自社でネットショップを立ち上げたい、あるいは既存のECサイトを乗り換えたいと考えたとき、比較記事やベンダー資料で「SaaS型EC」という言葉を目にした方は多いはずです。
SaaS型ECは、クラウド上に用意されたECシステムをインターネット経由で利用する構築方式です。サーバーの用意やシステム開発が不要で、初期費用0円〜・最短即日で開設できるサービスもあることから、EC構築で広く使われる選択肢のひとつになっています。
本記事では、SaaS型ECの仕組みを結論から整理したうえで、ASP・パッケージ・オープンソース・フルスクラッチ・ECモールといった他の構築方式との違い・費用の目安・代表的なサービスまでを解説します。デメリットは、どこまで自由が利かないのかと現実的な回避策まで具体的に扱います。
読み終えたときに、SaaS型ECが自社に向くのか、それとも別の方式を検討すべきかの当たりが付く状態を目指します。構築方式の全体像をつかんだうえで、具体的なサービス比較へ進んでいきましょう。
目次
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SaaS型ECとは?仕組みをわかりやすく解説
SaaS型ECとは、クラウド上に用意されたECシステムをインターネット経由で利用し、サーバーの構築やシステム開発をせずにECサイトを開設・運用できる構築方式です。「SaaS」はSoftware as a Service(サービスとしてのソフトウェア)の略で、ソフトウェアを購入・導入するのではなく、必要な機能をネット越しに利用する提供形態を指します。
SaaS型ECでは、サービス提供事業者(ベンダー)が1つのシステムを複数の利用企業で共有する「マルチテナント」と呼ばれる仕組みでサービスを提供します。利用企業は自社専用の管理画面から商品登録・受注管理・顧客対応などを行い、その裏側にあるサーバー・インフラ・システムそのものはベンダーが保有・運用します。
この構造のため、システムのアップデートやセキュリティ対策、障害対応といった運用の大部分をベンダーが担います。利用企業は月額利用料(サブスクリプション)を支払う形で、専門知識やインフラを自前で抱えずにEC運営に集中できます。
利用企業とベンダーの役割分担を図にすると、次のようになります。

総務省の情報通信白書も、クラウドを「データやアプリケーション等のコンピューター資源をネットワーク経由で利用する仕組み」と説明しています。SaaS型ECは、このクラウドの仕組みをEC領域に適用したものと理解できます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:平成30年版 情報通信白書「クラウドサービスの概要」|総務省(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd133210.html)
SaaS型ECは「ASP型」「クラウドEC」と呼ばれることもあります。厳密には成り立ちが異なる言葉ですが、実務上は「ベンダーがクラウドで提供するECシステムを、ネット経由で使う方式」としてほぼ同じ意味で扱われるのが一般的です。
本記事でも同じ系統の構築方式として扱い、特に大規模・高機能なものを慣習的に「クラウドEC」と呼び分ける場合がある点だけ補足しておきます。次章では、この方式が他の構築方式と何がどう違うのかを整理します。
SaaS型ECと他の構築方式(ASP・パッケージ・オープンソース・フルスクラッチ・ECモール)の違い
ここからは、SaaS型ECと他の構築方式の違いを整理します。ECサイトの構築方式は大きく分けて、SaaS型(ASP型)・ECパッケージ・オープンソース・フルスクラッチ・ECモールの5つに分類できます。まずは初期費用・月額費用・導入期間・カスタマイズ性・保守運用の負担・向く事業規模を一覧で比較します。
| 構築方式の比較 | 初期費用の目安 | 月額費用の目安 | 導入期間の目安 | カスタマイズ性 | 保守・運用の負担 | 向く事業規模 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| SaaS型(ASP・クラウドEC) | 0円〜数十万円 | 0円〜数十万円 | 即日〜1か月程度 | 標準機能の範囲+一部拡張 | ベンダーが大部分を負担 | 個人〜大規模まで(プラン次第) |
| ECパッケージ | 数百万円〜 | 10万円前後〜 | 3か月〜半年程度 | 高い(要開発費) | 自社・ベンダーで分担 | 中堅〜大規模 |
| オープンソース | 0円(ソフトは無料)+構築費 | サーバー・保守費が別途 | 1か月〜数か月 | 高い(技術力が前提) | 自社で全面的に負担 | 技術リソースのある企業 |
