%にクラウドサイン
東邦電気産業建設設備工事中堅(101〜300名)注文書、注文請書、基本取引契約書年間コスト約50万円削減(見込み)/契約書到達が3〜4日→即日/注文書の電子化ほぼ100%(年約1,300件)電子印鑑GMOサイン
広島銀行金融(地方銀行)大手住宅ローン契約、金銭消費貸借契約年2,600時間削減/事務時間約26%短縮/電子契約選択率が約7割→約9割WAN-Sign
神戸市自治体官公庁債券引受契約、システム保守契約締結が1週間ほど→即日/作業時間 年3,200時間削減(見込み)SMBCクラウドサイン
豊田市役所自治体官公庁(人口約42万人)工事請負、委託、物品購入・賃貸借など電子契約率 約8割(4/1〜8/4の落札分)/来庁事業者が約10分の1に/用紙 約1万6,000枚削減電子印鑑GMOサイン
ヤマト運輸物流・陸運大手配送パートナーとの委託契約月約7,000件(繁忙期1万件超)の送信に対応/移行は一晩で完了クラウドサイン
サカイ引越センター物流・運送大手利用運送契約書200件以上の契約を再締結/契約業務を50%以上削減電子印鑑GMOサイン
コクヨ製造大手雇用契約、業務委託契約、注文書雇用契約締結が1週間→2日程度/業務委託契約の6割が電子化SMBCクラウドサイン
キューサイ製造中堅(社員約500名)契約書、発注書、申込書、NDAなど事務手続き時間 月62.7時間→月15時間/押印完了まで平均1.5日・最短30分/締結率5割マネーフォワード クラウド契約
大明法律事務所士業(法律)小規模訴訟委任状、示談書、同意書郵送往復の2〜3日(土日を挟むと1週間)が不要にクラウドサイン
税理士法人TOTAL士業(税務)中堅(全国12拠点・約300名超)税務顧問契約書月平均約40件を管理/既存約5,000件の契約書を電子保管へマネーフォワード クラウド契約
済生会滋賀県病院医療・福祉中堅(393床)業務委託、システム保守、工事請負印紙税を年間約60万円削減(2023年度)/締結が2週間以上→2日程度SMBCクラウドサイン
エムステージグループ医療・介護・福祉中堅(51〜300名)医療機関・企業・医師との契約、覚書年間コスト 約400万円→約200万円強(半減見込み)/契約は年間1万〜2万件程度マネーフォワード クラウド契約
モスフードサービス小売・飲食大手売買、業務委託、工事請負、廃棄物処理委託など締結が半月〜1カ月→早ければ1日未満/契約書回収率100%SMBCクラウドサイン
Dr.ルルルン小売(化粧品)小規模(11〜50名)紙契約を含むすべての契約書締結までが3日→最短数分/契約状況の問い合わせ月4〜5件が減少マネーフォワード クラウド契約

削減額や電子化率の一部は、公表時点の見込み・目標や、特定期間・全社を合算した値です。各社の前提は、次の業種別・規模別の解説で個別に補足します。数値の出所は以下のとおりです。

出典・参考資料(16件)

業種別に見る電子契約の導入事例(業種特有の課題と解決したサービス機能)

ここからは、業種ごとに事例を読み解きます。同じ電子契約でも、業種によって電子化する契約と重視する機能は異なります。自社の業種に近い項目から確認してください。

金融機関:本人確認の強度と大量締結の両立

金融機関では、住宅ローンのように本人の意思を厳格に確認すべき契約と、大量に発生する事務書類の両方を扱います。広島銀行は、本人が電子証明書で署名する当事者型よりも運用しやすい立会人型(事業者が当事者の指示で署名する方式)を住宅ローン契約などに採用し、年2,600時間の削減と事務時間の約26%短縮を実現しました。電子契約の選択率も約7割から約9割へ高まっています。

締結コストは当事者型と比べて約3分の1に抑えられており、締結件数が多い金融業務ほど、方式の選択が費用対効果を左右することがわかります。

自治体・官公庁:法改正を受けた立会人型の活用

自治体は、地方自治法施行規則の改正(後述)によって立会人型の電子契約を使いやすくなり、導入が一気に進みました。神戸市は債券引受契約などで、締結にかかっていた1週間ほどをその日のうちに短縮し、年3,200時間の作業削減を見込んでいます。

