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法人保険の損金算入ルールを解説|最高解約返戻率の区分別の損金割合・資産計上・仕訳例

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法人契約の生命保険や医療保険(第三分野保険)の保険料は、いくら損金に算入できるのでしょうか。役員保険をすでに契約している企業も、これから加入を検討している企業も、決算や仕訳で真っ先に確認したいのがこの点です。2019年(令和元年)の税制改正で、保険料の損金算入は最高解約返戻率に応じて制限されるようになりました。

本記事ではまず、最高解約返戻率の4区分ごとに保険料の何%を損金にでき、何%を資産計上するのかを1枚の早見表で示します。そのうえで、資産計上した分をいつ取り崩すのか、全額損金にできるケース(掛け捨て定期・30万円特例)はどんな条件かを整理します。保険種類別(定期・第三分野・養老・終身)の経理処理と仕訳も、法人税基本通達の区分ルールに沿って確認します。

あわせて、保険金や解約返戻金を受け取ったときの処理と、「法人保険の節税」が実際には課税の繰り延べにすぎない理由も、数字で確認します。自社の保険がどの区分に当てはまり、当期にいくら損金化できるのかを判断するための材料としてご活用ください。

法人保険の保険料はいくら損金算入できる?【最高解約返戻率の4区分・早見表】

まず結論です。保険期間が3年以上の定期保険・第三分野保険は、最高解約返戻率(保険期間を通じて解約返戻率が最も高くなる割合)が50%を超えると、返戻率の区分に応じて保険料の一部を資産計上しなければならず、その分は支払った期の損金になりません。区分ごとの資産計上割合と損金算入割合は次のとおりです。

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最高解約返戻率の区分別・損金算入割合50%以下50%超70%以下70%超85%以下85%超
資産計上期間なし保険期間の当初40%の期間保険期間の当初40%の期間原則、最高解約返戻率となる期間の終了日まで
資産計上割合0%(資産計上なし)40%60%当期分保険料 × 最高解約返戻率 × 90%(当初10年)/× 70%(11年目以降)
損金算入割合全額(原則、期間の経過に応じて損金)60%40%(いわゆる「4割損金」)資産計上額を差し引いた残額

区分の根拠は、法人税基本通達9-3-5の2に定められています。通達本文では資産計上する割合が定められ、損金算入割合はそこから逆算した残額(当期分の支払保険料 − 資産計上額)です。

法人が、自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする保険期間が3年以上の定期保険又は第三分野保険(…)で最高解約返戻率が50%を超えるものに加入して、その保険料を支払った場合には、当期分支払保険料の額については、次表に定める区分に応じ、それぞれ次により取り扱うものとする。

【50%超70%以下】資産計上額=当期分支払保険料の額に100分の40を乗じて計算した金額/【70%超85%以下】資産計上額=当期分支払保険料の額に100分の60を乗じて計算した金額/【85%超】資産計上額=当期分支払保険料の額に最高解約返戻率の100分の70(保険期間の開始の日から、10年を経過する日までは、100分の90)を乗じて計算した金額

出典:法人税基本通達9-3-5の2(定期保険及び第三分野保険に係る保険料)|国税庁

注意したいのが85%超の区分です。「当初10年は10%だけ損金、11年目以降は30%損金」と紹介されることがありますが、これは最高解約返戻率が100%のときの数値です。通達が定めているのは「当期分保険料 × 最高解約返戻率 × 90%(当初10年)/× 70%(11年目以降)を資産計上する」というルールで、損金割合は残額になります。

たとえば最高解約返戻率が90%なら、当初10年の資産計上は90%×90%=81%、損金は19%です。自社の返戻率をこの式に当てはめて計算しないと、損金化できる額を読み違えます。

最高解約返戻率が50%以下の保険は、9-3-5の2(50%超が対象)の適用を受けず、法人税基本通達9-3-5の原則に戻って、支払った保険料を原則として全額(期間の経過に応じて)損金に算入できます。掛け捨ての定期保険の多くはこの区分に入ります。

資産計上した保険料はいつ・どう取り崩して損金にするのか

ここからは、資産計上した保険料をいつ損金に振り替えるのかを確認します。資産計上した前払保険料は、契約期間中ずっと資産のままではなく、決められた「取崩期間」に均等に取り崩して損金にしていきます。50%超70%以下・70%超85%以下の区分では、時期の軸で次のように動きます。

