グループ会社の統合やM&Aを検討し始めると、専門家からの資料や税理士との会話のなかで「吸収合併」「新設合併」という2つの言葉が出てきます。名前は似ていますが、どちらを選ぶかによって、許認可を引き継げるか、上場を維持できるか、株主に現金を渡せるか、税金や登記の負担がどう変わるかまで結果が大きく分かれます。
本記事では、吸収合併と新設合併の違いを、まず横並びの比較表で一目でつかめるように整理します。そのうえで、7つの比較軸それぞれについて、なぜそうなるのかを会社法をはじめとする根拠法で確認し、自社がどちらのスキームを選ぶことになりそうかを判断できるようにまとめました。
さらに、「許認可の承継」「上場の維持」「登録免許税の額」を、それぞれ何の法律が根拠になるのかまで切り分けて解説します。手続きの流れとスケジュール・費用の目安、税務・会計の要点、専門家への相談の進め方まで、意思決定に必要な材料を一通り確認できます。
目次
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吸収合併と新設合併の違いを比較表で解説
吸収合併と新設合併の最も本質的な違いは、合併後に会社を1社残すか(吸収合併)、当事会社をすべて消滅させて新しい会社をつくるか(新設合併)という点にあります。この一点の違いから、許認可や上場、対価、税金、効力発生日といった実務上の差が派生します。まずは7つの比較軸で全体像を確認してください。
| 比較項目 | 吸収合併 | 新設合併 |
|---|---|---|
| 存続会社の有無 | 1社が存続会社として残る | 当事会社はすべて消滅し、新会社を設立 |
| 権利義務の承継先 | 存続会社が消滅会社の権利義務を包括承継 | 新設会社が消滅会社の権利義務を包括承継 |
| 許認可・免許の承継 | 存続会社の許認可は原則そのまま。消滅会社側は業法ごとに扱いが異なる | 新会社は原則あらためて取得・承継手続きが必要(業法ごと) |
| 上場の維持 | 消滅会社は上場廃止。存続会社が上場していれば、その上場は継続 | 当事会社はすべて上場廃止。新会社は原則あらためて上場手続き |
| 株主が受け取る対価 | 現金も交付可(株式・現金など) | 新会社の株式・社債等のみ(現金は不可) |
| 登録免許税の課税ベース | 増加した資本金の額 | 新会社の資本金全体 |
| 効力発生日 | 合併契約で定めた日 | 新会社の設立登記をした日 |
会社法・登録免許税法および金融商品取引所規則にもとづき作成(2026年9月時点)。許認可・上場・登録免許税の詳細は本文で解説します。
いずれの合併でも、消滅する会社の権利義務は「全部」がまとめて引き継がれます(包括承継)。両者の違いは、その受け皿が「もともとある存続会社」か「新しくつくる会社」かという点にあります。この定義は会社法で次のように定められています。
二十七 吸収合併 会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいう。
出典:会社法 第2条|e-Gov法令検索
二十八 新設合併 二以上の会社がする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させるものをいう。
そもそも吸収合併・新設合併とは
比較表で全体像をつかんだところで、それぞれのスキームの定義を改めて確認します。合併とは、複数の会社を1つに統合する組織再編の手法で、会社法上は吸収合併と新設合併の2種類に分かれます。
吸収合併とは
吸収合併とは、合併する会社のうち1社を存続会社として残し、他の会社(消滅会社)の権利義務の全部を存続会社が引き継ぐ合併です。消滅会社は解散して法人格が消え、資産・負債・契約・従業員との雇用関係などが個別の移転手続きを経ずにまとめて存続会社へ移ります。
存続会社はそのまま残るため、その会社名義の許認可や取引口座、上場している場合の市場での地位を活かしやすいのが特徴です。実務で行われる合併の大半は、この吸収合併です。
新設合併とは
新設合併とは、合併するすべての会社を消滅させ、新たに設立する会社(新設会社)が、消滅した各社の権利義務の全部を引き継ぐ合併です。既存の会社はどれも残らず、まっさらな新会社に事業や資産・負債が統合されます。
