取引先に商品やサービスを納めて請求したのに、支払期日を過ぎても代金が入金されない。売掛金の未回収は、資金繰りだけでなく、催促のしづらさや進め方の分からなさで担当者を悩ませます。
債権回収が初めてだと、内容証明や支払督促といった言葉は聞いても、何から手をつければよいのか判断しにくいものです。本記事では、社内での初動から催促・督促の文例、法的手段の使い分け、時効への対処までを順を追って解説します。
まずは全体の流れをつかみ、そのまま使える文例で催促・督促に着手できる状態を目指しましょう。自社で手が回らないときの外部委託や、同じ未入金を繰り返さないための仕組みづくりまで見通せる内容にまとめています。
目次
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未入金が発生したときの回収の全体フロー
未入金への対応は、いきなり法的手段に進むのではなく、社内での確認から書面督促、法的手段へと段階を踏むのが基本です。まずは全体の流れを、最初にやることから順に確認しましょう。

- 請求書が正しく届いているか、自社の入金確認に漏れがないかを社内で確認する
- メールや電話で入金状況を確認し、支払いをお願いする(まずは穏当な催促)
- 反応がなければ、催促状・督促状を書面で送り、記録が残る形にする
- それでも支払われないときは、内容証明郵便で支払いを求める
- 支払督促・少額訴訟など、金額や状況に応じた法的手段に進む
- 確定した債務名義をもとに、強制執行で相手の財産から回収する
この流れは、相手の姿勢によって進み方が変わります。連絡が取れて支払う意思がありそうなら、支払期日の再設定や分割払いの交渉で回収できることが多く、関係を保ったまま解決しやすい局面です。
一方、催促を無視される、音信不通になる、相手の資金繰りに不安があるといった場合は、穏当な催促に時間をかけず、早めに書面督促・法的手段へ切り替えます。時間の経過は後述の時効にもつながるため、放置しないことが回収率を左右します。
原因を見極めて初動を決める
同じ未入金でも、原因によって最初の一手は変わります。原因を早い段階で見極めると、無駄な催促を避け、相手との関係も保ちやすくなります。
自社の請求ミス・行き違いの場合は、まず社内を確認します。請求書の送付漏れ、宛先・金額の誤り、入金があったのに消込が漏れているといったケースでは、相手を責める前に事実を整えることが先決です。誤りがあれば謝意を伝えて再請求します。
取引先の支払能力が低下している場合は、一括での回収に固執せず、支払計画の合意(分割払い・支払期日の再設定)を早めに取り付けるのが現実的です。他の債権者に先を越されないよう、書面で合意を残しておきます。
意図的に支払われていない場合は、穏当な催促を繰り返しても効果が薄いため、記録の残る書面督促や内容証明へ早めに移り、法的手段の準備に入ります。やり取りの証拠(契約書・発注書・納品書・請求書・督促の履歴)を整理しておきましょう。
催促・督促の進め方とそのまま使える文例
ここからは、温度が上がっていく順に、催促メール・催促状・督促状・内容証明郵便の文例を紹介します。日付・金額・振込先・支払わない場合の対応を書き換えれば、そのまま送れる形にしています。
催促メール(最初の穏当な連絡)
支払期日を過ぎてすぐの段階では、行き違いの可能性にも配慮した穏当な文面が向いています。請求内容・金額・支払期日を明記し、いつまでに振り込んでほしいかを具体的に示します。
件名:ご請求代金のお支払いに関するご確認(請求書番号:〇〇〇〇) 〇〇株式会社 〇〇部 〇〇様 いつも大変お世話になっております。株式会社△△の△△でございます。 〇〇年〇月〇日付でご請求いたしました下記の代金につきまして、 お支払期日を〇〇年〇月〇日とご案内しておりましたが、 本日時点で入金の確認が取れておりません。 請求書番号:〇〇〇〇 ご請求金額:〇〇〇,〇〇〇円(税込) お支払期日:〇〇年〇月〇日 行き違いですでにお支払いいただいている場合は、何卒ご容赦ください。 恐れ入りますが、〇〇年〇月〇日までに下記口座へお振り込みいただけますよう お願い申し上げます。 振込先:〇〇銀行〇〇支店 普通 〇〇〇〇〇〇〇 口座名義:カ)△△ ご不明な点がございましたら、△△までご連絡ください。 今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。 ────────────── 株式会社△△ △△部 △△ △△ TEL:03-0000-0000/Email:△△@example.co.jp ──────────────
催促状(書面での催促)
