株式上場(IPO)の準備が本格化すると、経理部門に求められる仕事はそれまでと大きく変わります。税務申告を中心とした会計から、投資家に向けた適正な財務報告へと軸足が移り、月次・四半期での決算、内部統制の構築、監査法人への対応、開示資料の作成といった新しい業務が一度に立ち上がります。
本記事では、上場準備で経理が実際にやるべき業務を整理したうえで、それらをN-3期から申請期までのどの段階で進めるのかをスケジュールの目安として示します。あわせて、一般企業の経理との違い、内部統制(J-SOX)で整える統制、月次決算の早期化・監査法人対応・開示といった要所を、根拠となる制度とともに解説します。
人手や専門スキルが足りないときに、内製・外部委託・システム化のどれで補うかという判断の軸にも触れます。自社の準備計画を立て、経理体制を整えるための材料としてご活用ください。
目次
一括ダウンロードする
IPO準備で経理がやるべきこと(上場準備における業務の全体像)
上場準備に入った経理が最初に押さえたいのは、「これから何をやるのか」という業務の全体像です。日常の記帳や決算に加えて、投資家保護のための適正な財務報告に耐える体制を整える仕事が加わります。主な業務は次のとおりです。特に負荷の高い内部統制・決算・監査・開示については、後続の章で詳しく解説します。
- 財務会計への移行:税務申告を主目的とした処理から、会社法・金融商品取引法に基づく適正な財務諸表の作成へ切り替えます。収益認識や税効果会計など、上場会社に求められる会計処理に対応します。
- 月次・四半期決算の早期化:月次決算を早期に締められるようにし、四半期ごとの決算開示に間に合う体制をつくります。
- 内部統制(J-SOX)の構築:財務報告の信頼性を確保する仕組みを整え、業務プロセスを文書化します。仕訳の承認や権限分掌といった統制を日常業務に組み込みます。
- 監査法人への対応:予備調査(一般にショートレビューと呼ばれます)を経て、直前2期間の財務諸表について会計監査を受けます。
- 開示資料の作成:新規上場申請のための有価証券報告書(通称Ⅰの部・Ⅱの部)や、上場後の定期開示・適時開示に向けた資料を準備します。
- 経理規程・会計方針の整備:経理規程や勘定科目体系、決算手続きを文書として整え、属人化を解消します。
これらの業務は、東京証券取引所の上場審査とも結びついています。たとえばグロース市場の上場審査では、実質的な審査基準の一つとして次の観点が挙げられており、経理が整える内部管理体制はこの評価に直接関わります。
コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が、企業の規模や成熟度等に応じて整備され、適切に機能していること。(企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性)
出典:上場審査基準概要(グロース市場)|日本取引所グループ
【時間軸】N-3期〜申請期のフェーズ別タスク対応表
上場準備は一般に、上場を申請する期(申請期=N期)のおよそ3年前から着手するとされます。進み具合は、この申請期を起点に、その手前の期をN-1期・N-2期・N-3期と1年ずつさかのぼって数えて表すのが実務上の一般的な呼び方です。これらは法令で定義された区分ではなく、準備の段階を共有するための慣行的な言い方ですが、どの段階で何に着手するかの見取り図として役立ちます。
特にN-2期・N-1期は、上場申請で監査法人の監査証明が必要になる直前2期間にあたり、経理の負荷が一段と高まる時期です。
| N-3期(準備着手) | N-2期(監査対応の開始) | N-1期(運用と評価) | 申請期(N期) | |
|---|---|---|---|---|
| 時期の目安 | 上場準備の初期 | 監査証明が必要な直前2期間の初年度 | 申請直前期 | 上場申請〜上場 |
| 経理の主な取り組み | 監査法人の予備調査(ショートレビュー)を受けて課題を洗い出し、経理規程・会計方針の整備や月次決算の仕組みづくりに着手します。 | 監査法人による会計監査が始まります。財務諸表の作成体制を固め、内部統制(J-SOX)の業務プロセス文書化に取り組み、月次決算の早期化を進めます。 | 整備した内部統制を実際に運用し、その有効性を評価します。開示体制を構築し、申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の準備を本格化させます。 | 上場を申請し、取引所や主幹事証券会社の審査に対応します。四半期ごとの決算開示と適時開示の体制を最終確認します。 |
