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自治体のWeb3活用とは?NFT・デジタル住民票・DAOの事例と導入の進め方

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ふるさと納税の返礼品NFT(非代替性トークン。偽造や複製が難しいデジタル証明)や、購入すると地域のデジタル住民として扱われるデジタル住民票、地域運営に住民や地域ファンが参加するDAO(分散型自律組織)。こうしたWeb3(ブロックチェーンを基盤にした次世代のインターネット技術の総称)の手法を、関係人口づくりや財源確保に結びつける自治体が全国で増えています。

一方で、いざ自分の自治体で検討しようとすると、「どこが・何を・どんな狙いで実施し、どれくらいの成果が出たのか」という前例が散らばっていて、全体像がつかみにくいのが実情です。事例をたどれても、そこから「自庁で始めるには何から手をつけ、いくらかかり、誰に頼めばよいか」までは見えてきません。

本記事では、まず全国の自治体のWeb3活用事例を、自治体名・取り組み・実施主体とともに一覧で整理します。そのうえで、ふるさと納税NFTやデジタル住民票などのユースケース別の中身、導入の進め方と費用の目安、庁内合意形成・補助金・法規制で押さえる注意点、つまずきやすいポイントと回避策、そして相談できる支援サービスまでを順に解説します。

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全国の自治体Web3活用事例一覧

まずは、他の自治体が実際にどんなWeb3施策を手がけているのかを一覧で示します。下の表は、自治体・地域名、取り組み(ユースケース)、内容と公表されている数値、実施主体を並べたものです。自分の課題に近い行から読み始めると、どの手法が候補になるかの当たりが付きます。

表を見るときの注意点として、多くの事例は自治体が単独で実施しているわけではなく、専門企業・大学・金融機関との連携で成り立っています。相談先を考える材料として、実施主体もあわせて確認してください。また、公表されている成果は発行数や参加者数が中心で、関係人口が税収や移住にどう結びついたかを示すデータは各自治体とも限定的です。数値のある事例から施策のイメージをつかむ材料としてご覧ください。

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全国の自治体Web3活用事例新潟県長岡市(山古志地域)北海道余市町北海道上士幌町岩手県遠野市和歌山県白浜町山口県美祢市広島県安芸高田市三重県鳥羽市・鹿児島県奄美市ほか北海道今金町・栃木県芳賀町ほか福島県会津若松市/岐阜県高山市ほか
取り組み(ユースケース)Nishikigoi NFT/デジタル村民(DAO・関係人口)ふるさと納税NFT(返礼品)ふるさと納税NFT(返礼品)観光・来訪証明NFTふるさと納税返礼品NFTデジタル住民票NFT(関係人口)デジタル住民票NFT(関係人口)体験型NFT(観光・関係人口)地域おこし協力隊DAO(DAO・関係人口)デジタル地域通貨(トークン)
内容・公表数値錦鯉アートのNFTを電子住民票として発行。デジタル村民1,032名(2022年11月28日時点)が、実住民794名(同年12月1日時点)を上回るアート作品54種類を1枚12万円から、Polygonチェーンで発行クリスマスのドローンショー映像をNFTアート返礼品として2022年に提供遠野物語を題材にした参加型NFT。提携店・公共施設のQRでチェックインしアイテムを取得する回遊型人気NFT「CryptoNinja Partners」とのコラボ返礼品222種を1枚30,000円で。円建て寄付で取得でき暗号資産は不要1個1,000円で限定2,000個を抽選販売(2023年7月)。秋芳洞入場無料などの特典。販売開始2分で申込が予定数を超過1個1,000円のデジタル住民票NFTを限定3,000個で抽選販売(2024年4月)。日本円・クレジットカードで購入でき専用ウォレットや暗号資産は不要。県外での神楽公演1,000円割引などの特典地域の特別な体験をNFT化する「KOKYO NFT」で関係人口創出の実証(第1弾2023年2月)地域おこし協力隊制度と連動し、地域ファンがDAOで地域づくりに参加。複数自治体で運営会津大学が導入したブロックチェーン基盤の「白虎」や、電子地域通貨の「さるぼぼコイン」(飛騨信用組合)など。地域内での決済・ポイントに活用
実施主体山古志住民会議+株式会社TART余市町+株式会社あるやうむ+株式会社トラストバンク上士幌町+株式会社トラストバンク遠野市+株式会社トラストバンク白浜町+株式会社あるやうむ+KDDI株式会社美祢市+東武トップツアーズ株式会社ほか安芸高田市+東武トップツアーズ株式会社+メディアエクイティ株式会社(HEXA)博報堂+日本航空(自治体は連携先)各自治体+株式会社あるやうむ白虎=会津大学ほか/さるぼぼコイン=飛騨信用組合(いずれも自治体単独ではない)