メールや電話で反応がないときは、記録が残る書面で改めて支払いを求めます。催促状は、督促状よりやわらかく、あくまで確認とお願いの位置づけです。差出日・支払期日・振込先を明記します。
〇〇年〇月〇日 〇〇株式会社 代表取締役 〇〇 〇〇 殿 株式会社△△ 代表取締役 △△ △△ ㊞ ご請求代金お支払いのお願い 拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。 さて、〇〇年〇月〇日付請求書(請求書番号〇〇〇〇)にてご請求いたしました 下記代金につきまして、お支払期日を過ぎましても入金の確認が取れておりません。 ご請求金額:金〇〇〇,〇〇〇円(税込) お支払期日:〇〇年〇月〇日 つきましては、〇〇年〇月〇日までに下記口座へお振り込みくださいますよう お願い申し上げます。なお、本状と行き違いでお支払い済みの場合は、 何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます。 振込先:〇〇銀行〇〇支店 普通 〇〇〇〇〇〇〇 口座名義 カ)△△ 敬具
督促状(支払わない場合の対応を予告する)
催促に応じない相手には、支払わない場合の対応を明確に予告する督促状に切り替えます。期限を区切り、期限までに支払いがなければ法的手段を検討する旨を伝えます。ここまでで支払われるケースも少なくありません。
〇〇年〇月〇日 〇〇株式会社 代表取締役 〇〇 〇〇 殿 株式会社△△ 代表取締役 △△ △△ ㊞ 督促状 拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。 〇〇年〇月〇日付請求書(請求書番号〇〇〇〇)にてご請求の下記代金につきまして、 再三のご案内にもかかわらず、本日現在お支払いをいただいておりません。 ご請求金額:金〇〇〇,〇〇〇円(税込) お支払期日:〇〇年〇月〇日 つきましては、〇〇年〇月〇日までに下記口座へ全額をお支払いくださいますよう 督促いたします。万一、上記期日までにお支払いおよびご連絡をいただけない場合は、 やむを得ず法的手続きを検討せざるを得ませんので、あらかじめご了承ください。 振込先:〇〇銀行〇〇支店 普通 〇〇〇〇〇〇〇 口座名義 カ)△△ 敬具
内容証明郵便(法的手段の前段として送る)
内容証明郵便は、「いつ・誰が・どんな内容の文書を送ったか」を郵便局が証明してくれる出し方です。配達証明を付けると、相手に届いた事実も残せます。督促状と同様に支払期日と支払わない場合の対応を明記し、正式な請求として送ります。
法的な効果として、内容証明による支払いの請求は民法上の「催告」にあたり、送達の時から6か月を経過するまでの間は、時効の完成が猶予されます。ただしこれは完成を先延ばしにするだけで、時効を更新(リセット)する効力はありません。詳しくは後述の時効の節で解説します。
作成時は、日本郵便が定める内容証明郵便の様式(1行あたり・1枚あたりの文字数の上限など)に沿って書きます。以下は本文の一例です。
通知書 当社は、貴社に対し、〇〇年〇月〇日付売買契約(または請負契約)に基づき、 下記の売掛金債権を有しております。 金〇〇〇,〇〇〇円(〇〇年〇月〇日付請求書番号〇〇〇〇) お支払期日 〇〇年〇月〇日 しかしながら、支払期日を経過した本日現在に至るも、上記代金のお支払いが ございません。つきましては、本書面到達後〇日以内に、上記金額を下記口座へ お支払いくださいますよう、改めて請求いたします。 振込先:〇〇銀行〇〇支店 普通 〇〇〇〇〇〇〇 口座名義 カ)△△ 万一、上記期限までにお支払いいただけない場合は、支払督促・訴訟等の 法的手続きに移行いたしますので、その旨申し添えます。 〇〇年〇月〇日 (差出人)東京都〇〇区〇〇 株式会社△△ 代表取締役 △△ △△ (宛先)東京都〇〇区〇〇 〇〇株式会社 代表取締役 〇〇 〇〇 殿
出典・参考資料(1件)
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回収できないときの法的手段と使い分け
書面での督促でも支払われないときは、法的手段を検討します。手段は複数あり、債権の金額・相手が争う姿勢かどうか・費用と時間のかけ方で選び分けます。まずは全体像を一覧で確認しましょう。
| 法的手段 | 内容証明郵便 | 支払督促 | 少額訴訟 | 民事調停 | 通常訴訟 | 強制執行 | 公正証書(強制執行認諾文言付) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 対象金額の目安 | 金額の制限なし | 金額の上限なし(金銭等の給付請求) | 60万円以下 | 金額の制限なし | 金額の制限なし(60万円超も可) | 金額の制限なし | 金額の制限なし |
