デジタル住民票やふるさと納税の返礼品、観光スタンプラリーなど、NFT(非代替性トークン。偽造や複製が難しいデジタル証明)を地域施策に取り入れる自治体が全国で増えています。関係人口の獲得や財源の確保、シティプロモーションといった行政の課題に、新しい打ち手として結びつけられ始めているためです。
一方で、他の自治体がどんな目的で、どの手法を選び、どれくらいの成果を出しているのかは、事例が散らばっていて全体像がつかみにくいのが実情です。「話題になっただけの事例」と「関係人口の増加まで結びついた事例」の見分けも、個別のニュースを追うだけでは難しくなっています。
本記事では、自治体のNFT活用事例を「解決したい課題(目的)」と「活用手法」の2つの軸で整理し、目的から逆引きできる地図としてまとめます。そのうえで、手法別の傾向と成果、導入手順、費用と体制の当たり、暗号資産該当性や議会説明にかかわる法令・政策の論点、そして発行・配布に使えるサービスの選び方までを一気通貫で解説します。
自分の自治体でNFTを企画すべきか、企画するならどの手法が向いているか。その判断材料を持ち帰れる構成にしています。
目次
一括ダウンロードする
目的別 × 手法別で見る自治体NFT活用マップ
自治体のNFT活用は「NFTを発行すること」自体が目的ではなく、行政が抱える課題を解決するための手段です。まずは自分の自治体が解決したい課題から、相性の良い活用手法と代表的な事例を逆引きできるように整理します。
下の表は、縦軸に「自治体が抱える課題・目的」、横軸の考え方として「相性の良いNFT活用手法」と「代表的な事例」を並べたものです。自分の課題に近い行から読み始めると、どの手法が候補になるかの当たりが付きます。
| 目的別×手法別で見る自治体NFT活用マップ | 関係人口・応援人口を増やしたい | ふるさと納税の返礼品を差別化したい | 継続的な財源・自主財源を確保したい | 観光客を誘致し、周遊を促したい | シビックプライド・地域文化を発信したい | 移住・定住を検討してもらいたい |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 相性の良いNFT活用手法 | デジタル住民票NFT/会員証・パスポート型NFT | ふるさと納税返礼品NFT(アート・会員権・体験型) | 会員権型NFT/命名権(ネーミングライツ)NFT/二次流通ロイヤリティを設計したNFT | 観光スタンプラリーNFT/訪問証明NFT | 御朱印・御城印NFT/記念デジタルカード | 会員証・パスポート型NFT(体験特典つき) |
| 代表的な事例 | 新潟県長岡市 山古志地域、山形県西川町、富山市 | 北海道余市町、茨城県桜川市、岩手県遠野市 | 福島県只見町、茨城県八千代町 | 佐賀県有田町(有田陶器市)、三重県明和町 | 三重県明和町(竹神社)、福岡城・小倉城・島原城の御城印NFT | 富山市(応募者の約6割が移住を検討と回答) |
ここで挙げた手法は排他的ではありません。たとえばデジタル住民票NFTは関係人口づくりと財源確保の両方を狙えますし、御朱印NFTは観光誘客とシビックプライドを兼ねます。自分の自治体では複数の目的が重なることも多いため、主たる目的を1つ決めたうえで、副次的な効果も見込める手法を選ぶと企画が組み立てやすくなります。
自治体のNFT活用事例
ここからは、目的別に自治体のNFT活用事例を、同じ項目(発表時期・手法・発行スキーム・成果数値・出所)でそろえて紹介します。成果数値が公表されていない事例も、そのまま「未公開」と記載します。数値の有無は、その事例が話題止まりか、関係人口の増加などの実効まで届いたかを読み取る手がかりになります。
関係人口・デジタル住民票をつくる事例
| 関係人口・デジタル住民票をつくる事例 | 新潟県長岡市 山古志地域(地域人口 約800人) | 山形県西川町(人口 4,732人) | 山口県美祢市(人口 約2.3万人) | 富山市(人口 約41万人) |
|---|---|---|---|---|
| 手法・発表時期 | デジタル村民NFT「Nishikigoi NFT」+DAO(分散型自律組織)/2021年12月〜 | 自治体が発行するデジタル住民票NFT/2023年4月 | デジタル住民票NFT/2023年7月 | 富山市公式NFTパスポート(会員証型)/2026年(第1弾) |
| 発行スキーム | 山古志住民会議が発行(錦鯉アートのNFT) | 西川町が発行、支援=メディアエクイティ、販売=NFTマーケット「HEXA」 | 美祢市が発行、実施=東武トップツアーズ・メディアエクイティ、プラットフォーム=HEXA | 富山市が発行、支援=メディアエクイティ、プラットフォーム=HEXA |
