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売掛金担保融資(ABL)とは?ファクタリングとの違い・審査・金利をわかりやすく解説

売掛金担保融資(ABL)とは?のサムネイル画像

取引先への売掛金はあるのに、不動産などの担保がなく銀行のプロパー融資を受けにくい。そんなときに資金調達の選択肢となるのが、売掛金を担保にお金を借りる「売掛金担保融資(ABL)」です。ファクタリングと混同されやすいものの、両者は法的な性質が大きく異なります。

本記事では、売掛金担保融資(ABL)の仕組みを、ファクタリングとの違い・担保にできる資産・公的な保証制度・金利や審査の実際まで整理して解説します。売掛先に知られずに利用できるのか、自社でも使えるのかといった疑問にも答えます。

資金繰りの手段として売掛金担保融資が自社に向いているかを判断し、次に何を準備すればよいかの見当をつけるための材料としてご活用ください。

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売掛金担保融資(ABL)とは?仕組みをわかりやすく解説

売掛金担保融資とは、企業が保有する売掛債権(取引先への未回収の請求)を担保として、金融機関やノンバンクから事業資金を借り入れる融資手法です。売掛債権に加えて在庫(棚卸資産)や機械設備などの流動資産も担保にできることから、動産・売掛金担保融資(ABL:Asset Based Lending)とも呼ばれます。

最大のポイントは、これが「借入(融資)」であることです。売掛金を売却するのではなく、担保として差し入れて資金を借りるため、売掛金は自社の帳簿に残り、取引先からの入金も従来どおり自社が受け取ります。担保の設定は、売掛債権を債権者に譲り渡す形で保全する「譲渡担保」という方法をとるのが一般的です。

融資である以上、借りたお金には返済義務があり、借入金として負債に計上されます。この点が、後述するファクタリング(債権の売却)との決定的な違いです。また、後述する信用保証協会の公的保証を使えば、この融資をより受けやすくできる場合があります。

売掛金担保融資は、不動産などの固定的な担保を持たない企業でも、日々の事業で生まれる売掛債権や在庫を裏付けに資金を調達できる点に特徴があります。売上はあるものの入金までの期間が長く運転資金が不足しがちな企業にとって、資金繰りを支える選択肢の一つです。

売掛金担保融資とファクタリングの違い

ここからは、売掛金担保融資とファクタリングの違いを解説します。どちらも売掛債権を使った資金調達ですが、両者は法的な性質が異なり、審査で見られる点やコスト・スピードも変わります。

売掛金担保融資(ABL)とファクタリングの構造の違いを2つのカードで比較した図。ABLは売掛債権を担保として差し入れて資金を借りる借入で、売掛金は自社に残り入金も自社が受け取り、返済義務がある。ファクタリングは売掛債権そのものを売却して資金化する取引で、売掛金は買い手に移り返済義務はない。

売掛金担保融資は、売掛債権を担保に差し入れて金銭を借りる「融資(金銭消費貸借)」です。民法では、金銭消費貸借について次のように定めています。

(消費貸借)第五百八十七条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

出典:民法 第五百八十七条|e-Gov法令検索

一方のファクタリングは、売掛債権そのものを売却して資金化する取引です。金融庁は、ファクタリングを法的には債権の売買(債権譲渡)契約であると注意喚起しています。

一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。

出典:ファクタリングに関する注意喚起|金融庁

この性質の違いから、返済義務・負債計上の有無、審査で重視される信用力、資金化までのスピードやコストにそれぞれ差が生まれます。主な違いを整理すると次のとおりです。

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売掛金担保融資とファクタリングの違い法的性質返済義務審査で重視される信用力資金化までの期間の目安コストの目安売掛先への影響
売掛金担保融資(ABL)金銭消費貸借(借入・融資)あり(借入金として負債に計上)主に自社(借り手)の返済能力ノンバンク系で数週間、銀行系で1〜2か月程度年率数%〜十数%程度の金利登記の活用で通知せずに設定できる場合がある
ファクタリング債権の売買(債権譲渡)なし(売却のため。買戻しを予定しない契約が本来の形)主に売掛先(取引先)の信用力最短即日〜数日程度手数料は2社間で高め、3社間で低めが一般的3社間方式では売掛先の承諾・通知が必要

