売上や利益は把握していても、「自社の経営状態が今どうなのか」を客観的な数字でつかめているでしょうか。経営指標は、収益性や安全性、成長性といった企業の状態を数値で測るための物差しです。
ただ、経営指標と一口にいっても種類は幅広く、それぞれ計算式や見方が異なります。全体像をつかめないまま個別の指標だけを追うと、自社にとって本当に重要な数字を見落としかねません。
本記事では、主要な経営指標を「収益性・安全性・生産性・成長性・効率性」の観点別に一覧で整理し、各指標の計算式・意味・目安をまとめて解説します。あわせて、自社の目的に応じてまず追うべき指標の選び方や、指標を継続的に把握するための方法も紹介します。
数字の裏づけをもとに自社の現在地を正しく把握することは、資金繰りや投資、改善施策の判断材料になります。自社に必要な指標を見極める手がかりとしてご活用ください。
目次
一括ダウンロードする
経営指標とは?財務指標・KPIとの関係
経営指標とは、企業の経営状態を客観的に測るための数値の総称です。売上や利益といった単独の数字だけではわからない利益を生む効率や支払い能力、成長のペースなどを、決算書の数字を組み合わせて数値化します。自社の現状把握や同業他社との比較、経営判断の根拠として使われます。
経営指標と近い言葉に「財務指標」があります。財務指標は貸借対照表や損益計算書などの財務諸表の数字から算出する指標で、本記事で扱う収益性・安全性・生産性・成長性・効率性の指標の多くがこれにあたります。両者はほぼ同じ意味で使われることも多く、本記事でも財務諸表から求める指標を中心に整理します。
一方、KPI(重要業績評価指標)は、目標の達成度を測るために企業や部門が独自に設定する指標です。財務指標が決算書から定型的に計算されるのに対し、KPIは「新規顧客獲得数」「解約率」など、事業の目標に合わせて選ぶ点が異なります。KGI(重要目標達成指標)という最終目標を頂点に、それを分解した中間目標としてKPIを置く関係で語られることが多く、財務指標をKPIとして設定するケースもあります。
また、経営指標と混同しやすいものに「経済指標」があります。経済指標はGDPや消費者物価指数のように国や地域全体の経済動向を示すもので、個別企業の状態を測る経営指標とは対象が異なります。本記事で扱うのは、あくまで自社の経営状態を測るための指標です。
まず押さえておきたい経営指標
経営指標は数多くありますが、すべてを一度に追う必要はありません。まずは会社の状態を大づかみに捉えられる代表的な指標から確認し、自社の課題に応じて見る指標を広げていくのが現実的です。ここでは、業種や規模を問わず最初に押さえておきたい指標を挙げます。
- 売上高営業利益率(収益性):本業でどれだけ効率よく利益を生んでいるかを示す。事業そのものの稼ぐ力を確認する出発点になる。
- 総資本経常利益率(ROA)(収益性):投じた資産全体からどれだけ利益を生んだかを示す。資本効率を含めた総合的な収益力を測れる。
- 自己資本比率(安全性):総資本に占める自己資本の割合で、財務の安定度・倒産しにくさの目安になる。
- 流動比率(安全性):短期の支払い能力を示す。資金繰りの余裕を確認する基本指標。
- 売上高成長率(成長性):売上が前年からどれだけ伸びたかを示し、事業の勢いを把握できる。
これら数点だけでも、本業で稼げているか(収益性)、支払いに困らないか(安全性)、伸びているか(成長性)という3つの視点から自社の状態を大まかにつかめます。各指標の計算式や目安は次章の一覧で詳しく整理します。生産性や効率性まで含めて全体を俯瞰したい場合は、後述の観点別一覧を順に確認してください。
観点別の経営指標一覧(計算式・目安つき)
ここからは、経営指標を「収益性・安全性・生産性・成長性・効率性」の5つの観点に分けて一覧で整理します。各指標について計算式・意味・目安をまとめました。まず観点ごとに確認し、最後に全体を1枚にまとめた早見表で俯瞰できるようにしています。

目安には、財務省「法人企業統計」による全産業・全規模の実測平均(2024年度)を添えています。ただし多くの指標は業種・規模で大きく変わるため、平均値はあくまで大まかな基準です。自社の数値は同業・同規模の水準と比べて判断してください。示す平均は全規模ベースのため、中小企業に限ると水準が異なる場合があります。
「流動比率は200%が理想」のように一般に言われる数値は、公的資料が定めた合格ラインではなく慣行的な目安である場合があります。本記事では、実測平均と一般的な目安を分けて示します。