豊田市役所は、庁内ネットワーク(LGWAN)環境で使える電子契約を導入し、落札決定分の約8割を電子契約に切り替えました(4月1日〜8月4日の落札分)。来庁する事業者は約10分の1に減り、用紙も約1万6,000枚削減しています。自治体では、契約相手が地域の事業者であるため、相手方の負担が小さい立会人型が選ばれやすい傾向があります。

建設業:注文書・注文請書の大量処理と印紙代削減

建設業は契約金額が大きく、工事請負契約書や注文請書に貼る収入印紙の負担が重い業種です。タマホームは工事請負契約などを電子化し、全社・年間で1億円を超える印紙代を削減しました。電子契約はデータでやり取りするため課税文書に当たらず、印紙税がかからないことが直接の財務効果につながっています。

出典・参考資料(1件)

東邦電気産業は、年約1,300件の注文書・注文請書をほぼ100%電子化し、契約書の到達が3〜4日から即日に短縮、年間コストを約50万円削減しました。後藤組は、業務アプリと連携させて工事指示書までデジタル化し、契約書全体の電子化率を約40%まで高めています。

工事請負契約書や注文請書にかかる収入印紙の具体的な金額と、2014年から続く軽減措置の適用条件は、以下の記事で契約金額ごとに一覧化しています。自社の契約金額をあてはめて印紙代削減の効果を見積もりたい建設関連の方は、あわせて確認してください。

士業(法律・税務):郵送往復の解消と契約書の一元管理

法律事務所や税理士法人では、遠方の依頼者との書類の郵送往復が業務の停滞要因でした。大明法律事務所は、訴訟委任状や示談書を電子化し、往復に2〜3日、土日を挟むと1週間かかっていた郵送のやり取りを不要にしています。

税理士法人TOTALは、月平均約40件の税務顧問契約を電子で管理し、既存の約5,000件の契約書も物理保管から電子保管へ移行しました。契約件数が多く、過去分の保管が課題になりやすい士業では、締結だけでなく管理・検索まで見据えた選定が効果を高めます。

製造・物流:取引先を巻き込む大量取引の効率化

製造・物流は、多数の取引先と継続的に契約や注文をやり取りするため、締結件数の多さが課題になります。コクヨは雇用契約の締結を1週間から2日程度に短縮し、業務委託契約の6割を電子化しました。キューサイは、事務手続き時間を月62.7時間から月15時間へ減らし、押印完了までを平均1.5日・最短30分にしています。

物流では、ヤマト運輸が配送パートナーとの委託契約で月約7,000件(繁忙期は1万件超)の送信に対応し、システム移行を一晩で完了させました。サカイ引越センターは利用運送契約書を電子化し、契約業務を50%以上削減しています。取引先が多い業種ほど、既存システムとの連携やアカウント不要で相手が署名できる仕組みが効いてきます。

医療・福祉:多数の委託契約とコスト・工数の圧縮

医療・福祉は、清掃や物品管理、システム保守など多数の委託契約を抱えます。済生会滋賀県病院は業務委託契約などを電子化し、印紙税を2023年度に年間約60万円削減、締結期間を2週間以上から2日程度に短縮しました。件数の多い委託契約は、締結後の契約書管理・検索機能で一元管理でき、更新や監査の際に必要な契約書をすぐ取り出せます。

年間1万〜2万件程度の契約を扱うエムステージグループは、契約コストを約400万円から約200万円強へ半減する見込みで、法務が締結業務から解放されて相談対応の件数を約1.5倍に増やせたとしています。契約量が多い法人ほど、締結の効率化が法務リソースの再配分につながります。

小売・サービス:多店舗・多取引先の契約スピード改善

小売・飲食は、店舗や取引先が多く、契約の締結スピードと管理の手間が課題です。モスフードサービスは売買・業務委託・工事請負・廃棄物処理委託など幅広い契約を電子化し、締結を半月〜1カ月から早ければ1日未満に短縮、契約書の回収率を100%にしました。店舗や取引先ごとに分散しがちな契約も、締結状況を一覧で可視化する管理機能があれば、回収漏れや期限切れを防げます。

従業員数の少ない企業でも効果は出ます。Dr.ルルルン(11〜50名)は紙契約を含むすべての契約書を電子化し、締結までを3日から最短数分に縮め、契約状況の問い合わせも減らしました。

