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M&Aとは?意味・手法・流れ・費用から相談先の選び方までわかりやすく解説

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M&Aアドバイザリー・FA比較表(2026年版)のプレビュー

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M&Aアドバイザリー・FA比較表(2026年版)

「M&A」という言葉を耳にする機会は増えましたが、いざ自社の事業承継や事業拡大の選択肢として考え始めると、意味・手法・進め方・費用・相談先のどれもが曖昧なまま、という方は少なくありません。合併と買収の総称だと聞いたことはあっても、株式を売るのか事業を売るのか、手数料はいくらで誰に払うのか、そもそも誰に相談すればよいのか。全体像がつかめないと、最初の一歩が踏み出せないものです。

本記事では、M&Aの意味と目的から、代表的な手法(スキーム)、取引の流れ、企業価値評価と費用の仕組み、そして相談先の種類と選び方までを基礎から整理します。

とくに、読者が迷いやすい「M&A仲介とFA(ファイナンシャル・アドバイザー)は立場がどう違うのか」「自分の利益を守って任せられる相手はどう選ぶのか」という点は、中小企業庁のガイドラインを引きながら掘り下げます。読み終えたときに、自社が次に相談すべき相手を具体的にイメージできる状態を目指します。

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M&Aとは?合併・買収の意味をわかりやすく

M&Aとは、「Mergers and Acquisitions」の略で、直訳すると「合併と買収」を意味します。会社や事業そのものを売買したり、複数の会社を一つにまとめたりして、経営権や事業を別の会社・人に引き継ぐ取引の総称です。後継者のいない中小企業が事業を存続させる手段として、また成長企業が新しい事業を取り込む手段として広く使われています。

M&Aには「狭義」と「広義」がある

ひとくちにM&Aといっても、指す範囲には広狭があります。狭い意味では、株式の取得や合併によって会社の経営権(支配権)そのものが移る取引を指します。広い意味では、経営権の移転までは伴わない資本提携や業務提携といった、企業同士の協力関係づくりまでを含めて呼ぶことがあります。

自社が検討しているのが「会社を手放す・引き継ぐ」話なのか、「他社と組む」話なのかによって、選ぶべき手法も相談先も変わります。まずは、どちらの意味でのM&Aを考えているのかを整理しておくと、以降の検討がスムーズです。

M&Aを行う目的(売り手・買い手の視点から)

ここからは、企業がなぜM&Aを選ぶのか、その動機と背景を売り手・買い手それぞれの視点から整理します。

売り手(譲渡側)にとって代表的な目的は、後継者不在を背景にした事業承継です。経営者の高齢化が進む一方で、親族や社内に後継者が見つからない企業は依然として多く、第三者へ会社を引き継ぐM&Aが有力な選択肢になっています。帝国データバンクの調査では、2024年の全国の後継者不在率は52.1%で、調査上は7年連続で前年を下回ったものの、なお半数超の企業で後継者が決まっていません。

出典・参考資料(1件)

このほか売り手側では、創業者が株式売却によって利益(創業者利益)を得る、あるいは一部事業を手放して得意分野へ経営資源を集中する、といった目的もあります。買い手(譲受側)がM&Aを選ぶ主な動機は、新規事業への参入や事業規模の拡大を、ゼロから立ち上げるよりも早く実現することです。

売り手と買い手では目的が異なるため、交渉では互いの狙いをどこで折り合わせるかが重要になります。実行後に生じる具体的な利点と注意点は、次章で整理します。

M&Aのメリット・デメリット(売り手・買い手の両視点)

M&Aの利点と注意点は、売り手と買い手で見え方が変わります。ここでは立場ごとに分けて整理します。

売り手(譲渡側)のメリット

最大のメリットは、後継者がいなくても事業と雇用を存続させられる点です。廃業すれば失われる取引先との関係や従業員の雇用を、買い手のもとで引き継げます。株式譲渡であれば、創業者は株式の対価を手にでき、個人保証から外れられる場合もあります。経営から退くか、一定期間残って引き継ぎを支援するかは、交渉で条件を決められます。