収益性の指標
収益性の指標は、企業がどれだけ効率よく利益を生み出しているかを示します。売上に対する利益率と、投じた資本に対する利益率の2系統があります。本記事では、経常利益をもとに計算する総資本経常利益率をROAと表記します。
| 収益性の指標 | 売上高総利益率 | 売上高営業利益率 | 売上高経常利益率 | 総資本経常利益率(ROA) | 自己資本当期純利益率(ROE) |
|---|---|---|---|---|---|
| 計算式 | 売上総利益 ÷ 売上高 × 100 | 営業利益 ÷ 売上高 × 100 | 経常利益 ÷ 売上高 × 100 | 経常利益 ÷ 総資本 × 100 | 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 |
| 意味・見方 | 粗利率とも呼ばれ、商品・サービスそのものの利益率を示す。高いほど提供価値に対する利幅が大きい。 | 本業でどれだけ効率よく利益を生んでいるかを示す、収益性の基本指標。 | 本業に財務活動などを加えた、通常の事業活動全体の利益率。 | 投じた資産全体からどれだけ利益を生んだかを示す、総合的な収益力。営業利益で計算する場合もある。 | 株主が出資した資本をどれだけ効率よく利益に変えたかを示す。 |
| 目安 | 業種差が非常に大きく、同業との比較で判断する。 | 全産業平均5.0%(2024年度。製造業5.4%/非製造業4.9%)。 | 全産業平均6.8%(2024年度。製造業8.6%/非製造業6.1%)。 | 全産業平均5.1%(2024年度、経常利益ベース。営業利益ベースは3.8%)。 | 全産業平均9.6%(2024年度。製造業10.5%/非製造業9.1%)。 |
※平均値は財務省「法人企業統計調査」2024年度(全産業・全規模)による。計算式は中小機構「経営自己診断システム」の定義に基づく。
安全性の指標
安全性の指標は、企業の支払い能力や財務の安定度、つまり倒産しにくさを示します。短期の支払い能力を見る指標と、長期的な財務基盤を見る指標があります。
| 安全性の指標 | 自己資本比率 | 流動比率 | 当座比率 | 固定比率 | 固定長期適合率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 計算式 | 純資産 ÷ 総資本 × 100 | 流動資産 ÷ 流動負債 × 100 | 当座資産 ÷ 流動負債 × 100 | 固定資産 ÷ 純資産 × 100 | 固定資産 ÷(固定負債 + 純資産)× 100 |
| 意味・見方 | 総資本に占める返済不要の自己資本の割合。財務の安定度を測る最も基本的な尺度で、高いほど長期的な安全性が高い。 | 1年以内に現金化できる資産で、1年以内に返す負債をどれだけ賄えるかを示す短期の支払い能力。 | 当座資産(現金預金・受取手形・売掛金など)に絞ったより厳格な短期支払い能力。 | 設備などの固定資産を、返済不要の自己資本でどれだけ賄えているか。低いほど安全。 | 固定資産を、自己資本と長期借入など返済期限の長い資金で賄えているかを示す。 |
| 目安 | 全産業平均42.1%(2024年度。製造業50.3%/非製造業39.2%)。一般に高いほど安全。 | 全産業平均150.0%(2024年度)。一般的には120〜150%以上が一つの目安(業種で変動)。 | 全産業平均89.5%(2024年度)。一般的には90〜100%以上が一つの目安。 | 全産業平均132.8%(2024年度。製造業103.0%/非製造業146.3%)。100%以下が理想。 | 100%以下が望ましい。100%を超えると資金調達が不安定な状態の可能性がある(中小機構)。 |
※平均値は財務省「法人企業統計調査」2024年度(全産業・全規模)による。計算式・判断基準は中小機構「経営自己診断システム」の定義に基づく。
生産性の指標
生産性の指標は、投入した労働力や資本から、どれだけ効率よく付加価値を生み出しているかを示します。付加価値額は「人件費+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課+営業純益」で計算されます。
| 生産性の指標 | 労働生産性 | 付加価値率 | 労働分配率 |
|---|---|---|---|
| 計算式 | 付加価値額 ÷ 従業員数 | 付加価値額 ÷ 売上高 × 100 | 人件費 ÷ 付加価値額 × 100 |
