内部統制やリスク管理の体制を見直すなかで、「3ラインモデル」という言葉に出会った担当者は多いはずです。かつて学んだ「3ラインディフェンス(3線防御)」と同じものなのか、第1線・第2線・第3線とは具体的にどの部署を指すのか、迷う場面も少なくありません。
3ラインモデルは、内部監査人協会(IIA)が公表する、効果的なガバナンスを支えるための役割分担を整理した枠組みです。2026年7月8日に意見書(Statement of Position)として全面改訂され、従来の「3つのディフェンスライン」から考え方が整理し直されています。役割の定義や原則は改訂されているため、最新の内容を正確に押さえておくことが大切です。
本記事では、現行の3ラインモデルの定義と、第1線・第2線・第3線および取締役会の役割分担を整理します。あわせて、旧来の3ラインディフェンスとの違い、モデルを支える原則、実務で誤解されやすい勘所、日本の三様監査との関係までを解説します。自社の内部統制・内部監査体制を設計・点検するための土台としてご活用ください。
目次
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3ラインモデルとは
3ラインモデルとは、効果的なガバナンスのために、アシュアランス(信頼を与える検証)と助言の役割が、第1線・第2線・第3線および取締役会のあいだでどのように異なり、どう連携するかを整理した枠組みです。
内部監査の国際的な専門組織である内部監査人協会(IIA:The Institute of Internal Auditors)が公表しており、現行版は2026年7月8日に意見書(Statement of Position)として改訂されたものです。
このモデルは、もともと「3ラインディフェンス(Three Lines of Defense)」として知られていました。IIAは2020年7月にこれを「3ラインモデル(Three Lines Model)」へと改称し、2026年7月に意見書(Statement of Position)として全面改訂しています。
この文書はIIAの「意見書(Statement of Position)」として公表されており、かつては「ポジション・ペーパー」とも訳されてきた文書形式です。基本となる3つのラインという構造は維持されていますが、用語や原則、独立性の扱いなどが見直されています。
現行版は、改訂の趣旨を次のように説明しています。
この「3ラインモデル」の改訂版は、以前のポジション・ペーパーに代わるものであり、複雑性の増大、変化の加速、そして信頼性の高いアシュアランスと的確な助言に対する期待の高まりといった特徴を持つ、変化し続けるガバナンス環境に対応するものである。本モデルの基本構造は、組織体のアシュアランスとアドバイザリーのニーズに対する原則ベースのフレームワークとして変更されていないが、今回の改訂により、3つのラインにわたるこうした機能が、効果的なガバナンス、リスク・マネジメント、コンプライアンス及びコントロールのプロセスを総体として支える方法を明確にしている。
出典:意見書 3ラインモデル 効果的なガバナンスを支援するためのアシュアランスと助言|内部監査人協会(IIA)/2026年7月
このように3ラインモデルは、リスクを「誰が所有し、誰が支援・検証し、誰が独立して確かめるのか」を役割で切り分け、その情報が取締役会まで信頼できる形で届く構造を示すものです。自社のガバナンス体制を点検するときの共通言語として使えます。
2020年版から2026年版への主な変更点は、次のとおりです。従来の3ラインディフェンスや2020年版で学んだ方は、ここを押さえておくと現行版との差が掴めます。
- 用語が「統治機関」から「取締役会」に変わりました(様々な形態の統治機関とその委員会を指します)
- モデルを支える原則が6つから5つに整理されました
- コンプライアンスが、リスク管理・コントロールと並ぶ要素として明確に位置づけられました
- 独立性を「連続体」として捉え、役割が重なる場合の防御措置(セーフガード)の考え方が示されました
- 内部監査が、他のアシュアランス提供者をまとめる「アシュアランスの統合者」として位置づけられました
第1線・第2線・第3線と取締役会の役割
ここからは、3ラインモデルを構成する役割を整理します。現行版では、監督を担う取締役会を頂点に、3つのラインがそれぞれの役割を果たし、組織の外からは外部のアシュアランス・プロバイダが補完します。全体像を図にすると次のとおりです。

| 3ラインモデルの役割分担 | 取締役会 | 第1線 | 第2線 | 第3線 | 外部のアシュアランス・プロバイダ |
