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競合他社の価格調査とは?調べ方3つの手段と価格調査ツールの選び方

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「競合が同じ商品をいくらで売っているのか」を知りたい場面は、価格改定のたびに訪れます。ネットショップの運営でも、実店舗の値付けでも、自社商品の流通価格の管理でも、他社の販売価格は値付けの重要な判断材料です。ただ、いざ調べようとすると、どのサイトを・どの頻度で・どうやって見ればいいのか、進め方がはっきりしないまま手が止まりがちです。

本記事では、競合他社の販売価格を調べる方法を、「自前の手作業」「価格調査ツール」「調査会社への委託」という3つの手段に整理し、それぞれが何に向くかを比較できる形で解説します。手作業の具体的なやり方と限界、価格調査ツールでできることと選び方、月額の目安まで、次の一歩を決められる材料をそろえました。

あわせて、「他社の実売価格を追う調査」と「自社の適正価格を消費者アンケートで決める調査」は目的が異なる別の作業であること、そして価格の調べ方が独占禁止法に触れないための線引きも取り上げます。自社の状況に合った調べ方を選ぶための地図として活用してください。

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競合の価格調査とは?「実売価格を知る調査」と「適正価格を決める調査」の違い

はじめに、「価格調査」という言葉が指す2つの作業を切り分けます。同じ言葉でも目的が違い、使う手段も変わるため、ここを混同すると調べ方を誤ります。

1つ目は、競合他社が実際にいくらで売っているか(実売価格)を知る調査です。楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングといったモール、あるいは競合店の売り場で、他社が付けている価格・送料・ポイントを継続的に把握し、自社の値付けや価格改定に反映します。「競合他社の価格調査」で多くの人がまず求めるのは、こちらの調査です。

2つ目は、自社の商品にいくらの値を付けるべきか(適正価格)を決める調査です。消費者アンケートで受け入れられる価格帯を探るもので、PSM分析(価格感度測定法)・CVM分析・コンジョイント分析といった手法があります。他社価格を追うのではなく、自社の価格戦略を組み立てるための調査です。

本記事は、第一の「他社の実売価格を知る調査」を主役に据えて解説します。第二の「適正価格を決める調査」は、調査会社への委託が向くケースとあわせて後半で触れます。まずは、他社の販売価格を調べる手段の全体像から見ていきます。

価格調査には目的の異なる2種類があることを示す図。左は本記事の主役である「他社の実売価格を知る調査」で、モールや競合店で他社の価格・送料・ポイントを継続的に把握し自社の値付けに反映するもの。主な手段は自前の手作業・価格調査ツール・調査会社への委託。右は「自社の適正価格を決める調査」で、消費者アンケートで受け入れられる価格帯を探るもの。主な手法はPSM分析・CVM分析・コンジョイント分析。

競合の販売価格を調べる3つの手段と使い分け

ここからは、他社の実売価格を調べる手段を「自前の手作業」「価格調査ツール」「調査会社への委託」の3つに分けて整理します。どれが向くかは、調べたい対象の広さ・頻度・かけられる工数と予算で決まります。

自前の手作業では、担当者が競合のページや売り場を直接見て価格を記録します。対象が数店舗・数十商品ほどで、まず現状を把握したい段階に向きます。費用は人件費だけで済む一方、調べるたびに手間がかかり、頻度を上げにくいのが弱点です。

価格調査ツールは、指定したECサイトの価格を自動で収集し、変動を継続的に監視する方法です。数十から150以上のサイトを横断し、多数の商品を毎日でも追えます。モール横断で継続的に監視し、価格改定に追随したい事業者に向きます。費用は、小売向けなら月額数千〜数万円、メーカー向けや市場分析型では数万〜10万円規模が目安で、料金を公開せず個別見積りとするツールもあります。

調査会社への委託は、調査の設計から実施までを外部に任せるやり方です。他社価格の収集を代行してもらうほか、後述する消費者アンケート(PSM分析など)で自社の適正価格を検討したい場合にも使えます。社内に継続運用の体制がなく、専門家に任せたい段階に向きます。プロジェクト単位の費用がかかるぶん、目的に合わせた設計を任せられます。