| フルスクラッチ | 数千万円〜 | 保守費が高額 | 半年〜1年以上 | 制限なし(自由設計) | 自社で全面的に負担 | 大規模・独自要件の企業 |
| ECモール | 無料〜数万円 | 出店料・売上手数料 | 数時間〜数日 | 低い(モールの枠内) | モール運営者が負担 | 集客を優先する事業者 |
※各方式の費用・期間は代表的な相場の目安です。実際の金額はサービス・要件により異なります。
SaaS型は、初期費用・運用負担を抑えて早く始めたい企業に向く方式です。一方で、独自の業務フローや基幹システムとの複雑な連携を最優先するなら、カスタマイズの自由度が高いパッケージやフルスクラッチが選択肢に入ります。以下では、特に混同されやすい対比を補足します。
SaaS型とASPの違い
ASP(Application Service Provider)は、事業者が提供するアプリケーションをネット経由で利用する仕組みで、SaaSと重なる概念です。歴史的にはASPが先に広まり、その後に生まれたSaaSはマルチテナント構造やカスタマイズ・拡張性を強めた発展形と位置づけられます。
ただし、現在のEC業界では両者を明確に区別せず、「ASP型カート」「SaaS型EC」をほぼ同義で使うケースがほとんどです。用語の違いよりも、各サービスの機能・拡張性・料金で比較するほうが実務的です。
SaaS型とパッケージ・フルスクラッチの違い
ECパッケージは、ECに必要な機能をまとめたソフトウェアを自社サーバーやクラウドに導入し、要件に合わせて開発・カスタマイズする方式です。フルスクラッチは、ゼロからシステムを独自開発する方式を指します。いずれもカスタマイズの自由度は高い一方、初期費用が数百万円〜数千万円規模になり、導入にも数か月〜1年以上かかります。
SaaS型は、あらかじめ用意された標準機能を使う代わりに、費用と期間を大きく抑えられます。「独自要件をとことん作り込みたいか」「早く・安く始めたいか」が、両者を分ける最初の判断軸になります。
このほか、無料で使える代わりにサーバー用意や保守を自社で担うオープンソース、楽天市場やAmazonなどに出店するECモールも構築方式の選択肢です。オープンソースは技術リソースのある企業向け、ECモールは自社サイトを持たずモールの集客力を使いたい場合の選択肢という位置づけになります。
独自要件の作り込みを優先してECパッケージ側を検討する場合は、以下の記事で中小〜大規模向けの製品の選び方と料金相場を比較できます。
SaaS型ECのメリット
ここからは、SaaS型ECの主なメリットを4つの観点で解説します。低コスト・短期導入・運用の委託・拡張性という、他方式にはない強みがあります。
初期費用・ランニングコストを抑えて始められる
SaaS型ECは、サーバーやシステムをベンダーが保有するため、自社でインフラを用意する必要がありません。無料プランを持つサービスなら初期費用・月額費用0円で開設でき、有料プランでも月額数千円〜数万円で運用できるケースが中心です。まとまった初期投資が難しい段階でも、売上に応じてプランを切り替えながら始められます。
短期間で導入できる
標準機能がそろっているため、システム開発を待たずにECサイトを立ち上げられます。デザインテンプレートや決済機能が用意されており、商品登録や初期設定を済ませれば、最短で即日〜数日、通常でも1か月程度で公開できます。市場投入までのスピードを重視する事業者に適しています。
保守・更新・セキュリティをベンダーに任せられる
システムのバージョンアップやセキュリティパッチの適用、サーバー監視といった運用作業をベンダーが担います。ECサイトはクレジットカード情報など機微な個人情報を扱うため、セキュリティは軽視できません。多くのSaaS型ECは、カード情報の非保持化やクレジットカード業界のセキュリティ基準「PCI DSS」に準拠した決済環境を標準で提供します。
IPA(情報処理推進機構)も「ECサイト構築・運用セキュリティガイドライン」で通信の暗号化やカード情報の適切な取り扱いを求めており、SaaS型はこうした対策をベンダー側でまとめて実施できる点が強みです。
出典・参考資料(2件)
- 出典:ECサイト構築・運用セキュリティガイドライン|独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)(https://www.ipa.go.jp/security/guide/vuln/guideforecsite.html)
- 参考資料:PCI DSS|PCI Security Standards Council(https://www.pcisecuritystandards.org/standards/pci-dss/)