買い手(譲受側)のメリット

買い手は、新規事業や新しい市場に自前で参入するよりも短い時間で、人材・技術・顧客基盤・許認可などの経営資源をまとめて取得できます。すでに事業として回っている会社を引き継ぐため、ゼロから立ち上げる場合に比べて立ち上がりが早く、同業の取り込みであれば仕入れや販売の規模拡大による効率化も見込めます。

デメリット・注意点

一方で、買い手には想定していなかった簿外債務や係争などのリスクが引き継がれる可能性があります。これを事前に洗い出すのが後述のデューデリジェンス(買収前の調査)です。売り手・買い手の双方にとって、従業員や取引先への説明のタイミングを誤ると信頼を損ないかねないため、情報管理は慎重に行う必要があります。また、統合後に企業文化や業務プロセスがかみ合わず、想定した効果が出ないこともあります。

M&Aの代表的な手法(スキーム)

M&Aを実行する方法(スキーム)はいくつかあります。中小企業のM&Aで特に多いのが株式譲渡と事業譲渡で、そのほかに会社法が定める合併・会社分割・株式交換などがあります。

合併・会社分割・株式交換・株式移転は、いずれも会社法に定義が置かれた手法です。たとえば吸収合併と吸収分割は、会社法第2条で次のように定義されています。

二十七 吸収合併 会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいう。

二十九 吸収分割 株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後他の会社に承継させることをいう。

出典:会社法(平成十七年法律第八十六号)第2条|e-Gov法令検索

株式譲渡は会社法上の定義語ではなく、株主が保有する株式を売買で買い手に移す取引を指します。会社そのものは存続し、株主(所有者)が入れ替わる形です。以下では、中小企業のM&Aで中心となる株式譲渡と事業譲渡の違いを整理します。

株式譲渡と事業譲渡の違い

株式譲渡は、売り手企業の株式を買い手が取得して経営権を引き継ぐ方法です。会社という法人格はそのまま続くため、取引先や従業員との契約関係は原則として維持され、手続きは比較的シンプルです。対価は株式を売った株主(多くはオーナー経営者個人)に入ります。

一方、事業譲渡は、会社が営む事業の全部または一部を、資産や契約ごとに切り出して買い手へ譲る方法です。事業譲渡は「会社」が当事者となる行為で、会社法上、事業の全部または重要な一部を譲渡する場合には株主総会の特別決議による承認が必要とされています。対価は会社に入ります。

契約の引き継ぎ方にも違いがあります。事業譲渡で取引先との契約上の地位を買い手に移すには、民法上、相手方の承諾が必要です。

契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する。

出典:民法(明治二十九年法律第八十九号)第539条の2|e-Gov法令検索

このように事業譲渡では、引き継ぎたい取引先や従業員との契約を個別に結び直す必要があります。これに対し株式譲渡は、会社が存続して契約の当事者が変わらないため、原則として契約を結び直さずに済みます。

税金の扱いも異なります。株式譲渡では、株式を売った個人株主の譲渡益に対して、申告分離課税で所得税15%・住民税5%の合計20%が課されます(別途、復興特別所得税がかかります)。事業譲渡では、譲渡する会社側に法人税(譲渡益に対して)がかかるほか、設備やのれんといった課税資産の譲渡には消費税の課税関係が生じ、買い手が消費税を負担します。主な違いを表にまとめます。

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比較項目譲渡の対象対価の入り先契約の承継主な税金手続きの負担
株式譲渡会社の株式(経営権)株式を売った株主(個人など)原則そのまま継続(法人格は存続)株主の譲渡益に所得税15%+住民税5%(+復興特別所得税)比較的シンプル
事業譲渡事業(資産・負債・契約を個別に選択)事業を売った会社取引先の承諾を得て個別に結び直す会社の譲渡益に法人税/課税資産の譲渡に消費税許認可の取り直しや契約の巻き直しが必要で煩雑になりやすい

どの手法が適しているかは、事業の内容・財務状況・引き継ぎたい範囲によって変わります。具体的な税額の試算や手法の選択は、税理士やM&Aの専門家に相談して判断するのが確実です。

出典・参考資料(4件)

M&Aの流れ(準備からデューデリジェンス・クロージング・PMIまで)

