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電子契約の原本とは?どのデータが原本か・紙保管の要否を法的根拠から解説

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電子契約システム比較表(2026年版)

電子契約を導入したものの、「紙なら手元に押印済みの現物が1通あって、それが原本だった。でも電子だと同じPDFが何個でも作れてしまう。うちにとっての原本は、いったいどのデータなのか」と引っかかっていませんか。

本記事では、まず「電子契約の原本とは何を指すのか」を結論から示します。そのうえで、紙の原本・正本・謄本・写しが電子契約ではどう扱われるのか、なぜ電子データが原本として通用するのかという法的根拠を整理します。さらに、訴訟や税務調査で実際に何を提出するのか、電子帳簿保存法の保存要件を実務で満たす方法、紙の保管が残る例外までを、条文や当局の見解をもとに解説します。

読み終えるころには、電子契約の原本がどのデータで、どう保存すれば法的に問題ないのかを自分の言葉で説明でき、自社の原本管理・保存運用のルールを判断できるようになります。

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電子契約の「原本」とは?結論は「電子署名+タイムスタンプが付いた電子データ」

はじめに、最も知りたい点から答えます。

結論

電子契約の原本とは、電子署名とタイムスタンプが付与された電子データそのものです。紙のように「手元にある1通だけの現物」は存在せず、同じデータを複製しても、すべてが同一の内容・同一の効力を持ちます。そのため、電子契約では「原本・正本・謄本・写し」を区別する必要がありません。

そもそも「原本」とは、ある文書について最初に確定的に作成されたもので、作成者の意思がそのまま表れたものを指す言葉です。紙の契約では、押印して製本した1通がこれにあたり、そこからコピーした書類は「写し」として区別されてきました。

電子契約では、この「最初に確定的に作成されたもの」が、当事者が合意して電子署名とタイムスタンプを付与した電子データになります。紙のように物理的な1通が存在するわけではなく、電子署名という技術によって「誰が作成し、その後改変されていないか」を確認できる状態そのものが、原本性を支えています。

電子署名とタイムスタンプが原本性を支える仕組み

ここからは、なぜ電子データが原本として信頼できるのか、その技術的な裏づけを見ていきます。カギを握るのが電子署名とタイムスタンプです。

電子署名は、電子署名及び認証業務に関する法律(以下、電子署名法)の第2条で、次の2つの要件を満たす措置と定義されています。

この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(略)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

出典:電子署名及び認証業務に関する法律 第2条第1項|e-Gov法令検索

1号が「本人性」(誰が作成したか)、2号が「非改ざん性」(後から変えられていないか)です。電子署名はこの2点を技術的に確認できるようにするもので、契約データが本人の意思で作成され、その後書き換えられていないことを担保します。

タイムスタンプは、その電子データが「ある時刻に確かに存在し、それ以降変更されていない」ことを証明する技術です。電子帳簿保存法施行規則では、総務大臣が認定した時刻認証業務が付与するタイムスタンプ(認定タイムスタンプ)が定められています。電子署名が「誰が・改変なく」を、タイムスタンプが「いつの時点で」を裏づけることで、電子データは紙の原本に代わる証拠力を持ちます。

出典・参考資料(1件)

紙契約の「原本・正本・謄本・写し」は電子契約だとどうなるか

ここからは、紙の契約で使われてきた「原本・正本・謄本・写し」という区別が、電子契約ではどう扱われるのかを整理します。

紙と電子で原本の考え方がどう変わるかを対比した図。紙の契約は、押印・製本した1通の現物が原本で、そこからコピーした写しは原本より証拠力が劣るという階層があり、どれが正規の1通かが問われる。電子契約は、電子署名とタイムスタンプが付いたデータが原本で、複製・ダウンロードしたPDF・相手方の保有分もすべて同一の内容・同一の効力を持つため、原本・正本・謄本・写しを区別しない。