※金利・手数料・期間は各社の商品や契約方式により異なります。実際の条件は各サービスの公式情報をご確認ください。

以上をふまえると、返済しながら売掛金を手元に残して低コストで調達したいなら売掛金担保融資、スピードを優先し貸借対照表に負債を増やしたくないならファクタリング、という使い分けになります。

ファクタリングは本来、売主が債権を買い戻す義務を負わない取引です。金融庁は、売掛先が支払えなかった場合に売主が買い戻す・売主自身の資金で支払うといった条件が付く取引は、貸金業に該当するおそれがあると注意を促しています。

ここまで読んで、資金化のスピードを優先したい・負債を増やしたくないといった理由からファクタリングのほうが自社に合いそうだと感じた場合は、以下の記事で主要なファクタリング会社を手数料や入金スピードから比較できます。

担保にできる資産と売掛債権の条件

ここからは、売掛金担保融資で担保にできる資産と、担保に使える売掛債権の条件を解説します。自社の売掛金が対象になるかを判断する材料になります。

担保の中心となるのは、取引先への売掛金債権です。売掛金のほかにも、割賦販売代金債権・運送料債権・診療報酬債権・工事請負代金債権など、事業から生じるさまざまな債権が対象になり得ます。加えて、在庫(棚卸資産)や機械設備・車両などの動産を担保に含める融資もあります。

ただし、後述する信用保証協会の公的保証(流動資産担保融資保証制度)を使う場合は、担保にできる資産の範囲が制度で定められています。中小企業庁は、制度で担保にできる売掛債権を次のように整理しています。

以下のような売掛債権のうち売掛先が事業者であるものが本保証制度における担保として利用可能です。/売掛金債権/割賦販売代金債権/運送料債権/診療報酬債権/その他の報酬債権/工事請負代金債権など

出典:在庫や売掛債権を担保とする融資・保証について|中小企業庁

在庫については、仕入商品・製品在庫・仕掛品・半製品・原材料・貯蔵品などが対象です。一方で、決算書に固定資産として計上される機械設備や車両運搬具は、この制度の担保対象には含まれません。制度を使わない一般の売掛金担保融資では機械設備なども担保に取り得ますが、公的保証を使う場合はこの線引きに注意が必要です。

売掛債権に「譲渡禁止(譲渡制限)特約」が付いている場合の扱いにも違いがあります。流動資産担保融資保証制度では、譲渡禁止特約の付いた売掛債権は対象外で、売掛先から解除承諾書の提出を受ける必要があります。もっとも、2020年4月施行の改正民法により、一般の債権譲渡では譲渡制限の特約があっても譲渡そのものは有効とされました。

2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。

出典:民法 第四百六十六条第2項|e-Gov法令検索

このように、譲渡禁止特約付きの売掛金でも一般の売掛金担保融資では担保にできる余地がありますが、公的保証制度を利用する場合は対象外になる、という違いがあります。自社の売掛金に特約が付いているかどうかは、契約書で確認しておくとよいでしょう。

流動資産担保融資保証制度(信用保証協会の公的保証)

ここからは、売掛金担保融資を後押しする公的な仕組みである「流動資産担保融資保証制度」について解説します。信用保証協会の保証を付けることで、金融機関から融資を受けやすくなる制度です。

この制度は、中小企業が在庫や売掛債権を担保に融資を受ける際、信用保証協会が債務保証を行うものです。もとは「売掛金債権担保融資保証制度」として売掛債権のみを対象としていましたが、2007年(平成19年)8月に在庫(棚卸資産)が担保対象に加えられ、現在の名称になりました。