| 成果数値 | デジタル村民 1,032名(2022年11月末時点)、うちリアルな帰省が延べ約140名超 | 1,000個の販売に対し購入申込 13,440件(13.4倍)。町内温泉の入浴無料等の特典つき | 2,000個限定。秋芳洞入場無料等の特典つき(申込倍率は非公開) | 第1弾は定員1,000枚に対し2,433件が応募(約2.4倍)、応募者の約60%が富山市への移住を検討と回答 |
出典・参考資料(4件)
ふるさと納税・継続財源につなげる事例
| ふるさと納税・継続財源につなげる事例 | 北海道余市町(人口 約1.8万人) | 福島県只見町(人口 約4,000人) | 茨城県八千代町(人口 約2.1万人) | 茨城県桜川市(人口 約4.0万人) | 岩手県遠野市(人口 約2.5万人) |
|---|---|---|---|---|---|
| 手法・発表時期 | ふるさと納税返礼品NFT(CryptoNinja Partnersコラボ)/2022年10月 | JR只見線 縁結びNFT(ふるさと納税・会員権型)/2023年 | 無限フルーツチケットNFT(会員権型)/2025年5〜6月 | ふるさと納税返礼品のNFTアート | 体験型NFT「遠野物語NFT」(ふるさと納税) |
| 発行スキーム | 余市町が発行、支援=あるやうむ、チェーン=Ethereum(1年間の転売制限つき) | 只見町が発行、支援=メディアエクイティ、プラットフォーム=HEXA | 八千代町が発行、実施=メディアエクイティ・東武トップツアーズ、プラットフォーム=HEXA | 桜川市が「ふるさとチョイス」でNFTアート返礼品を提供 | スマニューラボ・Next Commons Labが提供、ふるさと納税を通じて流通 |
| 成果数値 | 「余市町ふるさとCNP2022」=222種類の一点もの、寄付単価 3万円/1種類。短時間で全種完売と報告 | ふるさと納税での販売価格 1セット 12,000円(税込)。収益の一部を只見線の維持運営に充当 | 1,000個の販売に対し購入者 788人、5日で完売。毎年フルーツ相当を無期限で受け取れる設計で、転売益の一部も町の収入になる | 発行数・寄付額は未公開 | 発行数は未公開 |
出典・参考資料(5件)
観光誘客・シビックプライドを高める事例
| 観光誘客・シビックプライドを高める事例 | 三重県明和町(人口 約2.2万人) | 佐賀県有田町(人口 約1.9万人) | 福岡城・小倉城・島原城(観光施設) |
|---|---|---|---|
| 手法・発表時期 | 竹神社「e御朱印」(御朱印NFT+周辺クーポン)/2022年8月〜、2023年12月に拡充 | 有田陶器市 デジタルポストカードNFT(訪問証明型)/2023年 | スマホ御城印NFT/2024年 |
| 発行スキーム | 明和観光商社が発行、システム=クリプトリエ(MintMonster)、協業=博報堂ほか。参拝時にQRコードで取得、月替わり全12種 | 有田観光協会が実施、運営=九州NFTラボ、プラットフォーム=HEXA。町内7か所のQRから取得 | 観光団体が実施、プラットフォーム=Commun。各城300枚限定などで販売 |
| 成果数値 | 頒布数は未公開(頒布は2022年開始・2023年に拡充と継続) | 先着1万名を上限に配布(実配布数は未公開) | 各城の限定数のみ公表 |
観光・シビックプライド系の事例では、発行主体が自治体そのものではなく観光協会や地域づくり法人であるケースが多く見られます。庁内で企画する場合は、どの団体が主体となって運営するかを最初に整理しておくと、後の予算措置や議会説明がスムーズになります。なお、NFT証明付きの御朱印を販売した福岡・鳥飼八幡宮のような取り組みは、神社が主体の民間事例であり自治体施策ではない点にも注意が必要です。
出典・参考資料(3件)
手法別に見る自治体NFT活用の特徴と総括
ここまでの事例を手法ごとに整理すると、成果まで結びついた傾向と、話題止まりになりやすい点が見えてきます。次の表は、各手法について「関係人口の増加や周遊といった成果に届いた傾向」と「注意したい点」をまとめたものです。
| 手法別の特徴と総括 | デジタル住民票NFT | ふるさと納税返礼品NFT | 観光スタンプラリー・訪問証明NFT | 御朱印・御城印NFT | 会員権型・財源確保型NFT |