紙と電子で「原本の考え方」はこう変わる

まず、それぞれの言葉の意味と、紙・電子での扱いを対応させて示します。

区分紙の契約での意味電子契約での扱い
原本最初に確定的に作成された文書。押印・製本した現物電子署名とタイムスタンプが付与された電子データ
正本原本と同一の効力を持たせた謄本(権限者が作成)区別しない(複製も同一データ・同一効力)
謄本原本の内容を全部写したもの区別しない(同上)
写し(コピー)原本を複製したもの。原本より証拠力は劣る区別しない(データの複製は原本と同一)
紙契約と電子契約における「原本・正本・謄本・写し」の考え方の対応

電子契約では「どれが原本か」を区別する必要がない理由

紙の契約書では、原本・正本・謄本・写しが区別され、写しは原本より証拠としての価値が劣るとされてきました。文書を裁判所に提出する方法を定めた民事訴訟規則でも、提出は原本・正本・認証のある謄本によるのが原則です。紙の世界では「どれが正規の1通か」が意味を持ちます。

一方、電子契約では事情が異なります。電子署名によって「本人が作成し、改変されていない」ことを確認でき、同じデータであればハッシュ値(データの内容から計算される固有の値)も一致するため、複製されたデータが元のデータと同一であることを技術的に証明できます。どのコピーも内容と効力が同じなので、「これが唯一の原本だ」と1つを特定する意味がなくなります

これが、電子契約で原本・正本・謄本・写しを区別しなくてよい理由です。

なぜ電子データが原本として通用するのか(法的根拠)

ここからは、電子データが原本として通用する根拠を、関係する法律ごとに整理します。「電子署名とタイムスタンプが付いていれば大丈夫」という説明の、その先の条文レベルの裏づけを押さえておくと、社内で説明する際にも役立ちます。

ここで整理する根拠は2種類あります。1つは電子データに原本としての証拠力を与える根拠(電子署名法・民事訴訟法)、もう1つは電子データでの保存が法的に認められ、義務づけられる根拠(電子帳簿保存法・e-文書法)です。順に見ていきます。

電子署名法が定める「成立の真正」と証拠力

裁判で契約書が証拠として認められるには、その文書が本人の意思で正しく作成されたこと(成立の真正)が必要です。民事訴訟法第228条は、私文書について次のように定めています。

第一項 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
第四項 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。

出典:民事訴訟法 第228条|e-Gov法令検索

紙の契約書では、本人の署名や押印があれば真正に成立したと推定されます。この「署名・押印による推定」を電子署名に橋渡しするのが、電子署名法第3条です。

電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(略)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

出典:電子署名及び認証業務に関する法律 第3条|e-Gov法令検索

本人による電子署名が付与された電子データは、押印された紙の契約書と同じように「真正に成立した」と推定されます。ここで注意したいのは、推定が働くのは「本人だけが行うことができる電子署名」に限られる点です。すべての電子サインが自動的にこの推定を受けるわけではなく、本人性を適切に管理した電子署名であることが前提になります。

電子契約サービスの署名方式には、契約当事者本人が電子証明書で署名する「当事者型」と、サービス提供者が当事者の指示にもとづき署名する「立会人型(事業者署名型)」があります。

当事者型は本人による電子署名として第3条の推定が働きやすく、立会人型でも本人確認(メール認証など)を適切に行えば契約は有効に成立すると一般に扱われています。自社の利用方式がどちらにあたるかは、契約の重要度に応じて確認しておくと安心です。

出典・参考資料(2件)

電子帳簿保存法・e-文書法が定める電子データ保存の適法性

証拠力の裏づけに加えて、税務の観点からも電子データでの保存が認められています。電子帳簿保存法(正式名称:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)は、契約書などの授受を電子的に行う取引を「電子取引」と定義し(第2条第5号)、その取引情報に係る電磁的記録の保存義務を第7条で定めています。

所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。

出典:電子帳簿保存法 第7条|e-Gov法令検索

電子契約は、契約書という取引情報を電子的に授受する「電子取引」にあたります。そのため、電子データのまま保存することが法律上の原則です。

令和3年度(2021年度)の改正により、令和4年(2022年)1月1日以後に行う電子取引では、データを紙に出力して保存する方法は認められなくなりました。電子契約のデータは、電子データのまま所定の要件で保存する必要があります。

