毎月の小口現金の出し入れや、社員の立替精算・差し戻しに手間を感じていませんか。「経費精算をキャッシュレスにすれば負担が減るらしい」と耳にしても、具体的に何をどうすればよいのかが見えにくく、検討が止まってしまうことがあります。
経費精算のキャッシュレス化には、法人カード、交通系IC・電子マネー、法人プリペイドカード、経費精算システムとの連携といった複数の手段があり、どの経費に何が向くか、精算の流れがどう変わるかは手段ごとに異なります。自社に合う進め方を選ぶには、まず手段の全体像をつかむことが近道です。
本記事では、経費精算をキャッシュレス化する手段の一覧と向き不向き、支払手段別の仕訳、電子帳簿保存法・インボイス制度で押さえるべき証憑の扱い、そして小口現金を廃止する導入手順までを、経理実務の目線で整理します。自社で何から始めるかを判断する材料としてご活用ください。
目次
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経費精算のキャッシュレス化とは
経費精算のキャッシュレス化とは、現金の立替や小口現金でまかなっていた支払いを、法人カードや交通系ICカード、電子マネーといったキャッシュレス手段に置き換えることを指します。ポイントは、支払いと同時に日付・金額・利用先のデータが残ることです。
このデータを経費精算システムに取り込めば、領収書の集計・突合・入力といった手作業や、月末の小口現金の照合が減ります。キャッシュレス化は、単に支払い方を変えるだけでなく、精算業務そのものの流れを変える取り組みだと言えます。次の一覧で、具体的な手段とそれぞれの特徴を確認しましょう。
経費精算をキャッシュレス化する手段の一覧
ここでは、経費精算をキャッシュレス化する主な手段を横断して比較します。まず一覧で全体像をつかみ、気になった手段は続く各項目で詳しく確認してください。
| 法人カード(コーポレートカード) | 交通系IC・電子マネー(Suica・PASMOなど) | 法人プリペイドカード | 経費精算システムとの連携 | |
|---|---|---|---|---|
| 使える経費・場面 | 接待交際費・出張旅費・備品購入など、カード決済できる支出全般 | 電車・バスなどの交通費、少額の物品購入 | 部門・社員に配布して行う少額決済、限度額を絞りたい支出 | 上記手段の利用明細・領収書をまとめて取り込み精算 |
| 精算の流れ | 会社が直接支払うため立替が発生しない。利用明細が自動で残る | ICで支払い、利用履歴を経費精算システム等に取り込む。現金の立替・小口精算が減る | チャージした範囲で支払うため立替が不要。利用状況をリアルタイムに管理できる | カード・IC・電子マネーの明細を自動取り込みし、申請~承認~仕訳~保存をオンライン化 |
| 向いている会社 | 経費の多くをカード決済に集約し、立替そのものをなくしたい会社 | 交通費の立替が多く、少額精算を減らしたい会社 | 利用限度をコントロールしつつ小口現金を置き換えたい会社 | 複数の手段を横断して精算し、法令対応まで効率化したい会社 |
| 仕訳・証憑の残し方 | 使用時に未払金を計上。仕入税額控除には加盟店発行の適格請求書(レシート等)の保存が必要で、カード明細だけでは足りない | チャージ時に仮払金、使用時に費用へ振替(プリペイド型)。公共交通機関の税込3万円未満は帳簿のみで控除できる特例あり | チャージ時に仮払金、使用時に費用へ振替。レシートを証憑として保存 | 会計ソフトへ自動で仕訳連携。電子帳簿保存法の保存要件を満たす形で電子保存できる |
法人カード・コーポレートカード
法人カードは、会社名義のクレジットカードを社員に持たせ、経費をカードで直接支払う手段です。立替が発生しないため精算業務そのものを軽くできますが、導入時にはカード会社の与信審査があり、社員ごとの利用限度額や利用できる範囲を自社の運用に合わせて設計する必要があります。
年会費や追加カードの発行手数料がかかるカードもあり、キャッシュレス非対応の店舗での少額・多頻度の支払いが多い現場には不向きです。私的利用と業務利用が同じカードで混ざりやすいため、利用明細の定期チェックや用途制限といった統制もあわせて整えると安全です。
交通系IC・電子マネー