各事例の出典は以下のとおりです。数値や開始時期は発表時点のもので、最新の状況は各自治体・実施企業の公表資料でご確認ください。

出典・参考資料(10件)

ユースケース別に見る自治体のWeb3活用

ここからは、事例で見た取り組みを施策の型ごとに整理し、それぞれの中身と使い分けを解説します。自治体のWeb3活用は大きく、ふるさと納税NFT・デジタル住民票・地域通貨・DAO・観光NFT、そのほかメタバースや環境・文化保全との組み合わせに分かれます。

解決したい行政課題から、相性の良い手法の当たりを付けると選びやすくなります。おおまかな対応は次のとおりです。

  • 寄付・財源を増やしたい:ふるさと納税NFT(返礼品)
  • 移住につながる関係人口を増やしたい:デジタル住民票NFT、DAO・関係人口創出
  • 観光客の周遊・再訪を促したい:観光・来訪証明NFT
  • 域内消費を循環させたい:地域通貨・地域ポイント
  • 住民や地域ファンに運営へ参加してほしい:DAO・関係人口創出

ふるさと納税NFT(返礼品)

アート作品や地域の記念品をNFTとして発行し、ふるさと納税の返礼品にする手法です。物流を伴わずに提供でき、二次流通での話題づくりや、寄付者との継続的な関係づくりにつなげやすい点が特徴です。

北海道では2022年に、上士幌町がドローンショー映像を、余市町がアート作品を、それぞれNFT返礼品として相次いで導入しました。和歌山県白浜町は、人気NFTコレクションとコラボした222種の返礼品を提供しています。ふるさと納税の返礼品である以上、返礼割合や地場産品といったルールの対象になる点は、後述の法規制で触れます。

デジタル住民票・市民証NFT

NFTを購入・取得した人を「デジタル住民」「デジタル市民」として扱い、地域の特典やコミュニティへの参加権を提供する手法です。実際に移住しなくても地域と継続的に関われる仕組みで、関係人口づくりの入り口として使われます。

山口県美祢市は、1個1,000円のデジタル住民票NFTを限定2,000個で抽選販売し、秋芳洞の入場無料などの特典を付けました。広島県安芸高田市も2024年に、同じく1個1,000円のデジタル住民票NFTを限定3,000個で抽選販売しています。日本円・クレジットカードで購入でき専用ウォレットが不要な設計とし、県外での神楽公演1,000円割引などの特典を付けました。

ここで注意したいのは、この「住民票」はあくまで施策上の呼び名で、住民基本台帳法に基づく住民票とは別物である点です。法的な位置づけは後述します。

地域通貨・地域ポイント(トークン)

ブロックチェーンを基盤にしたデジタル通貨やポイントを地域内で流通させ、消費の域内循環や住民の地域活動を促す手法です。会津大学が導入したブロックチェーン基盤の「白虎(Byacco)」が代表例です。

より身近には、飛騨信用組合の「さるぼぼコイン」のような電子地域通貨とも地続きといえます。ただしさるぼぼコインはブロックチェーンを前提としないため、Web3的な地域通貨を考える際の参照例として押さえておくとよいでしょう。