| 費用の目安 | 郵便料金の実費 | 申立ての手数料は訴え提起の2分の1+郵送費 | 収入印紙代(訴額に応じる)・郵券 | 申立手数料・郵券 | 収入印紙代(訴額に応じる)・郵券・弁護士費用(依頼時) | 申立手数料・予納金 | 公証人手数料(目的の価額に応じる) |
| 期間の目安 | 数日で送付可能 | 相手が2週間以内に異議を出さなければ短期 | 原則1回の審理で即日判決 | 話合いの進み方による | 数か月〜1年以上 | 相手の財産を特定できるかによる | 作成自体は比較的短期 |
| 自分でできるか | できる(催告として時効の完成猶予の効果あり) | できる(書類審査のみ。異議が出ると通常訴訟へ移行) | できる(本人での利用を想定。同じ裁判所で年10回まで) | できる(相手が話合いに応じることが前提) | 可能だが、争いが複雑なら弁護士への依頼が現実的 | 債務名義が前提。手続きは専門的 | 相手の合意と双方の対応が前提 |
※上記は一般的な目安です。手数料・要件の詳細は裁判所・日本郵便・公証役場の公式情報や個別のケースにより異なります。
支払督促(書類審査だけで進められる)
支払督促は、債権者の申立てに基づき、裁判所書記官が相手方に支払いを命じる手続きです。書類審査のみで進むため裁判所へ出向く必要がなく、金額の上限もありません。申立先は相手方(債務者)の住所地を管轄する簡易裁判所です。
相手が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を申し立てなければ、仮執行宣言を経て強制執行に進めます。ただし相手が異議を出すと通常の民事訴訟へ移行するため、争ってくることが見込まれる相手には向きません。申立ての手数料は、訴えを起こす場合の2分の1です。たとえば請求額50万円なら、訴え提起の手数料5,000円に対し支払督促は2,500円です(このほか郵送費が別途かかります)。
出典・参考資料(3件)
少額訴訟(60万円以下を1回の審理で)
少額訴訟は、60万円以下の金銭の支払いを求める場合に使える簡易な訴訟です。原則として1回の審理で判決が出るため、通常訴訟より早く決着しやすいのが特徴です。対象金額は法律で次のように定められています。
(少額訴訟の要件等)
出典:民事訴訟法第三百六十八条|e-Gov 法令検索
第三百六十八条 簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない。
利用回数は、同じ簡易裁判所で1年に10回までに制限されています。判決には支払猶予や分割払い(判決言渡しの日から3年を超えない範囲)が付くこともあり、判決に不服があっても控訴はできず、同じ裁判所への異議申立てに限られます。相手が争う姿勢なら、通常訴訟へ移行する場合があります。
収入印紙代は請求額に応じて決まり、たとえば請求額50万円で5,000円、60万円で6,000円です(このほか予納郵券が必要で、金額は各裁判所により異なります)。
出典・参考資料(1件)
- 出典:少額訴訟|裁判所
通常訴訟(60万円超・争いが複雑なとき)
請求額が60万円を超える場合や、事実関係に争いがあって書類審査だけでは決着しない場合は、通常の民事訴訟で請求します。審理に数か月以上かかることが多く、主張・立証の準備も必要になるため、金額が大きい・争いが複雑なケースでは弁護士への依頼が現実的です。判決が確定すれば、これも強制執行の債務名義になります。
民事調停(話合いでの解決を図る)
民事調停は、裁判所で調停委員を交えて話し合い、双方の合意による解決を図る手続きです。簡易で費用も抑えやすい一方、相手が話合いに応じることが前提になります。相手が応じない、あるいは合意に至らなければ、回収は前に進みません。
出典・参考資料(1件)
強制執行と公正証書(実際に回収するための備え)
相手が判決などに従わないとき、相手の預金や不動産などから強制的に回収するのが強制執行です。強制執行を行うには、権利の存在を公的に示す「債務名義」が必要と法律で定められています。
(債務名義)
出典:民事執行法第二十二条|e-Gov 法令検索
第二十二条 強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
一 確定判決
二 仮執行の宣言を付した判決
三 (略)
四 仮執行の宣言を付した支払督促
五 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載され、又は記録されているもの(以下「執行証書」という。)