SuicaやPASMOなどの交通系ICカード、各種電子マネーは、日々の交通費や少額の支払いをキャッシュレス化する手段です。利用履歴は、スマートフォンでICカードを読み取る方法や、モバイルSuica・モバイルPASMOのアカウントと連携する方法で経費精算システムに取り込め、切符代を都度立て替えて申請する手間を減らせます。
一方で、チャージ残高の管理が必要で、高額な支払いや接待交際費のような用途には向きません。個人所有のICカードを業務に使うと私的利用と混ざるため、業務用のカードを分けるか、履歴のうち経費分だけを申請するルールを決めておくと精算がすっきりします。電子マネーは事前にチャージして使うプリペイド型が中心で、チャージ時と使用時で会計処理の考え方が変わる点は後述します。
法人プリペイドカード
法人プリペイドカードは、あらかじめチャージした金額の範囲で使えるカードを部門や社員に配る手段です。チャージ額が上限になるため使いすぎを防ぎやすく、与信審査なしで発行できる製品が多いのも法人カードとの違いです。小口現金の代わりに配布し、少額の立替や現金管理をなくす使い方が代表的です。
残高が尽きると使えないため、こまめなチャージや残高の管理が必要で、高頻度・高額の決済を1枚に集約する用途には不向きです。発行手数料やチャージ手数料がかかる製品もあるため、配布枚数と手数料のバランスを確認しておくと安心です。会計処理は交通系ICと同じく、チャージ時と使用時に分けて考えます。
経費精算システムとの連携
経費精算システムとの連携は、法人カード・交通系IC・電子マネーの利用明細や領収書を1つのシステムに集約し、申請から承認、仕訳、保存までをオンラインで完結させる手段です。カード明細の自動取り込みや領収書のOCR読み取りに対応する製品を使えば、複数の支払手段を横断して精算業務を効率化できます。
他の手段が「支払いをキャッシュレスにする」ものであるのに対し、システムは「発生したデータを精算・保存する土台」を担い、後述する電子帳簿保存法の保存要件を満たす形での電子保存もここで実現します。月額の利用料がかかり、既存の会計ソフトと連携できるか、自社の承認フローに合うかの見極めが要る点は、導入前に確認しておきたいところです。
キャッシュレス化で経理実務はどう変わるか
ここでは、経費精算をキャッシュレス化すると、日々の経理実務のどの作業が具体的に変わるのかを整理します。まず、従来の立替精算とキャッシュレス化後のフローを対比すると、変化の全体像は次のとおりです。

小口現金の管理がなくなる
キャッシュレス手段に置き換えると、小口現金の補充・払い出し・帳簿記帳・残高照合といった一連の作業が不要になります。金庫の実残高と帳簿を毎日突き合わせる手間や、現金の過不足を追う調査がなくなり、月末の締め作業も軽くなります。
立替と差し戻しが減る
法人カードやプリペイドカードで会社が直接支払えば、社員が自腹で立て替えて後から精算する流れそのものが減ります。申請内容が利用明細と自動で照合されるため、金額の入力ミスや領収書の添付漏れによる差し戻しも起こりにくくなり、申請者と承認者・経理の双方でやり取りの往復が減ります。
利用履歴が自動で残る
キャッシュレス決済では、支払いと同時に日付・金額・利用先のデータが記録されます。手書きや手入力に頼っていた記録が自動化されることで、集計や仕訳の作業が減るだけでなく、誰がいつ何に使ったかを後から追える状態になり、不正利用や使途不明の抑止にもつながります。
支払手段別の仕訳・会計処理
ここからは、キャッシュレス手段で経費を支払ったときの仕訳を、支払いのタイミングが異なる「プリペイド型」と「ポストペイ型」に分けて確認します。次の仕訳は会計慣行として一般的な処理例で、勘定科目名は自社の会計方針に合わせて調整してください。
プリペイド型(交通系IC・法人プリペイドカードなど)
事前にチャージして使うプリペイド型では、チャージした時点ではまだ経費が発生していないため、いったん仮払金などで資産計上し、実際に使った時点で費用に振り替えるのが一般的です。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| チャージ時 | 仮払金 10,000 | 普通預金 10,000 |
| 使用時(電車運賃) | 旅費交通費 1,000 | 仮払金 1,000 |