|---|---|---|---|---|---|
| 成果まで結びついた傾向 | 人口を上回る申込を集めた事例(西川町13.4倍・富山市2.4倍)があり、関係人口の可視化に向く。継続コミュニティを設計すると定着しやすい | 返礼品の差別化・話題づくりに効く。会員権型・体験型にすると来訪や継続接点に発展しやすい | 低コストで職員運用しやすく、周遊率や回遊行動を測る指標が取りやすい | 参拝・来訪の記念として受け入れられやすく、シビックプライド発信と親和的 | 二次流通のロイヤリティを町の収入に回す継続財源の設計が可能(八千代町など) |
| 話題止まり・注意したい点 | 発行後の交流・特典を運営し続ける体制が要る。買って終わりだと関係が切れやすい | 返礼割合・地場産品などの総務省基準の対象。単価やアートの魅力だけに頼ると単発化しやすい | 配布数の公表がない事例が多く、来訪・消費への波及効果は測定設計しだい | 頒布数などの成果が非公開の事例が多い。神社・寺社が主体の民間事例と自治体施策の混同に注意 | 制度設計と法令確認の負担が大きい。買い手が限られると財源効果は限定的 |
共通して言えるのは、「NFTを配って終わり」にせず、発行後の交流・特典・効果測定まで含めて設計した事例ほど、関係人口の増加や周遊といった成果に結びついているという点です。逆に、話題性だけを狙った単発の発行は、初回の注目こそ集めても継続的な効果につながりにくい傾向があります。
一括ダウンロードする
自治体がNFTを導入する手順(6フェーズの見取り図)
ここからは、自治体がNFTを企画してから継続運営に乗せるまでを6つのフェーズに分けて解説します。庁内の企画会議や企画書にそのまま落とし込めるよう、各段階で「決めること」と「想定される論点」を整理しました。

| 自治体NFT導入の6フェーズ | ①目的設計 | ②事業スキーム整理 | ③発行・配布ツール選定 | ④販売・配布 | ⑤効果測定 | ⑥継続運営 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 決めること | 解決したい課題(関係人口・財源・観光・シビックプライド)と成功指標 | 発行主体(自治体/観光協会/地域づくり法人)、無償配布か有償販売か | ノーコードで自走するか、API組込か、伴走構築か。受け取りにウォレットが必要か | 配布チャネル(LINE・QR・ICカード・EC)、頒布のタイミングと場所 | 登録者数・保有者の属性・周遊行動・移住検討率などの計測 | 保有者への特典・交流・情報発信を続ける体制、翌年度以降の予算 |
| 想定される論点 | NFTを目的化せず、行政課題に紐づける。KPIを登録者数・応募倍率・周遊率などで具体化する | 暗号資産該当性・景品表示法・議会説明の要否を確認(次章の法令論点を参照) | 住民・観光客の多くは暗号資産に不慣れなため、受け取りのハードルを最小化する | 通信環境の弱い会場ではオフライン配布の可否を確認する | 発行時に測定できる仕組みを組み込んでおく。後付けは難しい | 「配って終わり」を避ける。担当課と外部パートナーの役割分担を決める |
特に重要なのは①の目的設計と⑥の継続運営です。前章の事例で見たとおり、成果に結びついた自治体は、発行後の交流やコミュニティ運営まで設計しています。単発のイベントで終わらせず、翌年度以降も続けられる体制と予算を初期段階で見込んでおくことが、話題止まりを避ける分かれ目になります。
この「NFTから入るのではなく、目的から入る」という順序は、企業や自治体の発行・配布を支援する現場でも意識されている点です。

正直なところ、NFTを目的化すると途中で止まりやすいです。「NFTをやりたい」という入り方だと、どこかで「本当にNFTじゃないといけないんだっけ?」という議論になって、そこで立ち止まってしまうことがある。一方で、「ユーザーの熱量を上げたい」「リピート施策をつくりたい」という目的が先にあれば、NFTは手段のひとつとして整理できるので、進め方はだいぶスムーズになります。
自治体がNFTを導入する費用と体制の当たり
「検討する価値があるか」を判断するには、費用相場の幅を押さえておくことが欠かせません。NFTの発行・配布に使うサービスの料金体系から、規模別のおおまかな当たりを示します。ただし、実際の費用はカスタマイズの有無や配布規模で大きく変わるため、正確な金額は各サービスへの問い合わせで確認してください。
- 小規模な観光スタンプラリー・記念配布:ノーコードの配布ツールを使えば、初期数十万円台+月額数万円〜十数万円ほどの規模から始められます。1,000枚単位の買い切り型や、配布枚数に応じたプランが用意されています。