企業規模別に見る電子契約の導入事例(小規模/中堅/大手)

導入効果は企業規模によって効き方が変わります。小規模は締結スピードと待ち時間の解消、中堅は工数とコストの数値化、大手・官公庁は削減額の絶対規模に効果が表れやすくなります。「自社の規模でも効果が出るのか」という視点で見ていきます。

小規模(〜数十名)の事例

小規模でも、締結スピードと事務負担の面ではっきりした効果が出ています。Dr.ルルルン(11〜50名)は締結までを3日から最短数分に短縮し、大明法律事務所は郵送往復(2〜3日、土日を挟むと1週間)そのものをなくしました。少人数で契約事務を兼務する組織ほど、往復・待ち時間の解消が実務に直結します。

契約件数がそれほど多くない小規模な事業者であれば、無料または低価格のプランから始める選択肢もあります。無料で送れる件数や、上限を超えたときの費用の考え方は、以下の記事で26サービスを比較しています。

中堅(数十〜数百名)の事例

中堅企業では、締結件数の増加に伴う工数とコストの削減が、はっきりした数値で表れます。代表例として、キューサイ(約500名)は事務手続き時間を月62.7時間から月15時間へ短縮しました。件数が増えるこの規模では、削減効果を金額や時間で定量化して社内に示しやすくなるのが特徴です。

大手・官公庁の事例

大手・官公庁は、締結件数が桁違いに多いため、削減額・削減時間のスケールが大きくなります。タマホームは全社・年間で印紙代1億円超、広島銀行は年2,600時間、神戸市は年3,200時間(見込み)を削減しました。ヤマト運輸は月約7,000件の送信に対応し、いずれも既存システムとの連携や大量送信への対応力が導入の前提になっています。

電子契約の導入で得られた効果の相場感(締結期間・工数・コスト・電子化率)

ここでは、個社の公式事例で報告された値を横断して、導入効果の相場感を整理します。以下のレンジは複数の公式事例で実際に報告された数値の幅であり、試算モデルではありません。自社の期待値を見積もる目安として使ってください。

電子契約の導入効果を4指標で整理した図。締結期間は導入前2週間〜1カ月から導入後は即日〜数日に短縮。工数・作業時間は月62.7時間から15時間へ、年2,600〜3,200時間の削減。コスト・印紙税は年約50万円から1億円超の削減で契約件数と金額規模で拡大。電子化率は約40%からほぼ100%で、対象を絞れば短期でも高い比率。いずれも複数の公式事例で報告された数値の幅。
  • 締結期間の短縮:2週間〜1カ月かかっていた締結が即日〜数日に短縮した例が目立ちます(済生会滋賀県病院は2週間以上→2日程度、モスフードサービスは半月〜1カ月→1日未満、Dr.ルルルンは3日→最短数分)。
  • 工数・作業時間の削減:月単位ではキューサイの月62.7時間→月15時間、年単位では広島銀行の年2,600時間、神戸市の年3,200時間(見込み)など。
  • コスト・印紙税の削減:東邦電気産業の年約50万円から、タマホームの全社・年間1億円超まで、契約件数と金額規模で大きく開きます(済生会滋賀県病院は年約60万円、エムステージグループは契約コストの半減見込み)。
  • 電子化率:後藤組の約40%から、東邦電気産業の注文書ほぼ100%まで。コクヨの業務委託6割、キューサイの締結率5割など、対象を絞れば短期でも高い比率に達します。

コスト削減額は契約件数と1件あたりの金額に比例します。たとえば印紙税は電子契約なら課税されないため、1件2万円の印紙が必要な契約を年500件結ぶ企業なら、印紙代だけで年1,000万円が不要になる計算です。これに郵送費(1件あたり数百円)や製本・保管の人件費が加わります。

自社の年間契約件数と平均契約額を、規模の近い事例の数値に当てはめると、削減見込みの目安を見積もれます。

これらの事例で契約を電子化できたのは、法律が電子契約に効力と保存の裏づけを与えているからです。稟議で「法的に問題ないのか」と問われたときのために、前提となる3つの仕組みを事例と結びつけて確認します。

電子署名法の署名方式(当事者型・立会人型)

電子契約が紙の契約書と同じ効力を持つ根拠は、電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)にあります。同法第3条は、本人による電子署名が行われた電子文書について、真正に成立したもの(本人の意思で作成されたもの)と推定すると定めています。

