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FSCP(決算・財務報告プロセスに係る内部統制)とは?全社的FSCPと固有プロセスの違い・評価方法を解説

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上場準備や上場後のJ-SOX(内部統制報告制度)対応を進めていると、監査法人の資料や社内文書に「FSCP」「決算・財務報告プロセスに係る内部統制」という言葉が出てきます。全社的な内部統制や業務プロセスに係る内部統制とどう違うのか、自分は何をどう評価すればよいのかが曖昧なまま、手が止まりがちです。

本記事では、FSCP(決算・財務報告プロセスに係る内部統制)が何を指し、内部統制のどこに位置づくのかを結論から整理します。さらに、全社的FSCPと個別決算業務プロセスの線引きから、評価方法、統制項目、2024年改訂までを順に解説します。

制度の全体像を押さえたうえで、評価の文書化や証憑の管理を毎期続けていく負担をどう軽くするか、その手段となるツールの選択肢までを一度に確認できる構成です。自社の決算・財務報告プロセスの評価を進める足がかりとしてご活用ください。

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FSCP(決算・財務報告プロセスに係る内部統制)とは

FSCPとは、決算・財務報告プロセスに係る内部統制を指す実務上の呼称です。総勘定元帳から財務諸表を作り、連結や開示までを仕上げていく決算・財務報告の一連の手続に組み込まれた統制のことで、J-SOX(内部統制報告制度)で評価する内部統制の一つにあたります。

実施基準は、決算・財務報告プロセスを「主として経理部門が担当する決算・財務報告に係る業務プロセス」と位置づけています。日々の取引を処理する業務プロセスとは別に、それらを集約して決算を締め、財務諸表を組み上げる段階に焦点を当てた統制です。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(令和5年改訂)Ⅱ.2.(2)|金融庁(PDF)

決算・財務報告プロセスに係る内部統制は、財務報告の信頼性に関して非常に重要な業務プロセスと位置づけられています。日常の取引を記録する業務プロセスの統制が有効でも、決算や連結、開示の段階で誤りが生じれば、最終的な財務諸表の信頼性は損なわれます。だからこそ、決算・財務報告プロセスは独立して評価の対象になります。

FSCPは内部統制のどこに位置するか

J-SOXで評価する内部統制は、実務上いくつかの区分で整理されます。全体像の中でFSCPがどこにあたるのかを押さえておくと、評価の作業を切り分けやすくなります。

  • 全社的な内部統制(ELC/CLC):企業集団全体に広く影響を及ぼす内部統制。ELC(Entity Level Control)とCLC(Company Level Control)はどちらも同じものを指す実務上の呼称です。評価の起点になります。
  • 決算・財務報告プロセスに係る内部統制(FSCP):決算から財務諸表作成・連結・開示までの手続に組み込まれた統制。本記事のテーマです。
  • 業務プロセスに係る内部統制(PLC):販売・購買・在庫といった日常の業務プロセスに組み込まれた統制。
  • IT全般統制(ITGC):これらの統制を支える情報システムの統制。
内部統制の区分とFSCPの位置を示す図。上段に全社的な内部統制(ELC/CLC、企業集団全体に影響・評価の起点)、中段に決算・財務報告プロセス(FSCP、主に経理部門が担当)と業務プロセスに係る内部統制(PLC、日常の販売・購買・在庫)、下段にIT全般統制(ITGC、これらを支える情報システムの統制)を配置し、FSCPを本記事のテーマとして強調している。

FSCPは、日常の業務プロセス統制とは別に、決算という節目で財務諸表がどのように組み上がるかに着目した統制です。経理部門が主に担う点でも、販売や購買の現場に組み込まれた統制とは性格が異なります。

FSCP・FCRP・全社的FSCP・固有プロセスの呼び方を整理する

この領域は略称や呼び方が記事ごとに揺れており、戸惑いの原因になりがちです。先に用語を整理しておきます。

  • FSCP/FCRP:いずれも「決算・財務報告プロセス(に係る内部統制)」を指す実務上の略称です。FSCPはFinancial Statement Closing Process、FCRPはFinancial Closing and Reporting Processといった英語表記の頭字として使われますが、英語のつづりは資料により一定せず、実施基準の原文にも略称は登場しません(原文の用語は一貫して「決算・財務報告プロセス」)。どちらの表記も同じ対象を指すと考えて差し支えありません。
  • 全社的FSCP(全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセス):決算・財務報告プロセスのうち、全社的な観点で評価することが適切なもの。全社的な内部統制に準じて評価します。
  • 固有プロセス(個別決算業務プロセス):全社的な観点で評価する部分以外の決算・財務報告プロセス。それ自体を固有の業務プロセスとして評価します。