- デジタル住民票・会員証の本格運用:継続的なコミュニティ運営や特典管理を伴う場合、月額のかかるプランや伴走支援を含む構成になり、年間で百万円台に及ぶこともあります。料金体系は、発行数に応じた従量型と、伴走支援の度合いで決まる型に分かれます。
- 独自マーケットプレイスを構築する本格販売:要件定義から開発・保守までを外部に委託して独自の販売基盤を持つ場合は、構築費用が個別見積もりとなり、導入期間も数か月単位を見込む必要があります。
体制面では、庁内の担当課(企画政策・DX推進・観光・地方創生など)が旗振り役となり、発行・配布の実務は外部パートナーに伴走してもらう形が一般的です。前章の事例でも、自治体が発行主体となりつつ、発行支援企業やプラットフォーム事業者が実務を担う分担が多く見られます。職員だけで完結させようとせず、企画設計・法令確認・運用改善のどこを外部に頼るかを最初に切り分けておくと、無理のない体制で始められます。
自治体がNFTを扱う際に押さえる法令・政策の論点
自治体がNFTを扱う際は、議会や住民への説明を求められる場面が出てきます。ここでは、暗号資産該当性・景品表示法・地方自治法という3つの法令論点と、国の政策の後押しを、一次情報にもとづいて整理します。担当者が説明資料に引用できる形を意識しています。検討の初期段階では要点だけ押さえ、企画が具体化してきたら該当箇所に戻って確認する読み方でも構いません。
暗号資産該当性・景品表示法・地方自治法の論点
まず、自治体が発行する多くのNFTは、原則として資金決済法上の「暗号資産」には該当しません。資金決済法第2条第14項は、暗号資産を「不特定の者に対して代価の弁済のために使用でき、かつ不特定の者と売買できる財産的価値」などと定義しており、1点ものや限定発行で、決済手段としての利用を想定していないNFTは、この要件に通常当てはまらないためです。
この判断基準は、金融庁の事務ガイドラインがより具体的に示しています。2023年3月の改正で、NFTが暗号資産に「該当しない」と考えられる条件が明記されました。
以下のイ及びロを充足するなど、社会通念上、法定通貨や暗号資産を用いて購入又は売却を行うことができる物品等にとどまると考えられるものについては、「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる」ものという要件は満たさない。
イ.発行者等において不特定の者に対して物品等の代価の弁済のために使用されない意図であることを明確にしていること
ロ.当該財産的価値の価格や数量、技術的特性・仕様等を総合考慮し、不特定の者に対して物品等の代価の弁済に使用し得る要素が限定的であること
出典(抜粋):金融庁「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)16 暗号資産交換業者関係」(2023年3月24日改正)
裏を返せば、同じNFTでも大量かつ低単価で発行し、決済手段として使える設計にすると暗号資産に該当し得る、という境界もこのガイドラインが示しています。規約で決済手段としての利用を禁止する、発行数量を限定するといった設計が、非該当を明確にするうえで有効です。最終的には利用形態に応じて個別に判断される点も原文に明記されているため、断定を避けたい場面ではこの一般原則を引くとよいでしょう。
次に景品表示法です。同法第2条第3項は、景品類を「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益」と定義しています。
来場者全員に無条件で配る純粋な無償配布は景品類に当たらない場合がある一方、寄付や購入・チケット購入の特典としてNFTを付ける設計は、取引に付随する経済上の利益として景品規制(総付景品・懸賞の限度額)に触れ得ます。
自治体の活動が「事業」に当たるかは活動の性質で個別判断となるため、配布設計に応じて要否を確認する姿勢が安全です。具体的な限度額を検討する際は、消費者庁の最新の運用基準もあわせて確認してください。
加えて、ふるさと納税の返礼品としてNFTを提供する場合は、景品表示法だけでなく、総務省が定めるふるさと納税の指定基準(返礼割合3割以下・地場産品基準など)の対象にもなります。返礼品NFTの適法性や持続性を検討する際は、総務省のふるさと納税ポータルで最新基準を確認しておく必要があります。
