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給与明細の電子化のデメリット一覧|対処法と従業員同意の進め方

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毎月の給与明細を紙で印刷し、封入して配布・郵送する作業は、担当者にとって地味ながら負担の大きい業務です。テレワークの広がりもあって電子化を検討する企業は増えていますが、いざ切り替えるとなると「後から従業員とトラブルにならないか」「法的に問題はないか」といった不安が先に立ちます。

給与明細の電子化(Web給与明細)とは、紙で交付していた明細をPDFやWeb画面で従業員に届ける仕組みのことです。コスト削減や配布の手間の軽減といったメリットがある一方で、導入前に押さえておかないと後で困るデメリットや注意点がいくつかあります。中には、従業員の同意を得ずに進めると法律上認められない、という見落とせない一線もあります。

この記事では、給与明細を電子化するデメリットを会社側・従業員側に分けて網羅的に整理し、それぞれが「避けられないもの」か「対処できるもの」かを切り分けて対処法まで示します。あわせて、従業員の同意に関する法的根拠や、見落としやすい交付・保存のルールを、所得税法・労働基準法の条文に沿って確認します。

給与明細を電子化するデメリット一覧【会社側・従業員側】

まず、給与明細を電子化したときに実際に問題になりやすいデメリットを、会社側(管理部門)と従業員側に分けて一覧で確認します。自社の運用で何が起きるかを想像しながら読むと、あとで対策を立てやすくなります。

会社側(管理部門)のデメリット

  • 従業員の同意取得に手間がかかる:電子交付には従業員一人ひとりの同意が必要で、案内や同意書の回収に時間と労力がかかります。
  • 情報漏えいのリスクがある:メールの誤送信、なりすましログイン、クラウド側の障害など、給与という機微な個人情報を扱う以上、紙にはなかったリスクが生じます。漏えいすれば従業員本人にも影響が及ぶため、会社の責任として対策が欠かせません。具体的には、通信・保存データの暗号化、アクセス権限の最小化と操作ログの記録、ログイン時の多要素認証といった技術的な備えが必要です。あわせて、パスワードの使い回しを避けるなど従業員側の取り扱いルールの周知も一体で講じます。
  • 導入・運用コストが発生する:システムの初期費用や月額費用がかかります。目安は初期費用0〜十数万円、月額数千円〜数万円ほどで、1人あたり月数十円といった従量課金型もあります。紙の印刷・郵送費の削減額と比べ、費用対効果が出るかを事前に見積もる必要があります。
  • 既存の給与計算システムとの相性を確認する必要がある:給与計算ソフトが出力するデータ形式に電子化サービスが対応していないと、データの手作業での加工が発生します。
  • 新しい業務フローの構築が必要になる:明細の作成から配信までの手順が変わるため、担当者の運用ルールの作り直しと社内周知が要ります。

従業員側のデメリット

  • 閲覧する端末やネット環境がないと不便になる:スマートフォンやパソコンを持たない従業員は、明細をすぐに確認できない場合があります。
  • ITに不慣れな従業員には負担になる:ログインや操作に抵抗を感じる人がいて、問い合わせ対応が増えることがあります。
  • 紙で手元に残したい人への配慮が要る:住宅ローンの審査など収入証明で紙を求められる場面があり、自分で印刷する手間が生じます。
  • 家族との共有がしにくくなる:紙のように家庭で見せ合うことが難しくなり、従来の感覚とのギャップを感じる人もいます。
  • 過去の明細を閲覧できる期間に制限がある場合がある:サービスによっては一定期間より前の明細が見られなくなることがあります。

各デメリットは「避けられる」か「避けられない」か

ここまで挙げたデメリットは、性質が同じではありません。法律上どうしても踏まなければならない手続きと、システムや運用の工夫で吸収できるものが混ざっています。切り分けて整理すると、次のようになります。