このようにFSCPは一枚岩ではなく、「全社的な観点で評価する部分」と「固有の業務プロセスとして評価する部分」の2つに分かれます。この線引きが、FSCP対応で最初につまずきやすいところです。次の章で詳しく見ていきます。

全社的FSCPと個別決算業務プロセスの違い

ここからは、FSCPの2つの区分の違いを整理します。実施基準は、決算・財務報告プロセスのうち全社的な観点で評価することが適切なものは全社的な内部統制に準じて評価し、それ以外は固有の業務プロセスとして評価する、と定めています。

FSCPが2つに分かれることと、どちらで評価するかの目安を示す図。上にFSCP(決算・財務報告プロセス)を置き、左に全社的FSCP(全社的な観点で評価、仕分けの目安は全社共通で財務諸表を組み上げる手続=総勘定元帳から財務諸表・連結・開示、チェックシート方式)、右に個別決算業務プロセス(固有の業務プロセスとして評価、仕分けの目安は見積り・経営者の判断が入り金額影響が大きい個別の勘定科目、3点セットで文書化)を配置している。

決算・財務報告に係る業務プロセスのうち、全社的な観点で評価することが適切と考えられるものについては、全社的な内部統制に準じて、全社的な観点で評価が行われることとなるが、それ以外の決算・財務報告プロセスについては、それ自体を固有の業務プロセスとして評価することとなる。

出典:企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(令和5年改訂)Ⅱ.3(3)|金融庁

この2区分は、対象とするプロセスも評価のやり方も異なります。要点を対比で整理します。

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観点対象評価の位置づけ評価方式(実務上の呼称)評価の進め方
全社的FSCP(全社的な観点で評価)総勘定元帳から財務諸表作成、連結、開示など、全社共通の決算手続全社的な内部統制に準じて評価チェックシート方式が中心評価項目を定めたチェックリストで整備・運用状況を確認
個別決算業務プロセス(固有プロセス)見積りや経営者の予測を伴う重要な勘定科目など、個別の決算業務プロセス固有の業務プロセスとして評価3点セット(業務記述書・業務フロー図・RCM)が中心プロセスを文書化し、統制の整備・運用状況を確認

※評価方式の呼称(チェックシート方式・3点セット)は実務上の通称です。詳細は後述します。

全社的側で評価する3つの手続

全社的な観点で評価することが適切な決算・財務報告プロセスについて、実施基準は例として次の手続を挙げています。

(注)全社的な観点で評価することが適切と考えられる決算・財務報告プロセスには、例えば、以下のような手続が含まれる。
・総勘定元帳から財務諸表を作成する手続
・連結修正、報告書の結合及び組替など連結財務諸表作成のための仕訳とその内容を記録する手続
・財務諸表に関連する開示事項を記載するための手続

出典:企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(令和5年改訂)Ⅱ.2.(2)|金融庁

これは「例えば」として挙げられた例示であり、この3つに限る趣旨ではありません。自社の決算手続のうち、全社共通で財務諸表の組み上げに関わる部分がこれにあたると考えると当てはめやすくなります。

固有プロセスに回る勘定科目と線引きの考え方

一方で、見積りや経営者の予測を伴う重要な勘定科目に関わる決算業務は、固有の業務プロセスとして個別に評価対象に加えることが検討されます。実施基準は、追加的に評価対象へ含めることを検討するプロセスの例として次を挙げています。

見積りや経営者による予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセス 例えば、引当金や固定資産の減損損失、繰延税金資産(負債)など見積りや経営者による予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセスで、財務報告に及ぼす影響が最終的に大きくなる可能性があるものは、追加的に評価対象に含めることを検討する。

出典:企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(令和5年改訂)Ⅱ.2.(2)②|金融庁

引当金、固定資産の減損損失、繰延税金資産といった科目は、見積りや経営者の判断が入り込み、金額が財務諸表に与える影響も大きくなりがちです。こうした科目に関わる決算業務は、全社共通の手続としてまとめて評価するより、個別のプロセスとして固有に評価するほうが実態に合います。