制度を利用できるのは、中小企業者です。中小企業庁は対象者を次のように示しています。

中小企業者(製造業では資本金3億円以下又は常時使用する従業員数300人以下の会社等)であれば、基本的にご利用いただけます

出典:在庫や売掛債権を担保とする融資・保証について|中小企業庁

保証の条件は全国信用保証協会連合会が公表しており、保証限度額は2億円、保証割合は8割(80%の部分保証)、保証料率は年0.68%、保証期間は根保証で1年間(個別保証は1年以内)です。保証割合が8割であることから、この保証を活用して設定できる借入限度額は2億5,000万円とされています。加えて、法人代表者以外の保証人は不要とされている点も特徴です。

保証限度額 2億円(金融機関からの借入限度額は2億5千万円)/保証割合 80%の部分保証/保証料率 借入極度額・借入金額に対し年0.68%/保証人 不要/保証期間 根保証は1年間、個別保証は1年以内

出典:さまざまな保証制度|全国信用保証協会連合会

不動産担保がない中小企業でも、売掛債権や在庫を裏付けに、保証人の負担を抑えつつ比較的低い料率で保証を受けられる点が、この制度のメリットです。利用の可否や手続きは、取引金融機関や地域の信用保証協会に相談して確認するとよいでしょう。

制度の詳細な文言や対象資産の考え方は、中小企業庁のページに、現行の保証条件は全国信用保証協会連合会や各都道府県の信用保証協会のページに掲載されています。

債権譲渡登記と売掛先への通知

ここからは、売掛金担保融資を利用すると取引先(売掛先)に知られてしまうのか、という不安に直接お答えします。結論として、債権譲渡登記という仕組みを使えば、契約の段階で売掛先に通知せずに担保を設定できる場合があります。

債権譲渡登記による二段階の仕組みを示す図。STEP1の借りる段階では、債権譲渡登記により売掛先以外の第三者への対抗要件を備え、売掛先への通知は不要のため売掛先に知られない。STEP2の回収する段階では、登記事項証明書を交付して売掛先へ通知することが必要になり、売掛先に伝わり得る。債権譲渡登記を利用できるのは法人に限られる。

本来、債権を担保として第三者に主張(対抗)するには、民法上、売掛先(債務者)への通知または売掛先の承諾が必要です。

(債権の譲渡の対抗要件)第四百六十七条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。

出典:民法 第四百六十七条|e-Gov法令検索

この通知を売掛先に行うと、資金調達のために売掛金を担保に入れたことが取引先に伝わってしまいます。これを避けるために用意されているのが、法人が利用できる債権譲渡登記制度です。法務省は、登記の効果を次のように説明しています。

登記することにより、当該債権の債務者以外の第三者について、民法第467条の規定による確定日付のある証書による通知があったものとみなされ(る)

出典:債権譲渡登記制度の概要|法務省

ここで注意したいのは、登記だけで対抗要件が備わるのは「売掛先以外の第三者」に対してである点です。売掛先本人に対して直接権利を主張する(実際に回収するなど)場面では、登記事項証明書を交付して売掛先に通知することが別途必要になります。

このように、資金を借りる段階では売掛先に知らせずに済みますが、返済が滞って債権者が回収に動く段階では売掛先に伝わり得る、という二段階の仕組みです。法務省も、登記をしても売掛先本人に対しては債権譲渡の事実を主張できないと明記しています。

登記の内容が誰に見られるかも気になるところです。登記された譲渡人・譲受人の名称などの「概要」を記した登記事項概要証明書は、誰でも取得できます。

一方で、売掛先の名称や譲渡した債権の詳細まで記載された登記事項証明書を取得できるのは、譲渡人・譲受人・債務者・利害関係者などに限られます。概要は公開されるものの、取引の詳細までは当事者以外に見られません。

登記には費用もかかります。債権譲渡登記の登録免許税は、債権の個数が5,000個以下の場合は1件につき7,500円、5,000個を超える場合は1件につき15,000円です(租税特別措置法による軽減後の額)。

これは登記そのものにかかる税額で、司法書士に手続きを委任する場合の報酬は別途必要になります。在庫(動産)を担保にする場合は、債権譲渡登記ではなく動産譲渡登記を用います。