電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(略)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

出典:電子署名及び認証業務に関する法律 第3条|e-Gov法令検索

署名方式には、契約当事者本人が電子証明書で署名する「当事者型」と、当事者の指示に基づいてサービス提供事業者が署名を付与する「立会人型(事業者署名型)」があります。導入事例の多くは、相手方が電子証明書を用意する必要がなく導入しやすい立会人型です。

電子契約の署名方式の比較図。当事者型は契約当事者本人が電子証明書を用意して署名し、本人確認が厳格で実印相当。金融・不動産や高額・重要契約に向く。立会人型(事業者署名型)は事業者が当事者の指示で署名し、相手方はメールで署名でき電子証明書やアカウントが不要で、締結コストは当事者型の約3分の1。大量締結・自治体・日常の発注に向く。導入事例の多くは立会人型。

立会人型でも法的効力が認められるのは、政府見解がその位置づけを示しているためです。この位置づけは、当初は総務省・法務省・経済産業省が示し、令和6年1月9日にデジタル庁・法務省が一部改定したQ&A(電子署名法第3条関係)で整理されています。事業者の意思が介在せず利用者の意思のみで機械的に暗号化されるなどの条件を満たせば、立会人型も電子署名に該当するという内容です。

さらに、十分な暗号強度や利用者側の二要素認証といった固有性の要件を満たせば、第3条の推定効の対象になり得るとしています。広島銀行や自治体の事例が立会人型を採用できたのは、この整理が土台にあります。

出典・参考資料(2件)
  • 出典:電子署名及び認証業務に関する法律 第2条・第3条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000102
  • 出典:利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)令和6年1月9日一部改定|デジタル庁・法務省(https://www.moj.go.jp/content/001327658.pdf

電子帳簿保存法の保存要件

電子契約で締結した契約書は、電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)上の「電子取引の取引情報」に当たります。同法第7条は、電子取引を行った場合に電磁的記録を保存しなければならないと定めており、紙に印刷して保存するだけでは要件を満たしません。

保存には、真実性の確保と可視性の確保が求められます。真実性は、施行規則第4条が定めるタイムスタンプの付与・訂正削除の履歴が残るシステム・事務処理規程の整備のいずれかで満たせます。可視性はディスプレイ出力や検索機能などで確保します。多くのサービスはこれらを機能として備えており、税理士法人TOTALのように過去分を含めた電子保管に踏み切れます。

出典・参考資料(2件)

自治体の地方自治法改正(立会人型の利用解禁)

神戸市や豊田市役所のような自治体の導入が進んだ背景には、地方自治法施行規則の改正があります。従来は自治体が使える電子証明書の種類が施行規則で限定列挙されており、立会人型を使いにくい状態でした。令和3年1月29日公布・施行の改正省令でこの限定列挙が見直され、立会人型を含めて弾力的に選べるようになりました。

今般の改正省令は、(略)いわゆる立会人型の電子契約サービス(略)等が普及してきた現状(略)を踏まえ、地方自治法施行規則において電子契約記録における電子証明書の種類を明示することがかえって地方公共団体の円滑な事務の支障になりかねないとの懸念を排除するため、(略)情報技術の進展に弾力的に即応して電子契約記録による契約をすることができる環境を整備することを目的としたものであること。

出典:地方自治法施行規則の一部を改正する省令等の公布及び施行に伴う電子契約における電子署名及び電子証明書等に関する留意事項について(総行行第33号)|総務省

この通知は地方自治法第245条の4第1項に基づく技術的助言として示されたものです。自治体で電子契約を検討する場合は、立会人型が利用できる前提が整っていることを踏まえて進められます。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:地方自治法施行規則の一部を改正する省令等の公布及び施行に伴う電子契約における電子署名及び電子証明書等に関する留意事項について(総行行第33号、令和3年2月8日)|総務省(https://www.soumu.go.jp/main_content/000754534.pdf

電子契約の導入時に生じる課題と乗り越え方

効果が明確な一方で、導入時にはいくつかの壁があります。事例で実際に語られている課題と、その乗り越え方を整理します。

取引先の合意形成

電子契約は自社だけで完結せず、相手方の合意が必要です。相手が電子契約に不慣れだったり、社内規程で紙を求めていたりすると、切り替えが進みません。立会人型のサービスは、相手方がアカウントを持っていなくてもメールで署名できるため、導入の負担を小さくできます。ヤマト運輸が現場からの問い合わせをほぼゼロに抑えて移行できたのも、相手方の負担が小さい方式を選んだことが大きく効いています。

