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内部不正対策とは?打ち手一覧とIPA基本5原則に沿った進め方

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情報システムの管理者や総務・管理部門で情報セキュリティを任された担当者にとって、外部からのサイバー攻撃への備えと並んで悩ましいのが「中の人」による情報の持ち出しです。正規のアクセス権を持つ従業員や退職者、委託先が引き起こす内部不正は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「情報セキュリティ10大脅威」に毎年のように選ばれ続けています。

2023年には委託先の元派遣社員による大規模な顧客情報の持ち出しが明らかになり、内部不正が決して一部の企業だけの問題ではないことが改めて示されました。

とはいえ、いざ「内部不正対策をまとめておくように」と求められても、何から手を付ければよいか迷う場面は少なくありません。アクセス権の管理、操作ログの監視、USBやクラウドへの持ち出し制限、就業規則や誓約書、社員教育など、打ち手は技術面と人的・ルール面の両方にまたがります。

本記事では、内部不正対策としてやるべき打ち手を人的・技術的・物理的に整理した一覧から示します。あわせて、IPA「組織における内部不正防止ガイドライン」の基本5原則との対応、何から着手すべきかの優先順位、実際の事例と法的なリスク、対策を支えるサービス・ツールまでを順に解説します。自社の現状と照らし合わせて不足を洗い出し、社内での説明資料づくりにも使える形でまとめました。

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内部不正とは?まず押さえる定義と現状

はじめに、内部不正が何を指すのか、そしていま企業にとってどれほど身近な脅威なのかを手短に確認します。打ち手の全体像は次章から整理します。

内部不正とは何を指すか(定義・対象範囲)

内部不正は、法律に違反する行為だけを指すわけではありません。IPAの「組織における内部不正防止ガイドライン」第5版は、内部不正の範囲を次のように定めています。

本ガイドラインでは、違法行為だけでなく、情報セキュリティに関する内部規程違反等の違法とまではいえない不正行為も内部不正に含めます。内部不正の行為としては、重要情報や情報システム等の情報資産の窃取、持ち出し、漏えい、消去・破壊等を対象とします。また、内部者が退職後に在職中に得ていた情報を漏えいする行為等についても、内部不正として取り扱います。

出典:組織における内部不正防止ガイドライン 第5版(2022年4月改訂)|IPA

ここでいう「内部者」には、経営者・役員、契約社員を含む従業員、派遣社員などが含まれ、さらにそれらであった者(退職者)も対象です。情報システムやデータにアクセスする権限を持つ人、あるいは物理的にアクセスしうる職務に就いている人が広く該当します。退職者や委託先による持ち出しまで視野に入れる必要がある点は、対策を考えるうえで重要です。

出典・参考資料(1件)

内部不正をめぐる現状(IPA10大脅威ランキング)

内部不正は、一過性の話題ではなく継続的な脅威です。IPAが毎年公表する「情報セキュリティ10大脅威」の組織向けランキングでは、最新の2026年版で「内部不正による情報漏えい等」が7位に挙げられています。前年の2025年版では4位であり、順位には変動があるものの、組織向けのランキングでほぼ毎年のようにトップ10に入り続けている脅威です。

外部からの攻撃に比べて社内の問題は後回しにされがちですが、正規の権限を持つ人の行為は防ぎにくく、被害が大きくなりやすいという特徴があります。だからこそ、継続的に対策を見直す姿勢が欠かせません。

出典・参考資料(1件)

内部不正対策の打ち手一覧(人的・技術的・物理的)

ここからは、内部不正対策として具体的に何をやればよいかを整理します。対策は大きく、ルールや運用で人に働きかける「人的・ルール対策」、システムで制御する「技術的対策」、物理的な出入りや媒体を管理する「物理的対策」の3つに分けられます。まず全体像を一覧で示します。