この領域で押さえておきたいのは、発行主体が自治体単独とは限らない点です。白虎は公立大学、さるぼぼコインは金融機関が中心となっており、自治体は連携先として関わる形が多く見られます。また、決済に使える通貨やポイントは、返礼品NFTと違って資金決済法上の前払式支払手段や暗号資産に該当し得るため、設計段階での法的な確認が欠かせません。

DAO・関係人口創出

DAO(分散型自律組織)は、特定の管理者に依存せず、参加者がトークンや投票を通じて意思決定に関わる組織の形です。地域づくりに応用すると、住民だけでなく地域外のファンも運営に参加でき、関係人口を能動的な担い手に変えられます。

新潟県長岡市の山古志地域では、錦鯉アートのNFTを電子住民票として発行し、DAOで地域づくりを進めています。政府の事例資料によると、NFTを保有するデジタル村民は次のように、実際の住民数を上回っています。

NishikigoiNFTを保有するデジタル村民は1,032名(2022年11月28日現在)/山古志住民 794名(2022年12月1日現在)

出典:デジタル田園都市国家構想 事例(新潟県長岡市)|内閣官房・内閣府

また、総務省の地域おこし協力隊制度と組み合わせた「地域おこし協力隊DAO」も、北海道今金町や栃木県芳賀町など複数の自治体で運営されています。制度に紐づく財源や人材と、DAOによる地域ファンの巻き込みを両立させる形です。

DAOという組織形態そのものの仕組みや意思決定の進め方、地域以外の分野も含めた成功事例は、以下の記事で詳しく解説しています。関係人口を能動的な担い手に変える設計を具体的に検討する際の参考になります。

観光・来訪証明NFT

観光地や店舗を訪れた証明としてNFTを配布し、周遊やリピートを促す手法です。岩手県遠野市は、提携店や公共施設のQRコードでチェックインするとアイテムを取得できる参加型NFTを、遠野物語を題材に提供しました。

三重県鳥羽市などが連携した「KOKYO NFT」は、地域の特別な体験そのものをNFT化し、関係人口の創出を狙う実証です。こちらは博報堂と日本航空が主導し、自治体が連携先となる民間主導型として進められています。

メタバース・環境保全などとの組み合わせ

ここまでの手法に加え、仮想空間(メタバース)上に観光や移住相談の場を設けたり、自然環境・伝統文化の保全への支援をNFTやトークンで集めたりする活用もあります。いずれも単独で完結させるより、これまでのユースケースと組み合わせて関係人口の接点を増やす補助的な使い方が中心です。地域資源そのものの価値を裏づけて権利化するRWA(現実資産のトークン化)と組み合わせる動きも出ています。

環境・インフラ分野では、電力会社が主導し、住民が電柱の写真を投稿してインフラ保全に参加する「PicTrée(ピクトレ)」のように、企業が主導して地域を巻き込む周辺的な取り組みも見られます。

農業分野でも、自治体が事業化した取り組みが現れています。福島県西会津町が官民連携で進める「石高プロジェクト」は、収穫前の米を予約購入し、秋の収穫量に応じて受取量が変わる仕組みをブロックチェーンで記録します。予約購入した消費者が生産リスクの一部を分担する試みで、ふるさと納税や観光といった代表的なユースケースにとどまらず、地域の一次産業を支える使い方も現れ始めています。

出典・参考資料(2件)

自治体がWeb3を導入する進め方と費用・体制

ここからは、自庁で施策を検討する場合の進め方と、費用・体制のおおよその目安を解説します。特定のサービスの手順ではなく、自治体のWeb3施策に共通する一般的な流れとして整理します。

構想からPoC・調達・本格導入・運用までの流れ

まず取り組むのは構想の整理です。「NFTをやる」こと自体を目的にせず、関係人口の増加・財源確保・観光周遊・シティプロモーションといった解決したい行政課題を先に定め、その手段としてWeb3が適しているかを見極めます。この段階で、成果をどの指標(登録者数・応募倍率・周遊率など)で測るかも決めておきます。