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デメリット避けられる/避けられない対処の方向性
従業員の同意取得避けられない(法律上の要件)「みなし承諾」の仕組みや同意書の一括回収機能で手間を減らす
情報漏えいのリスク対処できるアクセス制御・暗号化・認証など、セキュリティ基盤の整ったサービスを選ぶ
導入・運用コスト対処できる紙の印刷・郵送費の削減効果と比較し、従量課金や小規模プランを選ぶ
既存給与計算システムとの相性対処できるCSV・PDF取込やAPI連携に対応したサービスを選び、既存の仕組みを残す
新しい業務フローの構築対処できる導入支援のあるサービスを選び、作成〜配信の手順を一度整理して社内周知する
端末を持たない・ITに不慣れな従業員対処できる多様な端末に対応したサービスを選び、紙の交付を併用する
紙で残したい人への対応避けられない(請求されたら紙で交付)郵送代行や紙併用の運用で、希望者にだけ紙を渡す
家族との共有がしにくい対処できる必要なときは従業員が自分で印刷・保存できる旨を案内しておく
過去の明細を閲覧できる期間の制限対処できる保存期間の長い(または保存年数の要件を満たす)サービスを選ぶ

「避けられない」に分類されるのは、従業員の同意取得と、紙を請求されたときの交付です。いずれも法律で定められた要件で、後述のとおり所得税法にもとづきます。それ以外の多くは、サービスの選び方と運用の工夫で軽減できます。

デメリットの中でも、知らずに進めると後で問題になりやすいのが従業員の同意です。ここでは、同意が必要な法的根拠と、実務での取り方を条文にもとづいて確認します。

電子交付に本人の同意が必要な法的根拠(所得税法231条2項・施行令356条)

給与明細(給与等の支払明細書)を紙ではなく電子データで提供するには、支払を受ける本人(従業員)の承諾を得ることが所得税法で定められています。根拠は所得税法(以下、法)第231条第2項です。

前項の給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、同項の規定による給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払を受ける者の承諾を得て、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。

出典:所得税法 第231条第2項本文|e-Gov法令検索

「承諾を得て」とあるとおり、同意なしに電子交付だけへ切り替えることはできません。さらに、この承諾の取り方は所得税法施行令第356条第1項で具体的に定められており、あらかじめ電磁的方法の種類・内容を示したうえで、書面または電磁的方法で承諾を得る必要があります。口頭の了解だけでは足りない点に注意が必要です。

(前略)財務省令で定めるところにより、あらかじめ、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払を受ける者に対し、その用いる電磁的方法の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。

出典:所得税法施行令 第356条第1項|e-Gov法令検索

給与明細の電磁的提供の根拠は、あくまで所得税法第231条第2項です(「第231条の2」という条文は存在しません)。また、源泉徴収票の電子交付は別の条文(第226条第4項)が根拠で、給与明細とは規定が分かれています。混同しないよう押さえておきます。

出典・参考資料(2件)

2023年度税制改正の「みなし承諾」で同意取得の手間を減らせる

同意取得の負担を軽くする仕組みとして、2023年度(令和5年度)の税制改正で「みなし承諾」が導入されました。支払者(会社)が定めた期限までに従業員から「承諾しない」という回答がなければ、承諾があったものとみなせる制度です。令和5年4月1日以後に行う通知から適用され、給与明細にも所得税法施行規則を通じて適用されます。

みなし承諾による同意取得の3ステップを示した図解。STEP1で電磁的方法の種類・内容と回答期限を示して通知し、STEP2で自社が定めた期限まで従業員の回答を待ち、STEP3で期限までに承諾しない回答がなければ承諾を得たものとみなせる、という2023年度税制改正で導入された流れを示している。

(前略)当該支払をする者が定める期限までに当該承諾をしない旨の回答がないときは当該承諾があつたものとみなす旨の通知をし、当該期限までに当該支払を受ける者から当該回答がなかつたときは、当該承諾を得たものとみなす。

出典:所得税法施行規則 第95条の2第2項|e-Gov法令検索

この仕組みを使えば、全員から個別に同意書を回収しなくても電子交付を始めやすくなります。ただし、期限は「支払者が定める期限」とされているだけで、法令上「1か月以上」といった固定の日数が定められているわけではありません。実務では自社で通知と期限を設定し、回答の機会をきちんと確保する運用が求められます。

出典・参考資料(2件)