分類主な打ち手何をするものか
人的・ルール対策就業規則・情報取扱規程の整備やってはいけない行為と罰則を明文化し、守るべきルールを示す
秘密保持誓約書の取得入社時・退職時に機密情報の取り扱いについて同意を得て、抑止と責任の所在を明確にする
退職者アカウントの停止・権限棚卸し退職・異動に合わせてアクセス権を速やかに削除・見直し、不要な権限を残さない
職務分掌・内部通報制度一人に権限を集中させず相互牽制を効かせ、不正の申告ルートを用意する
社員教育・啓発内部不正のリスクとルールを繰り返し周知し、「見られている」意識を醸成する
公正な評価・相談しやすい職場環境づくり不満や孤立が不正の動機にならないよう、評価の公正さや相談窓口を整える
技術的対策アクセス権・特権ID管理業務に必要な範囲だけに権限を絞り、管理者権限の利用を申請・承認・記録する
操作ログの記録・監視誰がいつ何を操作したかを記録し、定期的に確認して異常を早期に見つける
USB・クラウドへの持ち出し制御(DLP)外部媒体やクラウドへのデータ持ち出しを制限・検知し、不要な持ち出しを防ぐ
データの暗号化・データレス化持ち出されても読み取れないように暗号化し、端末にデータを残さない仕組みを整える
物理的対策入退室管理サーバー室や執務エリアへの入退室を記録・制限し、物理的なアクセスを管理する
記録媒体・端末の持ち出し管理PC・USBメモリ等の持ち出しや私物端末の業務利用をルール化し、台帳で管理する

内部不正対策というと操作ログやデバイス制御といった技術面に目が向きがちですが、内部不正は「人」が起こす問題でもあります。技術的対策だけでは不十分で、ルールと運用、教育を組み合わせて初めて実効性が高まります。以下、3つの分類ごとに要点を補足します。

人的・ルール対策

人的・ルール対策は、技術で塞ぎきれない「動機」や「正当化」の余地を減らす役割を担います。まず、就業規則や情報取扱規程で「何をしてはいけないか」と違反時の扱いを明文化し、入社時・退職時には秘密保持誓約書を取り交わします。ルールが曖昧だと「これくらいは問題ない」という自己正当化を許してしまいます。

退職者や異動者のアカウントを速やかに停止し、保有する権限を棚卸しすることも欠かせません。退職直前・直後の持ち出しは典型的な手口であり、アカウントの放置は格好の抜け穴になります。さらに、一人に権限を集中させない職務分掌、不正を申告できる内部通報制度、そして繰り返しの社員教育が、組織全体の「見られている」という意識を育てます。

技術的対策

技術的対策には、「権限を絞る」「記録して監視する」「持ち出しを防ぐ・読み取れなくする」という方向性があります。まず、業務に必要な範囲を超えたアクセス権を与えないことが基本となります。特にシステム管理者が持つ特権IDは強力な権限を伴うため、利用のたびに申請・承認を求め、操作を記録する仕組みが有効です。

次に、PCの操作ログやファイルの持ち出し履歴を記録し、定期的に確認します。ログは取得するだけでなく、異常な挙動がないかを継続的に見て初めて抑止力として働きます。加えて、USBメモリやクラウドストレージへのデータ持ち出しを制御・検知するDLP(Data Loss Prevention)や、万一持ち出されても内容を読み取れないようにする暗号化・データレス化も、技術面の重要な打ち手です。

操作ログで具体的に何がどこまで記録でき、USBへの持ち出しやWeb閲覧まで追えるのか、どう確認すればよいのかをもう一歩知りたい場合は、以下の記事で取得できる情報と確認方法を整理しています。

物理的対策

物理的対策は、情報資産そのものや、それを扱う場所・媒体への物理的なアクセスを管理する打ち手です。サーバー室や機密情報を扱う執務エリアへの入退室を記録・制限し、権限のない人が近づけないようにします。

あわせて、PCや記録媒体の持ち出しルールを定め、私物のUSBメモリやスマートフォンの業務利用を制限します。台帳による資産管理と組み合わせることで、どの端末が誰に貸与されているかを把握でき、紛失・盗難時の対応も迅速になります。

IPA「内部不正防止ガイドライン」基本5原則と具体策の対応表

前章で挙げた打ち手が「漏れなく整理されているか」を確かめるうえで役立つのが、IPAの基本5原則です。IPA「組織における内部不正防止ガイドライン」第5版は、犯罪学の「状況的犯罪予防」の考え方を内部不正防止に応用し、次の5つを基本原則としています。