自社の決算項目をどちらで評価するかは、「全社共通で財務諸表を組み上げる手続か」「見積りや経営者の判断が入り、金額的な影響が大きい個別の科目か」を目安に仕分けると判断しやすくなります。線引きに迷う科目は、監査法人と早めにすり合わせておくと、後の評価範囲の確定がスムーズです。

全社的FSCPと個別決算業務プロセスの評価方法

ここからは、2つの区分それぞれの評価の進め方を見ていきます。評価方式の呼び方は実務で定着したものが使われますが、実施基準の原文の用語とあわせて理解しておくと、監査法人とのやり取りで食い違いにくくなります。

全社的FSCP:チェックシート方式で評価する

全社的FSCPは、全社的な内部統制に準じて評価します。評価項目を定めたチェックリスト(チェックシート)を作り、決算・財務報告に関わる体制や手続が整備され、運用されているかを確認していく進め方が中心です。全社的な内部統制の評価と同じ考え方のため、「チェックシート方式」と呼ばれます。

全社的な観点で評価するため、個別の取引を多数サンプリングして検証するより、体制・手続が組織として整っているかをチェック項目で確認する形になります。

個別決算業務プロセス:3点セットで文書化して評価する

個別決算業務プロセス(固有プロセス)は、業務プロセスに係る内部統制と同じように、プロセスを文書化して整備・運用状況を評価します。実務ではこの文書化に使う3つの文書を「3点セット」と呼びます。

  • 業務記述書:決算業務の流れを文章で記述したもの。
  • 業務フロー図(フローチャート):業務の流れを図で示したもの。
  • RCM(リスク・コントロール・マトリクス):各プロセスのリスクと、それに対応する統制を一覧にしたもの。

3点セットやチェックシート方式という呼び方は実務で定着した通称で、実施基準の条文に明記された用語ではありません。実施基準が文書化の図表の例として挙げているのは、業務の流れ図・業務記述書・リスクと統制の対応です。慣行の呼称と原文の用語を対応づけて理解しておくと、監査法人の指摘や社内文書との照合で混乱しにくくなります。

出典・参考資料(1件)
  • 参考資料:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに実施基準の改訂について(意見書・実施基準を収録)Ⅱ 参考2・参考3|金融庁(PDF)

決算は評価実例が少ない—運用評価の実務上の勘所

FSCPの運用状況の評価には、他の内部統制にはない難しさがあります。決算・財務報告の手続は月次・四半期・年次といった頻度で行われ、日常的に反復する取引と比べると実施回数が少ないため、評価に使える実例が集まりにくいからです。実施基準もこの点に触れています。

決算・財務報告プロセスに係る内部統制は、財務報告の信頼性に関して非常に重要な業務プロセスであることに加え、その実施頻度が日常的な取引に関連する業務プロセスなどに比して低いことから評価できる実例の数は少ないものとなる。したがって、決算・財務報告プロセスに係る内部統制に対しては、一般に、他の内部統制よりも慎重に運用状況の評価を行う必要がある。

出典:企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(令和5年改訂)Ⅱ.3(3)|金融庁

日常反復する取引の統制評価では、監査人の試査で統制上の要点ごとに一定数のサンプルを抽出する考え方があり、実施基準は90%の信頼度を得る例として少なくとも25件という目安を示しています。ただしこれは日常反復継続する取引を前提とした例であり、実施頻度の低いFSCPにはそのまま当てはまりません。

FSCPでは、年次の手続は年1回、四半期の手続はその各回といったように、実施されたそのつどの少ない実例を、一件ずつ丁寧に確認していく姿勢が求められます。

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FSCPの統制項目チェックリスト(決算体制・単体/連結・開示)

ここからは、FSCPの評価で実際に確認していく統制項目を、決算体制・単体/連結決算・開示の3つの区分で整理します。自社のチェックリストを作る出発点として活用してください(自社の決算手続に合わせて項目を加除修正してください)。

決算体制に関する統制項目

決算を適切に進めるための体制やルールが整っているかが確認ポイントになります。

  • 経理規程・会計方針が文書化され、最新の会計基準を反映して更新されているか
  • 決算マニュアル・決算スケジュールが整備され、担当と期限が明確か
  • 連結の範囲(子会社・関連会社)が適切に把握・更新されているか
  • 決算に関わる担当者の役割分担と、作成者と承認者を分ける体制が整っているか

