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SaaSセキュリティとは?主なリスクと対策・ツールの選び方を一覧で解説

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部門ごとに業務用のSaaSが増え、情報システム部門が把握しきれないまま利用が広がっている企業は少なくありません。便利さの裏で、設定ミスによる情報公開やアカウントの乗っ取り、退職者アカウントの放置といった事故が実際に起きており、何から手を付ければよいか迷う担当者が増えています。

SaaSセキュリティとは、クラウドで利用するSaaSに預けた情報やアカウントを、不正アクセス・情報漏えい・データ消失などから守る取り組みのことです。ただし、ゼロトラストやCASBといった用語を覚えることが出発点ではありません。まず押さえたいのは「SaaSを使うと具体的に何が危ないのか」と「その危険に自社で何をすれば効くのか」の対応です。この2つがかみ合えば、優先順位をつけて対策を進められます。

本記事では、SaaS利用で起きやすいリスクを具体的に挙げ、どのリスクにどの対策が効くかを早見表で整理します。そのうえで、対策を実務に落とすための製品カテゴリ(ID基盤・SaaS管理ツールなど)と代表的なサービス、ベンダー選定でみる認証の基準までを解説します。

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SaaS利用に潜む主なセキュリティリスク

はじめに、SaaSを業務で使うときに起きやすいリスクを具体的に整理します。SaaSのリスクはアカウント管理・利用状況の把握・設定といった運用面に集中しており、いずれも利用する企業側の運用で起きやすいのが特徴です。以下の項目から、自社に当てはまるものを確認してください。

不正アクセス・アカウント乗っ取り

SaaSはインターネット経由でどこからでもログインできるため、ID・パスワードが漏れると外部から直接侵入されます。パスワードの使い回しやフィッシングで認証情報が盗まれると、正規利用者になりすまして社内データを閲覧・持ち出しされる恐れがあります。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表する「情報セキュリティ10大脅威 2025」でも、組織が直面する脅威として、次のような項目が上位に挙げられています。

1位「ランサム攻撃による被害」/3位「システムの脆弱性を突いた攻撃」/4位「内部不正による情報漏えい等」/10位「不注意による情報漏えい等」

出典:情報セキュリティ10大脅威 2025(組織)|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2025.html)

ランサムウェアや脆弱性を突く攻撃に加え、内部不正や不注意による漏えいも上位に入っています。SaaSのリスクは外部からの攻撃だけでなく、社内の管理や運用に起因するものも大きいことがうかがえます。

シャドーIT(部門が勝手に契約・把握できないSaaS)

SaaSはクレジットカードがあれば現場の判断ですぐ契約できるため、情報システム部門の把握しないサービスが社内に増えていきます。これがシャドーITで、管理対象から外れたSaaSにはセキュリティ設定の点検も棚卸しも届きません。

把握できていないSaaSに重要なデータが保存されていると、退職時のアカウント停止や情報漏えい時の対応が後手に回ります。「どの部門が・どのSaaSを・誰のアカウントで使っているか」を見える化することが、対策の前提になります。

設定ミスによる意図しない情報公開

SaaSはアクセス権や公開範囲を利用企業が設定します。この設定を誤ると、本来は社内限定のはずのファイルやデータが、認証なしで外部から閲覧できる状態になってしまいます。総務省のガイドラインも、設定不備による情報漏えいが相次いでいると注意を促しています。

クラウドサービスのセキュリティに関する設定が十分でなかったために、意図せず、クラウドサービスで管理している機密情報を無認証状態で外部に公開してしまい、機密情報を漏洩させてしまった事例が相次いで報告されている。

出典:クラウドサービス提供における情報セキュリティ対策ガイドライン(第3版)|総務省(https://www.soumu.go.jp/main_content/000969479.pdf)

設定ミスは高度な攻撃ではなく、権限や公開範囲の確認漏れで起こります。新しいSaaSを増やすたびに設定を点検する運用が欠かせません。

過剰・放置された権限/退職者・異動者アカウントの残存

SaaSの利用が広がると、必要以上に強い権限が付いたままのアカウントや、退職・異動した社員のアカウントが放置されがちです。これらは不正利用の入口になります。総務省のガイドラインは、設定項目ごとのリスクとして次の点を挙げています。