|---|---|---|---|---|---|
| 主な役割 | 戦略的方向性を示し、組織体全体を監督する。目的・リスク選好・期待事項を設定し、戦略目標の達成を監督する | リスクを所有して管理し、プロセスとコントロールの設計・実施に責任を負う | 専門分野で専門的な支援・助言・異議申し立て・モニタリング・テーマ別レビューを行い、第1線を強化する | ガバナンス・リスク管理・コンプライアンス・コントロールの有効性について独立かつ客観的なアシュアランスを提供し、職務上は取締役会に報告する | 外部監査(法定監査・財務諸表監査)や規制当局の検査などを通じ、3ラインの外から追加のアシュアランスを提供する |
| 担い手の例 | 取締役会、監査委員会などの委員会 | 事業部門・業務部門の経営管理者(フロント/バックオフィス) | リスク管理、コンプライアンス、情報セキュリティ、品質保証などの部門 | 内部監査部門(内部監査室) | 外部監査人(公認会計士・監査法人)、規制当局など |
※「担い手の例」は一般的な対応の目安で、各ラインがどの部署に当たるかは組織の規模・体制により異なります。役割の定義はIIAの意見書によります。
出典・参考資料(1件)
第1線:リスクを所有し、日々管理する
第1線は、事業部門や業務部門の経営管理者が担います。日常業務のなかでリスクを所有・管理し、プロセスやコントロールを設計・実施する立場です。営業・製造・購買・情報システムの運用など、収益や業務を直接動かす部門が該当します。リスクへの一次的な責任は、報告経路にかかわらず第1線の経営管理者に残り続けます。
第2線:専門知識で第1線を支え、牽制する
第2線は、リスク管理・コンプライアンス・情報セキュリティ・品質保証などの専門機能です。第1線に対して専門的な支援や助言を提供しつつ、必要に応じて異議を申し立て、モニタリングやテーマ別のレビューを行います。
第1線の代わりにリスクを管理するのではなく、第1線のプロセスを強化し、検証する補完的な役割を担います。現行版ではコンプライアンスが、リスク管理・コントロールと並ぶ要素として明確に位置づけられています。
第3線:独立した立場で検証する内部監査
第3線は内部監査部門です。ガバナンス・リスク管理・コンプライアンス・コントロールのプロセスが有効に機能しているかを、独立かつ客観的な立場からアシュアランスとして提供します。経営責任や意思決定の権限を負わないことで客観性を保ち、職務上は取締役会に報告することで独立性を確保します。
現行版では、内部監査が他のアシュアランス提供者と連携し、組織全体のアシュアランスを束ねる「統合者」としての役割も示されています。
取締役会と外部のアシュアランス・プロバイダ
取締役会は、3つのラインを監督する立場です。目的・リスク選好・期待事項を設定し、戦略目標の達成を監督します。現行版では「取締役会」という用語が、監査委員会などを含む様々な形態の統治機関とその委員会を指すものとして使われています。
さらに、外部監査人や規制当局といった外部のアシュアランス・プロバイダが、3ラインの外から追加のアシュアランスを提供し、ステークホルダーや規制当局に対して独立した意見を示します。
3ラインディフェンス(3線防御)との違い
「3ラインモデル」と「3ラインディフェンス(3線防御)」は、同じ3つのラインを扱いますが、考え方には違いがあります。3つの役割に分ける骨格は共通する一方で、名称から「ディフェンス(防御)」が外れた点に、その違いが表れています。
IIAは2020年の改称時に、このモデルが次の点で最適化されると説明していました。
リスク・マネジメントが、「ディフェンス」と価値の保全の問題だけでなく、目標の達成と価値の創造に貢献することにも焦点を当てる。
出典:IIAの3ラインモデル(3つのディフェンスラインの改訂)|内部監査人協会(IIA)/2020年7月
3ラインディフェンスはリスクを「防ぐ」ことに重心があり、3つの線を分離して捉えがちでした。これに対し3ラインモデルは、リスクの防御・価値の保全にとどまらず、目標の達成や価値の創造に貢献する効果的なガバナンスを重視します。現行の2026年版も、役割間の協働と連携により、取締役会に信頼性が高くバランスのとれた情報が届く状態を目指すという方向性を引き継いでいます。主な違いを整理すると次のとおりです。
| 3ラインディフェンスと3ラインモデルの違い | 名称 | 主眼 | 役割の捉え方 | 取締役会の位置づけ |
|---|---|---|---|---|
