金融庁のガイドラインや社内研修、三つのディフェンスライン(三線モデル)の議論のなかで「リスクオーナーシップ」という言葉を目にする機会が増えています。その正確な意味や、自社でどう根付かせればよいかを整理したいと感じている方も少なくありません。
個々のリスクについて「誰が責任を持って管理するのか」をあいまいにしたまま進めると、問題が起きたときに対応の主体が定まらず、現場と管理部門のあいだで責任が宙に浮いてしまいます。
本記事では、リスクオーナーシップの意味を結論から示したうえで、三線モデルにおける第1線(現場部門)の位置づけ、リスクオーナーとリスク管理部門・リスクマネージャーの役割の違い、リスクオーナーの決め方と運用のポイントまでを、公的機関の文書や国際規格、実在する金融機関の体制例にもとづいて解説します。
記事の後半では、「どのリスクを誰が持ち、対応がどこまで進んだか」を台帳で一元管理・可視化する手段として、全社的リスク管理(ERM)を支援するGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)ツールもあわせて紹介します。考え方の理解から運用の仕組みづくりまでを一本で確認できる構成です。
一括ダウンロードする
目次
一括ダウンロードする
リスクオーナーシップとは
リスクオーナーシップとは、個々のリスクについて「このリスクは、この人・この部門が責任を持って管理する」と持ち主(リスクオーナー)を明確に定める考え方です。リスクを一覧にして眺めるだけでは管理は進まず、それぞれのリスクに「自分ごと」として向き合う担い手を割り当てて初めて、評価と対応が動き出します。
所有者が決まっていない共用の設備が、誰にも手入れされないまま劣化していくのと同じで、持ち主のいないリスクは放置されがちです。リスクオーナーを定めることは、リスクを「全社でなんとなく気にかけるもの」から「特定の担い手が継続的に見張り、手を打つもの」へと変える出発点になります。
リスクマネジメントの国際規格であるISO 31000(日本産業規格はJIS Q 31000)では、リスクオーナーを、リスクを管理する説明責任(アカウンタビリティ)と権限を併せ持つ人または主体と位置づけています。単に担当として名前が挙がっているだけでなく、管理の結果に対する説明責任と、対応を進めるための権限の両方を持つ点が、リスクオーナーの核心です。
特定のツールやベンダーに固有の概念ではなく、全社的リスク管理の国際的な枠組みに根ざした考え方だといえます。
三線モデル(3つのディフェンスライン)におけるリスクオーナーの位置づけ
リスクオーナーシップは、組織のリスク管理体制を表す「三線モデル(3つのディフェンスライン)」のなかで理解すると位置づけが明確になります。ここでは、第1線から第3線までが誰の役割で、そのなかでリスクオーナーがどこに立つのかを整理します。

第1線・第2線・第3線は誰が何をやるか
三線モデルは、内部監査人協会(IIA)が2020年に公表した「The IIA’s Three Lines Model」で整理されている体制の考え方です。組織の役割を大きく3つに分け、それぞれが異なる立場からリスクに関わります。第1線から第3線までの担い手とリスクとの関わり方を、次の表で整理します。
| ディフェンスライン | 第1線(現場部門) | 第2線(管理部門) | 第3線(内部監査) |
|---|---|---|---|
| 担い手 | 商品・サービスの提供など、事業そのものを担う部門 | リスク管理部・コンプライアンス部 | 内部監査部門 |
| リスクとの関わり方 | 事業活動がリスクの発生源。リスクの持ち主(リスクオーナー)として主体的に管理する | 全社のリスク管理の枠組みを整備し、第1線を牽制・支援する。個別リスクそのものは保有しない | 第1線・第2線から独立した立場で、リスク管理の実効性を評価し、経営や取締役会に助言する |
金融庁も、事業部門(第1線)が主体的にリスクを管理する重要性を繰り返し示しています。コンプライアンス・リスク管理に関する考え方を整理した討議資料のなかで、次のように述べています。
基本方針では、事業部門は、収益を生み出す事業活動に起因するリスクの発生源であり、一般的に、リスク管理の第一義的な責任を有すると考えられることから、事業部門の役職員自身が、コンプライアンス・リスク管理の責任を担うのはまさに自分自身であるという主体的・自律的な意識の下で、業務を実施していくことが重要となるとの問題意識を提示している。
出典:コンプライアンス・リスク管理に関する傾向と課題(p.16)|金融庁