この「目的を先に定める」ことの重要性は、企業や自治体のWeb3活用を支援する事業者も、成果の分かれ目として挙げています。

大波氏
株式会社アツラエ セールスチーム マネージャー
大波氏
独自インタビューより

効果が出やすいのは、活用の目的が明確化されている企業様です。「Web3を使うこと」ではなく、「この経営課題に対してWeb3のどの特性を活かすのか」を整理できているお客様は、PoCを実施した後の展開までスムーズに進みます。

次に、小さく試すPoC(概念実証。本格導入の前に効果や実現性を検証する試行)に進みます。ここでは検証したい仮説と、本格導入に進む条件・見送る条件をあらかじめ合意しておくと、「試したものの判断できない」という手詰まりを避けられます。

検証で手応えが得られたら、調達・本格導入に移ります。自治体の場合は仕様書の作成や事業者選定など、通常の調達手続きに沿って進めます。導入後は、保有者への特典提供やコミュニティ運営を続ける運用フェーズに入ります。事例を見ても、成果に結びついた自治体ほど、発行して終わりにせず継続的な運営まで設計しています。

費用感・体制の目安

費用は施策の規模やカスタマイズの度合いで変わります。Web3支援を手がける事業者が公開している目安では、構想の整理フェーズが50万〜200万円、PoC(実証)設計フェーズが200万〜800万円、本格的な開発を伴う本番導入が800万円以上とされています。

PoC設計を80万円(税抜)・4週間などと固定価格で公開している事業者もあります。金額は内容で変わるため、複数の事業者から見積もりを取って比較してください。

この水準は、自治体・行政のWeb3導入を支援する事業者の説明にもとづくものです。

飯田氏
Netsujo株式会社 代表取締役
飯田氏
独自インタビューより

料金は、目的、対象範囲、必要な機能、法務・セキュリティ要件、運用体制に応じて個別に設計します。目安として、構想フェーズは50万円〜200万円、PoCフェーズは200万円〜800万円、本番導入は800万円〜です。

体制面では、担当課だけで抱え込まず、企画・財政・法務・情報システムの各部門を早い段階から巻き込むことが重要です。Web3施策は暗号資産該当性・個人情報・調達など複数の論点が絡むため、後から前提が覆ると手戻りが大きくなります。外部の支援事業者に伴走を依頼し、庁内に不足する専門知識を補う形が一般的です。

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庁内合意形成・補助金/交付金・法規制で押さえる注意点

事例と進め方を踏まえたうえで、企画を実際に通すには、庁内・議会・住民への説明、財源の確保、そして法制度への対応という行政特有の壁を越える必要があります。ここでは、その要点を整理します。

庁内・議会・住民への説明と合意形成

Web3施策は用語がなじみにくく、「なぜこの技術を使うのか」を説明しきれずに企画が止まりやすい領域です。説明の軸は技術ではなく、解決したい行政課題と期待できる効果に置くのが有効です。他自治体の前例と公表されている数値は、議会や住民への説明で「実績のある取り組み」であることを示す材料になります。

また、住民や観光客の多くは暗号資産やウォレット(NFTなどを保管するデジタルの財布)に不慣れです。受け取りの手順が複雑だと利用が伸びないため、円建てで購入できる・専用ウォレットが不要といった、参加のハードルを下げる設計をあわせて説明できると合意を得やすくなります。

補助金・交付金/調達の当てはめ

財源としては、デジタル実装や関係人口創出を支援する国の交付金を検討できます。代表的なものにデジタル田園都市国家構想交付金があり、デジタル実装タイプなどの区分が設けられています。ただし、これらの交付金はWeb3やNFTを名指しした枠ではなく、支援の焦点はデータ連携基盤や地域課題の解決に置かれています。Web3施策がそのまま採択されるとは限らないため、要件に当てはまるかは個別に確認が必要です。