退職者のユーザIDやパスワードの失効させずに放置することにより、不正に利用されるリスク

アクセス管理を厳密に設定しないことで、アクセス管理に不慣れな一般利用者が不注意で個人情報を公開してしまうリスク

出典:クラウドサービス利用・提供における適切な設定のためのガイドラインの概要|総務省(https://www.soumu.go.jp/main_content/000843319.pdf)

権限は「付けたら見直さない」状態になりやすく、退職者アカウントは本人が去った後も残り続けます。付与した権限を定期的に棚卸しし、退職・異動のタイミングで確実に停止する運用が必要です。

データ消失・マルウェア/ランサムウェア・API脆弱性

SaaSは事業者側で運用されますが、利用企業のデータが完全に守られるわけではありません。マルウェアやランサムウェアに感染したアカウント経由でデータが暗号化・持ち出しされることや、SaaS同士を連携するAPIの設定不備が侵入経路になることもあります。

総務省のガイドラインも、APIのアクセスキー・シークレットキー(クレデンシャル情報)の管理が不十分だとシステム全体の乗っ取りにつながるリスクや、ログ設定を怠って異常に気付けないリスクを指摘しています。連携やログの設定も、利用企業側が意識すべき管理項目です。

出典・参考資料(1件)

内部不正・不注意による情報漏えい

外部からの攻撃だけでなく、社内の人間による持ち出しや、設定・共有範囲の誤りといった不注意も、SaaSからの情報漏えいの大きな原因です。前掲のIPA「情報セキュリティ10大脅威 2025」でも、内部不正による情報漏えいが4位、不注意による情報漏えいが10位に入っています。

過剰な権限やアクセス管理の甘さがあると被害が広がりやすいため、最小権限の徹底やログ監査に加え、利用者への教育で不注意を減らす取り組みが欠かせません。

実際に起きたSaaS関連インシデント事例

これらのリスクは想定上の話ではなく、実際に注意喚起が出る水準で起きています。2021年1月には、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が、Salesforce製品の設定不備により意図しない情報が外部から参照される可能性があるとして、重要インフラ事業者などに向けて注意喚起を行いました。データのアクセス権などの設定の誤りが原因とされ、各社に利用状況と設定の点検を促す内容でした。

出典・参考資料(1件)

こうした事例の多くは、攻撃の高度さではなくアクセス権や公開範囲の設定ミス、アカウント管理の甘さが原因です。だからこそ、次章のように「どのリスクに・どの対策が効くか」を押さえ、自社の運用に落とし込むことが有効になります。

リスク別の対策早見表——どのリスクに何が効くか

ここからは、前章のリスクに対して自社で取るべき対策を早見表で整理します。SaaSのリスクの多くは、ID・アクセスの管理、利用状況の可視化、設定の点検を軸に、ログ監査や従業員教育を組み合わせて対策できます。各リスクに効く対策と、それを実務で支える製品カテゴリを並べて示します。

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主なリスク不正アクセス・アカウント乗っ取りシャドーIT(未把握のSaaS)設定ミスによる情報公開過剰・放置権限、退職者アカウント残存データ消失・マルウェア/ランサム・API脆弱性内部不正・不注意による漏えい
取るべき対策多要素認証(MFA)・パスワードレス認証、ID・パスワードの一元管理利用状況の可視化・棚卸し、シャドーIT検知アクセス権・公開範囲の点検、継続的な設定チェックアクセス権の最小化(RBAC)、退職者アカウントの即時停止ログ監査・継続的な監視、API・クレデンシャルの管理最小権限の徹底、ログ監査、従業員教育
対応する製品カテゴリIDaaS(ID基盤)SaaS管理ツール/CASBSSPM/SaaS管理ツールIDaaS/SaaS管理ツールSSPM/CASB/SaaS管理ツールSaaS管理ツール/IDaaS

各リスクに効く代表的な対策と、その対策を実務で担う製品カテゴリの対応。製品カテゴリの役割は次章で解説します。

以下では、表の各対策について、何を・どこまでやればよいかを補足します。

ID・パスワード管理と多要素認証(MFA)