事業規模の拡大に合わせて拡張できる
アクセス集中時のサーバー増強はベンダー側で対応されるため、セール時などの負荷にも耐えやすい設計です。売上や商品数の増加に応じて上位プランへ移行したり、外部アプリやAPI連携で機能を追加したりでき、スモールスタートから成長段階まで同じ基盤で運用を続けられます。
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SaaS型ECのデメリットと対策
メリットの多いSaaS型ECですが、標準機能を共有する仕組みゆえの制約もあります。ここでは「どこまで自由が利かないのか」を具体的に示したうえで、現実的な回避策までセットで解説します。
カスタマイズ・外部連携の制約と回避策
SaaS型ECは、ベンダーが用意した標準機能の範囲で運用するため、独自の画面設計や特殊な業務フロー、既存の基幹システムとの複雑なデータ連携をそのまま実現できない場合があります。たとえば、受注データを自社独自の在庫管理システムとリアルタイムに双方向連携させたい、といった要件は、標準機能だけでは対応しきれないことがあります。
回避策としては、公式が提供するAPIやアプリ(拡張機能)の活用が現実的です。多くのSaaS型ECはREST APIやWebhook(外部システムに変更を自動で通知する仕組み)を公開しており、外部システムとの連携やアプリマーケットプレイスからの機能追加が可能です。フロント表示の自由度を高めたい場合は、管理機能とサイト表示を分離する「ヘッドレスコマース」に対応したサービスを選ぶ選択肢もあります。
導入前に、必要な連携が標準機能・API・アプリのどれで実現できるかを確認しておくと、後戻りを防げます。
ベンダーロックイン・仕様変更への追従と回避策
システムをベンダーに依存するため、将来的に他サービスへ乗り換える際にデータ移行が容易でない、ベンダー側の仕様変更やサービス終了の影響を受ける、といったリスク(ベンダーロックイン)があります。また、機能のアップデートがベンダー主導で行われるため、自社の運用フローを合わせる必要が生じることもあります。
回避策として、契約前に商品・顧客・受注データのエクスポート機能(CSV出力など)の有無を確認しておくと、乗り換え時のリスクを下げられます。サービスの稼働保証(SLA)やサポート体制、これまでの運営実績・導入企業数もあわせて確認し、長期的に安心して使える提供事業者かを見極めることが重要です。仕様変更については、リリースノートの定期的な確認と、運用フローを柔軟に見直せる体制づくりで影響を抑えられます。
SaaS型ECの費用相場と料金体系
ここからは、SaaS型ECの費用の考え方を、料金帯ごとの傾向で整理します。個社ごとの初期費用・月額・決済手数料は次章の比較表にまとめているので、ここでは全体の相場観と注意点を押さえてください。SaaS型ECの費用は、大きく「無料・スモール向け」「中堅向けの有料プラン」「大規模向けのクラウドEC」の3層に分かれる傾向があります。
- 無料・スモール向け:初期費用・月額費用0円で始められ、商品が売れたときの決済手数料(プランや決済手段により異なり、数%台)のみで運用できるプランが中心です。
- 中堅向けの有料プラン:初期費用0〜2万円台、月額数千円〜6万円台が目安です。月額を負担する代わりに決済手数料が3%台に下がる料金設計が多く見られます。
- 大規模向けのクラウドEC:初期費用が数十万〜数百万円、月額が十数万〜数十万円規模になります。要件に応じて料金が大きく変わるため、公式サイトで料金を公開せず問い合わせ対応とするサービスも少なくありません。
料金は改定されることがあるため、導入前には必ず各社公式の最新情報を確認してください。次章の比較表の金額はいずれも2026年9月時点で各社公式が公開している目安です。
また、月額・初期費用のほかに見落としやすい「隠れコスト」にも注意が必要です。決済手数料、アプリやテーマの追加費用、デザインの外部委託費、運用にかかる人件費などを含めた総保有コスト(TCO)で比較すると、実態に近い判断ができます。
代表的なSaaS型ECサービス
ここからは、代表的なSaaS型ECサービスを、料金帯・対象規模の観点から紹介します。まずは主要サービスの初期費用・月額費用・決済手数料を一覧で比較します。
| サービス名 | BASE | STORES | カラーミーショップ | Shopify | MakeShop | futureshop | ebisumart | ecforce |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供会社 | BASE株式会社 | STORES株式会社 | GMOペパボ株式会社 | Shopify Inc. | GMOメイクショップ株式会社 | 株式会社フューチャーショップ | 株式会社インターファクトリー | 株式会社SUPER STUDIO |