交付金以外にも、DAO事例の土台になっている総務省の地域おこし協力隊制度や、各省庁・自治体が実施する実証事業の公募など、施策の性質に応じた財源があります。単一の補助金に絞らず、施策の性質に応じた複数の財源を候補として並べて検討するとよいでしょう。

出典・参考資料(2件)

法規制の注意点(住民票との違い・暗号資産該当性・個人情報)

まず、デジタル住民票NFTと、法律上の住民票の違いです。住民基本台帳法上の住民票は、市町村長が作成する公的な記録で、次のように定められています。

この法律は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)において、住民の居住関係の公証、選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とするとともに(略)住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度を定め(略)(第1条)/市町村長は、個人を単位とする住民票を世帯ごとに編成して、住民基本台帳を作成しなければならない。(第6条第1項)

出典:住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)|e-Gov法令検索

このとおり、法律上の住民票は住民の居住関係を公証するものです。デジタル住民票NFTを購入しても法律上の住民になるわけではなく、行政手続きに使える効力もありません。あくまで関係人口づくりのための施策上の呼称である点を、住民や議会への説明時に明確にしておく必要があります。

次に、NFTやトークンが暗号資産に当たるかどうかです。金融庁の事務ガイドラインは、暗号資産に該当する要件の一つを次のように示しています。

代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる

出典:事務ガイドライン(第三分冊)暗号資産交換業者関係 改正に係る考え方|金融庁

この基準に照らすと、決済手段として使えない返礼品NFTやデジタル住民票NFTは、暗号資産に当たらないのが一般的な整理です。一方で、地域内の支払いに使える地域通貨・地域ポイント型は、資金決済法上の前払式支払手段や暗号資産に該当し得ます。設計によって扱いが変わるため、資金決済法と金融庁の判断基準を確認先として、事前に整理することが欠かせません。

加えて、NFTの購入者情報やウォレットとの連携で個人情報を扱う場合は、個人情報保護法の対象になり得ます。取得する情報の範囲と管理方法を、個人情報保護委員会のガイドラインに照らして整理しておきます。これらの法的論点は断定が難しいため、専門家や所管当局への確認を前提に進めるのが安全です。

なお、ふるさと納税NFTを扱う場合は、返礼品としての規制も受けます。総務省の告示では、返礼品について次の基準が定められています。

返礼品は返礼割合3割以下とすること/経費総額5割以下/返礼品は地場産品とすること

出典:ふるさと納税に係る指定制度の基準|総務省

NFT返礼品もこの返礼割合・経費・地場産品の基準に服します。地場産品基準の運用は見直しが続いているため、企画時には最新の総務省告示・通知を確認してください。

出典・参考資料(2件)

失敗・頓挫しやすいポイントと回避策

成功事例が目立つ一方で、つまずきやすいポイントもあります。手続き・制度上の注意点は前章で扱ったため、ここではプロジェクトを進めるうえでの実務的な落とし穴と回避策を整理します。

  • 手段が目的化する:「NFTをやること」が先に立つと、途中で「本当にNFTでなければならないのか」という議論に戻って止まりがちです。解決したい行政課題を起点に据え、Web3を数ある手段の一つとして位置づけると、判断がぶれにくくなります。
  • PoC止まりで終わる:試したものの本格導入の判断ができず立ち消えるパターンです。検証前に「どの結果なら次に進む・見送る」の条件を決めておくと、結果を判断につなげられます。
  • 配って終わりで使われない:発行時に盛り上がっても、その後の交流や特典が続かないと関係人口に育ちません。運営を続ける体制と翌年度以降の予算を、初期段階で見込んでおくことが分かれ目になります。
  • 受け取りのハードルが高い:暗号資産やウォレットの操作が必要だと、住民・観光客が離脱します。円建て購入や専用ウォレット不要の仕組みを選び、参加の入り口を下げます。
  • 成果の測定を後回しにする:登録者数や周遊行動などは、発行時に測定の仕組みを組み込まないと後から取得できません。何を成功指標にするかを構想段階で決め、計測できる形で設計します。