※N-3期〜申請期は上場準備で一般的に使われる期の呼び方であり、法令上の定義ではありません。各期で行う作業は企業の状況により前後します。
上場準備企業の経理は一般企業と何が違うのか
上場準備で経理の仕事が増えるのは、会計の目的そのものが変わるためです。非上場の一般企業では税務申告を主な目的とした会計で足りますが、上場会社は投資家に向けて適正な財務情報を開示する責任を負います。主な違いを整理すると次のとおりです。自社の現状と見比べ、どこに手をつける必要があるかを確かめる手がかりにしてください。
| 会計の主な目的 | 適用する会計基準 | 決算の頻度とスピード | 内部統制 | 監査 | 開示 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 一般企業(非上場) | 税務申告を主目的とした税務会計が中心 | 税法基準に寄った処理も許容されやすい | 年次決算が中心で、締めまでに時間をかけられる | 任意・簡易な範囲にとどまることが多い | 法定監査の対象外のことが多い | 社外への会計情報の開示は限定的 |
| 上場準備企業 | 投資家保護のための適正な財務報告=財務会計が中心 | 会社法・金融商品取引法に基づく会計基準を厳格に適用する | 月次・四半期の決算を早期に締めて開示に備える | 財務報告に係る内部統制報告制度(J-SOX)への対応が必要 | 監査法人による会計監査を受ける(申請前の直前2期間が対象) | 有価証券報告書・半期報告書・四半期決算短信・適時開示に対応する |
※上記は上場準備で求められる対応の一般的な傾向です。適用される基準や開示の範囲は市場区分・企業の状況により異なります。
一括ダウンロードする
内部統制(J-SOX)の構築と経理が整える統制
上場準備でつまずきやすいのが内部統制(J-SOX)への対応です。J-SOXとは、財務報告の信頼性を確保するための社内の仕組みを評価して報告する制度で、金融商品取引法が根拠となっています。有価証券報告書を提出する会社のうち上場会社など一定の会社は、同法に基づき内部統制報告書を提出する義務があります。
内閣府令で定めるところにより評価した報告書(以下「内部統制報告書」という。)を有価証券報告書と併せて内閣総理大臣に提出しなければならない。
出典:金融商品取引法 第24条の4の4|e-Gov法令検索
内部統制報告書そのものの提出は上場会社に求められますが、その内容を監査法人が監査する内部統制監査については、新規に上場する会社に一定の特例が設けられる場合があります。自社の規模や市場区分で適用範囲が変わるため、どこまでの対応がいつから必要かは監査法人に確認することをおすすめします。
J-SOX文書化の3点セット(業務の流れ図・業務記述書・RCM)とは
内部統制を評価するには、業務のどこにどんなリスクがあり、それをどの統制で防いでいるのかを文書に残す必要があります。その代表的な方法が、業務の流れ図(フローチャート)・業務記述書・リスクと統制の対応(リスク・コントロール・マトリックス、通称RCM)の3つで、実務では「3点セット」と呼ばれます。
ただし、金融庁の実施基準では、これらはあくまで業務プロセスを整理・記録するための参考例と位置づけられており、必ずこの様式でなければならないものではありません。すでに社内にある資料を活用してよいとされています。
把握された業務プロセスの概要については、必要に応じ図や表を活用して整理・記録することが有用である。(注)図や表の例としては、参考2(業務の流れ図(例)、業務記述書(例))が挙げられる。
ただし、これは、必要に応じて作成するとした場合の参考例として掲載したものであり、また、企業において別途、作成しているものがあれば、それを利用し、必要に応じそれに補足を行っていくことで足り、必ずしもこの様式による必要はないことに留意する。
出典:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)|金融庁
経理が日常業務で整える統制の例