第1線が主体的に管理し、第2線が独立した立場から牽制・支援し、第3線が独立して検証する。この役割分担のなかで、個々のリスクを「持つ」のは第1線のリスクオーナーだという位置づけが、三線モデルの基本になります。
この第3線にあたる内部監査そのものの目的や進め方(計画から報告までの流れ)、監査役監査・会計監査との違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
内部監査とは?目的・進め方(計画〜報告)と外部監査との違いを解説
内部監査の担当に任命された、あるいは上場(IPO)準備の一環で内部監査の体制をこれから整えることになった。そうした場面で、「内部監査とは何をどこまでやることなのか」「監査役監査や会計監査とは何が違うのか」「そもそも自社に義務はあるのか」と、…
「1.5線」という考え方
第1線の現場に任せきりにすると、業務を優先するあまりリスク管理が後回しになりやすいという課題があります。そこで、事業部門の内部にリスク管理を専門に担う担い手を置く「第1.5線(1.5線)」という考え方があります。金融庁の討議資料でも、同様の実務が紹介されています。
その名称の如何を問わず、事業部門の内部に牽制のための職員(いわゆる「第1.5の防衛線」)を設ける等、事業部門におけるリスク管理能力を高めるための態勢を整備しようとしている金融機関も存在した。
出典:コンプライアンス・リスク管理に関する傾向と課題(p.16)|金融庁
1.5線は、第1線がリスクオーナーとして責任を持つという原則を変えるものではなく、その責任を現場のなかで果たしやすくするための補強策として位置づけられます。
実在する金融機関の体制例
三線モデルとリスクオーナーの考え方は、実在する金融機関の公表資料でも具体的に確認できます。三菱HCキャピタルは、サステナビリティ情報のなかで、3線管理の各ラインの役割を次のように明記しています。
出典:リスクマネジメント|三菱HCキャピタル
- 1線(営業・事業本部、グループ会社):ビジネス活動に起因するリスクのリスクオーナーとして、自律的にリスク管理を実施する。
- 2線(各リスク所管部署):リスク管理方針や枠組みの整備、1線に対するモニタリング・牽制等を通じて、1線の自律的なリスク管理を専門的立場から支援する。
- 3線(監査部):1線および2線から独立した立場で、1線および2線によって運用されるリスク管理の実効性を評価し、課題・問題点に対する助言を行う。
第1線が「リスクオーナー」として自律的に管理し、第2線が支援・牽制、第3線が独立検証という分担が、そのまま文章で示されています。三菱HCキャピタルは、この3線管理を、全社的リスク管理の国際的な枠組みであるCOSOフレームワークにもとづいて構築していると説明しています。
三井住友フィナンシャルグループも、リスク管理の取り組みのなかで、一人ひとりがリスクオーナーシップを持つことの重要性に触れています。
持続的な企業価値の向上を実現するためには、役職員一人ひとりがリスクオーナーシップを持って判断し、それに沿った行動を行うことが不可欠です。
出典:リスク管理への取組|三井住友フィナンシャルグループ
リスクオーナーシップは、部門の責任にとどまらず、役職員一人ひとりの判断と行動のレベルまで落とし込むべき考え方だと位置づけられていることがわかります。
リスクオーナーとリスク管理部門(第2線)・リスクマネージャーの違い
リスクオーナーシップを組織に根付かせるうえでつまずきやすいのが、リスクオーナー・リスク管理部門(第2線)・リスクマネージャーという似た立場の役割の違いです。リスクを保有し最終的な責任を負う人、全社の枠組みを整備・支援する部門、管理の実務を回す担当という3者を混同すると、責任の所在があいまいになります。それぞれの違いを整理します。
| 役割 | リスクオーナー | リスク管理部門(第2線) | リスクマネージャー |
|---|---|---|---|
| 三線モデルでの立場 | 第1線(現場・事業部門) | 第2線(管理部門) | 第1線のなかでリスク管理の実務を担う(1.5線に相当する場合もある) |
| 主な責務 | 自部門の業務に伴うリスクを特定・評価し、対応策を決めて実行する | 全社のリスク管理方針・枠組みを整備し、第1線を牽制しつつ専門的立場から支援する | リスクの棚卸し・評価・モニタリングなど、日々の管理プロセスを運用する |
| 責任の性質 | リスクを保有し、管理の結果に対する説明責任(アカウンタビリティ)と対応の権限を併せ持つ | 枠組みの整備と監視に責任を負う。個別リスクそのものの保有責任は負わない | 管理プロセスの実務的な遂行に責任を負う。最終的な保有責任はリスクオーナーにある |