確定判決のほか、仮執行宣言を付した支払督促や、強制執行認諾文言付きの公正証書も債務名義になります。取引開始時や分割払いの合意時に、この公正証書を作っておくと、支払いが滞ったときに訴訟を経ずに強制執行へ進めます。ただし公正証書の作成には相手方の合意と双方の対応が必要です。
強制執行は、相手のどの財産(預貯金・不動産・売掛金など)を差し押さえるかを申立人が特定する必要があります。財産のありかが分からないときは、裁判所の財産開示手続や、金融機関などから口座情報等を得る第三者からの情報取得手続を使って、差押えの対象を調べる方法があります。
売掛金の時効(消滅時効)と、時効が迫っているときの対処
未入金を放置する最大のリスクは、時効で債権が消えてしまうことです。ここでは、売掛金の時効の期間と、時効が迫っているときに間に合わせる動き方を解説します。
売掛金は、権利を行使できることを知った時から5年間行使しないと、時効によって消滅するのが原則です。条文では、主観的な起算点からの5年と、客観的な起算点からの10年が定められています。
(債権等の消滅時効)
出典:民法第百六十六条|e-Gov 法令検索
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
売掛金は通常、支払期日に権利を行使できることを知っていたといえるため、実務上は5年が原則の目安になります。時効に間に合わせるには、「完成猶予」と「更新」という2つの仕組みの違いを押さえることが重要です。
| 仕組み | 完成猶予 | 更新 |
|---|---|---|
| 効果 | 一定期間、時効の完成を先延ばしにする(それまで進んだ期間はリセットされない) | それまで進んだ期間がリセットされ、ゼロから進行し直す |
| 代表的な手段 | 催告(内容証明など)=6か月 協議を行う旨の書面合意 裁判上の請求などの申立て | 債務の承認(一部弁済・支払猶予の申入れなど) 確定判決などによる権利の確定 |
完成猶予は、一定期間だけ時効の完成を先延ばしにするものです。前述のとおり、内容証明などによる催告があると、その時から6か月を経過するまでの間は時効が完成しません。
(催告による時効の完成猶予)
出典:民法第百五十条|e-Gov 法令検索
第百五十条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
催告を繰り返しても猶予は延びません。内容証明はあくまで6か月の時間稼ぎであり、その間に次の一手を打つ必要があります。相手と支払いの話合いを続けたい場合は、協議を行う旨を書面で合意すると、合意時から一定期間(最大で合意時から1年など)は時効の完成が猶予されます(民法第百五十一条)。
更新は、それまで進んだ時効の期間がリセットされ、新たにゼロから進行し直すものです。相手が債務を「承認」したとき、たとえば一部を支払う、支払猶予を申し入れる、残高確認書に署名するなどをすると、時効は更新されます。条文は「時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める」(民法第百五十二条)と定めています。
裁判上の請求・支払督促・民事調停も、それ自体で時効の完成猶予が生じ、確定判決などで権利が確定すれば時効が更新されます(民法第百四十七条)。時効が迫っているときは、内容証明で6か月の猶予を確保し、その間に支払督促や訴訟へ進むか、相手から承認を取り付ける動きが有効です。
出典・参考資料(3件)
未入金・未収金・売掛金の違い(用語整理)
回収を進めるうえで、似た言葉の違いも押さえておくと、社内や専門家とのやり取りがスムーズになります。日常的にはまとめて使われがちですが、会計上は区別されます。
売掛金は、本業の営業取引で商品やサービスを提供した対価として、後で受け取る代金の債権です。掛け取引(後払い)で発生し、企業間取引で最も一般的な債権にあたります。
未収金(未収入金)は、本業以外の取引、たとえば固定資産の売却などで生じた、まだ受け取っていない代金です。会計上は、売掛金が営業債権、未収入金が営業外の債権として区別されます。
未入金は、これらの代金が支払期日を過ぎても入金されていない状態を指す言葉です。実務では、売掛金が回収できていない状況を「未入金」と呼ぶことが多く、本記事もその意味で扱っています。
自社で手が回らないとき・再発を防ぐには
ここまでの手順を踏んでも回収しきれない、あるいは社内に人手や専門知識が足りないという場合は、外部の力を借りる選択肢があります。あわせて、同じ未入金を繰り返さない仕組みづくりも検討しましょう。
外部に頼るときの選択肢を正しく整理する