| タイプ | 無料ASP | 無料ASP | 有料ASP | 有料ASP | 有料ASP | 有料ASP | 大規模クラウドEC | 大規模クラウドEC |
| 初期費用 | 0円 | 0円 | 3,300円〜 | 0円 | 11,000円〜 | 22,000円〜 | 300万円〜 | 要お問い合わせ |
| 月額費用 | 0円〜 | 0円〜 | 4,950円〜 | 3,650円〜 | 11,688円〜(24ヶ月契約時) | 27,000円〜 | 25万円程度〜 | 要お問い合わせ |
| 決済手数料 | 3.6%+40円〜 | 5.5%〜 | 3.4%〜 | 3.55%〜 | 3.14%〜3.19% | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
| 特徴 | 個人〜小規模向け 固定費0円で開設でき、越境EC機能を標準搭載 | 個人〜小規模向け 決済・POSレジ・予約を1アカウントで連携 | 小〜中規模向け 月商規模別の4段階プラン、HTML・CSS編集で自由なデザイン | 小規模〜グローバル展開向け 多言語・多通貨を標準搭載、豊富なアプリ拡張 | 中小〜中堅向け 商品登録数無制限、BtoB対応、複数店舗割引 | 中〜大規模ブランド向け 商品登録数で5段階、CRM・OMO対応に強み | 大規模・複雑要件向け 豊富なAPIとカスタマイズ性、自動バージョンアップ | D2C・単品リピート通販向け CRM・LTV最大化のマーケティング機能が充実 |
| 詳細情報 | カタログで詳細を見る | カタログで詳細を見る | カタログで詳細を見る | 公式サイト | カタログで詳細を見る | カタログで詳細を見る | カタログで詳細を見る | カタログで詳細を見る |
※料金は2026年9月時点の各社公式サイトに基づく目安です。初期費用・月額費用・決済手数料は選択するプラン・オプションにより異なり、プラン内容や料金は改定されることがあります。導入前に必ず各社公式の最新情報をご確認ください。
それぞれの特徴を、料金帯ごとに整理します。自社の事業規模と照らし合わせながら候補を絞り込んでみてください。
無料で始められるサービス(BASE・STORES)
BASEは、初期費用・月額費用0円のスタンダードプランを軸に、決済・在庫管理・発送管理・集客機能を1つの管理画面で完結できるサービスです。商品が売れるまで固定費が発生しない仕組みのため、これから初めてネットショップを開く事業者でもリスクを抑えて始められます。
STORESも同様に、フリープランは初期費用・月額費用0円で、決済手数料のみで運用可能です。ネットショップに加え、キャッシュレス決済やPOSレジ、予約システムを1アカウントで連携できる点が特徴です。
中小〜中堅向けの有料ASP(カラーミーショップ・Shopify・MakeShop・futureshop)
カラーミーショップは、月商規模に応じた4プラン構成で、HTML・CSSの編集による自由なデザインカスタマイズに対応します。Shopifyは、多言語・多通貨に対応した世界的なプラットフォームで、豊富なアプリと拡張性を持ち、越境ECや将来的なグローバル展開を視野に入れる事業者に向きます。
MakeShopは、商品登録数が無制限で、HTML・CSS編集にも対応する国産の有料ASPです。futureshopは、商品登録数の規模に応じて料金が段階的に設定され、CRM機能やアパレル業界向け機能、OMO(実店舗とネットの在庫・顧客をつなぐ取り組み)対応に強みを持ちます。
大規模・複雑要件向けのクラウドEC(ebisumart・ecforce)
ebisumartは、高いカスタマイズ性と豊富なAPI連携を備えた大規模向けのクラウドECで、複雑な要件や年商規模の大きい事業者に対応します。システムは自動でバージョンアップされ、常に最新の状態で利用できる点が特徴です。
ecforceは、D2C(メーカーが消費者に直接販売するモデル)・単品リピート通販に強く、LTV(顧客生涯価値)最大化に向けたマーケティング機能を充実させたクラウドECです。定期購入やCRM施策を軸に売上を伸ばしたい事業者に適しています。
ここで取り上げたのは代表的なサービスの一部です。費用・構築方式・事業規模といった観点でより多くのECカートシステムを横並びで比較し、自社に合う一社を絞り込みたい場合は、以下の記事で選び方まで詳しく解説しています。
ECカートシステムおすすめ比較26選|費用・構築方式・事業規模で選ぶ