本ガイドラインは、状況的犯罪予防の考え方を内部不正防止に応用し、以下の5つを基本原則としています。

・犯行を難しくする(やりにくくする):対策を強化することで犯罪行為を難しくする

・捕まるリスクを高める(やると見つかる):管理や監視を強化することで捕まるリスクを高める

・犯行の見返りを減らす(割に合わない):標的を隠したり、排除したり、利益を得にくくすることで犯行を防ぐ

・犯行の誘因を減らす(その気にさせない):犯罪を行う気持ちにさせないことで犯行を抑止する

・犯罪の弁明をさせない(言い訳させない):犯行者による自らの行為の正当化理由を排除する

出典:組織における内部不正防止ガイドライン 第5版(2022年4月改訂)|IPA

この5原則を軸に、前章の打ち手がどの原則に対応するかを整理すると、次のようになります。自社の対策がどの原則に偏り、どの原則が手薄かを点検する物差しとして使えます。

基本原則ねらい対応する主な打ち手
犯行を難しくする行為のハードルを上げるアクセス権・特権ID管理、USB・クラウドへの持ち出し制御、入退室管理
捕まるリスクを高める見つかる環境をつくる操作ログの記録・監視、定期的なログ確認
犯行の見返りを減らす利益を得にくくするデータの暗号化・データレス化
犯行の誘因を減らすその気にさせない社員教育・啓発、公正な評価や相談しやすい職場環境の整備
犯罪の弁明をさせない言い訳の余地をなくす就業規則・情報取扱規程の整備、秘密保持誓約書、ルールの周知

IPAガイドラインは本編でも、基本方針や資産管理、技術・運用管理、職場環境、事後対策など10の観点から33項目の対策を点検できるチェックシートを用意しています。基本5原則で方向性をつかんだうえで、より細かな項目別の点検にはこのチェックシートを活用すると網羅性を高められます。

出典・参考資料(1件)

内部不正対策は何から着手すべきか(進め方・優先順位)

打ち手の全体像をつかんでも、すべてを一度に実施するのは現実的ではありません。ここでは、なぜ内部不正が起きるのかを踏まえたうえで、着手の優先順位と、自社の現状を点検する観点を示します。

なぜ内部不正は起きるのか(不正のトライアングル)

不正がなぜ起きるかを説明する枠組みとして、米国の犯罪学者ドナルド・R・クレッシー(Donald R. Cressey)が横領犯への調査から見出した3要素がよく知られています。のちに「不正のトライアングル」として体系化されたこの考え方では、不正は「動機(プレッシャー)」「機会」「正当化」の3つがそろったときに起きやすいとされます。

待遇や評価への不満といった「動機」、権限やルールの緩さがつくる「機会」、「これくらいは許される」という「正当化」のどれかを断てば、不正は起こりにくくなります。このうち企業が最も手を打ちやすいのが「機会」です。

アクセス権を絞り、ログで監視し、持ち出しを制御するという技術的対策は、まさに機会を減らす打ち手にあたります。優先順位を考えるときは、この「機会を断つ」対策から着手すると効果を実感しやすくなります。

ここでは着手の優先順位につなげるため、企業が手を打ちやすい「機会」に絞って触れました。不正に走る「動機」と、それを許す組織側の穴まで含めて原因を掘り下げておくと、自社のどこに対策を寄せるべきかがより具体的に見えてきます。

着手の優先順位ステップ

限られた体制で進めるなら、次の順序で取り組むと無理がありません。実際の事例でも、権限の過剰付与やログの未確認といった「機会」の放置が被害につながっています。

内部不正対策の着手ステップを示すフロー図。STEP1 情報資産の特定、STEP2 アクセス権の整理、STEP3 ログ取得・監視、STEP4 持ち出し制御、STEP5 ルール整備・教育の順に矢印でつながり、上流の守る対象の明確化から下流へ順に固める流れを表す。
  1. 守るべき情報資産の特定と分類:どこに何の重要情報があるかを洗い出し、優先して守る対象を決めます
  2. アクセス権の整理:誰がどの情報にアクセスできるかを棚卸しし、不要な権限・特権IDを削ります
  3. 操作ログの取得と監視:重要情報へのアクセスや持ち出しを記録し、定期的に確認する運用を定めます
  4. 持ち出し制御の導入:USB・クラウドなど外部へのデータ持ち出しを制限・検知します
  5. ルール整備と教育:就業規則・誓約書を整え、社員へ繰り返し周知して定着させます