外部委託を考えるときは、それぞれの手段が「何をしてくれるのか」を正確に押さえることが大切です。委託先を分ける基準になるのが弁護士法です。報酬を得る目的で、他人の法律事件(争いのある債権回収の代理・和解など)を業として扱えるのは、原則として弁護士または弁護士法人に限られます(弁護士法第七十二条)。

弁護士は、相手が争ってくる、音信不通になっているなど、紛争性のある回収を代理できる正規の窓口です。内容証明の作成から交渉、訴訟・強制執行までを任せられます。費用は着手金と成功報酬が中心で、金額や回収見込みに見合うかを見て依頼を判断します。相談先は、各地の弁護士会が設ける法律相談や、法テラス(日本司法支援センター)の窓口から探せます。
請求代行・督促自動化サービスは、紛争になっていない通常の請求・集金業務の委託です。請求書の発行・送付、入金の消込、支払期日前後のリマインドや督促(メール・SMS・電話・郵送)を代行・自動化します。あくまで集金業務の範囲で、紛争性が生じた場合は弁護士に引き継ぐ前提です。
なお「債権回収会社(サービサー)」という言葉を見かけますが、これは法務大臣の許可を受けた会社が、サービサー法で定められた「特定金銭債権」(金融機関の貸付債権・リース・クレジットなど)を扱うものです。一般の商取引で生じた売掛金は対象に含まれないため、自社の売掛金回収を委託する先としては想定されていません。
ファクタリング・売掛保証は、回収を代行するものではありません。ファクタリングは売掛金を早期に資金化する手段、売掛保証は取引前に付けておき貸し倒れを補填する仕組みで、いずれも資金繰りや将来のリスク移転が目的です。すでに発生した未入金の回収そのものには直接は結びつかない点に注意が必要です。
出典・参考資料(2件)
同じ未入金を繰り返さない仕組みをつくる
回収に追われないためには、未入金が起きにくい取引の設計が有効です。仕組みで防げる部分を先に整えておくと、督促にかける時間そのものを減らせます。
与信管理は、取引を始める前に相手の支払能力を確認し、取引額の上限(与信限度)を設ける取り組みです。新規取引先や取引額の大きい相手ほど、事前の信用調査が効いてきます。具体的な進め方や与信限度額の決め方は、中小企業の与信管理のやり方で詳しく解説しています。
請求・決済代行の活用も再発防止につながります。口座振替や督促自動化、請求代行を使って、請求から入金消込、督促までを標準化すると、確認漏れや督促の抜けが減り、担当者への依存も抑えられます。
契約書の条項整備も欠かせません。分割払いで一度でも滞ったら残額を一括請求できる「期限の利益喪失条項」、代金完済まで商品の所有権を売主に残す「所有権留保」、相手への支払債務と相殺できる「相殺の予約」などを盛り込んでおくと、いざというときの回収がしやすくなります。
ここからは、督促の実行や請求・回収の代行に対応する具体的なサービスを紹介します。多数の相手へ繰り返す督促の仕組み化・外部化に向くものから、督促・回収に加えて売掛金の保証まで踏み込むものまで、対応範囲はさまざまです。特定の1社への未入金をまず自力で回収する段階では前述の文例と支払督促・少額訴訟が基本になるため、外部委託は状況に応じて使い分け、まずは主な選択肢を比較表で確認しましょう。
| サービス名 | DHKクラウドオートコール | オーロラSMS by メディアSMS | KDDI Message Cast | 請求まるなげロボ | 債権回収ロボ |
|---|---|---|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社電話放送局 | 株式会社メディア4u | KDDI株式会社 (Supership共同運営) | 株式会社ROBOT PAYMENT | 株式会社ROBOT PAYMENT |
| 種類(役割) | 督促の連絡手段 | 督促の連絡手段 | 督促の連絡手段 | 請求〜回収の代行 | 督促〜回収の自動化 |
| 督促・対応チャネル | オートコール(自動音声) SMS | SMS +メッセージ(RCS) | SMS +メッセージ(RCS) | メール・電話 弁護士法人による対応 | メール・SMS オートコール・郵送 |
| 初期費用 | 50,000円〜 | 0円 | 0円 | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
| 月額費用 | 50,000円〜 (月1,000件まで含む) | 0円(基本料なし) | 0円(基本料なし) | 月額利用料あり (請求件数に応じ変動) | 要お問い合わせ |