単体・連結決算に関する統制項目

数値の正確性を担保する統制が、決算の各工程で働いているかどうかが論点です。

  • 仕訳・決算整理のダブルチェックと承認が行われているか
  • 会計システムのアクセス権限が職務に応じて適切に設定されているか
  • 総勘定元帳と補助簿・残高の照合、残高証明書との突合が行われているか
  • 前期比較や予算比較などの比率分析で、異常な増減を検知できているか
  • 連結仕訳(連結修正・組替)の作成・承認が記録されているか

開示に関する統制項目

財務諸表と開示書類が正しく作成・承認されているかどうかを見ていきます。

  • 開示チェックリストにもとづき、注記を含む開示事項の網羅性が確認されているか
  • 財務諸表と開示書類の数値の整合性がチェックされているか
  • 取締役会の決議など、開示に必要な承認手続が行われているか

これらは実務で整備される統制項目の例です。全社共通で財務諸表を組み上げる手続は全社的FSCPのチェックリストに、見積りを伴う個別の勘定科目の手続は固有プロセスの文書化に振り分けます。こうして整理していくと、自社のFSCP全体を漏れなくカバーしやすくなります。

FSCPの不備・開示すべき重要な不備と評価範囲(2024年改訂を含む)

FSCPの評価で不備が見つかったとき、それがどの程度の重みを持つのか、そして評価範囲をどう決めるのかを整理します。あわせて、2024年4月1日以後開始する事業年度から適用された改訂実施基準で変わった点を確認します。

不備・開示すべき重要な不備になるとどうなるか

内部統制の不備は、単独で、あるいは複数が合わさって、適正な財務報告を妨げ、結果として「開示すべき重要な不備」となる可能性があります。実施基準は次のように説明しています。

内部統制の不備は単独で、又は複数合わさって、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準及び財務報告を規制する法令に準拠して取引を記録、処理及び報告することを阻害し、結果として開示すべき重要な不備となる可能性がある。

出典:企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(令和5年改訂)Ⅱ.1.②|金融庁

「開示すべき重要な不備」は、かつて「重要な欠陥」と呼ばれていた用語が制度改訂の際に改められたものです。古い資料や解説記事では「重要な欠陥」と表記されていることがありますが、同じ対象を指します。開示すべき重要な不備があると判断された場合、内部統制報告書で「内部統制は有効でない」旨を開示することになります。

決算・財務報告プロセスは、財務報告の信頼性に直結する重要な業務プロセスです。ここで見つかった不備は、質的・金額的な重要性に照らして、開示すべき重要な不備に該当しないかを慎重に判断する必要があります。

評価範囲の決め方(FSCPを評価範囲にどう含めるか)

全社的な観点で評価するFSCPは、全社的な内部統制に準じて、原則すべての事業拠点を対象に評価します。一方、固有の業務プロセスとして評価する部分は、重要性に応じて評価対象を絞り込みます。実施基準は、各業務プロセスの金額を合算しても連結売上高のおおむね5%程度以下となる業務プロセスは、財務報告への影響が僅少なものとして評価の対象から外す取扱いもありうるとしたうえで、次のように注意しています。

なお、この「おおむね5%程度」については機械的に適用すべきでないことに留意する。

出典:企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(令和5年改訂)Ⅱ.2.(2)②|金融庁

この「おおむね5%程度」はあくまで一つの目安で、評価対象は金額の大きさだけで決まるわけではありません。見積りを伴う重要な勘定科目のように金額基準だけでは拾いきれないリスクは、質的な重要性も含めて評価対象に加えるかを検討します。なお、ここでの金額基準は固有の決算業務プロセスを評価範囲に加えるかどうかの目安であり、見つかった不備が重大かどうかを測る基準(連結税引前利益の概ね5%程度)とは別のものです。

2024年4月の実施基準改訂で変わった点

実施基準は2023年(令和5年)4月7日に改訂され、2024年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。3月決算の会社であれば、2025年3月期が改訂後の実施基準による初回の評価にあたります。

改訂基準及び改訂実施基準は、令和6(2024)年4月1日以後開始する事業年度における財務報告に係る内部統制の評価及び監査から適用する。

出典:企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに実施基準の改訂について(意見書)」前文 四|金融庁