債権個数5,000個以下:1件につき7,500円(※租税特別措置法により軽減された額)/債権個数5,000個超:1件につき15,000円

出典:債権譲渡登記等の添付書面・登録免許税|法務省

この債権譲渡登記制度を利用できるのは法人に限られます。個人事業主は登記による対抗要件の具備ができないため、この方法で売掛先に知られずに担保設定することはできない点にも留意が必要です。

金利相場・審査・必要書類・資金化までの期間

ここからは、売掛金担保融資を実際に利用するときの金利・限度額・審査・資金化までの期間を解説します。数値は商品や提供会社によって幅があるため、目安として押さえてください。

金利相場・限度額の目安

売掛金担保融資の金利は提供元や商品によって幅があります。ノンバンク系では、各社が公表する商品条件を見ると実質年率で年5〜15%程度が一つの目安です。

一方、銀行・信用金庫のABLや信用保証協会の保証を使う制度融資は、条件が個別審査で決まり金利をあらかじめ公表していないことが多いものの、一般に無担保のビジネスローンより低めの水準になりやすい傾向があります。実際の適用金利は、担保となる売掛債権の質・売掛先の信用力・提供元によって変わります。

後述する売上連動型のサービスでは、法人向けで年3.5〜12.0%程度の例もあります。売掛債権を売却するファクタリングは手数料が2社間で高め・3社間で低めとなるため、融資である売掛金担保融資のほうがコストを抑えやすい傾向があります。

金利のイメージをつかむため、円建てで試算してみましょう。たとえば売掛金300万円を担保に年利10%で1年間借り入れた場合、利息は単純計算で約30万円(300万円×10%)です。同じ条件でも年利5%なら約15万円、年利15%なら約45万円と、適用金利によって幅があります。

一方でファクタリングは、金利ではなく1回の取引ごとに手数料が売掛金額から差し引かれる仕組みです。仮に売掛金300万円に対し手数料が5%なら約15万円、10%なら約30万円が差し引かれる計算です。

売掛金担保融資の利息は借入期間に応じて発生します。そのため、短期間に一度だけ資金化するならファクタリング、一定期間借り続けるなら融資のほうが年間の負担を抑えやすいなど、必要な期間によって有利・不利は変わります。いずれも前提となる金利・手数料や期間によって金額が変動するため、あくまで目安としてご覧ください。

出典・参考資料(2件)

限度額は、担保となる売掛債権の金額や自社の返済能力に応じて設定されます。信用保証協会の流動資産担保融資保証制度を使う場合は、前述のとおり借入限度額は2億5,000万円が上限の目安です。実際にいくらまで借りられるかは、担保額面そのままではなく、売掛先の倒産リスクなどを織り込んで割り引いた金額になります。

審査で見られるポイントと必要書類

売掛金担保融資は融資であるため、審査では主に自社(借り手)の返済能力が見られます。あわせて、担保となる売掛債権の確実性、すなわち売掛先の信用力や取引の継続性も重視されます。売掛先が安定した事業者で、継続的に売掛金が発生している状態は、審査で評価されやすい要素です。

必要書類は提供会社により異なりますが、一般的には次のような書類が求められます(提供各社が公表する必要書類をもとに整理しています)。

  • 決算書(原則2期分)
  • 商業登記事項証明書(登記簿謄本)・定款
  • 代表者の本人確認書類
  • 納税証明書
  • 売掛先との基本契約書
  • 売掛金の推移がわかる資料(売掛金推移一覧表など)
  • 売掛先へ発行した請求書(直近数か月分)と、その入金を確認できる通帳の写し

これらはいずれも、売掛債権の実在と金額、そして取引の継続性を確認するための資料です。あらかじめ揃えておくと、審査がスムーズに進みやすくなります。

資金化までの期間と返済の考え方

資金化までの期間は、ノンバンク系で数週間、銀行系で1〜2か月程度が目安です。最短即日〜数日のファクタリングと比べると時間はかかりますが、その分コストを抑えやすいのが特徴です。申込から資金化までのおおまかな流れは次のとおりです。