| 意味・見方 | 従業員1人あたりが生み出す付加価値額。生産性の中心的な指標。 | 売上高に占める付加価値の割合。自社で生み出した価値の比率を示す。 | 生み出した付加価値のうち、人件費に配分された割合。高すぎると利益を圧迫し、低すぎると人材確保に影響しうる。 |
| 目安 | 全産業平均817万円(2024年度。製造業995万円/非製造業769万円)。 | 全産業平均21.1%(2024年度。製造業19.6%/非製造業21.7%)。 | 業種で大きく異なる(労働集約型ほど高い傾向)。同業水準との比較で判断する。 |
※平均値・付加価値額の定義は財務省「法人企業統計調査」2024年度(全産業・全規模)による。
成長性の指標
成長性の指標は、企業が前年と比べてどれだけ伸びているかを示します。単年ではなく複数年の推移で見ることで、事業の勢いや持続性を把握できます。
| 成長性の指標 | 売上高成長率(増収率) | 経常利益成長率 | 総資本成長率 |
|---|---|---|---|
| 計算式 | (当期売上高 ÷ 前期売上高 - 1)× 100 | (当期経常利益 ÷ 前期経常利益 - 1)× 100 | (当期総資本 ÷ 前期総資本 - 1)× 100 |
| 意味・見方 | 売上が前年からどれだけ伸びたかを示す、事業の勢いを測る基本指標。 | 利益が前年からどれだけ伸びたか。売上成長に利益が伴っているかを確認できる。 | 会社の規模(総資産)がどれだけ拡大したかを示す。 |
| 目安 | プラスが基本。業種・景気で変動するため、同業や自社の過去推移と比較して判断する。 | 売上高成長率と合わせて見る。売上が伸びても利益が伸びない場合は収益構造の見直しが必要。 | 売上・利益の成長と規模拡大のバランスを見る。資産だけが膨らんでいないか確認する。 |
※計算式は中小機構「経営自己診断システム」の定義に基づく。成長率の数値目安は業種・景気で変動するため示していない。
効率性(活動性)の指標
効率性(活動性)の指標は、保有する資産をどれだけ有効に活用して売上を生んでいるかを示します。回転率が高い、または回転期間が短いほど、資産を効率よく使えていることを意味します。
| 効率性の指標 | 総資本回転率 | 売上債権回転期間 | 棚卸資産回転期間 | 有形固定資産回転率 |
|---|---|---|---|---|
| 計算式 | 売上高 ÷ 総資本(単位:回) | 売上債権 ÷(売上高 ÷ 12)(単位:月) | 棚卸資産 ÷(売上高 ÷ 12)(単位:月) | 売上高 ÷ 有形固定資産(単位:回) |
| 意味・見方 | 総資産を使ってどれだけ売上を生んだか。高いほど資産を効率よく活用できている。 | 売掛金や受取手形が現金化されるまでの期間。短いほど資金回収が早い。 | 在庫が売上に変わるまでの期間。短いほど在庫が滞留せず効率的。 | 設備などの有形固定資産を活用して売上を生む効率。 |
| 目安 | 業種で異なる。同業比較と自社の推移で判断する。 | 全産業平均1.93か月(2024年度)。短いほど良い。 | 全産業平均1.12か月(2024年度)。短いほど良い。 | 全産業平均3.30回(2024年度。製造業4.26回/非製造業3.04回)。 |
※平均値は財務省「法人企業統計調査」2024年度(全産業・全規模)による。計算式は中小機構「経営自己診断システム」の定義に基づく。回転期間は財務省統計にあわせ月数で示した。
全観点の一覧早見表
ここまでに挙げた各指標を1枚にまとめました。全体像の把握や、自社で追う指標を選ぶ際の見取り図としてご利用ください。目安のうち数値は財務省「法人企業統計」2024年度の全産業・全規模平均で、数値目安を置きにくい指標は判断の考え方を示しています。
| 経営指標 早見表 | 収益性 | 収益性 | 収益性 | 収益性 | 収益性 | 安全性 | 安全性 | 安全性 | 安全性 | 安全性 | 生産性 | 生産性 | 生産性 | 成長性 | 成長性 | 成長性 | 効率性 | 効率性 | 効率性 | 効率性 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 指標名 | 売上高総利益率 | 売上高営業利益率 | 売上高経常利益率 | 総資本経常利益率(ROA) | 自己資本当期純利益率(ROE) | 自己資本比率 | 流動比率 | 当座比率 | 固定比率 | 固定長期適合率 | 労働生産性 | 付加価値率 | 労働分配率 | 売上高成長率 | 経常利益成長率 | 総資本成長率 | 総資本回転率 | 売上債権回転期間 | 棚卸資産回転期間 | 有形固定資産回転率 |