どちらか一方が他方を飲み込む形にならないため、対等な立場での統合という対外的な印象を作りやすいのが特徴です。一方で、新会社が許認可や上場をあらためて取り直す必要が生じやすく、手続きの負担は吸収合併より重くなります。
2つのスキームの構造を対比すると、消滅会社の権利義務を「もともとある存続会社」が引き継ぐのか「新しくつくる会社」が引き継ぐのかという受け皿の違いが、次のように整理できます。

7つの比較軸ごとの違いを詳しく解説
ここからは、比較表で挙げた7つの軸について、なぜ吸収合併と新設合併で扱いが変わるのかを、根拠となる法律まで確認しながら解説します。とくに「許認可」と「上場」は、会社法ではなく別の法律が根拠になる点が重要です。
1. 存続会社の有無
最大の違いは、合併後に会社が残るかどうかです。吸収合併では当事会社のうち1社が存続会社として残り、他方は消滅します。新設合併では当事会社がすべて消滅し、代わりに新会社が設立されます。この「存続会社があるかないか」が、以下のすべての違いの出発点になります。
2. 権利義務の承継先
合併では、消滅会社の権利義務が「全部」まとめて承継されます。これを包括承継といい、資産・負債だけでなく、契約上の地位や雇用関係も個別の同意手続きを経ずに引き継がれるのが原則です。承継先が、吸収合併では既存の存続会社、新設合併では新しく設立する会社になる点だけが異なります。
3. 許認可・免許の承継
ここは誤解の多いポイントです。会社法上は権利義務が包括承継されますが、許認可や免許を引き継げるかどうかは会社法ではなく、それぞれの許認可の根拠となる個別の業法によって決まります。業法ごとに、合併による承継を認めているもの、認めていないものが分かれます。
たとえば建設業許可は、あらかじめ国土交通大臣・都道府県知事の認可を受ければ、合併後の存続会社や新設会社が建設業者の地位を承継できます。一方、宅地建物取引業の免許には合併承継の規定がなく、法人が合併で消滅すれば免許は失効し、存続会社・新設会社が改めて免許を取得しなければなりません。
建設業者である法人が合併により消滅することとなる場合……において、……あらかじめ当該合併について……認可を受けたときは、合併存続法人又は合併により設立される法人は、当該合併の日に、合併消滅法人のこの法律の規定による建設業者としての地位を承継する。
出典:建設業法 第17条の2|e-Gov法令検索
吸収合併では、存続会社が自ら保有する許認可はそのまま維持できるため、影響を受けるのは消滅会社側が持っていた許認可に限られます。新設合併では、当事会社が全て消滅するため、新会社が事業に必要な許認可を業法ごとに取り直す・承継する手続きが原則として必要になります。許認可事業を営む会社が合併を検討するときは、合併契約を締結する前に、根拠となる業法ごとの取り扱いを確認しておく必要があります。
4. 上場は維持されるか
上場を維持できるかどうかも、会社法ではなく金融商品取引所(東京証券取引所など)の有価証券上場規程が根拠になります。合併で消滅する上場会社の株券は、効力発生日の直前に上場廃止となります。
吸収合併では、存続会社が上場していれば、その会社の上場は続くため、市場での地位を活かせます。上場していない会社が上場会社を実質的に引き継ぐようなケースでは、通常の新規上場審査を経ずに速やかな上場を認める「テクニカル上場」という制度も用意されています。テクニカル上場が対象とするのは、株式移転・株式交換・吸収合併の3類型です。
テクニカル上場とは、東証に上場している会社……が、東証に上場していない会社……と合併することによって解散する場合や、株式移転・株式交換により非上場会社の完全子会社となる場合等に、当該非上場会社が発行する株券について、流通株式数等の流動性基準への適合状況を中心に確認し、速やかな上場を認める制度です。
出典:テクニカル上場の手引き|日本取引所自主規制法人
一方、新設合併では、上場していた当事会社もすべて消滅して上場廃止となり、新会社は原則としてあらためて上場の手続きを踏むことになります。テクニカル上場の主な対象は上記3類型であり、新設合併がそこに含まれていない点にも注意が必要です。上場会社が関わる合併では、上場維持の可否が新設合併を避ける大きな理由の1つになります。