地方自治法の観点では、確実に言えるのは「NFT事業に予算を充てるなら議会の予算議決が必要」という点です。地方自治法第96条第1項は、予算を定めることや条例の制定改廃を議会の議決事件として定めています。
一方、発行するNFT自体が同法第237条の「財産(公有財産・物品・債権・基金)」に当たるか、その譲渡・無償配布に議会の議決を要するかは、トークンの性質やスキームによって変わり、自治体ごとに法制担当や顧問弁護士と個別に確認する必要があります。
「議会承認が要るのは主に予算面。NFTを財産として扱うかどうかは要確認」という整理が、実態に沿った説明になります。
出典・参考資料(4件)
国の政策による後押し
NFTの活用は、国の政策としても後押しされています。議会や住民に「国も推進している取り組み」と説明する際の根拠として、主要な政府文書を押さえておきましょう。
起点となったのは、2022年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針2022)です。
また、ブロックチェーン技術を基盤とするNFTやDAOの利用等の Web3.0の推進に向けた環境整備の検討を進める。
出典:経済財政運営と改革の基本方針2022(2022年6月7日 閣議決定)|内閣府
同じく2022年には、経済産業省が省内横断組織として「Web3.0政策推進室」を設置し、事業環境の課題を検討する体制を整えました。さらに、2022年12月に閣議決定された「デジタル田園都市国家構想総合戦略」では、地方公共団体への具体的な支援が明記されています。
Web3.0 と呼ばれるテクノロジーを活用した取組を検討している地方公共団体に対し、デジタル改革共創プラットフォーム等を活用した相談窓口を設けることで、地方公共団体によるテクノロジーを用いた地域の社会課題の解決につながる取組を支援する。
出典:デジタル田園都市国家構想総合戦略(2022年12月23日 閣議決定)|内閣官房
この流れは最新の政策にも引き継がれています。2025年6月に閣議決定された「地方創生2.0 基本構想」でも、NFTやブロックチェーンを地域資源の活用手段として位置づけています。骨太の方針2022を起点に、地方創生2.0が現時点の到達点という時系列で示すと、政策の後押しが一貫していることを説明できます。
出典・参考資料(4件)
サービス活用・解決策(発行・配布ツールの選び方と比較)
事例と論点を踏まえて自分の自治体でも企画を進めるなら、次は発行・配布に使うツールの選定です。NFT発行・配布支援サービスは、得意な用途や運用形態がそれぞれ異なります。供給側の技術で分類するのではなく、自治体側の運用条件で選ぶと自分に合うサービスが見えてきます。
発行・配布ツールを運用条件で選ぶ軸
選定にあたっては、次の3つの軸で自分の企画の条件を整理すると、候補を絞り込みやすくなります。
- 発行・運用の形態:職員がノーコードの管理画面で自走できるか、既存の観光アプリなどにAPIで組み込みたいか、独自の販売基盤を伴走で構築したいか。技術者がいない自治体では、ノーコードで自走できるツールが現実的です。
- 受け取りのハードル(ウォレット要否):住民や観光客の多くは暗号資産に不慣れです。ウォレットの用意や秘密鍵の管理が要るツールは受け取りの離脱を招きやすいため、無ウォレットで受け取れるかは重要な判断軸になります。
- 配布チャネルと体制:LINE・QRコード・ICカード・ECのどれで配るか、通信環境の弱い会場でも配れるか、そして企画設計から運用改善までの伴走が必要かどうか。自走できる体制か、伴走を求めるかで選ぶツールは変わります。
以下のスポット比較表では、自治体・観光・公共での活用に使える主要なサービスを、この運用条件の軸で比較しています。住民・観光客に低ハードルで配りたい軽量な配布ツールから、ふるさと納税や財源確保のために独自の販売基盤を本格的に構築するツールまで、目的の幅に合わせて選べるよう並べました。
| 比較項目 | Marbullコネクト | MintMonster | Commun(コミュン) | NFT Garden | NFT INFINITY |
|---|---|---|---|---|---|
| 発行・運用の形態 | 自走ノーコード+伴走支援(LINE公式アカウント連携) | 管理画面で運用+企画伴走(暗号資産の保有不要) | 自走ノーコード(ICカード・QRコードを設置するだけ) | ノーコードWeb画面+API組込(マルチチェーン対応) | 伴走構築(独自マーケットプレイスの開発支援) |