改訂の内容は多岐にわたりますが、決算・財務報告プロセスの評価範囲に直接関わるのは、評価範囲の判断にあたって数値基準を機械的に適用せず、企業のリスクを踏まえて判断するという考え方が明確化された点です。前の章で触れた「連結売上高の5%」といった評価範囲の目安も、形式的に当てはめるのではなく、事業内容やリスクに応じて判断することが、これまで以上に求められるようになりました。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに実施基準の改訂について(意見書・改訂の経緯と適用時期を収録)|金融庁(公表ページ)

FSCP評価・文書化の工数をツールで減らす

FSCPの評価は、全社的側のチェックリスト作成から、固有プロセスの文書化(業務記述書・業務フロー図・RCM)、証憑の保管、翌期への引き継ぎまで、年間を通じて続きます。決算は実施頻度が低く実例が少ないぶん、少ない機会の記録を丁寧に残す必要もあります。

Excelや紙での運用で文書間の整合確認や記録の属人化が課題になっている場合は、内部統制の文書化・評価を支援するツールや、統制を業務システムの中で働かせる基盤の活用も選択肢になります。

手段は性質の異なる2系統に分かれます。評価や文書化の作業そのものを直接ラクにしたいなら、J-SOX対応を一元管理するSaaS型が中心的な選択肢です。これから基幹システムの刷新も視野に、統制を会計基盤の中に作り込みたいなら、ERP一体型という別のアプローチもあります。

自社がどちらの状況に近いかを念頭に、それぞれがFSCPの評価・文書化にどう効くかを対比します。

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比較項目Oracle NetSuite GRCsmoove J-SOX
位置づけ(FSCPでの役立ち方)統制を会計基盤に組み込むタイプ。
仕訳・決算整理の承認、職務分掌に応じたアクセス権限、常時稼働の監査証跡がERPの業務データ上で働く
J-SOXの文書化・評価を管理するタイプ。
3点セット作成から整備・運用・ロールフォワード評価まで、内部統制業務を一元管理
対象範囲会計・販売・購買・在庫などERP上の業務データに対する統制。
J-SOXの評価項目チェックや3点セット文書化を支える専用ツールではなく、統制を業務システムに組み込むタイプ
固有の決算業務プロセスの3点セット文書化〜評価に加え、全社統制(実施基準42項目ベース)まで対応。
監査法人のクラウド上のレビューにも対応
提供形態統合型クラウドERP「NetSuite」に含まれるGRC機能群
(NetSuiteの導入が前提)
内部統制業務に特化した国産クラウドSaaS
(単独で導入可能)
料金NetSuiteの年間ライセンスに含まれる
(金額は要問い合わせ)
組織規模・ID数に応じたプラン
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1週間の無料トライアルあり
詳細情報公式資料を見るサービス詳細を見る

1. Oracle NetSuite GRC(日本オラクル株式会社)

Oracle NetSuite GRC

Oracle NetSuite GRCは、統合型クラウドERP「NetSuite」に組み込まれたガバナンス・リスク・コンプライアンス機能群です。独立した評価ツールではなく、会計・販売・購買・在庫管理といった業務データを扱う基盤そのものに統制を組み込んでいる点が特徴です。

決算・財務報告プロセスの文脈では、仕訳や決算整理の承認ワークフロー、職務に応じたアクセス権限、誰がいつどのデータをどう変更したかを残す監査証跡が、会計基盤の中で働きます。統制のための仕組みを業務システムとは別に持つと、データを書き出して突き合わせる作業が生じがちですが、取引が発生した時点のデータがそのまま統制の対象になるため、後から人手で照合する手間を減らせます。

統制の仕組みを業務システムと切り離さずに持つというこの考え方について、提供元の日本オラクルはインタビューで次のように説明しています。

福宮氏
日本オラクル株式会社 理事 NetSuite事業統括 営業統括本部長
福宮氏
独自インタビューより

これは単体のGRC製品と比べたときに、現場で一番効いてくる部分だと思っています。統制のためのツールを別で持っていると、業務システム側のデータをエクスポートして、突き合わせて、チェックして、という作業がどうしても発生します。ここがかなり労働集約的で、ミスも起きやすいんです。

NetSuiteの場合は、取引が発生したその瞬間のデータがそのまま統制の対象になります。ワークフローによる承認や、不正につながりかねない操作の検知も、業務の流れの中で自動的に回っていきます。あとから人手で照合する作業そのものを減らせるので、内部監査や経理の方の負担を大きく軽くできるという声をよくいただきます。