また、書面での保存が義務づけられている文書を電子データで保存してよいとする一般的な枠組みとして、e-文書法(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律)第3条があります。ただし、対象は主務省令で定めるものに限られるため、「e-文書法があるから何でも電子化できる」わけではない点には注意が必要です。

契約書など国税関係書類の電子取引データについては、電子帳簿保存法が具体的な保存方法を定めています。

出典・参考資料(2件)

裁判での原本の扱い(民事訴訟規則と電磁的記録の証拠調べ)

裁判所に文書を提出する方法は、民事訴訟規則第143条が定めています。

第百四十三条 文書の提出又は送付は、原本、正本又は認証のある謄本でしなければならない。

出典:民事訴訟規則 第143条(令和6年最高裁判所規則第14号による改正後)|裁判所

これは紙の文書(書証)の提出方法を定めたもので、紙の契約書を裁判所に出すときは、原本・正本・認証のある謄本による必要があります。

一方、電子契約データのような電磁的記録は、民事裁判手続のデジタル化にともなって新設された「電磁的記録の証拠調べ」(民事訴訟法第231条の2)で扱われます。この規定は2026年(令和8年)5月21日に施行され、すでに適用されています。電子契約データは紙の書証としてではなく、この枠組みで提出するのが現在の取り扱いです。具体的な提出方法は次章で解説します。

出典・参考資料(2件)
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原本の提出が必要になる場面と、そのとき出すもの

ここからは、電子契約の原本が実際に必要になる場面と、そのとき何を提出するのかを具体的に見ていきます。想定される場面は、訴訟・税務調査・社内監査の3つです。

訴訟で提出を求められる場合

契約をめぐって裁判になった場合、電子契約データは「電磁的記録の証拠調べ」(民事訴訟法第231条の2。2026年5月21日に施行済み)の枠組みで提出します。具体的には、契約データの複製を、裁判所の電子情報処理組織を使ってオンラインで提出するか、記録媒体に記録して提出し、あわせて電子証拠説明書を提出する方法によります(民事訴訟規則第149条の2)。

この証拠調べには、文書の成立の真正に関する規定(民事訴訟法第228条)も準用されます(同法第231条の3)。これにより、本人による電子署名が付与されたデータであれば、電子署名法第3条の推定が引き続き働き、真正に成立したものとして扱われます。紙のようにどれが原本かを気にする必要はなく、電子署名・タイムスタンプの検証情報とともにデータの複製を提出すれば足ります。

税務調査で提出を求められる場合

税務調査では、電子帳簿保存法の要件を満たして保存した電子契約データを、そのまま提示・提出します。国税庁の一問一答(電子取引関係・令和8年7月)では、検索に使う電磁的記録が、要件を満たして保存してある電磁的記録と同一のものであることを確認できるようにしておく必要があるとされています(問24)。印刷した紙ではなく、保存要件を満たした電子データそのものが原本として扱われる点を押さえておきましょう。

出典・参考資料(3件)

社内監査・トラブル対応時

社内監査や取引先とのトラブル対応で契約内容を確認する場面でも、原本となるのは電子データです。契約本文に加えて、電子署名・タイムスタンプの検証情報や、いつ・誰が操作したかを記録した監査ログを合わせて確認できると、契約の成立時点や改変の有無を客観的に示せます。多くの電子契約システムは、これらの検証情報や操作履歴を管理画面から確認・出力できるようになっています。

電子契約データの保存要件(電子帳簿保存法)を実務で満たす方法

ここからは、電子契約データを「真実性・可視性・検索性」の観点でどう保存すればよいのかを、実務で何をするかまで具体的に解説します。これらは電子帳簿保存法施行規則が定める要件です。

真実性の確保(改ざん防止)

真実性の確保とは、保存したデータが後から改ざんされないようにすることです。電子帳簿保存法施行規則第4条第1項は、次の4つの措置のいずれか1つを行えばよいと定めています。