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資産計上と取り崩しの時期(返戻率50%超85%以下)開始〜40%の期間(資産計上期間)40%経過〜75%経過の期間75%経過〜保険期間の終了
処理区分に応じた割合(40%または60%)を資産計上し、残りを損金算入資産計上も取り崩しもなく、当期分の保険料を全額損金算入当期分の保険料を全額損金にしつつ、資産計上の累計額を残りの期間で均等に取り崩して損金算入

誤解しやすいのは、取り崩しが始まるタイミングです。資産計上が終わる「40%経過」時点ではなく、「保険期間の75%相当期間を経過した後」から取り崩しが始まります。その間(40%〜75%)は資産計上も取り崩しもない期間で、保険料は全額損金です。通達はこの取り崩しを次のように定めています。

当該事業年度に次表の取崩期間がある場合には、当期分支払保険料の額(…資産に計上することとなる金額を除く。)を損金の額に算入するとともに、…資産に計上した金額の累積額を取崩期間(…)の経過に応じて均等に取り崩した金額のうち、当該事業年度に対応する金額を損金の額に算入する。

出典:法人税基本通達9-3-5の2(3)|国税庁

85%超の区分は、最高解約返戻率となる期間を過ぎ、解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間を経過した後から、保険期間の終了までに取り崩します。取り崩しが始まる具体的な時点は、保険会社が発行する設計書(解約返戻金の推移表)で解約返戻金がピークを迎える年度を確認すると把握できます。いずれの区分でも、資産計上した分は「なくなる」のではなく、後の期間に損金として戻ってくる点が重要です。

保険料を全額損金にできるケース(掛け捨て定期・30万円特例)

ここからは、資産計上が不要で保険料を全額損金にできるケースを整理します。大きく分けて「掛け捨ての定期保険・第三分野保険」と「30万円特例」の2つです。

掛け捨て(解約返戻金相当額がない)定期保険・第三分野保険

解約返戻金相当額がない、いわゆる掛け捨ての定期保険・第三分野保険は、最高解約返戻率が問題にならないため、支払った保険料を原則として全額損金に算入できます。法人税基本通達9-3-5は、保険金・給付金の受取人が法人の場合の原則を次のように定めています。

保険金又は給付金の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額は、原則として、期間の経過に応じて損金の額に算入する。

出典:法人税基本通達9-3-5(1)|国税庁

ただし、役員や部課長その他特定の使用人のみを被保険者とし、保険金の受取人をその遺族とする場合は、保険料が給与として扱われることがあります(9-3-5(2)ただし書き)。全額損金の前提として、被保険者と受取人の範囲は確認が必要です。

30万円特例の判定チェックリスト(9-3-5と9-3-5の2で条件が違う)

「30万円以下なら全額損金」という30万円特例には、じつは条件の異なる2種類があります。どちらに当てはまるかで判定基準が変わるため、混同すると自社の判定を誤ります。

①掛け捨て・短期払の定期保険・第三分野保険(法人税基本通達9-3-5 注2)——次の条件をすべて満たすと、支払った保険料を全額損金にできます。

  • 保険期間を通じて解約返戻金相当額がない(ごく少額の払戻金のある契約を含む)
  • 保険料の払込期間が保険期間より短い(短期払)
  • 一の被保険者につき、その事業年度に支払った保険料の合計額が30万円以下(同一被保険者で複数契約がある場合は合算)

…解約返戻金相当額のない短期払の定期保険又は第三分野保険(…)に加入した場合において、当該事業年度に支払った保険料の額(一の被保険者につき2以上の…保険に加入している場合にはそれぞれについて支払った保険料の額の合計額)が30万円以下であるものについて、その支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときには、これを認める。

出典:法人税基本通達9-3-5(注)2|国税庁

②高返戻率でも年換算保険料が少額な定期保険等(法人税基本通達9-3-5の2 ただし書き)——最高解約返戻率が高い保険でも、次の条件を満たせば9-3-5の原則(全額損金)で処理できます。

  • 最高解約返戻率が50%超70%以下
  • 一の被保険者につき、年換算保険料相当額(保険料の総額を保険期間の年数で割った金額)の合計額が30万円以下

通達の条文は「最高解約返戻率が70%以下」と定めていますが、返戻率50%以下の保険はそもそも9-3-5の原則で全額損金になり特例を持ち出す必要がないため、この②が実際に効いてくるのは50%超70%以下の区分です。

