不動産の売買や賃貸の契約を前に、相手が反社会的勢力でないかを確かめようとして、名前をインターネットで検索してみたものの「これで本当にチェックしたと言えるのか」と不安になる担当者は少なくありません。契約書に暴力団排除条項(暴排条項)は入れていても、実際の確認は場当たり的になりがちです。
売却の仲介で相手が反社会的勢力だと見抜けないまま手続きが進み、後から発覚してトラブルにつながることもあります。反社チェックは「他人事」ではなく、契約実務に組み込むべき手順です。
この記事では、不動産取引(売買・賃貸・媒介)の反社チェックを、誰を・いつ・何で・どこまで確認すればよいのかという手順から実務に落とせる形で解説します。確認対象者の一覧、手法の使い分け、使えるツール、契約書の暴排条項と法的根拠、疑わしいと分かったときの対応、犯罪収益移転防止法(犯収法)との関係までを取り上げます。
目次
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まず何をすればいい? 不動産取引の反社チェック手順の全体像
ここでは、契約前に動けるように、反社チェックの手順を全体像から示します。細かい根拠や手法の使い分けは、このあとの各章で掘り下げます。
手順を1枚に|対象者・確認手段・タイミング
反社チェックは、契約の締結前(売買なら重要事項説明の前後、遅くとも契約締結前)に済ませておくのが基本です。次の流れで、対象者を洗い出してから確認手段を重ねていきます。
| ステップ | 1. 対象者の洗い出し | 2. 公開情報で一次確認 | 3. 精度を上げる確認 | 4. 疑わしいときの相談・精査 | 5. 契約と記録 |
|---|---|---|---|---|---|
| いつ | 案件の受任・申込時 | 重要事項説明の前まで | 一次確認で判断がつかないとき | グレー・懸念があるとき | 契約締結時 |
| やること | 売主・買主・借主・連帯保証人・仲介先、法人なら代表者・実質的支配者まで確認対象を特定する | 氏名・法人名とネガティブ情報を照合し、明らかな懸念がないかを見る | ノイズを絞り、証跡を残して確認する | 専門機関に相談し、必要なら深掘り調査する | 契約書に暴排条項を入れ、いつ・何で・どこまで確認したかを証跡として残す |
| 主な手段 | 申込書・本人確認書類・登記事項証明書 | インターネット検索・新聞記事データベース・法人番号公表サイト・登記情報 | 専用の反社チェックツール・業界団体の反社データベース | 調査会社・警察・暴力追放運動推進センター | 契約書(暴排条項)・確認記録 |
手段は、無料でできる公開情報の確認から始め、判断がつかないときに専用ツールや専門機関へ広げるのが現実的です。各ステップの根拠と使い分けは、以降の章で具体的に見ていきます。
なぜ不動産取引で反社チェックが要るのか
不動産は、資金の洗浄や活動拠点の確保に利用されやすく、反社会的勢力との取引は会社の信用に直結します。政府も、企業が取引先の審査や契約書への暴排条項の導入によって被害を防ぐよう求めています。
出典・参考資料(1件)
誰を確認する? 取引類型別(売買・賃貸・媒介)の対象者一覧
確認の抜け漏れは、取引の相手方だけを見て連帯保証人や法人の実質的支配者を見落とすところで起きます。取引類型ごとに、誰を確認するのかを整理します。
| 取引類型 | 売買 | 賃貸 | 媒介 |
|---|---|---|---|
| 主な確認対象 | 売主・買主(個人は本人/法人は会社・代表者・実質的支配者)、媒介する場合は取引の相手方 | 貸主・借主・連帯保証人(個人は本人/法人は役員) | 媒介する取引の当事者。加えて、その不動産が暴力団事務所などに使われないか |
| 補足 | 犯収法の取引時確認も売買が対象。法人は実質的支配者まで確認する | 犯収法の取引時確認義務は賃貸には及ばない。暴排条例・契約条項で対応する | 媒介業者には条例上の固有の努力義務がある |
国土交通省と不動産流通4団体がまとめたモデル暴排条項は、契約当事者本人だけでなく、その役員や、反社会的勢力に自己の名義を利用させていないこと(名義貸し)まで確約の対象にしています。法人取引では、代表者や実質的支配者(会社の議決権の多くを握るなど経営を実質的に支配する人)、名義の背後にいる人物まで視野に入れることが、抜け漏れを防ぐ要点になります。
出典・参考資料(1件)
法人取引で実質的支配者や名義の背後にいる人物まで確認するのは、表面的な調査だけでは反社会的勢力を見抜けないためです。弁護士の阿部由羅氏は、次のように指摘しています。