不正アクセスへの基本の対策が、ID・パスワードの一元管理と多要素認証(MFA:Multi-Factor Authentication)です。パスワードに加えて認証アプリやセキュリティキーなど2つ目の本人確認を求めることで、認証情報が漏れても単独ではログインされにくくなります。

複数のSaaSを使う環境では、サービスごとに個別のパスワードを管理するより、シングルサインオン(SSO)とMFAを備えたID基盤でログインを集約するほうが、利便性と安全性を両立できます。フィッシングに強いパスキー(FIDO2)によるパスワードレス認証も選択肢です。

多要素認証は、SMSで届くコード・認証アプリ・セキュリティキーなど方式ごとに安全性も使い勝手も変わります。認証の3要素や二段階認証との違い、方式ごとの選び方まで詳しく知りたい場合は、こちらの記事で整理しています。

アクセス権の最小化・RBAC

利用者には業務に必要な範囲だけの権限を与える「最小権限の原則」が基本です。役割(ロール)ごとに権限をまとめて管理するRBAC(Role-Based Access Control:役割ベースのアクセス制御)を使うと、個人ごとに権限を付け外しするより過剰権限が生まれにくくなります。

権限は一度付けると見直されにくいため、付与状況を定期的に棚卸しし、不要になった権限を回収する運用まで含めて設計することが重要です。

利用状況の可視化と棚卸し(シャドーIT検知)

シャドーITへの対策は、まず「社内でどのSaaSが使われているか」を可視化することから始まります。IDプロバイダーの連携ログやブラウザの利用状況などから、情報システム部門が把握していないSaaSを検知し、棚卸しの対象に加えることが第一歩です。

可視化した一覧をもとに、業務に必要なSaaSは正式に管理下へ移し、不要なものは解約する判断ができます。利用状況の把握は、コストの最適化にもつながります。

退職者・異動者アカウントの即時停止

退職や異動のタイミングで、該当者のアカウントを速やかに停止・削除する運用が欠かせません。手作業で複数のSaaSを個別に止めると停止漏れが起きやすいため、従業員情報と連携してアカウントのライフサイクルを管理する仕組みが有効です。

入社・異動・退職の情報を起点にアカウントの発行と停止を自動化すれば、放置アカウントという不正利用の入口を減らせます。

ログ監査・継続的なモニタリング

設定して終わりにせず、ログを監査して継続的に監視することで、異常なアクセスや設定の変化に早く気付けます。総務省のガイドラインも、ログ設定を怠るとモニタリングが機能せず、異常が起きても気付けないリスクがあると指摘しています。

認証ログや操作ログを定期的に確認し、不審な挙動を検知できる状態にしておくことが、被害の早期発見につながります。

従業員教育

技術的な対策だけでなく、利用者側のリテラシーも重要です。フィッシングメールの見分け方、パスワードの使い回しの危険、新しいSaaSを導入する際の申請ルールなどを周知し、現場の不注意による事故を減らすことにつながります。

ここまでの対策を「どの製品で実現するか」は、次章で製品カテゴリごとに整理します。

対策を実務に落とすツール——IDaaS・SaaS管理・CASB・SSPMの役割

前章の対策を自社だけの手作業で回すのは限界があります。ここからは、対策を実務に落とす代表的な製品カテゴリを、どのリスク・対策に対応するかとあわせて整理します。自社に必要なのは、守りたいリスクに対応するカテゴリの製品であり、すべてを一度に導入する必要はありません。

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製品カテゴリIDaaS(ID基盤)SaaS管理ツールCASB(Cloud Access Security Broker)SSPM(SaaS Security Posture Management)
主な役割SSO・多要素認証・ID管理を集約。ログインの本人確認とアカウント管理を一元化利用中のSaaSとアカウントの可視化・棚卸し、シャドーIT検知、入退社時のアカウント発行・停止利用者とSaaSの間でアクセスを監視・制御。利用状況の可視化やデータ保護SaaSのセキュリティ設定を継続的に点検し、設定ミスを検出・是正
主に効くリスク不正アクセス・アカウント乗っ取り、過剰権限、退職者アカウント残存シャドーIT、退職者アカウント残存、過剰権限、コストの無駄シャドーIT、不正なデータ持ち出し設定ミスによる情報公開、過剰権限