  • 取引情報の授受の前に、タイムスタンプが付された記録事項を授受する
  • 記録事項にタイムスタンプを付す(授受後速やかに、または事務処理規程を定めたうえで通常の期間を経過後速やかに)
  • 訂正・削除の事実と内容を確認できる、または訂正・削除ができないシステムで授受・保存を行う
  • 正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、その規程に沿って運用する

多くの電子契約システムは、認定された時刻認証業務によるタイムスタンプを標準で付与し、記録事項の訂正・削除を制限する設計になっています。この場合、上記のうちタイムスタンプやシステムによる措置で真実性を満たせます。自社で事務処理規程を整備して運用する方法もあり、システムを使わない場合でも要件を満たすことは可能です。

可視性の確保(見読性・システム概要書の備付け)

可視性の確保とは、保存したデータをいつでも読める状態にしておくことです。施行規則は、次のように定めています。

当該電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができるようにしておくこと。

出典:電子帳簿保存法施行規則 第2条第2項第2号(第4条第1項が準用)|e-Gov法令検索

具体的には、パソコンやディスプレイ、プリンターなどを備え付け、データを画面と書面にすぐ表示・印刷できるようにしておきます。あわせて、使用するシステムの概要を記したシステム概要書等を備え付けます(自社開発のプログラムを使う場合)。電子契約システムを利用していれば、見読性はサービス側で確保されているのが一般的です。

検索性の確保(日付・金額・取引先の3項目)

検索性の確保とは、必要なデータをすぐ探し出せるようにしておくことです。施行規則は、検索の条件として次の3項目を設定できることを求めています。

取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先(略)を検索の条件として設定することができること。

出典:電子帳簿保存法施行規則 第2条第6項第5号イ(第4条第1項が準用)|e-Gov法令検索

検索の条件として「取引年月日その他の日付・取引金額・取引先」を設定できる状態にしておく必要があります。ただし、税務職員のダウンロードの求めに応じられるようにしている場合は、日付や金額の範囲指定・項目の組み合わせによる検索までは不要です。

さらに、基準期間の売上高が5,000万円以下などの小規模な事業者は、電子取引データのダウンロードの求めに応じられるようにしているなど一定の条件のもとで、検索要件そのものが不要になる場合があります(国税庁の一問一答 問25ほか)。

保存年限(原則7年・欠損金が生じた年度は10年)

電子取引データの保存期間は、電子帳簿保存法が独自に定めるのではなく、法人税法などそれぞれの法律で定められた期間に従います。法人の場合、帳簿・書類とも原則7年です。

青色申告で欠損金(赤字)が生じた事業年度は10年(平成30年〔2018年〕4月1日前に開始した事業年度は9年)とされています(国税庁の一問一答 問17)。契約書の保存期間もこれにならい、電子契約データを所定の期間、要件を満たして保存します。

保存要件でやることチェック

ここまでの保存要件を、実務でやることとして整理すると次のとおりです。

要件実務でやること
真実性タイムスタンプの付与、訂正・削除を制限するシステムの利用、または事務処理規程の整備・運用のいずれか
可視性ディスプレイ・プリンターの備付け、画面・書面への速やかな出力、システム概要書等の備付け
検索性「取引年月日その他の日付・取引金額・取引先」で検索できる状態にする
保存年限原則7年、欠損金が生じた事業年度は10年保存する
電子契約データの保存要件と、実務で行うことの対応
出典・参考資料(2件)

ここでは電子契約(電子取引データ)の保存要件を中心に整理しました。帳簿や請求書・領収書といった書類も含め、電子帳簿保存法の3つの保存区分ごとに真実性・可視性・検索性の要件がどう変わるかを確認したい場合は、以下の記事で詳しく解説しています。

紙の保管・印刷が必要になるケース(例外)

電子契約のデータが原本になるとはいえ、紙の保管が残る場面もあります。読者が最も迷いやすい「元の紙は捨ててよいのか」「印刷は原本の代わりになるのか」という点を、ここで整理します。