| 計算式 | 売上総利益 ÷ 売上高 × 100 | 営業利益 ÷ 売上高 × 100 | 経常利益 ÷ 売上高 × 100 | 経常利益 ÷ 総資本 × 100 | 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 | 純資産 ÷ 総資本 × 100 | 流動資産 ÷ 流動負債 × 100 | 当座資産 ÷ 流動負債 × 100 | 固定資産 ÷ 純資産 × 100 | 固定資産 ÷(固定負債 + 純資産)× 100 | 付加価値額 ÷ 従業員数 | 付加価値額 ÷ 売上高 × 100 | 人件費 ÷ 付加価値額 × 100 | (当期売上高 ÷ 前期売上高 - 1)× 100 | (当期経常利益 ÷ 前期経常利益 - 1)× 100 | (当期総資本 ÷ 前期総資本 - 1)× 100 | 売上高 ÷ 総資本 | 売上債権 ÷(売上高 ÷ 12) | 棚卸資産 ÷(売上高 ÷ 12) | 売上高 ÷ 有形固定資産 |
| 目安 | 業種差が大きく同業比較で判断 | 全産業平均5.0% | 全産業平均6.8% | 全産業平均5.1% | 全産業平均9.6% | 全産業平均42.1% | 全産業平均150.0%(慣行では120〜150%以上) | 全産業平均89.5%(慣行では90〜100%以上) | 全産業平均132.8%(100%以下が理想) | 100%以下が望ましい | 全産業平均817万円 | 全産業平均21.1% | 業種で大きく異なる | プラスが基本・同業比較 | 売上成長と併せて確認 | 売上・利益とのバランスで見る | 業種で異なる | 全産業平均1.93か月 | 全産業平均1.12か月 | 全産業平均3.30回 |
※数値は財務省「法人企業統計調査」2024年度(全産業・全規模平均)。数値のない指標は判断の考え方を示す。
出典・参考資料(2件)
- 出典:経営自己診断システム 個別指標一覧|独立行政法人 中小企業基盤整備機構(https://k-sindan.smrj.go.jp/viewpoint/explanation)
- 出典:法人企業統計からみえる企業の財務指標|財務省 財務総合政策研究所(https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/zaimu/index.htm)
目的別の経営指標の使い分け
経営指標は数が多く、すべてを常に追うのは現実的ではありません。「今、何を知りたいのか」という目的から、まず見る指標を絞り込むのが効率的です。代表的な目的と、優先して確認したい指標の対応を整理しました。
| 目的別に見る経営指標 | 資金繰り・支払い能力を確認したい | 融資を受けたい・金融機関の評価を上げたい | 投資判断・全体の稼ぐ力を見たい | 収益を改善したい | 成長のペースを測りたい |
|---|---|---|---|---|---|
| まず見る指標 | 流動比率・当座比率・売上債権回転期間・棚卸資産回転期間 | 自己資本比率・固定長期適合率・売上高経常利益率 | 総資本経常利益率(ROA)・自己資本当期純利益率(ROE)・売上高営業利益率 | 売上高総利益率・売上高営業利益率・労働生産性・労働分配率 | 売上高成長率・経常利益成長率・総資本成長率 |
| 見るポイント | 短期の支払い能力と、資金化のスピードに問題がないかを確認する。 | 財務の安定度と返済余力を示す指標が重視されやすい。 | 投じた資本に対してどれだけ効率よく利益を生んでいるかを見る。 | 利益率のどこに課題があるか、人的リソースの効率はどうかを分解して見る。 | 売上・利益・規模の伸びのバランスを複数年で確認する。 |
ここで挙げた対応はあくまで出発点です。業種や事業モデルによって重視すべき指標は変わるため、自社の状況に合わせて追う指標を調整してください。たとえば在庫を多く抱える業種では棚卸資産回転期間の重要度が高まり、労働集約型の事業では労働生産性や労働分配率が経営判断の鍵になります。
経営指標の計算に使う財務三表
経営指標の多くは、決算書である財務三表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)の数字から計算します。どの指標がどの表のどの数字を使うのかを押さえておくと、自社の決算書からスムーズに算出できます。