同意の取り方と、同意しない従業員への対応

実務では、電子化の目的・メリットだけでなく、閲覧方法や問い合わせ窓口もあわせて説明し、書面または電子で承諾を得ます。反対する従業員に電子化を強制することはできないため、同意しない人には紙で交付できる体制を残しておくことが必要です。全員の即時切り替えを狙わず、希望者から段階的に移行し、定期的に意向を確認していく進め方が現実的です。

見落としやすい法的要件(紙の交付請求・交付期限・保存期間)

同意のほかにも、電子化の前に押さえておきたい法的な要件があります。いずれも知らずに進めると後で問題になりやすい点です。

紙で交付が必要になるケース(個別の請求・電子交付の撤回)

紙での交付が必要になる場面は3つあります。ひとつは前述の「そもそも電子化に同意しない従業員」、あとの2つが、一度は電子交付を利用している従業員に関わる次のケースです。いずれも紙で渡せる運用を残しておく前提で設計しておく必要があります。

給与明細を電子化しても紙で交付が必要になる3つのケースを示した図解。ケース1は電子化に同意しない従業員(所得税法231条2項)、ケース2は紙の交付を請求された場合(231条2項ただし書き)、ケース3は電子交付を撤回された場合(施行令356条2項)で、いずれも希望者に紙で渡せる運用を残す必要があると示している。

1つ目は、従業員から個別に紙の交付を請求されたケースです。電子交付に切り替えた後でも、請求があれば紙の明細書を交付しなければならないと、所得税法第231条第2項のただし書きで定められています。

ただし、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払を受ける者の請求があるときは、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書を当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払を受ける者に交付しなければならない。

出典:所得税法 第231条第2項ただし書き|e-Gov法令検索

2つ目は、いったん電子交付に承諾した従業員が、後から「電子はやめたい」と申し出た(撤回した)ケースです。この扱いは所得税法施行令第356条第2項に定めがあり、申出があれば電子提供を続けてはならないとされています。個別の請求(ただし書き)と撤回(施行令356条2項)は別のルールなので、どちらにも紙で対応できる運用ルールにしておく必要があります。

給与の支払の際(給与支給日)までに交付する必要がある

給与明細の交付そのものは所得税法第231条第1項で義務づけられており、交付の時期は所得税法施行規則第100条第1項で「その支払の際」と定められています。この規定により、給与を支払う際(給与支給日)までに従業員が明細を確認できる状態にしておく必要があります。電子化する場合も、支給日までに配信・閲覧できるスケジュールで運用します。

出典・参考資料(2件)

賃金台帳・給与関係書類の保存期間は5年(当分の間は3年)

給与に関する記録の保存も忘れやすい要件です。労働基準法第108条は、使用者に賃金台帳の調製(作成・記入)を義務づけています。その保存期間は同法第109条で「五年間」と定められていますが、附則第143条第1項の経過措置により、当分の間は「三年間」とされています。

使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。

出典:労働基準法 第109条|e-Gov法令検索

保存期間は条文上、本則5年・当分の間3年です(「2〜5年」という幅の表現は法令にはありません)。電子化にあたっては、電子データを改ざんされない形で、この期間にわたって保存できる仕組みかを確認しておく必要があります。

出典・参考資料(1件)

給与明細を電子化するメリット(デメリットとの天秤)

デメリットと要件を押さえたうえで、電子化で得られるメリットとも天秤にかけて判断します。主なメリットは次のとおりです。

  • コスト削減:紙代・印刷代・郵送費・封入作業の人件費を抑えられます。
  • 配布業務の効率化:印刷・封入・配布の手間が減り、給与計算から配信までの流れを短縮できます。
  • テレワーク・遠隔地への対応:出社していない従業員にも、場所を問わず明細を届けられます。
  • 従業員側の利便性:スマートフォンやパソコンからいつでも確認でき、紛失の心配も減ります。

これらのメリットは、印刷・封入・配布という毎月繰り返し発生していた作業負担が継続的に消える点に効いてきます。一方でデメリットの多くは、同意取得やシステム設定といった導入時に集中する一度きりの手間です。