なお、施策の成果は自治体ごとにばらつきがあり、関係人口の増加が税収や移住の実数にどう結びついたかを裏づける公表データはまだ限られています。前例の数値は「発行数」「参加者数」などの実績として捉え、効果を過大に見積もらないことも、庁内での信頼を保つうえで大切です。

自治体のWeb3活用を支援するサービス

自治体のWeb3施策は、庁内の知見だけで完結させるより、構想の整理から実装・運用まで伴走する支援事業者と組む形が一般的です。ここでは、自治体・地域のWeb3活用に実績や強みを持つ主要なサービスを紹介します。各サービスの資料はまとめて請求できます。

以下は、ご紹介するサービスの比較表です。

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サービス名web3×地方創生コンサルティング(あるやうむ)DAOコンサルティング(ガイアックス)Web3 CONSULTING & DEVELOPMENT(アツラエ)Web3コンサル・ブロックチェーン開発(Netsujo)
運営会社株式会社あるやうむ(北海道札幌市・2020年設立)株式会社ガイアックス(東京都・1999年設立・東証グロース上場)株式会社アツラエ(東京都・2020年設立、旧クリプトリエ事業を承継)Netsujo株式会社(京都府・2023年設立)
得意なユースケース・支援領域ふるさと納税NFT・観光NFT・地域おこし協力隊DAO・自治体向けRWA(TOKKEN)DAO組成(事業DAO・自治体DAO・株式会社型DAO)・トークンエコノミクス設計・コミュニティ運営Web3全般の企画・PoC/MVP開発・受託開発。地方創生や自治体連携のファンマーケティングにも対応Web3コンサル・PoC設計・スマートコントラクト開発・AI業務適用。医療・農業・金融・自治体など幅広く対応
支援範囲(構想〜運用)企画から発行・配布、DAO運営まで一貫リサーチ・企画・構築・運用の4段階に対応企画相談・PoC・受託開発・運用までワンストップ構想整理・PoC設計・開発・運用改善まで一貫
費用の目安要お問い合わせ(案件ごとの個別見積もり)要お問い合わせ(案件ごとの個別見積もり)要お問い合わせ(案件ごとの個別見積もり)公開料金あり(Web3 PoC設計は80万円・税抜の固定価格。カスタム開発は構想50〜200万円/PoC200〜800万円/本番導入800万円〜が目安)
自治体・地域での実績北海道余市町のふるさと納税NFT(2022年)を皮切りに、鳥取市・白浜町など複数自治体で導入公的機関のDAO組成(総務省「異能vation」等)や、ぐんま山育DAOなど地域・商業DAO事例を公表中核都市の自治体とのファンマーケティング連携に対応(公表事例は大企業のNFTマーケが中心)岩手県のコミュニティナース向けDAOや、自治体向けNFT・SBTスタンプラリー事業などを支援
詳細情報公式資料を見る公式資料を見る公式資料を見る詳細を見る

1. web3×地方創生コンサルティング(株式会社あるやうむ)

web3×地方創生コンサルティング(あるやうむ)のウェブサイト

「ふるさとをクリエイターと豊かにする」を掲げ、Web3を地方創生に特化して手がける北海道札幌市の事業者です。ふるさと納税の返礼品NFT、観光NFT、地域おこし協力隊DAOなど、地域向けのプログラムを企画から実装まで一貫して支援します。

2022年の北海道余市町のふるさと納税NFTを手がけて以降、鳥取県鳥取市や和歌山県白浜町など複数の自治体で導入実績を重ねてきました。自治体向けRWAプラットフォーム「TOKKEN」も展開しており、地域資源の価値化まで視野に入れた相談ができます。

2. DAOコンサルティング(株式会社ガイアックス)

DAOコンサルティング(ガイアックス)のウェブサイト

東証グロース上場の株式会社ガイアックスが、DAO専業のコンサルティングとして提供するサービスです。事業検証から自治体運営まで幅広いDAOの組成を支援し、リサーチ・企画・構築・運用の各段階に対応します。

