メール誤送信やパソコンの紛失、ランサムウェアによる情報流出のニュースを見て、「自社のファイルも暗号化しておくべきではないか」と考える担当者は少なくありません。ところが、いざ調べ始めると「ファイル暗号化」という言葉が具体的に何を指すのかを、自分の言葉で説明するのは意外と難しいものです。
ファイル暗号化とは、ひとことでいえば、ファイルの中身を鍵やパスワードがなければ読めない状態に変換する技術です。万一ファイルが外部に流出しても、鍵を持たない相手には中身を読み取れないため、情報漏えい対策の「最後の砦」として機能します。
本記事では、ファイル暗号化の仕組みと方式の違いから、Windowsの標準機能などで無料でできる手順、標準機能だけでは足りない場面、そして専用の暗号化ソフト・IRMを選ぶときの観点と費用感までを整理します。
目次
ファイル暗号化とは
ファイル暗号化とは、ファイルの中身(平文)を、決められた計算手順で第三者には読めない文字列(暗号文)に変換する処理を指します。暗号化されたファイルは、正しい鍵やパスワードを使って元に戻す(復号する)まで、開いても中身を判読できません。

この仕組みの価値は、ファイルが持ち出されたり流出したりした場面で発揮されます。暗号化していないファイルは、コピーされればそのまま読まれてしまいますが、暗号化しておけば、鍵を持たない相手の手に渡っても中身は守られます。
パソコンの紛失、USBメモリの置き忘れ、メールの誤送信、ランサムウェアによる持ち出しなど、入口の防御をすり抜けられても、データそのものを暗号化しておけば鍵のない相手には中身を渡さずに済みます。これがファイル暗号化の役割です。
ファイル暗号化の仕組み(AES・共通鍵と公開鍵)
暗号化は、暗号アルゴリズム(変換の計算手順)と鍵(変換に使う秘密の値)の組み合わせで成り立ちます。同じアルゴリズムでも、鍵が違えば結果は変わり、正しい鍵がなければ元に戻せません。暗号の強さは、アルゴリズムの堅牢さと、鍵を安全に管理できるかの両方で決まります。
暗号方式は、大きく共通鍵暗号と公開鍵暗号に分かれます。共通鍵暗号は暗号化と復号に同じ鍵を使う方式で、処理が速くデータ本体の暗号化に向きます。その代表がAES(Advanced Encryption Standard)で、日本でも国の「電子政府推奨暗号リスト(CRYPTREC暗号リスト)」に共通鍵暗号として掲載されている標準的な暗号技術です。
一方、公開鍵暗号(RSAなど)は暗号化用と復号用で異なる鍵を使い、署名や鍵のやり取りに用いられます。ファイル暗号化の製品では、データ本体をAESで高速に暗号化しつつ、鍵の受け渡しに公開鍵暗号を組み合わせる構成が一般的です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:電子政府における調達のために参照すべき暗号のリスト(CRYPTREC暗号リスト)|CRYPTREC(デジタル庁・総務省・経済産業省)(PDF)
パスワード保護・ファイル暗号化・ディスク暗号化の違い
「暗号化」と混同されやすい言葉に、パスワード保護とディスク暗号化があります。区別しておくと、後述の方式選びで迷いにくくなります。
- パスワード保護:ファイルを開く操作を制限する仕組み。単に閲覧を制限するだけのものと、パスワードをもとに鍵を作ってデータそのものを暗号化するものがあります。パスワード付きZIPは後者にあたりますが、方式によって強度に差があります。
- ファイル暗号化:個々のファイルやフォルダを暗号化する方式。ファイル単位で守れるため、送付・共有・持ち出しなど、ファイルがどこへ移動しても保護が付いて回ります。
- ディスク暗号化:ハードディスクやドライブ全体をまるごと暗号化する方式(BitLockerなど)。紛失・盗難時に強い一方、ログイン後は中身が平文として扱われるため、ログイン中のコピーや送付までは制御しません。
