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給与計算のやり方を3ステップで解説|総支給額・控除・手取りの計算式と料率、1人分の計算例つき

給与計算のやり方のサムネイル画像
給与計算ソフト比較表(2026年版)のプレビュー

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給与計算ソフト比較表(2026年版)

毎月の給与計算を、電卓や表計算ソフトで手作業されていませんか。基本給に残業代を足し、そこから社会保険料や税金を差し引く一連の流れは、項目が多いうえに料率も毎年のように変わるため、担当を任されたばかりの方ほど手が止まりがちです。

給与計算は、大きく「①総支給額を出す→②社会保険料と税金を控除する→③差引支給額(手取り)を求める」という3つのステップで進みます。各ステップで何を、どの計算式で求めるのかが分かれば、1人分の給与は自分で計算できます。

本記事では、この3ステップの手順を、社会保険料・所得税・住民税それぞれの計算式と令和8年度(2026年度)時点の料率とともに解説します。さらに、月給26万円の従業員1人分を総支給額から手取りまで通して計算した例も掲載しました。解説の対象は毎月の給与計算(月次)です。

給与の実務にはこのほか、賞与計算や年末調整、労働保険の年度更新といった年単位の業務もありますが、まずは毎月の計算の流れを押さえるのが基本です。

まずは自分の手で流れを一度たどってみて、そのうえで毎月の作業や料率改定への対応をどう楽にするかを考えていきましょう。

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給与計算の全体の流れ(総支給額→控除→差引支給額の3ステップ)

給与計算は、次の3つのステップで進みます。最終的に従業員へ支払う「差引支給額(手取り)」は、総支給額から控除の合計を引いた金額です。

  1. 総支給額を出す:勤怠を集計し、基本給・割増賃金(残業代など)・各種手当を合計します。額面の給与にあたる部分です。
  2. 控除額を出す:総支給額をもとに、社会保険料(健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険)と税金(所得税・住民税)を計算します。
  3. 差引支給額(手取り)を求める:総支給額から控除の合計を差し引きます。これが銀行口座へ振り込む金額です。

式にすると「差引支給額(手取り)=総支給額−(社会保険料+税金)」となります。以降では、①総支給額の出し方、②控除(社会保険料と税金)の計算、③差引支給額の順に、それぞれの求め方を具体的に見ていきます。②の控除は、計算の土台が異なる社会保険料と税金に分けて解説します。

給与計算の全体の流れを示した3ステップの図解。STEP1で基本給・割増賃金・各種手当を合計して総支給額(額面)を出し、STEP2で社会保険料(健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険)と税金(所得税・住民税)を計算し、STEP3で総支給額から控除の合計を差し引いた差引支給額(手取り)を求める流れ。差引支給額=総支給額−(社会保険料+税金)。

①総支給額の計算

ここからは、総支給額の出し方を、勤怠の集計・基本給・割増賃金・各種手当の順に解説します。総支給額は、これらを合計した額面の給与です。

勤怠の集計

最初に、対象となる給与計算期間(給与の締め日で区切った1か月)の勤怠を集計します。労働日数・実労働時間に加え、時間外労働(残業)・深夜労働・休日労働の時間、遅刻・早退・欠勤の時間を、タイムカードや勤怠管理システムの記録から確定させます。ここで集計した残業時間などが、次の割増賃金の計算に直接使われます。

基本給

基本給は、雇用契約で定めた基準内賃金(残業代や各種手当を除いた、基本となる賃金)です。月給制であれば毎月固定の金額を用います。欠勤や遅刻・早退があった場合は、その分を差し引きます。控除額の計算方法は就業規則で定めるのが前提です。一般的には、欠勤は「月給÷月の所定労働日数×欠勤日数」、遅刻・早退は「月給÷月の所定労働時間×不就労時間」で日割り・時間割りして差し引きます。

割る基準(所定労働日数・所定労働時間を1年間の月平均で固定するか、その月の実際の値を使うか)も就業規則の定めによります。

割増賃金の計算と割増率

時間外労働・深夜労働・休日労働に対しては、通常の賃金に割増率を上乗せした割増賃金(残業代など)を支払います。1時間あたりの基礎賃金に、労働時間と割増率を掛けて計算します。令和8年(2026年)時点の主な割増率は次のとおりです。