出典・参考資料(1件)
5. 株主が受け取る対価
合併で消滅会社の株主が受け取る対価にも違いがあります。吸収合併では、存続会社の株式のほか、現金その他の財産を対価として交付できます(対価の柔軟化)。会社法は、吸収合併の対価として「株式等以外の財産」を交付する場合の定めを置いており、現金対価が認められています。
これに対して新設合併では、消滅会社の株主に交付できる対価は新会社の株式(および社債等)に限られ、現金を対価として交付することはできません。新会社は合併の時点でまだ設立されておらず、現金の原資を持ちようがないためです。会社法も、新設合併契約の対価として株式・社債等を定めるのみで、現金交付の規定を置いていません。
この違いは、少数株主を現金で買い取って整理したい(キャッシュアウトを伴う再編をしたい)ようなケースで効いてきます。現金対価を使いたい場合は、新設合併では対応できず、吸収合併など別のスキームを検討することになります。
6. 登録免許税の課税ベースと金額
合併の登記には登録免許税がかかり、その課税ベースと金額が吸収合併と新設合併で変わります。吸収合併は「存続会社で増加した資本金の額」、新設合併は「新会社の資本金全体」が課税ベースになります。新設合併のほうが課税の対象となる資本金が大きくなりやすく、税額も高くなる傾向があります。
税率は一律ではありません。原則は0.15%(1000分の1.5)ですが、消滅会社の合併直前の資本金の額を超える部分(合併で純増した資本部分)については0.7%(1000分の7)が課され、計算した税額が3万円に満たないときは最低3万円となります。超過部分には0.7%が適用されるため、資本金の構成によっては税額が大きく変わる点に注意が必要です。
ヘ 吸収合併による株式会社又は合同会社の資本金の増加の登記 【課税標準】増加した資本金の額 【税率】千分の一・五(吸収合併により消滅した会社の当該吸収合併の直前における資本金の額として財務省令で定めるものを超える資本金の額に対応する部分については、千分の七)(これによつて計算した税額が三万円に満たないときは、申請件数一件につき三万円)
出典:登録免許税法 別表第一 第24号|e-Gov法令検索
たとえば、資本金3,000万円のB社を吸収合併し、存続会社A社の資本金が5,000万円増えたとします。増加した5,000万円のうち、消滅会社B社の資本金3,000万円に対応する部分は0.15%(4万5,000円)、それを超える2,000万円は0.7%(14万円)で、登録免許税は合計18万5,000円になります。
新設合併の場合も税率の構造は同じですが、課税ベースが新会社の資本金全体になります(消滅する会社が複数あるときは、その資本金の合計が基準です)。増資分だけが対象になる吸収合併と比べて課税ベースが大きくなりやすく、同じ規模の合併でも税額が高くなる傾向があります。実際の額は資本金の設計によって変わるため、登記費用の見積もりは司法書士など専門家に確認するのが確実です(別表第一第24号(一)ホ)。
出典・参考資料(1件)
7. 効力発生日と登記
合併の効力が生じる日も両者で異なります。吸収合併では、効力発生日を合併契約のなかで当事者が定め、その日に効力が生じます。登記はあとから行いますが、効力そのものは契約で決めた日に発生します。
新設合併では、新会社の設立登記をした日に会社が成立し、その成立の日に消滅会社の権利義務を承継します。この結果、新設合併は登記が効力発生の起点となり、登記が完了するまで合併の効力は生じません。会社法は、新設会社が「その成立の日」に権利義務を承継すると定め、株式会社は設立登記によって成立するとしています。
新設合併設立株式会社は、その成立の日に、新設合併消滅会社の権利義務を承継する。(第754条第1項)
出典:会社法 第754条・第49条|e-Gov法令検索
株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。(第49条)
合併の登記は、効力発生後、原則として2週間以内に行うのが目安です。スケジュールを組むうえでは、吸収合併は効力発生日を柔軟に設定でき、新設合併は登記のタイミングに効力が縛られるという違いを押さえておくと、統合日の設計がしやすくなります。