ディスク暗号化が「デバイスごと守る」のに対し、ファイル暗号化は「ファイルごと守る」点が違いです。社外へ渡すファイルや共有ファイルの保護には、ファイル単位で守れるファイル暗号化が適しています。
ファイル暗号化のメリット
ここからは、ファイル暗号化が具体的にどんな場面で役立つのかを整理します。いずれも「万一ファイルが第三者の手に渡っても中身を読ませない」という一点から生まれる効果です。
- 紛失・盗難が「情報漏えい」に直結しなくなる:暗号化していないノートPCやUSBメモリを紛失すると、拾った第三者にファイルをそのまま読まれてしまいます。暗号化してあれば鍵がなければ判読できないため、端末を失っても中身の流出という最悪の結果を避けられます。個人データの場合、高度な暗号化が施されていれば漏えい時の報告義務の扱いにも影響しうる点は後述します。
- 持ち出されても「読めるデータ」を渡さずに済む:ランサムウェアや不正アクセスは、データを盗み出して公開すると脅す手口が増えています。ファイルが暗号化されていれば、攻撃者が持ち出したのは鍵のない判読できないデータになり、公開・悪用のリスクを下げられます。
- 誤送信の一通が事故になりにくい:宛先を一つ間違えただけで機密情報が外部に届いてしまうメール誤送信でも、ファイルが暗号化され鍵が相手に渡っていなければ、受信者は中身を開けません。人的ミスをゼロにできなくても、被害の広がりを抑える保険になります。
- 取引先の情報を預かる責任に応えられる:受け取った図面・名簿・契約書などを暗号化して扱うことは、取引先から預かった情報を守る具体的な手立てになり、委託先としての信頼にもつながります。
ただし、これらは「ファイルの中身を読ませない」効果に限られます。誰がいつ開いたかの制御や、開いた後のコピー・印刷の制御までは、暗号化だけではカバーしきれない点に注意が必要です(この線引きは後の章で詳しく扱います)。

ファイル暗号化の方式と種類
ここからは、ファイルを暗号化する主な方式を整理します。無料でできる標準機能から有料の専用ソフトまで、対象・費用・強みと弱みには次のような違いがあります。
| 方式 | ZIPパスワード(圧縮+パスワード) | Windows EFS(暗号化ファイルシステム) | Officeのパスワード保護 | IRM/DRM(利用権限制御) | 専用のファイル暗号化ソフト |
|---|---|---|---|---|---|
| 暗号化の対象 | 個々のファイル・フォルダ | NTFS上のファイル・フォルダ | Word・Excel・PowerPoint文書 | ファイル(配布後も制御) | ファイル・フォルダ(自動暗号化) |
| 費用 | 無料(OS標準・圧縮ソフト) | 無料(Windowsの標準機能) | 無料(Officeの標準機能) | 有料(ライセンス・専用製品) | 有料 |
| 主な強み | 手軽で、受け取る側も特別なソフトなく開ける | OS標準で、ログオンユーザーには透過的に扱える | 文書単位で手軽に設定できる | 印刷・転送・コピー・有効期限まで制御でき、配布後も権限を失効できる | 自動暗号化・鍵や権限の一元管理・監査ログを備える |
| 主な弱み・注意点 | 従来方式(ZipCrypto)は強度が低い。AES対応ツールが望ましい。パスワードの受け渡し・管理が別途必要 | Homeエディションでは使えない。NTFS形式が前提。証明書(鍵)を失うと復号できない | パスワードを紛失すると回復できない。Web版では設定できない | 導入・運用の準備が必要 | コストと導入の手間がかかる |
| 向いている場面 | 一時的なファイルの受け渡し | 社内パソコンのローカルファイル保護 | 単一のOffice文書 | 社外に渡す機密文書の権限管理 | 全社的な運用・内部統制 |
無料の標準機能(ZIP・EFS・Office)は手軽に試せる一方、鍵やパスワードの管理を利用者に委ねるため、全社での運用や配布後の制御には向きません。反対に、専用ソフトやIRMは費用がかかる代わりに、自動暗号化や権限制御・監査といった運用面まで担えます。