ポストペイ型(法人カード・後払い電子マネーなど)
後払いのポストペイ型では、使った時点で費用を計上し、カード会社への支払い分は未払金として処理します。後日、口座から引き落とされたときに未払金を消し込みます。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 使用時(備品購入) | 消耗品費 8,000 | 未払金 8,000 |
| 引き落とし時 | 未払金 8,000 | 普通預金 8,000 |
いずれの型でも、仕訳の裏づけとなる証憑(レシートや利用明細)をどう保存するかが重要になります。次章で、電子帳簿保存法とインボイス制度の観点から証憑の扱いを確認します。
電子帳簿保存法・インボイス制度で押さえる証憑の扱い
キャッシュレス化を進めるうえで見落とされがちなのが、証憑(領収書・利用明細)の保存ルールです。「利用明細があれば領収書は不要」と考えられがちですが、法令上の扱いは異なります。ここでは電子帳簿保存法とインボイス制度の要件を、国税庁の公表資料に基づいて確認します。
電子帳簿保存法:電子で受け取ったデータは電子のまま保存する
カードや電子マネーの利用明細、メールやWebで受け取ったPDFの領収書などは、電子帳簿保存法上の「電子取引」の取引情報に当たります。2021年度(令和3年度)の改正により、こうしたデータを紙に出力して保存する措置は廃止され、電子データのまま保存することが必要になりました。その際は、次のとおり「真実性」と「可視性」を確保するための要件を満たす必要があります。
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存等に当たっては、真実性や可視性を確保するための要件を満たす必要があります(規則2②一イ、二、⑥五、六、4①)。
出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和7年6月)問18|国税庁
このうち「真実性の確保」は、データが改ざんされていないことを担保する措置で、次の4つのいずれかを行う必要があります。
- タイムスタンプが付された後の授受
- 速やかに(またはその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す
- データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム、または訂正削除ができないシステムを利用して、授受および保存を行う
- 訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定・運用・備付け
もう一方の「可視性の確保」は、保存したデータを検索・表示できる状態にしておくことです。ディスプレイやプリンタなどの見読可能装置を備えるほか、検索機能として次の3つが求められます。
- 取引年月日その他の日付・取引金額・取引先を検索条件に設定できること
- 日付または金額は、その範囲を指定して条件を設定できること
- 2以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定できること
ただし、基準期間(2年前)の売上高が5,000万円以下で、税務調査の際にデータのダウンロードの求めに応じられる場合などは、この検索機能の確保は不要とされています。中小企業では、この緩和措置を前提に運用を組み立てられる場合があります。経費精算システムを使えば、これらの保存要件を満たす形で証憑を電子保存できます。
出典・参考資料(1件)
こうした電子保存への切り替えが実際の企業でどのように進んでいるのかについて、経費精算システムを提供する事業者は、導入の動機として次のように述べています。

導入の動機という点では、非生産的な時間の削減ももちろんですが、法令対応での電子帳簿保存法への対応が、依然として最も強い動機になっています。電子帳簿保存法の施行後、事務処理規定などを設けて電子データを原本として保存しているものの、業務フローは変更できておらず、結局紙ベースでの社内処理をおこなっている、というケースは多いです。紙と電子両方の保管を行っていて、二重運用で法令対応を乗り越えたもののそれを維持し続けるのがやはり大変だということで、しっかりシステム化しようという流れが続いています。