| 典型的な担い手 | 営業・事業本部などの部門責任者 | リスク管理部・コンプライアンス部 | 現場のリスク管理担当・推進担当 |
最も重要なのは、リスク管理部門(第2線)はあくまで枠組みづくりと支援・牽制を担う立場であり、個別のリスクを「持つ」のはリスクオーナー(第1線)だという点です。第2線に任せれば現場のリスクが管理されるわけではなく、現場の一人ひとりが持ち主としての意識を持たない限り、体制は形だけになります。
リスクマネージャーは、そのオーナーシップを現場のなかで実務として回す推進役と理解すると、役割の重なりを整理しやすくなります。
なぜ今リスクオーナーシップが重視されるのか
ここからは、リスクオーナーシップが近年あらためて重視されるようになった背景を整理します。
かつてのリスク管理は、管理部門(第2線)がルールを定めて現場を点検する、管理部門主導のスタイルが中心でした。しかし、事業が複雑化・多様化するなかで、現場の実態を最もよく知るのは事業部門自身であり、管理部門が外から点検するだけでは、現場で日々生まれるリスクを拾いきれないという課題が明確になってきました。
金融分野では、金融庁が形式的なルール遵守の点検から、各社の実態に即した実効的なリスク管理へと監督の重点を移してきました。前掲の討議資料でも、事業部門が自らの責任としてリスクを管理する「リスク・オーナーシップ」の重要性が示されており、管理部門による牽制と支援と組み合わせて体制を高度化する方向性が示されています。
こうした流れのなかで、リスクを現場に「自分ごと」として持たせるリスクオーナーシップの考え方が、あらためて重視されるようになりました。
リスクオーナーシップは、組織としてどこまでのリスクを受け入れるかを定める「リスクアペタイト」や、現場に根付いたリスク感度である「リスクカルチャー」といった考え方とも密接に関わります。これらを機能させる土台として、個々のリスクに持ち主を定めるリスクオーナーシップが位置づけられます。
一括ダウンロードする
リスクオーナーの決め方・設定手順
リスクオーナーを実際に決めるときは、思いつきで担当を割り当てるのではなく、リスクの洗い出しから責任の明文化までを順を追って進めます。ここでは、設定の基本的な手順を4つのステップで整理します。
まず第1のステップは、リスクの棚卸しと分類です。自社の事業活動に伴うリスクを洗い出し、業務プロセスや部門ごとに整理します。この段階でリスクの粒度をそろえておくと、後からオーナーを割り当てやすくなります。
第2のステップは、オーナー候補の選定です。そのリスクを実際に統制できる権限と、判断に必要な情報を持っている人を選びます。名目上の役職ではなく、リスクに対して実際に手を打てる立場かどうかを基準にすることが重要です。
第3のステップは、責任と権限の明文化・合意です。誰がどのリスクのオーナーで、どこまでの判断権限を持つのかを文書で定め、本人と上位者が合意します。口頭での了解にとどめると、問題が起きたときに「聞いていない」という認識のずれが生じやすくなります。
第4のステップは、定例レビューによる見直しです。事業の変化や組織改編に伴ってリスクも割り当ても変わるため、定期的にオーナーの割り当てを点検し、空白や重複がないかを確認します。設定して終わりにせず、割り当てを最新の状態に保つことが、形骸化を防ぐ出発点になります。
オーナーを決めた後の、日常的な監視や問題発生時の対応については、次の章で詳しく解説します。
設定後の運用——日常の監視・エスカレーション・対応
リスクオーナーを決めることは出発点にすぎず、価値を生むのは設定後の日常的な運用です。オーナーが実際に担うのは、担当するリスクを継続的に監視し、変化の兆しをとらえ、必要に応じて対応を発動することです。
日常の監視では、担当リスクの状況を定期的に確認し、あらかじめ定めた指標や閾値に照らして変化を把握します。リスクが高まる兆候をとらえたら、自部門で対応できる範囲か、上位者や管理部門に判断を仰ぐべきかを見極めます。この「どの段階で、誰に、何を上げるか」というエスカレーションの基準を事前に決めておくことで、判断の遅れや抱え込みを防げます。
実際に問題が顕在化したときには、オーナーが主体となって対応策を発動し、その進捗を記録します。対応がどこまで進んだかを可視化しておくことで、管理部門(第2線)や経営層が全社のリスク状況を把握しやすくなり、第2線による牽制・支援も実効的になります。監視から対応までを個人の記憶や表計算ソフトだけで回すと抜け漏れが生じやすいため、後述のツールで仕組み化する企業が増えています。
「名ばかりオーナー」で機能しない原因と対策