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時間外労働(1か月60時間以内の部分)時間外労働(1か月60時間を超える部分)深夜労働休日労働
割増率25%以上50%以上25%以上35%以上
対象となる労働法定労働時間(原則1日8時間・週40時間)を超える労働1か月の時間外労働が60時間を超えた部分午後10時から翌午前5時までの労働(時間外や休日労働と重なると加算)法定休日(週1日または4週4日)に行う労働

※労働基準法第37条および政令に定める最低の割増率(令和8年時点)。深夜労働は時間外・休日労働と別枠で、重なった場合はそれぞれの率を加算します。

時間外労働と休日労働の最低の割増率は、労働基準法第37条を受けた政令で次のように定められています。

労働基準法第三十七条第一項の政令で定める率は、同法第三十三条又は第三十六条第一項の規定により延長した労働時間の労働については二割五分とし、これらの規定により労働させた休日の労働については三割五分とする。

出典:労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令|e-Gov法令検索

月60時間を超える時間外労働の50%以上、深夜労働の25%以上は、労働基準法第37条本文が定めています。就業規則でこれらを上回る率を定めている場合は、その率を用います。ただし、割増が必要になるのは法定労働時間を超える残業で、所定労働時間は超えても法定労働時間の範囲内にとどまる残業(法定内残業)には、法律上の割増は必要ありません(通常の時間単価分の支払いは必要です)。

出典・参考資料(1件)

割増賃金の額は「1時間あたりの基礎賃金×割増率×時間数」で求めます。月給制の場合、1時間あたりの基礎賃金は、割増賃金の基礎に含める月給を1か月の所定労働時間数(月ごとに異なるときは1年間の1か月平均所定労働時間数)で割って計算します。

たとえば1か月の平均所定労働時間が160時間で、基礎となる月給が24万円なら、1時間あたりの基礎賃金は1,500円です。この人が時間外労働を10時間行った場合、時間外の割増賃金は「1,500円×1.25×10時間=18,750円」となります。

残業が深夜(午後10時〜翌午前5時)に及ぶと、時間外の割増と深夜の割増が重なります。たとえば所定労働時間が午前9時〜午後6時(休憩1時間)の人が午後10時30分まで残業したケースでは、時間帯を追うと次のようになります。午後6時〜午後10時は、法定労働時間(1日8時間)を超える時間外労働として25%以上の割増です。

続く午後10時〜午後10時30分は、時間外労働に深夜労働の割増が加わり、25%+25%=50%以上の割増になります。深夜労働の割増は、時間外労働や休日労働の割増とは別枠で加算する点に注意します。

各種手当(課税・非課税の区別)

役職手当・資格手当・家族手当・通勤手当などの各種手当を総支給額に加えます。このとき、所得税の対象になる手当と、非課税になる手当がある点に注意します。代表例が通勤手当で、公共交通機関を利用する場合は月15万円までが非課税です。非課税分は所得税の課税対象額の計算からは外れますが、総支給額(額面)には含まれます。

手当が所得税の課税対象になるか非課税になるかは、手当の種類ごとに決まっています。代表的なものを整理すると、次のとおりです。

  • 原則として課税される手当:役職手当・資格手当・住宅手当・家族(扶養)手当・地域手当・残業手当(割増賃金)など。これらは給与所得に含め、所得税の対象になります。
  • 非課税になる手当:通勤手当のうち一定額以下のもの(電車・バス通勤は月15万円まで)、転勤・出張の旅費のうち通常必要と認められるもの、宿直・日直の手当のうち一定額以下のものなど。

非課税の手当も、総支給額(額面)には含めたうえで、所得税の課税対象額を計算するときに差し引きます。

出典・参考資料(2件)

残業代の単価を計算するときの「基礎となる賃金」からは、一部の手当を除いてよいと法令で定められています。この点は記事後半の実務の注意で扱います。

②控除の計算―社会保険料(健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険)

ここからは、総支給額から差し引く社会保険料を、項目ごとに計算します。健康保険・厚生年金・介護保険は「標準報酬月額」を基礎に、雇用保険は「その月の賃金総額」を基礎に計算する点が異なります。まず、3つの保険料の土台となる標準報酬月額から見ていきます。

標準報酬月額とは・どう決まるか

標準報酬月額とは、健康保険・厚生年金・介護保険の保険料を計算するために、報酬月額を区切りのよい等級に当てはめた金額です。報酬月額には基本給だけでなく、通勤手当や残業手当なども含めます。ここで押さえておきたいのは、標準報酬月額はその月の総支給額そのものではなく、等級表に当てはめて決めた金額を一定期間固定して使う、という点です。