ここからは、M&Aが実際にどう進むのかを3つのフェーズに分けて解説します。各段階で登場する専門用語も、そのつど補足します。

M&Aの流れを6ステップで示した図解。準備・相談先探し(ノンネームシート・NDA)、交渉・基本合意(意向表明書LOI・基本合意書MOU)、デューデリジェンス(買収前の調査DD)、最終契約(株式譲渡契約など)、クロージング(引き渡しと代金決済)、PMI(買収後の統合)の順に矢印でつながる。

準備・相談先探し(マッチング)

最初に、M&Aの目的や希望条件を整理し、仲介会社やFAなどの専門家に相談します。相手候補を探す段階では、まず会社名を伏せた概要(ノンネームシート)で関心のある相手を募り、具体的な検討に進む前に秘密保持契約(NDA、情報を外部に漏らさない約束)を結んで詳しい資料を開示します。買い手が前向きなら、買収の意向と条件の概要を示す意向表明書(LOI)が提出されます。

交渉・基本合意からデューデリジェンス・最終契約まで

条件の大枠がまとまると、価格やスケジュールなどの主要条件を確認する基本合意書(MOU)を締結します。続いて買い手が、対象企業の財務・法務・税務・事業などを詳しく調べるデューデリジェンス(買収前の調査、DD)を実施します。ここで簿外債務や契約上のリスクを洗い出し、その結果を踏まえて最終的な価格・条件を詰め、最終契約(株式譲渡契約など)を締結します。

クロージングとPMI(買収後の統合)

最終契約にもとづいて、株式や事業の引き渡しと代金の決済を行う手続きをクロージングと呼びます。ここでM&Aの取引自体は完了しますが、成果を生むのはその後です。

買収後に経営方針や業務プロセス、人事制度などを統合していく一連の取り組みをPMI(Post Merger Integration)といい、統合方針の策定から実行計画、運用の見直しまでを段階的に進めます。M&Aは「成約がゴール」ではなく、PMIを通じて当初の目的を実現して初めて成功といえます。

全体の期間の目安として、相手探しからクロージングまでは数ヶ月から1年以上かかることが多く、その後のPMIにはさらに時間を要します。スケジュールには余裕を見ておくと安心です。

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会社はいくらで売れる?企業価値評価(バリュエーション)の基本

「自社がいくらで売れるのか」は、売り手が最も気になる点の一つです。会社の値段を見積もる作業を企業価値評価(バリュエーション)と呼び、代表的なアプローチが3つあります。

  • コストアプローチ:会社の純資産(資産から負債を引いた価値)をもとに評価する方法。中小企業では、時価に引き直した純資産に数年分(目安として2〜5年分)の利益(営業権・のれん)を加えた「年買法」がよく使われます。
  • マーケットアプローチ:同業の上場企業や類似のM&A事例と比較して評価する方法。市場での相場観を反映できます。
  • インカムアプローチ:将来生み出すと見込まれる利益やキャッシュフローを現在価値に割り引いて評価する方法。成長性を反映しやすい一方、将来予測の前提に左右されます。

実際の取引価格は、これらの評価額を出発点に、買い手との交渉やシナジー(統合による相乗効果)の見込みによって上下します。あくまで目安であり、「必ずこの金額で売れる」という性質のものではない点に注意してください。次章で見るように、M&Aの成功報酬はこの譲渡価格を基準に計算されるため、評価の考え方を押さえておくと費用の見通しも立てやすくなります。

M&Aにかかる費用・手数料の仕組み(レーマン方式など)

M&Aで専門業者に支払う手数料には、いくつかの種類があります。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」は、代表的な手数料として着手金・月額報酬・中間金・成功報酬を挙げています。

  • 着手金:主に仲介契約・FA契約の締結時に支払う費用。
  • 月額報酬:一定額を毎月支払う費用(リテイナーフィーとも呼ばれます)。
  • 中間金:基本合意の締結時など、案件完了前の一定の時点に支払う費用。
  • 成功報酬:クロージング(案件完了)時に支払う費用。

これらのうち、着手金・月額報酬・中間金を請求せず、成功報酬のみを受け取る「完全成功報酬型」の仲介会社・FAも相当数あります。どの費用が発生するかは依頼先によって異なるため、契約前に体系を確認することが大切です。

成功報酬の計算に使われる「レーマン方式」

成功報酬の計算には、M&Aの専門業者で広く使われるレーマン方式という方法が一般的です。これは、基準となる価額(譲渡額など)を金額の階層ごとに区切り、各階層に異なる料率を掛けて、その合計を報酬額とする計算方法です。同ガイドラインは、一律の料率ではなく階層別に乗じる仕組みであると説明しています。