業務フローの変更・社内運用への移行

紙と押印を前提にした承認フローは、電子契約に合わせて組み替える必要があります。既存の基幹システムや業務アプリと連携させると、二重入力をなくして定着がスムーズです。後藤組が業務アプリ連携で工事指示書までデジタル化した例や、コクヨ・ヤマト運輸がシステム連携で大量締結に対応した例は、フローごと見直して効果を高めています。まず対象の契約類型を絞って始め、成果を見ながら広げるのが現実的です。

電子化できない契約類型への対応

「電子化できない契約があるのでは」という懸念は、かつては当てはまりましたが、状況は変わりました。宅地建物取引業法の重要事項説明書・37条書面、借地借家法の定期借地権・定期建物賃貸借、特定商取引法の書面交付、労働基準法の労働条件明示など、これまで書面が必須とされてきた書面は数多くありました。これらは2022〜2023年の法改正で、相手方の承諾などを条件に電磁的方法での締結・交付が可能になっています。

現在も通常の電子契約サービスでは締結できないのは、法律が公正証書での作成を要件としている一部の契約類型です。代表例は、事業用定期借地権の設定契約(借地借家法第23条第3項)と任意後見契約(任意後見契約に関する法律第3条)で、いずれも公正証書によらなければならないと定められています。これらを除けば、企業間で日常的に交わす契約の大半は電子化の対象になります。

出典・参考資料(4件)

事例を踏まえた自社に合う電子契約サービスの選び方

ここまでの事例から、自社に合うサービスを選ぶ勘所を整理します。そのうえで、事例で登場した主要サービスを紹介します。

セグメント別の選び方の勘所(業種×規模×課題×効果)

事例を横断すると、自社がどの観点でサービスを見るべきかが見えてきます。以下を自社の状況に当てはめて絞り込むと、比較の軸が定まります。

  • 本人確認を厳格にしたい(金融・不動産・高額契約):当事者型(実印相当)に対応し、立会人型と使い分けられるサービスを選びます。重要契約は当事者型、日常の発注は立会人型と切り替えられると運用しやすくなります。
  • 取引先が多く大量に締結する(製造・物流・建設):相手方がアカウント不要で署名でき、基幹システムとAPI連携できるサービスが向きます。送信件数の上限や従量課金の条件も確認します。
  • 過去分を含めて管理・検索したい(士業・契約件数が多い法人):締結だけでなく、電子帳簿保存法の要件を満たす保管・検索機能まで備えるかを確認します。
  • 自治体・官公庁:庁内ネットワーク(LGWAN)環境での利用可否と、立会人型への対応を確認します。
  • 小規模・低コストで始めたい:無料枠や低価格プランの送信件数・機能制限を確認し、まず対象契約を絞って始めます。

以下は、本記事の事例で登場した主要な電子契約サービスの比較です。先に挙げた選び方の観点に沿って、自社の重視点で見比べてください。

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サービス名クラウドサイン電子印鑑GMOサインSMBCクラウドサインマネーフォワード クラウド契約WAN-Sign
提供会社弁護士ドットコム株式会社GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社SMBCクラウドサイン株式会社株式会社マネーフォワード株式会社NXワンビシアーカイブズ
電子署名タイプ立会人型(標準)+当事者型(マイナンバーカード署名)立会人型・当事者型(ハイブリッド可)立会人型(標準)+当事者型立会人型(事業者署名型)当事者型・立会人型(ハイブリッド可)
無料プランあり(1名・月2件まで)あり(1名・月5件まで、立会人型のみ)あり(1名・月2件まで)送信は有料プランから(無料枠は閲覧のみ/1カ月無料トライアルあり)あり(立会人型10件/月・当事者型3件/月まで無料)
初期費用要問い合わせ0円要問い合わせ0円0円
月額費用無料〜(有料は11,000円/月〜、税抜)無料〜(有料は8,800円/月〜、税抜・年間契約)無料〜(有料は10,000円/月〜、税抜)2,480円/月〜(年払い・税抜)0円(基本プラン・従量課金型)
送信料220円/件(税抜)立会人型100円/当事者型300円(各税抜)200円/件(税抜)0円(プラン内で無制限)立会人型100円/当事者型300円(各税抜、無料枠あり)
電子帳簿保存法対応認定タイムスタンプ標準付与JIIMA認証取得クラウドサインと共通基盤で対応電子取引に対応(スキャナ保存は非対応)JIIMA認証(3保存方法すべて)
API・システム連携Web API(Corporate以上)・Salesforce/kintone等Web API・Salesforce/kintone/box等Web API(Corporate以上)・Salesforce/kintoneAPI・Salesforce/Slack・MFクラウド連携API連携は有料オプション(初期50万円)
特徴(事例での強み)導入社数250万社以上。API連携で大量締結した事例が豊富立会人型・当事者型を使い分け。企業から官公庁まで幅広い事例SMBCグループ合弁。金融・自治体・大手法人の事例が厚いバックオフィスSaaSと連携。AI-OCR標準搭載で契約量の多い企業向け当事者型(実印版)に強く、紙原本を含めた一元管理に対応
詳細情報公式資料を見る公式資料を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見る