大手企業や公的機関でのDAO組成支援に加え、地域・商業領域のDAO事例も公表しています。自社でも多拠点居住のDAOを運営しており、運営者としての実地知見を踏まえた設計を相談できる点が特徴です。トークン設計やガバナンス、コミュニティ運営まで含めて任せたい自治体に向いています。

3. Web3 CONSULTING & DEVELOPMENT(株式会社アツラエ)

Web3 CONSULTING & DEVELOPMENTのウェブサイト

Web3事業の企画相談からPoC・受託開発、リリース後の運用までをワンストップで支援するサービスです。「なぜWeb3を使う必要があるのか」という課題起点のアプローチを掲げ、目的に合わなければ別の手段を提案する姿勢を打ち出しています。

相談の多い領域には、地方創生や地域のファンマーケティングと自治体連携のテーマが含まれます。企画を庁内・社内で通すための説明資料づくりから伴走する体制があり、Web3をどう地域施策に結びつけるかの整理から相談したい場合の選択肢になります。

4. Web3コンサルティング・ブロックチェーン開発(Netsujo株式会社)

Netsujoの自治体向けWeb3コンサルティングのウェブサイト

京都を拠点に、自治体・行政向けのWeb3・AIコンサルティングを手がける事業者です。構想の整理からPoC設計、調達要件の整理、本格導入、運用改善までを一貫して支援し、庁内説明や職員向け勉強会にも対応します。

Web3を導入する前提で提案せず、Web2やAIで足りる場合はその選択肢も示す姿勢を掲げています。「Web3 PoC設計」など期間と価格を固定したパッケージを公開しているため、費用感が読みにくいこの領域で、予算と工程を明確にしてから始めたい自治体に向いています。

まとめ

自治体のWeb3活用は、ふるさと納税NFTやデジタル住民票、DAOによる関係人口づくりなど、行政課題を解決する手段として全国に広がっています。成果に結びつけている自治体に共通するのは、NFTを目的にせず解決したい課題を起点に据え、受け取りのハードルを下げ、発行後の運営まで続けている点です。

企画を進める際は、他自治体の前例と公表数値を説明材料にしつつ、庁内合意・財源・法規制の確認を早い段階から並行して進めることが重要です。庁内の知見だけで完結させず、構想から運用まで伴走できる支援事業者と組むことで、つまずきやすいポイントを避けやすくなります。まずは各サービスの資料を取り寄せ、自治体の課題に合う相談先を比較してみてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. 自治体のWeb3活用とは何ですか?

A. 自治体のWeb3活用とは、ブロックチェーンを基盤とするNFT・トークン・DAOなどの技術を、ふるさと納税NFT・デジタル住民票・地域通貨・関係人口づくりといった行政課題の解決手段として使う取り組みです。

技術の導入そのものを目的にするのではなく、関係人口の増加・財源確保・観光周遊・シティプロモーションなど、達成したい狙いを実現する手段として位置づけるのが基本です。

Q. 自治体でもWeb3やブロックチェーンは活用できますか?

A. 自治体のWeb3活用は、すでに全国の市町村で導入実績があり、企画から実装まで伴走する支援事業者と組めば、中小規模の自治体でも実施できます。

本記事の事例のように、多くの取り組みは自治体単独ではなく、専門企業・大学・金融機関との連携で成り立っています。庁内に不足する専門知識は外部の支援事業者に補ってもらう形が一般的です。

Q. 自治体のWeb3活用にはどのような事例がありますか?

A. 自治体のWeb3活用の代表的な事例には、ふるさと納税の返礼品NFT、デジタル住民票NFT、地域通貨、DAOによる関係人口づくり、観光・来訪証明NFTなどがあります。

具体的には、北海道余市町・上士幌町のふるさと納税NFT、山口県美祢市のデジタル住民票NFT、新潟県長岡市の山古志地域のNishikigoi NFT・DAOなどが公表されています。それぞれの自治体名・取り組み・公表数値・実施主体は、本記事冒頭の事例一覧表で出所つきに確認できます。