レーマン方式は、「基準となる価額」に応じて変動する各階層の「乗じる割合」を、各階層の「基準となる価額」に該当する各部分にそれぞれ乗じた金額を合算して、報酬を算定する手法であり、特に M&A 専門業者において広く用いられている。

出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」令和6年8月

同ガイドラインが示すレーマン方式の料率の一例は、次のとおりです。これはあくまで一例であり、各階層の価額や割合は仲介者・FAによって異なります。

基準となる価額(円)乗じる割合(%)
5億円以下の部分5
5億円超 10億円以下の部分4
10億円超 50億円以下の部分3
50億円超 100億円以下の部分2
100億円超の部分1

たとえば譲渡額が8億円の場合、5億円までの部分に5%(2,500万円)、残り3億円の部分に4%(1,200万円)を掛け、合計3,700万円が成功報酬の目安になります(この一例の料率による計算)。また、小規模な案件では十分な成功報酬を確保できないことがあるため、最低手数料を設けている仲介者・FAも多く見られます。料率も最低手数料も依頼先ごとに異なるため、見積もりで必ず確認してください。

小規模な案件では、料率で計算した額より最低手数料のほうが高くなり、譲渡額に対する負担割合が大きくなることがあります。費用を抑えたい段階では、まず無料で相談できる公的窓口(事業承継・引継ぎ支援センター)で全体像を整理するのも一つの方法です。

手数料を誰が負担するかも、相談先によって異なります。仲介会社は売り手・買い手の双方と契約するため双方から手数料を受け取り、FAは契約した一方(依頼者)だけから受け取ります。M&Aプラットフォーム(マッチングサイト)を使う場合は、仲介・FAの手数料とは別に、成約時手数料や月額・掲載などの利用料がかかることがあり、料金体系は各社で異なります。

出典・参考資料(1件)

M&Aの相談先の種類と選び方

M&Aは専門知識が必要なため、適切な相談先を選ぶことが成否を左右します。まず相談先の類型を押さえ、そのうえで「誰に相談すれば自社の利益を守れるか」を考えます。

M&Aの主な相談先(6類型)

M&Aの相談先は、大きく次の6つに分けられます。それぞれ得意分野や立場が異なります。

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相談先M&A仲介会社FA(ファイナンシャル・アドバイザー)金融機関(銀行・証券など)事業承継・引継ぎ支援センター士業事務所(税理士・公認会計士など)M&Aプラットフォーム(マッチングサイト)
特徴売り手・買い手の双方と契約し、双方の間に立って成約を支援売り手か買い手の一方と契約し、その依頼者の立場で支援取引関係や与信情報を活かした買い手紹介に強み国が全国に設置した公的な相談窓口。中立・無料で相談できる顧問先の財務・税務に精通。小規模案件の相談先になりやすいWeb上で売却案件・買収案件を検索・マッチング
向いているケース中小企業の事業承継で、買い手探しから成約まで任せたい自社の利益を優先して交渉してほしい既存の取引銀行に相談したいまず公的機関に無料で相談したい顧問税理士に最初の相談をしたい自分で幅広く相手候補を探したい

このうちプラットフォームは、登録された売却案件・買収案件をWeb上で探せるサービスで、自分で相手候補を広く見たい場合に向きます。公的な相談窓口である事業承継・引継ぎ支援センターは、中立の立場で無料相談に応じるため、最初の一歩として使いやすい選択肢です。

M&A仲介とFAの違いと選び方

相談先選びで最も迷いやすいのが、「M&A仲介」と「FA」の違いです。両者は似ているようで、依頼者との契約構造が根本的に異なります。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」は、仲介者とFAを次のように定義しています。

仲介者とは、譲り渡し側・譲り受け側の双方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関をいい(略)。

FA(フィナンシャル・アドバイザー)とは、譲り渡し側又は譲り受け側の一方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関をいい(略)。