情報資産の特定から始めるのは、守る対象が定まらないままツールだけ導入しても、どこを監視すべきかが決まらないためです。上流から順に固めることで、投資の無駄を避けられます。

自社の現状と突き合わせるチェックの観点

着手順を決める前に、自社がいまどこまでできているかを点検すると、不足が見えてきます。次の観点を自社に当てはめてみてください。社内や経営層への報告資料としても使えます。

  • アクセス権:誰がどの情報にアクセスできるかを把握できているか。退職者・異動者のアカウントは速やかに停止されているか
  • ログ:重要情報へのアクセスや持ち出しの操作ログを取得できているか。取得したログを定期的に確認しているか
  • 持ち出し制御:USBメモリやクラウドへのデータ持ち出しを制限・検知できているか
  • ルール・教育:情報取扱規程や誓約書が整備され、社員に周知・教育されているか

内部不正の事例と、そこから学べる対策

実際の事例は、自社のリスクを具体的にイメージし、どの対策が欠けると事故につながるかを学ぶ材料になります。ここでは公表資料にもとづく事例と、典型的なパターンを紹介します。

委託先の元派遣社員による大規模な情報持ち出し

NTT西日本グループが2024年2月に公表した資料によると、グループ会社に派遣されていた運用保守業務の元派遣社員が、システム管理者アカウントを悪用して業務端末等からサーバにアクセスしていました。この元派遣社員は、複数のクライアントの顧客情報(顧客数928万件・クライアント数69)を約10年にわたり不正に持ち出し、第三者に流出させていたとされています。

この事案は、強力な権限を持つ運用保守担当者への管理が行き届かず、長期間にわたり持ち出しが検知されなかった点に問題がありました。特権IDの利用記録と定期的なログ確認、業務端末からの持ち出し制御が働いていれば、早期に兆候をつかめた可能性があります。委託先・派遣社員も内部不正の主体になりうることを示す事例です。

出典・参考資料(1件)

典型的な内部不正のパターン

IPAのガイドラインや各種公表事例からは、次のような手口が繰り返し見られます。いずれも、権限管理・ログ監視・持ち出し制御・退職者管理のいずれかが欠けたときに起きやすいものです。

  • 退職直前・直後の持ち出し:転職や独立を控えた従業員が、私物USBメモリやクラウドに顧客情報・技術情報を持ち出す
  • 特権IDの悪用:システム管理者など強い権限を持つ人が、業務の範囲を超えてデータへアクセス・持ち出す
  • 私物端末・クラウドの無断利用(シャドーIT):会社が把握していないクラウドサービスや私物端末に業務データを保存し、管理の目が届かなくなる

自社で実在の事件を社内資料に引用する際は、公的機関や企業の公表資料・報道など確かな情報源を確認したうえで用いると、説明に説得力が増します。

内部不正を放置するリスクは、社会的な信用の失墜や取引への影響にとどまりません。法的な責任も伴います。対策の必要性を社内で説明する際の材料として、主な法的側面を押さえておきましょう。

個人情報の漏えい時に企業が負う報告・通知義務

内部不正によって個人データが漏えいした場合、漏えいを起こした企業の側には、個人情報保護法にもとづく報告・通知の義務が生じます。2022年4月に全面施行された改正で、従来の努力義務から法的義務へと強化されました。

個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失、毀損その他の個人データの安全の確保に係る事態であって個人の権利利益を害するおそれが大きいものとして個人情報保護委員会規則で定めるものが生じたときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該事態が生じた旨を個人情報保護委員会に報告しなければならない。

出典:個人情報の保護に関する法律 第26条第1項|e-Gov法令検索

同条第2項では、本人への通知も義務付けられています。報告の対象となる事態の具体的な類型や報告期限は個人情報保護委員会規則で定められているため、実際の対応では委員会のガイドラインもあわせて確認が必要です。

出典・参考資料(1件)