天秤にかけるのは「毎月続く負担の軽減」と「導入時に片付く手間・法律上の要件」です。コスト削減や業務効率化の効果は配布対象の人数が多いほど大きく、デメリットの多くが対処できるものである以上、運用の工夫とサービス選びによってメリットを得る判断は十分に成り立ちます。

多くのデメリットはWeb給与明細システムで解決できる

ここまで見てきたデメリットの多くは、Web給与明細システムの機能で吸収できます。同意取得のサポート、セキュリティ基盤、既存の給与計算システムとの連携、紙の併用など、懸念の裏返しがそのまま選定の基準になります。次に挙げる3サービスは、代表的なデメリットへの対処という切り口で選んだ一例で、それぞれ強みが異なります。

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サービス名楽楽明細セコムあんしん給与明細電子化サービスi-Compass WEB給与明細
情報漏えい対策プライバシーマーク取得
操作ログ・権限管理
セコムグループの
セキュリティ基盤で管理
要問い合わせ
端末対応Web・メールで配信PC・スマホ・
フィーチャーフォン・英語対応
PC・スマホ・タブレット
給与計算システム連携CSV・PDF取込/API連携
(既存の給与計算を残せる)
要問い合わせSuperStream-NX連携
(既存人事給与基盤に組込)
紙併用・郵送代行郵送代行に対応
(1通198円〜・税抜)
要問い合わせ要問い合わせ
月額料金月25,000円〜(税抜)要問い合わせ1人あたり月40円
詳細情報サービス詳細を見る公式サイト公式サイト

1. 楽楽明細(株式会社ラクス)

楽楽明細の公式サイト

楽楽明細は、株式会社ラクスが提供する帳票発行システムです。請求書や納品書と並んで給与明細の発行にも対応し、Web発行・メール・郵送代行・FAXといった複数の方法で配信できます。「紙をやめきれない」というデメリットに対しては、郵送代行(1通198円〜・税抜)を使い、電子化を希望しない従業員にだけ紙を届ける運用が組める点が特徴です。

既存の給与計算システムが出力するCSVやPDFを取り込んで発行できるため、いまの給与計算の仕組みを入れ替えずに配信だけを電子化できます。初期費用は100,000円(税抜)、月額費用は25,000円(税抜)からで、発行件数やオプションにより変動します(2026年8月時点)。

2. セコムあんしん給与明細電子化サービス(セコムトラストシステムズ)

セコムあんしん給与明細電子化サービスの公式サイト

情報漏えいへの不安が大きい企業に向くのが、セコムトラストシステムズの給与明細電子化サービスです。セコムグループの情報セキュリティ会社が提供しており、給与データをグループのセキュリティ基盤で管理できる点が特徴です。給与・賞与明細に加え、源泉徴収票や年末調整の各種申請書のWeb化にも対応します。

従業員はパソコン・スマートフォンに加えてフィーチャーフォンからもアクセスでき、英語表示にも対応します。スマートフォンを持たない従業員やITに不慣れな従業員がいる職場でも配信しやすく、「端末を持たない従業員」のデメリットに答えられる構成です。料金はプラン制で、詳細は問い合わせで確認する形です。

3. i-Compass WEB給与明細(DAIKO XTECH)

i-Compass WEB給与明細の公式サイト

既存の人事給与基盤を活かしたまま配信を追加したい企業には、DAIKO XTECHのi-Compass WEB給与明細が向きます。給与・賞与明細のWeb配信を1人あたり月40円(公式製品ページ)から始められ、キヤノンITソリューションズの人事給与システム「SuperStream-NX」との連携製品としても提供されます。中堅・大企業の既存基盤に、明細配信の機能を組み込みやすい設計です。

源泉徴収票や住民税の特別徴収税額通知のWeb配信、年末調整のWeb申告まで拡張でき、給与まわりの帳票をまとめて電子化していけます。従業員はパソコン・スマートフォン・タブレットから明細を確認できます。

ここで挙げた3サービスは、代表的なデメリットへの対処という切り口で選んだ一例です。タイプ別の選び方や料金相場も踏まえて全体から比較検討したい場合は、Web給与明細システムを網羅した以下の記事をご覧ください。