出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」令和6年8月・用語集

仲介者は売り手と買い手の双方と契約し、両者の間に立ちます(俗に「両手」と呼ばれます)。FAは売り手か買い手のどちらか一方とだけ契約し、その依頼者の側に立って支援します(俗に「片手」と呼ばれます)。仲介は双方の条件をまとめて成約に導くのが得意で、買い手を幅広く探しやすい一方、FAは依頼者の利益を優先した交渉がしやすいという特徴があります。

M&A仲介とFAの契約構造の違いを示した図解。仲介(両手)は売り手・買い手の双方と契約して両者の間に立ち、中立・公平が求められる。FA(片手)は売り手か買い手の一方だけと契約し、その依頼者の側に立って交渉する。

ここで押さえたいのは、仲介者には公的なルールとして中立・公平が求められている点です。同ガイドラインは、仲介者が一方の利益だけを優先することはできず、双方に中立・公平な支援をしなければならないと定め、一方に偏る利益相反行為を禁止行為と位置づけています。

特に仲介者の場合は、譲り渡し側・譲り受け側のいずれか一方の利益のみを優先的に取り扱うことはできず、双方の依頼者に対する中立・公平な支援が求められる(略)。

出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」令和6年8月・第2章

したがって「仲介は売り手に不利」と一概に言えるわけではありません。ただ、売却価格を少しでも高くしたい、雇用条件を守りたいなど、自社の利益を前面に出して交渉したい場合は、依頼者の一方だけと契約するFAが向く場面もあります。どちらが適しているかは、案件の規模や重視する条件によって変わります。

相談先を選ぶ際の目安として、国が運営するM&A支援機関登録制度も参考になります。これは、中小企業が安心してM&Aに取り組めるよう令和3年8月に創設された制度で、ガイドラインの遵守を宣言した仲介・FA業者が登録を受けられます。登録は任意ですが、事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)では、登録された支援機関によるFA・仲介費用のみが補助の対象になります。

出典・参考資料(2件)

M&Aの相談先を選ぶなら

相談先には、さきほどの6類型で挙げた身近な窓口(公的機関・顧問税理士・取引銀行など)に加えて、「依頼者の一方の側に立つFA」や「特定の業界に特化したアドバイザー」という選択肢もあります。大手の総合ファームにはない特化・専任の強みを持つサービスを知っておくと、自社に合った相手を選びやすくなります。

ここでは、そうした立場や専門性に特徴のあるM&Aアドバイザリー・FAサービスを2社紹介します(自社の状況に合わないと感じたら読み飛ばして構いません)。

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サービス名M&A LeadConsensus Base
サービス形態売主専属(セルサイド)
M&Aアドバイザリー
※買主から報酬を受けない片手型
Web3・ブロックチェーン特化
M&Aアドバイザリー
得意領域事業承継から上場企業の
子会社譲渡まで
幅広い譲渡に対応
GameFi・NFT・DeFi・
ウォレット等Web3領域の
技術デューデリジェンス
支援範囲スキーム検討・バリュエーション・
買い手探索・条件交渉・
最終契約まで一気通貫
候補先探索・LOI/MOU・
DDマネジメント・取引スキーム設計・
契約交渉・PMIまで一気通貫
着手金・中間金・月額報酬0円要お問い合わせ
成功報酬レーマン方式
(譲渡対価の5億円以下5%〜
100億円超1%)
最低手数料2,000万円
要お問い合わせ
(レーマン方式の採用有無は非公開)
無料相談あり(全国対応)あり(構想段階から相談可)
詳細情報公式資料を見る公式資料を見る

※2026年10月時点の各社公式情報・MCB FinTechカタログ掲載情報による

M&A Lead(M&A Lead株式会社)

M&A Lead 公式サイト

売り手(譲渡企業)だけに寄り添うセルサイド専門のM&Aアドバイザリーです。自らをM&A仲介会社ではなく売主専用アドバイザーと位置づけ、手数料を売り手(片側)からのみ受け取り、買い手からは受け取りません。買い手から報酬を得ない立場をとることで、譲渡価格や従業員の雇用条件など、売り手側の条件の実現に向けて交渉するという設計です。

費用は完全成功報酬制で、着手金・中間金・月額報酬は0円、報酬は譲渡完了時の成功報酬のみです。成功報酬は譲渡対価を基準としたレーマン方式(5億円以下の部分5%〜100億円超の部分1%)で、最低手数料は2,000万円とされています。