この標準報酬月額は、毎年決め直す「定時決定」と、大きな昇給・降給があったときの「随時改定」で決まります。原則としては、後述する定時決定で4〜6月の報酬の平均から決まった等級の金額を、その年の9月から翌年8月まで固定して使います。本記事後半の計算例では、分かりやすさのために標準報酬月額を総支給額と同額として計算しています。

定時決定は、毎年7月1日時点で、4月・5月・6月に受けた報酬の平均をもとに標準報酬月額を決め直す手続きです。日本年金機構は次のように説明しています。

事業主は、7月1日現在で使用している全被保険者の3カ月間(4月、5月、6月)の報酬月額を算定基礎届により届出し、厚生労働大臣はこの届出内容に基づき、毎年1回標準報酬月額を決定し直します。これを定時決定といいます。決定し直された標準報酬月額は、9月から翌年8月までの各月に適用されます。

出典:定時決定(算定基礎届)|日本年金機構

一方の随時改定は、定時決定を待たずに標準報酬月額を変える手続きです。次の3つをすべて満たす場合に、4か月目から改定します。

  • 昇給・降給などで固定的賃金に変動があった
  • 変動月以後3か月の報酬の平均で計算した標準報酬月額が、従前と2等級以上変わった
  • その3か月とも、支払基礎日数が17日以上ある

昇給したのに標準報酬月額を据え置くと保険料の計算を誤るため、賃金に変動があった従業員は要件を確認しましょう。

出典・参考資料(1件)

健康保険料

健康保険料は「標準報酬月額×健康保険料率」で計算し、会社と従業員が半分ずつ負担します(労使折半)。全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している場合、健康保険料率は都道府県ごとに異なるため、率を一律に当てはめず、協会けんぽが公表する都道府県別・等級別の保険料額表で該当する金額を確認します。たとえば東京都の令和8年度の健康保険料率は9.85%です(令和8年3月分・4月納付分から適用)。

あわせて、令和8年度からは健康保険料に「子ども・子育て支援金」(率0.23%、令和8年4月分・5月納付分から)が加わります。こちらも労使折半で、協会けんぽの保険料額表に金額が示されています。

出典・参考資料(2件)

厚生年金保険料

厚生年金保険料は「標準報酬月額×18.3%」で計算し、会社と従業員が折半します。従業員負担は半分の9.15%です。厚生年金保険料率は平成29年9月以降18.3%で固定されており、日本年金機構は次のように示しています。

厚生年金保険料率は18.3%で固定されています。(中略)事業主と被保険者とが半分ずつ負担します。

出典:厚生年金保険の保険料|日本年金機構

実際の金額は標準報酬月額の等級ごとに定められており、日本年金機構の保険料額表で確認できます。たとえば標準報酬月額が26万円(厚生年金保険の第17等級)の場合、厚生年金保険料の折半額は23,790円です(令和8年度)。

出典・参考資料(1件)

介護保険料

介護保険料は、40歳から64歳までの従業員(介護保険第2号被保険者)だけが対象です。標準報酬月額に介護保険料率を掛け、健康保険料に上乗せして折半で負担します。協会けんぽの介護保険料率は全国一律で、令和8年度は1.62%です。39歳以下と65歳以上の従業員には、給与計算での介護保険料の控除は発生しません。

たとえば標準報酬月額が26万円で対象年齢の従業員なら、介護保険料の折半額は「260,000円×1.62%÷2=2,106円」が健康保険料に上乗せされます。

出典・参考資料(1件)

雇用保険料

雇用保険料は、健康保険・厚生年金と違い、標準報酬月額ではなく「その月の賃金総額×雇用保険料率」で計算します。賃金総額には、基本給・残業代・各種手当・通勤手当などその月に支払う賃金を含めます。料率は事業の種類で異なり、多くの企業が該当する一般の事業では令和8年度(令和8年4月1日〜令和9年3月31日)の従業員負担が0.5%です。

農林水産・清酒製造の事業や建設の事業は、これと料率が異なります。料率は毎年見直されるため、年度ごとに最新の値を確認しておきましょう。

事業の種類別の令和8年度の雇用保険料率(従業員負担・事業主負担・合計)は次のとおりです。給与から差し引くのは、このうち従業員負担分です。

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一般の事業農林水産・清酒製造の事業建設の事業
従業員負担0.5%(5/1000)0.6%(6/1000)0.6%(6/1000)
事業主負担0.85%(8.5/1000)0.95%(9.5/1000)1.05%(10.5/1000)
雇用保険料率(合計)1.35%(13.5/1000)1.55%(15.5/1000)1.65%(16.5/1000)