紙で締結した契約をPDF化しても、紙の原本は残すのが原則

もともと紙で締結した契約書をスキャンしてPDF化した場合、そのPDFは原本ではなく「紙の原本を写したもの」です。この場合、紙の原本を保管するのが原則です。電子帳簿保存法の「スキャナ保存」の要件(タイムスタンプの付与や解像度など)を満たして保存すれば紙を廃棄できる場合もありますが、要件を満たさないまま紙を捨てると、原本を失うことになります。

紙で結んだ契約は、スキャナ保存の要件を確認したうえで扱いを決めましょう。

スキャナ保存の具体的な要件(解像度・タイムスタンプの付与など)と、紙の原本を廃棄してよくなる条件は、以下の記事で詳しく整理しています。紙の契約書を電子化して原本を処分できるか検討している方はあわせてご確認ください。

電子契約データの印刷は、原本の代わりにならない

逆に、電子契約で締結したデータを紙に印刷しても、その紙は原本にはなりません。原本はあくまで電子署名とタイムスタンプが付いた電子データであり、印刷物はその写しにすぎません。前述のとおり、令和4年1月1日以後の電子取引データは電子のまま保存する必要があり、紙に出力して保存する方法は認められていません。印刷は確認や社内共有のための補助と考え、原本の電子データを要件どおりに保存してください。

法律で書面が義務づけられ、電子化できない契約もある

一部の契約は、法律で書面の作成・交付が義務づけられており、電子化できない、または公正証書などの特別な方式が必要です。たとえば事業用定期借地権の設定契約は公正証書によることが求められます。近年の法改正で電子化できる契約は大きく広がっていますが、自社が扱う契約類型に書面要件が残っていないかは、締結方法を電子に切り替える前に確認しておくと安心です。

原本データはどこにあるのか?長期保存で気をつけること

最後に、多くの実務担当者が不安に感じる「原本データは物理的にどこにあるのか」「事業者が廃業したらどうなるのか」「長期間の保存は大丈夫か」という点を解説します。

原本データの保管場所(事業者のサーバー上か、自社のファイルか)

電子契約サービスを使う場合、原本データは多くの場合、事業者のクラウドサーバー上に保管されます。国税庁の一問一答(問28)では、保存場所でデータを画面と書面に速やかに出力できれば、クラウドサービスの利用や海外サーバーでの保管でも保存場所に保存されているものとして取り扱われます。このため、クラウド上での保管でも保存要件は満たせます。

あわせて、契約データを自社にダウンロードして保管しておけば、手元でも原本を確認できます。

契約の相手方も、同じデータに電子署名した同一の原本を保持します。紙のように一方だけが正規の1通を持つのではなく、当事者双方が同じ原本を持てる点も電子契約の特徴です。

事業者の廃業・サービス終了に備えるエクスポートと可搬性

クラウド上に原本を預けている場合、事業者の廃業やサービス終了で契約データにアクセスできなくなるリスクを考えておく必要があります。対策として、契約データを一括でエクスポート(ダウンロード)できる機能があるかを確認し、定期的に自社のストレージへ保管しておく運用が有効です。電子署名やタイムスタンプの検証情報も一緒に保存できるかを確認しておくと、事業者に依存せずに原本性を示せます。

長期保存とタイムスタンプの有効期限(長期署名)

電子署名やタイムスタンプに使われる電子証明書には有効期限があり、契約を7年・10年と長期保存する間に期限が切れることがあります。期限が切れると、後から「その時点で有効な署名だった」ことを検証しにくくなります。これに備える仕組みが長期署名です。有効期限が切れる前に新しいタイムスタンプを重ねて付与し、検証できる状態を延長します。

長期の保存が必要な契約では、利用するシステムが長期署名(有効期間の延長)に対応しているかを確認しておきましょう。

出典・参考資料(1件)

保存要件を満たす電子契約システムの選び方と活用

ここまで見てきたとおり、電子契約の原本を法的に安全な形で残すには、タイムスタンプによる真実性の確保、訂正・削除を防ぐ仕組み、日付・金額・取引先での検索、そして長期署名への対応が鍵になります。これらの保存要件を満たす仕組みは、電子契約システムを使えば標準で備えられます。ここからは、保存要件の観点から代表的なサービスを紹介します。