| 財務三表と経営指標の対応 | 貸借対照表(BS) | 損益計算書(PL) | キャッシュフロー計算書(CF) |
|---|---|---|---|
| わかること | 決算時点の資産・負債・純資産の状態(財政状態) | 一定期間の売上・費用・利益(経営成績) | 一定期間の現金の増減(お金の流れ) |
| 使う主な数字 | 流動資産・流動負債・純資産・総資本・固定資産・売上債権・棚卸資産 | 売上高・売上総利益・営業利益・経常利益・当期純利益 | 営業・投資・財務キャッシュフロー |
| 関連する指標 | 自己資本比率・流動比率・当座比率・固定比率・各回転指標 | 売上高各利益率・ROA・ROE・成長性の各指標 | 資金繰りの把握(各回転指標や安全性指標と合わせて確認) |
収益性や成長性の指標は主に損益計算書から、安全性や効率性の指標は主に貸借対照表から計算します。付加価値額を使う生産性の指標のように、複数の数字を組み合わせるものもあります。まずは自社の決算書を手元に用意し、必要な数字がどこに載っているかを確認するところから始めるとよいでしょう。
経営指標を活用するときのポイント
経営指標は計算して終わりではなく、経営判断や改善につなげてこそ意味があります。数値を読み違えないために、次の3点を意識してください。
同業・同規模と比較する
指標の良し悪しは業種・規模で大きく変わります。たとえば流動比率や利益率は業種によって水準が異なるため、全体平均だけで判断すると実態を見誤ります。財務省「法人企業統計」の業種別平均や、同規模の同業他社の水準と比べて、自社の相対的な位置を確認することが重要です。
単一の指標に偏らず総合的に見る
1つの指標だけで経営状態は判断できません。たとえば利益率が高くても自己資本比率が低ければ財務基盤は弱く、成長率が高くても資金繰りが逼迫していることもあります。収益性・安全性・成長性など複数の観点を組み合わせて、バランスよく確認しましょう。
現状分析で終わらせず改善につなげる
指標を算出したら、数値が悪化している原因を掘り下げ、具体的な改善策に落とし込みます。たとえば売上債権回転期間が長ければ回収条件の見直し、労働分配率が高すぎれば付加価値の向上といったように、指標を起点に打ち手を検討することが経営改善につながります。時系列で推移を追い、施策の効果を検証することも欠かせません。
算出した数値の悪化をどこまで掘り下げれば改善につながるのか。経営管理システムを提供する株式会社Scale Cloudの広瀬好伸氏は、結果の数値だけを見ることの限界について次のように語っています。
従来の管理会計では、財務データを部門別や得意先別など様々な切り口で分析するのですが、それだけでは「この結果にどうやって至ったのか」というプロセスがまったくわからないです。事業の状況を正しく理解するためには、結果だけでなくそこに至るプロセスも含めて把握しなければ、どこに問題があるのか見えてこない。これが管理会計の限界だと感じていました。
一括ダウンロードする
経営指標を継続的にモニタリングする方法
経営指標は一度計算して終わりではなく、毎月・四半期ごとに継続して把握し、予算や前年との差を追ってこそ経営判断に活きます。多くの企業は当初、表計算ソフト(Excel)で予実管理や指標の集計を行いますが、部門ごとにファイルが分かれて集計が属人化する、リアルタイムに最新値を共有しにくい、といった課題に直面しやすくなります。
こうした集計・可視化を自動化する手段として、経営管理システム・予実管理ツール・BIツールがあります。会計ソフトと連携して実績データを自動で取り込み、予算・実績・見込みや各種指標をダッシュボードで可視化することで、指標を継続的にモニタリングする運用に移行できます。
ここでは、経営指標の継続把握に活用できる主要なサービスを紹介します。小規模から始められるものから、複数部門・グループ規模に対応するものまであり、自社の規模に合わせて選べます。より多くのサービスを条件で比較したい場合は、後述の比較記事もあわせてご覧ください。
| 経営指標の継続把握に使える主なサービス | DIGGLE(ディグル) | X-KPI(クロスケーピーアイ) | Scale Cloud(スケールクラウド) | bixid(ビサイド) | Manageboard(マネージボード) |