| 従量・手数料 | 応答課金 固定21円・携帯32円/件 (1,001件目〜) | SMS送信成功分の従量制 (単価は要お問い合わせ) | SMS 9.35円(税込)〜 (到達課金) | 手数料1.0%〜 (商材・金額により個別算定) | 要お問い合わせ |
| 売掛金保証 | × | × | × | ●100%保証(適格・与信通過債権) | × |
| 外部連携(API) | ●債権管理システム連携 | ●Salesforce・kintone等と連携 | ●HTTPS API・Salesforce/ServiceNow連携 | ●API連携・Salesforce連携 | ●外部API連携(オプション) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 |
1. DHKクラウドオートコール(株式会社電話放送局)

株式会社電話放送局が提供する、未入金・滞納者への支払い督促を自動音声で一斉架電するオートコール(自動音声応答)サービスです。固定電話番号にはオートコール、携帯電話番号にはSMSと、対象に合わせて督促チャネルを使い分けられます。
あらかじめ用意した発信リストに自動で架電し、入金確認や支払い案内を人手をかけずに大量・定時に実施できます。料金は月額50,000円〜(月1,000件までの応答を含む)で、応答があった分だけ課金される応答課金型のため、郵送のように全件へコストが発生しません。債権管理システムとのAPI連携により、対象リストの登録から架電結果の取り込みまでを自動化できます。
督促の架電では、処理できる件数だけでなく、案内の仕方が相手の受け止めをどう左右するかも運用の分かれ目になります。オートコールによる督促の設計について、電話放送局の前田氏は次のように述べています。

入金案内や督促は、伝える内容が定型化しやすい一方で、案内の仕方によってはトラブルや苦情につながりやすい業務です。一方で、入金コールは人が案内する場合と比べて、トラブルや苦情を軽減できる側面もあります。だからこそ、まずは“自動化しても顧客体験を損ねにくい設計”をすることが大切だと考えています。
オートコールは使い方を間違えると社会問題になりかねません。だから当社としては、用途の相性を見極めて、やめた方がいいケースは止める。その線引きも含めて一緒に考えています。
2. オーロラSMS by メディアSMS(株式会社メディア4u)

オーロラSMSは、株式会社メディア4uが法人向けに提供するSMS配信サービスです。支払いのリマインドや督促の連絡を、相手の携帯電話番号あてに直接届けられます。
国内4キャリア(NTTドコモ・KDDI au・ソフトバンク・楽天モバイル)との直接接続による設計で、公式は到達率99.9%(自社の検証試験による、受信拒否・圏外・電源OFFを除く)としています。初期費用0円・月額基本料0円で、送信が成功した分のみ課金される従量制です。督促の一次連絡を、封書より低コストかつ短時間で送れる手段として活用できます。
3. KDDI Message Cast(KDDI株式会社)

KDDI株式会社がSupership株式会社と共同運営する、法人向けのメッセージ配信サービスです。SMS・RCS・+メッセージを、相手の携帯電話番号あてに一斉または自動で配信できます。
公式のユースケースでは、締切日に料金未納者へSMSで通知し支払いを促す督促連絡が挙げられています。キャリア公認の共通番号「0005」で携帯4社に対応し、到達した分だけ課金する到達課金型(SMSは9.35円(税込)〜)を採用。初期費用・月額基本料はいずれも0円で始められます。
4. 請求まるなげロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

請求まるなげロボは、株式会社ROBOT PAYMENTが企業間取引の請求業務を丸ごと引き受けるアウトソーシングサービスです。督促に追われる状況そのものを、外部委託で減らしたい企業に向いています。
与信審査から請求書の発行・送付、代金回収、入金消込、督促(メール・電話に加え弁護士法人による対応)までを代行します。自社審査で適格と判断され、かつ与信を通過した債権については、売掛金を100%保証します(適格債権でないものは除く)。手数料は1.0%〜で、販売商品や金額により個別に算定されます。回収の手間と貸し倒れリスクの両方を軽減したい場合の選択肢です。
5. 債権回収ロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

未入金の督促から回収までの業務を自動化するSaaSで、株式会社ROBOT PAYMENTが2026年3月に提供を開始しました。属人化しやすく心理的負担も大きい電話・郵送の督促を、仕組みとして標準化できます。