インボイス制度:カード利用明細だけでは仕入税額控除できない
キャッシュレス化で特に誤解されやすいのが、カードの利用明細を領収書の代わりにできるという考え方です。インボイス制度(適格請求書等保存方式)のもとでは、クレジットカード会社が発行する請求明細書は、仕入税額控除に必要な「請求書等」には当たらないと国税庁が明確に示しています。
クレジットカード会社がそのカードの利用者に交付する請求明細書等は、そのカード利用者である事業者に対して課税資産の譲渡等を行った他の事業者(カード加盟店)が作成・交付する書類ではなく、当該他の事業者(カード加盟店)の氏名又は名称及び登録番号が記載された書類にも該当しないため、消費税法第30条第9項に規定する請求書等には該当しません。したがって、クレジットカード会社の作成した請求明細書を保存することにより仕入税額控除の適用を受けることはできません。
出典:クレジットカード会社からの請求明細書(質疑応答事例)|国税庁
仕入税額控除を受けるには、原則として支払先(カード加盟店)が発行する適格請求書(レシートや簡易インボイスを含む)を保存する必要があります。カードの利用明細は経費の記録や突合には役立ちますが、それ単体では控除の根拠にならない補助的な資料と位置づけ、どの支払いでレシートまで残すかを社内で決めておくと運用に迷いません。
一方で、明細等に基づく処理が認められる例外もあります。一定規模以下の事業者が2023年(令和5年)10月1日から2029年(令和11年)9月30日までに行う税込1万円未満の課税仕入れは、帳簿の保存のみで控除できる「少額特例」の対象です。また、税込3万円未満の公共交通機関の運賃や、出張旅費等特例の対象となる取引も、帳簿の保存で控除が認められます。
かつて広く使われていた「3万円未満なら帳簿のみで控除可」という一般的な特例は、インボイス制度の開始で廃止されました。現在はこうした限定列挙の取引に置き換わっている点に注意が必要です。
出典・参考資料(3件)
紙のレシートとデータで受け取った領収書が混在するなかで、それぞれを保存期間や電子帳簿保存法の要件を満たす形で具体的にどう保存・整理すればよいかは、次の記事で紙・電子別のやり方まで掘り下げて解説しています。
キャッシュレス化を進めるときの注意点
キャッシュレス化は手作業を減らす一方で、現金運用にはなかった新しい管理も必要になります。ここでは、導入前に整理しておきたい注意点を3つ取り上げます。
社内の経費精算ルールを整える
キャッシュレス手段を導入する前に、どの経費をどの手段で支払うか、領収書やレシートをどこまで残すか、承認の経路はどうするかといったルールを決めておく必要があります。たとえば「1万円以上の支払いは必ずレシートを添付する」「交通費はICカード履歴の取り込みで代替する」のように、支払手段と証憑の残し方をひも付けた基準を明文化しておくと、担当者ごとの運用のばらつきを防げます。
私的利用の区別と不正・紛失への対策
法人カードやプリペイドカードは、業務利用と私的利用が混ざらないよう運用ルールを定めることが欠かせません。利用限度額の設定、用途の制限、利用明細の定期的なチェックによって、私的利用や使途不明の支出を早期に把握できます。カードの紛失・盗難時にすぐ利用を停止できる仕組みや、本人確認の仕組みが備わっているかも、手段を選ぶ際の確認ポイントです。
ポイントの帰属を決めておく
法人カードや電子マネーの利用で貯まるポイントを、会社に帰属させるか利用者個人に委ねるかは、あらかじめ社内で方針を決めておくべき論点です。会社の経費で発生したポイントを社員が私的に使うと、税務や公平性の観点で問題になりかねません。ポイントは会社の資産として管理する、あるいは福利厚生の範囲で扱うなど、運用の考え方を規程に落とし込んでおくとトラブルを避けられます。
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経費精算をキャッシュレス化する進め方と小口現金の廃止
ここでは、キャッシュレス化を実際に進める手順と、多くの企業が最初のゴールに据える「小口現金の廃止」の考え方を整理します。
現状把握から全社展開までの手順
