事業を取り巻くリスクは、情報漏えいや自然災害、取引先の不祥事、法令違反、評判の低下まで、年々多様になっています。こうしたリスクに場当たり的に対応するのではなく、組織として備えておく取り組みがリスクマネジメントです。「リスクマネジメントをやろう」と言われたとき、まず押さえておきたいのは「何のためにやるのか」という目的ではないでしょうか。
目的があいまいなまま進めると、現場では「とりあえずリスクを洗い出す作業」だけが残り、経営の意思決定にも社内の合意形成にもつながりません。逆に目的がはっきりしていれば、どこまでやるべきか、何を優先するかの判断がぶれなくなります。
本記事では、リスクマネジメントの目的を、社内説明にそのまま使える形で結論から示します。あわせて、なぜ必要なのか、似た言葉との違い、特定から評価・対応・モニタリングまでの進め方、リスクへの対応手法を解説し、目的を果たし続けるための仕組みづくりを支えるツールも紹介します。制度の新規導入や既存の取り組みの見直しに着手するための材料としてご活用ください。
目次
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リスクマネジメントの目的
リスクマネジメントの目的は、不確かな出来事から組織の目的達成を守り、事業を継続できる状態を保つことです。実務では、次の4点に整理すると社内で共有しやすくなります。
- 事業の存続・継続:重大なリスクが起きても事業を止めない、あるいは早く立て直す
- 損失の極小化:事故や不正が起きたときの金銭的・時間的な損失を小さく抑える
- ステークホルダーの信頼確保:顧客・取引先・株主・従業員に対して、備えがあることを示す
- 事業機会の獲得:リスクを管理したうえで、新規事業や投資に踏み込めるようにする
この4点は実務で定着した整理で、規格の条文そのままの表現ではありません。規格の側からみると、リスクマネジメントの意義は次のように示されています。
リスクマネジメントの意義は,価値の創出及び保護である。リスクマネジメントは,パフォーマンスを改善し,イノベーションを促進し,目的の達成を支援する。
出典:JIS Q 31000:2019(ISO 31000:2018)リスクマネジメント-指針 箇条4
このように、リスクマネジメントは、損失を防ぐ守りだけでなく、組織の価値を生み出し、目的の達成を後押しする攻めの側面も持つ取り組みとして位置づけられています。社内で目的を説明するときは、この「価値の創出及び保護」という芯を押さえておくと、単なる守りのコストと誤解されにくくなります。
リスクマネジメントとは(ISO 31000/JIS Q 31000 の定義)
リスクマネジメントの国際的な指針が、ISO 31000(2018年版)です。日本では、これと一致する内容が JIS Q 31000:2019「リスクマネジメント-指針」として定められています。この規格では、そもそも「リスク」を次のように定義しています。
目的に対する不確かさの影響。
出典:JIS Q 31000:2019(ISO 31000:2018)リスクマネジメント-指針 3.1 リスク
注記1 影響とは,期待されていることからかい(乖)離することをいう。影響には,好ましいもの,好ましくないもの,又はその両方の場合があり得る。影響は,機会又は脅威を示したり,創り出したり,もたらしたりすることがあり得る。
ここで押さえたいのは、リスクは「悪いこと」だけを指すのではない点です。定義の注記にあるとおり、影響には好ましいものも含まれます。利益につながる機会もリスクの一種として扱うのが、この規格の考え方です。
そのうえで、リスクマネジメントは「リスクについて,組織を指揮統制するための調整された活動」(JIS Q 31000:2019 3.2)と定義されています。目的を達成するうえでの不確かさを、組織として管理する活動だと理解すると、先ほどの目的とつながります。
リスクマネジメントの必要性と放置した場合のリスク
ここからは、なぜリスクマネジメントが必要なのかを、放置した場合に何が起きるかという観点から説明します。目的を社内で説得するときの材料になります。
事業環境の変化によって、企業が向き合うリスクは増え続けています。サイバー攻撃や情報漏えい、法改正への対応、取引先を経由した問題、SNSでの評判の悪化など、一部門だけでは抱えきれない範囲に広がっています。こうしたリスクに備えがないまま重大な事象が起きると、一度の失敗が企業の存続そのものを揺るがすことがあります。
実際に、リスクへの備えが不十分だったことが経営を直撃した事例は少なくありません。自動車部品メーカーのタカタは、エアバッグの異常破裂を発端とする大規模リコールで経営が悪化し、2017年6月26日に民事再生法の適用を申請しました。製品安全というリスクの顕在化が、企業の存続を脅かした例です。
コンプライアンスにかかわる不正も、監督官庁の処分と信用の失墜を招きます。三菱自動車工業は2016年4月20日に軽自動車の燃費試験データの不正を公表し、同日、国土交通省から道路運送車両法に基づく調査指示を受けました。国土交通省の指示文書では、この事態を次のように記しています。
かかる事態は,自動車認証制度の社会的な信用を大きく失墜させるものであり,誠に遺憾である。