自社のアドバイザーに加え、他社のアドバイザーや買い手側FA、地方銀行のM&Aチームと連携して買い手候補を探す点も特徴です。後継者不在による事業承継から上場企業の子会社譲渡まで、幅広い譲渡の相談に対応しています。

Web3業界特化M&Aアドバイザリー|Consensus Base(コンセンサス・ベイス株式会社)

Web3業界特化M&Aアドバイザリー Consensus Base 公式サイト

コンセンサス・ベイス株式会社が提供する、Web3・ブロックチェーン業界に特化したM&Aアドバイザリーです。同社がブロックチェーン開発・技術コンサルティング事業で培った技術理解を、M&Aの技術デューデリジェンス(技術DD)や事業評価に活かす点が最大の特徴です。GameFiやNFTプラットフォーム、DeFi、ウォレット開発など、専門知識が必要な領域の案件に対応します。

支援範囲は、買収・売却・提携候補の探索(ロングリスト作成)から、意向表明書・基本合意書の締結支援、デューデリジェンスのマネジメント、契約交渉、PMI(統合後の実務)まで一気通貫です。スマートコントラクト監査の観点を踏まえたアセスメントや、トークンの取り扱いに関する法務的な整理といった、Web3特有の論点にも対応します。

大手の総合ファームや一般的な仲介会社では扱いにくい技術領域に相談先を探している企業に向く選択肢です。料金は案件ごとの個別見積もりで、無料相談を受け付けています。

ここで取り上げたのは、売主専任や業界特化という立場・専門性に強みを持つ2社です。仲介型・FA・Big4系まで含めて、案件の規模別にM&Aアドバイザリー会社を比べて相談先を選びたい場合は、次の記事で各社の特徴と選び方を整理しています。

まとめ

M&Aは、合併と買収によって会社や事業を引き継ぐ取引の総称です。中小企業では株式譲渡と事業譲渡が中心で、両者は対価の入り先・契約の承継・税金の扱いが異なります。取引は準備・相談先探しから、デューデリジェンス、最終契約、クロージング、そしてPMIへと進み、成功報酬はレーマン方式で譲渡額を基準に計算されるのが一般的です。

相談先は仲介・FA・金融機関・公的機関・士業・プラットフォームに分かれ、とくに「双方と契約する仲介」と「一方の側に立つFA」の違いを理解しておくと、自社の利益を守れる相手を選びやすくなります。買い手として検討している場合も、買収側に立つFAや仲介会社が相談先になります。まずは公的な窓口や、立場・専門性に特徴のあるアドバイザーに相談し、自社に合った進め方を見つけることから始めましょう。

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よくある質問(FAQ)

Q. M&Aとは何ですか?

A. M&Aとは「Mergers and Acquisitions(合併と買収)」の略で、会社や事業を売買・統合し、経営権や事業を別の会社・人に引き継ぐ取引の総称です。狭い意味では株式の取得や合併で経営権そのものが移る取引を指し、広い意味では資本提携・業務提携といった企業同士の協力関係づくりまでを含みます。

Q. M&Aと事業承継はどう違うのですか?

A. 事業承継は会社の経営を後継者に引き継ぐこと全般を指し、M&Aはそれを実現する手段の一つです。事業承継には親族への承継や社内の役員・従業員への承継もあり、親族や社内に後継者が見つからない場合に、第三者へ会社を引き継ぐM&Aが有力な選択肢になります。

帝国データバンクの調査では2024年の全国の後継者不在率は52.1%で、なお半数超の企業で後継者が決まっておらず、事業承継の出口としてM&Aが選ばれる場面が増えています。

Q. M&Aを進めるのに必要な手続きと全体の流れは?

A. M&Aは、準備・相談先探し → 交渉・基本合意 → デューデリジェンス → 最終契約 → クロージング → PMI(統合)という流れで進みます。まず目的と希望条件を整理して専門家に相談し、会社名を伏せた概要(ノンネームシート)で相手を探し、秘密保持契約(NDA)を結んで詳しい資料を開示します。

買い手の意向表明書(LOI)、主要条件を確認する基本合意書(MOU)を経て、買い手が財務・法務などを調べるデューデリジェンスを実施し、その結果を踏まえて最終契約を締結します。株式や事業の引き渡しと代金決済(クロージング)の後、経営や業務を統合するPMIへと進みます。