文書化と並行して、経理は日々の業務に統制を組み込みます。自社の体制を点検する際は、次の5つが整っているかが目安になります。
- 仕訳承認のフロー:仕訳を入力する担当者と承認する担当者を分ける。
- 権限分掌:担当者ごとに操作できる範囲を制限する。
- 操作ログの保全:誰がいつ仕訳を登録・変更したかを追えるようにする。
- 証憑の整理・保存:請求書や領収書などを整理して保存する。
- 月次締めの定着:月次での締め処理を定着させる。
これらを手作業や表計算ソフトだけで回すと、担当者による属人化やミス、変更履歴の追跡漏れが起きやすくなります。仕訳承認や権限管理、操作ログといった機能を備えた会計システムを使うと、統制を業務の流れの中で自然に担保しやすくなります。
月次決算の早期化・監査法人対応・開示資料の作成
ここからは、上場準備の経理で特に負荷が高い3つの要所を、もう一歩踏み込んで解説します。
月次決算の早期化
上場会社は、四半期ごとに決算の内容を早期に開示することが求められます。そのため、月次決算を翌月の早い段階(5営業日前後を一つの目安とする企業が多く見られます)で締められる体制づくりが欠かせません。
締め日を短縮するには、売上・仕入の計上基準を統一し、経費の締め切りや請求・支払の処理を前倒しし、銀行明細やクレジットカード明細の自動取込で入力作業を減らすといった積み重ねが効きます。日常の仕訳が滞りなく流れる仕組みができて初めて、四半期・年度の決算も安定します。
監査法人への対応
一般に、上場申請では申請期の直前2期間の財務諸表について、取引所の上場審査上、監査法人による監査証明(金融商品取引法に準ずる監査)を受けることが求められます。多くの企業は、その前段として監査法人の予備調査(一般にショートレビューと呼ばれます)を受け、会計処理や内部管理の課題を早い段階で把握します。
監査では、会計方針の妥当性や内部統制の整備・運用状況が確認されるため、経理は根拠資料を整え、監査法人からの質問に説明できる状態を日頃から保つことが求められます。監査法人との契約には時間を要するため、準備の初期から相談を始めるのが一般的です。
開示資料の作成
上場に向けては、新規上場申請のための有価証券報告書(通称Ⅰの部・Ⅱの部)をはじめとする申請書類を作成します。上場後は、金融商品取引法に基づく法定開示と、取引所の規則に基づく適時開示の両方に対応する必要があります。この2つの制度は、次のように併存するものと整理されています。
このような投資判断材料の提供の機能を果たす制度として、金融商品取引法に基づく法定開示制度(有価証券届出書、有価証券報告書、半期報告書など)と、金融商品取引所における適時開示制度が併存しています。
出典:適時開示制度の概要|日本取引所グループ
金融商品取引法に基づく定期開示は、年次の有価証券報告書と、事業年度開始から6か月経過後に提出する半期報告書が柱です。かつて提出が求められていた四半期報告書は2024年4月施行の改正で廃止され、第1・第3四半期の開示は取引所が要請する四半期決算短信に一本化されました。
したがって経理は、四半期ごとの決算短信と半期報告書を期限内に開示・提出できるよう、決算の早期化と開示資料の作成体制を整えておく必要があります。
IPO準備の経理でよくある落とし穴
上場準備の経理では、次のような点が進捗の遅れにつながりやすいと言われます。事前に見込んで計画に織り込んでおくと、直前になって慌てる事態を避けやすくなります。
- 月次決算の早期化が間に合わない:日常の仕訳や経費処理が整理されないまま四半期開示の時期を迎え、締めが遅れる。早い段階から締め日短縮に取り組むことが重要です。
- 人材・体制の不足:財務会計や開示の実務経験を持つ人材が社内に足りず、通常業務と上場準備業務が一部の担当者に集中する。採用・育成と外部の活用を早めに検討する必要があります。
- 内部統制の整備・運用の遅れ:文書化だけが先行し、実際の運用と評価が後手に回る。日常業務に統制を組み込み、運用の証跡を残す仕組みが欠かせません。
- 監査法人対応の着手の遅れ:監査法人の選定や予備調査を後回しにし、監査証明が必要な期間に間に合わなくなる。準備の初期から相談を始めることが求められます。
経理体制が足りないときの選択肢(内製・外部委託・システム化)