IRMと専用ソフトは排他的な区分ではありません。法人向けの専用ファイル暗号化ソフトの多くはIRM(利用権限制御)の機能を備えており、上の表は「暗号化までか、配布後の権限制御まで担うか」と「無料の標準機能か、有料の製品か」という2つの軸で整理したものと捉えてください。
IRM/DRMとは(利用権限制御)
IRM(Information Rights Management)は、ファイルを暗号化したうえで、そのファイルに対する操作の権限まで制御する仕組みです。
Microsoftの公式説明でも、IRMを使うと機密情報が未承認のユーザーによって印刷・転送・コピーされるのを防ぐのに役立ち、送信先に関係なくコンテンツを制限したり、ファイルに有効期限を設定して一定期間の経過後に内容を表示できないようにしたりできる、と説明されています。
パスワード暗号化やEFSが「開けるかどうか」を守るのに対し、IRM/DRMは「開いた後に何ができるか(印刷・転送・コピー・期限)」まで踏み込んで制御でき、ファイルが外部に渡った後も権限を管理し続けられる点が特徴です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:Wordの Information Rights Management を使用してドキュメントへのアクセスを制限する|Microsoft Support(サポートページ)
無料でできるファイル暗号化の手順
ここからは、追加の費用をかけずに試せる代表的な手順を紹介します。まず手を動かして試したい場合の入口として活用してください。
Windows EFSでファイル・フォルダを暗号化する
Windowsの暗号化ファイルシステム(EFS)を使うと、ログオンしているユーザーだけが開けるようにファイルやフォルダを暗号化できます。操作は次の流れです。
- 対象のファイルまたはフォルダを右クリックし、「プロパティ」を開きます。
- 「全般」タブの「詳細設定」をクリックします。
- 「内容を暗号化してデータをセキュリティで保護する」にチェックを入れ、「OK」で適用します。
ただし、EFSはすべてのWindowsで使えるわけではありません。EFSはNTFS(Windows標準のファイル管理形式)上のファイルを暗号化する仕組みで、WindowsのHomeエディションでは利用できず、Pro・Enterprise・Educationなどのエディションが必要です。
Home版を使っている場合や、USBメモリがexFAT・FAT32形式の場合は、EFSでは暗号化できない点に注意してください。
出典・参考資料(2件)
- 出典:ファイル暗号化(暗号化ファイルシステム EFS)|Microsoft Learn(NTFSボリューム上のファイルを暗号化する仕組み。解説)
- 出典:File.Encrypt(String) メソッド(System.IO)|Microsoft Learn(Homeエディション非対応・NTFS必須を明記。API リファレンス)
Officeファイルにパスワードを設定して暗号化する
Word・Excel・PowerPointの文書は、Office標準の機能でパスワードを使って暗号化できます。デスクトップ版のOfficeで、「ファイル」→「情報」→「文書の保護」→「パスワードを使用して暗号化」の順に選び、パスワードを設定します。
この方法で注意したいのが、パスワードの管理です。Microsoftは、紛失または忘れたパスワードを取得できないと明記しており、パスワードを失うと文書を開けなくなります。また、Web版のWordではパスワードによる暗号化は利用できません。
出典・参考資料(1件)
- 出典:パスワードで文書を保護する|Microsoft Support(サポートページ)
ZIPファイルにパスワードを付けて暗号化する