リスクオーナーを形式的に割り当てても、実態が伴わず「名ばかりオーナー」になってしまうケースは少なくありません。ここでは、機能しなくなる主な原因と、それぞれへの対策を整理します。
そもそも、オーナーに指名された側の意欲と、実際に対応できる自信のあいだには大きな開きがあることが、調査でも示されています。調査・助言会社のガートナーは、2025年の講演で次のように述べています(原文は英語)。
リスクオーナーの88%は、リスク管理に関する期待に応えようと強く動機づけられている。しかし、その方法に自信を持てているのは35%にとどまる。
出典:Gartner Says Organizations Must Develop a Risk Reflex(2025年9月)|Gartner
意欲はあっても「どう対応すればよいか」が分からなければ、オーナーシップは機能しません。この前提を踏まえ、形骸化の典型的な原因と対策を対応づけて整理します。
| よくある原因 | 名前を割り当てただけで、権限と手順が与えられていない | 特定の部門・個人にリスクが一極集中している | 責任範囲があいまいで、問題を上げにくい |
|---|---|---|---|
| 主な対策 | 責任とセットで必要な権限を付与し、何をどう判断すればよいかの手順を具体的に示す | 棚卸しのうえ、実際に統制できる担い手へ分散し、一人あたりの負荷を現実的な範囲に収める | 責任範囲とエスカレーション基準を明文化し、早期報告が評価される雰囲気と定例レビューをつくる |
第1の原因は、名前を割り当てただけで、権限と手順が与えられていないことです。対応に必要な予算や意思決定の権限がないまま責任だけを負わされると、オーナーは動けません。対策は、責任とセットで必要な権限を明確に付与し、何をどう判断すればよいかの手順を示すことです。先のガートナーの調査が示すとおり、意欲より「やり方の自信」が不足しがちなため、具体的な手順の提供が効きます。
第2の原因は、特定の部門や個人にリスクが一極集中していることです。多数のリスクを一人が抱えると、どれも十分に見られなくなります。対策は、リスクを棚卸ししたうえで、実際に統制できる担い手へ適切に分散し、一人あたりの負荷を現実的な範囲に収めることです。
第3の原因は、責任範囲があいまいで、問題を上げにくいことです。どこまでが自分の責任か分からなかったり、問題を報告すると評価が下がると感じたりすると、リスクは隠れてしまいます。
対策は、責任範囲を文書で明確にし、エスカレーションの基準を定めるとともに、問題を早く上げることが評価される雰囲気をつくることです。あわせて、定例レビューで割り当てと対応状況を定期的に点検すれば、形骸化の兆候を早期にとらえられます。
リスクの持ち主と対応状況を可視化する方法(ERM型GRCツールの活用)
リスクオーナーシップを根付かせるには、「どのリスクを誰が持ち、評価や対応がどこまで進んだか」を一覧で管理し、関係者が同じ情報を見られる状態をつくることが欠かせません。この台帳管理と可視化を支えるのが、全社的リスク管理(ERM)を支援するGRCツールです。リスクを登録してオーナーや評価、対応状況を紐づけ、ダッシュボードで全社のリスク状況を俯瞰できます。
ここからは、ERM型のGRCツールのうち代表的なものを紹介します。これらは中堅〜大企業での全社的なリスク管理を想定した製品が中心で、料金は個別見積もりが基本です(公式に開始価格を示している製品もあります)。一方で、国内開発で小規模から始められる製品もあり、組織の規模や導入段階に応じて選べます。各サービスの機能や提供形態は変わることがあるため、最新の情報は公式サイトや資料で確認してください。
ここで取り上げるのはERM(全社的リスク管理)に強みを持つツールです。ESG開示基準への対応や委託先管理まで含めてGRCツールを横断的に比較したい場合や、選び方の基準から確認したい場合は、以下の記事で26のツールを詳しく解説しています。
【比較表】全社リスク管理(ERM)を支援する主なGRCツール
| サービス名 | Archer | IBM OpenPages | MetricStream | Diligent | Enterprise Risk MT(ERMT) |
|---|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド(SaaS) オンプレミス ハイブリッド | クラウド(SaaS/IBM Cloud) オンプレミス | クラウド(MetricStream Cloud) | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS) Salesforce基盤 |