出典:三菱自動車工業の排出ガス・燃費試験の不正事案に係る調査指示(国自環第14号ほか・平成28年4月20日)|国土交通省
会計やガバナンスにかかわる不正も、同じように企業の信用を直撃します。財務報告の信頼性が疑われれば、投資家や取引先からの信頼を失い、資金調達や取引の継続にも影響します。これらの事例が示すように、特定のリスクを管理しきれなかったことが、信用と事業基盤の両方を損ないます。
こうした事態は大企業に限りません。むしろ、経営体力に余裕のない中小企業ほど、情報漏えいや取引先の倒産、自然災害によるサプライチェーンの寸断といった一度のリスクが、事業の継続を直接揺るがします。リスクマネジメントは、こうした事態を未然に防ぎ、起きたときの損失を抑えるために必要とされます。
出典・参考資料(1件)
企業が直面するリスクの種類(純粋リスクと投機的リスク)
何をリスクマネジメントの対象にするかを整理するとき、リスクは大きく2種類に分けて考えられます。実務で広く使われている分類で、規格そのものの用語ではありませんが、リスクの範囲を把握するのに役立ちます。
- 純粋リスク:火災・事故・自然災害・情報漏えいなど、損失だけをもたらすリスク。発生すればマイナスにしかならず、回避や損失軽減の対象になる
- 投機的リスク:新規事業・設備投資・為替変動など、損失にも利益にもなり得るリスク。避けるだけでなく、取るかどうかを判断する対象になる
リスクマネジメントというと純粋リスクへの備えを思い浮かべがちですが、投機的リスクをどこまで取るかの判断も含まれます。先に触れた「事業機会の獲得」という目的は、この投機的リスクを管理したうえで前に進むことと結びついています。たとえば、想定されるリスクを洗い出して対策を講じたうえで新規事業や海外展開に踏み込む判断が、これにあたります。
リスクマネジメントと似た言葉との違い
リスクマネジメントには、意味が重なって見える言葉がいくつかあります。目的とスコープを取り違えないよう、代表的な3つの言葉との違いを、リスクマネジメント自身と並べて整理します。
| 用語 | 意味 | リスクマネジメントとの関係 |
|---|---|---|
| リスクアセスメント | リスクを特定・分析・評価するプロセス | リスクマネジメントの一部。評価までの工程を指す |
| リスクヘッジ | 想定されるリスクに備えて、あらかじめ手を打っておくこと | リスクへの対応手段の一つ。全体の活動ではない |
| クライシスマネジメント(危機管理) | 重大な事態が起きた後に、被害の拡大を抑え収束させること | 事後対応が中心。事前の備えを担うリスクマネジメントと時間軸が異なる |
| リスクマネジメント | リスクについて組織を指揮統制する調整された活動 | 特定から対応・モニタリングまでを含む上位の概念 |
とくに混同しやすいのが、リスクアセスメントとリスクマネジメントの関係です。規格では、リスクアセスメントを次のように定義しています。
リスクアセスメントとは,リスク特定,リスク分析及びリスク評価を網羅するプロセス全体を指す。
出典:JIS Q 31000:2019(ISO 31000:2018)リスクマネジメント-指針 6.4.1
このように、リスクアセスメントは、リスクマネジメントという大きな活動のなかで、リスクを見つけて評価するまでの工程に当たります。一方で、クライシスマネジメント(危機管理)は事態が起きた後の対応が中心です。リスクマネジメントが「事前の備え」、危機管理が「事後の対応」と、時間軸で整理すると違いがはっきりします。
リスクマネジメントの進め方(特定・分析・評価・対応・モニタリング)
ここからは、目的を実務で果たすための進め方を、段階ごとに解説します。JIS Q 31000:2019 は、リスクマネジメントのプロセスを次のように説明しています。
リスクマネジメントプロセスには,方針,手順及び方策を,コミュニケーション及び協議,状況の確定,並びにリスクのアセスメント,対応,モニタリング,レビュー,記録作成及び報告の活動に体系的に適用することが含まれる。
出典:JIS Q 31000:2019(ISO 31000:2018)リスクマネジメント-指針 6.1
ここでは、実務の中心となる「特定・分析・評価・対応・モニタリング」の5段階を、規格の各段階の意義にもとづいて説明します。規格はこの前後に「コミュニケーション及び協議」「適用範囲,状況及び基準の確定」「記録作成及び報告」も位置づけているため、下記が全工程のすべてではない点にご注意ください。

1. リスク特定:組織の目的の達成を助ける、または妨げる可能性のあるリスクを発見し、認識し、記述する段階です。どんなリスクがあるのかを、部門や業務を横断して洗い出します。ここで漏れがあると、後の工程すべてに影響します。
2. リスク分析:特定したリスクについて、必要に応じてリスクのレベルを含め、その性質や特徴を理解する段階です。発生の可能性と影響の大きさの2軸をとったリスクマトリクスに各リスクを置くと、どれが重大かを一目で比べられます。
3. リスク評価:ここでは、分析の結果をあらかじめ定めたリスク基準と比較し、どこに追加の対応を取るかを決めます。規格は、リスク評価の意義を「決定を裏付けること」と説明しています。優先順位づけの土台になります。