インターネット検索や新聞記事のデータベースなどを利用して、相手方の会社名や代表者名を検索しても、背後にいる反社会的勢力の存在は判明しません。相手方の実質的な支配者まで遡って徹底的に反社チェックを行い、少しでも疑わしい要素があれば取引中止を検討するといった厳密な取り組みが求められます。
実質的支配者は登記事項証明書には必ずしも表れません。特定するには、取引時確認の一環として相手方の法人に実質的支配者を申告してもらうほか、株主名簿や開示資料で出資・議決権の状況を確認する方法があります。専用の反社チェックツールの中には、商業登記情報を取得して役員情報を自動で抽出できるものもあり、名義の背後を辿る手がかりになります。
何で確認する? 反社チェックの手法を比較
ここからは、確認手段を選べるように、代表的な手法を横並びで比較します。無料でできる手段と、費用をかけて精度・効率を上げる手段を使い分けるのが基本です。
無料の一次確認では、対象者の氏名や法人名に「逮捕」「詐欺」「暴力団」「行政処分」といった懸念を示す語を組み合わせて検索し、ヒットした記事が本人のものか、関連性があるかを確かめるのが一般的です。同姓同名や無関係な情報が混ざりやすいので、この一次確認で判断がつかないときに次の手段へ進みます。
| 手法 | インターネット・新聞記事データベース | 専用の反社チェックツール | 業界団体の反社データベース(共助) | 調査会社・興信所 | 警察・暴力追放運動推進センター |
|---|---|---|---|---|---|
| カバー範囲 | 報道・ネット上の情報。同姓同名など関連性の低い情報も多くヒットする | 報道・独自データベース・制裁リストなどを横断。AIでノイズを絞り、証跡も残せる | 全日本不動産協会・全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)などが会員向けに提供する照会システム | 個別案件の深掘り調査 | 相談・助言(暴追センター)、情報提供(警察) |
| 手間 | 1件ずつ確認する手間がかかる | 一括検索・API連携で省力化できる | 会員が照会する | 依頼して結果を待つ | 相談・照会する |
| 費用感 | 無料〜低コスト | 月額または従量課金 | 所属協会の年会費の範囲 | 依頼内容・調査の深さにより変動(都度見積もり) | 低コスト |
| 使いどころ | まず行う一次スクリーニング | 取引件数が多い・継続的に確認したい場合 | 所属協会の会員が使える補完手段 | グレーな案件の精査 | 疑わしいと判断したときの相談 |
反社会的勢力の排除は、事業者自身が行う調査(自助)、不動産関係団体による情報提供(共助)、警察による情報提供(公助)を組み合わせて対応する枠組みで整理されています。暴力追放運動推進センター(暴追センター)は相談・助言を担う機関で、個別の取引相手が反社かどうかを判定して回答する窓口ではないため、情報提供を求める場合の照会先とは役割が異なる点に注意が必要です。
出典・参考資料(1件)
警察や暴力追放運動推進センターに何を相談でき、どこまで頼れるのかは、以下の記事で詳しく整理しています。
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不動産の反社チェックに使えるツール・サービス
手作業の一次確認には限界があるため、取引件数が増えるほど専用ツールの活用が現実的になります。ここでは、不動産取引の当事者スクリーニングに使える主なツールを紹介します。各ツールの機能・データソース・料金は、以下の比較表と各社の紹介で比べられます。
| サービス名 | RISK EYES(リスクアイズ) | RoboRoboコンプライアンスチェック | RiskAnalyze(リスクアナライズ) | パワーサーチ(アラームボックス) |
|---|---|---|---|---|
| 主なデータソース | WEBニュース・新聞記事・ブログ/掲示板 独自反社DB・制裁リスト・行政処分・商業登記 | ネット検索・新聞記事DB・海外情報(約190か国) 反社DB(SP RISK SEARCH)・官報破産者情報 | 国内約1,000媒体を1時間おきに収集・官報情報DB 海外240以上の国・地域、PEPs・制裁リスト | 専門調査会社情報・新聞記事・WEB情報 約500万社のデータ・公的機関情報 |
| 確認できる情報の範囲 | 反社関係・犯罪関与・不祥事の3観点 AIで記事の関連度を判定しノイズを除去 | 法令違反・社会規範に反する活動 AIが注目度を「高・中・低」で判定し記事を要約 | 反社・逮捕歴・行政処分・訴訟歴・風評まで 判定済みレポートを最短0.4秒で表示 | 反社チェックに加え与信・企業調査も一体で 専任担当者の見解コメント付き |