ファイルを圧縮するときにパスワードを設定する方法も、手軽な選択肢です。エディションを問わず使え、Home版やOfficeが無い環境でもまず試せる入口になります。AES(AES-256など)に対応した圧縮ソフトを使う場合、基本的な流れは次のとおりです。
- AES暗号化に対応した圧縮ソフト(7-Zipなど)を用意します。
- 圧縮したいファイルやフォルダを選び、圧縮メニューを開きます。
- 暗号化方式でAES-256を選び、パスワードを設定して圧縮を実行します。
ただし、従来から使われてきたZipCrypto方式は強度が低いとされるため、暗号化方式にAESを選べるかを必ず確認してください。また次章で述べるとおり、パスワード付きZIPをメールで送る使い方には別の問題があります。
暗号化ファイルの復号(解除)方法と注意点
暗号化したファイルは、正しい鍵やパスワードを使えば元に戻せます。復号の方法は方式ごとに異なります。
- EFS:暗号化したユーザーがログオンしていれば、対象ファイルは自動的に読めます。暗号化を解除したい場合は、プロパティの「詳細設定」で「内容を暗号化してデータをセキュリティで保護する」のチェックを外します。
- Officeパスワード:文書を開く際に設定したパスワードを入力します。パスワードを外すには、「パスワードを使用して暗号化」でパスワード欄を空にして保存します。
- パスワード付きZIP:解凍時にパスワードを入力します。
いずれの方式でも共通する最大の注意点が、鍵やパスワードを失うと復号できなくなることです。前述のとおりOfficeのパスワードは紛失すると回復できず、EFSも暗号化に使う証明書(鍵)をバックアップせずに失うと、暗号化したファイルを開けなくなります。
無料の標準機能には、管理者が代わりに復旧する仕組みが標準では用意されていないため、鍵とパスワードの管理・バックアップの方法をあらかじめ決めておくことが欠かせません。
標準機能でファイル暗号化するときの限界と注意点
無料で使える標準機能は手軽ですが、業務で本格的に使おうとすると、いくつかの限界に突き当たります。「何から守れて、何からは守れないか」を押さえておきましょう。
- 鍵・パスワードの管理が属人的になりやすい:標準機能は利用者ごとの操作に依存するため、パスワードの使い回しや共有、暗号化のかけ忘れが起きやすく、全社での統制が効きにくくなります。
- 開いた後の操作までは制御できない:暗号化は「開けるかどうか」を守る技術です。正しく開けた人が、その後にコピー・印刷・転送することまでは、標準機能では防げません。配布後の権限制御にはIRM/DRMが必要です。
- 内部不正や過失は防ぎきれない:権限のある従業員による持ち出しや、復号したファイルを平文のまま保存してしまう過失など、暗号化だけではカバーしきれないリスクが残ります。
暗号化はあくまで打ち手の一つで、情報漏えいを防ぐには、原因ごとに技術面・運用面の対策を組み合わせる必要があります。次の記事では、企業が取るべき情報漏えい対策の全体像と、何から着手すべきかの優先順位を整理しています。
PPAP(パスワード付きZIPのメール送信)はなぜ問題か
パスワード付きZIPをメールで送り、そのパスワードを同じ経路で別送する方法は「PPAP」と呼ばれ、近年は避けるべき慣行とされています。政府も廃止に踏み切っており、当時のデジタル改革担当大臣(内閣府・内閣官房)は2020年11月の記者会見で、自動暗号化ZIPファイルの送信を同月26日から両府省で廃止すると表明しました。
会見では、この方式について「セキュリティ対策の観点からも、受け取る側の利便性の観点からも、適切なものではない」と述べています。
出典・参考資料(1件)
- 出典:平井内閣府特命担当大臣(デジタル改革担当)記者会見要旨 令和2年11月24日|内閣府(会見要旨)
セキュリティ上の問題として、暗号化されたZIPファイルはウイルス対策の検査をすり抜けやすい点が指摘されています。IPA(情報処理推進機構)は、添付ファイルが暗号化されていることから、メール配送経路上でのセキュリティ製品の検知・検疫をすり抜け、受信者の手元に攻撃メールが届いてしまう確率が高い、と注意を呼びかけています。