4. リスク対応:評価を踏まえ、リスクに対処するための選択肢を選び、実施する段階です。具体的にどんな手段があるかは、次の「リスクへの対応手法」で詳しく説明します。
5. モニタリング及びレビュー:最後に、プロセスの設計・実施・結果の質と効果を保証し、改善していきます。一度決めた対応が機能しているか、環境の変化で新しいリスクが生じていないかを、継続的に確認します。
リスクへの対応手法(回避・低減・移転・受容)
リスク対応の段階で、具体的に何を選ぶのかを整理します。実務では、リスクへの対応を次の4つに分けて考えることが多くあります。
- 回避:リスクを生む活動そのものを行わない(撤退・中止など)
- 低減:発生のしやすさや影響の大きさを下げる(対策の実施・体制整備など)
- 移転(共有):保険や契約によって、リスクの一部を外部と分担する
- 受容:影響が小さいなどの理由から、リスクを受け入れて保有する
この4分類は、全社的リスクマネジメントの枠組みを示した COSO-ERM(2004年)に由来します。COSO の原語では、回避(avoidance)・低減(reduction)・共有(sharing)・受容(acceptance)とされています。
日本では「共有」を、保険や契約によってリスクの一部を外部へ移す意味で「移転」と呼ぶことが一般的です。ただし、規格である JIS Q 31000:2019 自体は、この4分類という形ではなく、より幅広いリスク対応の選択肢を挙げています。
リスク対応の選択肢には,次の事項の一つ以上が含まれてもよい。
出典:JIS Q 31000:2019(ISO 31000:2018)リスクマネジメント-指針 6.5.2
− リスクを生じさせる活動を開始又は継続しないと決定することによってリスクを回避する。
− ある機会を追求するために,リスクを取る又は増加させる。
− リスク源を除去する。
− 起こりやすさを変える。
− 結果を変える。
− (例えば,契約,保険購入によって)リスクを共有する。
− 情報に基づいた意思決定によって,リスクを保有する。
もう一つ、損害保険の実務で広く使われる整理として、リスク対応を「リスクコントロール」と「リスクファイナンシング」の2つに分ける見方があります。これは特定の規格に定められたものではなく、一般的な区分として用いられています。
リスクコントロールは損失の発生や拡大そのものを防ぐ対策(回避・低減が中心)、リスクファイナンシングは損失を資金面で手当てする対策(移転・受容が中心)を指します。4分類との対応は次の表のとおりです。
| 2つの整理 | ねらい | 対応する4分類 |
|---|---|---|
| リスクコントロール | 損失の発生・拡大を防ぐ | 回避・低減 |
| リスクファイナンシング | 損失を資金面で手当てする | 移転(共有)・受容 |

どの手法を選ぶかは、リスクの大きさと自社の許容度によって変わります。影響が大きく発生しやすいリスクは回避や低減を優先し、影響が小さいものは受容する、といった判断を、評価の結果にもとづいて組み合わせていきます。
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リスクマネジメントを継続する仕組み
ここまで見てきたように、リスクマネジメントは一度やって終わりではなく、特定・分析・評価・対応・モニタリングを回し続ける活動です。目的を実務で果たし続けるには、この継続運用を支える仕組みが欠かせません。
リスクマネジメントのよくある課題
継続運用を妨げる要因として、実務でよく挙げられるのが次のような課題です。
- 責任者や役割が明確でなく、誰がリスクを管理するのかが曖昧になっている
- リスクを部門ごとに把握しているだけで、全社のリスクが洗い出せていない
- 継続的にモニタリング・見直しをする体制が整っていない
- リスク台帳や評価を表計算ソフトで属人的に管理しており、更新や共有が止まりがち
とくに、表計算ソフトでの属人的な管理は、担当者の異動や多忙で更新が止まり、リスク情報が古くなりやすい点が課題です。全社のリスクを一元的に識別・評価し、継続的に見直す運用を支えるために、専用のツールを活用する選択肢があります。
ツールを導入する前に、まず自社でリスク台帳の管理ルールや責任者を決めておくと、その効果を引き出しやすくなります。そのうえで活用したい、目的ごとに特徴の異なるサービスを紹介します。
| サービス名 | VendorTrustLink | SecureNavi | Enterprise Risk MT(ERMT) |
|---|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社アトミテック | SecureNavi株式会社 | 株式会社GRCS |
| 対象とするリスクの範囲 | 委託先・取引先リスク (TPRM/第三者リスク管理) | 情報セキュリティリスク (ISMS・Pマーク運用) | 全社のリスク (ERM/全社的リスクマネジメント) |
| 向いている企業 | 委託先・取引先が多く、チェックシート審査を効率化したい企業 | ISMS(ISO/IEC 27001)やPマークの取得・運用を一元管理したい企業 | 特定領域に限らず全社のリスクを一元的に見える化したい企業 |