まとめ

給与明細の電子化には、従業員の同意取得や情報漏えいリスク、導入コスト、既存システムとの相性、端末を持たない従業員への配慮といったデメリットがあります。ただし、その中で本当に避けられないのは、従業員の同意取得と、請求があったときの紙の交付という法律上の要件だけです。残る多くは、サービスの選び方と運用の工夫で対処できます。

まずは自社のデメリットを洗い出し、同意取得のサポート・セキュリティ・既存システムとの連携・紙併用といった観点でサービスを比較してみてください。各社の資料を取り寄せて、機能と費用を具体的に見比べるところから始めてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 給与明細の電子化は義務ですか?

A. 給与明細の電子化は、法律上の義務ではなく、会社が任意で選べる方法です。電子化するかどうかは各社の判断に委ねられています。ただし、給与明細そのものを交付する義務は所得税法第231条第1項で定められており、電子・紙のいずれの方法でも、給与の支払の際(給与支給日)までに従業員が明細を確認できる状態にしておく必要があります。

Q. 従業員が給与明細の電子化に同意しない場合はどうすればよいですか?

A. 従業員が電子化に同意しない場合は、その従業員には従来どおり紙の給与明細を交付する必要があります。電子交付には本人の承諾が必要で(所得税法第231条第2項)、反対する人に電子化を強制することはできません。全員を一斉に切り替えようとせず、同意した人から段階的に移行し、希望者には紙を残す運用が現実的です。定期的に意向を確認し、後から電子交付を希望する人を受け入れられるようにしておくとよいでしょう。

Q. 「みなし承諾」を使えば、全員から同意書を集めなくても電子化を始められますか?

A. はい、みなし承諾(みなし同意)を使えば、全員から個別に同意書を回収しなくても電子交付を始められます。会社が定めた期限までに「承諾しない」という回答がなければ承諾とみなせる制度で、2023年度税制改正で導入されました。ただし期限に「1か月以上」などの法定日数はなく、自社で通知と回答期限を設定して運用します。

Q. 給与明細を電子化すれば、完全なペーパーレスにできますか?

A. 給与明細を電子化しても、完全なペーパーレスにはならない場合があります。従業員から請求があれば紙の明細を交付しなければならないと所得税法第231条第2項ただし書きで定められているため、希望者には紙で渡せる体制を残す前提で設計しておく必要があります。郵送代行に対応したサービスを使えば、紙を希望する一部の従業員にだけ効率的に対応でき、印刷・封入の作業自体は削減できます。

Q. 既存の給与計算システムを変えずに、配信だけを電子化できますか?

A. 多くのWeb給与明細システムは、既存の給与計算システムを入れ替えず、明細の配信だけを電子化できます。給与計算ソフトが出力するCSVやPDFを取り込んで発行できるサービスを選べば、いまの計算の仕組みを残したまま、配布業務だけをペーパーレス化できます。導入前に、自社が使っている給与計算ソフトの出力形式にサービスが対応しているかを確認しておくと、データの手作業での加工を避けられます。

Q. 電子交付された源泉徴収票を、自分で印刷して確定申告に使えますか?

A. まず前提として、2019年(平成31年)4月1日以後に提出する確定申告書からは、給与所得の源泉徴収票を申告書に添付する必要がなくなりました(税制改正による)。そのため、紙で提出する確定申告でも、源泉徴収票そのものを印刷して添付する場面は基本的にありません。金額の確認用に手元へ印刷・保存しておくことは問題なくできます。

電子申告(e-Tax)の場合は、源泉徴収票に記載された支払金額や源泉徴収税額などを入力して申告します。会社が本人の承諾を得て電子交付した源泉徴収票は正式な書類として扱われるため、その記載内容にもとづいて申告できます。源泉徴収票自体は給与明細とは別の書類で、電子交付の根拠となる条文も所得税法第226条第4項と、給与明細(第231条第2項)とは分かれています。

会社として源泉徴収票もあわせて電子化する場合は、従業員が確定申告で困らないよう、印刷や利用方法を案内しておくと親切です。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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