※令和8(2026)年4月1日〜令和9(2027)年3月31日の雇用保険料率(厚生労働省公表)。

出典・参考資料(1件)

②控除の計算―税金(所得税・住民税)

社会保険料を計算したら、続いて税金を控除します。所得税は毎月の給与から会社が計算して源泉徴収し、住民税は市区町村から通知された金額を差し引きます。この2つは求め方がまったく異なります。

所得税(源泉徴収税額表の見方)

毎月の給与から差し引く所得税(源泉所得税)は、国税庁が毎年公表する「給与所得の源泉徴収税額表」の月額表を使って求めます。手順は次のとおりです。

  1. その月の給与から、社会保険料(健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険の従業員負担分)を差し引いた「社会保険料等控除後の給与等の金額」を求めます。
  2. 月額表で、その金額が当てはまる行を探します。
  3. 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出がある従業員は甲欄、提出がない従業員は乙欄を見ます。甲欄では、その行と扶養親族等の数の列が交わる金額が源泉徴収する税額です。

国税庁の税額表は、甲欄の税額の求め方を次のように説明しています。

まず、その人のその月の給与等の金額から、その給与等の金額から控除される社会保険料等の金額を控除した金額を求めます。(中略)その行と扶養親族等の数に応じた甲欄の該当欄との交わるところに記載されている金額を求めます。これが求める税額です。

出典:令和8年分 源泉徴収税額表|国税庁

たとえば社会保険料等を控除した後の給与が221,806円で、扶養控除等申告書の提出があり、扶養親族等が0人の場合を考えます。令和8年分の月額表では「221,000円以上224,000円未満」の行と甲欄の「0人」の列が交わる5,150円が、その月に源泉徴収する所得税です。ここでいう「扶養親族等の数」は、源泉控除対象配偶者と控除対象扶養親族の数を合計したものです。

税額表は年分ごとに更新されます。令和8年分は令和7年度の税制改正で扶養親族等の数の算定方法などが変わっているため、必ず令和8年分の税額表を使います。

住民税(特別徴収の通知額を月割り)

住民税は、所得税のように会社が毎月計算するものではありません。前年の1月1日から12月31日までの所得をもとに市区町村が税額を計算し、会社(特別徴収義務者)へ「特別徴収税額の決定通知書」で通知します。会社はその年税額を6月から翌年5月までの12回に分けて、毎月の給与から差し引いて納めます。総務省は特別徴収を次のように説明しています。

特別徴収とは、納税義務者以外の者(給与の支払をする会社など)が、納税義務者から税金を徴収して、納税義務者の代わりに納める方法をいいます。(中略)会社がその会社員の個人住民税を給与から天引きして市町村に納めることになります。

出典:個人住民税|総務省

会社側で住民税の税額を計算する必要はなく、通知された金額をそのまま月割りで控除します。前年に所得がない新入社員などは、原則として1年目に住民税の控除が発生しません。

会社が計算しないとはいえ、住民税額がどう決まるかを知っておくと通知額のおおよその見当がつきます。住民税は、前年の所得に応じて課される「所得割」と、所得にかかわらず定額でかかる「均等割」で構成されます。所得割の標準税率は課税所得のおおむね10%(市区町村民税6%+道府県民税4%)、均等割は標準で年4,000円(市区町村民税3,000円+道府県民税1,000円)です。

このほか森林環境税(国税)が年1,000円あわせて徴収されます。市区町村はこれらを計算した決定通知書を毎年5月から6月ごろに会社へ送り、会社は6月支給分の給与から新年度の住民税に切り替えて控除します。

ここまでの控除は、計算の土台がそれぞれ異なります。何を基礎に計算するかを整理すると、次のとおりです。

給与から差し引く控除ごとに計算の基礎が異なることを示した図解。健康保険・厚生年金・介護保険は標準報酬月額に保険料率を掛け、雇用保険はその月の賃金総額に雇用保険料率を掛け、所得税(源泉徴収)は源泉徴収税額表の月額表(甲欄・乙欄)で税額を求め、住民税は市区町村からの通知額を12回に分けて月割りで控除する。