| リスクオーナーの割当 | リスク台帳で各リスクにオーナーと期限を割当 | 損失事象で所有者(オーナー)を記録/My Tasksで担当割当 | リスクの属性としてオーナーを保持し中央管理 | 台帳の週次スキャンでオーナー未設定を検出/課題単位で割当 | 標準5区分に「リスクオーナー」区分を用意 |
| リスク評価(固有・残存等) | 固有・残存リスクを評価 RCSAキャンペーン 評価尺度は組織ごとに変更可 | RCSA(リスク・統制の自己評価) シナリオ分析 | 固有・残存リスクをヒートマップ化 定性・定量の多次元評価 | 設定可能なスコアリングとヒートマップ アンケートで関係者から入力収集 | 発生可能性×影響度でリスクレベルを算出 リスクマトリックスを標準装備 |
| KRI・モニタリング | KRIのしきい値を監視し、サイクルごとにオーナーへタスク付与 | 統合リスクデータの一部としてKRIを管理 | KRI/KCI/KPIの閾値を監視し、超過時に自動通知 | しきい値・リスク選好度の超過をリアルタイム検知しアラート | 対応状況のモニタリングと期限アラート |
| 対応状況の追跡・可視化 | RCSAワークフローで評価を追跡 リスク記録への自然言語クエリ | My Tasksで担当作業を一覧 ドリルダウン分析・アドホックレポート | ロール別ダッシュボード 未解決課題数・KRIトレンドをドリルダウン | 課題のオーナー割当・進捗監視・SLA追跡 取締役会向けレポートを自動下書き | 対応策タスクの実施状況・期限管理 ダッシュボードで可視化(権限別表示制御) |
| 主な強み | 25年以上のGRC実績 ERM・監査・ITセキュリティ等を同一基盤で提供 | AI活用の統合GRC モデルリスク管理など金融機関向けモジュール | リスク・統制・課題・KRIを横断で紐付け AIによる課題の重複識別 | 経営・取締役会への報告に強み Diligent One Platformに統合 | ISO31000準拠の国内開発ERM 小規模から始められるライセンス |
| 料金 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| 詳細情報 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
※2026年10月時点の各社公式情報にもとづく目安です。各列は公式に確認できた範囲の対応内容を記述で示したもので、機能の有無を保証するものではありません。料金が非公開のサービスは「要問い合わせ」と記載しています。最新の対応状況・料金は各社公式ページでご確認ください。
1. Archer(Archer Technologies Japan合同会社)

Archerは、RSA Archerの時代から25年以上にわたって提供されてきた、統合リスク管理(GRC)プラットフォームです。現在はArcher Technologies Japan合同会社が日本での窓口となり、クラウド(SaaS)・オンプレミス・ハイブリッドのいずれの形態でも利用できます。
リスクオーナーシップの観点で特徴的なのは、リスクレジスタ(リスク台帳)上で、一つひとつのリスクに名前付きのオーナーと期限を割り当てられる点です。公式サイトでは、リスクを「オーナー別・事業単位別」に管理する考え方が示されています。
さらに、リスク・コントロール自己評価(RCSA)、主要リスク指標(KRI)の閾値監視と指標オーナーへのタスク割り当て、損失事象の記録まで、全社的リスク管理に必要な機能が一通りそろっています。料金は公開されていないため、導入時は要お問い合わせとなります。
2. IBM OpenPages(日本アイ・ビー・エム株式会社)

IBM OpenPagesは、日本アイ・ビー・エムが提供する統合GRCプラットフォームで、オペレーショナルリスク管理をはじめとする複数のモジュールで構成されています。クラウドとオンプレミスの両方の提供形態があります。
オペレーショナルリスク管理モジュールでは、リスク・コントロール自己評価(RCSA)、損失事象の管理、主要リスク指標(KRI)、シナリオ分析といった機能を備えています。損失事象の管理では、発生した事象について金額や根本原因とともに、その責任の所在(オーナーシップ)を記録できます。
また「My Tasks」の仕組みで、損失事象のレビューや課題の承認といった作業を担当者ごとに割り当てて一覧化できるため、リスクに関わる対応を担い手に紐づけて追いやすい設計です。料金は複数のエディションが用意されており、詳細は要お問い合わせとなります。