| 受け取り方法(ウォレット要否) | ウォレット不要(SMS認証・LINEミニアプリ) | ウォレット不要(QRコード+メールアドレス) | ウォレット不要(アプリのみ・ICカードでオフライン配布可) | ウォレット接続が前提の場面あり(生成APIで緩和) | ウォレット接続が前提(MetaMask等) |
| 得意な配布施策・用途 | 会員証・クーポン・デジタルスタンプ/継続的なファン接点づくり | クーポン・会員証・スタンプラリー/複数施策の統合管理 | 訪問証明NFT(SBT)/観光・周遊・イベント | 会員証・参加証明SBT/既存アプリ・システムへのAPI組込 | 返礼品・記念NFTの本格販売/二次流通ロイヤリティ設計 |
| 自治体・公共での実績 | 静岡県掛川市(周遊・生涯学習の体験設計) | 三重県明和町(竹神社「e御朱印」) | 佐賀県鹿島市・福岡/小倉/島原城の御城印NFTなど九州中心 | 佐賀県唐津市・伊万里市(からまりマルシェ/Snapshot併用) | 自治体実績は要確認(民間案件が中心) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る |
ここで取り上げたのは、自治体・観光・公共での活用に向く主要なサービスに絞ったものです。対応チェーンや料金体系、ノーコードで運用できるかまで含めて、より多くの発行・配布ツールを横並びで比較したい場合は、法人向けにツールをタイプ別に整理した比較記事もあわせて確認できます。
【法人向け】NFT発行・配布ツール比較13選|対応チェーン・料金・ノーコード可否で選ぶ
会員証やクーポン、デジタル特典、真贋証明、ファンコミュニティ——こうした施策の「手段」としてNFTを検討し始めたものの、発行・配布に使えるツールが多すぎて、どれが自社に合うのか判断しづらいと感じていませんか。対応ブロックチェーンやNFTの規…
自治体のNFT活用に使える主要サービス
ここからは、発行・配布に使える主要なサービスを個別に紹介します。各サービスの資料はまとめて請求できます。
1. Marbullコネクト(Marbull X株式会社)

Marbullコネクトは、公式LINEアカウント上のミニアプリとして会員証・クーポン・デジタルスタンプなどを発行・配布できるサービスです。エンドユーザーはSMS認証だけで利用を始められ、メールアドレスやウォレットの登録は不要なため、住民や観光客が迷わず受け取れます。
特徴は、コンサルティング出身のメンバーが企画設計から運用改善まで伴走する点です。掛川市のスモールモビリティ事業では、デジタル御朱印・スタンプラリー・地元高校生が作成したクイズを組み合わせた周遊体験にMarbullコネクトが採用され、掛川市の周遊事業自体は試行運用の後も期間を変えて続いています。
NFTの発行数で料金が変わらず、伴走支援の度合いで費用が決まる料金体系のため、配布規模を気にせず企画できる点も、自治体の周遊施策と相性が良いところです。
2. MintMonster(株式会社アツラエ)

クーポン・チケット・会員証・スタンプラリーなどをNFTとして配布できるプラットフォームがMintMonsterです。発行する自治体側は暗号資産を保有する必要がなく、受け取る住民・観光客もQRコードの読み取りとメールアドレスの入力だけでNFTを取得できます。
三重県明和町の竹神社「e御朱印」では、QRコードで受け取れる月替わりデザインの御朱印NFTを配布し、スタンプラリー形式で集めると地元店舗のクーポン等と交換できる仕組みに使われています。単発のNFT配布で終わらせず、来店・購入・アンケート回答といった条件を満たしたユーザーに配るミッション機能や効果測定機能を備え、複数の施策を1つの基盤で統合管理できる点を強みとしています。
料金は掲載情報にもとづく目安で、初期250,000〜500,000円+月額50,000〜200,000円(プランにより異なり、最新は要問い合わせ)です。
住民や観光客の多くは暗号資産に不慣れなため、受け取りのハードルをどこまで下げられるかは選定上の要点になります。この点について、提供元は設計の考え方を次のように説明しています。
MintMonsterではウォレット作成を意識させないUI/UXを設計していまして、NFTという言葉を「デジタルクーポン」や「参加証」といった日常的な言葉に置き換えることで、ITリテラシーを問わず誰もが参加できるように設計しています。実際に60代以上の方にもご利用いただいた実績があります。
3. Commun(コミュン)(合同会社bel/九州NFTラボ)