不正を行った本人への罰則

報告義務が企業側に課されるのに対し、不正を行った本人には刑事罰が科されうる点も押さえておく必要があります。個人情報保護法は、個人情報取扱事業者の従業者やその役員、またはこれらであった者(退職者を含む)が、業務上扱った個人情報データベース等を不正な利益を図る目的で提供・盗用した場合の罰則を定めています。

個人情報取扱事業者(略)若しくはその従業者又はこれらであった者が、その業務に関して取り扱った個人情報データベース等(略)を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

出典:個人情報の保護に関する法律 第179条|e-Gov法令検索

「従業者又はこれらであった者」が対象に含まれるため、退職者による持ち出しにも及びます。あわせて、これらの行為により企業が被った損害について、本人に損害賠償を請求できる場合もあります。具体的な請求の可否や範囲は個別の事情によるため、実際の対応では法務部門や専門家への相談が必要です。

営業秘密の持ち出しと不正競争防止法

顧客情報だけでなく、技術情報やノウハウといった営業秘密の持ち出しには、不正競争防止法が関わります。同法第2条第6項は、営業秘密を次のように定義しています。

この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。

出典:不正競争防止法 第2条第6項|e-Gov法令検索

この定義から、情報が営業秘密として法的に保護されるには、秘密として管理されていること(秘密管理性)、事業活動に有用であること(有用性)、公然と知られていないこと(非公知性)の3つの要素を満たす必要があると整理されています。これらは経済産業省の「営業秘密管理指針」などで示される考え方です。

裏を返せば、アクセス制限や「マル秘」表示といった秘密管理の体制が整っていなければ、持ち出されても営業秘密としての保護を受けにくくなります。社内の情報管理体制の整備は、法的保護を受けるうえでも重要です。

出典・参考資料(1件)

内部不正対策に使えるサービス・ツール

ここまで整理した打ち手のうち、技術的対策の多くはサービス・ツールで実現できます。自社の現状チェックで見えた不足を埋める「次の一歩」として、対策カテゴリごとに代表的なサービスの種類を押さえておきましょう。

  • 操作ログ管理・デバイス制御:PCの操作ログを記録・可視化し、USBなど外部デバイスの利用を制御する。内部不正対策の中心的な打ち手
  • ログ解析による痕跡診断:退職者のPCや支給端末を解析し、情報の持ち出しや不正の痕跡がないかを調べる
  • 社内通信の全量記録:ネットワークを流れる通信を記録し、不審な通信やデータの外部流出を検知・事後調査する
  • データを残さない端末(データレス化):PC本体にデータを残さず、紛失・盗難や持ち出しによる漏えいを防ぐ

まず、内部不正対策の中心となる操作ログ管理・デバイス制御の代表的なサービスを、対象規模や料金体系、提供形態の違いで比較します。

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サービス名Eye"247" Work Smart CloudSKYSEA Client ViewLANSCOPE エンドポイントマネージャー オンプレミス版MaLionCloud
提供形態クラウドオンプレミス版/クラウド版オンプレミスクラウド
初期費用0円要お問い合わせ要お問い合わせ0円
月額費用400〜1,100円/月・1台
(台数別の従量制、税別・最小5台)
要お問い合わせ
(販売代理店の見積り)
要お問い合わせ
(台数・機能別のカスタマイズ制)
900円/ライセンス〜
(100ライセンスの例、最小5・税別)
対象規模5台〜
(最小5ライセンス)
最大50,000台
(オンプレミス版)
要お問い合わせ5〜10,000クライアント
操作ログ管理●●●●
デバイス制御(USB等)●●●●
IT資産管理●●●●
詳細情報公式資料を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見る

※2026年11月時点の各社公式情報にもとづく主な比較項目です。料金は税別。最新の料金・機能や提供形態の詳細は各社の公式情報をご確認ください。

比較表で並べた4サービスは、いずれも操作ログ管理・デバイス制御を軸とする同じ切り口の製品です。ここからは、その代表としてEye”247″ Work Smart Cloudを取り上げ、さらに痕跡診断・通信記録・データレス化という異なる切り口のサービスを個別に紹介します。自社に不足している対策から検討してみてください。