Q. M&Aにはどのくらいの期間がかかりますか?

A. M&Aにかかる期間は案件によって幅があり、数ヶ月から1年以上に及ぶこともあります。相手探し(マッチング)の進み具合、デューデリジェンス(買収前の調査)の範囲、交渉や各種契約の締結状況によって前後します。

また、クロージングで取引が完了した後も、経営や業務を統合するPMIには相応の時間がかかります。M&Aは成約がゴールではなく、PMIを通じて目的を実現して初めて成功といえるため、統合後の期間も含めてスケジュールを考えておくことが大切です。

Q. 中小企業や赤字・債務超過の会社でもM&Aはできますか?

A. 会社の規模が小さくても、赤字や債務超過であっても、M&Aができないわけではありません。買い手は財務内容だけでなく、技術・人材・顧客基盤・許認可といった事業の強みを評価して引き継ぐ判断をするため、黒字でない企業でも買い手が見つかる例があります。

実際に国は、後継者不在の中小企業がM&Aで事業を引き継げるよう、中立・無料で相談できる事業承継・引継ぎ支援センターを全国に設けています。まずは自社の強みを整理し、中立的な窓口や専門家に相談してみることが第一歩です。

Q. 自社がいくらで売れるか、事前に目安を知ることはできますか?

A. 自社の売却価格の目安は、企業価値評価(バリュエーション)によって事前に試算できます。代表的な方法には、純資産をもとに評価するコストアプローチ、同業他社や類似のM&A事例と比較するマーケットアプローチ、将来の利益やキャッシュフローを現在価値に割り引くインカムアプローチがあります。

ただし実際の取引価格は、買い手との交渉やシナジー(統合による相乗効果)の見込みで上下するため、評価額はあくまで出発点です。正確な試算は、税理士やM&Aの専門家に相談して行うのが確実です。

Q. 株式を譲渡した後、経営者の個人保証はどうなりますか?

A. オーナー経営者が会社の借入について負っている個人保証(経営者保証)は、株式譲渡に伴って外れる場合があります。ただし自動的に解除されるわけではなく、金融機関との交渉や、買い手・新経営者への保証の切り替えが必要になるのが一般的です。個人保証の扱いは経営者個人のリスクに直結するため、譲渡の条件交渉のなかで、保証を外す段取りを金融機関も含めて確認しておくことが重要です。

Q. M&Aの相談は最初にどこへすればよいですか?

A. 最初の相談先としては、中立の立場で無料相談に応じる公的機関「事業承継・引継ぎ支援センター」や、自社の財務に詳しい顧問税理士が使いやすい選択肢です。本格的に相手探しから成約までを任せる段階になれば、M&A仲介会社・FA・金融機関・M&Aプラットフォームといった相談先があり、それぞれ得意分野や立場が異なります。

いきなり1社に絞らず、まず中立的な窓口で全体像と自社の状況を整理してから、目的に合う相手を選ぶとよいでしょう。

Q. M&A仲介とFAは何が違いますか?

A. M&A仲介とFAの違いは、依頼者との契約構造にあります。仲介は売り手・買い手の双方と契約して両者の間に立ち(両手)、FAは売り手か買い手の一方とだけ契約してその依頼者の側に立ちます(片手)。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」は、仲介者には双方への中立・公平な支援を求め、一方に偏る利益相反行為を禁止行為と位置づけています。

双方の条件をまとめて成約に導きたい・買い手を幅広く探したい場合は仲介、売却価格や雇用条件など自社の利益を前面に出して交渉したい場合はFAが向く場面があります。

Q. M&A仲介会社やFAはどう選べばよいですか?

A. M&A仲介会社・FAを選ぶときは、手数料体系・得意な業種や規模・そして自社の利益をどこまで優先してくれる立場かを確認することが大切です。着手金や中間金の有無(完全成功報酬型かどうか)、成功報酬の料率や最低手数料は依頼先ごとに異なるため、契約前に必ず見積もりで確かめます。

選定の目安として、国の「M&A支援機関登録制度」に登録し、ガイドライン遵守を宣言している業者かどうかも参考になります。登録された支援機関によるFA・仲介費用は、事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)の補助対象にもなります。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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