この5社以外も含め、電子契約システム全体を料金・署名タイプ別に見比べて自社に合う一社を選びたい場合は、以下の記事が判断材料になります。

ここからは、比較表の5サービスをそれぞれ紹介します。

クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社)

クラウドサインのウェブサイト

弁護士ドットコム株式会社が運営する、導入社数250万社以上・累計送信件数4,000万件超(2024年度実績)の電子契約サービスです。標準は立会人型で、相手方はメールアドレスがあれば署名でき、導入しやすいのが特徴です。2023年からはマイナンバーカードを使う当事者型署名にも対応し、重要契約にも使えます。タマホームやヤマト運輸のように、API連携で大量締結に対応した事例も豊富です。

電子印鑑GMOサイン(GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社)

電子印鑑GMOサインのウェブサイト

立会人型(契約印タイプ)と当事者型(実印タイプ)の両方に対応し、契約の重要度に応じて使い分けられるのが電子印鑑GMOサインの強みです。運営はGMOグローバルサイン・ホールディングスで、自社グループで認証局(GlobalSign)を保有しています。東邦電気産業の注文書ほぼ100%電子化や、豊田市役所のLGWAN環境での導入など、企業から官公庁まで幅広い事例があります。

SMBCクラウドサイン(SMBCクラウドサイン株式会社)

SMBCクラウドサインのウェブサイト

三井住友フィナンシャルグループと弁護士ドットコムの合弁会社が運営し、クラウドサインと同じ電子契約基盤を用いながら、金融機関や大企業向けの支援に力点を置くサービスです。神戸市の債券引受契約やコクヨの雇用契約、済生会滋賀県病院の委託契約など、金融・自治体・大手法人の事例が厚く、締結後のAI契約書管理機能も備えます。

マネーフォワード クラウド契約(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウド契約のウェブサイト

会計・人事労務などのバックオフィスSaaS群と連携できる電子契約サービスです。契約管理や他業務とのデータ連携を前提に運用したい企業に向きます。キューサイの事務手続き時間の削減(月62.7時間→15時間)、税理士法人TOTALの約5,000件の電子保管、エムステージグループの年間1万〜2万件規模の契約対応など、契約量の多い中堅企業の事例が具体的です。

WAN-Sign(株式会社NXワンビシアーカイブズ)

WAN-Signのウェブサイト

書類保管・情報管理を長年手がけるNXワンビシアーカイブズが提供する電子契約サービスで、立会人型に加え当事者型(実印版)に強く、紙の原本を含めた一元管理まで対応できる点が特徴です。広島銀行の住宅ローン契約のように、本人確認の強度が求められる金融・大手の事例で採用されています。

まとめ

電子契約の導入効果は、締結期間の短縮・工数削減・印紙税やコストの削減・電子化率の向上として、実名企業の公式事例に数値で表れています。金融・自治体・建設・士業・製造・物流・医療福祉・小売と業種を問わず、また小規模から大手・官公庁まで規模を問わず、成果が生まれています。

電子署名法・電子帳簿保存法・自治体の法改正が効力と保存の裏づけを与え、かつて書面必須とされた契約の多くも電子化できるようになりました。まずは自社の年間契約件数と金額規模から削減見込みを試算し、重視する観点(本人確認の強度・大量締結・管理機能・コスト)に合うサービスの資料を取り寄せて比較してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 電子契約とは何ですか?