| 3ラインディフェンス(旧称) | Three Lines of Defense(3つのディフェンスライン/3線防御) | リスクの防御・内部統制(価値の保全が中心) | 3つの防御線を分離して捉えがち | 明確に組み込まれないことが多かった |
| 3ラインモデル(現行) | Three Lines Model(名称から「ディフェンス」が外れた) | 価値の保全に加え、目標達成・価値創造に貢献する効果的なガバナンス | 異なる役割と相互の関係性を重視し、連携・調整・協働を強調 | 取締役会・最高経営者を含め、監督と説明責任を明確化 |
※「3ラインディフェンス」は改称前の呼称です。現行の役割・原則の定義は2026年版の意見書によります。
3ラインモデルを支える5つの原則(2026年版)
現行の2026年版では、モデルを支える原則が5つにまとめられています(2020年版では6つの原則でしたが、改訂で整理されました)。これらは、アシュアランスと助言がどのようにガバナンスを支えるか、独立性が取締役会への情報の信頼性をどう高めるかを示すものです。
出典:意見書 3ラインモデル|内部監査人協会(IIA)/2026年7月
- 取締役会は、目的、リスク選好及び期待事項を設定し、戦略目標の達成を監督する。
- 効果的な監督は、パフォーマンス、リスク及びコントロールに関する、信頼性が高くバランスのとれた情報に依存する。
- 取締役会と最高経営者は、役割と責任を定めることで、説明責任を確立する。
- 独立した情報源を含む、様々な情報源からのアシュアランスにより、取締役会は、ガバナンス、リスク・マネジメント、コンプライアンス及びコントロールのプロセスが意図した通りに機能し、目標を達成し、適時に改善措置を推進しているという確信が得られる。
- アドバイザリー業務は、改善と情報に基づいた意思決定を支援するインサイト、見解及び選択肢を提供することで、アシュアランスを補完する。
5つの原則は、取締役会による監督と説明責任を起点に、信頼できる情報とアシュアランス、それを補う助言という流れで構成されています。役割分担そのものよりも、「取締役会が良い意思決定をするために、どんな情報とアシュアランスが必要か」という観点でモデルを捉えていることがわかります。
3ラインモデルを機能させる実務の勘所
3ラインモデルは、役割を形のうえで分けるだけでは機能しません。現行版が示す実務上の勘所のうち、誤解されやすい3点を押さえておきましょう。
独立性は「孤立」を意味しない
第3線の独立性は、効果的なガバナンスを支える基礎となる概念です。ただし独立性は、ほかの部門と関わらない「孤立」とは異なります。現行版は次のように説明しています。
独立性は孤立と解釈すべきではない。…独立性を維持するためには、透明性の確保、責任の明確化、及び役割を超えた建設的な関与の促進も必要となる。
出典:意見書 3ラインモデル(独立性)|内部監査人協会(IIA)/2026年7月
内部監査が第1線・第2線と定期的に対話し、組織の実情に合った監査を行うことは、独立性と両立します。管理責任や意思決定を引き受けずに客観性を保ちながら、必要な情報へ自由にアクセスし、建設的に関与することが求められます。
役割が重なるときは「防御措置」で客観性を守る
実際の組織では、同じ部門や担当者が複数のラインの役割を兼ねることがあります。現行版は独立性を、完全に分離しているかどうかの二択ではなく「連続体」として捉え、客観性が損なわれないように防御措置(セーフガード)を講じることを求めています。
たとえば、内部監査部門長が内部統制の整備など監査以外の業務も担う場合、その領域については外部の適格な第三者が独立したアシュアランスを提供する、といった対応が考えられます。
小規模な組織では独立した内部監査機能がなくてもよい
3つのラインを、必ず別々の部門として完全に分ける必要はありません。現行版には、独立したアシュアランス機能を維持する必要のない組織に向けた実用的な適用指針が盛り込まれています。役割の重複を前提としつつ、責任の明確化・透明性・客観性を守るための工夫で補う考え方です。自社の規模やリスクの状況に合わせて、どこまでの体制を整えるかを判断することになります。
3ラインモデルと三様監査(監査役監査・会計監査・内部監査)の関係
日本企業のガバナンスでは、監査役監査・会計監査・内部監査の3つを合わせた「三様監査」という考え方が定着しています。3ラインモデルと三様監査は視点が異なりますが、重ねて捉えると自社の体制を説明しやすくなります。