パスワードを同じメール経路で送れば、盗聴された際に暗号化ファイルと一緒に漏れてしまい、暗号化の意味が薄れます。加えてマルウェアの侵入口にもなりかねないため、機密ファイルの受け渡しには別の手段を検討することが望まれます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:相談急増/パスワード付きZIPファイルを使った攻撃の例(2020年9月2日)|IPA 独立行政法人 情報処理推進機構(注意喚起)
PPAPに代わる安全なファイルの受け渡し方法を具体的に検討したい場合は、メール経由のリスクと対策を整理した次の記事も参考になります。迷惑メール対策や添付ファイルの無害化とあわせて、誤送信・情報漏えいを防ぐ送信対策を製品別に比較しています。
ファイル暗号化ソフト・IRMの選び方と費用感
標準機能では運用が回らないと感じたら、専用のファイル暗号化ソフトやIRMの導入を検討する段階です。選ぶときは、次の観点を自社の状況に当てはめて確認すると、候補を絞り込みやすくなります。
- 暗号化の対象と自動化:特定のフォルダに保存しただけで自動的に暗号化されるか、対応するファイル形式やアプリケーション(Office・CAD・画像など)が業務に合うかを確認します。手作業に頼る方式は、かけ忘れの温床になります。
- 権限制御(IRM/DRM)の有無:社外に渡すファイルの印刷・転送・コピーや有効期限まで制御したい場合は、暗号化に加えてIRM/DRMを備えるかが分かれ目になります。
- 鍵管理と復旧の仕組み:鍵を組織で一元管理でき、担当者が退職したり鍵を失ったりしても管理者が復旧できるかは、標準機能との大きな違いです。
- 監査ログ・対応OS・提供形態:誰がいつ復号したかを記録できるか、社内の端末環境(Windows中心かMacを含むか)に対応するか、オンプレミスかクラウドかも確認します。
費用感は製品のタイプによって幅があります。端末単位で導入する買い切り型は比較的安価に始められ、公開されている例では、LB ファイルロック3 Proが10ライセンス38,000円(税別)から、InterSafe FileProtection(オンプレミス版)が1ライセンス8,040円(税抜・5〜99ライセンス)からと、数万円台から検討できます。
一方、全社的な自動暗号化・権限制御・鍵の一元管理まで担うIRM型やサーバー導入型の製品は、環境や台数に応じた見積もりとなるため「要問い合わせ」としている製品が中心です。相場観をつかみたい段階では、価格を公開している製品を起点に、必要な機能を足したときにどこまで費用が上がるかを各社に確認するとよいでしょう。
出典・参考資料(2件)
まずは無料の標準機能で守れる範囲を試したうえで、足りない部分(自動化・権限制御・鍵管理・監査)を補う製品を選べば、必要な機能に見合った費用で導入できます。
【比較表】主要なファイル暗号化ソフト・IRM製品
ここでは、法人向けに提供されている主要なファイル暗号化ソフト・IRM製品を、暗号化の対象・権限制御・鍵管理・対応環境などの観点で比較して整理します。料金や機能は変わることがあるため、導入時は各社の最新情報を確認してください。
| 比較項目 | DataClasys | FinalCode | 秘文 | D.AMO KE | InterSafe FileProtection | LB ファイルロック3 Pro |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供企業 | 株式会社データクレシス | デジタルアーツ株式会社 | 株式会社日立ソリューションズ | ペンタセキュリティ株式会社 | アルプス システム インテグレーション株式会社 | 株式会社ライフボート |