| 料金体系 | 初期費用0円 最低月額15,000円(税別)+300円/検索(1媒体ごと) | 初期費用0円 250円/件〜(ネット検索)・350円/件〜(ネット+新聞) ミニマムプランは月額最低5,000円〜 | 初期費用0円 月額27,500円〜(ライト/年間600検索) スタンダード50,000円・プロは別途見積もり | 初期費用0円 月額3,000円〜(ライト/ポイント制) 反社チェックは1件500円〜(ワンコイン) |
| 一括検索・API連携 | Excelでの一括検索・API連携に対応 | Excel一括登録・1クリック検索 API/RPA連携(オプション) | CSV一括検索(1,000件を約1分) API連携は無料 | API連携はエンタープライズプランのみ CSVダウンロードはビジネスプラン以上 |
| 証跡の管理・保存 | 検索履歴・確認結果を証跡として保存 「承認・否認」のワークフローに対応 | 「承認・否認・保留」で記録 証跡をまとめてダウンロード(PDF/CSV/Excel) | 調査の証跡をクラウドに7年間自動保存 | 調査レポートを保存 保存期間はプランにより異なる(無制限のプランあり) |
| 無料トライアル | あり | あり(10件まで) | あり(期間・件数は要相談) | あり(30日間) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る |
※料金・機能は2026年9月時点の各社公式情報等に基づきます。最新の内容は各社公式サイトでご確認ください。
1. RISK EYES(ソーシャルワイヤー株式会社)

RISK EYESは、法人名・人名とネガティブワードを組み合わせ、WEBニュース・新聞記事・ブログ・掲示板・独自の反社データベース・制裁リストなどを1つの画面で横断検索できる反社・コンプライアンスチェックサービスです。生年や住所などの補足情報とAIによる関連度判定で、同姓同名などのノイズを絞り込めるため、担当者が確認すべき記事にたどり着きやすくなっています。
検索履歴や確認結果を証跡として残せるほか、Excelでの一括検索やAPI連携にも対応します。不動産取引では、売主・買主や取引先の法人・代表者を、まとめて、あるいは案件ごとに確認する用途に向いています。
2. RoboRoboコンプライアンスチェック(オープン株式会社)

Excelのドラッグ&ドロップで取引先を一括登録し、1クリックで検索できる手軽さが特徴のサービスです。AIが記事の注目度を「高・中・低」で選別し、新聞記事や約190か国の海外情報も同時に検索できます。
官報破産者情報データベースとの連携で個人の破産・民事再生などの情報も確認でき、調査結果は「承認・否認・保留」で記録して証跡としてまとめてダウンロードできます。導入社数は10,000社を超え(2026年2月の公式発表)、不動産業界での導入事例も公表されています。
3. RiskAnalyze(KYCコンサルティング株式会社)

規制対応を技術で支援するレグテック企業、KYCコンサルティングが提供するRiskAnalyzeは、反社チェックに加えて逮捕歴・行政処分・訴訟歴・風評調査まで一度に確認できる点が強みです。国内約1,000媒体から1時間おきに情報を自動収集し、官報情報データベースや240以上の国・地域の海外リスク情報にも対応します。
単件検索は最短0.4秒、CSVでの一括検索は1,000件を約1分で処理でき、調査の証跡はクラウド上に7年間自動保存されます。情報セキュリティの国際規格ISO/IEC 27001(ISMS)を取得しており、反社チェックとあわせて訴訟歴や行政処分まで確認したい不動産取引に向いています。
4. パワーサーチ(アラームボックス株式会社)

弥生グループのアラームボックスが提供するパワーサーチは、会社名や個人名を入力すると反社会的勢力に関する情報を検索し、リスクの度合いを示すサービスです。1件ごとに調べられる手軽さがあり、取引のたびに単発で確認したい使い方に向いています。信用調査やモニタリングを手がけてきた同社の知見を反社チェックに応用しており、累計の利用社数は15,000社を超えています(2026年6月の公式発表)。
それぞれのツールで、確認できる情報の範囲・料金体系・不動産取引での使い方は異なります。各サービスの資料はまとめて請求できるので、自社の取引件数や運用に合うものを比べてみてください。