決算プロセスの統制を会計基盤の中で効かせたい企業に向く選択肢です。提供されているのはERPに組み込まれた統制機能であり、J-SOXの評価項目のチェックや文書化を支える専用ツールではない点は、検討時に押さえておくとよいでしょう。料金はNetSuiteの年間ライセンスに含まれる形で、金額は要問い合わせです(2026年10月時点)。

2. smoove J-SOX(株式会社WARC)

smoove J-SOX

smoove J-SOXは、J-SOX対応の内部統制業務をクラウド上で一元管理する、公認会計士監修の国産SaaSです。固有の決算業務プロセスの文書化で使う3点セット(業務フロー図・業務記述書・RCM)の作成から、証憑データの管理、整備・運用状況の評価、翌期への評価の引き継ぎ(ロールフォワード評価)まで、年間を通じた内部統制業務を一つの画面で扱えます。

業務フローの変更をRCMに自動で反映して文書間の重複作業を減らせるほか、証憑ファイルをシステム内で統制に紐付けて管理できます。2025年10月には金融庁の実施基準の42項目をもとにした全社統制機能も加わり、全社的側の評価と固有プロセスの文書化を一つのツールでカバーしやすくなっています。

1週間の無料トライアルがあり、Excel運用からの脱却を図りたい内部統制部門が検討しやすいサービスです。料金は組織規模やID数に応じたプランで、金額は要問い合わせです(2026年10月時点)。

ここで紹介した2つは、FSCP評価の負担を軽くする代表的な2タイプです。内部統制の文書化・評価を支えるツールは他にも多くあり、機能・料金・サポート体制を広く見比べて自社に合うものを選びたい場合は、GRCツール全体を比較した次の記事が参考になります。

まとめ

FSCP(決算・財務報告プロセスに係る内部統制)は、決算から財務諸表作成・連結・開示までの手続に組み込まれた統制で、財務報告の信頼性に直結する重要な業務プロセスです。本記事の要点を整理します。

  • FSCPは2つに分かれる:全社的な観点で評価する「全社的FSCP」と、固有の業務プロセスとして評価する「個別決算業務プロセス」。この線引きが出発点。
  • 全社的側の3手続:総勘定元帳から財務諸表作成、連結財務諸表作成の仕訳・記録、開示事項の記載(実施基準の例示)。
  • 固有プロセスに回る科目:引当金・固定資産の減損損失・繰延税金資産など、見積りや経営者の予測を伴う重要な勘定科目。
  • 評価方法:全社的側はチェックシート方式、固有側は3点セットで文書化(いずれも実務上の呼称で、実施基準の明文用語ではない)。決算は実例が少ないため運用評価は慎重に。
  • 2024年改訂:2024年4月1日以後開始する事業年度から適用。評価範囲の数値基準は機械的に適用しない扱いが明確化された。

制度の全体像をつかめたら、次は自社の決算項目を全社的FSCPと固有プロセスに仕分け、評価の記録をどう残していくかを具体化する段階です。評価・文書化の負担が大きいと感じる場合は、内部統制の文書化を支援するツールや、統制を業務システムの中で働かせる基盤の活用も検討してみてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. FSCP(決算・財務報告プロセスに係る内部統制)とは何ですか?

A. FSCPとは、総勘定元帳から財務諸表の作成・連結・開示までの決算・財務報告の手続に組み込まれた内部統制で、「決算・財務報告プロセス(に係る内部統制)」の実務上の略称です。J-SOX(内部統制報告制度)で評価する内部統制の一つにあたります。

日常の取引を記録する業務プロセスの統制とは別に、決算という節目で財務諸表が正しく組み上がるかに着目する点に特徴があり、財務報告の信頼性に直結する重要な業務プロセスと位置づけられています。

Q. 全社的FSCPと個別決算業務プロセス(固有プロセス)の違いは何ですか?

A. FSCPは、全社的な内部統制に準じて評価する「全社的FSCP」と、固有の業務プロセスとして評価する「個別決算業務プロセス(固有プロセス)」の2つに分かれます。

全社的FSCPは、総勘定元帳から財務諸表を作成する手続や連結財務諸表の作成、開示事項の記載といった全社共通の決算手続が対象で、チェックシート方式で評価します。個別決算業務プロセスは、見積りや経営者の判断を伴う個別の勘定科目などが対象で、3点セット(業務記述書・業務フロー図・RCM)で文書化して評価します。