3. MetricStream(MetricStream, Inc.)

MetricStreamは、全社的リスク管理やオペレーショナルリスク管理を含む、幅広いGRC領域をカバーするプラットフォームです。中央のリスクライブラリで、事業目標・業務プロセス・リスク・統制を相互に紐づけて管理できる点が土台になっています。
リスク評価では、定性・定量の多面的な評価を集計し、固有リスクと残存リスクをヒートマップで可視化できます。主要リスク指標(KRI)を閾値で監視し、超過時に自動で通知する仕組みも備えています。リスクには属性としてオーナーを持たせて中央で管理でき、ロール別のダッシュボードから、リスクごとの未解決の課題数やKRIの傾向を掘り下げて確認できます。
料金は公開されていないため、導入時は要お問い合わせとなります。
4. Diligent(Diligent Corporation)

Diligentは、取締役会向けの管理ツールを起点に、企業リスク管理(ERM)・内部監査・コンプライアンスなどを単一基盤に統合した「Diligent One Platform」を提供しています。経営・取締役会への報告に強みを持つのが特徴です。
リスク台帳(リスクレジスタ)を週次でスキャンし、重複やオーナー未設定、更新が止まったレコードを検出する機能を備えています。課題についてはオーナーを割り当てて進捗を監視でき、サービス水準(SLA)を追跡して期限超過を自動でエスカレーションします。
リスク評価は設定可能なスコアリングとヒートマップで行い、国際標準や優良事例(ISO 31000など)を参考にした運用モデルを掲げています。経営層や取締役会向けのレポートを自動で下書きする機能もあります。料金は要お問い合わせです。
5. Enterprise Risk MT(ERMT)(株式会社GRCS)

Enterprise Risk MT(ERMT)は、株式会社GRCSが提供する、ISO 31000に準拠した国内開発の全社的リスク管理(ERM)クラウドサービスです。Salesforceプラットフォーム上に構築されており、小規模から始められるライセンスモデルを採用しています。
リスクオーナーシップの観点で注目したいのは、標準で5種類のユーザー区分を備え、そのなかに「リスクオーナー」「現場部門(リスクマネージャー)」「リスク管理部ユーザー」といった役割が明確に分かれている点です。本記事で整理してきた役割分担が、そのまま権限設計に反映されています。
機能としては、リスクの特定・分析・評価を行うリスクアセスメント、対応策の実施状況を追うリスク対応管理、インシデント管理、リスクマトリックスやダッシュボードによる可視化を備えています。
導入企業として戸田工業・セガサミーホールディングス・青山商事などが公式に示されており、2025年9月からは東京海上日動火災保険が販売紹介を開始しています。料金は非公開です。
出典・参考資料(4件)
まとめ
リスクオーナーシップとは、個々のリスクに「誰が責任を持って管理するか」という持ち主を明確に定める考え方です。三線モデルでは第1線(現場部門)がリスクオーナーとして自律的に管理し、第2線が枠組みの整備と牽制・支援、第3線が独立した検証を担います。リスクを現場に「自分ごと」として持たせることが、実効的なリスク管理の出発点になります。
一方で、名前を割り当てるだけでは「名ばかりオーナー」になりがちです。権限と手順をセットで与え、一極集中を避け、責任範囲とエスカレーションの基準を明確にし、定例レビューで割り当てと対応状況を点検することが、形骸化を防ぐ鍵になります。
そして、「どのリスクを誰が持ち、対応がどこまで進んだか」を台帳で一元管理・可視化するERM型のGRCツールは、この運用を仕組みとして支える手段になります。自社のリスク管理体制の整備を検討している方は、各サービスの資料をあわせて確認してみてください。
一括ダウンロードする
よくある質問(FAQ)