3つの手段を、対象範囲・調査頻度・工数・費用の目安・向くケースで並べると、次のように整理できます。

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手段自前の手作業価格調査ツール調査会社への委託
対象範囲数店舗・数十商品程度数十〜150以上のサイト・多数の商品目的に応じて設計
調査頻度都度(頻度を上げにくい)毎日〜任意で自動スポット(調査プロジェクト単位)
工数大きい(毎回人手で巡回)小さい(自動収集)小さい(外部が実施)
費用の目安実質無料(人件費のみ)無料〜月額数万円(メーカー向け・市場分析型は数万〜10万円規模)プロジェクト規模による
向くケース対象が少なく単発。まず現状を把握したいモール横断で継続監視し、価格改定に追随したい自社の適正価格を消費者調査で決めたい。運用体制がない

立場によって主な調べ方は変わります。実店舗の競合を調べるなら、店頭を定期的に巡回して棚札の価格やチラシ・特売情報を記録する手作業が基本で、対象店舗が広ければミステリーショッピング(覆面調査)などの委託も選択肢になります。

メーカーが自社商品の流通価格を監視する場合は、卸先や量販店の店頭価格とEC直販価格の乖離を追うことになり、モールを横断して自動収集できる後述の価格調査ツールが向きます。ECモールを主戦場とする事業者に限らず、こうした立場でも「対象・頻度・工数・予算から手段を選ぶ」考え方は共通です。

まず自前の手作業で現状を把握し、対象や頻度が増えて手が回らなくなったらツールを検討し、適正価格の設計や大規模な調査が必要なら委託を選ぶ、という段階的な進め方が現実的です。次は、その出発点になる手作業の具体的なやり方を見ていきます。

競合価格を調べる手段を段階的に上げていく進め方を示すフロー図。STEP1は自前の手作業で、対象が少なく単発ならまず競合価格の現状を把握する。対象・頻度が増えて手が回らなくなったらSTEP2の価格調査ツールへ進み、モール横断で多数の商品を継続的に自動監視する。適正価格の設計や大規模な調査が必要ならSTEP3の調査会社への委託へ進み、運用体制がなく専門家に設計から任せたいときに使う。

手作業での価格調査のやり方と限界

まずは手を動かして現状を掴みたい段階では、手作業から始めるのが自然です。ツールを使わず自分で競合価格を調べる手順と、続けるうちにぶつかる限界を見ていきます。

基本的な流れは、次の4ステップです。

  • 調べる競合と対象商品を決める(自社の売れ筋・利益商品と競合する数点から始める)
  • 各競合が出品しているモール・自社ECサイトのページを開き、販売価格を確認する
  • 価格に加えて、送料・ポイント還元・クーポンなど「支払総額に効く条件」も記録する
  • 商品名・モール・表示価格・送料・ポイント・実質価格・確認日などを列にして表計算ソフトへ記録し、定期的に見直して変化を追う

手作業で見落としやすいのが、ポイントやクーポンを差し引いた「実質価格」です。表示価格が同じでも、ポイント還元率やクーポンが違えば、買い手が実際に負担する金額は変わります。ECモールではポイントの上乗せが日常的に行われるため、表示価格だけを並べても競争力を正しく比較できません。

もう1つの壁は、鮮度と工数です。ECモールの価格は日々変わり、セールのたびに動きます。手作業では巡回した瞬間の価格しか分からず、対象商品や競合店が増えるほど記録の手間が積み上がります。数点なら続けられても、数十点・数十店になると毎日の巡回は現実的でなくなり、気づいたときには競合の値下げに乗り遅れる、という状態に陥りがちです。

対象が少なく単発の確認なら手作業で十分ですが、「モール横断で・多数の商品を・継続的に」追う段階になると限界が見えてきます。そこで検討されるのが、次に解説する価格調査ツールです。

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価格調査ツールでできること・選び方と費用の目安

ここからは、手作業の限界を埋める価格調査ツールについて、できること・選び方の軸・費用の目安の順に解説します。ツールを選ぶ判断を、この節で一通り終えられるように整理します。

価格調査ツールでできること

価格調査ツールは、指定したECサイトを自動で巡回し、競合の価格情報を継続的に集めます。手作業では追いきれない範囲と頻度をカバーできる点が中心的な価値です。

  • 他社の販売価格の把握:複数のモール・店舗を横断して、対象商品の価格を自動で収集する
  • 価格変動の追跡:時系列で価格の推移を記録し、値下げ・値上げの動きを可視化する
  • 実質価格の把握:ポイントやクーポンを加味した実質的な価格を捉えられるツールもある
  • 自社ECの価格更新:収集した競合価格をもとに、自社モール店舗の価格を自動更新する機能を持つツールもある