ここで挙げた以外にも反社チェックツールは数多くあります。機能・データソース・精度・料金といった観点から幅広く比較して選びたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
反社チェックツールおすすめ16選を比較|料金・データソース・精度で失敗しない選び方
取引先や株主、採用候補の反社チェックを、担当者が新聞記事やインターネットを手作業で検索して進めていませんか。1件ずつ調べる方法は時間がかかるうえ、調べ漏れ(見落とし)と、同姓同名による誤判定(過検知)の両方が起きやすく、調査の質が担当者の経…
契約書の暴排条項(反社条項)と法的根拠
反社会的勢力を確認しても、契約書に排除の仕組みがなければ、取引開始後に判明したときに関係を断ちにくくなります。ここでは、取引類型ごとの暴排条項と、その根拠となる法令・指針の位置づけを整理します。
取引類型別の条項の違い
国土交通省と不動産流通4団体は、売買・媒介・賃貸それぞれについて、反社会的勢力を排除するためのモデル条項を2011年(平成23年)6月に取りまとめています。
いずれも、当事者が反社会的勢力でないこと、その役員が反社会的勢力でないこと、反社会的勢力に名義を利用させていないことを確約させ、これに反する事実が判明した場合には催告なしで契約を解除できる、という構成を基本にしています。賃貸住宅契約書のモデル条項では、次のように定められています。
(反社会的勢力の排除)第X条 貸主(甲)及び借主(乙)は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。① 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という)ではないこと。② 自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう)が反社会的勢力ではないこと。③ 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。
出典:反社会的勢力排除のためのモデル条項(賃貸住宅契約編)|国土交通省
売買・媒介の契約書にも同じ考え方のモデル条項が用意されています。自社の契約書式が古い場合は、役員や名義貸しまで対象に含んでいるか、解除の要件が催告不要になっているかを確認しておくと安心です。
出典・参考資料(3件)
根拠ごとの義務の強さの切り分け
反社チェックの根拠としてよく挙げられる指針・条例・法律は、それぞれ義務の強さが異なります。混同すると「どこまでやれば足りるのか」を見誤るため、何に基づく何の要請かを分けて理解しておくことが大切です。

まず、法務省の「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」は、取引先の審査や暴排条項の導入を求めていますが、国土交通省の解説では次のように、法的拘束力のない指針であると明記されています。
本指針は、あらゆる企業を対象として、反社会的勢力による被害を防止するための基本的な理念や具体的な対応を定めたものであり、法的拘束力はない。(中略)なお、法的拘束力はないが、本指針策定後、例えば、取締役の善管注意義務の判断に際して、民事訴訟等の場において、本指針が参考にされることなどはあり得るものと考えている。
出典:企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針に関する解説|国土交通省
次に、都道府県の暴力団排除条例は、事業者に対し、契約の相手方などが暴力団関係者でないことを確認し、契約書に暴排条項を定めるよう「努めるものとする」と定めています。これは努力義務であり、条例に基づく直接の罰則が科されるものではありません。条番号や表現は都道府県ごとに異なるため、自社が所在する自治体の条例で確認が必要です(例として東京都暴力団排除条例は第18条)。
一方、犯罪収益移転防止法(犯収法)に基づく取引時確認は、罰則を伴う法律上の義務です。ただし、後述のとおり宅地建物取引業者にこの義務がかかるのは売買(およびその代理・媒介)で、賃貸の媒介などは対象外です。
宅地建物取引業法が暴力団員等を扱うのは、宅地建物取引業者自身(免許申請者・役員)が暴力団員等でないことを免許の欠格事由とする文脈です。取引相手の反社チェックを事業者に義務づける規定ではありません。
出典・参考資料(3件)
どこまでやれば「チェックした」と言えるか|仲介業者の調査義務とヒット・グレー時の対応