ここまで見てきたとおり、上場準備の経理は業務量とスキルの両面で負荷が高まります。自社の体制だけで抱えきれないときは、内製・外部委託・システム化の3つを組み合わせて補うのが現実的です。
求められるスキルと人材要件
上場準備の経理には、日々の記帳に加えて、財務会計に基づく決算、内部統制の整備・運用、監査法人や証券会社とのやり取り、開示資料の作成といった実務を担える人材が必要です。簿記の知識に加え、会社法・金融商品取引法に基づく会計基準や開示制度への理解、監査対応の経験が求められます。
こうした経験者は採用市場でも限られるため、社内育成と外部の専門家の活用を組み合わせて体制を固める企業が多く見られます。
内製・外部委託・システム化の判断の軸
どの業務を自社で担い、どこを外部やシステムに委ねるかは、業務の性質で切り分けると整理しやすくなります。会計方針の決定や監査法人との折衝など、自社の判断や継続的な関与が必要な業務は内製で担うのが基本です。
一方、記帳代行や決算支援といった専門性が高く一時的に負荷が集中する業務は、経理BPOや監査法人・コンサルティング会社など外部の専門家に委ねる選択肢があります。そして、仕訳承認や権限管理、操作ログ、月次決算の早期化のように、仕組みで支えられる領域は会計システムの導入で効率化できます。
外部委託は負荷の集中を和らげますが、上場後は自社で財務報告を回せる体制が前提になります。外部に任せきりにせず、社内にノウハウを残しながら活用することが大切です。
内部統制に対応した会計基盤という選択肢
システム化の観点では、上場準備で求められる仕訳承認・権限管理・操作ログ・月次決算の早期化に対応した会計基盤を選ぶことが、内部統制の構築と決算早期化の両方を支えます。中小企業向けの汎用的な会計ソフトにはこれらの内部統制機能を備えないものも多いため、上場準備・中堅以上を想定した製品かどうかを確認することが選定の分かれ目になります。
グループ会社を持つ場合は、連結決算に対応した仕組みもあわせて検討します。ここでは、内部統制への対応を軸に、上場準備で候補になりやすいサービスを紹介します。
| サービス名 | マネーフォワード クラウド会計Plus | マネーフォワード クラウド連結会計 | TKC FXクラウドシリーズ |
|---|---|---|---|
| 種別・位置づけ | 内部統制対応の会計システム(単体) | グループの連結決算システム(単体の記帳・仕訳は行わない) | 統合型会計情報システム(FX4/FX5) |
| 対象企業規模 | IPO準備・中堅〜上場企業 | IPO準備・中堅〜上場企業(グループ企業) | 中堅・上場準備企業(FX4)〜上場企業・グループ(FX5) |
| 内部統制への対応 | ●仕訳承認・権限管理・操作ログ・月次締めに対応 | △連結工程の提出状況・承認進捗・作業履歴を可視化(単体の仕訳承認等は対象外) | ●内部統制・牽制に対応(受託会社の内部統制に関する保証報告書〈保証業務実務指針3402〉を無償提供) |
| 月次決算の早期化 | ●月次締め機能で早期化を支援 | ●連結決算の早期化を支援 | ●月次巡回監査で月次決算を定着(FX5は連結決算の早期化を支援) |
| 連結決算への対応 | △単体会計のため連結はクラウド連結会計とのAPI連携で対応 | ◎連結仕訳・内部取引消去・連結キャッシュ・フロー計算書の作成に対応 | △連結会計システム(eCA-DRIVER)と連携し内部取引照合で連結を早期化(FX5) |
| 提供・導入形態 | クラウド(課題領域から段階的に導入可) | クラウド(各社の既存会計システム・Excelのままデータを収集) | クラウド(TKC会員事務所の月次巡回監査・監査法人連携が前提) |
| 料金 | 要見積もり(利用ID数に応じる) | 要見積もり(子会社利用数に応じる) | 要問い合わせ(会計事務所・監査法人経由) |
| 詳細情報 | オンライン相談を予約 | オンライン相談を予約 | サービス詳細を見る |
※各サービスの機能・提供形態は変更される場合があります。最新の情報は各社公式サイト・資料でご確認ください。