価格調査ツールの選び方の軸

ツールによって対応範囲や機能の幅が異なります。自社の調査対象と運用に合うかを、次の軸で確認すると絞り込みやすくなります。

調べたいECサイト・モールに対応しているか

自社が競合と戦っているモール(楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングなど)や、価格比較サイト・量販店の直販サイトが対応範囲に含まれるかを確認します。対応サイト数が多いほど広く追える一方、Amazonの商品単位に特化したツールもあり、追いたい市場と対応範囲が噛み合うかが起点になります。

調査の頻度は自社の価格改定サイクルに合うか

1日1回で足りるのか、セール時に細かく追いたいのかで必要な頻度は変わります。多くのツールは調査サイト数・商品数・調査頻度の組み合わせで料金が決まるため、頻度を上げるほど費用も上がります。自社の価格改定のスピードに見合う頻度を見極めると、過剰な契約を避けられます。

実質価格の把握や自社価格の自動更新まで必要か

ポイント差引後の実質価格まで捉えたい、収集した競合価格をもとに自社店舗の価格を自動で更新したい、といった要件があるかを確認します。価格の収集だけで十分なのか、更新の自動化(リプライシング)まで求めるのかで、選ぶツールが分かれます。運用を任せたい範囲が広いほど、対応するツールは絞られます。

推計値の精度と、データの性質を理解しているか

ツールが示す売上や販売数は、実測値ではなく推計・目安のことがあります。たとえばAmazonのランキング推移から需要の動きは読み取れても、正確な販売個数を断定できるわけではありません。数値がどこまで実測で、どこからが推計なのかを理解したうえで、意思決定の材料として扱うことが欠かせません。

価格調査ツールの費用の目安

費用は、無料で始められるものから月額数万円規模まで幅があります。料金の示し方もツールによって分かれ、月額の下限を公開しているもの、無料プランを設けているもの、料金を非公開として個別見積りとするものがあります。

有料ツールの料金は、調査するサイト数・商品数・調査頻度の組み合わせで決まるのが一般的です。目安としては、国内モールの競合価格を追う小売向けなら月額数千〜数万円、メーカー向けの流通監視や市場・競合売上の分析まで含むものは数万〜10万円規模になります。まずは無料プランや下限プランで試し、必要な範囲が固まってから見積りを取ると、過剰な契約を避けられます。

各ツールの具体的な月額の目安は、次のセクションの比較表にまとめています。料金は改定されることもあるため、実際の見積りは、自社が追いたいサイト数・商品数・頻度を伝えたうえで各社に確認するのが確実です。

出典・参考資料(3件)

価格調査に使える主なツール

競合の価格調査に使える主なツールを、対応範囲・頻度・実質価格への対応・料金の目安で横断比較し、続いて各ツールの特徴を個別に見ていきます。

← 横にスクロールできます →
サービス名プライスサーチPricewalkerKeepaNint ECommerce
対応サイト・モールの範囲Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピング・価格.comなど150以上のECサイト・大手量販店の直販サイト取得先として指定したECサイト(対象を指定して収集を依頼)Amazonの11ロケール(Amazon.co.jpを含む)。商品(ASIN)単位楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングの3モール
調査頻度最短1日1回〜(24時間365日の自動調査、頻度は設定可)要相談(収集を代行。導入事例では毎月調査に拡張)常時記録(拡張機能でリアルタイム閲覧・価格履歴を継続記録)公式非開示(クロール・更新頻度の明記なし)
実質価格(ポイント差引後)の把握●送料・ポイント差引後を算出要問い合わせ×Amazon価格の履歴が中心△価格・ポイント推移を確認可
自社ECの価格自動更新●小売向け(有料オプション)△ダイナミックプライシング支援××調査・可視化に特化
月額料金の目安月額25,000円〜(小売)/50,000円〜(メーカー)※いずれも下限・要見積り要問い合わせ(公式非公開・資料で提示)無料プランあり/有料版 Keepa Pro 月額29ユーロ(年額290ユーロ)要問い合わせ(目安は月60,000〜100,000円)
向くケースモール横断で競合価格を継続監視し、値付け・価格更新まで自動化したい小売・メーカー価格・商品データの収集から分析・可視化までまとめて任せたいAmazonの商品単位で価格・売れ筋ランキング履歴を手軽に追いたい(無料から)価格に加え、競合の売上規模や市場シェアまで俯瞰したい
詳細情報サービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見る公式資料を見る
プライスサーチのウェブサイト

GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社が運営するプライスサーチ(PriceSearch by GMO)は、クローリング技術でAmazon・楽天市場・Yahoo!ショッピング・価格.comなど150以上のECサイトや量販店の直販サイトを横断し、競合の価格・商品情報を自動で収集する価格調査ツールです。小売向けとメーカー向けの2つのラインがあり、用途に応じて機能が分かれています。

小売向けでは、競合価格の調査に加えて、収集した価格をもとに自社モール店舗の価格を自動更新する機能まで備えます。ポイントを差し引いた実質価格の把握にも対応し、値付けの精度を上げやすい設計です。メーカー向けでは、流通各店の販売価格を監視し、値崩れが起きている店舗の特定やブランド価値の保護を支援します。

2. Pricewalker(プライスウォーカー)

Pricewalkerのウェブサイト

データを取得したいサイトを指定すると、商品カテゴリ・名称・価格・在庫数などの項目ごとに自動で分類・整理してくれるのが、価格戦略に特化したデータ分析サービスのPricewalker(プライスウォーカー)です。価格・商品データの収集から分析・可視化までを代行します。

収集後のデータ分析・可視化までワンストップで支援するため、ツールを自社で運用するより、価格データの活用そのものを任せたい場合に向きます。最短2週間で納品できるとしており、料金は要問い合わせです。ツールの自力運用と調査会社への委託の中間的な立ち位置と言えます。

3. Keepa(キーパ)

Keepaのウェブサイト

ドイツのKeepa社が提供するKeepa(キーパ)は、Amazonの商品ページに価格推移グラフや売れ筋ランキングの推移を表示するブラウザ拡張機能を中核とします。日本のAmazon.co.jpを含む11のマーケットプレイスに対応し、商品(ASIN)単位で価格やランキングの履歴をたどれるため、仕入れ判断や競合商品のベンチマークに使われます。

無料プランでも価格推移チャートの閲覧や価格アラートを使え、着手のハードルが低いのが特徴です。より高度なリサーチ機能は有料のKeepa Proで解放されます。扱えるのはAmazonの商品単位のデータで、モール全体の市場規模やシェアを推計する用途には向きません。売れ筋ランキングから需要の動きは読めますが、正確な販売個数を示すものではない点は理解しておく必要があります。

4. Nint ECommerce(株式会社Nint)

Nint ECommerceのウェブサイト

Nint ECommerce(ニントイーコマース)は、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングの3モールを対象に、市場規模・シェア・競合の売上や販売数量を推計するEC市場分析サービスです。個別商品の価格だけでなく、カテゴリ全体の動向や競合店の売上規模まで俯瞰したい事業者に向きます。

価格・ランキングの推移も確認できますが、位置づけは専業の価格調査ツールではなく、EC市場分析ツールが備える機能の一つです。自社モール店舗の価格を自動更新する機能は持ちません。「競合の販売価格を追う」ことに加えて「競合の売上規模や市場シェアまで把握したい」段階で、選択肢に入ります。数値は推計であり、市場を読むための目安として扱う前提のサービスです。

この推計値を実際の意思決定にどこまで使えるかについて、提供元の株式会社Nintは、無料トライアルでの見極め方を次のように述べています。

株式会社Nint マーケティングディビジョン
上原氏
独自インタビューより

無料トライアルでは、ご希望ジャンルのデータを実際に見ていただき、店舗をお持ちの方なら手元の実データとも照らし合わせながら、「推計値が意思決定に使える精度か」を確認してもらいます。目安として推計精度が7〜8割程度であれば“使えるね”という判断になることが多い印象です。

価格そのものだけでなく、競合の推計売上や市場シェア、モール全体の動向まで含めて把握したい場合は、より広い「EC分析ツール」の枠で比較するのが向いています。楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングの売上推計や競合シェアの見方から選び方までは、以下の記事で整理しています。

調査会社への委託が向くケースと消費者調査(PSM・CVM・コンジョイント分析)

ここからは、3つ目の手段である調査会社への委託を解説します。他社価格の収集を代行してもらう使い方に加えて、自社の適正価格を決めるための消費者調査を任せたい場合に向きます。

委託が向くのは、たとえば次のような場合です。

  • 自社に継続的な価格調査の体制がなく、専門家に設計から任せたい
  • 他社価格の把握にとどまらず、「自社の商品にいくらの値を付けるべきか」を消費者の声から検討したい
  • 新商品の投入前に、まとまった規模の調査を一度きり実施したい