Q. リスクオーナーシップとは何ですか?
A. リスクオーナーシップとは、個々のリスクについて「このリスクはこの人・この部門が責任を持って管理する」という持ち主(リスクオーナー)を明確に定める考え方です。
リスク管理の国際規格であるISO 31000では、リスクオーナーを、リスクを管理する説明責任(アカウンタビリティ)と権限を併せ持つ人または主体と位置づけており、特定のツールやベンダーに固有の概念ではなく、全社的リスク管理の国際的な枠組みに根ざした考え方です。
Q. リスクオーナーシップとリスク管理(リスクマネジメント)は何が違うのですか?
A. リスク管理がリスクを特定・評価・対応・監視する一連のプロセス全体を指すのに対し、リスクオーナーシップはそのなかで「誰が個々のリスクに責任を持つか」を明確にする考え方です。両者は対立するものではなく、プロセスを回す仕組みがあっても持ち主が決まっていなければ対応は進まないため、リスクオーナーシップはリスク管理を実効的に機能させる前提として位置づけられます。
Q. リスクオーナーとリスク管理部門(第2線)は何が違うのですか?
A. リスクオーナー(第1線)は個別のリスクを保有して管理の最終責任を負う立場、リスク管理部門(第2線)は全社の枠組みを整備し第1線を牽制・支援する立場で、役割が異なります。第2線は方針づくりとモニタリングを担いますが、個別リスクそのものの保有責任は負いません。管理部門に任せれば現場のリスクが管理されるわけではなく、個々のリスクを「持つ」のはあくまで第1線のリスクオーナーです。
Q. 三線モデル(3つのディフェンスライン)でリスクオーナーはどこに位置づけられますか?
A. リスクオーナーは、三線モデル(3つのディフェンスライン)の第1線(現場・事業部門)に位置づけられます。第1線が事業活動に伴うリスクの持ち主として主体的に管理し、第2線(管理部門)が枠組みの整備と牽制・支援を、第3線(内部監査)が独立した立場からの検証を担います。
金融庁も、事業部門はリスクの発生源として「リスク管理の第一義的な責任を有する」とし、事業部門の役職員自身が主体的・自律的にリスク管理を担う意識が重要だとしています。
出典・参考資料(1件)
Q. 小規模な組織や中小企業でもリスクオーナーを決める必要がありますか?
A. 組織の規模にかかわらず、個々のリスクに持ち主を定めておくことは有効です。規模が小さい場合は一人が複数のリスクを兼任することもありますが、「このリスクは誰が見るのか」があいまいだと対応の主体が定まらない点は、大きな組織と変わりません。むしろ人員が限られる組織ほど、誰が何に責任を持つのかを明文化しておくことで、抜け漏れや特定の人への抱え込みを防ぎやすくなります。
Q. リスクオーナーは人事異動や組織改編で変更できますか?
A. リスクオーナーは固定ではなく、人事異動や組織改編、事業内容の変化に応じて見直すべきものです。リスクそのものやその割り当ては時間とともに変わるため、定例レビューで割り当てを点検し、担い手が替わるときは責任と権限を確実に引き継いで、空白や重複が生じないようにします。設定して終わりにせず、割り当てを最新の状態に保つことが、形骸化を防ぐことにつながります。
Q. リスクオーナーを割り当てても機能しない場合、どうすればよいですか?
A. 責任だけを課すのではなく、対応に必要な権限と具体的な手順をセットで与えることが、リスクオーナーを機能させる出発点です。オーナーに指名された人は意欲を持っていても、どう対応すればよいか自信を持てている人は限られるという調査結果もあり、「やり方」の支援が欠かせません。
必要な権限の付与、エスカレーション基準の明確化、問題を早く報告できる雰囲気づくり、定例レビューでの点検を組み合わせることで、「名ばかりオーナー」を防げます。
全社リスク管理(ERM)に役立つGRCツールの料金・資料を一括チェック
MCB FinTechカタログでは、リスクの台帳管理や可視化に役立つGRCツールの最新資料を無料で一括請求できます。機能・提供形態・対応領域をまとめて比較し、自社のリスク管理体制に合うサービスを効率的に見つけられます。
一括ダウンロードする
MCB FinTechカタログに掲載しませんか?
MCB FinTechカタログでは、掲載企業様を募集しています。マネックスグループの金融実務ノウハウを活かした独自の評価軸と検索設計により、導入検討者が最適なサービスを効率的に発見できる法人向け比較プラットフォームです。掲載後は管理画面から料金表や導入事例を随時更新でき、常に最新の情報を訴求可能。まずは下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