| 暗号化の対象 | ファイル(Office・CAD・PDM/PLM・DTPなど幅広いアプリに対応) | ファイル(Office・PDF。CADは有償オプション) | ファイル・フォルダ・ディスク暗号化+デバイス制御 | サーバー上のファイル・ディレクトリ(形式を問わず自動暗号化) | ファイル(指定フォルダで自動暗号化。Office・CAD等) | ファイル・フォルダー(拡張子を問わず) |
| 権限制御(IRM/DRM) | ● | ● | △(配布後の権限制御は秘文AE ContentsGate) | △(サーバー上のアクセス制御が中心) | ● | ×(暗号化・多要素認証が中心) |
| 鍵・ポリシーの一元管理 | ● | ● | ● | △(鍵管理はD.AMO KMS併用が前提) | ● | ×(中央管理サーバーを持たず端末単位) |
| 対応OS | Windows(Mac対応の記載なし) | Windows(macOS・iOS・Androidはブラウザービューで閲覧) | Windows(中核機能。macOSは資産管理オプションのみ) | Windows/Linux(サーバー向け) | Windows(日本語OSのみ) | Windows(日本語版のみ) |
| 提供形態 | オンプレミス/クラウド | クラウド/オンプレミス | クラウド/オンプレミス | オンプレミス(サーバー導入型) | オンプレミス/クラウド | 買い切りパッケージ(端末インストール型) |
| 費用感 | 要問い合わせ(公式は非公開) | 要問い合わせ(公式は非公開) | 一部公開(例: Endpoint Protection Service PC100台 160万円〜/年) | 要問い合わせ(公式は非公開) | 1ライセンス8,040円〜(税抜・5〜99・オンプレミス版) | 10ライセンス38,000円〜(税別・買い切り) |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
主要製品の個別紹介
比較表で取り上げた製品について、それぞれの特徴を紹介します。自社の課題(ファイル単位の保護か、配布後の権限制御か、手軽さか)に照らしながら読み進めてください。
1. DataClasys(株式会社データクレシス)

DataClasys(データクレシス)は、ファイルを暗号化したうえで利用権限を制御するIRM型のファイル暗号化システムです。暗号化したファイルは、社内外のどこへ移動しても鍵を持たない相手には開けず、閲覧・編集・印刷といった操作の権限も制御できます。Office文書からCADデータまで幅広いアプリケーションに対応し、鍵の情報とデータを分けて管理する設計をとっています。
料金は公開されておらず、要問い合わせとなっています。
2. FinalCode(デジタルアーツ株式会社)

i-FILTERなどのフィルタリング製品を提供するデジタルアーツが手がけるのが、IRM型のファイル暗号化ソリューションFinalCode(ファイナルコード)です。ファイルを暗号化して配布した後も、閲覧・編集・印刷などの権限を細かく設定でき、いったん渡したファイルを遠隔から使えなくするリモート消去や、誰がいつ開いたかの操作ログにも対応します。
クラウド版はISMAP(政府情報システム向けのセキュリティ評価制度)をはじめ複数の認証を取得しています。
料金は要問い合わせです。
3. 秘文(株式会社日立ソリューションズ)

秘文(ひぶん)は、1996年から提供されている国産の情報漏えい対策シリーズです。ファイルやフォルダの暗号化に加え、USBメモリなどへの持ち出し制御やデバイス制御まで含めて、エンドポイントの情報漏えい対策を幅広くカバーします。公式情報によると、導入実績は9,100社・1,036万ライセンス(2026年3月時点)にのぼります。
暗号化などの中核機能はWindows向けで、macOSは資産管理オプションでの対応が中心です。
4. D.AMO KE(ペンタセキュリティ株式会社)