こうしたケースでは、調査会社の設計・実査ノウハウが生きます。

他社価格の収集そのものを代行してもらう委託では、調べたいモール・商品・頻度を伝えると、調査会社が価格データを集めてレポートにまとめます。委託先には、市場調査会社、ECの価格データ収集を代行するデータ収集会社、実店舗の価格や品揃えを調べるミステリーショッピング専門会社などが候補になります。

ツールを自社で運用するのに近い作業を外部に任せる形で、社内に運用の手が足りないときに向きます。費用はプロジェクトの規模・対象数・調査の継続有無で変わり、単発の小規模調査から継続的な大規模調査まで幅があるため、目的と予算を伝えて見積りを取ります。

もう一つ、委託でよく扱われるのが「自社の適正価格を決める」ための消費者調査です。冒頭で触れた、他社価格を追うのとは目的が異なる調査で、代表的な手法がいくつかあります。

  • PSM分析(価格感度測定法):オランダの経済学者ヴァン・ウェステンドルプが1976年に提唱した手法。「高すぎて買わない」「安すぎて品質が不安」「高いと感じ始める」「お買い得だと感じる」の4つの価格を消費者に尋ね、回答の分布から受け入れられる価格帯や最適価格を導きます
  • CVM分析:複数の価格帯を提示し、価格帯ごとの購入意向率を段階的に評価してもらうことで、価格の変化による需要の動きをシミュレーションする手法
  • コンジョイント分析:機能・価格・デザインなど商品を構成する要素の組み合わせを評価してもらい、各要素が選好にどれだけ寄与するかを統計的に推定する手法。価格を要素に含めることで、価格と他の要素のトレードオフを検討できます

これらは他社の実売価格を追う調査とは目的が異なり、自社の値付けそのものを設計するための調査です。費用や期間は調査の規模・手法・サンプル数で変わるため、目的と予算を伝えたうえで調査会社に見積りを依頼します。他社価格の把握が目的なら手作業やツール、自社の適正価格の設計が目的なら消費者調査、と目的から手段を選ぶのが失敗を避けるこつです。

競合の価格調査で注意したい独占禁止法の線引き

最後に、価格調査を進めるうえで押さえておきたい法律の線引きを確認します。他社の公開価格を自社で調べること自体と、独占禁止法が禁じる行為は別物ですが、境界を理解しておくと安心して調査を進められます。

独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)は、事業者が「不当な取引制限」を行うことを禁じています。この不当な取引制限は、同法2条6項で次のように定義されています。

この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。

出典:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)第2条第6項|e-Gov法令検索

ここで違反となるのは、「他の事業者と共同して対価を決定し」「相互にその事業活動を拘束し」という部分です。競合同士が申し合わせて価格を取り決める行為を指し、これが価格カルテルと呼ばれます。公正取引委員会も次のように説明しています。

事業者又は事業者団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、本来、各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決め、競争を制限する行為は「カルテル」(不当な取引制限)として禁止されています。

出典:よくある質問コーナー(独占禁止法)|公正取引委員会

独占禁止法が禁じているのは、競合との「共同の取り決め」や「相互の連絡・情報交換」です。他社が公開している価格を自社で調べ、その結果を自社の値付けの判断に使うこと自体は、この禁止行為には当たりません。モールに表示された販売価格を一方的に収集・分析するのは、競合との申し合わせとは性質が異なるためです。

一方で注意したいのが、競合との「情報交換」です。競合他社と現在または将来の価格に関する情報をやり取りすると、明確な合意(カルテル)に至らなくても、互いの価格を予測できる状態が生まれ、暗黙の了解が形成されるおそれがあります。公正取引委員会は、こうした情報交換も独占禁止法上問題となり得るとの見解を示しています(公正取引委員会の独占禁止法相談事例集)。

業界団体の会合や勉強会、共通の調査を通じて競合と価格情報を共有するような場面では、この点に留意が必要です。

まとめると、公開情報を自社で一方的に調べて分析するのは通常の企業活動の範囲ですが、競合と価格を「取り決める」「交換する」段階に踏み込むと独占禁止法に触れるおそれがあります。この線引きを意識しておけば、価格調査を安心して進められます。

出典・参考資料(3件)

まとめ

競合他社の価格調査は、「他社の実売価格を知る調査」と「自社の適正価格を決める調査」を切り分けるところから始まります。他社価格を追うなら、対象が少ないうちは自前の手作業、モール横断で継続的に監視するなら価格調査ツール、と対象・頻度・工数・予算から手段を選びます。