Q. デジタル住民票NFTを購入すると、法律上の住民票と同じ効力がありますか?

A. デジタル住民票NFTは、住民基本台帳法上の住民票とは別物で、購入しても法律上の住民になるわけではなく、行政手続きに使える法的効力もありません。

住民基本台帳法上の住民票は、市町村長が作成する住民の居住関係の公証です。デジタル住民票NFTはあくまで関係人口づくりのための施策上の呼称であり、住民や議会への説明時にはこの違いを明確にする必要があります。制度の位置づけは住民基本台帳法(e-Gov法令検索)で確認できます。

Q. 自治体が発行するNFTは暗号資産に当たりますか?

A. 自治体のNFTは、決済手段として使えない返礼品NFTやデジタル住民票NFTであれば暗号資産に当たらないのが一般的な整理ですが、地域内の支払いに使える地域通貨・地域ポイント型は資金決済法上の前払式支払手段や暗号資産に該当し得ます。

金融庁の事務ガイドラインは、暗号資産に該当する要件の一つとして「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる」ことを示しています。設計次第で扱いが変わるため、資金決済法と金融庁の判断基準を確認先として、専門家や所管当局に事前確認したうえで進めるのが安全です。

Q. デジタル住民票NFTやふるさと納税NFTの受け取りに、暗号資産やウォレットは必要ですか?

A. 受け取りは、円建てで購入でき専用ウォレットが不要な仕組みを採る自治体が増えており、暗号資産を持っていなくても参加できる設計が広がっています。

たとえば和歌山県白浜町の返礼品NFTは、円建ての寄付で取得でき暗号資産は不要とされています。受け取りの手順が複雑だと住民・観光客の利用が伸びないため、参加のハードルを下げる設計が施策の成否を分けます。

Q. ふるさと納税の返礼品NFTにも、通常の返礼品と同じルールは適用されますか?

A. ふるさと納税の返礼品NFTも、通常の返礼品と同じく「返礼割合3割以下」「経費総額5割以下」「地場産品であること」といった総務省の基準に服します。

これらの基準は総務省告示で定められており、NFTであっても返礼品である以上は対象になります。地場産品基準の運用は見直しが続いているため、企画時には最新の総務省告示・通知を確認してください。

Q. 自治体のWeb3施策に補助金や交付金は使えますか?

A. 自治体のWeb3施策には、デジタル田園都市国家構想交付金などの国の交付金を検討できますが、これらはWeb3やNFTを名指しした枠ではないため、要件に当てはまるかは個別に確認が必要です。

交付金の焦点はデータ連携基盤や地域課題の解決に置かれています。交付金以外にも、DAO事例の土台になっている総務省の地域おこし協力隊制度や、各省庁・自治体の実証事業の公募など、施策の性質に応じて複数の財源を候補として比較検討するのが有効です。

Q. 予算や進め方が固まっていない構想段階でも、支援事業者に相談できますか?

A. 支援事業者には、構想の整理やPoC(実証実験)の設計といった初期段階から相談でき、予算が固まっていなくても課題の整理から伴走してもらえます。

PoCは、検証したい仮説と、本格導入に進む条件・見送る条件をあらかじめ合意してから小さく試すのが定石です。費用は施策の規模で変わりますが、公開されている目安では構想の整理フェーズが50万〜200万円、PoC設計フェーズが200万〜800万円ほどで、PoC設計を80万円(税抜)・4週間などと固定価格で示す事業者もあります。正確な金額は内容によるため、複数の事業者から見積もりを取って比較してください。

Q. 庁内・議会・住民への説明や合意形成は支援してもらえますか?

A. 庁内・議会・住民への合意形成は、説明資料づくりや職員向け勉強会に対応する支援事業者があり、後押ししてもらえます。

説明の軸は、なじみにくい技術の解説ではなく、解決したい行政課題と期待できる効果に置くのが有効です。他自治体の前例と公表されている数値は、議会や住民への説明で「実績のある取り組み」であることを示す材料になります。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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