ただし、これらの保険のうち、最高解約返戻率が70%以下で、かつ、年換算保険料相当額(一の被保険者につき2以上の定期保険等に加入している場合にはそれぞれの年換算保険料相当額の合計額)が30万円以下の保険に係る保険料を支払った場合については、9−3−5の例によるものとする。

出典:法人税基本通達9-3-5の2 ただし書き|国税庁

2つの違いは、判定に使う金額です。①は「その年に支払った保険料の合計額」、②は「年換算保険料相当額(総額÷保険期間年数)の合計額」で判定します。たとえば5年分の保険料をまとめて前納するような契約では、①は支払った合計額で判定するため30万円を超えやすく、②は年数で割った金額で判定するため収まりやすい、といった差が出ます。自社の契約がどちらの類型かをまず見極めてから、対応する基準で判定してください。

【保険種類別】法人保険の経理処理と仕訳例

ここからは、保険種類別に経理処理と仕訳を確認します。定期保険・第三分野保険の区分別の割合は前掲の早見表のとおりなので、本節では実際の借方・貸方に落とし込みます。まず、保険種類ごとの損金算入の扱いを整理すると次のとおりです。

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保険種類別の損金算入の扱い定期保険第三分野保険(医療・がん)養老保険終身保険
損金算入の扱い最高解約返戻率の区分に応じる(50%以下は全額損金)定期保険と同じ区分ルール(掛け捨ては全額損金)ハーフタックスは2分の1損金(受取人の組み合わせによる)損金算入なし(全額を資産計上)
資産計上返戻率50%超で区分ごとに(40〜60%等)返戻率50%超で区分ごとに2分の1(保険料積立金)全額(保険料積立金)
根拠となる通達9-3-5・9-3-5の29-3-5・9-3-5の29-3-49-3節の個別規定の対象外(一般原則)
主な用途事業保障・役員退職金の準備経営者・従業員の医療保障福利厚生・退職金準備役員退職金の原資・事業承継

法人税基本通達9-3-4〜9-3-5の2をもとに作成。

定期保険(返戻率区分別の仕訳)

最高解約返戻率が50%以下なら、支払保険料の全額を損金として処理します。50%を超える場合は、区分に応じた割合を資産計上します。たとえば最高解約返戻率60%(50%超70%以下)の定期保険で、年間保険料が480,000円のケースでは、資産計上40%・損金60%となり、資産計上期間中の仕訳は次のようになります。

借方金額貸方金額
支払保険料(損金)288,000円現金預金480,000円
前払保険料(資産)192,000円

資産計上した前払保険料は、取崩期間(保険期間の75%経過後〜終了)に均等に取り崩して損金へ振り替えます。取崩期間の各年は、当期の保険料を全額損金にしつつ、それまで積み上げた前払保険料の累計額を残りの期間で按分した額を次のように振り替えます(累計額を仮に150,000円、取崩期間を残り5年とした場合の年間の振替)。

借方金額貸方金額
支払保険料(損金)30,000円前払保険料(資産)30,000円

この振替は、当期分の保険料そのものを損金に算入する仕訳とは別に行います。勘定科目名は「前払保険料」のほか「保険料積立金」などが用いられます。

85%超の区分は、資産計上する割合が返戻率に連動します。資産計上額と損金算入額が具体的にいくらになるかを見ておきましょう。最高解約返戻率90%・年間保険料1,000,000円のケースでは、当初10年間の資産計上額は「1,000,000円 × 90% × 90%=810,000円」、損金算入額は残りの190,000円です。

借方金額貸方金額
支払保険料(損金)190,000円現金預金1,000,000円
前払保険料(資産)810,000円

11年目以降は乗率が70%に下がり、資産計上額は「1,000,000円 × 90% × 70%=630,000円」、損金算入額は370,000円になります。同じ契約でも、経過年数によって損金にできる額が変わる点に注意してください。

借方金額貸方金額
支払保険料(損金)370,000円現金預金1,000,000円
前払保険料(資産)630,000円

積み上げた前払保険料は、前述の取り崩し期間にわたって均等に損金へ振り替えます。資産計上の累計額を仮に8,100,000円、取り崩し期間を残り9年とした場合、各年900,000円を次のように振り替えます。