観光地・イベント・店舗などへの「訪問証明」を、譲渡できないNFT(SBT=他人に譲渡できないNFT)として配布・認証するのがCommun(コミュン)です。来訪者はアプリをインストールするだけで受け取れ、氏名やメールアドレスの入力も不要なため、受け取りのハードルを大きく下げられます。
大きな特徴は、ICカード(NFC)を使えば通信環境のない山頂や地下でも配布できる点です。QRコードによるオンライン配布とあわせて、会場の条件に応じて配布方法を選べます。
鹿島市のデジタル住民NFT、福岡城・小倉城・島原城のスマホ御城印NFTなど、九州エリアを中心に自治体・観光での実績を積んでいます。訪れた本人の記録として残る訪問証明を、確実に届けたい観光・周遊施策に向いたサービスです。
料金は1,000枚まで買い切り220,000円〜、継続利用は初期330,000円+月額19,800円が公表されています。
4. NFT Garden(Connectiv株式会社)

NFT Gardenは、ノーコードのWeb画面からも、APIからもNFT・SBTを発行できるマルチチェーン対応のプラットフォームです。決済はクレジットカードなどの法定通貨で完結し、料金にガス代(ブロックチェーンの取引手数料)を含むため、自治体側が暗号資産を用意する必要はありません。
強みは、既存の観光アプリや自社システムにAPIで組み込んでNFT/SBTを発行できる拡張性です。佐賀県唐津市・伊万里市とJR九州が連携した「からまりマルシェ」では、来場者の購買行動に連動したデジタルスタンプの記録に活用されました(イベント参加記録プラットフォーム「Snapshot」との併用案件です)。
会員証や参加証明といったSBTの用途に標準対応しており、開発体制を持つ、あるいは組み込みを前提とする自治体・観光団体に向いています。なお、受け取り側にはウォレット接続が前提となる場面があり、暗号資産に不慣れな住民向けの広域配布では、受け取り導線を事前に確認しておくと安心です。
料金はクレジットカード決済(ガス代込み)で月額10,000円(Growthプラン)〜150,000円(Businessプラン)から利用できます。
5. NFT INFINITY(株式会社OCT-PATH)

独自のNFTマーケットプレイスを構築したい事業者向けに、伴走型の開発支援を提供するのがNFT INFINITYです。要件定義・UI/UX設計・スマートコントラクト開発から、リリース後の保守運用までを株式会社OCT-PATHが一貫して支援します。
日本円決済に対応し、手数料やロイヤリティ(二次流通の還元)を柔軟に設計できるため、返礼品や記念NFTを継続的に販売し、二次流通も含めた本格的なNFT事業を独自の基盤で立ち上げたい場合の選択肢になります。
ノーコードで手軽に配布するツールとは位置づけが異なり、腰を据えて自主財源型の販売基盤をつくりたい自治体・団体に向いています。構築費用は個別見積もりで、カスタマイズなしの導入は最短3か月が目安です。
一方で、購入者側はMetaMaskなどのウォレット接続が前提となります。暗号資産に不慣れな住民・高齢層を主な受け取り手に想定する用途では、受け取りのハードルになりうる点に留意が必要です。
まとめ
自治体のNFT活用は、デジタル住民票による関係人口づくり、ふるさと納税返礼品や会員権型NFTによる財源確保、観光スタンプラリーや御朱印NFTによる誘客・シビックプライドの発信など、行政の課題に応じて手法が広がっています。成果に結びついた事例に共通するのは、NFTを配って終わりにせず、発行後の交流・特典・効果測定まで設計している点でした。
企画を進める際は、目的の設計から継続運営までの手順を押さえ、費用と体制の当たりを付けたうえで、暗号資産該当性・景品表示法・地方自治法の論点を確認しておくと、議会や住民への説明もスムーズになります。
発行・配布ツールは、ノーコードで自走するか伴走で構築するか、受け取りにウォレットが要るか、どのチャネルで配るかといった運用条件で選ぶと、自分の自治体に合うサービスが見つかります。まずは各サービスの資料をまとめて取り寄せ、自分の企画の条件と照らし合わせてみてください。
一括ダウンロードする
よくある質問(FAQ)
Q. 自治体NFTとは何ですか?
A. 自治体NFTとは、市区町村などの自治体が、関係人口づくりや財源確保、観光誘客といった地域課題の解決を目的に発行・活用するNFT(ブロックチェーン上で発行される非代替性トークン)です。デジタル住民票、ふるさと納税の返礼品、観光スタンプラリー、御朱印・御城印など、行政課題に結びつけた手法で使われており、NFTの発行自体が目的ではなく、あくまで課題解決の手段として位置づけられます。