ツールを選ぶ際は、調べたいECサイトへの対応・調査頻度・実質価格や自社価格の自動更新の要否・推計値の性質を軸に確認します。自社の適正価格を消費者の声から決めたい場合や、継続運用の体制がない場合は、調査会社への委託が選択肢になります。

いずれの手段でも、他社の公開価格を一方的に調べる範囲にとどめ、競合との価格の取り決めや情報交換には踏み込まない、という独占禁止法の線引きを守ることが前提です。自社の状況に合った調べ方で、値付けの判断材料をそろえていきましょう。

価格調査ツールの導入を具体的に検討する段階では、より多くのサービスを同じ軸で見比べたくなります。対応モール・調査頻度・価格の自動更新でツールを横断比較した以下の記事も、候補を絞り込む際に役立ちます。

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よくある質問(FAQ)

Q. 競合他社の価格調査とは何ですか?

A. 競合他社の価格調査とは、他社が競合商品を実際にいくらで売っているか(実売価格)を継続的に把握し、自社の値付けや価格改定の判断に使う調査です。楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングなどのモールや競合店の売り場で、表示価格に加えて送料・ポイント・クーポンまで含めた条件を追います。

なお「自社の商品にいくらの値を付けるべきか」を消費者アンケートで決める調査(PSM分析など)は、目的が異なる別の調査です。

Q. 競合他社の価格調査は独占禁止法に違反しませんか?

A. 他社が公開している価格を自社で調べ、その結果を自社の値付けに使うこと自体は、独占禁止法が禁じる行為には当たりません。 独占禁止法が禁じているのは、競合と「共同して対価を決定する」取り決め(価格カルテル)や、競合同士での現在・将来の価格に関する情報交換です。

モールに表示された価格を一方的に収集・分析するのは、こうした競合との申し合わせとは性質が異なります。ただし、業界団体の会合や勉強会などで競合と価格情報をやり取りする段階に踏み込むと、独占禁止法上問題となるおそれがあるため、この線引きを意識して調査を進めてください。

出典・参考資料(2件)

Q. 競合他社の価格調査は無料でできますか?

A. 自分で競合のページを見て価格を記録する手作業なら、人件費以外の費用をかけずに始められます。 また、Amazonの価格推移を確認できるKeepaのように、無料プランを用意した価格調査ツールもあります。

ただし手作業は対象商品や競合店が増えるほど巡回の手間がかさみ、日々変わる価格に追随しづらくなります。無料の範囲でまず現状を把握し、モール横断で多数の商品を継続的に追う段階になったら、有料の価格調査ツールを検討するのが現実的です。

Q. 競合他社の価格調査は手作業とツールのどちらで行うべきですか?

A. 対象が数店舗・数十商品ほどで単発なら手作業、モール横断で多数の商品を継続的に追うなら価格調査ツールが向きます。 手作業は費用が人件費だけで済む一方、調査の頻度を上げにくいのが弱点です。

価格調査ツールは数十〜150以上のサイトを毎日でも自動で追える反面、月額数千〜数万円程度の費用がかかります。まず手作業で現状を把握し、対象や頻度が増えて手が回らなくなったらツールに切り替える、という段階的な進め方が失敗を避けやすい方法です。

Q. 競合他社の価格調査では、ポイントやクーポンも見る必要がありますか?

A. 表示価格だけでなく、ポイント還元やクーポンを差し引いた「実質価格」まで把握する必要があります。 ECモールではポイントの上乗せが日常的に行われるため、表示価格が同じでも買い手が実際に負担する金額は変わり、表示価格だけを並べても競争力を正しく比較できません。手作業では見落としやすい部分のため、実質価格の把握に対応した価格調査ツールを使うと比較の精度を上げられます。

Q. 他社の価格を調べる調査と、自社の適正価格を決める調査(PSM分析)は何が違いますか?

A. 前者は競合の実売価格を追って自社の値付けに反映する調査、後者は消費者アンケートで自社商品が受け入れられる価格帯を探る調査で、目的が異なります。 適正価格を決める調査にはPSM分析・CVM分析・コンジョイント分析といった手法があり、他社価格を追うのではなく、自社の価格戦略を組み立てるために使います。

継続的に他社価格を追うならツールや手作業、自社の適正価格を設計するなら調査会社の消費者調査、と目的から手段を選ぶのが失敗を避けるこつです。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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