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どちらを選ぶ?新設合併のメリット・デメリットと実務判断
ここまでの違いを踏まえ、自社がどちらのスキームを選ぶことになりそうかを判断するための材料を整理します。結論からいえば、実務で行われる合併の大多数は吸収合併で、新設合併が選ばれるのは特定の狙いがあるケースに限られます。
新設合併のメリット
新設合併の利点は、どちらか一方が他方を「飲み込む」形にならないため、対等な統合という対外的な印象を作りやすい点にあります。合併する会社に優劣や親子関係がなく、新しい看板のもとで再出発したいときに向きます。
また、まっさらな新会社を設立するため、役員構成やガバナンス、株主構成を一から設計し直しやすいという面もあります。買収資金としての現金を用意する必要がなく、株式を対価に統合できる点は吸収合併と共通のメリットです。
新設合併のデメリット・注意点
一方で、新設合併には実務上の負担が集中します。当事会社がすべて消滅するため、事業に必要な許認可・免許を新会社が業法ごとに取り直す・承継する手続きが必要になり、上場会社であれば上場もあらためて手続きを踏むことになります。
対価に現金を使えない、課税ベースが新会社の資本金全体になり登録免許税が高くなりやすい、効力発生が登記に縛られるといった点も、吸収合併と比べたときの負担です。取引先との契約に、合併や支配権の変更を理由とする通知・同意・解除の条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)がある場合は、その対応も必要になります。
なぜ実務では吸収合併が大多数なのか
これらを合わせると、吸収合併なら存続会社が持つ許認可・上場・取引口座・契約をそのまま活かせるのに対し、新設合併ではそれらを新会社で取り直す手間とコストが生じます。同じ統合効果を得られるなら、負担の軽い吸収合併を選ぶのが合理的です。グループ内の再編で親会社が子会社を統合する場合など、存続させる会社を決められるケースでは、ほぼ吸収合併が選ばれます。
新設合併を選ぶ価値があるケース
それでも新設合併が選ばれるのは、手続きの負担を上回る狙いがあるときです。代表的なのは、規模や立場が拮抗する会社同士が「対等合併」であることを対外的に強く打ち出したい場合です。どちらかを存続会社にすると優劣の印象が生まれるため、あえて新会社を設立して対等さを示します。
また、複数の会社を同時に1社へまとめたい場合や、既存の会社に紐づくしがらみ(旧来のガバナンス・株主構成)をリセットして再設計したい場合にも、新設合併が選択肢になります。自社の状況が「存続させたい会社が明確にある」のか「対等統合やリセットを優先したい」のかを見極めることが、スキーム選択の出発点になります。
合併手続きの流れとスケジュール・費用
吸収合併・新設合併のいずれも、会社法が定める一連の手続きを踏む必要があります。全体像と、おおまかなスケジュール・費用の目安を確認します。
手続きの全体ステップ
合併の手続きは、おおむね次の流れで進みます。スキームによって根拠条文や順序が一部異なりますが、大きな骨格は共通です。
- 事前準備・交渉(合併の相手・条件の検討、基本合意)
- 取締役会での承認と合併契約の締結
- 事前開示書類の備置き(合併契約の内容などを本店に備え置く)
- 株主総会での承認(原則として特別決議)
- 債権者保護手続き(官報公告・個別催告による債権者の異議手続き)
- 反対株主による株式買取請求への対応
- 効力発生・登記申請(吸収は契約で定めた日/新設は設立登記の日)
- 事後開示書類の備置き
株主総会の承認は、原則として特別決議(議決権の過半数を持つ株主が出席し、その3分の2以上の賛成)が必要です(会社法第309条2項)。債権者の異議手続きは吸収合併では会社法第799条、新設合併では第810条が根拠になります。反対株主の株式買取請求は、新設合併では第806条に定めがあります。
出典・参考資料(3件)
スケジュールの目安