自社でネットショップを立ち上げよう、あるいは今のカートから乗り換えようと考えたとき、最初にぶつかるのが「ECカートシステムの種類が多すぎて、どれを選べばよいか分からない」という壁です。月額数千円で始められるものから、初期費用が数百万円規模に…
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自社にSaaS型ECが向くか(選定時に確認すべきポイント)
最後に、自社にSaaS型ECが向くかを判断する軸と、サービス選定時に確認すべきポイントを整理します。
自社にSaaS型ECが向くかの判断軸
SaaS型ECは、次のような条件に当てはまる事業者に向いています。判断の目安として活用してください。
- 初期費用や運用負担を抑えて早く始めたい:インフラや開発リソースを自社で抱えず、標準機能でスピーディに立ち上げたい場合に適します。
- 専任のシステム担当者を置きにくい:保守・更新・セキュリティをベンダーに任せられるため、少人数の体制でも運用を続けられます。
- 標準機能で要件の大半をまかなえる:一般的なEC運営に必要な機能はそろっているため、極端に特殊な業務フローがなければ十分に対応できます。
具体的な場面に当てはめると、まず小さく早く始めたい個人・小規模の事業者や、実店舗の販売をオンラインにも広げたい段階の事業者には、無料〜低額から使えるSaaS型が有力な候補になります。
事業が育ち、独自の販促施策や基幹システムとの連携といった要件が増えてきた中〜大規模の事業者では、上位プランのSaaS型が選択肢になります。前述のパッケージやオープンソースも並べて比較すれば、規模と要件に合う方式を絞り込めます。
一方で、独自の業務フローを細部まで作り込みたい、基幹システムと密に連携させたい、といった要件が中心の場合は、カスタマイズの自由度が高いパッケージやフルスクラッチも比較対象に含めると、判断を誤りにくくなります。
選定時に確認すべきポイント
SaaS型ECのサービスを比較する際は、次の観点を確認すると、自社に合うサービスを見極めやすくなります。
- 標準機能の充実度:追加料金なしで使える機能の範囲を確認します。必要な機能がオプション扱いだと、想定より費用がかさむことがあります。
- カスタマイズ性・デザインの自由度:HTML・CSSの編集可否、テンプレートの質と数、ブランドイメージを反映できるかを確認します。
- 拡張性(API・アプリ連携):外部システムとの連携やアプリによる機能追加ができるか。将来の要件変化に耐えられるかを左右します。
- サポート体制:問い合わせ窓口・対応時間・専任担当の有無を確認します。トラブル時の復旧速度に直結します。
- 料金プラン(TCO):月額だけでなく、決済手数料・アプリ費用・運用人件費まで含めた総保有コストで長期的に評価します。
- セキュリティ:PCI DSSへの準拠、SSL/TLSによる通信暗号化、第三者認証の取得状況などを確認します。
- データ移行のしやすさ(乗り換えの場合):既存ECから移す場合は、商品・顧客・過去の受注データの移行方法や、URL・SEO評価の引き継ぎ、移行支援サービスの有無を確認します。移行のしやすさは切り替え時の作業負担とダウンタイムを左右します。
これらの観点で複数のサービスを比較すると、自社の事業規模と要件に合った候補を絞り込めます。各サービスの詳細は、資料を取り寄せて機能・料金を横並びで確認するのが確実です。
また、SaaS型に限らずECサイトの構築方式全体を見渡して比較したい場合は、以下の記事で5つの構築方式の費用相場・選び方とおすすめサービスまでを詳しく解説しています。導入を検討される方はあわせてご覧ください。
まとめ
SaaS型ECは、クラウド上のECシステムをネット経由で利用し、サーバー構築や開発をせずにECサイトを開設・運用できる構築方式です。初期費用・運用負担を抑えて短期間で始められ、保守・更新・セキュリティをベンダーに任せられる点が最大の強みです。
一方で、カスタマイズや外部連携には標準機能ゆえの制約があり、ベンダーロックインのリスクもあります。ただし、APIやアプリ拡張、データエクスポート機能の確認といった対策で、多くは現実的に回避できます。独自要件を細部まで作り込みたい場合は、パッケージやフルスクラッチも含めて比較するとよいでしょう。
自社の事業規模・要件・体制と照らし合わせ、無料プランから大規模向けのクラウドECまで、料金帯ごとの候補を比較してみてください。まずは気になるサービスの資料を取り寄せ、機能と費用を横並びで確認することから始めましょう。
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よくある質問(FAQ)