監査役監査は、監査役が取締役の職務執行を監査するもので、会社法に根拠があります。会社法第381条は「監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行を監査する」と定めています。取締役会を監督する立場に近く、3ラインモデルでは取締役会による監督と重なる位置づけで捉えられます。
会計監査は、公認会計士または監査法人が計算書類や財務書類を監査するものです。会社法第396条が会計監査人による計算書類の監査を、金融商品取引法第193条の2が上場会社等の財務書類に対する監査証明を定めています。これは3ラインモデルの「外部のアシュアランス・プロバイダ」(外部監査)に当たります。
内部監査は、監査役監査や会計監査のように単一の条文で定義されているわけではありません。金融商品取引法の内部統制報告制度や、会社法の内部統制システム構築義務、東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードなどが、内部監査部門の整備を後押しする形になっています。3ラインモデルでは、この内部監査が第3線に最も近い役割です。
出典・参考資料(3件)
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自社体制への3ラインモデルの当てはめと、3ラインを支える基盤
3ラインモデルの考え方を自社に当てはめるときは、まず既存の部門を3つのラインに対応づけることから始めます。事業部門を第1線、リスク管理・コンプライアンス・情報セキュリティなどの管理部門を第2線、内部監査部門を第3線と位置づけ、取締役会が全体を監督する、という整理です。
そのうえで、各ラインの報告経路と独立性をどう確保するかを設計します。役割が重なる場合の線引きや、小規模組織での現実的な体制づくりは、前述の「実務の勘所」も参考になります。
モデルを機能させるうえで課題になりやすいのが、3つのラインが同じリスク・統制の情報を共有し、評価結果や監査の指摘を一元的に記録・追跡する仕組みです。第1線のリスク台帳、第2線のコンプライアンス評価、第3線の監査調書がばらばらに管理されていると、取締役会に届く情報の信頼性や一貫性が損なわれます。
こうした情報を1つの基盤に集約する手段として、ガバナンス・リスク管理・コンプライアンスを統合して扱うGRCツールがあります。全社のリスクを台帳で管理し、内部統制の文書化や統制の証跡、内部監査の調書・指摘のフォローまでを同じ基盤で扱えるものを選ぶと、3ラインの連携を支えやすくなります。
以下では、3ラインを横断してリスク・統制・監査の情報を扱える統合型のGRCツールを紹介します。いずれも大企業・金融機関での利用が中心の製品ですが、基盤づくりの選択肢の一つとして、各サービスの機能や特徴を比較する際の出発点としてご活用ください。
| 3ラインを支える統合型GRCツールの比較 | IBM OpenPages | Archer | Diligent |
|---|---|---|---|
| 運営会社 | 日本アイ・ビー・エム株式会社 | Archer Technologies Japan合同会社 | Diligent Corporation |
| 製品・基盤 | IBM OpenPages(統合GRCプラットフォーム) | Archer Platform(Archer IRM/統合リスク管理) | Diligent One Platform(統合GRCプラットフォーム) |
| 特徴 | 11モジュールを単一基盤で扱う 統合GRCの網羅性 | 2000年代から続く統合リスク管理の実績 (グローバル1,200社超) | 取締役会管理を起点に発展した ガバナンス基盤 |
| 主な対応領域 | 統合GRC 11モジュール (ERM・規制コンプライアンス・ 財務統制〈J-SOX対応可〉・ 内部監査管理 ほか) | 9ソリューション領域 (監査管理・ERM/ORM・ コンプライアンス・ サードパーティガバナンス ほか) | 取締役会管理・ERM・ 内部監査・コンプライアンス・ エンティティ管理 |
| 3ラインの対応範囲 | 第1〜第3線を横断 (リスク・コンプライアンス・ 内部監査管理) | 第1〜第3線を横断 (リスク・コンプライアンス・ 監査管理) | 取締役会〜第1〜第3線 (取締役会管理を含む) |
| 提供形態 | SaaS/Hosted/オンプレミス | SaaS/オンプレミス | SaaS(クラウド) |
| 料金目安 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| 主な対象企業 | 大企業・金融機関・ グローバル企業 | 大企業・金融機関・公共部門 | 複数法域を持つ グローバル大企業 |