③差引支給額(手取り)を求める

最後に、総支給額から控除の合計を差し引いて、差引支給額(手取り)を求めます。控除の合計は、②で計算した社会保険料(健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険の従業員負担分)と税金(所得税・住民税)を合わせた金額です。

「差引支給額(手取り)=総支給額−(社会保険料+所得税+住民税)」で計算し、この金額を従業員の口座へ振り込みます。あわせて、各項目の金額を記載した給与明細を作成し、賃金台帳にも記録します。次の章で、ここまでの流れを1人分の数字で通して確認します。

【計算例】月給26万円の従業員1人分を通しで計算する

ここまでの3ステップを、具体的な数字で通して計算してみます。次の前提を置いた仮の例です。社会保険料は都道府県や加入する保険者、従業員の年齢によって変わるため、実際の計算では自社の条件に置き換えてください。

標準報酬月額は毎月の総支給額そのものではなく、通常は年金事務所からの決定通知や保険料額表の等級で確認します。この例では分かりやすさのため、報酬水準から決まる標準報酬月額を総支給額と同じ26万円としています。

また健康保険・厚生年金の保険料は本来、保険料額表に載っている折半額をそのまま使うのが正確です(等級の区切りにより料率計算と数円ずれることがあります)。以下では計算過程を示すために料率から算出しています。

  • 勤務地:東京都(協会けんぽ加入)/時点:令和8年度(2026年度)
  • 従業員:35歳・扶養親族なし(介護保険の対象外、所得税は甲欄・扶養0人)
  • その月の総支給額:260,000円(残業・欠勤はなく、標準報酬月額も260,000円とする)
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総支給額健康保険料(従業員負担)子ども・子育て支援金(従業員負担)厚生年金保険料(従業員負担)介護保険料雇用保険料(従業員負担)社会保険料の合計社会保険料等控除後の給与所得税(源泉徴収)住民税控除の合計差引支給額(手取り)
金額260,000円12,805円299円23,790円0円1,300円38,194円221,806円5,150円10,000円53,344円206,656円
内訳・計算式基本給・手当の合計(この例では残業・欠勤なし)標準報酬月額260,000円×東京都の料率9.85%÷2標準報酬月額260,000円×0.23%÷2(令和8年4月分〜)標準報酬月額260,000円×18.3%÷240歳未満のため対象外賃金総額260,000円×0.5%(一般の事業・令和8年度)上記の従業員負担分の合計260,000円−38,194円令和8年分の月額表・甲欄・扶養親族等0人市区町村からの通知額(この例では仮に10,000円)社会保険料38,194円+所得税5,150円+住民税10,000円総支給額260,000円−控除合計53,344円

※料率・税額は令和8年度(2026年度)時点。健康保険料率は都道府県で異なり、住民税は前年所得により決まる通知額のため、金額は前提を置いた一例です。

この例では、額面26万円に対して手取りは約20万7千円で、控除の合計は5万円強です。社会保険料が控除の大部分を占め、なかでも厚生年金保険料の負担が大きいことが分かります。自社の従業員の標準報酬月額・年齢・勤務地に置き換えれば、同じ手順で手取りを計算できます。

この例は40歳未満で、介護保険料がかからない前提です。従業員が40歳から64歳(介護保険第2号被保険者)の場合は、健康保険料に介護保険料が上乗せされます。同じ標準報酬月額26万円なら、介護保険料の従業員負担は「260,000円×1.62%÷2=2,106円」(令和8年度の協会けんぽの介護保険料率1.62%)で、その分だけ控除が増えます。

控除の合計は55,450円、手取りは204,550円となり、40歳未満の場合より約2,100円少なくなります。

給与計算で間違えやすい点と実務の注意

手計算・表計算で給与計算を行うときに、間違えやすい点を整理します。いずれも、金額のずれや法令違反につながりやすい論点です。

端数処理のルール

給与計算では、労働時間や金額に1円未満・1時間未満の端数が出ます。事務を簡単にするための端数処理として、行政通達で次の方法が認められています。労働時間については、1か月の時間外・休日・深夜労働の合計時間に30分未満の端数があれば切り捨て、30分以上は1時間に切り上げます。金額については、1時間あたりの賃金額や割増賃金額の50銭未満は切り捨て、50銭以上は1円に切り上げます。

1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。

出典:賃金計算の端数の取扱い(昭和63年3月14日 基発第150号)|厚生労働省 愛知労働局

注意したいのは、この端数処理が「常に労働者の不利にならない範囲」で認められている点です。たとえば5分の遅刻を30分としてカットするような、実際の不就労を超える切り上げは、賃金の全額払いに反し違法とされます。端数処理は1か月の合計に対して行うもので、1日ごとの労働時間を切り捨てることはできません。