「どこまで調べれば免責されるのか」は多くの担当者が気にする点です。ここでは、仲介業者に求められる調査の範囲と、疑わしい・ヒットしたときの実務を整理します。
仲介業者の調査義務はどこまでか
反社会的勢力かどうかを完全に見抜くまでの無制限の調査が、法律上一律に義務づけられているわけではありません。もっとも、都道府県の暴排条例は媒介をする事業者にも確認の努力義務を課しており、法務省指針も取締役の善管注意義務の判断で参考にされうるとされています。公開情報の確認や契約書への暴排条項の反映といった標準的な対応を、記録を残して行っておくことが実務上の目安になります。
何もしていなかった場合と、手順を踏んで確認・記録していた場合とでは、後日の説明責任の重さが変わります。
ヒット・グレー時の対応(取引中止・契約解除・断り方・記録の残し方)
確認の結果、相手が反社会的勢力である疑いが出たときは、契約前であれば取引を進めず見送るのが基本です。断る際に相手を反社会的勢力だと断定して伝える必要はなく、社内基準や確認結果を理由に取引を控える、という対応にとどめます。判断に迷うグレーな案件は、暴力追放運動推進センターや警察、弁護士などの外部機関に相談し、必要に応じて調査会社の精査を挟みます。
断り方の一例としては、「社内の確認基準に基づき、今回はお取引を見送らせていただきます」と、相手を名指しせずに伝える形が無難です。理由を細かく開示すると、かえってトラブルや情報の取り扱いをめぐる懸念が生じるためです。
白黒がはっきりしないグレーな情報が出たときに取引を進めるかどうかは、確認する側の判断基準によって分かれます。RoboRoboを提供するオープン株式会社も、次のように述べています。

契約締結後に判明した場合は、モデル暴排条項に沿って、催告なしで契約を解除できます。そして見落としがちなのが記録です。いつ・誰を・何で・どこまで確認したのか、その結果どう判断したのかを証跡として残しておくと、後から調査の妥当性を問われたときの説明材料になります。専用ツールの多くが検索履歴や承認・否認のステータスを自動で保存できるのは、この証跡づくりを効率化するためです。
証跡は、懸念情報が見つからなかった場合にも残しておく意味があります。記録の残し方と、ツールで確認したあとに自社に残る判断の範囲について、RISK EYESを提供するソーシャルワイヤー株式会社は次のように説明しています。

RISK EYESではノイズを絞り込み、該当記事がない場合も『検索結果0件』という履歴を残せるため、記事の印刷・保存などの作業を省けます。一方、懸念情報が検出された場合の本人同定や取引可否の最終判断は企業ごとに必要となるため、削減幅は検索件数、対象属性、確認基準、社内承認フローによって異なります。
反社チェックと犯収法(マネロン対策)の関係
反社チェック(暴力団排除)と、犯罪収益移転防止法(犯収法)に基づくマネー・ローンダリング対策は、目的の異なる別の枠組みです。混同しやすいため、宅地建物取引業者がそれぞれで何を求められるかを切り分けます。
犯収法は、宅地建物取引業者を「特定事業者」と位置づけ、一定の取引で取引時確認(本人特定事項・取引目的・事業内容、法人の場合は実質的支配者の確認)と、疑わしい取引の届出を義務づけています。反社かどうかの確認そのものではなく、資金洗浄を防ぐための本人確認・届出である点が、暴排の反社チェックとの違いです。
重要なのは義務の対象取引です。宅地建物取引業者に犯収法の取引時確認・疑わしい取引の届出がかかるのは、宅地・建物の売買(およびその代理・媒介)に限られ、賃貸(貸借)の媒介などは対象になりません。
売買の実務では、犯収法の本人確認を、国土交通省が示すマネー・ローンダリング対策のガイドライン(2026年〔令和8年〕4月28日改訂)に沿って運用します。賃貸を含む反社チェックそのものは、法務省指針・暴排条例・契約書の暴排条項が根拠になります。
出典・参考資料(2件)
まとめ
不動産取引の反社チェックは、契約前に対象者を洗い出し、公開情報で一次確認したうえで、判断がつかないときに専用ツールや業界団体の照会、専門機関への相談へ広げるのが基本の流れです。売買・賃貸・媒介で確認対象や適用される法令が異なり、犯収法の取引時確認は売買が対象で賃貸には及びません。
契約書には役員・名義貸しまで対象にした暴排条項を備え、いつ・何で・どこまで確認したかを記録として残しておくことが、後日の説明責任にも直結します。手作業に限界を感じたら、証跡管理まで効率化できる反社チェックツールの活用を検討してみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 反社チェックとは何ですか?