| 詳細情報 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
※導入実績・モジュール数などは各社公式情報によります(2026年10月時点)。最新の内容や料金は各サービスの資料・公式サイトでご確認ください。
1. IBM OpenPages(日本アイ・ビー・エム株式会社)

IBM OpenPages は、日本アイ・ビー・エム株式会社が提供する統合型のGRCプラットフォームです。オペレーショナルリスク管理、規制コンプライアンス管理、ポリシー・コンプライアンス管理、財務統制管理、内部監査管理など、11のモジュールを単一の基盤で扱えるように構成されています。
第1線・第2線のリスク管理やコンプライアンスから、第3線の内部監査管理(Internal Audit Management)まで必要なモジュールを組み合わせられるため、3ラインが同じ基盤で情報を共有する用途に向いています。財務統制管理モジュールはJ-SOX対応にも使えるほか、生成AIとの連携によりリスク分類や文書要約の自動化にも対応します。
複雑な規制環境や大規模なリスク情報を抱える企業での利用が中心です。
2. Archer(Archer Technologies Japan合同会社)

Archer は、旧称「RSA Archer」として2000年代から提供されてきた統合リスク管理(IRM)/GRCプラットフォームです。現在はArcher Technologies Japan合同会社が日本市場での窓口となっています。
監査管理、エンタープライズ/オペレーショナルリスク管理、法令・企業コンプライアンス、サードパーティガバナンスなど9つのソリューション領域をカバーしています。
監査管理(Audit Management)でリスクベースの監査計画・調書・指摘管理を扱えるため、第3線の内部監査業務を、第1線・第2線のリスク管理と同じ基盤でつなげられます。グローバルで1,200社を超える導入実績があり、金融機関や公共部門など大規模組織での採用が中心です。
3. Diligent(Diligent Corporation)

取締役会管理を起点に発展したのが、Diligent Corporation が提供する「Diligent One Platform」です。取締役会向けの情報共有に加え、企業リスク管理(ERM)・内部監査・コンプライアンス・エンティティ管理などを単一のプラットフォームに統合しています。
取締役会層のガバナンスから第1線・第2線のリスク管理、第3線の監査管理までを1つの基盤で扱える点が特徴で、3ラインモデルの各役割を横断して情報を共有・記録する用途に適しています。取締役・経営層と現場の双方が同じ基盤を使うことで、取締役会に届く情報の一貫性を高めやすい構成です。
ここで取り上げた3サービスは一例です。ほかの統合型GRCツールも含め、対応領域や機能、料金を横断的に比べて自社の体制に合うものを選びたい場合は、選び方とあわせて以下の記事で詳しく解説しています。
ここで紹介したサービスは大企業や金融機関での利用が中心です。予算や運用負荷の面から中小企業でも導入しやすいGRCツールを比較したい場合は、以下の記事が参考になります。
中小企業向けGRCツールおすすめ5選を比較|選び方とIT導入補助金対応まで解説
取引先からのISMS/Pマーク取得要請、改正公益通報者保護法の施行、社内規程管理の属人化など、中小企業でも、GRCの課題を放置できない局面が増えています。 一方で「SAP GRCやIBM OpenPagesは自社規模では過大では」と判断を保…
まとめ
3ラインモデルは、効果的なガバナンスのために、第1線・第2線・第3線と取締役会の役割と関係を整理した枠組みです。現行は2026年7月に意見書として改訂され、5つの原則や取締役会という用語、独立性を連続体として捉える考え方などが示されています。旧来の3ラインディフェンスから「防御」の枠を超え、価値の創造にも貢献するガバナンスへと整理された点が、一貫した方向性です。
自社に当てはめる際は、既存の部門を3つのラインに対応づけ、独立性と報告経路を設計したうえで、3ラインが同じリスク・統制情報を共有・記録できる基盤を整えることが、モデルを形だけで終わらせないための鍵になります。統合型のGRCツールはその選択肢の1つですので、自社の体制づくりの検討にあたっては、下記から各サービスの資料もあわせてご確認ください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 3ラインモデルとは何ですか?