キャッシュレス化は、いきなり全社に広げるのではなく、段階を踏んで進めると定着しやすくなります。一般的には次の順序で進めます。
- 現状把握:どの経費が現金・立替で処理されているか、月にどれだけの件数・工数がかかっているかを洗い出す
- ルール設計:支払手段と証憑の残し方、承認経路、私的利用の扱いなどの社内ルールを決める
- 手段・システムの選定:自社の経費構成に合う支払手段と、それを取り込む経費精算システムを選ぶ
- テスト導入:一部の部門で試験運用し、現場の使い勝手や運用ルールの過不足を確認する
- 全社展開:課題を改善したうえで対象を広げ、運用を定着させる
廃止できる支出と残す支出を切り分ける
小口現金の廃止は、キャッシュレス化の代表的なゴールですが、すべての支出をゼロにできるとは限りません。多くの支払いはカードや電子マネーに移せる一方で、現金でしか対応できない場面が残る職場もあります。まずは廃止できる支出と残す支出を切り分け、残す現金は最小限にとどめるのが現実的です。
| キャッシュレスに移しやすい支出 | 現金が残りやすい支出 | |
|---|---|---|
| 支出の例 | 交通費、備品・消耗品の購入、接待交際費、出張旅費 | 慶弔費、一部の現金商習慣が残る支払い、キャッシュレス非対応の店舗での少額支払い |
| 移行のしかた | 法人カード・交通系IC・プリペイドカードに置き換え、明細を経費精算システムに取り込む | 残す現金を最小限にし、少額のプリペイドカードで代替できないか検討する |
小口現金そのものの仕訳や出納帳を使った管理方法、廃止を進める手順を基礎から確認しておきたい場合は、次の記事で詳しく解説しています。
キャッシュレス経費精算を支えるサービスの選び方と比較
複数の支払手段を横断して精算・保存する土台になるのが経費精算システムです。ここでは、キャッシュレス化を前提にサービスを選ぶ際の観点を整理し、その観点で、立替そのものをなくす設計の代表格と、幅広い明細取り込みで精算を効率化する代表格の2製品を取り上げます。
選ぶときの観点
キャッシュレス経費精算を支えるサービスは、次のような観点で自社に合うかを見極めます。
- 立替をなくす設計か、効率化する設計か:専用カードで立替そのものをなくす製品か、既存の支払手段の明細を取り込んで精算を効率化する製品か
- 対応する支払手段:法人カード・交通系IC・電子マネーのうち、自社で使う手段の明細を取り込めるか
- 法令対応:電子帳簿保存法の保存要件やインボイス制度に対応しているか
- 料金体系と既存会計との連携:利用人数や課金方式が自社に合うか、使っている会計ソフトと連携できるか
費用は製品によって幅があります。経費精算システムは、クラウド型なら初期費用が無料の製品が多く、月額は利用人数に応じた従量課金が主流で、1ユーザーあたり月300〜500円程度が一般的な水準です(高機能・大規模向けでは月800円程度になる場合もあります)。
法人カードは、年会費無料のものから、付帯サービスに応じて年会費がかかるものまであります。法人プリペイドカードは、発行手数料・年会費が無料のものから、1枚あたり数百円〜数千円程度の発行手数料がかかるものまでさまざまです。
いずれも自社の利用人数・発行枚数で総額が変わるため、候補を絞ったうえで各社の見積もりで確認するのが確実です。経費精算システムの料金体系や規模別の費用相場は、次の記事で詳しく比較しています。
| サービス名 | Bill One経費 | マネーフォワード クラウド経費 |
|---|---|---|
| 提供会社 | Sansan株式会社 | 株式会社マネーフォワード |
| 立替をなくす仕組み | 専用の「Bill Oneビジネスカード」で経費を直接支払い、立替払い自体を発生させない設計。カードは発行手数料・年会費が無料で発行枚数に上限なし | 各種明細の自動取り込みで立替精算を効率化。「マネーフォワード ビジネスカード」の併用で月末の申請作業を削減 |
| 対応する支払手段・カード連携 | Bill Oneビジネスカード(Visa/バーチャル・リアル)での決済。交通系モバイルアプリからの明細連携に対応 | コーポレートカード連携、交通系ICカードの読み取り、マネーフォワード ビジネスカードのリアルタイム明細連携 |