| 主な機能 | チェックシートの自動送付・回収・採点、委託先の分類・管理、ダッシュボード、AIによるリスク判断支援 | ステップ式の取得ガイド、規程・情報資産台帳・リスクアセスメント・内部監査の一元管理、リスクの自動提案 | リスクアセスメント(特定・分析・評価)、リスク対応管理、インシデント管理、リスクマトリックス・ダッシュボード |
| 準拠・対応する規格 | ISO 31000の考え方に沿って設計 (認証ではない) | ISO/IEC 27001・Pマーク (取得・運用支援) | ISO 31000:2018に準拠 (公式表記) |
| 導入形態 | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS・Salesforce基盤) |
| 料金 | 要問い合わせ (委託情報件数・アカウント数で個別見積り) | 要問い合わせ | 要問い合わせ (スモールスタート可能なライセンスモデル) |
| 無料トライアル | あり(期間は非公開) | 公式に記載なし | 公式に記載なし |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 | サービス詳細を見る |
1. VendorTrustLink(株式会社アトミテック)

委託先のリスク管理に特化したクラウドサービスが、株式会社アトミテックの VendorTrustLink です。取引先や外部委託先が増えると、そのリスクを個別に把握しきれなくなりますが、VendorTrustLink は委託先を業務の重要度や個人情報の取扱区分で分類し、リスクを可視化します。
公式サイトでは、リスクマネジメントの国際的な指針である ISO 31000 の考え方に沿って、委託先情報の整理やチェックシートの運用を支援すると説明されています。
セキュリティ・コンプライアンス・品質などのチェックシートを自社で設計して一括配信でき、回答は自動採点され、経年での比較や委託先同士の比較も行えます。未回答者への自動リマインドや期限通知、履歴の蓄積といった機能で、点検を続ける運用を支える点が特徴です。情報漏えいや反社会的勢力、ハラスメント、人権侵害など、幅広いリスクを対象として掲げています。
2. SecureNavi(SecureNavi株式会社)

情報セキュリティのリスクに的を絞って管理したい企業に向くのが、SecureNavi株式会社のクラウド型オートメーションツール SecureNavi です。ISMS認証(ISO/IEC 27001)やプライバシーマークの取得・運用を一元的に管理でき、Excel や Word で分散しがちだった規程類・情報資産台帳・リスクアセスメント・内部監査記録を、SaaS 上に集約します。
認証取得に必要な工程がステップ化して示されるため、専任の担当者がいない企業でも進めやすい設計です。取得して終わりではなく、更新審査や内部監査、規格改訂への対応といった運用フェーズにも対応します。情報セキュリティという特定領域のリスクを、継続的に管理する仕組みとして使えます。
3. Enterprise Risk MT/ERMT(株式会社GRCS)

GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)を専門とする株式会社GRCS が提供する Enterprise Risk MT(ERMT)は、特定の領域に限らず、全社のリスクを一元的に管理するためのクラウドツールです。全社的リスクマネジメント(ERM)のための基盤で、公式サイトでは ISO 31000:2018 のリスクマネジメントプロセスに則った ERM 基盤と位置づけられています。
本記事で見てきた特定・分析・評価・対応・モニタリングという流れを、表計算ソフトではなくツール上で見える化し、省人化・迅速化する点が特徴です。属人的な管理から脱却し、全社のリスクを継続的に把握し直す運用に向いています。提供元のGRCSは、戸田工業やセガサミーホールディングス、青山商事などへの導入事例を公表しています。
ここで紹介した3サービスは、委託先・情報セキュリティ・全社と、対象とするリスクの範囲が異なる例です。自社の目的に合うツールを、選び方や機能の違いまで含めて広く見比べたい場合は、以下の記事で主要なGRC・リスク管理ツールを比較・解説しています。
まとめ
リスクマネジメントの目的は、不確かな出来事から組織の目的達成を守り、事業を継続できる状態を保つことにあります。実務では、事業の存続・継続、損失の極小化、ステークホルダーの信頼確保、事業機会の獲得という4点に整理すると、社内で共有しやすくなります。
この目的を果たすには、リスクを特定し、分析・評価して、適切な手法で対応し、継続的にモニタリングする一連のプロセスを回し続ける必要があります。そして、その継続運用を属人的な管理に頼らず仕組みとして支えるために、全社のリスクや特定領域のリスクを一元管理するツールを活用する選択肢があります。自社の目的と課題に合った進め方を設計するための第一歩として、本記事をご活用ください。
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よくある質問(FAQ)