自社の決算項目がどちらにあたるかは、全社共通で財務諸表を組み上げる手続か、個別の科目に固有の手続かを目安に仕分けると判断しやすくなります。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(令和5年改訂)Ⅱ.2.(2)・Ⅱ.3.(3)|金融庁(PDF)

Q. 引当金や繰延税金資産は全社的FSCPと固有プロセスのどちらで評価しますか?

A. 引当金・固定資産の減損損失・繰延税金資産などは、見積りや経営者の予測を伴う重要な勘定科目として、固有の業務プロセス(個別決算業務プロセス)で評価するのが基本です。実施基準は、これらの科目のうち財務報告に及ぼす影響が最終的に大きくなる可能性があるものは、追加的に評価対象に含めることを検討するとしています。

これらは金額が財務諸表に与える影響も大きくなりがちなため、全社共通の手続としてまとめて評価するより、個別のプロセスとして固有に文書化・評価するほうが実態に合います。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(令和5年改訂)Ⅱ.2.(2)②|金融庁(PDF)

Q. FSCPとFCRPは同じものですか?

A. FSCPとFCRPは、どちらも「決算・財務報告プロセス(に係る内部統制)」を指す同じ対象の略称です。実施基準の原文に略称は登場せず、用語は一貫して「決算・財務報告プロセス」と書かれており、記事や社内資料によってFSCP・FCRPと表記が揺れているだけです。どちらの表記でも同じものと考えて差し支えありません。

Q. FSCPの3点セットとは何ですか?

A. FSCPの3点セットとは、個別決算業務プロセスを文書化する「業務記述書・業務フロー図・RCM(リスク・コントロール・マトリクス)」の3つの文書を指す実務上の呼称です。業務の流れを文章と図で示し、各プロセスのリスクと対応する統制を一覧にして、整備・運用状況を評価します。

「3点セット」や「チェックシート方式」といった呼び方は、実務で定着した通称です。実施基準の条文に明記された用語ではない点は押さえておくとよいでしょう。

Q. FSCPの評価にサンプリングは必要ですか?

A. FSCPの運用状況の評価では、日常反復取引で用いる「25件」などのサンプリングはなじまず、少ない実例を一件ずつ慎重に確認する進め方が基本です。実施基準は、FSCPは実施頻度が日常的な取引に関連する業務プロセスより低く評価できる実例が少ないため、他の内部統制よりも慎重に運用状況の評価を行う必要があるとしています。

統制上の要点ごとに少なくとも25件という目安は、90%の信頼度を得る例として示されたもので、日常反復継続する取引を前提としています。実施頻度の低いFSCPにはそのまま当てはまらないため、少ない機会の記録を丁寧に確認します。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(令和5年改訂)Ⅱ.3(3)|金融庁(PDF)

Q. FSCPで開示すべき重要な不備(旧・重要な欠陥)に該当するとどうなりますか?

A. FSCPで開示すべき重要な不備に該当すると判断された場合、内部統制報告書で「内部統制は有効でない」旨を開示することになります。「開示すべき重要な不備」は、かつて「重要な欠陥」と呼ばれていた用語で、古い資料で「重要な欠陥」と書かれているものと同じ対象を指します。

FSCPは財務報告の信頼性に直結する重要な業務プロセスであるため、ここで見つかった不備は、単独で、または複数が合わさって開示すべき重要な不備に該当しないかを、質的・金額的な重要性に照らして慎重に判断する必要があります。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(令和5年改訂)Ⅱ.1.②|金融庁(PDF)

Q. FSCPの評価にツールは必要ですか?

A. FSCPの評価にツールの導入は必須ではありませんが、文書化や証憑管理をExcel・紙で続ける負担が大きい場合は、内部統制の文書化・評価を支援するツールが有力な選択肢になります。決算は実施頻度が低く実例が少ないぶん、少ない機会の記録を漏れなく残すことが重要で、3点セットの文書間の整合や証憑の紐付けをシステムで管理すると属人化を抑えられます。

統制を会計基盤の中で働かせるERP型と、J-SOXの文書化・評価を一元管理するSaaS型があり、自社の規模・評価範囲・既存システムとの相性で判断してください。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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