1. Eye”247″ Work Smart Cloud(株式会社フーバーブレイン)

Eye247 Work Smart Cloudのウェブサイト

Eye”247″ Work Smart Cloudは、PCの操作ログから「誰が・いつ・どこで・何を操作したか」を記録・可視化するクラウド型サービスです。内部不正による情報漏えい対策に加え、PCログにもとづく客観的な労働時間の把握やIT資産管理も1つのツールで扱えます。サーバー構築が不要で、初期費用は無料、最小5台から導入できる従量制の料金体系が特徴です。

公式サイトによると導入実績は3,000社以上(2026年10月時点)で、操作ログの取得・可視化から着手したい企業が導入しやすいサービスです。

2. CoWorker 端末侵害診断サービス(CoWorker株式会社)

CoWorker 端末侵害診断サービスのウェブサイト

会社が管理するPCを解析し、ランサムウェア感染や情報漏えい・内部不正の痕跡がないかを調べるのが、CoWorkerの端末侵害診断サービスです。退職者のPCから機密情報を個人のドライブやクラウドにアップロードしていないかを確認する用途と、在籍社員の支給PCを定期的にチェックする用途があります。

端末のログを解析して挙動を調べる「フォレンジック」の技術を、自社開発のAIエージェントで高速化している点が特徴です。従来のフォレンジックは専門家が少なく費用も高額になりがちでしたが、問題が小さいうちに簡易・迅速に診断できる点を訴求しています。退職者の持ち出しが心配な場面や、脆弱性公表をきっかけに侵害の有無を確かめたい場面で活用されています。

どのような企業に向くのか、同社のSales Manager・一ノ瀬氏は取材で次のように話しています。

一ノ瀬氏
CoWorker株式会社 Sales Manager
一ノ瀬氏
独自インタビューより

特に、営業職の転職が激しい業界の企業には向いていると考えています。顧客リストの漏洩が問題になりやすく、転職する社員が自社の顧客リストをダウンロードして転職先で活用してしまうといった、社内の顧客情報の漏洩リスクが疑われるケースが少なくありません。こうした顧客情報を管理する必要がある企業様にとっては、定期的にチェックを行うことで情報管理の担保につながると考えています。

3. Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

Network Blackboxのウェブサイト

Network Blackboxは、社内ネットワークを流れる通信をまるごと記録しておき、後から「誰が外部にどんなデータを送ったか」をたどれる製品です。フルパケットキャプチャと呼ばれる方式で通信を保存し、検知・分析・事後調査を行うNDR(Network Detection and Response)に分類されます。

シグネチャによる既知の攻撃検知に加え、ネットワーク上のユーザー行為をメタデータとして抽出・記録し、通常と異なる行為やポリシー違反の兆候を検知する仕組みを備えます。

保存した通信は検索・分析でき、不審な通信の宛先や時系列、転送されたファイルなどをあとから追跡する用途に対応します。内部の不審通信やデータの外部流出など、ネットワーク上に痕跡が残る事象の検知・調査に強みがあります。一方で、ネットワークに現れないエンドポイント単体の操作などは対象外のため、操作ログ管理やログ解析と組み合わせて使う位置付けの製品です。

4. Shadow Desktop(アップデータ株式会社)

Shadow Desktop(シャドウデスクトップ)のウェブサイト

既存のWindows PCにインストールするだけで、PC本体にデータを物理的に残さない状態をつくれるのがShadow Desktopです。デスクトップ・ドキュメントなどのユーザーデータはクラウド等の外部ストレージへ自動アップロードされ、OSやアプリケーションは仮想化しないため通常のPCと同じ操作感で使えます。

開いたファイルは暗号化された専用領域に一時的にキャッシュされ、ファイル名も変換されるため、PCの紛失・盗難時にディスクを取り出しても内容を読み取れない設計とされています。端末にデータを残さないことで、持ち出しや紛失による漏えいリスクを下げたい企業に向く製品です。

内部不正対策に限らず、社内の情報を守るソリューション全体を「何を守るか」の切り口で見比べたい場合は、以下の記事で代表的なサービスのタイプと選び方をまとめて解説しています。導入を本格的に検討する際の出発点としてご覧ください。

まとめ

内部不正対策は、技術的対策・人的対策・物理的対策を組み合わせ、IPAの基本5原則で網羅性を点検しながら進めるのが基本です。すべてを一度に実施する必要はなく、守るべき情報資産の特定、アクセス権の整理、ログの取得・監視、持ち出し制御、ルール整備と教育という順で、上流から着手すると無理がありません。

まずは自社の現状を点検し、不足している対策を洗い出すことから始めましょう。操作ログ管理や通信記録、端末の痕跡診断、データレス化といった技術的対策には、それぞれ対応するサービスがあります。複数のサービスを比較して自社に合うものを選ぶ際は、資料を取り寄せて機能・料金・サポート体制を見比べるのが近道です。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 内部不正対策とは何ですか?