合併の手続きには、債権者保護手続きに1か月以上の異議申述期間が必要なことなどから、契約締結から効力発生まで少なくとも数か月を見込むのが一般的です。上場会社が関わる場合や許認可の承継・再取得が必要な場合、当事会社の株主・債権者が多い場合は、さらに時間がかかります。相手探しや条件交渉から数えると、半年から1年以上をかけて進めるケースも珍しくありません。
かかる費用
合併にかかる費用には、主に次のものがあります。金額は資本金の額や案件の規模によって変わるため、早い段階で専門家に見積もりを依頼しておくと安心です。
- 登録免許税(原則0.15%、消滅会社の資本金を超える増加分は0.7%、最低3万円)
- 官報公告の掲載費用(債権者保護手続きの公告)
- 司法書士・弁護士・税理士など専門家への報酬
- M&Aアドバイザリー・FAへの報酬(相手探しやスキーム設計を依頼する場合)
合併の税務・会計処理の要点(適格・非適格)
合併では、税務上「適格合併」に該当するかどうかで課税関係が大きく変わります。ここでは要点だけを押さえます。実際の判定と処理は、個別の事情によって変わるため、税理士に確認してください。
適格合併とは、一定の要件を満たす合併で、消滅会社の株主に合併法人の株式以外の資産(現金など)が交付されないことなどが条件になります。適格合併に該当すると、消滅会社の資産・負債を帳簿価額のまま引き継ぎ、譲渡損益への課税が繰り延べられます。要件を満たさない非適格合併では、資産を時価で引き継いだものとして扱われ、譲渡損益への課税が生じます。
会計処理も、統合の実態によって「取得」(実質的に一方が他方を取得したとみる場合)と「共通支配下の取引」(同一グループ内の再編)で扱いが分かれます。適格・非適格の判定要件や繰越欠損金の引き継ぎ、会計処理の詳細は複雑なため、スキームを決める段階から税理士・公認会計士に相談しておくと、想定外の税負担を避けやすくなります。
出典・参考資料(1件)
合併・組織再編スキームの相談先
吸収合併と新設合併のどちらが自社に合うか、さらに合併以外の手法(会社分割・株式交換・事業譲渡など)も含めてどう再編すべきかは、自社だけで最適解を出すのが難しい領域です。登記は司法書士、税務は税理士、法務は弁護士が担いますが、どのスキームを選ぶか・相手をどう探すか・自社をいくらで評価するかといった上流の設計は、M&Aアドバイザリーやファイナンシャルアドバイザー(FA)の領分になります。
会社の売却・事業承継やグループ再編を検討する段階で、こうしたアドバイザーに早めに相談しておくと、スキームの選択肢と手続きの見通しを整理でき、判断がぶれにくくなります。
ここでは、対象とする領域の異なる2社のM&Aアドバイザリー・FAを紹介します。1社目は業種を問わない売主専門のアドバイザリー、2社目はWeb3・ブロックチェーン事業に特化したアドバイザリーで、自社の事業領域に合う相談先を選ぶ参考にしてください。
| サービス名 | M&A Lead | Consensus Base |
|---|---|---|
| 立場・特徴 | 売主専門(セルサイド専任)のM&Aアドバイザリー 売主からのみ手数料を受け取る片手取引 | Web3・ブロックチェーン業界に特化したM&Aアドバイザリー 開発事業で培った技術理解を評価に活用 |
| 主な対応領域 | 業種を限定せず、事業承継から上場企業の子会社売却まで幅広い規模・背景の売却案件 | Web3・ブロックチェーン領域(GameFi・NFT・DeFi等)の技術デューデリジェンス・事業評価 |
| 料金体系 | 完全成功報酬制 着手金・中間金は0円(レーマン方式・譲渡対価の1〜5%) | 要問い合わせ (着手金・成功報酬は非公開) |
| 対応エリア | 全国対応 | 国内外(クロスボーダー案件にも対応) |
| 無料相談 | あり | あり |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る |
M&A Lead(M&A Lead株式会社)

M&A Leadは、譲渡企業(売主)だけのために働くことを掲げる、売主専属のM&Aアドバイザリーです。売主・買主の双方から手数料を受け取る一般的な仲介と異なり、売主からのみ手数料を受け取る「片手取引」を採用し、譲渡価格や雇用・契約条件など、売主にとって有利な条件の追求に専念する立場を打ち出しています。