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サービス名クラウドサイン電子印鑑GMOサインWAN-Sign
提供会社弁護士ドットコム株式会社GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社株式会社NXワンビシアーカイブズ
電子署名タイプ立会人型(事業者署名型)標準
当事者型(マイナンバーカード署名)対応
立会人型・当事者型
ハイブリッド署名対応
当事者型(実印版)・立会人型(認印版)
ハイブリッド対応
認定タイムスタンプ(真実性)全プランで標準付与認定タイムスタンプを標準付与付与に対応(無料枠内は要確認)
長期署名(有効期間の延長)タイムスタンプで有効期間を10年に延長延長タイムスタンプで10年に延長長期署名に対応
電帳法の検索要件対応取引年月日・金額・取引先で検索文書検索・文書情報のカスタマイズに対応文書名・相手方・締結日で検索
JIIMA認証(電帳法)×(認定タイムスタンプ・検索対応で電帳法に対応)契約印&実印プラン向けに取得令和5年改正基準・3保存方法すべてに対応
紙原本の保管対応××情報管理センターで紙の原本を保管
詳細情報公式資料を見る公式資料を見るサービス詳細を見る

各社公式情報にもとづく(2026年9月時点)。JIIMA認証は電子帳簿保存法対応を示す任意の第三者認証で、認証がなくても保存要件を満たすことは可能です。

1. クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社)

クラウドサインのウェブサイト

クラウドサインは、弁護士ドットコム株式会社が運営する電子契約サービスです。すべてのプランで認定された時刻認証業務によるタイムスタンプを標準で付与し、締結した記録事項を後から訂正・削除できない設計のため、電子帳簿保存法の真実性の要件に対応しやすいのが特徴です。

取引年月日・金額・取引先での検索にも対応し、タイムスタンプによって有効期間を延長する長期保存の仕組みも備えています。原本をどう保存すればよいか迷っている段階の企業にとって、保存要件の全体像をつかみやすいサービスです。

2. 電子印鑑GMOサイン(GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社)

電子印鑑GMOサインのウェブサイト

認証局の運営を手がけるGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が提供するのが、電子印鑑GMOサインです。認定タイムスタンプの標準付与に加え、有効期間を延長する「延長タイムスタンプ」で真正性を長期にわたり維持できる点が、長期保存を意識する企業に向いています。

契約印&実印プランでは、電子帳簿保存法に対応した製品であることを示すJIIMA認証を取得しており、操作ログの管理や文書検索にも対応するため、真実性・可視性・検索性の要件を一通り満たせます。

3. WAN-Sign(株式会社NXワンビシアーカイブズ)

WAN-Signのウェブサイト

文書保管を本業とする株式会社NXワンビシアーカイブズが手がけるWAN-Signは、認定タイムスタンプや長期署名に対応し、電子帳簿保存法の3つの保存方法すべてでJIIMA認証を取得しています。加えて、紙の契約書そのものを情報管理センターで物理的に保管し、電子と紙を一元的に管理できる点が特徴です。

紙で締結した契約の原本保管と、電子契約データの保存を1つの窓口でまとめたい企業に向いています。

ここで取り上げた3サービスは、保存要件への対応という観点から代表的なものを紹介しました。料金の目安やタイプ別の選び方も踏まえて電子契約システム全体を比較し、自社に合う一社を検討したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

まとめ

電子契約の原本は、電子署名とタイムスタンプが付与された電子データそのものです。紙のように1通だけの現物は存在せず、原本・正本・謄本・写しを区別する必要もありません。電子データが原本として通用する根拠は、電子署名法による成立の真正の推定と、電子帳簿保存法による保存の仕組みにあります。

実務では、真実性・可視性・検索性の保存要件を満たし、原則7年(欠損金が生じた年度は10年)の保存期間を守ることが基本です。紙で締結した契約の原本保管や、長期署名によるタイムスタンプの延長など、例外や注意点も押さえておくと安心です。これらの保存要件を満たす電子契約システムを活用すれば、原本管理の負担を抑えながら、法的に安全な運用を実現できます。