健康保険料・厚生年金保険料の従業員負担分は、協会けんぽや日本年金機構の保険料額表に端数処理済みの折半額が示されています。表の金額をそのまま使えば、保険料の端数処理を個別に行う必要はありません。

割増賃金の基礎に含める手当と料率改定の反映漏れ

残業代(割増賃金)の1時間あたり単価を計算するとき、基礎となる賃金から除いてよい手当は、法令で限定列挙されています。労働基準法施行規則第21条は、家族手当・通勤手当のほか、次の賃金を割増賃金の基礎に算入しないと定めています。

一 別居手当 二 子女教育手当 三 住宅手当 四 臨時に支払われた賃金 五 一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金

出典:労働基準法施行規則 第21条|e-Gov法令検索

割増賃金の基礎から外せるのは家族手当・通勤手当とこの5つに限られ、役職手当や資格手当などはそれ以外なので基礎に含めます。これらを誤って除外すると残業代の単価が過小になり、未払いにつながります。また、社会保険料率や税額表は毎年のように改定されるため、古い料率のまま計算していないか、年度替わりに確認することも欠かせません。

賃金支払の五原則・締め日/支払日・スケジュール管理

賃金の支払い方には、労働基準法第24条から導かれる「賃金支払の五原則」(通貨払い・直接払い・全額払い・毎月1回以上払い・一定期日払い)があります。給与から社会保険料や税金を天引きできるのは、この全額払いの原則の例外として、法令に定めがある場合や労使協定がある場合に限られます。

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。(中略)賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。

出典:労働基準法 第24条(賃金の支払)|e-Gov法令検索

実務では、勤怠の締め日から支払日までの間に、集計・計算・振込手続き・納付までを終える必要があります。社会保険料の納付や住民税・源泉所得税の納付にも期限があるため、締め日から逆算した余裕のあるスケジュールを組みます。最低賃金を下回っていないか、社会保険の加入要件を満たす従業員を漏れなく加入させているかも、あわせて確認します。

賃金台帳の保存と情報漏えい・転記ミスの防止

給与計算の結果は賃金台帳に記録し、保存する義務があります。また給与情報は従業員の重要な個人情報のため、表計算ファイルの誤送信や共有範囲の設定ミスによる情報漏えいに注意します。手作業では、勤怠データや料率の転記ミスも起こりがちです。計算後は、支給・控除の各項目と合計、前月との差が大きい箇所を点検し、給与明細と賃金台帳の数字が一致しているかを確認します。

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手計算をやめて給与計算ソフトで効率化する

ここまでの手順は、従業員が数名のうちは表計算ソフトでも対応できます。しかし人数が増えるほど、勤怠集計・料率の確認・端数処理・年末調整の負担は大きくなり、料率改定への追随も毎年の手間になります。こうした作業を自動化するのが給与計算ソフトです。総支給額の計算から社会保険料・税金の自動計算、Web給与明細の配布、年末調整までを一貫して行え、料率改定にも自動で対応します。

ここでは、小規模から中小企業でも導入しやすい給与計算ソフトを紹介します。まずは主な違いを一覧で確認しましょう。

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サービス名弥生給与 Nextfreee人事労務マネーフォワード クラウド給与ジョブカン給与計算
提供形態/対象規模クラウド型
300名未満の中小企業向け
クラウド型
(労務管理一体型)
クラウド型
全規模(プランで細分化)
クラウド型
小規模〜(5名まで無料)
初期費用0円0円0円記載なし
(月額料金のみ明記)
月額費用(最小構成)1,700円〜
(税抜・年契約時の月あたり換算、エントリープラン)
2,000円〜
(5名・ミニマムプラン)
2,480円〜
(年払い換算・ひとり法人プラン)
0円(無料プラン・5名まで)
有料プランは月2,000円〜
無料お試し最大2か月(初回申込限定)1ヶ月30日間(無料プランは5名まで恒久)
主な対応業務(給与計算・Web給与明細・年末調整)給与計算・Web給与明細・年末調整
(年末調整はベーシックライト以上)
給与計算・Web給与明細・年末調整給与計算・Web給与明細
年末調整は別サービス連携
給与計算・Web給与明細・年末調整
(年末調整は有料プラン)
法改正の自動アップデート公式が「法令改正にも自動対応」と明記要お問い合わせ公式が「税制改正・保険料率改正も自動アップデート」と明記所得税・社会保険料を法令準拠で自動計算
詳細情報公式資料を見る公式サイト公式サイト公式サイト