料金は着手金・中間金が無料の完全成功報酬制で、成約時にのみ成功報酬(レーマン方式=譲渡金額に応じて料率が決まる方式)が発生します。全国対応・オンライン相談に対応し、中小企業庁のM&A支援機関登録制度に登録しています。事業承継から上場企業の子会社の切り離しまで、幅広い規模・背景の売却案件を扱っており、会社の売却や事業承継の入り口として相談しやすいアドバイザリーです。
Consensus Base(コンセンサス・ベイス株式会社)

Consensus Baseは、Web3・ブロックチェーン事業を営む企業に向けた、業界特化型のM&Aアドバイザリーです。運営するコンセンサス・ベイス株式会社は、ブロックチェーンの受託開発・技術コンサルティングで培った技術理解を土台に、M&Aの技術デューデリジェンス(DD=買収前に対象企業を精査する調査)や事業評価に活用する点を特徴としています。
公式サービスページでは、買収・売却候補の探索から、Web3領域に特化したビジネスデューデリジェンス、スマートコントラクトの評価、取引スキームの設計、トークンの取り扱いに関する法務的な整理までを支援範囲に挙げています。Web3・ブロックチェーン領域の事業でM&Aや組織再編を検討する企業にとって、業界特有の論点を踏まえて相談できる選択肢になります。
合併を含む組織再編では、スキーム設計や相手探し、企業価値評価まで支援してくれる相談先を、専門領域や費用感で比べて選びたい場面も出てきます。M&Aアドバイザリー・FAをはじめとする金融コンサル会社の選び方や費用相場を、専門領域別に比較して検討したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
金融コンサル会社徹底比較|専門領域別おすすめ19選と選び方【費用相場も解説】
資金繰りや財務戦略、事業承継やM&Aといった経営の重要局面では、社内の知見だけで最適解にたどり着くのが難しい場面が少なくありません。「専門家に相談したいが、どの金融コンサルに頼めばよいのか分からない」と迷う方も多いでしょう。 金融コ…
まとめ
吸収合併と新設合併の違いは、合併後に会社を1社残すか、すべて消滅させて新会社をつくるかという一点に集約されます。この違いから、許認可の承継・上場の維持・現金対価の可否・登録免許税・効力発生日といった実務上の差が生まれます。とくに許認可は個別の業法、上場は金融商品取引所の規程が根拠になり、会社法だけで決まる話ではない点を押さえておくことが大切です。
実務で選ばれる合併の大多数は、既存会社の許認可・上場・契約を活かせる吸収合併です。新設合併は、対等統合を対外的に示したい場合やガバナンスを一から再設計したい場合など、手続きの負担を上回る狙いがあるときに選ばれます。自社に「存続させたい会社」が明確にあるかどうかが、スキーム選択の出発点になります。
判断に迷う段階では、M&Aアドバイザリー・FAや税理士・弁護士に早めに相談し、スキームと手続きの見通しを整理しておくことをおすすめします。
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よくある質問(FAQ)
Q. 吸収合併と新設合併とは何ですか?
A. 吸収合併と新設合併は、いずれも複数の会社を1つに統合する会社法上の合併手法で、吸収合併は当事会社の1社を存続会社として残す方式、新設合併は当事会社をすべて消滅させて新会社を設立する方式です。どちらも消滅する会社の権利義務は全部がまとめて(包括承継で)引き継がれ、その受け皿が既存の存続会社になるか新しくつくる新設会社になるかが、両者の根本的な違いになります。
Q. 吸収合併と新設合併では、どちらを選ぶべきですか?
A. 吸収合併と新設合併のうち、実務で選ばれる合併の大多数は吸収合併です。存続会社が持つ許認可・上場・取引口座・契約をそのまま活かせて手続きの負担が軽いためで、グループ内で親会社が子会社を統合する場合など、存続させる会社を決められるケースではほぼ吸収合併が選ばれます。
規模や立場が拮抗する会社同士が対等統合を対外的に強く示したい場合や、ガバナンス・株主構成を一から作り直したい場合など、負担を上回る狙いがあるときに限って新設合併が検討されます。