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よくある質問(FAQ)

Q. 電子契約の原本とは何ですか?

A. 電子契約の原本とは、電子署名とタイムスタンプが付与された電子データそのものです。紙のように「手元にある1通だけの現物」は存在せず、同じデータであればどの複製も同一の内容・同一の効力を持ちます。そのため電子契約では、紙で使われてきた「原本・正本・謄本・写し」を区別する必要がありません。

Q. 電子契約を印刷した紙は原本になりますか?

A. 電子契約を印刷した紙は、原本にはならず「写し」にすぎません。原本はあくまで電子署名とタイムスタンプが付いた電子データです。加えて、令和4年1月1日以後に行う電子取引のデータは電子のまま保存する必要があり、紙に出力して保存する方法は認められていません。印刷は確認や社内共有のための補助と考え、原本の電子データを保存要件どおりに残してください。

Q. 電子契約でダウンロードしたPDFは原本ですか、それとも写しですか?

A. 電子署名とタイムスタンプが付いた契約データをダウンロードしたPDFは、元のデータと同一の原本として扱われ、写しに格下げされることはありません。電子契約では同じデータの複製はハッシュ値(データの内容から計算される固有の値)も一致し、内容・効力が元データと同一であることを技術的に証明できるためです。

ただし原本として運用するには、電子帳簿保存法の保存要件(真実性・可視性・検索性)を満たす形で保存しておく必要があります。

Q. 電子契約の原本はどこに保管されているのですか?

A. 電子契約サービスを使う場合、原本データは多くの場合、事業者のクラウドサーバー上に保管されます。国税庁の一問一答(問28)では、保存場所でデータを画面と書面に速やかに出力できるのであれば、クラウドサービスの利用や海外サーバーでの保管でも保存場所に保存されているものとして取り扱うとされています。あわせて契約データを自社にダウンロードして保管しておけば、手元でも原本を確認できます。

出典・参考資料(1件)

Q. 電子契約の原本は、相手方も同じものを持っているのですか?

A. 電子契約では、契約の当事者双方が同一の原本データを保有します。紙のように「一方が原本、もう一方が写し」という区別はなく、同じ電子署名・タイムスタンプが付いたデータであれば、どちらが持つものも同一の内容・効力を持ちます。それぞれが自社の保存要件に沿って、そのデータを原本として保存すれば問題ありません。

Q. 紙で結んだ契約書は、電子化すれば捨ててよいですか?

A. 紙で締結した契約書は、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たさない限り、原則として紙の原本を残す必要があります。スキャンしてPDF化しても、そのPDFは「紙の原本を写したもの」にすぎません。タイムスタンプの付与や解像度などのスキャナ保存の要件を満たして初めて紙を廃棄できるため、要件を確認しないまま紙を捨てると原本を失うことになります。

Q. 税務調査では電子契約の何を提出すればよいですか?

A. 税務調査では、電子帳簿保存法の要件を満たして保存した電子契約データを、そのまま提示・提出します。印刷した紙ではなく、真実性・可視性・検索性の要件を満たした電子データが原本として扱われます。国税庁の一問一答(問24)でも、検索に使う電磁的記録が、要件を満たして保存してある電磁的記録と同一のものであることを確認できるようにしておく必要があるとされています。

出典・参考資料(1件)

Q. 訴訟では電子契約データをどうやって提出するのですか?

A. 訴訟では、電子契約データは「電磁的記録の証拠調べ」の枠組みで、データの複製をオンラインまたは記録媒体で提出します(民事訴訟法第231条の2、令和8年5月21日施行)。あわせて電子証拠説明書を提出します。

この証拠調べには成立の真正に関する規定(民事訴訟法第228条)も準用されるため、本人による電子署名が付与されたデータであれば電子署名法第3条の推定が引き続き働き、真正に成立したものとして扱われます。紙のようにどれが原本かを気にする必要はありません。

出典・参考資料(2件)

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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