マネーフォワード クラウド会計Plus(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウド会計Plusは、IPO準備・中堅〜上場企業向けに内部統制機能を加えた会計システムです。中小企業向けの「マネーフォワード クラウド会計」で培った明細の自動取得・自動仕訳といった利便性を保っています。これに加えて、仕訳の申請・承認、詳細な権限設定、操作ログ(仕訳更新履歴)、月次締めといった内部統制に必要な機能を備えています。
請求・支払から財務会計、グループ経営管理まで同じシリーズで連携できるため、課題の強い領域から段階的に導入しやすい点も特徴です。料金は企業の状況に応じた個別見積りで、公式サイトでは導入社数2,000社以上と案内されています(時点の明記はありません)。
上場準備で内部統制に対応した会計システムの導入を検討するのは、どのような企業で、誰が主導するのか。提供元のマネーフォワードは、寄せられる相談の傾向を次のように説明しています。

最も多いのは、IPOや上場を目指していて内部統制をしっかり整えたい、J-SOX対応の必須要件に対応したいという中堅企業からのご相談です。導入の主導は経理の責任者が中心になることが多く、IPO準備など全社的な取り組みの文脈ではCFOが関与されるケースも少なくありません。
マネーフォワード クラウド連結会計(株式会社マネーフォワード)

グループ会社を持つ企業で連結決算が必要になる場合に検討したいのが、マネーフォワード クラウド連結会計です。これは単体の記帳・仕訳を行う会計ソフトではなく、グループ各社の個別財務諸表を集約し、連結仕訳・内部取引の消去・連結キャッシュ・フロー計算書の作成などを支援する連結決算システムです。
各社が既存の会計システムやExcelを使い続けたままデータを収集でき、提出状況や親会社側のレビュー進捗を可視化できます。IPO準備・中堅〜上場企業を主な対象とし、海外子会社を含むグループ向けに全画面英語対応や連結通貨の切り替えにも対応します。料金はミーティングでの個別相談となります。
TKC FXクラウドシリーズ(株式会社TKC)

株式会社TKCが提供するFXクラウドシリーズは、企業規模に応じて製品が分かれる統合型の会計情報システムです。上場準備の文脈では、中堅企業・上場準備企業向けの「FX4クラウド」が部門責任者への業績責任設定や内部統制対応を備え、上場企業・グループ企業向けの「FX5クラウド」が連結決算の早期化支援や大規模データへの対応を持ちます。
TKC全国会に所属する税理士・公認会計士の会計事務所による月次の巡回監査とセットで利用されることを前提に設計されている点が、市販の汎用会計ソフトと異なる特徴です。導入は会計事務所を介する仕組みのため、料金は契約条件に応じた要問い合わせとなります。
ここでは内部統制への対応を軸にサービスを取り上げましたが、企業規模やタイプから会計ソフト全般を広く見比べて選びたい場合は、以下の記事で選び方と料金を整理しています。
【2026年】クラウド会計ソフト比較15選|規模・タイプ別の選び方と料金を解説
クラウド会計ソフトの導入を検討するとき、「製品が多すぎて自社に合うものが分からない」「インボイス制度や電子帳簿保存法に対応しているか不安」「手入力やExcelでの記帳から早く脱却したい」といった悩みに突き当たる担当者は少なくありません。 選…
まとめ
上場準備に入ると、経理は税務申告中心の会計から、投資家に向けた適正な財務報告へと役割を広げます。財務会計への移行、月次・四半期決算の早期化、内部統制(J-SOX)の構築、監査法人への対応、開示資料の作成といった業務を、N-3期から申請期までの各段階に割り付けて計画的に進めることが重要です。
人手や専門スキルが足りないときは、内製・外部委託・システム化を業務の性質で切り分けて補います。特に、仕訳承認・権限管理・操作ログ・月次決算の早期化を仕組みで支える、内部統制に対応した会計基盤の導入は、体制づくりの土台になります。自社のフェーズと体制の過不足を照らし合わせ、早い段階から準備を進めていきましょう。
一括ダウンロードする
よくある質問(FAQ)
Q. IPO準備(上場準備)の経理とは何ですか?
A. IPO準備(上場準備)の経理とは、税務申告を中心とした会計から、投資家に向けた適正な財務報告へと役割を広げ、上場会社に求められる体制を整える経理業務を指します。具体的には、財務会計への移行、月次・四半期決算の早期化、内部統制(J-SOX)の構築、監査法人への対応、開示資料の作成、経理規程の整備などに取り組みます。