Q. 自治体が発行するNFTは暗号資産に該当しますか?
A. 自治体が発行する多くのNFTは、1点ものや限定発行で決済手段としての利用を想定しないかぎり、原則として資金決済法上の暗号資産には該当しません。ただし設計しだいで該当しうるため、個別の判断が必要です。
資金決済法第2条第14項の定義と、金融庁の事務ガイドライン(2023年3月改正)が非該当と考えられる条件を示しています。規約で決済手段としての利用を禁止する、発行数量を限定するといった設計が非該当を明確にするうえで有効です。逆に、大量かつ低単価で発行し決済手段として使える設計にすると該当し得るため、最終的には利用形態に応じて個別に判断される点に留意してください。
Q. 自治体がNFTを発行するには議会の承認が必要ですか?
A. 自治体がNFT事業に取り組む場合、予算を充てるなら地方自治法第96条にもとづく予算の議決が必要です。一方、発行するNFT自体を「財産」として扱い、その譲渡や無償配布に議決を要するかは、トークンの性質やスキームによって変わるため、自治体ごとの確認が必要です。
NFTが地方自治法第237条の財産(公有財産・物品・債権・基金)に当たるかは個別判断になります。「議会承認が要るのは主に予算面。NFTを財産として扱うかどうかは要確認」という整理で、法制担当や顧問弁護士と個別に確認しておくと、実態に沿った議会説明になります。
出典・参考資料(1件)
Q. 住民や観光客が自治体NFTを受け取るのにウォレットは必要ですか?
A. 自治体NFTの受け取りにウォレットが要るかは使うツールによって異なり、SMS認証やメールアドレスの入力、アプリのインストールだけで受け取れる、ウォレット不要のサービスもあります。
住民や観光客の多くは暗号資産に不慣れなため、ウォレットの用意や秘密鍵の管理が要るツールは受け取りの離脱を招きやすくなります。無ウォレットで受け取れるかは重要な判断軸です。一方、独自マーケットプレイスでの販売型はMetaMaskなどのウォレット接続が前提になる場合があるため、想定する受け取り手(高齢層を含む住民か、Web3に慣れた層か)に合わせて選ぶ必要があります。
Q. ふるさと納税の返礼品として自治体NFTを出す際の注意点は何ですか?
A. ふるさと納税の返礼品としてNFTを提供する場合は、総務省が定めるふるさと納税の指定基準(返礼割合3割以下・地場産品基準など)の対象になる点に注意が必要です。
あわせて、寄付や購入の特典としてNFTを付ける設計は、取引に付随する経済上の利益として景品表示法の景品規制に触れうるかも確認しておくと安全です。単価やアートの魅力だけに頼ると単発化しやすいため、会員権型・体験型にして来訪や継続的な接点に発展させると、話題止まりを避けやすくなります。最新の指定基準は総務省のふるさと納税ポータルで確認してください。
Q. 自治体NFTを発行した後の継続運営で気をつけることは何ですか?
A. 自治体NFTは、配って終わりにせず、保有者への特典・交流・情報発信と効果測定まで続ける体制を初期段階で組んでおくことが、話題止まりを避ける分かれ目になります。
関係人口の増加や周遊といった成果に結びついた事例は、発行後のコミュニティ運営や継続的な接点まで設計しています。翌年度以降も続けられる予算と、庁内の担当課・外部パートナーの役割分担を最初に決めておくと、無理のない体制で運営を続けられます。
Q. 自治体がNFTを導入する費用はどのくらいかかりますか?
A. 自治体のNFT導入費用は規模と運用形態で幅があり、小規模な観光スタンプラリーや記念配布ならノーコードの配布ツールで数十万円台から、デジタル住民票や会員証の本格運用なら年間で百万円台に及ぶこともあります。
独自マーケットプレイスを構築して本格的に販売する場合は、要件定義から開発・保守までが個別見積もりとなり、導入期間も数か月単位を見込む必要があります。実際の費用はカスタマイズの有無や配布規模で大きく変わるため、正確な金額は各サービスへの問い合わせで確認してください。
NFT発行・配布支援サービスの料金・資料を一括チェック
MCB FinTechカタログでは、自治体のNFT発行・配布に使えるサービスの最新資料を無料で一括請求できます。ノーコードでの発行可否・受け取り時のウォレット要否・料金体系など、比較に必要な情報をまとめて把握できます。
一括ダウンロードする
MCB FinTechカタログに掲載しませんか?
MCB FinTechカタログでは、掲載企業様を募集しています。マネックスグループの金融実務ノウハウを活かした独自の評価軸と検索設計により、導入検討者が最適なサービスを効率的に発見できる法人向け比較プラットフォームです。掲載後は管理画面から料金表や導入事例を随時更新でき、常に最新の情報を訴求可能。まずは下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