  1. 取引金融機関やノンバンクに申し込む(信用保証協会の保証を使う場合は取引金融機関経由)
  2. 審査を受ける(自社の返済能力と、担保となる売掛債権の確実性を確認)
  3. 契約・担保設定を行う(売掛先に知られたくない場合は債権譲渡登記を利用)
  4. 融資が実行され、資金が入金される
  5. 売掛金の入金などを原資に、元本と利息を返済する

返済については、借入である以上、元本と利息を返済していく必要があります。返済方式(元金一括か分割か、利息のみ先払いかなど)は商品によって異なります。負債として計上される点も含め、返済計画を無理のない範囲で立てることが重要です。

売掛金担保融資のメリット・デメリット

ここまでの内容を踏まえ、売掛金担保融資のメリットとデメリットを整理します。導入を判断する際の要点として確認してください。

メリットは、主に次の点です。

  • 不動産などの固定的な担保がなくても、売掛債権や在庫を裏付けに資金調達できる
  • 売掛金を売却せず手元に残せるため、取引先との関係や入金の流れを変えずに済む
  • 融資であるため、ファクタリングの手数料と比べてコストを抑えやすい
  • 公的保証(流動資産担保融資保証制度)を使えば、法人代表者以外の保証人なしで利用できる場合がある
  • 債権譲渡登記を使えば、契約段階では売掛先に知られずに担保を設定できる場合がある

一方で、次のようなデメリット・注意点もあります。

  • 借入であるため返済義務があり、借入金として負債に計上される
  • 審査があり、資金化までにファクタリングより時間がかかる
  • 融資額は担保の額面そのままではなく、売掛先の信用リスクなどを割り引いた金額になる
  • 担保にした売掛先が倒産すると売掛金を回収できなくなるが、借入である以上、自社の返済義務は残る
  • 売掛先の倒産リスクを買い手が負うファクタリングと異なり、このリスクは自社が負うため、連鎖倒産につながることもある
  • 登記を使う場合は登録免許税や司法書士報酬などの費用がかかる
  • 債権譲渡登記を利用できるのは法人に限られ、個人事業主は使えない

売掛金担保融資が向いている企業

これらを踏まえると、売掛金担保融資は次のような企業に向いています。まず、取引先への掛け取引(売掛金)が継続的に発生している企業です。売掛債権という裏付けがあるほど、担保として活用しやすくなります。

また、不動産などの担保がなく銀行のプロパー融資を受けにくい企業や、売掛金の入金までの期間が長く運転資金が不足しがちな企業にとっても、資金繰りを支える選択肢になります。ファクタリングの手数料負担が気になり、返済しながらでもコストを抑えて調達したい企業にも適しています。

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売掛金・売上をもとに借りられる事業者向け融資サービス

売掛金担保融資(譲渡担保型のABL)を利用したい場合、まずは取引のある金融機関や信用金庫、事業者向け融資を扱うノンバンクに個別に相談するのが一般的です。信用保証協会の流動資産担保融資保証制度を使う場合も、取引金融機関を通じて申し込みます。売掛債権を担保にした融資が可能かを取引銀行に相談するところから始めるとよいでしょう。

売掛金が発生した後の債権ではなく、発注・受注の段階で資金が必要な場合は、受発注情報を電子記録債権化して受注時点から融資を受ける「POファイナンス」という周辺の手段もあります。売掛金担保融資より早い段階での資金調達を狙うものですが、利用には発注企業や対応金融機関の関与が前提となります。

出典・参考資料(1件)

一方、近年はEC・決済の加盟店を対象に、売上データをもとにオンラインで完結できる融資(トランザクションレンディング)も広がっています。売掛債権を譲渡担保に取る狭義のABLとは仕組みが異なりますが、加盟店であれば追加の担保なしに迅速に資金を調達できる、身近な選択肢です。

これらはあくまで、売掛金・売上を裏付けに借りられる周辺の身近な選択肢であり、売掛債権を譲渡担保に取る狭義の売掛金担保融資(ABL)そのものを使いたい場合は、前述の金融機関や信用保証協会のルートが基本になります。

利用できるのは各社のサービス加盟店に限られます。ここでは代表的なサービスを紹介しますが、加盟していない場合や、より幅広く事業者向け融資を比較したい場合は、後述の関連記事もあわせてご覧ください。