A. 3ラインモデルとは、効果的なガバナンスのために、第1線・第2線・第3線と取締役会の役割分担と連携を整理した、内部監査人協会(IIA)が示す枠組みです。リスクを「誰が所有し、誰が支援・検証し、誰が独立して確かめるのか」を役割で切り分け、その情報が取締役会まで信頼できる形で届く構造を示します。現行版は2026年7月8日に意見書(Statement of Position)として改訂されています。
Q. 3ラインモデルと3ラインディフェンス(3線防御)は同じですか?
A. 3ラインモデルと3ラインディフェンスは、3つのラインという役割分担の骨格は引き継いでいますが、考え方は異なります。3ラインディフェンスはリスクの「防御」に重心があり、3つの線を分離して捉えがちでした。
これに対し3ラインモデルは、価値の保全に加え、目標の達成や価値の創造に貢献する効果的なガバナンスを重視し、役割間の連携を強調します。IIAが2020年7月に「3ラインモデル」へ改称し、2026年7月に意見書として全面改訂しています。
Q. 3ラインモデルの第1線・第2線・第3線は、具体的にどの部署が担いますか?
A. 一般的には、第1線は事業部門・業務部門、第2線はリスク管理・コンプライアンス・情報セキュリティなどの管理部門、第3線は内部監査部門が担います。これに取締役会が全体を監督する立場で加わり、外部監査人や規制当局が外部のアシュアランス・プロバイダとして3ラインの外から補完します。ただしこの対応は目安で、各ラインがどの部署に当たるかは組織の規模や体制によって異なります。
Q. 3ラインモデルの第2線は、第1線から完全に独立している必要がありますか?
A. 3ラインモデルの第2線は、第1線から完全に独立している必要はありません。第2線は経営管理者側の役割であり、第1線を専門知識で支援・助言し、必要に応じて異議を申し立て、モニタリングやテーマ別のレビューを行います。独立した立場から検証する第3線(内部監査)の独立性とは性質が異なります。
Q. 3ラインモデルで内部監査は他部門と連携すると独立性を失いますか?
A. 内部監査が他部門と連携しても、それ自体で独立性を失うわけではありません。現行版は「独立性は孤立と解釈すべきではない」としています。管理責任や意思決定を引き受けずに客観性を保ちながら、第1線・第2線と定期的に対話し、必要な情報へ自由にアクセスして建設的に関与することが、独立性と両立する関わり方です。
Q. 小規模な組織でも、3ラインモデルの3つのラインを完全に分ける必要がありますか?
A. 3ラインモデルでは、必ずしも3つのラインを別々の部門として完全に分ける必要はありません。現行版には、独立したアシュアランス機能を維持する必要のない組織に向けた実用的な適用指針が盛り込まれています。役割が重なる場合は、責任の明確化・透明性・客観性を守るための防御措置(セーフガード)で補う考え方です。自社の規模やリスクの状況に合わせて、どこまでの体制を整えるかを判断します。
Q. 3ラインモデルは内部監査の基準で定められた必須要件ですか?
A. 3ラインモデルは、採用そのものが義務付けられた必須要件ではなく、役割分担や独立性・監督を理解するための原則ベースの枠組みです。各役割の関係や独立性・連携を整理する参照フレームワークとして位置づけられており、どこまで取り入れるかは組織が自社の状況に応じて判断します。
Q. 3ラインモデルと日本の三様監査はどのような関係ですか?
A. 3ラインモデルと三様監査は視点が異なりますが、重ねて捉えると自社の体制を説明しやすくなります。日本の三様監査のうち、監査役監査は取締役会による監督と近い位置づけ、会計監査は外部のアシュアランス・プロバイダ(外部監査)、内部監査は第3線に最も近い役割として対応づけられます。
Q. 3ラインモデルの2026年版は、2020年版から何が変わりましたか?
A. 3ラインモデルの2026年版では、原則が6つから5つに整理され、「統治機関」という用語が「取締役会」に変わりました。あわせて、コンプライアンスがリスク管理・コントロールと並ぶ要素として明確化され、独立性を完全な分離か否かの二択ではなく「連続体」として捉え、役割が重なる場合に客観性を守る防御措置を講じる考え方が示されています。基本となる3つのラインという構造自体は維持されています。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