製品カテゴリごとの役割と、主に効くリスク。カテゴリは重なる機能を持つこともあり、1つの製品が複数の役割を兼ねる場合もあります。

まず押さえたいのは、ログインを守るIDaaS(ID基盤)と、利用状況を把握するSaaS管理ツールです。IDaaSはSSOと多要素認証でアカウント乗っ取りを防ぎ、SaaS管理ツールはシャドーITの可視化と退職者アカウントの棚卸しを担います。この2つで、SaaSリスクの中心である「アカウント」と「利用状況の把握」をカバーできます。

さらに踏み込んで、利用者とSaaSの通信を監視・制御したい場合はCASB、SaaSの設定ミスを継続的に点検したい場合はSSPMが選択肢になります。これらは大規模・高度な要件向けの色合いが強く、まずはIDaaSとSaaS管理ツールから着手し、必要に応じて広げる進め方が現実的です。具体的なサービスは後半の「サービスで解決する」で紹介します。

SaaSセキュリティ製品の導入の進め方を2段階で示した図。まず着手するのはIDaaS(ID基盤、SSO・多要素認証でアカウント管理を集約)とSaaS管理ツール(利用SaaSの可視化・棚卸し、シャドーIT・退職者アカウント対策)の2つ。必要に応じて、利用者とSaaSの通信を監視・制御するCASBと、設定ミスを継続的に点検するSSPMへ広げる。

CASBやSSPMの導入を検討する段階になったら、どんな製品があり、どのSaaSに対応し、費用がどうかかるのかを比べて選びます。SSPM製品は、以下の記事で具体的に比較しています。

なぜSaaSのセキュリティ対策が必要か——責任共有モデルで自社の守備範囲を知る

ここまでの対策が「なぜ自社の責任で行うのか」を、SaaSの基本的な考え方から確認します。SaaSのセキュリティは事業者に任せきりにはできず、利用企業が担うべき範囲が明確に存在します。その線引きを示すのが責任共有モデルです。

SaaSセキュリティとは何か

SaaSセキュリティとは、クラウド上で提供されるSaaSに保存した情報やアカウントを、不正アクセス・情報漏えい・データ消失などから守るための仕組みと運用のことです。対象は、アカウントとアクセス権の管理、利用状況の把握、設定の点検、データの保護など、利用企業が担う範囲に広く及びます。

SaaS利用の急増とクラウド特有のリスク

働き方の多様化やDXの進展で、1社が使うSaaSの数は増え続けています。SaaSはインターネット経由でどこからでも使える反面、社内ネットワークの境界で守るという従来の考え方が通用しません。アカウント単位・サービス単位で守る発想への切り替えが求められます。

利用するSaaSが増えるほど、把握・管理すべきアカウントと設定も増えます。数が増えること自体がリスクを押し上げるため、可視化と一元管理の重要性が高まっています。

責任共有モデル:ベンダーと自社の守備範囲

SaaSのセキュリティは、事業者と利用企業が役割を分担して守ります。この考え方を責任共有モデルと呼びます。総務省のガイドラインは、次のように説明しています。

クラウドサービスの情報セキュリティを高めるためには、クラウドサービス事業者とクラウドサービス利用者が協力して、クラウドサービスに対する責任を共有する必要がある。この責任を共有するという考え方(責任共有モデル)を多くのクラウドサービス事業者が採用している。

出典:クラウドサービス提供における情報セキュリティ対策ガイドライン(第3版)|総務省(https://www.soumu.go.jp/main_content/000969479.pdf)

SaaSでは、アプリケーションやその基盤は事業者が実装・運用しますが、アカウントの管理やアクセス権の設定、保存したデータの扱いは利用企業の責任範囲です。同ガイドラインは、利用者が「データの管理」や「外部からのアクセス権限を設定する」権限と責任を持つと整理しています。

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領域アプリケーション・基盤データアカウント・アクセス権
SaaS事業者の責任アプリの実装・設定・更新・運用、インフラの管理—限定的な管理権限の付与
利用企業(自社)の責任—アプリ上で扱うデータの管理(編集・削除など)アカウント管理、外部からのアクセス権限の設定

総務省「クラウドサービス提供における情報セキュリティ対策ガイドライン(第3版)」のSaaSに関する記述をもとに作成。責任範囲は契約・利用条件で変わるため、個別に確認が必要です。