A. 内部不正対策とは、従業員・退職者・委託先など正規の権限を持つ「内部者」による情報の持ち出しや不正利用を防ぐための、技術・ルール・物理の各面にわたる取り組みの総称です。

具体的には、アクセス権・特権IDの管理、操作ログの監視、USB・クラウドへの持ち出し制御といった技術的対策に、就業規則・秘密保持誓約書・退職者アカウント管理・社員教育などの人的対策、入退室管理などの物理的対策を組み合わせて行います。外部からのサイバー攻撃対策とは区別され、「中の人」のリスクに焦点を当てる点が特徴です。

Q. 内部不正対策は中小企業なら何から始めればよいですか?

A. 内部不正対策は、専任担当を置きにくい中小企業でも、まず「守るべき情報資産の特定」と「アクセス権の棚卸し」から着手するのが現実的です。

どこに重要情報があるかを洗い出し、不要なアクセス権や特権IDを削るだけでも、不正の「機会」を大きく減らせます。その次に操作ログの取得・監視、USBやクラウドへの持ち出し制御へと段階的に広げます。高価なツールを一度にそろえる必要はなく、上流の整理から順に固めることで投資の無駄を避けられます。

Q. 内部不正対策で操作ログ監視と持ち出し制御(DLP)はどう違いますか?

A. 操作ログ監視と持ち出し制御の違いは、操作ログ監視が「誰がいつ何をしたかを記録して“見つける”ための対策」であるのに対し、持ち出し制御(DLP)は「USB・クラウドなどへのデータ持ち出しそのものを“止める・検知する”対策」である点です。

IPAの基本5原則に照らすと、ログ監視は「捕まるリスクを高める」、持ち出し制御は「犯行を難しくする」に対応します。役割が異なるため、どちらか一方ではなく組み合わせることで、抑止と検知の両面から実効性が高まります。

Q. 退職者による情報持ち出しにはどう対応すればよいですか?

A. 退職者による情報持ち出しへの対応は、退職・異動に合わせてアカウントを速やかに停止し、保有していたアクセス権を棚卸しすることが基本です。

退職直前・直後の持ち出しは典型的な手口で、放置されたアカウントが抜け穴になります。あわせて入社時・退職時に秘密保持誓約書を取り交わし、必要に応じて支給PCのログを解析して持ち出しの痕跡を確認します。個人情報保護法は「従業者又はこれらであった者」による不正な提供・盗用を罰則の対象としており、退職者であっても責任を問われうる点を誓約書や教育で明確に伝えることが抑止につながります。

出典・参考資料(1件)

Q. 内部不正対策にツールの導入は必須ですか?

A. 内部不正対策にツールの導入が必須かどうかは状況によりますが、就業規則・秘密保持誓約書の整備やアクセス権の棚卸しといったルール・運用面の対策は、ツールがなくても始められます。

一方、操作ログの記録・監視やデータ持ち出しの制御・検知を人手だけで継続するのは現実的でなく、一定規模以上では専用ツールの導入が効率的です。まずルールと運用で土台を整え、人手では回らない監視・制御の部分をツールで補うという順序で考えると、過剰な投資を避けられます。

Q. 内部不正を放置すると企業はどのような法的責任を問われますか?

A. 内部不正を放置して個人データが漏えいすると、企業には個人情報保護法にもとづく個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務付けられます(2022年4月の改正で努力義務から法的義務に強化)。

さらに、不正を行った本人には同法の罰則(1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)が科されうるほか、技術・営業上の秘密が持ち出された場合は不正競争防止法による責任追及の対象にもなります。ただし営業秘密として法的に保護されるには秘密管理性などの要件を満たす必要があり、社内の情報管理体制の整備が前提となります。

出典・参考資料(2件)

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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