メール・SMS・オートコール(自動音声)・郵送の4つのチャネルを組み合わせ、債務者の属性や債権額に応じた督促シナリオを設計して自動で実行します。督促の状況や受信・返信の履歴を一元管理でき、いつ・誰に・どの段階まで連絡したかを追えます。請求管理側のシステムや外部の販売管理システムと連携し、未収債権の抽出から督促までをつなぐこともできます。
ここで取り上げたもの以外にも、督促の自動化から請求・回収の代行まで、対応できるサービスは複数あります。以下の記事では、依頼先のタイプ別の選び方や費用相場、督促の自動化までを一覧で比較しているので、外部委託を本格的に検討する方はあわせてご覧ください。
まとめ
未入金の回収は、社内での確認から穏当な催促、書面督促、内容証明、そして金額や状況に応じた法的手段へと、段階を踏んで進めるのが基本です。相手が払う気配があるか、無視するかで進め方を切り替え、放置しないことが回収率を左右します。
本記事の文例や法的手段の使い分けを手がかりに、まずは自社でできる催促・督促に着手しましょう。時効が迫っているときは内容証明で6か月の猶予を確保し、その間に次の手続きへ進みます。自社で手が回らない場合は弁護士や請求・督促の代行を検討し、あわせて与信管理や契約条項の整備で再発を防ぐと、回収に追われない体制に近づきます。未入金は時間との勝負です。放置せず、今日できる一歩から着手してください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 未入金とは何ですか?
A. 未入金とは、商品やサービスの代金が、支払期日を過ぎても入金されていない状態を指す言葉です。実務では、掛け取引(後払い)で生じた売掛金が回収できていない状況を未入金と呼ぶことが多く、放置すると資金繰りの悪化や、時効による債権の消滅につながります。
Q. 未入金の回収は、どこまで自社でできますか?
A. 未入金の回収は、社内での確認・催促から、催促状・督促状・内容証明の送付、支払督促や少額訴訟の申立てまで、多くを自社で進められます。書類審査だけで進む支払督促や、60万円以下を対象とする少額訴訟は、本人での利用が想定された手続きです。一方、相手が支払いを争ってくる、音信不通になっている、金額が大きく争いが複雑といった場合は、代理・和解を業として行える弁護士に依頼するのが現実的です。
Q. 内容証明郵便を送れば、売掛金の時効はリセット(更新)されますか?
A. 内容証明郵便による請求は、時効を更新(リセット)する効力はなく、送達の時から6か月の間だけ時効の完成を先延ばしにする「催告」にとどまります。時効を更新するには、その6か月の間に支払督促や訴訟などの裁判上の請求へ進んで権利を確定させるか、相手から債務の承認(一部弁済・支払猶予の申入れなど)を得る必要があります。
出典・参考資料(1件)
Q. 少額訴訟と支払督促は、どちらを選べばよいですか?
A. 60万円以下の金額を1回の審理で早く決着させたいなら少額訴訟、金額の上限なく書類審査だけで進めたいなら支払督促が向いています。ただしどちらも、相手が異議を出したり争う姿勢を見せたりすると、通常の民事訴訟へ移行します。相手が支払い自体は認めていて本格的な反論が見込まれない場合に効果的で、はじめから激しく争ってくることが見込まれる相手には、通常訴訟や弁護士への相談を検討します。
Q. 売掛金の回収を債権回収会社(サービサー)に依頼できますか?
A. 一般の商取引で生じた売掛金は、債権回収会社(サービサー)が扱える「特定金銭債権」に含まれないため、サービサーへの委託は想定されていません。サービサーが管理・回収できるのは、金融機関の貸付債権やリース・クレジットなどに限られます。争いのある売掛金の回収を外部に任せたい場合は弁護士が正規の窓口で、紛争になっていない通常の請求・集金業務であれば、請求代行・督促自動化サービスを利用できます。
出典・参考資料(2件)
Q. ファクタリングや売掛保証で未入金を回収できますか?
A. ファクタリングや売掛保証は、すでに発生した未入金の回収そのものを代行する仕組みではありません。ファクタリングは売掛金を支払期日前に早期資金化する手段、売掛保証は取引前に付けておいて貸し倒れを補填する仕組みで、いずれも資金繰りや将来のリスク移転が目的です。すでに起きている未入金を回収したい場合は、弁護士や請求代行・督促自動化サービスが対象になります。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