注意したいのは、運用を外部のSIerに委託していても、最終的な責任は利用企業に残る点です。総務省のガイドラインも、SIerが設定作業を行う場合でも「最終責任はクラウドサービス利用者となる」としています。自社の守備範囲を把握し、対策を自ら進めることが欠かせません。

出典・参考資料(1件)

自社点検・ベンダー選定チェックリスト

ここまでの内容を、自社の点検とサービス選定に使えるチェックリストにまとめます。まず自社の運用を点検し、足りない部分を対策・ツールで補う、という順で活用してください。

自社のSaaSセキュリティ自己診断チェックリスト

次の項目に「できている」と答えられるかを確認してください。答えに詰まる項目が、優先して着手すべき対策の候補です。

  • 社内で使われているSaaSの一覧を、情報システム部門が把握できている
  • 主要なSaaSで多要素認証(MFA)を有効にしている
  • 利用者の権限が業務に必要な範囲に絞られ、定期的に棚卸しされている
  • 退職・異動の際に、各SaaSのアカウントを漏れなく停止する手順がある
  • SaaSの公開範囲・共有設定を定期的に点検している
  • 認証ログや操作ログを確認し、異常に気付ける状態にある
  • 新しいSaaSを導入する際の申請・審査のルールがある

「できていない」項目が複数ある場合は、まずSaaSの可視化(一覧化)とMFAの徹底から着手すると、多くのリスクをまとめて下げられます。

ベンダー選定でみる認証取得状況(ISMS/SOC 2/CSA STAR)

SaaS事業者を選ぶ際は、第三者による認証の取得状況が、事業者側のセキュリティ体制を判断する目安になります。代表的な3つを押さえておくと、資料請求や比較のときに確認しやすくなります。

  • ISMS(ISO/IEC 27001):情報セキュリティマネジメントの国際規格に基づく第三者認証。情報マネジメントシステム認定センター(ISMS-AC)は「国際的に整合性のとれた情報セキュリティマネジメントシステムに対する第三者適合性評価制度」と説明しています。組織的な情報セキュリティの仕組みが整っているかの基本的な目安になります。
  • SOC 2:米国公認会計士協会(AICPA)の規準に基づき、独立した監査人がサービス事業者の内部統制(セキュリティや可用性など)を評価した保証報告書です。ある時点の整備状況を評価するType 1と、一定期間の運用状況まで評価するType 2があります。
  • CSA STAR:クラウドセキュリティに特化した評価プログラムです。Cloud Security Alliance(CSA)の公式解説によると、質問票で自社の管理策を文書化し公開する自己評価のレベル1と、独立した第三者による評価のレベル2があります。

認証は「取得していれば万全」というものではありませんが、取得状況と対象範囲を確認すると、事業者のセキュリティへの取り組み姿勢を把握できます。認証の保有主体(サービス単体か、提供会社全体か)や認証の範囲もあわせて確認すると、より正確に判断できます。

出典・参考資料(2件)

サービスで解決する(SaaSセキュリティ対策を支えるサービス)

ここからは、これまで整理した対策を実務に落とすための代表的なサービスを紹介します。SaaSリスクの中心である「アカウントの管理」と「利用状況の把握」に対応する、ID基盤とSaaS管理ツールの代表例です。

役割が異なるため、自社の課題に近いほうから検討してください。ログインの本人確認とアカウント集約を強化したいならID基盤、利用SaaSの可視化と棚卸し・退職者アカウント対策を進めたいならSaaS管理ツールが出発点になります。

ここで取り上げるのはSaaSのセキュリティに直結するID基盤とSaaS管理ツールですが、端末・ネットワーク・データの保護まで含めた社内セキュリティ全体のなかから対策を見渡したい場合は、守る対象別に整理した以下の比較記事が参考になります。