※料金・機能は2026年9月時点の各社公式サイトの公表情報にもとづく目安です(金額は税抜表記を含みます)。弥生給与 Nextのエントリーライトプランは2026年7月28日に新規受付終了のため、最小構成にはエントリープランを掲載しています。最新の内容は各社公式サイト・資料でご確認ください。

以下の記事では、ここで挙げた4サービスを含む給与計算ソフト13製品を、料金・対応業務・勤怠や会計との連携といった観点から比較し、失敗しない選び方まで詳しく解説しています。自社に合う1台をじっくり比べたい方は、あわせてご覧ください。

1. 弥生給与 Next(弥生株式会社)

弥生給与 Nextの公式サイト

弥生給与 Nextは、会計ソフトを提供する弥生株式会社が展開するクラウド型の給与・勤怠・労務ソフトです。給与計算・賞与計算・年末調整に加え、勤怠管理や労務手続きまでを1つのサービスでカバーし、法令改正にも自動で対応します。かつてのデスクトップ版「弥生給与」の実質的な後継として提供されています。

無料お試しプランに加えて有料プランも用意されており、初めて給与計算ソフトを導入する小規模事業者でも始めやすい料金体系です。公式には300名未満の中小企業を主な対象としています(具体的な料金は上の比較表を参照)。

2. freee人事労務(フリー株式会社)

freee人事労務の公式サイト

freee人事労務は、勤怠管理・給与計算・年末調整・入退社手続き・マイナンバー管理までを一元化するクラウド労務管理システムです。給与計算だけでなく労務手続きも一体で運用できる点が特徴で、従業員はスマートフォンアプリやLINEから勤怠打刻や給与明細の確認、各種申請を行えます。

初期費用はなく、月額はミニマムプランで2,000円から(5名利用時)と、少人数から導入できます。無料でのお試しも可能なため、労務手続きまでまとめてデジタル化したい事業者に向きます。

3. マネーフォワード クラウド給与(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウド給与の公式サイト

マネーフォワード クラウド給与は、月給制・日給制・時給制に対応した法人向けの給与計算ソフトです。所得税や社会保険料の自動計算、Web給与明細の配信、マイナンバー管理をカバーし、年末調整は同社の「マネーフォワード クラウド年末調整」との連携で対応します。税制改正や保険料率の改正にも自動でアップデートされ、会計・勤怠などのクラウドサービスとデータ連携できる点も強みです。

初期費用は0円で、月額2,480円から利用できます。1か月の無料トライアルが用意されており、バックオフィス業務をマネーフォワードのサービスでそろえたい事業者に適しています。

4. ジョブカン給与計算(株式会社DONUTS)

ジョブカン給与計算の公式サイト

ジョブカン給与計算は、勤怠管理や労務管理を展開する「ジョブカン」シリーズの給与計算ソフトです。月例給与・賞与の自動計算、Web給与明細や源泉徴収票の配布、年末調整、社会保険・労働保険の書類作成に対応します。同シリーズの「ジョブカン勤怠管理」「ジョブカン労務HR」とデータ連携できます。

従業員5名以下であれば、期間の制限なく無料プランを利用できます。有料プランも1ユーザーあたり月額400円(税抜、最低利用料金2,000円)と手頃で、まず無料の範囲で試したい小規模事業者に向きます。

ここまでは自社でソフトを使って給与計算を行う前提で紹介しましたが、担当者を置く余力がない、給与計算そのものを任せたいという場合は、業務ごと外部へ委託する方法もあります。以下の記事では、委託できる業務範囲や料金体系、企業規模別の選び方を比較しているので、外注も視野に入れて検討したい方はあわせてご覧ください。

まとめ

給与計算は、①総支給額を出す→②社会保険料と税金を控除する→③差引支給額(手取り)を求める、という3ステップで進みます。総支給額は勤怠の集計から基本給・割増賃金・手当を積み上げて求め、控除は社会保険料(健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険)と税金(所得税・住民税)に分けて計算します。

社会保険料は標準報酬月額、雇用保険は賃金総額、所得税は源泉徴収税額表、住民税は市区町村からの通知額と、それぞれ計算の土台が異なる点を押さえておくと迷いません。

手順どおりに計算すれば1人分の給与は求められますが、人数が増えるほど、料率の確認・端数処理・年末調整の負担は大きくなります。毎月の作業や法令改正への対応を効率化したい場合は、給与計算ソフトの導入も検討してみてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. 給与計算のやり方(手順)は?