暗号・認証技術を手がけるペンタセキュリティのファイル暗号化製品がD.AMO KEです。OSのカーネルレベルで暗号化を処理する方式を採用し、暗号化による性能への影響を抑える設計を特徴としています。アクセス制御や監査と組み合わせて運用でき、鍵の管理は同社の鍵管理製品D.AMO KMSと組み合わせて強化できます。料金は公開されていないため、詳細は問い合わせが必要です。
5. InterSafe FileProtection(アルプス システム インテグレーション株式会社)

Webフィルタリングなどで実績のあるアルプス システム インテグレーション(ALSI)が提供する、法人向けのファイル暗号化製品です。指定したフォルダに保存したファイルを自動で暗号化し、利用者に負担をかけずに暗号化を徹底できる点を打ち出しています。
オンプレミス版とクラウド版があり、オンプレミス版はライセンス単価が公開されている(5〜99ライセンスで1つあたり8,040円など、2026年時点)ため、費用の見当をつけやすいのも特徴です。
6. LB ファイルロック3 Pro(株式会社ライフボート)

LB ファイルロック3 Proは、AES 256bitでファイルやフォルダを暗号化できる買い切り型のソフトです。中央管理サーバーを持たず、端末単位で手軽に導入できるのが特徴で、多要素認証や、暗号化ファイルの宛先を指定する機能を備えます。価格は10ライセンスで38,000円(税別、2026年時点)からと公開されており、まずは限られた範囲で暗号化を始めたい場合の選択肢になります。
対応OSはWindowsです。
まとめ
ファイル暗号化は、ファイルの中身を鍵がなければ読めない状態に変え、万一の流出時にも情報を守るための対策です。まずはWindows EFSやOfficeのパスワード保護など、無料でできる標準機能で守れる範囲を試してみるのがよいでしょう。
そのうえで、鍵やパスワードの管理が属人的になる、開いた後のコピーや印刷まで制御したい、全社で暗号化を徹底したい、といった課題が見えてきたら、自動暗号化・権限制御(IRM/DRM)・鍵の一元管理・監査ログを備えた専用ソフトの導入を検討する段階です。無料の手段で足りない部分を見極めてから製品を選ぶことで、過不足のない投資につながります。
よくある質問(FAQ)
Q. ファイル暗号化とパスワード保護(パスワード付きZIP)は何が違いますか?
A. ファイル暗号化とパスワード保護の違いは、ファイルを「開いた後」まで保護が続くかどうかと、鍵の管理方法にあります。パスワード保護には、ファイルを開く操作を制限するだけのものと、パスワードから鍵を作ってデータそのものを暗号化するものがあり、パスワード付きZIPは後者にあたります。
ただし、いったん正しく開いてしまえば、その後のコピー・印刷・転送までは元の仕組みでは制御できず、パスワードの共有・管理も別途必要になります。外部に渡った後も利用権限を維持したい場合は、IRM(利用権限制御)のような仕組みが選択肢になります。
Q. 暗号化したファイルの鍵やパスワードを紛失した場合、元に戻せますか?
A. ファイル暗号化に使う鍵やパスワードを失うと、原則としてそのファイルは開けなくなります。方式によっては回復用のキーや管理者による復旧手段が用意されている場合もありますが、無料の標準機能では自力での復旧が難しいのが実情です。Officeのパスワードは紛失すると回復できず、Windows EFSも暗号化に使う証明書(鍵)をバックアップせずに失うと開けなくなります。
利用する仕組みに応じて、鍵・パスワードのバックアップや管理方法をあらかじめ決めておくことが欠かせません。
Q. 無料のファイル暗号化ソフトやオンライン暗号化サイトは安全ですか?
A. 無料のファイル暗号化ソフトやオンライン暗号化サイトは、用途によっては選択肢になりますが、業務で機密ファイルを扱うなら提供元と処理方式の確認が欠かせません。オンラインサービスには、ブラウザ内だけで処理するものや、暗号化したファイルをいったんサーバーに保存・共有するものなどがあり、データの取り扱いはサービスによって大きく異なります。