借方金額貸方金額
支払保険料(損金)900,000円前払保険料(資産)900,000円

第三分野保険(医療保険・がん保険)の仕訳

医療保険・がん保険などの第三分野保険は、定期保険と同じく最高解約返戻率の区分ルール(9-3-5・9-3-5の2)に従います。したがって仕訳の考え方は定期保険と同じで、返戻率が50%以下なら全額損金、50%超なら区分に応じて資産計上します。掛け捨て型で解約返戻金相当額がなく、30万円特例(①または②)を満たせば全額損金にできます。

たとえば、解約返戻金相当額のない掛け捨ての法人向け医療保険で、年間保険料が120,000円のケースは、全額を損金に算入でき、仕訳は次のようにシンプルになります。

借方金額貸方金額
支払保険料(損金)120,000円現金預金120,000円

一方、最高解約返戻率が50%を超える貯蓄性のある第三分野保険は、定期保険と同じ区分に応じて前払保険料を資産計上します(仕訳の形は前掲の定期保険の例と同じ)。

第三分野特有の注意点として、保険期間が終身のタイプは、被保険者の年齢が116歳に達する日までを計算上の保険期間とみなして資産計上期間・取崩期間を計算します(法人税基本通達9-3-5(注)1・9-3-5の2(注)2)。終身払・短期払や返戻率の設計によって処理が変わるため、契約内容の確認が欠かせません。

出典・参考資料(1件)

養老保険(9-3-4・ハーフタックスプラン)の仕訳

養老保険は、死亡保険金と満期保険金(生存保険金)の受取人の組み合わせで処理が変わります(法人税基本通達9-3-4)。死亡保険金の受取人が被保険者の遺族、満期保険金の受取人が法人となる契約は、保険料の2分の1を資産計上し、残り2分の1を損金にできます。これがいわゆるハーフタックスプラン(福利厚生プラン)です。

死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、生存保険金の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額のうち、その2分の1に相当する金額は(1)により資産に計上し、残額は期間の経過に応じて損金の額に算入する。ただし、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該残額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。

出典:法人税基本通達9-3-4(3)|国税庁

年間保険料が1,000,000円のハーフタックスプランなら、仕訳は次のとおりです。

借方金額貸方金額
保険料積立金(資産)500,000円現金預金1,000,000円
福利厚生費(損金)500,000円

ただし、ハーフタックスの2分の1損金が認められるのは、原則として全従業員を対象にするなど普遍的な加入である場合です。役員や特定の従業員だけを被保険者にすると、損金にできるはずの部分が給与として扱われます。

終身保険の仕訳

終身保険は、養老保険(9-3-4)や定期保険・第三分野保険(9-3-5・9-3-5の2)のような種類別の専用通達の対象ではありません。解約返戻金が生じる貯蓄性の高い保険であるため、支払った保険料は損金にせず、全額を保険料積立金として資産計上するのが実務上の扱いです。したがって、契約者・受取人がともに法人の終身保険では、次のように全額を資産計上します。

借方金額貸方金額
保険料積立金(資産)1,000,000円現金預金1,000,000円

終身保険は損金算入による当期の節税効果はありませんが、解約返戻金を役員退職金の原資などに充てる資産としての性格を持ちます。

保険金・解約返戻金の受取時の処理と「課税の繰り延べ」

ここまでは保険料を支払うときの処理でしたが、保険金や解約返戻金を受け取るときの処理も押さえておく必要があります。資産計上した前払保険料や保険料積立金は、契約が終了する(保険事故の発生・解約・失効)ときまで資産に計上され続け、受取時に取り崩されます。

受け取った解約返戻金や保険金と、それまで資産計上してきた累計額との差額は、その事業年度の益金(雑収入)または損金(雑損失)になります。たとえば資産計上の累計額が3,000,000円の契約を解約し、解約返戻金が3,500,000円だった場合、差額の500,000円が雑収入として益金に算入され、法人税の課税対象になります。このときの仕訳は次のとおりです。

借方金額貸方金額
現金預金3,500,000円前払保険料(資産)3,000,000円
雑収入(益金)500,000円

ここが、法人保険の「節税」の実態です。支払時に損金へ算入して一時的に税負担を軽くしても、受取時にはこれまで損金にしてきた分が益金となって戻り、課税されます。法人保険による節税は税金が消える仕組みではなく、課税のタイミングを将来へ先送りする「課税の繰り延べ」にすぎないということです。