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売上連動型の事業者向け融資サービスの比較GMOイプシロン トランザクションレンディング楽天スーパービジネスローン エクスプレス
提供元GMOイプシロン株式会社楽天カード株式会社
資金の性質貸金業に基づく融資(金銭消費貸借)貸金業に基づく融資(金銭消費貸借)
主な対象GMOイプシロンの決済代行加盟店(法人・個人事業主)楽天市場の出店事業者(R-Card Plus利用の法人・個人事業主)
与信の考え方決済・売上データ(日次売上実績)をもとに与信(決算書の提出は不要)楽天市場での売上・取引実績のデータをもとに与信(対象者は決算書類の提出が不要)
担保・保証人不要公式ページで要確認
詳細情報サービス詳細を見るサービス詳細を見る

GMOイプシロン トランザクションレンディング(GMOイプシロン株式会社)

GMOイプシロン トランザクションレンディングのウェブサイト

GMOイプシロン トランザクションレンディングは、決済代行サービスを手がけるGMOイプシロン株式会社が、同社の決済加盟店に向けて提供する事業者向け融資です。加盟店の決済・売上データをもとに与信を行い、オンラインで申し込める点が特徴です。貸金業登録に基づく融資であり、売掛債権を買い取るファクタリングや、売掛債権を譲渡担保に取るABLとは異なります。

返済は、月々の売上金からの自動相殺で行う仕組みで、担保・保証人は不要とされています。金利は借り手の区分により幅があり、法人向けで年3.5〜12.0%(2026年9月時点の公式情報)が一つの目安です。日々の決済を通じて自社の資金繰りを支えたい加盟店にとって、追加の担保を用意せずに使える選択肢です。

楽天スーパービジネスローン エクスプレス(楽天カード株式会社)

楽天スーパービジネスローン エクスプレスは、楽天カード株式会社が楽天市場の出店事業者などに向けて提供する事業者向けの融資です。GMOイプシロンと同様に、店舗の売上や取引実績のデータをもとに与信を行う売上連動型で、売掛債権の売却や譲渡担保とは異なる仕組みです。

楽天カードが公表している内容では、融資金額は500万円まで、融資金利は実質年率8.5〜14.5%で、決算書類等の提出は不要とされています。返済は売上から差し引かれる仕組みで、楽天銀行の口座を指定していれば最短翌日に入金されるとされています。

ただし金利・限度額・申込条件は商品や時期によって変わり得るため、利用にあたっては楽天市場の管理画面や公式ページで最新の条件を必ず確認してください。個人向けカードローンの「楽天銀行スーパーローン」とは別のサービスです。

出典・参考資料(1件)

各社のサービスに加盟していない場合や、売掛金・売上をもとにしたものを含め、より幅広く事業者向け融資・ビジネスローンを比較したい場合は、以下の記事が参考になります。金利や審査、限度額、法人・個人事業主別の選び方まで、主要なサービスを横並びで解説しています。

まとめ

売掛金担保融資(ABL)は、売掛債権や在庫を担保に事業資金を借り入れる融資手法です。売掛金を売却するファクタリングと違い、返済義務のある借入である一方、売掛金を手元に残しながらコストを抑えて調達できる点にメリットがあります。信用保証協会の流動資産担保融資保証制度を使えば、保証人の負担を抑えて利用できる場合があり、債権譲渡登記を活用すれば契約段階で売掛先に知られずに担保を設定できる場合もあります。

自社に掛け取引の売掛金があり、不動産担保に頼らず資金を調達したいなら、売掛金担保融資は有力な選択肢です。まずは取引金融機関や信用保証協会への相談、あるいは売上データで借りられる事業者向け融資サービスの比較から、次の一歩を検討してみてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. 売掛金担保融資(ABL)とは何ですか?