以下は、ここで紹介するID基盤とSaaS管理ツールの比較表です。

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サービス名CloudGate UNOマネーフォワード Admina
種別ID基盤(IDaaS)SaaS管理ツール
主な役割ログインの本人確認とアカウント管理を集約利用SaaSの可視化・棚卸しと退職者アカウント管理
主な機能SSO・多要素認証
パスキー(FIDO2)
アクセス制限・ID管理
SaaS可視化・シャドーIT検知
オフボーディング
IT資産管理(Device台帳)
SSO・多要素認証(ログイン認証)●×IDプロバイダーと連携して利用
料金(月額)400円〜600円/ユーザー(税抜)50ID以下 無料
51ID以上 1IDあたり300円
無料トライアル30日間14日間
こんな企業におすすめSSOと多要素認証でSaaSのログインをまとめて守りたい増えたSaaSの棚卸しや退職者アカウント対策から着手したい
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CloudGate UNO(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

CloudGate UNOのウェブサイト

CloudGate UNOは、株式会社インターナショナルシステムリサーチが100%自社開発するクラウド型のID基盤(IDaaS)です。シングルサインオン(SSO)・多要素認証・パスキー(FIDO2)によるパスワードレス認証・アクセス制限・ID管理を1つにまとめ、複数のSaaSへのログインを安全に集約できます。

特徴は、フィッシングに強いパスキー認証を全プラン・全ユーザーで無制限に使える点です。加えて、「端末・場所・時間」の3軸でのアクセス制限により、私用端末からの利用禁止や特定拠点・時間帯に限定したログインなど、細かな制御ができます。アカウントの発行・更新・削除を自動化するID管理機能も備えます。

料金は税抜で、Standard Plusが月額400円/ユーザー、Enterprise Plusが500円/ユーザー、Smart Packが600円/ユーザーです(2026年11月時点の公式情報)。30日間の無料トライアルが用意されています。SaaSのログインを多要素認証とSSOでまとめて守りたい企業に向いたサービスです。

パスワードレス認証への移行が、情報システム部門のパスワード関連業務にどう表れるかについて、提供元の株式会社インターナショナルシステムリサーチは独自インタビューで次のように述べています。

平澤氏
株式会社インターナショナルシステムリサーチ 営業本部マーケティング部
平澤氏
独自インタビューより

導入と同時にパスワードレス認証に切り替えた企業では、IT部門の業務の約20%を占めていたパスワード関連のヘルプデスク業務が「0%」になったという事例があります。

マネーフォワード Admina(マネーフォワードi株式会社)

マネーフォワード Adminaのウェブサイト

マネーフォワード Adminaは、SaaSのアカウントと利用状況を可視化・一元管理するSaaS管理ツールです。従業員を軸に「誰が・どのSaaSを・どのアカウントで使っているか」を把握し、シャドーITの検知や入退社時のアカウント発行・停止(オフボーディング)までを支援します。

退職済みアカウントをアラートで表示し、ボタン操作での削除や、退職日・雇用区分の条件を設定した自動削除ができます。IdP連携やブラウザ拡張に加え、2026年10月提供開始のPC向けエージェント「Admina Tracker」で、ブラウザを経由しないデスクトップアプリの利用も検知できます。

ただし、Admina自体はSSO・多要素認証を提供する製品ではなく、Google WorkspaceやMicrosoft 365などのIDプロバイダーと連携して使う位置づけです。

料金は、50ID以下は全機能を無料で利用でき、51ID以上は1IDあたり月額300円です(2026年11月時点の公式情報)。14日間の無料トライアルがあります。増えたSaaSの棚卸しや退職者アカウント対策から着手したい情報システム部門に向いたサービスです。

まとめ

SaaSのセキュリティ対策は、難しい専門用語から入る必要はありません。まず「何が危ないか(リスク)」と「何をすれば効くか(対策)」の対応を押さえ、自社の運用に落とし込むことが出発点です。最後に、進め方を整理します。

  1. 自社のリスクと抜けを点検する:チェックリストで、可視化・MFA・権限棚卸し・退職者対応・設定点検・ログ監査のうち、できていない項目を洗い出す。
  2. 優先順位をつけて対策する:多くのリスクをまとめて下げられる「SaaSの可視化」と「多要素認証の徹底」から着手する。
  3. 対策を支えるツールを選ぶ:ログインを守るID基盤、利用状況を把握するSaaS管理ツールを軸に、認証取得状況も確認して比較する。

自社の課題に合うサービスは、料金や機能を資料で見比べて選ぶのが確実です。気になるサービスの資料をまとめて請求し、比較検討の材料にしてください。

よくある質問(FAQ)