繰り延べた課税に備え、解約返戻金を役員退職金の支給など損金となる支出に合わせて受け取る出口戦略を立てておくことが重要です。

被保険者に万一のことがあり死亡保険金を受け取る場合は、資産計上額との差額の処理に加えて、遺族へ支給する弔慰金の損金算入や事業承継への備えも論点になります。死亡保険金を受け取ったときの税務・経理処理は、以下の記事で詳しく解説しています。

2019年(令和元年)改正で何が変わったのか(改正前後の比較)

ここまで説明してきた最高解約返戻率による区分ルールは、2019年(令和元年)の税制改正で導入されたものです。改正前は、返戻率が高い「節税保険」でも保険料を全額損金にできる商品があり、支払時に大きく損金を計上する節税スキームが広がっていました。この繰り延べ型の節税を抑制するために設けられたのが、現在の区分ルールです。

適用開始日は保険の種類ではなく、契約日で決まります。国税庁のFAQは次のように定めています。

…令和元年7月8日以後の契約に係る定期保険又は第三分野保険の保険料については改正後の取扱いが適用されます(解約返戻金相当額のない短期払の定期保険又は第三分野保険の保険料については、令和元年10月8日以後の契約に係るものについて、改正後の取扱いが適用されます。)。

出典:定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ|国税庁

ここまでを整理すると、定期保険・第三分野保険はどちらも2019年7月8日以後の契約から新ルールの対象です。掛け捨て・短期払の30万円特例(前述①)だけは2019年10月8日以後の契約に適用されます。「第三分野は10月8日から」と誤解されることがありますが、正しくは第三分野も7月8日以後が原則で、10月8日は短期払の掛け捨てに限った日付です。

改正前に契約した保険は従前の取扱いが続くため、自社の契約日を確認することが処理の出発点になります。

損金算入・区分判定を踏まえて自社に合う設計を相談するには

自社の保険がどの区分に当てはまるか、30万円特例の①・②のどちらで判定するか、といった個別の判断は、契約内容(最高解約返戻率・払込期間・被保険者と受取人の範囲)を1件ずつ確認する必要があります。これから加入するなら、全額損金にできる掛け捨て定期や30万円特例の枠に収まる設計を選べるかも検討ポイントになります。

これから加入する法人保険を具体的に比べたい場合は、おすすめの法人保険商品や法人医療保険の選び方、それぞれのメリット・デメリットを整理した以下の記事が参考になります。損金算入のルールを踏まえて商品を選ぶ際にご覧ください。

すでに加入している保険の当期の処理を確定したい場合は、本記事の早見表で自社の区分を判定したうえで、最高解約返戻率の区分・資産計上と取り崩しの時期・30万円特例への該当を顧問税理士に確認すると確実です。契約内容によって処理が分かれるため、証券や設計書を手元に置いて確認するとスムーズです。

複数の商品を横並びで比べて自社に合う設計を選びたい場合は、上記の比較記事とあわせて、MCB FinTechカタログで法人向けのサービスを課題別に探せます。いずれの場合も、最終的な税務処理は顧問税理士に確認することが前提になります。

まとめ

法人契約の定期保険・第三分野保険の保険料は、最高解約返戻率が50%を超えると区分に応じて資産計上が必要になり、全額を支払時の損金にはできません。50%以下や掛け捨て、30万円特例に当てはまる契約は全額損金にできますが、その判定基準は通達で細かく定められています。

資産計上した分は取崩期間に損金へ戻り、受取時には課税されるため、法人保険の節税は「課税の繰り延べ」であることを踏まえて出口まで設計することが大切です。まずは自社の契約日と最高解約返戻率を確認し、本記事の早見表と照らし合わせて当期の損金額を試算してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 最高解約返戻率とは何ですか?どこで確認できますか?