Q. 新設合併があまり使われないのはなぜですか?
A. 新設合併が使われにくいのは、当事会社がすべて消滅するため、許認可の取り直し・上場の再手続き・登録免許税の増加・重要契約の同意取得など、実務上の負担が吸収合併より大きくなりやすいからです。同じ統合効果を得られるのであれば、存続会社の資産や地位をそのまま活かせる吸収合併のほうが合理的なため、実務では吸収合併が大多数を占めます。
Q. 合併の登録免許税はいくらかかりますか?
A. 合併の登録免許税は、原則として資本金の額の0.15%(1000分の1.5)で、消滅会社の合併直前の資本金を超える増加分には0.7%(1000分の7)が課され、計算した税額が3万円に満たないときは最低3万円となります。
課税ベースは吸収合併が「存続会社で増加した資本金の額」、新設合併が「新会社の資本金全体」で、新設合併のほうが対象が大きくなり税額も高くなりやすい傾向があります。実際の額は資本金の設計によって変わるため、登記費用の見積もりは司法書士など専門家に確認するのが確実です。
出典・参考資料(1件)
Q. 合併で許認可や免許は引き継げますか?
A. 合併で許認可や免許を引き継げるかは、会社法ではなく、それぞれの許認可の根拠となる個別の業法によって決まります。会社法上は権利義務が包括承継されますが、業法ごとに、合併による承継を認めているもの(例:建設業許可は事前の認可を受ければ承継可能)と、認めていないもの(例:宅地建物取引業の免許は合併消滅で失効し再取得が必要)に分かれます。
吸収合併では存続会社が自ら持つ許認可はそのまま維持でき、影響は消滅会社側の許認可に限られますが、新設合併では新会社が事業に必要な許認可を業法ごとに取り直す・承継する手続きが原則として必要です。
Q. 合併すると上場は維持できますか?
A. 上場を維持できるかは会社法ではなく金融商品取引所の有価証券上場規程が根拠で、吸収合併では存続会社が上場していればその上場は続きますが、新設合併では当事会社がすべて上場廃止となり、新会社は原則あらためて上場の手続きが必要です。
非上場会社が上場会社を実質的に引き継ぐ場合に速やかな上場を認める「テクニカル上場」の対象は株式移転・株式交換・吸収合併の3類型で、新設合併は含まれません。上場会社が関わる合併で新設合併が避けられる大きな理由の1つです。
Q. 合併と会社分割・株式交換・株式移転は何が違いますか?
A. 合併と他の組織再編手法の違いは、合併は当事会社を消滅させて1つの会社に統合するのに対し、会社分割は事業の一部だけを切り出して別会社に承継させ、株式交換・株式移転は会社を消滅させずに株式のやり取りで完全親子会社の関係をつくる点にあります。
会社をまるごと1つに融合させたいなら合併、事業単位で移したいなら会社分割、法人格を残したままグループの資本関係を整えたいなら株式交換・株式移転が向きます。どの手法が自社の目的に合うかは、統合後にどう運営したいかから逆算して選ぶのが実務的です。
Q. 合併の手続きにはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 合併の手続きは、契約締結から効力発生まで少なくとも数か月を見込むのが一般的です。債権者保護手続きに1か月以上の異議申述期間が必要なことが主な理由で、上場会社が関わる場合や許認可の承継・再取得が必要な場合、当事会社の株主・債権者が多い場合はさらに時間がかかります。相手探しや条件交渉から数えると、半年から1年以上をかけて進めるケースも少なくありません。
Q. 合併で従業員の雇用や取引先との契約はどうなりますか?
A. 合併では、消滅会社の従業員との雇用契約も包括承継の対象として、存続会社または新設会社へそのまま引き継がれるのが原則で、転籍にあたって従業員一人ひとりの個別同意が当然に必要になるわけではありません。ただし、合併後に労働条件・就業規則・賃金退職金制度を統合する場面では、労働法上の手続きや従業員への説明が必要になることがあります。
取引先との契約も原則として引き継がれますが、合併や支配権の変更を理由とする通知・同意・解除の条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)が定められている契約は、個別の対応が必要になります。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