| 交通系ICカードの取り込み | △交通系モバイルアプリからの明細連携のみ公式に明記(対応カード・取り込み方式は要問い合わせ) | ●Suica・PASMO・ICOCAなど主要な交通系ICをスマホのタッチ読み取り(NFC)で取得 |
| 電子帳簿保存法対応 | ● | ● |
| インボイス対応 | ● | ● |
| 初期費用 | 要問い合わせ | 0円 |
| 月額費用 | 要問い合わせ | 2,480円〜(年払い時・月あたり) |
| 料金体系の特徴 | 初期費用+年額費用の構成。経費精算の処理件数に応じた個別見積もり | プラン基本料+アクティブユーザー課金(その月に経費精算した人数分のみ課金) |
| 会計ソフト連携 | 仕訳情報をCSV・OpenAPIでエクスポートでき、既存の会計システムのまま導入可能 | クラウド会計/会計PlusとAPI自動連携。勘定奉行・弥生会計・PCA会計等はCSV・APIで連携 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 |
※ 料金・機能は2026年9月時点で各社が公表している情報にもとづきます。最新の内容は各社公式サイトでご確認ください。
ここで取り上げた2製品以外にも経費精算システムは数多くあります。料金・機能・使いやすさや選び方まで含めて経費精算システム全体を幅広く比較検討したい場合は、次の記事もあわせてご覧ください。
Bill One経費(Sansan株式会社)

Bill One経費は、名刺管理・請求書受領サービスを提供するSansanの経費精算サービスです。特徴は、専用の「Bill Oneビジネスカード」を社員に配り、経費をそのカードで支払わせることで、立替払いそのものをなくす設計にあります。効率化する多くの製品とは出発点が異なり、「立替を減らす」のではなく「立替を発生させない」ことを狙う点が際立ちます。
領収書はSansanのデータ化技術で読み取り、カードの利用明細と自動で突合します。適格請求書の要件を満たすかの自動判定や電子帳簿保存法への対応も備え、インボイス制度・電子保存の実務を支えます。ビジネスカードは発行手数料・年会費が無料で、発行枚数に上限がないため、全社員への配布がしやすい点も立替をなくす設計を後押しします。
料金は初期費用と年額費用で構成され、経費精算の処理件数に応じて個別に見積もる方式のため、一律の月額は公表されていません。一方でビジネスカードの年会費・発行手数料は無料で、この部分の費用は明確です。
マネーフォワード クラウド経費(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウド経費は、キャッシュレス化で発生するさまざまな明細を幅広く取り込める点が持ち味の経費精算サービスです。領収書のAI-OCR(画像から文字を読み取る技術)に加え、SuicaやPASMOなど多くの交通系ICカードの読み取り、コーポレートカードとのデータ連携に対応し、複数の支払手段を1つのシステムに集約できます。
電子帳簿保存法(スキャナ保存・電子取引)とインボイス制度に対応し、承認済みの経費はクラウド会計へAPIで自動連携できます。料金は初期費用0円で、月あたり2,480円からのプランが用意され、その月に経費精算を行った利用者の人数分だけを課金するアクティブユーザー課金を採用しています。利用者数が月によって変動する企業でも、無駄の少ないコスト管理がしやすい料金設計です。
まとめ
経費精算のキャッシュレス化は、法人カード、交通系IC・電子マネー、法人プリペイドカード、経費精算システムとの連携という複数の手段を組み合わせて進めます。まず自社の経費のどこを現金・立替で処理しているかを把握し、支払手段と証憑の残し方、社内ルールを整えたうえで、段階的に移行するのが定着への近道です。
会計処理では、プリペイド型とポストペイ型で仕訳の考え方が変わります。また、カードの利用明細だけでは仕入税額控除の根拠にならず、原則として加盟店発行の適格請求書の保存が必要になる点は、キャッシュレス化で特に押さえておきたいポイントです。手段の全体像と法令の要件を踏まえたうえで、自社に合う経費精算システムを比較検討してみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 経費精算のキャッシュレス化とは何ですか?