Q. SaaS型ECとは何ですか?
A. SaaS型ECとは、クラウド上に用意されたECシステムをインターネット経由で利用し、サーバー構築やシステム開発をせずにECサイトを開設・運用できる構築方式です。ベンダーが1つのシステムを複数の利用企業で共有する「マルチテナント」の仕組みで提供し、サーバーの保守・アップデート・セキュリティ対策の大部分をベンダーが担います。
利用企業は月額利用料を支払う形で、専門知識やインフラを自前で抱えずにEC運営に集中できます。実務上は「ASP型」「クラウドEC」とほぼ同じ意味で使われます。
Q. SaaS型ECとASP・パッケージ型ECの違いは何ですか?
A. SaaS型ECとASPは実務上ほぼ同義で使われ、パッケージ型ECとは費用と導入期間を大きく抑えられる代わりに、カスタマイズの自由度が標準機能の範囲に限られる点で異なります。パッケージ型は初期費用が数百万円〜、導入に3か月〜半年かかる代わりに自由に開発・カスタマイズできるのに対し、SaaS型は初期費用0円〜・最短即日〜1か月で始められます。
「独自要件をとことん作り込みたいか」「早く・安く始めたいか」が、両者を分ける最初の判断軸になります。
Q. SaaS型ECの導入期間はどれくらいですか?
A. SaaS型ECの導入期間は、標準機能を中心に使えば最短で即日〜数日、通常でも1か月程度です。デザインテンプレートや決済機能があらかじめ用意されているため、商品登録・初期設定・決済設定・必要に応じたデータ移行やテストを済ませれば公開できます。数か月〜1年以上かかるパッケージやフルスクラッチと比べて短く、市場投入までのスピードを重視する事業者に向いています。
Q. SaaS型ECのセキュリティは安全ですか?PCI DSSには対応していますか?
A. SaaS型ECのセキュリティは、多くのサービスがカード情報の非保持化やクレジットカード業界のセキュリティ基準「PCI DSS」に準拠した決済環境を標準で提供しており、対策をベンダーがまとめて担うため、自社で専門人材を抱えなくても高い水準を確保しやすいのが特徴です。
IPA(情報処理推進機構)の「ECサイト構築・運用セキュリティガイドライン」が求める対策を、SaaS型はベンダー側で実施できる点が強みです。選定時は、SSL/TLSによる通信の暗号化、第三者認証の取得状況、過去に情報漏えい事件が起きていないか、運営基盤が信頼できるかを確認するとよいでしょう。
Q. SaaS型ECはカスタマイズできないのですか?
A. SaaS型ECは、標準機能の範囲を超える独自の画面設計や特殊な業務フロー、基幹システムとの複雑な連携はそのまま実現できない場合がありますが、公式のAPIやアプリ(拡張機能)、ヘッドレスコマース対応サービスの活用で多くは現実的に回避できます。多くのSaaS型ECはREST APIやWebhookを公開しており、外部システム連携やアプリによる機能追加が可能です。
導入前に、必要な連携やカスタマイズが標準機能・API・アプリのどれで実現できるかを確認しておくと、後戻りを防げます。
Q. 無料で使えるSaaS型ECサービスはありますか?
A. SaaS型ECには、初期費用・月額費用0円で始められ、商品が売れたときの決済手数料だけで運用できる無料プランを持つサービスがあり、BASEやSTORESが代表例です。固定費が発生しないため、これから初めてネットショップを開く事業者でもリスクを抑えて始められます。売上や必要な機能の拡大に応じて有料プランへ移行でき、スモールスタートから成長段階まで同じ基盤で運用を続けられます。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
