A. 反社チェックとは、取引の相手方などが暴力団をはじめとする反社会的勢力に該当しないかを、公開情報や専用ツールで確認する取り組みです。不動産取引では、売主・買主・借主・連帯保証人、法人なら代表者や実質的支配者までを対象に、契約締結前に確認します。法務省の指針が企業に取引先の審査や暴排条項の導入を求めており、不動産業でも契約実務に組み込むべき標準的な手順になっています。
出典・参考資料(1件)
Q. 不動産取引で反社チェックが必要なのはなぜですか? 不動産は反社に狙われやすいのですか?
A. 不動産取引で反社チェックが必要なのは、不動産が資金の洗浄や活動拠点の確保に利用されやすく、反社会的勢力との取引が会社の信用や契約の安定を損なうためです。政府も企業に対し、取引先の審査や契約書への暴排条項の導入で被害を防ぐよう求めています。確認を怠ると、売却の仲介で相手の属性に気づけないまま手続きが進んだ事例のように、後から発覚して契約解除や損害の問題に発展しかねません。
出典・参考資料(1件)
Q. 賃貸契約でも反社チェックは必要ですか?
A. 賃貸契約でも反社チェックは必要です。犯罪収益移転防止法(犯収法)の取引時確認義務は売買(およびその代理・媒介)が対象で賃貸には及びませんが、都道府県の暴力団排除条例(努力義務)と契約書の暴排条項に基づいて確認します。 貸主・借主に加え、連帯保証人(法人なら役員)も対象に含め、「犯収法の対象外だからチェックは不要」と誤解しないことが大切です。
出典・参考資料(1件)
Q. 反社チェックでは連帯保証人や法人の実質的支配者も確認する必要がありますか?
A. はい、取引の相手方本人だけでなく、連帯保証人や、法人の場合は代表者・役員・実質的支配者まで確認するのが基本です。国土交通省と不動産流通4団体のモデル暴排条項は、当事者本人とその役員に加え、反社会的勢力に自己の名義を利用させていないこと(名義貸し)まで確約の対象にしています。相手方だけを見て連帯保証人や名義の背後にいる人物を見落とすところで、確認の抜け漏れが起きます。
出典・参考資料(1件)
Q. 不動産仲介業者にはどこまでの調査義務がありますか?
A. 反社会的勢力を完全に見抜くまでの無制限の調査が法律上一律に義務づけられているわけではありませんが、公開情報の確認と契約書への暴排条項の反映を、記録を残して行っておくことが実務上の目安です。都道府県の暴排条例が媒介をする事業者にも確認の努力義務を課しており、法務省指針が取締役の善管注意義務の判断で参考にされうるとされているためです。
手順を踏んで確認し記録しておくことが、後日の説明責任に備えるうえで有効です。
出典・参考資料(1件)
Q. 反社チェックは無料のインターネット検索だけで十分ですか?
A. 無料のインターネット検索や新聞記事データベースは一次スクリーニングとして有効ですが、それだけでは十分でない場合があります。 同姓同名など関連性の低い情報が多くヒットして1件ずつの確認に手間がかかるうえ、確認した証跡も残りにくいためです。判断がつかないときは、専用の反社チェックツールや業界団体の照会、調査会社の精査を重ねると、ノイズを絞りながら精度と効率を上げられます。
Q. 反社かどうかは警察や暴力追放運動推進センターに問い合わせれば判定してもらえますか?
A. 暴力追放運動推進センターは相談・助言を担う機関で、個別の取引相手が反社会的勢力かどうかを判定して回答する窓口ではありません。 反社会的勢力の排除は、事業者自身が行う調査(自助)、不動産関係団体による情報提供(共助)、警察による情報提供(公助)を組み合わせる枠組みで整理されています。暴追センターや警察は、疑わしいと判断したときの相談先として活用します。
Q. 契約後に取引相手が反社会的勢力だと判明した場合はどうすればよいですか?
A. 国土交通省と不動産流通4団体のモデル暴排条項を契約書に入れておけば、催告なしで契約を解除できます。 そのため、自社の契約書式が役員・名義貸しまで対象に含み、解除の要件が催告不要になっているかを確認しておくと安心です。あわせて、いつ・誰を・何で・どこまで確認したのかを証跡として残しておくと、後から調査の妥当性を問われたときの説明材料になります。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