A. 経費精算のキャッシュレス化とは、現金の立替や小口現金でまかなっていた経費の支払いを、法人カード・交通系IC・電子マネー・法人プリペイドカードといったキャッシュレス手段に置き換え、その利用データを精算に活用することです。支払いと同時に利用履歴がデータとして残るため、領収書の集計・突合・入力といった手作業を減らせます。
手段には法人カード/交通系IC・電子マネー/法人プリペイドカード/経費精算システムとの連携があり、使える経費や精算の流れは手段ごとに異なります。
Q. 経費精算をキャッシュレス化すれば小口現金は完全に廃止できますか?
A. 経費精算をキャッシュレス化しても、小口現金を完全にゼロにできるとは限りません。交通費・備品購入・接待交際費などの多くはカードや電子マネーに移せますが、慶弔費やキャッシュレス非対応の店舗での少額支払いなど、現金でしか対応できない場面が残る職場もあります。まず廃止できる支出と残す支出を切り分け、残す現金は最小限にとどめるのが現実的です。
Q. キャッシュレスにすれば領収書やレシートの保管は不要になりますか?
A. 経費精算をキャッシュレス化しても、領収書やレシートの保管が不要になるわけではありません。とくに仕入税額控除を受けるには、原則として支払先が発行する適格請求書(レシートや簡易インボイスを含む)の保存が必要です。
カードや電子マネーの利用明細は経費の記録や突合には役立ちますが、それ単体では控除の根拠にならない補助的な資料と位置づけ、どの支払いでレシートまで残すかを社内で決めておくと運用に迷いません。
Q. 法人カードの利用明細だけで仕入税額控除は受けられますか?
A. 法人カードの利用明細だけでは、原則として仕入税額控除は受けられません。国税庁は、クレジットカード会社が利用者に交付する請求明細書は消費税法上の「請求書等」に該当せず、これを保存しても仕入税額控除の適用を受けることはできないと示しています。控除を受けるには、原則として加盟店が発行する適格請求書(レシート等)の保存が必要です。
ただし、一定規模以下の事業者が2029年(令和11年)9月30日までに行う税込1万円未満の課税仕入れ(少額特例)や、税込3万円未満の公共交通機関の運賃などは、帳簿の保存のみで控除が認められます。
出典・参考資料(1件)
Q. 電子マネーで支払った経費はどのように会計処理しますか?
A. 電子マネーで支払った経費は、支払いのタイミングによって「プリペイド型」と「ポストペイ型」で処理が分かれます。事前にチャージして使うプリペイド型(交通系ICなど)は、チャージ時にいったん仮払金などで資産計上し、実際に使った時点で費用へ振り替えます。
後払いのポストペイ型は、使った時点で費用を計上し、カード会社への支払い分を未払金として処理します。いずれも紙の領収書が出ないことが多いため、決済時のレシートや利用履歴を証憑として残しておきます。
Q. 法人カードと経費精算システムは連携できますか?
A. 多くの経費精算システムは、法人カードや交通系ICの利用明細を自動で取り込む機能を備えており、連携できます。明細を自動取得できれば、申請・承認・仕訳・保存までをオンラインで完結でき、手入力や差し戻しを減らせます。導入前に、自社で使う支払手段の明細を取り込めるか、そして使っている会計ソフトと連携できるかを確認しておくと安心です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