Q. SaaSセキュリティとは何ですか?

A. SaaSセキュリティとは、クラウド上で提供されるSaaSに保存した情報やアカウントを、不正アクセス・情報漏えい・データ消失などから守るための仕組みと運用のことです。守る対象は、アカウントとアクセス権の管理、利用状況の把握、設定の点検、データの保護など、利用企業が担う範囲に広く及びます。「何が危ないか」と「何をすれば効くか」の対応を押さえることが出発点です。

Q. SaaSのセキュリティ対策は何から始めればよいですか?

A. SaaSのセキュリティ対策は、社内で使われているSaaSの可視化(一覧化)と、主要なSaaSでの多要素認証(MFA)の徹底から始めるのが効果的です。この2つは、シャドーITや不正アクセスといった発生しやすいリスクをまとめて下げられます。まず自己診断チェックリストで「できていない項目」を洗い出し、影響の大きいものから優先順位をつけて着手してください。

Q. 責任共有モデルとは何ですか?SaaSではどこまでが自社の責任ですか?

A. 責任共有モデルとは、SaaSのセキュリティを事業者と利用企業が役割を分担して守る考え方で、アプリケーションや基盤の運用は事業者が担い、アカウントの管理・アクセス権の設定・保存データの扱いは利用企業の責任範囲となります。総務省のガイドラインもこの考え方を示しています。運用をSIerに委託していても、最終的な責任は利用企業に残ります。

Q. SaaSのシャドーITにはどう対策すればよいですか?

A. シャドーIT(情報システム部門が把握していないSaaS)への対策は、まず「社内でどのSaaSが・誰のアカウントで使われているか」を可視化し、棚卸しすることから始めます。IDプロバイダーの連携ログやブラウザの利用状況などから未把握のSaaSを検知し、業務に必要なものは正式に管理下へ移し、不要なものは解約します。この可視化と棚卸しは、SaaS管理ツールやCASBが実務面で支えます。

Q. SaaSのセキュリティに多要素認証(MFA)は必須ですか?

A. 多要素認証(MFA)は法律で一律に義務づけられてはいませんが、不正アクセス・アカウント乗っ取りを防ぐ最優先の基本対策であり、主要なSaaSでは導入を強く推奨します。認証情報が漏れても、2つ目の本人確認があれば単独ではログインされにくくなります。複数のSaaSを使う環境では、SSOとMFAを備えたID基盤でログインを集約すると利便性と安全性を両立できます。

Q. SaaS管理ツールとID基盤(IDaaS)は何が違い、どちらが必要ですか?

A. ID基盤(IDaaS)はSSO・多要素認証でログインの本人確認とアカウント管理を集約する製品、SaaS管理ツールは利用中のSaaSとアカウントを可視化・棚卸しする製品で、効くリスクが異なります。

アカウント乗っ取りを防ぎたいならIDaaS、シャドーITの把握や退職者アカウントの棚卸しを進めたいならSaaS管理ツールが出発点です。多くの企業はこの2つを軸に検討し、必要に応じてCASB・SSPMへ広げます。

Q. 専任のセキュリティ担当がいない中小企業でも、SaaSのセキュリティ対策はできますか?

A. 専任担当がいなくても、可視化とMFAの徹底という優先度の高い対策から始めれば、SaaSのセキュリティ対策は十分に進められます。手作業で複数のSaaSを個別に管理すると停止漏れや点検漏れが起きやすいため、アカウントの発行・停止や設定点検を自動化できるツールの活用が有効です。SaaS管理ツールには一定のID数まで無料で使えるものもあり、小規模から段階的に導入できます。

Q. SaaS事業者を選ぶとき、セキュリティ認証(ISMS・SOC 2・CSA STAR)はどう確認すればよいですか?

A. SaaS事業者のセキュリティ認証は、取得の有無だけでなく、認証の対象範囲と保有主体(サービス単体か提供会社全体か)まで確認することが重要です。ISMS(ISO/IEC 27001)は組織的な情報セキュリティ体制、SOC 2は内部統制の運用状況、CSA STARはクラウドに特化した評価の目安です。資料請求や比較の際に取得状況と範囲を確認すると、事業者の取り組み姿勢を判断できます。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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