日常の記帳や決算に加えて、投資家保護のための適正な財務報告に耐える仕組みを作ることが中心になります。
Q. 上場準備企業の経理は、一般企業(非上場)の経理と何が違いますか?
A. 上場準備企業の経理は、税務申告を主目的とした税務会計から投資家保護のための財務会計へ軸足が移り、月次・四半期決算の早期化、内部統制(J-SOX)、監査法人による監査、開示対応が加わる点が一般企業と大きく異なります。
非上場の一般企業では年次中心の税務会計で足りることが多いのに対し、上場会社は会社法・金融商品取引法に基づく会計基準を厳格に適用し、投資家に向けて定期的に財務情報を開示する責任を負います。
自社の現状と見比べ、どの対応が不足しているかを確かめる手がかりにしてください。
Q. 上場準備でいうN-3期・N-2期・N-1期・申請期とは何を指しますか?
A. N-3期・N-2期・N-1期とは、上場を申請する期(申請期=N期)を起点に、その手前の期を1年ずつさかのぼって数えた呼び方です。これは法令で定義された区分ではなく、準備の段階を共有するための実務上の慣行的な呼び方です。特にN-2期・N-1期は、上場申請で監査法人の監査証明が必要になる直前2期間にあたり、経理の負荷が一段と高まる時期です。どの段階で何に着手するかの見取り図として役立ちます。
Q. IPO準備で監査法人はいつ探し始めればよいですか?
A. 監査法人は、上場申請前の直前2期間(N-2期・N-1期)の財務諸表について監査証明が必要になるため、その手前のN-3期など準備の初期から探し始めるのが一般的です。
多くの企業は本格的な監査に先立ち、監査法人の予備調査(一般にショートレビューと呼ばれます)を受けて、会計処理や内部管理の課題を早い段階で把握します。監査法人との契約には時間を要するため、早めに相談を始めておくと準備が進めやすくなります。
Q. IPO準備の内部統制(J-SOX)では、文書化の3点セットを必ず作成する必要がありますか?
A. 業務の流れ図・業務記述書・RCM(3点セット)は、必ずこの様式で作成しなければならないものではありません。金融庁の実施基準では、これらは業務プロセスを整理・記録するための参考例と位置づけられており、すでに社内にある資料を活用してよいとされています。
大切なのは様式をそろえること自体ではなく、業務のどこにどんなリスクがあり、それをどの統制で防いでいるのかを文書として説明できる状態を整えることです。
Q. IPO準備で会計ソフトはいつ入れ替えるべきですか?
A. 会計ソフトの見直しは、監査対応や内部統制の構築が本格化する前、目安としてN-2期までに済ませておくと負荷を分散しやすくなります。中小企業向けの汎用的な会計ソフトには、仕訳承認・権限管理・操作ログといった内部統制機能を備えないものも多く、準備の途中で入れ替えるとシステム移行と監査対応が重なってしまいます。
上場準備・中堅以上を想定した製品かどうかを早い段階で確認し、月次決算の早期化が必要になる前に移行の計画を立てておくことをおすすめします。
Q. 四半期報告書と四半期決算短信は何が違いますか?
A. 四半期報告書は金融商品取引法に基づく法定開示書類でしたが、2024年4月施行の改正で廃止され、現在は第1・第3四半期の開示が取引所の要請する四半期決算短信に一本化されています。
現行の金融商品取引法に基づく定期開示は、年次の有価証券報告書と、事業年度開始から6か月経過後に提出する半期報告書が柱です。上場準備の経理は、四半期ごとの決算短信と半期報告書を期限内に開示・提出できるよう、決算の早期化と開示資料の作成体制を整えておく必要があります。
IPO準備で使う会計システムの料金・資料を一括チェック
MCB FinTechカタログでは、上場準備の内部統制や決算早期化に対応した会計システムの最新資料を無料で一括請求できます。仕訳承認・権限管理・連結対応などを見比べる際にご活用ください。
一括ダウンロードする
MCB FinTechカタログに掲載しませんか?
MCB FinTechカタログでは、掲載企業様を募集しています。マネックスグループの金融実務ノウハウを活かした独自の評価軸と検索設計により、導入検討者が最適なサービスを効率的に発見できる法人向け比較プラットフォームです。掲載後は管理画面から料金表や導入事例を随時更新でき、常に最新の情報を訴求可能。まずは下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