|---|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS) |
| 得意領域 | 予実管理特化 (予算策定〜予実突合〜見込) | KPI・予実管理 (部門・拠点・PJを横断) | 予実管理+KPIの一元化 (PL/BS/CFと非財務KPIを接続) | 会計データの自動可視化 (月次決算・資金繰りまで) | 予算編成〜予実・着地見込 (財務分析・業績シミュレーション) |
| 予実管理 | ● | ● | ● | ● | ● |
| KPI管理 | △財務・非財務指標の可視化に対応 | ● | ● | ● | ● |
| 会計ソフト連携 | freee会計・MFクラウド会計・勘定奉行クラウド・弥生ほか (API/CSV) | 会計ソフト・グループウェアとAPI連携 (対応製品名は要問い合わせ) | 勘定奉行クラウド・freee・Salesforce (API/スプレッドシート/CSV) | 会計ソフトの仕訳データを取込 (弥生会計ほか) | MFクラウド会計・freee会計・勘定奉行クラウド (API/CSV/スプレッドシート) |
| 対象企業規模 | 中堅〜大企業 (予実管理を高度化したい企業) | 中堅〜大企業 (複数部門のKPI・予実を一元化) | 中堅企業 (経営企画・CFO・予実担当) | 中小企業 (経営者〜経理・経営企画) | 成長〜中堅企業 (少人数〜1,500名超のグループ) |
| 初期費用 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 50万円 (KPI設計コンサルティングを含む) | 0円 (導入サポートは30万円〜) | 要問い合わせ |
| 月額費用 | 要問い合わせ (Standard/Enterpriseの2プラン) | 要問い合わせ | 月額15万円〜 (公式サイト表記) | 0円〜(Free)/10,000円〜 (有料プラン、税抜) | 要問い合わせ (Standard/Essentialの2プラン) |
| 無料トライアル | △公式に明記なし | ● | △公式に明記なし | ● | ●デモを経て利用可(無料プランなし) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
※料金・機能は各社公式サイトおよび提供資料(2026年9月時点)に基づく。「要問い合わせ」は公式に金額の記載がない項目。「△」は公式サイトで対応が明記されていない項目で、非対応を示すものではない。最新の料金・対応範囲は各社へご確認ください。
経営管理システムは、予実管理型・連結会計型・ERP型などタイプによって得意分野が異なり、ここで挙げた以外にも多くの製品があります。自社に合うタイプの見極め方や機能をより広く比較検討したい場合は、主要サービスをタイプ別に整理した以下の記事もあわせてご覧ください。
ここからは、各サービスの特徴を個別に見ていきます。自社の規模や、予実管理を重視するかKPI管理まで広げたいかによって適したサービスは異なります。
1. DIGGLE(ディグル)

ディグル株式会社が提供するDIGGLE(ディグル)は、予算・実績・見込みをクラウド上で一元管理する予実管理特化のサービスです。予算策定から予実突合、着地見込みの管理、レポーティングまでの一連の業務をクラウドで完結でき、Excel中心の予実管理で起こりがちな属人化や集計の非効率の解消を狙います。
会計システムとのAPI連携により実績データの取り込みと予実突合を自動化し、勘定科目より細かい粒度での損益管理・分析に対応します。配賦元・配賦先・配賦基準を設定できる多段階配賦や、計画・見込・実績の対比分析、経営指標の自動算出などを備えます。
料金はStandard・Enterpriseの2プラン構成で、金額は要問い合わせです。予実管理を軸に経営数値を継続して可視化する体制を整えたい企業の中心的な選択肢になります。
2. X-KPI(クロスケーピーアイ)

X-KPI(クロスケーピーアイ)は、株式会社パブリックアイデンティティが提供するクラウド型のKPI・予実管理ツールです。複数の部門・拠点・プロジェクトごとのKPIと予実データをクラウド上で集約し、リアルタイムに可視化することで、経営指標の把握と意思決定の迅速化を支援します。