仕組みや管理体制を十分に確認できないサービスに機密ファイルを預けるのは避け、業務利用では運用実績や鍵の管理方法が明確な製品を選ぶのが安全です。
Q. PPAP(パスワード付きZIPのメール送信)の代わりに、どんな手段を使えばよいですか?
A. PPAPの代替としては、パスワードを同じメール経路で別送しなくて済む、クラウドストレージやファイル転送サービス、ビジネスチャットでの共有が主な選択肢です。政府も2020年11月に自動暗号化ZIPの送信を廃止しており(内閣府・内閣官房)、機密性の高いファイルは、アクセス権限やダウンロード期限を設定できる共有サービスや、配布後も権限を制御できるIRMを使う方が安全です。
パスワードを同じ経路で別送する方法は、盗聴時に一緒に漏れるうえ、暗号化されたファイルがウイルス検査をすり抜けやすい点が問題視されています。
Q. Windows Homeエディションでもファイル暗号化はできますか?
A. Windowsの標準機能であるEFS(暗号化ファイルシステム)は、Homeエディションでは利用できず、Pro・Enterprise・EducationなどのエディションとNTFS形式のドライブが必要です。Microsoftの公式ドキュメントも、EFSがHomeエディションでは使えず、ドライブがNTFS形式である必要があると明記しています。
Home版を使っている場合は、Officeのパスワード保護やAESに対応した圧縮ソフト、専用のファイル暗号化ソフトなど、エディションに依存しない方法を選ぶことになります。
出典・参考資料(2件)
- 出典:ファイル暗号化(暗号化ファイルシステム EFS)|Microsoft Learn(解説)
- 出典:File.Encrypt(String) メソッド(System.IO)|Microsoft Learn(Homeエディション非対応・NTFS必須を明記。API リファレンス)
Q. ファイル暗号化すれば、個人情報保護法上の漏えい報告義務は免除されますか?
A. ファイル暗号化をしていても、個人情報保護法上の漏えい等報告の義務がつねに免除されるわけではありません。ただし、漏えいした個人データに高度な暗号化などの措置が講じられ、第三者が内容を読み取ることが困難な場合などは、個人情報保護委員会への報告や本人への通知を要しないとされています。
この扱いには条件があります。電子政府推奨暗号リスト(CRYPTREC暗号リスト)やISO/IEC 18033などに掲載された暗号技術が適切に実装され、さらに復号鍵を分離して管理するなど、鍵が第三者に使われないよう措置が講じられていることが求められます。あくまで報告義務に関する例外であり、暗号化すれば法律上のすべての義務が免除されるわけではない点に注意してください。
出典・参考資料(1件)
- 出典:「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A(Q6-19)|個人情報保護委員会(Q&Aページ)
Q. ファイル暗号化は量子コンピュータで破られてしまいますか?
A. 量子コンピュータの影響は暗号の種類によって異なり、RSAや楕円曲線暗号などの公開鍵暗号は将来の大規模な量子コンピュータで安全性が大きく損なわれる可能性がある一方、AESなどの共通鍵暗号への影響は限定的と考えられています。
CRYPTRECのガイドラインは、公開鍵暗号についてはShorのアルゴリズムによって安全性が脅かされるとして耐量子計算機暗号(PQC)への移行が進められている一方、共通鍵暗号は十分な鍵長を確保することで安全性を維持しやすいとしています。ファイル暗号化で広く使われるAESが直ちに破られるわけではありませんが、今後のPQCへの移行動向は把握しておくとよいでしょう。
出典・参考資料(1件)
- 出典:暗号技術ガイドライン(耐量子計算機暗号)2024年度版|CRYPTREC(PDF)
法人向けサービスを課題別に探すならMCB FinTechカタログ
MCB FinTechカタログでは、決済・金融・バックオフィス領域の法人向けサービスを課題別に探し、気になるサービスの資料をまとめて請求できます。暗号化ソフトのほかの課題も、あわせてご確認ください。
MCB FinTechカタログに掲載しませんか?
MCB FinTechカタログでは、掲載企業様を募集しています。マネックスグループの金融実務ノウハウを活かした独自の評価軸と検索設計により、導入検討者が最適なサービスを効率的に発見できる法人向け比較プラットフォームです。掲載後は管理画面から料金表や導入事例を随時更新でき、常に最新の情報を訴求可能。まずは下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。