A. 最高解約返戻率とは、保険期間を通じて解約返戻率(その時点の解約返戻金 ÷ それまでに支払った保険料の累計)が最も高くなるときの割合のことです。法人契約の定期保険・第三分野保険では、この率が50%を超えるか、また50%超70%以下・70%超85%以下・85%超のどの区分に入るかで、保険料の損金算入割合が決まります。

自社の契約の最高解約返戻率は、保険会社が発行する設計書(ご契約のしおり)や解約返戻金の推移表で確認できます。記載が見当たらない場合は、契約している保険会社・代理店に問い合わせれば確認できます。

Q. 法人保険の「30万円特例」とは何ですか?

A. 30万円特例とは、一定の要件を満たす定期保険・第三分野保険の保険料を、資産計上せず支払った期に全額損金へ算入できる例外扱いのことです。条件の異なる2種類があり、混同しないよう注意が必要です。

1つは、解約返戻金相当額のない短期払の保険で、一の被保険者につきその事業年度に支払った保険料の合計額が30万円以下のもの(法人税基本通達9-3-5 注2)。もう1つは、最高解約返戻率が50%超70%以下で、一の被保険者につき年換算保険料相当額(保険料の総額 ÷ 保険期間の年数)の合計額が30万円以下のもの(同9-3-5の2 ただし書き)です。

判定に使う金額が「支払った保険料の合計額」か「年換算保険料相当額」かで異なるため、自社の契約がどちらの類型かを見極めてから判定してください。

出典・参考資料(1件)

Q. 役員だけを被保険者にした法人保険の保険料も損金にできますか?

A. 役員だけを被保険者にした法人保険でも、保険金の受取人が法人であれば、最高解約返戻率の区分ルールに従って損金算入できます。一方、保険金の受取人を被保険者の遺族とし、役員や部課長その他特定の使用人のみを被保険者としている場合は、損金にできるはずの保険料が被保険者への給与として扱われます(法人税基本通達9-3-5(2)、養老保険のハーフタックスは9-3-4(3)ただし書き)。

全額損金やハーフタックスの2分の1損金を見込む場合は、被保険者と受取人の範囲、そして加入が特定の人に偏らず普遍的かどうかを必ず確認してください。

出典・参考資料(1件)

Q. 2019年の税制改正より前に契約した法人保険は、今も改正前のルールで処理できますか?

A. 2019年(令和元年)改正の区分ルールは施行日以後の契約から適用されるため、それより前に契約した法人保険は従前の取扱いを続けられます。適用開始日は契約日で決まり、定期保険・第三分野保険はどちらも2019年7月8日以後の契約が新ルールの対象です(解約返戻金相当額のない短期払の掛け捨て=30万円特例①は2019年10月8日以後の契約から)。

それより前に契約した保険は契約時のルールで経理処理を継続するため、まずは自社の契約日を確認することが処理の出発点になります。

出典・参考資料(1件)

Q. 法人契約の医療保険・がん保険(第三分野保険)の保険料も損金算入できますか?

A. 医療保険・がん保険などの第三分野保険の保険料も、定期保険と同じ最高解約返戻率の区分ルール(法人税基本通達9-3-5・9-3-5の2)で損金算入します。最高解約返戻率が50%以下や掛け捨てなら全額損金、50%超なら区分に応じて資産計上します。

ただし保険期間が終身のタイプは、被保険者の年齢が116歳に達する日までを計算上の保険期間とみなして資産計上期間・取崩期間を計算する点に注意が必要です。掛け捨てで解約返戻金相当額がなく30万円特例を満たす契約であれば、全額損金にできます。

出典・参考資料(1件)

Q. 法人保険で節税できると聞きましたが、注意すべき点はありますか?

A. 法人保険による「節税」は税金が消える仕組みではなく、課税のタイミングを将来へ先送りする「課税の繰り延べ」にすぎない点に注意が必要です。支払時に損金へ算入して税負担を軽くしても、解約返戻金や保険金を受け取るときに資産計上額との差額が益金となって課税されます。

加えて、高額な保険料は資金繰りを圧迫しやすく、税制や通達の見直しで扱いが変わるリスクもあります。受け取った資金を役員退職金の支給など損金となる支出に合わせる出口戦略まで含めて設計し、目先の損金額だけで加入を判断しないことが大切です。

Q. 資産計上している法人保険を途中で解約した場合、資産計上額はどう処理しますか?

A. 中途解約したときは、それまで資産計上してきた前払保険料(保険料積立金)の累計額を取り崩し、受け取った解約返戻金との差額を雑収入(益金)または雑損失(損金)として処理します。解約返戻金が資産計上累計額を上回れば差額が益金、下回れば差額が損金です。取崩期間の途中で解約した場合も、その時点での資産計上残高をまとめて取り崩す形になります。

解約のタイミングによって益金・損金の額が変わり、当期の課税所得に影響するため、解約前に解約返戻金の見込み額と資産計上残高を確認しておくと計画的に処理できます。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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