特徴は、予算と実績の差異や異常値を自動で検知し、原因とともにチャットツールへ通知する点です。全体目標と個別目標の関係をツリー構造で管理するKPIツリー機能を持ち、KPI項目・レポート・ダッシュボードを専門知識なしで設計・運用できます。会計ソフトやグループウェアとのAPI連携にも対応します。公式サイトでは最短2週間での導入が可能とされ、無料トライアルも用意されています。
料金は要問い合わせです。財務指標だけでなく現場のKPIまで一つの画面で追い、全社で目標達成度を共有したい組織に噛み合います。
3. Scale Cloud(スケールクラウド)

株式会社Scale Cloudが提供するScale Cloud(スケールクラウド)は、損益(PL)とKPIを接続して管理できる予実管理・経営管理のクラウドサービスです。PLの管理だけでなく、部門ごとにばらばらになりがちなKPIを一元管理し、事業の全体像を可視化することを重視しています。
強みは、複雑なKPI構造の設計に耐える拡張性です。多階層のロジックツリーでKPIを構造化でき、予算用と実績用の関数を組むことで、商談数や成約率といったKPIを積み上げて予算を作成することもできます。会計ソフト以外のSalesforceなどからのデータ取得にも対応します。KPI設計のコンサルティングを含む導入支援を提供している点も特徴です。
料金は公式サイトで月額15万円からと案内され、初期費用は50万円(1つの事業モデルに対するKPI設計コンサルティングを含む)です。損益に加えてKPIまで一体で管理し、予算の精度を高めたい企業で力を発揮します。
4. bixid(ビサイド)

bixid(ビサイド)は、株式会社YKプランニングが提供する中小企業向けの経営支援クラウドです。会計ソフトの仕訳データをもとに、月次決算・予算管理・キャッシュフローといった経営数字を自動で可視化します。損益だけでなく貸借・キャッシュフローを含めた多面的な計画に対応し、資金繰りや借入金返済の管理までを一元化できる点が特徴です。
月額はSimulationプランの10,000円(税抜)からで、無料で使えるFreeプランもあります。アカウント数は全プラン無制限で、経営者から関係者まで広く利用できます。全国の会計事務所向けツール「財務維新」を通じた導入基盤を持ち、登録事業者数は2024年4月時点で20,000社を突破しています。
低コストで導入でき、資金繰りまで含めて経営数字を把握したい中小企業の入口として使いやすい構成です。
5. Manageboard(マネージボード)

Manageboard(マネージボード)は、マネーフォワードグループのマネーフォワードコンサルティング株式会社が提供するクラウド型の予算管理・経営管理プラットフォームです。Excelやスプレッドシートに散在するデータを一元管理し、予算編成・予実管理・着地見込み・財務分析・業績シミュレーションをクラウド上で完結させます。
マネーフォワード クラウド会計・freee会計・勘定奉行クラウドなどとのAPI連携により、実績データの取り込みを自動化します。損益計算書の項目から配下のKPIへドリルダウンできる分析機能や、財務三表の連動、ワンクリックでの業績シミュレーションを備えます。少人数の事業から1,500名以上のグループ規模まで対応し、累計利用企業数は10,000社を突破しています。
料金はStandard・Essentialの2プランで、金額は要問い合わせです。予算編成から分析までを1つのツールでまかないたい成長企業・中堅企業に向く設計です。
まとめ
経営指標は、収益性・安全性・生産性・成長性・効率性という観点で整理すると全体像をつかみやすくなります。まずは売上高営業利益率や自己資本比率といった基本の指標から確認し、「資金繰りを見たい」「融資を受けたい」といった目的に応じて追う指標を広げていくのが実践的です。
各指標の目安は業種・規模で変わるため、財務省「法人企業統計」の平均や同業他社の水準と比べて相対的に判断することが欠かせません。そして、指標は一度計算して終わりにせず、継続的にモニタリングして経営改善につなげることが重要です。手集計に限界を感じたら、経営管理システムや予実管理ツールの活用も選択肢に入れて、自社に合った運用方法を検討してください。
一括ダウンロードする
経営指標に関するよくある質問(FAQ)
Q. 経営指標とは何ですか?
A. 経営指標とは、企業の経営状態を客観的な数値で測るための指標の総称です。収益性・安全性・生産性・成長性・効率性などの観点から、決算書の数字を組み合わせて、利益を生む効率や支払い能力、成長の勢いといった状態を数値化し、自社の現状把握や同業他社との比較、経営判断の根拠として使います。