A. 電子契約とは、紙の契約書と印鑑の代わりに、電子データと電子署名を用いてインターネット上で契約を締結する仕組みです。電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)により、本人による電子署名が行われた電子文書は紙の契約書と同様に真正に成立したものと推定され、法的効力が認められます。締結スピードの向上に加え、印紙税・郵送費・保管コストの削減といった効果が得られます。

Q. 電子契約の導入で印紙税はどれくらい削減できますか?

A. 電子契約は印紙税法上の課税文書に当たらないため、契約金額にかかわらず印紙税は0円になります。紙の契約書では、たとえば工事請負契約1件あたり数万円の収入印紙が必要ですが、電子データでやり取りする電子契約には印紙が不要です。建設業のタマホームは工事請負契約などの電子化で全社・年間1億円超の印紙代を削減しており、契約件数と1件あたりの金額が大きい企業ほど削減効果は大きくなります。

Q. 電子契約は小規模な会社でも導入効果は出ますか?

A. 小規模な会社でも、締結スピードの短縮と事務負担の軽減という形ではっきりした効果が出ます。 従業員11〜50名のDr.ルルルンは締結までを3日から最短数分に短縮し、小規模な法律事務所では郵送往復(2〜3日、土日を挟むと1週間)そのものをなくした事例があります。少人数で契約事務を兼務する組織ほど、待ち時間や郵送の手間が減る効果を実感しやすい傾向があります。

Q. 電子契約の導入効果が出やすいのはどのような業種ですか?

A. 契約件数が多い業種や、契約金額が大きく印紙税負担の重い業種ほど、電子契約の導入効果が大きく出ます。 建設業は工事請負契約の印紙代削減、金融機関は大量の事務書類の工数削減、製造・物流は多数の取引先との締結効率化で成果が出ています。一方、士業や小売のように契約件数が比較的少ない業種でも、締結スピードや契約書の管理の面で効果が得られるため、業種を問わず導入する価値があります。

Q. 電子契約で締結できない契約はありますか?

A. 事業用定期借地権の設定契約や任意後見契約など、法律で公正証書の作成が義務づけられている一部の契約は、通常の電子契約サービスでは締結できません。 これらを除けば、企業間で日常的に交わす契約の大半は電子契約で締結できます。かつて書面が必須とされた宅地建物取引業法の重要事項説明書・37条書面や労働条件の明示なども、2022〜2023年の法改正で相手方の承諾などを条件に電子化が可能になりました。

出典・参考資料(2件)

Q. 電子契約で締結した契約書はどのように保存すればよいですか?

A. 電子契約で締結した契約書は、紙に印刷せず、電子データのまま電子帳簿保存法の要件に従って保存する必要があります。 電子契約は同法上の「電子取引の取引情報」に当たり、タイムスタンプの付与や訂正・削除の履歴が残るシステムの利用などによる真実性の確保と、検索機能・ディスプレイ出力などによる可視性の確保が求められます。多くの電子契約サービスはこれらをシステム機能として満たしています。

出典・参考資料(2件)

Q. 自治体でも電子契約は導入できますか?

A. 自治体でも電子契約を導入できます。 令和3年(2021年)の地方自治法施行規則の改正により、それまで使いにくかった立会人型の電子契約を自治体でも弾力的に選べるようになりました。神戸市は締結にかかっていた1週間ほどをその日のうちに短縮し、豊田市役所は落札決定分の約8割を電子契約に切り替えています。導入にあたっては、庁内ネットワーク(LGWAN)環境で利用できるサービスを選ぶことがポイントです。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:地方自治法施行規則の一部を改正する省令等の公布及び施行に伴う電子契約における電子署名及び電子証明書等に関する留意事項について(総行行第33号、令和3年2月8日)|総務省(https://www.soumu.go.jp/main_content/000754534.pdf

Q. 電子契約の導入にはどのくらいの期間がかかりますか?

A. 電子契約の導入期間はサービスや対象範囲によって異なりますが、まず対象とする契約類型を絞れば、比較的短期間で運用を始められます。 ヤマト運輸のように、既存システムからの移行を一晩で完了させた事例もあります。導入を成功させるには、いきなり全契約を対象にせず、印紙税削減の効果が大きい契約や締結件数の多い契約から始め、成果を見ながら対象を広げるのが現実的です。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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