Q. リスクマネジメントとは何ですか?
A. リスクマネジメントとは、目的に対する不確かさの影響(リスク)について、組織を指揮統制するための調整された活動です(JIS Q 31000:2019)。ここでいうリスクは「悪いこと」だけを指すのではなく、好ましい影響(利益につながる機会)も含みます。損失を防ぐ「守り」と、価値を生み出す「攻め」の両面を持つ取り組みです。
Q. リスクマネジメントの目的は何ですか?
A. リスクマネジメントの目的は、不確かな出来事から組織の目的達成を守り、事業を継続できる状態を保つことです。実務では「事業の存続・継続」「損失の極小化」「ステークホルダーの信頼確保」「事業機会の獲得」の4点に整理すると、社内の説明資料や稟議にそのまま使えます。
Q. 専任部署のない中小企業でもリスクマネジメントは必要ですか?
A. リスクマネジメントは企業の規模にかかわらず必要で、経営体力の小さい中小企業ほど優先度が高くなります。一度の重大なリスクの顕在化が、事業の存続を直接揺るがしやすいためです。専任部署がなくても、まずは自社に関わるリスクを洗い出し、影響の大きいものから対応を決めるところから始められます。
Q. リスクマネジメントと危機管理(クライシスマネジメント)はどう違いますか?
A. 両者の違いは時間軸にあり、リスクマネジメントは事前の備え、危機管理(クライシスマネジメント)は事態が起きた後の事後対応を中心とします。リスクマネジメントがリスクの特定から対応・モニタリングまでを含む平時からの活動であるのに対し、危機管理は重大な事態が発生した後に被害の拡大を抑え、収束させることに主眼を置きます。
Q. リスクアセスメントとリスクマネジメントは同じ意味ですか?
A. 同じではなく、リスクアセスメントはリスクマネジメントの一部です。JIS Q 31000:2019 では、リスクアセスメントを「リスク特定、リスク分析及びリスク評価を網羅するプロセス」と定義しています。リスクマネジメントは、このアセスメント(評価までの工程)に加えて、リスク対応やモニタリングまでを含む、より大きな活動を指します。
Q. リスクマネジメントは何から始めればよいですか?
A. リスクマネジメントは、まず自社に関わるリスクを部門横断で洗い出す「リスク特定」から始めます。そのうえで、発生のしやすさと影響の大きさを分析・評価し、影響の大きいリスクから回避・低減・移転・受容といった対応を決めていきます。最初から完璧を目指さず、重要なリスクに絞って一巡させ、モニタリングしながら対象を広げるのが現実的です。
Q. リスクマネジメントは社内の誰が担当・責任を持つべきですか?
A. リスクマネジメントは、全社のリスクを束ねる担当部署(総務・経営企画・リスク管理部門など)と、最終責任を負う経営層を定め、責任の所在を明確にすることが出発点です。責任者や役割が曖昧なまま進めると、リスクが部門ごとに分断され、全社の視点で洗い出せなくなります。実務では各部門に担当者を置き、全社の情報を一元的に集約・見直す体制を整えます。
Q. リスクマネジメントとERM(全社的リスクマネジメント)はどう違いますか?
A. ERM(全社的リスクマネジメント)は、部門ごとに個別対応しがちなリスク管理を、全社を横断して一元的に捉える枠組みです。リスクマネジメント自体は一部門・一領域でも実践できますが、ERM は経営目的に照らして全社のリスクを統合的に評価・管理する点に特徴があります。全社のリスクを継続的に見直す運用では、ERM を支える専用ツールの活用も選択肢になります。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