Q. 経営指標と財務指標・KPIはどう違いますか?
A. 経営指標のうち財務諸表の数字から算出するものが財務指標で、両者はほぼ同じ意味で使われることも多い一方、KPIは目標の達成度を測るために企業が独自に設定する指標という違いがあります。財務指標が決算書から定型的に計算されるのに対し、KPIは「新規顧客獲得数」「解約率」など事業目標に合わせて選ぶ点が異なります。財務指標をKPIの一つとして設定するケースもあります。
Q. 経営指標はまずどれから見ればよいですか?
A. 経営指標は、売上高営業利益率・総資本経常利益率(ROA)・自己資本比率・流動比率・売上高成長率の5つから確認するのがおすすめです。これらだけでも収益性・安全性・成長性の3つの視点から自社の状態を大まかにつかめます。そのうえで、自社の課題に応じて見る指標を広げていくのが現実的です。
Q. 経営指標の目安は業種や企業規模で変わりますか?
A. 経営指標の目安は、業種・企業規模によって大きく変わります。たとえば売上高総利益率や労働分配率は業種による差が非常に大きく、全産業平均だけで自社を判断すると実態を見誤ります。財務省「法人企業統計」の業種別平均や、同規模の同業他社の水準と比べて、自社が相対的にどの位置にあるかで判断してください。
Q. 中小企業が特に見ておくべき経営指標はどれですか?
A. 中小企業では、資金繰りに直結する安全性の指標(自己資本比率・流動比率)と、本業の稼ぐ力を示す売上高営業利益率をまず押さえるのが有効です。自己資本比率は全産業平均が42.1%(2024年度)で、高いほど財務の安定度・倒産しにくさの目安になります。融資を受けたい場合は、固定長期適合率や売上高経常利益率も金融機関に重視されやすい指標です。
Q. 経営指標は決算書のどこで確認できますか?
A. 経営指標は、財務三表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)の数字から計算します。収益性や成長性の指標は主に損益計算書、安全性や効率性の指標は主に貸借対照表の数字を使います。まずは自社の決算書を手元に用意し、必要な数字がどの表のどこに載っているかを確認するところから始めるとよいでしょう。
Q. 経営指標が悪いときはどう改善すればよいですか?
A. 経営指標が悪いときは、数値が悪化している原因を分解して掘り下げ、指標を起点に具体的な打ち手へ落とし込むことが基本です。たとえば利益率が低ければコスト構造や価格設定の見直し、在庫が滞留していれば発注・在庫管理の適正化といった形で対策を検討します。改善後は時系列で推移を追い、施策の効果を検証することも欠かせません。
Q. 経営指標の管理はExcelと専用ツールのどちらがよいですか?
A. 指標の数や関係者が少ないうちはExcelで十分ですが、集計の属人化やリアルタイムでの共有に課題が出てきたら、経営管理システムなどの専用ツールへの移行が有効です。ツールは会計ソフトと連携して実績データを自動で取り込み、予算・実績や各種指標をダッシュボードで可視化できるため、指標を継続的にモニタリングする運用に向いています。
Q. 経営指標はどのくらいの頻度で確認すればよいですか?
A. 経営指標は、月次・四半期ごとに継続して確認し、予算や前年との差を追うのが基本です。一度計算して終わりにせず定点観測することで、業績の変化の兆しを早い段階でつかめます。特に資金繰りに関わる安全性の指標は、月次で確認しておくと資金ショートのリスクに早く気づけます。
Q. 経営指標はいくつくらい追えばよいですか?
A. 経営指標は、すべてを追う必要はなく、目的に応じて数点に絞るのが現実的です。まずは代表的な5指標程度から始め、「資金繰りを確認したい」「融資を受けたい」といった目的が明確になったら、それに対応する指標を加えていきます。単一の指標に偏らず、収益性・安全性・成長性など複数の観点を組み合わせて総合的に見ることが大切です。
経営管理システムの料金・資料を一括チェック
MCB FinTechカタログでは、経営指標の可視化・予実管理に使える経営管理システムの最新資料を無料で一括請求できます。対応する指標や会計ソフト連携、料金・サポート体制など、比較に必要な情報をまとめて確認できます。
一括ダウンロードする
MCB FinTechカタログに掲載しませんか?
MCB FinTechカタログでは、掲載企業様を募集しています。マネックスグループの金融実務ノウハウを活かした独自の評価軸と検索設計により、導入検討者が最適なサービスを効率的に発見できる法人向け比較プラットフォームです。掲載後は管理画面から料金表や導入事例を随時更新でき、常に最新の情報を訴求可能。まずは下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