A. 給与計算は、「①総支給額を出す→②社会保険料と税金を控除する→③差引支給額(手取り)を求める」の3ステップで行います。①では勤怠を集計し、基本給・割増賃金(残業代など)・各種手当を合計して額面の総支給額を出します。②では総支給額をもとに社会保険料(健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険)と税金(所得税・住民税)を計算し、③でその控除の合計を総支給額から差し引いて手取りを求めます。

Q. 給与計算で手取り(差引支給額)はどう計算しますか?

A. 給与の手取り(差引支給額)は、「総支給額−控除の合計(社会保険料+所得税+住民税)」で計算します。総支給額は基本給・割増賃金・手当を合計した額面で、そこから健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険の従業員負担分と、所得税・住民税を差し引いた金額が、実際に口座へ振り込む差引支給額です。控除の各項目の求め方が分かれば、この引き算で手取りが確定します。

Q. 標準報酬月額とは何ですか?

A. 標準報酬月額とは、健康保険・厚生年金・介護保険の保険料を計算するために、報酬月額を区切りのよい等級に当てはめた金額です。報酬には基本給のほか、通勤手当や残業手当なども含めます。原則として毎年4〜6月に受けた報酬の平均をもとに「定時決定」で決め直され、その年の9月から翌年8月まで適用されます(昇給・降給が大きいときは「随時改定」で見直します)。この金額に保険料率を掛けて社会保険料を計算します。

出典・参考資料(1件)

Q. 給与計算で間違えやすいのはどこですか?

A. 給与計算で誤りが生じやすいのは、残業代(割増賃金)の計算と、社会保険料率・税額表の改定の反映です。割増賃金の単価計算では、基礎に含めるべき役職手当などを誤って除外すると残業代が過小になり、未払いにつながります。また、労働時間の端数処理を1日ごとに切り捨てるのも誤りです。加えて、保険料率や源泉徴収税額表は毎年のように改定されるため、古い数値のまま計算していないか年度替わりに確認します。

Q. 社会保険料率や税額表の改定には、どう対応すればよいですか?

A. 料率や税額表の改定には、協会けんぽ・日本年金機構・国税庁・厚生労働省が公表する最新の料率・税額表を確認し、その年度版で計算することで対応します。健康保険料率・介護保険料率は毎年3月分(4月納付分)から、雇用保険料率は毎年4月から、源泉徴収税額表は年分ごとに更新されます。年度替わりに古い数値を使わないよう、改定情報を確認するタイミングを運用ルールに組み込んでおくと、反映漏れを防げます。

Q. 給与計算は毎月必ず行わなければなりませんか?

A. はい、給与計算は毎月行う必要があります。労働基準法が賃金を「毎月1回以上、一定の期日を定めて」支払うよう定めているため(賃金支払の五原則)、あらかじめ決めた支払日に間に合うよう、毎月決まったタイミングで計算します。勤怠の締め日から支払日までの間に、集計・計算・振込・納付までを終えられる余裕のあるスケジュールを組むことが大切です。

出典・参考資料(1件)

Q. 給与計算に間違いが見つかった場合、どう修正すればよいですか?

A. 給与の過不足が見つかった場合は、不足分は発覚後すみやかに支払い、控除しすぎた分は従業員に説明したうえで翌月の給与で精算するのが一般的です。特に賃金の不足(未払い)は速やかな支払いが求められるため、放置は避けます。原因が料率の誤りや勤怠の転記ミスであれば、同じ誤りが他の従業員にも及んでいないかをあわせて点検すると、再発を防げます。

Q. 給与計算は自社で行うべきですか、給与計算ソフトの導入を検討すべきですか?

A. 自社で続けるかソフトを導入するかは、従業員数と雇用形態の複雑さを目安に判断します。従業員が数名で計算項目が限られるうちは表計算ソフトでも対応できますが、人数が増えたり雇用形態が複数あったりすると、勤怠集計・料率改定への対応・年末調整の負担が大きくなります。

給与計算ソフトは社会保険料や所得税の自動計算、Web給与明細の発行、料率改定への自動対応ができるため、手作業のミスや毎月の負担を減らしたい場合の選択肢になります。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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