A. 売掛金担保融資(ABL)とは、取引先への売掛債権や在庫などの流動資産を担保に、金融機関やノンバンクから事業資金を借り入れる融資です。売掛金を売却するファクタリングと異なり、担保として差し入れる「借入」であるため返済義務があり、売掛金は自社の帳簿に残って入金も従来どおり自社が受け取ります。ABLは「Asset Based Lending(資産担保融資)」の略称です。

Q. 売掛金担保融資を利用すると売掛先(取引先)に通知されますか?

A. 売掛金担保融資は、債権譲渡登記を使えば、借入の段階では売掛先に通知せずに担保を設定できます。登記によって「売掛先以外の第三者」に対する対抗要件を備えられるためです。

ただし、返済が滞って債権者が売掛金の回収に動く段階では、登記事項証明書を交付して売掛先へ通知することが必要になり、その時点で取引先に伝わり得ます。つまり「借りる段階では知られず、回収段階では知られ得る」という二段階の仕組みです。なお債権譲渡登記を使えるのは法人に限られます。

Q. 売掛金担保融資の審査や資金化にはどのくらいかかりますか?

A. 資金化までの期間は、ノンバンク系で数週間、銀行系で1〜2か月程度が目安です。最短即日〜数日で資金化できるファクタリングと比べると時間がかかるため、急ぎの資金需要にはファクタリング、コストを抑えたい計画的な調達には売掛金担保融資、という使い分けが現実的です。実際の期間は提供会社や審査状況によって変わります。

Q. 納品前で契約のみの売掛金でも担保にできますか?

A. 法律上は、まだ発生していない将来の債権も譲渡・担保設定の対象にできます。民法第四百六十七条も債権譲渡の対象に「現に発生していない債権の譲渡を含む」と定めています。ただし実務では、売掛債権の実在性と金額の確実性、取引の継続性が審査で重視されるため、納品・役務提供が済んでいない契約段階の債権をそのまま担保にできるかは提供会社の判断によります。取引の裏付け資料を揃えておくことが前提になります。

Q. 売掛金担保融資に最低金額や限度額はありますか?

A. 最低金額や限度額は、提供する金融機関・ノンバンクによって異なり、一律の基準はありません。限度額は担保となる売掛債権の金額や自社の返済能力に応じて設定され、担保の額面そのままではなく売掛先の信用リスクなどを割り引いた金額になります。

信用保証協会の流動資産担保融資保証制度を使う場合は、借入限度額2億5,000万円が上限の目安です。自社が必要とする金額に対応できるかは、各社の商品条件を個別に確認してください。

Q. 個人事業主でも売掛金担保融資を使えますか?

A. 売掛金を担保にした借入自体は個人事業主でも利用できる場合がありますが、債権譲渡登記による対抗要件の具備は法人に限られます。動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律で、債権譲渡登記を使えるのは「法人」と定められているためです。

したがって個人事業主の場合、売掛先に通知せずに担保設定する方法(登記)は使えず、対抗要件を備えるには売掛先への通知や承諾が必要になります。利用可否や条件は提供会社によって異なるため、事前に確認するとよいでしょう。

Q. 債権譲渡登記の費用はいくらかかりますか?

A. 債権譲渡登記の登録免許税は、債権の個数が5,000個以下の場合は1件につき7,500円、5,000個を超える場合は1件につき15,000円です(租税特別措置法による軽減後の額)。これは登記そのものにかかる税額で、司法書士に手続きを委任する場合はこれとは別に報酬が必要になります。在庫(動産)を担保にする場合は、債権譲渡登記ではなく動産譲渡登記を用います。

Q. 信用保証協会の公的制度(流動資産担保融資保証制度)は使えますか?

A. 中小企業者であれば、流動資産担保融資保証制度を利用して信用保証協会の保証を付けられます。この制度では保証限度額2億円・保証割合8割・保証料率年0.68%とされ、法人代表者以外の保証人は不要です。不動産担保がなくても、売掛債権や在庫を裏付けに保証を受けられる点がメリットです。

利用の可否や手続きは、取引金融機関や地域の信用保証協会に相談して確認するとよいでしょう。この制度で担保にできる売掛債権は「売掛先が事業者であるもの」に限られ、譲渡禁止特約付きの債権は対象外となる点に注意が必要です。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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